IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ゼニス・エピジェネティクス・リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許-前立腺がんの治療のための併用療法 図1
  • 特許-前立腺がんの治療のための併用療法 図2
  • 特許-前立腺がんの治療のための併用療法 図3
  • 特許-前立腺がんの治療のための併用療法 図4
  • 特許-前立腺がんの治療のための併用療法 図5
  • 特許-前立腺がんの治療のための併用療法 図6
  • 特許-前立腺がんの治療のための併用療法 図7
  • 特許-前立腺がんの治療のための併用療法 図8
  • 特許-前立腺がんの治療のための併用療法 図9
  • 特許-前立腺がんの治療のための併用療法 図10
  • 特許-前立腺がんの治療のための併用療法 図11
  • 特許-前立腺がんの治療のための併用療法 図12A-B
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】前立腺がんの治療のための併用療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/437 20060101AFI20240221BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240221BHJP
   A61K 31/4164 20060101ALI20240221BHJP
   A61K 31/4439 20060101ALI20240221BHJP
   A61K 31/58 20060101ALI20240221BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20240221BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240221BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
A61K31/437
A61K45/00
A61K31/4164
A61K31/4439
A61K31/58
A61P15/00
A61P35/00
A61P43/00 121
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021514070
(86)(22)【出願日】2019-09-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-04
(86)【国際出願番号】 US2019050970
(87)【国際公開番号】W WO2020056232
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-09-13
(31)【優先権主張番号】62/730,869
(32)【優先日】2018-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/737,612
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/778,185
(32)【優先日】2018-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517202663
【氏名又は名称】ゼニス・エピジェネティクス・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Zenith Epigenetics Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】サラ・クリスティン・アットウェル
(72)【発明者】
【氏名】エリック・カンポー
(72)【発明者】
【氏名】サンジャイ・ラコティア
【審査官】伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-523259(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0153867(US,A1)
【文献】国際公開第2017/216772(WO,A2)
【文献】https://www.zenithepigenetics.com/upload/media_element/47/01/2016-aacr-poster-final.pdf[検索日:2023年8月15日]
【文献】Mol Cancer Ther,2015年,14(12_Supplement_2),C86
【文献】https://www.zenithepigenetics.com/upload/media_element/36/01/2015-aacr-eortc-poster.pdf[検索日:2023年8月15日]
【文献】Cancer Discovery,2018年01月,pp.24-36
【文献】Adv. Therap.,2018年,1,1800104(9 pages)
【文献】Mol. Cancer Res,2016年,14(4),pp.324-331
【文献】Expert Opin Investig Drugs,2017年,26(12),pp.1391-1397
【文献】Cancer Res,2018年,78(13_Supplement),5793
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)1-ベンジル-6-(3,5-ジメチルイソオキサゾル-4-イル)-N-メチル-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-アミン(化合物I)、1-ベンジル-6-(3,5-ジメチルイソオキサゾル-4-イル)-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-アミン、およびその薬学的に許容可能な塩/共結晶から選択されるBETブロモドメイン阻害剤を含む第一医薬組成物と、(ii)第二の治療剤を含む第二医薬組成物を含む、それを必要とする対象の前立腺がんを治療するための医薬組成物であって、
第二の治療剤がアンドロゲン受容体拮抗薬またはアンドロゲン合成阻害剤である、医薬組成物
【請求項2】
前記BETブロモドメイン阻害剤が、化合物Iである、請求項1に記載の医薬組成物
【請求項3】
前記第二の治療剤がエンザルタミドである、請求項1~のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項4】
前記第二の治療剤がアパルタミドである、請求項1~のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項5】
前記第二の治療剤がアビラテロンである、請求項1~のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項6】
前記前立腺がんが、去勢抵抗性前立腺がんまたは転移性去勢抵抗性前立腺がんである、請求項1~のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項7】
前記対象が以前に前立腺がん療法で治療されている、請求項1~のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項8】
前記前立腺がん療法がアンドロゲン遮断療法である、請求項に記載の医薬組成物
【請求項9】
前記対象が以前に、アンドロゲン遮断療法で疾患の進行を示していた、請求項に記載の医薬組成物
【請求項10】
前記対象が以前に、アンドロゲン遮断療法で治療されていなかった、請求項1~のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項11】
前記アンドロゲン遮断療法が、エンザルタミド、アパルタミド、またはアビラテロンである、請求項またはに記載の医薬組成物
【請求項12】
第二医薬組成物がアンドロゲン遮断療法を含み、第一医薬組成物と第二医薬組成物が用量制限毒性として血小板減少症を引き起こすことなく投与されうる、請求項1に記載の医薬組成物
【請求項13】
前記アンドロゲン遮断療法が、エンザルタミド、アパルタミド、ダロルタミド、またはアビラテロンである、請求項12に記載の医薬組成物
【請求項14】
前記対象が、TMPRSS2-ERG、SLC45A3-ERG、NDRG1-ERG、DUX4-ERG、ELF4-ERG、ELK4-ERG、BZW2-ERG、CIDEC-ERG、DYRK1A-ERG、EWSR1-ERG、FUS-ERG、GMPR-ERG、HERPUD1-ERG、KCNJ6-ERG、ZNRF3-ERG、ETS2-ERG、ETV1-ERG、HNRNPH1-ERG、PAK1-ERG、PRKAB2-ERG、SMG6-ERG、SLC45A3-FLI1、TMPRSS2-ETV1、SLC45A3-ETV1、FOXP1-ETV1、EST14-ETV1、HERVk17-ETV1、ERVK-24-ETV1、C15ORF21-ETV1、HNRPA2B1-ETV1、ACSL3-ETV1、OR51E2-ETV1、ETV1 S100R、RBM25-ETV1、ACPP-ETV1、BMPR1B-ETV1、CANT1-ETV1、ERO1A-ETV1、CPED1-ETV1、HMGN2P46-ETV1、HNRNPA2B1-ETV1、SMG6-ETV1、FUBP1-ETV1、KLK2-ETV1、MIPOL1- ETV1、SLC30A4-ETV1、EWSR1-ETV1、TMPRSS2-ETV4、KLK2-ETV4、CANT1-ETV4、DDX5-ETV4、UBTF-ETV4、DHX8-ETV4、CCL16-ETV4、EDIL3-ETV4、EWSR1-ETV4、SLC45A3-ETV4、UBTF-ETV4、XPO7-ETV4、TMPRSS2-ETV5、SLC45A3-ETV5、ACTN4- ETV5、EPG5-ETV5、LOC284889-ETV5、RNF213-ETV5、SLC45A3-ELK4を含む、活性化変異および/または転座のいずれかを介して、ETS転写因子ファミリーの活性化を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項15】
前記対象が、治療4週間または8週間のいずれかでPSAのスパイクを有する、請求項1~のいずれか一項に記載の医薬組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前立腺がんの治療のための併用療法に関する。
【背景技術】
【0002】
転移性去勢抵抗性前立腺がん(「mCRPC」)は、多くの場合、がんの増殖、腫瘍浸潤、および転移を促進するアンドロゲン受容体(「AR」)のシグナル伝達の持続性を特徴とする(Wyatt & Gleave,2015)。前立腺がんの初期治療には、外科的去勢または化学的去勢のいずれかが含まれ、その後アンドロゲン遮断療法が行われる。多くの場合、がんのさらなる進行および転移が観察されるため、転移性去勢抵抗性前立腺がんという用語が使用される。mCRPCに対する一次の標準治療療法には、AR拮抗薬エンザルタミド、シトクロムステロイド17-アルファ-ヒドロキシラーゼ/17,20リアーゼ(CYP17A1)阻害剤アビラテロンなどのアンドロゲン合成阻害剤、および場合によっては化学療法が含まれる。しかし、最近の研究では、対象がこれらの一次の治療に経時的に耐性を示し、追加の薬物療法を必要とすることが示されている(Wyatt & Gleave,2015)。現在、二次の治療におけるARモジュレーターまたは化学療法の有効性が中程度であるため、二次のmCRPCに対する標準治療はない。さらに、アビラテロンとエンザルタミドの耐性機序が重複することが示唆されている(Azad et al,2015b;Bianchini et al,2014;Loriot et al,2013;Noonan et al,2013;Schrader et al,2014)。
【0003】
エンザルタミドおよびアビラテロンに対する耐性機序には、リガンド結合ドメインの喪失および恒常的に活性なアンドロゲンシグナル伝達をもたらすARの選択的スプライシング(Nakazawa et al,2014)、グルココルチコイド受容体(GR)などの代替経路の増加(Arora et al,2013、Isikbay et al,2014)、活性化B細胞の核因子カッパ軽鎖エンハンサー(NF-kB)(Jin et al,2013、Nadiminty et al,2013)、またはMYCシグナル伝達経路(Lamb et al,2014、Nadiminty et al,2013、Zeng et al,2015)、ならびに神経内分泌分化(Aggarwal et al,2014、Beltran et al,2014、Dang et al,2015)が含まれる。これらの耐性機序のいくつかは、前立腺がん(MYC発現:(Gao et al,2013);ARスプライスバリアント:(Chan et al,2015;Welti et al,2018);GR:(Asangani et al,2016;Shah et al,2017))、または他のがん(NF-kB:(Ceribelli et al,2014;Gallagher et al,2014;Zou et al,2014))においてBETタンパク質によって制御されていることが示されており、BET阻害が、エンザルタミドおよびアビラテロンに耐性のmCRPCを有する対象にとって有益でありうることを示唆している。特に、アンドロゲン受容体スプライスバリアント7(AR-V7)は、最近、エンザルタミドおよびアビラテロンに対する耐性に関与していることが示唆され(Antonarakis et al,2014)、これらのバリアントを発現する細胞株は、BET依存性であり、培養物および異種移植片においてBETiに感受性がある(Asangani et al,2014;Asangani et al,2016;Chan et al,2015;Gao et al,2013;Wyce et al,2013)。BET阻害剤(BETi)の提案された作用機序の一つは、BETタンパク質がARのN末端と相互作用し、下流のアンドロゲンシグナル伝達経路を活性化するのを防止することである(Asangani et al,2014)。
【0004】
しかし、現時点では、前立腺がん、特にmCRPCを有する対象に投与した場合、どのBET阻害剤が有意な臨床的利益をもたらすかは不明である。また、どのBET阻害剤が、前立腺がんの治療においてアンドロゲン受容体拮抗薬またはアンドロゲン合成阻害剤などの他の薬剤と相乗的に結合するか、どのレベルの相乗効果が必要とされるか、およびどの第二の治療剤が各BET阻害剤にとって最良の併用パートナーとなり、前立腺がん患者に投与されたときに臨床的利益をもたらすかも不明である。臨床的利益に加えて、この組み合わせは、安全かつ有効な用量で良好な忍容性を示されなければならない。現時点では、どの組み合わせが最良の全体的プロファイルを示すかは予測できない。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、BETブロモドメイン阻害剤、またはBETブロモドメイン阻害剤の薬学的に許容可能な塩もしくは共結晶、およびそれを必要とする対象に第二の治療剤を同時投与することによって、前立腺がんを治療する方法を提供する。
【0006】
いくつかの実施形態では、BETブロモドメイン阻害剤は、第二の治療剤と同時に投与される。いくつかの実施形態では、BETブロモドメイン阻害剤は、第二の治療剤と順次に投与される。いくつかの実施形態では、BETブロモドメイン阻害剤は、第二の治療剤と共に単一の医薬組成物で投与される。いくつかの実施形態では、BETブロモドメイン阻害剤および第二の治療剤は、別個の組成物として投与される。
【0007】
いくつかの実施形態では、第二の治療剤は、前立腺がんの治療に有益な薬剤である。
【0008】
いくつかの実施形態では、第二の治療剤は、アンドロゲン遮断療法である。いくつかの実施形態では、第二の治療剤は、アンドロゲン受容体拮抗薬である。いくつかの実施形態では、第二の治療薬はアンドロゲン合成阻害剤である。
【0009】
いくつかの実施形態では、前立腺がんは、転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)である。
【0010】
いくつかの実施形態では、BETブロモドメイン阻害剤は、式Iaまたは式Ibの化合物、
【化1】
(式Ia)
(式Ib)
またはその立体異性体、互変異性体、薬学的に許容可能な塩、もしくは共結晶、もしくは水和物であり、
式中、
環Aおよび環Bは、水素、重水素、-NH、アミノ、複素環(C-C)、炭素環(C-C)、ハロゲン、-CN、-OH、-CF、アルキル(C-C)、チオアルキル(C-C)、アルケニル(C-C)、およびアルコキシ(C-C)から独立して選択される基で任意で置換されてもよく、
Xは、-NH-、-CH-、-CHCH-、-CHCHCH-、-CHCHO-、-CHCHNH-、-CHCHS-、-C(O)-、-C(O)CH-、-C(O)CHCH-、-CHC(O)-、-CHCHC(O)-、-C(O)NH-、-C(O)O-、-C(O)S-、-C(O)NHCH-、-C(O)OCH-、-C(O)SCH-から選択され、一つまたは複数の水素は独立して、重水素、ヒドロキシル、メチル、ハロゲン、-CF、ケトンで置換することができ、Sは酸化されて、スルホキシドまたはスルホンになる可能性があり、
は、任意に置換された3-7員の炭素環および複素環から選択され、
は、以下の5員の単環式複素環から選択され:
【化2】
これらは、水素、重水素、アルキル(C-C)、アルコキシ(C-C)、アミノ、ハロゲン、アミド、-CF、-CN、-N、ケトン(C-C)、-S(O)アルキル(C-C)、-SOアルキル(C-C)、-チオアルキル(C-C)、-COOH、および/またはエステルで任意に置換され、その各々は、水素、F、Cl、Br、-OH、-NH、-NHMe、-OMe、-SMe、オキソ、および/またはチオオキソで任意に置換されてもよい。
【0011】
いくつかの実施形態では、BETブロモドメイン阻害剤は、1-ベンジル-6-(3,5-ジメチルイソオキサゾール-4-イル)-N-メチル-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-アミンであり、本明細書の化合物Iは、以下の式を有する。
【化3】
(化合物I)
いくつかの実施形態では、BETブロモドメイン阻害剤は、化合物Iまたは薬学的に許容可能な塩または共結晶である。いくつかの実施形態では、BETブロモドメイン阻害剤は、結晶形態Iの化合物Iのメシル酸塩/共結晶である。
【0012】
いくつかの実施形態では、本発明の併用療法は、血小板減少症による用量制限毒性をもたらさないため、予想外の優れた安全性プロファイルを示す。いくつかの実施形態では、本発明の併用療法は、相乗的治療効果を示す。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、VCaP細胞の細胞増殖(AR陽性、AR増幅、TMPRSS2-ERG融合)に対する化合物I、エンザルタミド、および化合物Iとエンザルタミドの組み合わせの効果(阻害)を示す。
【0014】
図2図2は、VCaP細胞の細胞増殖(AR陽性、AR増幅、TMPRSS2-ERG融合)に対する化合物I、アパルタミド(ARN-509)、および化合物Iとアパルタミドの組み合わせの効果(阻害)を示す。
【0015】
図3図3は、LAPC4細胞の増殖に対する化合物I、アビラテロン、および化合物Iとアビラテロンの組み合わせの効果(阻害)を示す。
【0016】
図4図4は、化合物Iのメシル酸塩/共結晶のX線粉末回折図(XRPD)を示す。
【0017】
図5図5は、化合物Iのメシル酸塩/共結晶の示差走査熱量計(DSC)曲線を示す。
【0018】
図6図6は、化合物Iのメシル酸塩/共結晶の熱重量分析(TGA)を示す。
【0019】
図7図7は、以前にアビラテロンまたはエンザルタミドのいずれかで進行し、化合物Iおよびエンザルタミドで治療された患者、およびすべての患者のカプランマイヤー生存曲線を示す。患者数、事象および無増悪生存期間(PFS)中央値を、以下の表に示す。
【0020】
図8図8は、12週間の治療後に、PSA反応、PSAスパイク、またはどちらでもない(PSA調節なし)のいずれかを示した、化合物Iおよびエンザルタミドで治療された患者のカプランマイヤー曲線を示す。患者数、事象、および無増悪生存期間(PFS)中央値を、以下の表に示す。
【0021】
図9図9は、4週目または8週目のいずれかでPSAスパイクを有する、エンザルタミドと組み合わせた化合物Iで一日一回治療された四人のmCRPC患者の例を示す。
【0022】
図10図10は、エンザルタミドと組み合わせた化合物Iで一日一回治療されたmCRPC患者におけるETS変異または融合の分布と、それらが応答したか(臨床的または放射線学的進行なしで24週間超)、または応答しなかったか(放射線学的または臨床的進行までが24週間以内)を示す。
【0023】
図11図11は、エンザルタミドと組み合わせた化合物Iで一日一回治療されたmCRPC患者におけるETS変異または融合の分布、ならびにそれらが4週目または8週目のいずれかでPSAスパイクまたはPSA反応を有していたかどうかを示す。レスポンダーは、化合物Iの投与後24週間を超えても、臨床的または放射線学的進行が見られない場合と定義され、ノンレスポンダーは、放射線学的または臨床的進行が見られるまでの期間が24週間以内と定義される。
【0024】
図12図12Aは、mCRPC患者における化合物Iとエンザルタミドとの組み合わせに応答した腫瘍の免疫応答の誘導を示す。エンザルタミドは、化合物I前のサンプルと化合物I後のサンプルの両方に継続的に存在した。図12Bは、腫瘍内で増加した免疫応答遺伝子の一部を示す。
【0025】
定義
本明細書で使用される場合、「治療」または「治療する」は、疾患もしくは障害、またはその少なくとも一つの識別可能な症状の改善を指す。別の実施形態では、「治療」または「治療する」は、対象によって必ずしも識別可能ではない、少なくとも一つの測定可能な物理的パラメータの改善を指す。さらに別の実施形態では、「治療」または「治療する」は、物理的、例えば、識別可能な症状の安定化、生理学的、例えば、物理的パラメータの安定化、またはその両方のいずれかで、疾患または障害の進行を阻害することを指す。さらに別の実施形態では、「治療」または「治療する」は、疾患または障害の発症を遅らせることを指す。
【0026】
「任意」または「任意に」とは、その後に記述される事象または状況が発生する場合と発生しない場合があり、記述には、事象または状況が発生する場合と発生しない場合が含まれることを意味する。例えば、「任意に置換されるアリール」は、以下に定義されるように「アリール」および「置換アリール」の両方を包含する。当業者であれば、一つまたは複数の置換基を含有する任意の基に関して、こうした基は、立体的に非実用的、合成的に実行不可能、および/または本質的に不安定である、いかなる置換または置換パターンも導入することを意図するものではないことを理解するであろう。
【0027】
本明細書で使用される場合、用語「水和物」は、化学量論的または非化学量論的な量の水のいずれかが結晶構造に組み込まれる結晶形態を指す。
【0028】
本明細書で使用される場合、用語「アルケニル」は、本明細書では(C2-)アルケニルと呼ばれる、2~8個の炭素原子の直鎖または分岐基などの少なくとも一つの炭素-炭素二重結合を有する不飽和直鎖または分岐炭化水素を指す。例示的なアルケニル基には、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ブタジエニル、ペンタジエニル、ヘキサジエニル、2-エチルヘキセニル、2-プロピル-2-ブテニル、および4-(2-メチル-3-ブテン)-ペンテニルが含まれるが、これらに限定されない。
【0029】
本明細書で使用される場合、用語「アルコキシ」は、酸素(-O-アルキル-)に結合したアルキル基を指す。「アルコキシ」基はまた、酸素(「アルケニルオキシ」)に結合したアルケニル基、または酸素(「アルキニルオキシ」)基に結合したアルキニル基を含む。例示的なアルコキシ基には、限定されるものではないが、本明細書では(C1-)アルコキシと呼ばれる、1~8個の炭素原子のアルキル、アルケニル、またはアルキニル基を有する基が挙げられる。例示的なアルコキシ基には、メトキシおよびエトキシが含まれるが、これらに限定されない。
【0030】
本明細書で使用される場合、用語「アルキル」は、本明細書では(C-C)アルキルと呼ばれる、1~8個の炭素原子の直鎖または分岐基などの飽和直鎖または分岐炭化水素を指す。例示的なアルキル基としては、限定されるものではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、2-メチル-1-プロピル、2-メチル-2-プロピル、2-メチル-1-ブチル、3-メチル-1-ブチル、2-メチル-3-ブチル、2,2-ジメチル-1-プロピル、2-メチル-1-ペンチル、3-メチル-1-ペンチル、4-メチル-1-ペンチル、2-メチル-2-ペンチル、3-メチル-2-ペンチル、4-メチル-2-ペンチル、2,2-ジメチル-1-ブチル、3,3-ジメチル-1-ブチル、2-エチル-1-ブチル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、およびオクチルが挙げられる。
【0031】
本明細書で使用される場合、「アミド」という用語は、-NRaC(O)(Rb)、または-C(O)NRbRcを指し、式中、Ra、Rb、およびRcはそれぞれ独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、および水素から選択される。アミドは、炭素、窒素、Ra、Rb、またはRcを介して別の基に結合することができる。アミドはまた、環状であってもよく、例えば、RbおよびRcは、結合されて、5または6員環などの3~8員環を形成してもよい。用語「アミド」は、スルホンアミド、尿素、ウレイド、カルバメート、カルバミン酸、およびそれらの環状バージョンなどの基を包含する。用語「アミド」はまた、カルボキシ基に結合したアミド基、例えば、-アミド-COOH、または-アミド-COONaなどの塩、カルボキシ基に結合したアミノ基(例えば、-アミノ-COOHまたは-アミノ-COONaなどの塩)を包含する。
【0032】
本明細書で使用される場合、用語「アミン」または「アミノ」は、-NRdReまたは-N(Rd)Re-の形態を指し、式中、RdおよびReは独立してアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、カルバメート、シクロアルキル、ハロアルキル、ヘテロアリール、複素環、および水素から選択される。アミノは、窒素を介して親分子基に結合することができる。アミノはまた、環状であってもよく、例えば、RdおよびReの任意の二つが一緒にまたはNと結合して、3~12員環(例えば、モルホリノまたはピペリジニル)を形成してもよい。アミノという用語はまた、任意のアミノ基の対応する第四級アンモニウム塩も含む。例示的なアミノ基は、アルキルアミノ基を含み、RdまたはReのうちの少なくとも一つはアルキル基である。いくつかの実施形態では、RdおよびReはそれぞれ、ヒドロキシル、ハロゲン、アルコキシ、エステル、またはアミノで任意に置換されてもよい。
【0033】
本明細書で使用される場合、用語「アリール」は、単炭素環式、二炭素環式、または他の多炭素環式芳香族環系を指す。アリール基は、任意で、アリール、シクロアルキル、およびヘテロシクリルから選択される一つまたは複数の環に縮合されうる。本開示のアリール基は、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、ケトン、ニトロ、リン酸、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミド、およびチオケトンから選択される基で置換されうる。例示的なアリール基としては、限定されないが、フェニル、トリル、アントラセニル、フルオレニル、インデニル、アズレニル、およびナフチル、ならびに5,6,7,8-テトラヒドロナフチルなどのベンゾ縮合炭素環部分が挙げられる。例示的なアリール基はまた、限定されないが、単環式芳香族環系を含み、環は、本明細書では、「(C)アリール」と称される6個の炭素原子を含む。
【0034】
本明細書で使用される場合、用語「アリールアルキル」は、少なくとも一つのアリール置換基(例えば、-アリール-アルキル-)を有するアルキル基を指す。例示的なアリールアルキル基は、限定されないが、単環式芳香族環系を有し、環は、本明細書では、「(C)アリールアルキル」と称される6個の炭素原子を含む、アリールアルキルを含む。
【0035】
本明細書で使用される場合、用語「カルバメート」は、-RgOC(O)N(Rh)-、-RgOC(O)N(Rh)Ri-、または-OC(O)NRhRiの形態を指し、式中、Rg、Rh、およびRiはそれぞれ独立してアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、および水素から選択される。例示的なカルバメートには、限定されないが、アリールカルバメートまたはヘテロアリールカルバメートが含まれる(例えば、Rg、RhおよびRiのうちの少なくとも一つは、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、およびピラジンなどのアリールまたはヘテロアリールから独立して選択される)。
【0036】
本明細書で使用される場合、用語「炭素環」は、アリール基またはシクロアルキル基を指す。
【0037】
本明細書で使用される場合、用語「カルボキシ」は、-COOHまたはその対応するカルボン酸塩(例えば、-COONa)を指す。カルボキシという用語は、例えば、カルボニル基に結合したカルボキシ基、例えば、-C(O)-COOHまたは-C(O)-COONaなどの塩である、「カルボキシカルボニル」も含む。
【0038】
本明細書で使用される場合、用語「シクロアルコキシ」は、酸素に結合したシクロアルキル基を指す。
【0039】
本明細書で使用される場合、用語「シクロアルキル」は、シクロアルカンから派生する、3~12個の炭素、または本明細書では「(C-C)シクロアルキル」と称される3~8個の炭素の飽和または不飽和の環式、二環式、または架橋二環式炭化水素基を指す。例示的なシクロアルキル基としては、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロペンタン、およびシクロペンテンが挙げられるが、これらに限定されない。シクロアルキル基は、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、ケトン、ニトロ、リン酸、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミド、およびチオケトンで置換されうる。シクロアルキル基は、他のシクロアルキル飽和もしくは不飽和のアリール基、またはヘテロシクリル基と縮合されうる。
【0040】
本明細書で使用される場合、用語「ジカルボン酸」は、飽和および不飽和炭化水素ジカルボン酸およびその塩などの少なくとも二つのカルボン酸基を含有する基を指す。例示的なジカルボン酸は、アルキルジカルボン酸を含む。ジカルボン酸は、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、水素、ヒドロキシル、ケトン、ニトロ、リン酸塩、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミド、およびチオケトンで置換されてもよい。ジカルボン酸には、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マレイン酸、フタル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、マロン酸、フマル酸、(+)/(-)-リンゴ酸、(+)/(-)酒石酸、イソフタル酸、およびテレフタル酸が含まれるが、これらに限定されない。ジカルボン酸は、無水物、イミド、ヒドラジド(例えば、無水コハク酸およびスクシンイミド)などのそのカルボン酸誘導体をさらに含む。
【0041】
用語「エステル」は、構造-C(O)O-、-C(O)O-Rj-、-RkC(O)O-Rj-、または-RkC(O)O-を指し、式中、Oは水素に結合せず、RjおよびRkは独立して、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、エーテル、ハロアルキル、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルから選択されうる。Rkは水素とすることができるが、Rjは水素とすることはできない。エステルは環状であってもよく、例えば、炭素原子とRj、酸素原子とRk、またはRjとRkは結合して、3~12員の環を形成してもよい。例示的なエステルとしては、限定されないが、アルキルエステルを含み、RjまたはRkのうちの少なくとも一つが、-O-C(O)-アルキル、-C(O)-O-アルキル-、および-アルキル-C(O)-O-アルキル-などのアルキルである。例示的なエステルは、アリールエステルまたはヘテロアリールエステルも含み、例えば、RjまたはRkのうちの少なくとも一つは、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、およびピラジンなどのヘテロアリール基、例えばニコチン酸エステルである。例示的なエステルは、構造-RkC(O)O-を有するリバースエステルも含み、酸素は親分子に結合する。例示的なリバースエステルとしては、コハク酸塩、D-アルギニン酸塩、L-アルギニン酸塩、L-リシン酸塩、およびD-リシン酸塩が挙げられる。エステルはまた、カルボン酸無水物および酸ハロゲン化物を含む。
【0042】
本明細書で使用される場合、「ハロ」または「ハロゲン」という用語は、F、Cl、Br、またはIを指す。
【0043】
本明細書で使用される場合、用語「ハロアルキル」は、一つまたは複数のハロゲン原子で置換されたアルキル基を指す。「ハロアルキル」はまた、一つまたは複数のハロゲン原子で置換されたアルケニル基またはアルキニル基も包含する。
【0044】
本明細書で使用される場合、用語「ヘテロアリール」は、例えば、窒素、酸素、および硫黄などの1~3個のヘテロ原子など、一つまたは複数のヘテロ原子を含有する単環式、二環式、または多環式芳香族環系を指す。ヘテロアリールは、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、ケトン、ニトロ、リン酸塩、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミド、およびチオケトンを含む一つまたは複数の置換基で置換されうる。ヘテロアリールはまた、非芳香族環に縮合されてもよい。ヘテロアリール基の実例には、限定されないが、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジル、ピラジル、トリアジニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、(1,2,3)-および(1,2,4)-トリアゾリル、ピラジニル、ピリミジリル、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソキサゾリル、チアゾリル、フリル、フェニル、イソキザゾリル、およびオキサゾリルが挙げられる。例示的なヘテロアリール基としては、限定されないが、単環式芳香族環を含み、環は、本明細書では「(C-C)ヘテロアリール」と称される2~5個の炭素原子および1~3個のヘテロ原子を含む。
【0045】
本明細書で使用される場合、「複素環」、「ヘテロシクリル」、または「複素環式」という用語は、窒素、酸素、および硫黄から独立して選択される一つ、二つ、または三つのヘテロ原子を含む、飽和または不飽和の3員、4員、5員、6員、または7員環を指す。複素環は、芳香族(ヘテロアリール)または非芳香族であってもよい。複素環は、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、ケトン、ニトロ、リン酸塩、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミド、およびチオケトンを含む一つまたは複数の置換基で置換されうる。複素環はまた、二環式、三環式、および四環式基を含み、上記複素環式環のいずれかが、アリール、シクロアルキル、および複素環から独立して選択される一つまたは二つの環に縮合されている。例示的な複素環には、アクリジニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチエニル、ベンゾオキサゾリル、ビオチニル、シンノリニル、ジヒドロフリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロピラニル、ジヒドロチエニル、ジチアゾリル、フリル、ホモピペリジニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、インドリル、イソキノリル、イソチアゾリジニル、イソチアゾリル、イソキサゾリジニル、イソキサゾリル、モルホリニル、オキサジアゾリル、オキサゾリジニル、オキサゾリル、ピペラジニル、ピペリジン、ピラニル、ピラゾリジニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピラゾリニル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピリミジル、ピロリジニル、ピロリジン-2-オニル、ピロリニル、ピロリル、キノリニル、キノキサロイル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロイソキノリル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロキノリル、テトラゾリル、チアジアゾリル、チアゾリジニル、チアゾリル、チエニル、チオモルホリニル、チオピラニル、およびトリアゾリルが挙げられる。
【0046】
本明細書で使用される場合、用語「ヒドロキシ」および「ヒドロキシル」は、-OHを指す。
【0047】
本明細書で使用される場合、用語「ヒドロキシアルキル」は、アルキル基に結合するヒドロキシを指す。
【0048】
本明細書で使用される場合、用語「ヒドロキシアリール」は、アリール基に結合するヒドロキシを指す。
【0049】
本明細書で使用される場合、用語「ケトン」は、構造-C(O)-Rn(例えば、アセチル、-C(O)CH)または-Rn-C(O)-Ro-を指す。ケトンは、RnまたはRoを介して別の基に結合することができる。RnまたはRoは、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリルまたはアリールであってもよく、またはRnまたはRoを結合して3~12員の環を形成することができる。
【0050】
本明細書で使用される場合、用語「フェニル」は、6員の炭素環式芳香族環を指す。フェニル基はまた、シクロヘキサンまたはシクロペンタン環に縮合されてもよい。フェニルは、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、ケトン、リン酸塩、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミド、およびチオケトンを含む一つまたは複数の置換基で置換されうる。
【0051】
本明細書で使用される場合、用語「チオアルキル」は、硫黄(-S-アルキル-)に結合したアルキル基を指す。
【0052】
「アルキル」、「アルケニル」、「アルキニル」、「アルコキシ」、「アミノ」および「アミド」基は、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボニル、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、ケトン、リン酸、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミド、チオケトン、ウレイドおよびNから選択される少なくとも一つの基で任意に置換されるか、またはそれによって中断されるか、または分岐されてもよい。置換基は分岐して、置換または非置換の複素環またはシクロアルキルを形成しうる。
【0053】
本明細書で使用される場合、任意に置換される置換基の適切な置換は、本開示の化合物またはそれらの調製に有用な中間体の合成または薬学的有用性を無効としない基を指す。適切な置換の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない: C1-8アルキル、アルケニルまたはアルキニル;C1-6アリール、C2-5ヘテロアリール;C37シクロアルキル;C1-8アルコキシ;Cアリールオキシ;-CN;-OH;オキソ;ハロ、カルボキシ;アミノ、例えば-NH(C1-8アルキル)、-N(C1-8アルキル)、-NH((C)アリール)、または-N((C)アリール);ホルミル;ケトン、例えば-CO(C1-8アルキル)、-CO((Cアリール)エステル、例えば-CO(C1-8アルキル)および-CO(Cアリール)。当業者は、本開示の化合物の安定性および薬理学的および合成活性に基づいて、適切な置換を容易に選択することができる。
【0054】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される組成物」という用語は、一つまたは複数の薬学的に許容される担体と共に製剤化された本明細書に開示される少なくとも一つの化合物を含む組成物を指す。
【0055】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容可能な担体」という用語は、医薬投与と適合性のある、あらゆる溶媒、分散媒体、コーティング、等張剤および吸収遅延剤などを指す。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体および薬剤の使用は、当技術分野で周知である。組成物はまた、補足的、追加的、または強化された治療機能を提供する他の活性化合物を含有してもよい。
【0056】
本明細書で使用される場合、「疾患進行」という用語は、前立腺特異抗原(PSA)の増加および/または進行性転移性疾患を指す。いくつかの実施形態において、疾患進行は、前立腺がんワーキンググループ(PCWG)2ガイドライン(Scher et al.2008)に記載されるように定義される。いくつかの実施形態では、疾患進行は、アンドロゲン遮断療法を以前に受けたことがある対象で発生する。
【発明を実施するための形態】
【0057】
上述のように、本発明は、BETブロモドメイン阻害剤、またはBETブロモドメイン阻害剤の薬学的に許容可能な塩もしくは共結晶、およびそれを必要とする対象への第二の治療剤の同時投与による前立腺がんを治療する方法を提供する。
【0058】
一実施形態では、本発明は、それを必要とする対象に、式Iaまたは式IbのBETブロモドメイン阻害剤、
【化4】
またはその立体異性体、互変異性体、薬学的に許容可能な塩、もしくは共結晶、もしくは水和物、および第二の治療剤を同時投与することを含む、前立腺がんを治療する方法を提供し、式中、
環Aおよび環Bは、水素、重水素、-NH、アミノ、複素環(C-C)、炭素環(C-C)、ハロゲン、-CN、-OH、-CF、アルキル(C-C)、チオアルキル(C-C)、アルケニル(C-C)、およびアルコキシ(C-C)から独立して選択される基で任意で置換されてもよく、
Xは、-NH-、-CH-、-CHCH-、-CHCHCH-、-CHCHO-、-CHCHNH-、-CHCHS-、
-C(O)-、-C(O)CH-、-C(O)CHCH-、-CHC(O)-、-CHCHC(O)-、-C(O)NH-、-C(O)O-、-C(O)S-、-C(O)NHCH-、
-C(O)OCH-、-C(O)SCH-から選択され、一つまたは複数の水素は独立して、重水素、ヒドロキシル、メチル、ハロゲン、-CF、ケトンで置換することができ、Sは酸化されて、スルホキシドまたはスルホンになる可能性があり、
は、任意に置換された3-7員の炭素環および複素環から選択され、
は、以下の5員の単環式複素環から選択され:
【化5】
これらは、水素、重水素、アルキル(C-C)、アルコキシ(C-C)、アミノ、ハロゲン、アミド、-CF、-CN、-N、ケトン(C-C)、-S(O)アルキル(C-C)、-SOアルキル(C-C)、-チオアルキル(C-C)、-COOH、および/またはエステルで任意に置換され、その各々は、水素、F、Cl、Br、-OH、-NH、-NHMe、-OMe、-SMe、オキソ、および/またはチオオキソで任意に置換されてもよい。
【0059】
化合物Iを含む式IaおよびIbの化合物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる国際特許公開WO2015/002754に、特に化合物Iを含む式Iaおよび式Ibの化合物のその説明、ならびにそれらの合成、およびそれらのBETブロモドメイン阻害剤活性の実証について、以前に記載されてきた。
【0060】
いくつかの実施形態では、式Iaまたは式IbのBETブロモドメイン阻害剤は以下から選択され、
1-ベンジル-6-(3,5-ジメチルイソオキサゾル-4-イル)-N-エチル-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-アミン、
1-ベンジル-6-(3,5-ジメチルイソオキサゾル-4-イル)-N-メチル-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-アミン、
N,1-ジベンジル-6-(3,5-ジメチルイソオキサゾル-4-イル)-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-アミン、
1-ベンジル-6-(3,5-ジメチルイソオキサゾル-4-イル)-N-(ピリジン-3-イルメチル)-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-アミン、
4-(1-ベンジル-2-(ピロリジン-1-イル)-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-6-イル)-3,5-ジメチルイソオキサゾール、
4-(2-(アゼチジン-1-イル)-1-(シクロペンチルメチル)-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-6-イル)-3,5-ジメチルイソオキサゾール、
1-ベンジル-6-(3,5-ジメチルイソオキサゾル-4-イル)-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-アミン、
1-(シクロペンチルメチル)-6-(3,5-ジメチルイソオキサゾル-4-イル)-N-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-アミン、
4-アミノ-1-ベンジル-6-(3,5-ジメチルイソオキサゾル-4-イル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾル-2(3H)-オン、
4-アミノ-6-(3,5-ジメチルイソオキサゾル-4-イル)-1-(4-メトキシベンジル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾル-2(3H)-オン、
4-アミノ-6-(3,5-ジメチルイソオキサゾル-4-イル)-1-(1-フェニルエチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾル-2(3H)-オン、
4-アミノ-1-ベンジル-6-(3,5-ジメチルイソオキサゾル-4-イル)-3-メチル-1H-ベンゾ[d]イミダゾル-2(3H)-オン、
またはその薬学的に許容可能な塩もしくは共結晶。
【0061】
いくつかの実施形態では、本発明は、それを必要とする対象に、1-ベンジル-6-(3,5-ジメチルイソオキサゾル-4-イル)-N-メチル-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-アミン(化合物I)および1-ベンジル-6-(3,5-ジメチルイソオキサゾル-4-イル)-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-アミンから選択される化合物、およびその薬学的に許容可能な塩もしくは共結晶を、別の治療剤と同時投与することを含む、前立腺がんを治療するための方法を提供する。
【0062】
いくつかの実施形態では、本発明は、それを必要とする対象に、1-ベンジル-6-(3,5-ジメチルイソオキサゾル-4-イル)-N-メチル-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-アミン(化合物I)および1-ベンジル-6-(3,5-ジメチルイソオキサゾル-4-イル)-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-アミンから選択される化合物、およびその薬学的に許容可能な塩もしくは共結晶を、別の治療剤および免疫チェックポイント阻害剤の両方と同時投与することを含む、前立腺がんを治療するための方法を提供する。
【0063】
一実施形態では、第二の薬剤はアンドロゲン受容体拮抗薬である。
【0064】
一実施形態では、第二の薬剤はアンドロゲン合成阻害剤である。
【0065】
一実施形態では、第二の薬剤はエンザルタミドである。
【0066】
一実施形態では、第二の薬剤はアパルタミドである。
【0067】
一実施形態では、第二の薬剤は、ダロルタミドである。
【0068】
一実施形態では、第二の薬剤はアビラテロンである。
【0069】
一実施形態では、第二の薬剤はアンドロゲン受容体拮抗薬であり、免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて投与される。
【0070】
一実施形態では、第二の薬剤はアンドロゲン合成阻害剤であり、免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて投与される。
【0071】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1、PD-L1阻害剤、またはCTL-4阻害剤である。
【0072】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、イピリムマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブPD-1、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、またはセミプリマブである。
【0073】
一実施形態では、前立腺がんは、去勢抵抗性前立腺がんまたは転移性去勢抵抗性前立腺がんである。
【0074】
一実施形態では、対象は、以前に前立腺がん療法で治療されている。
【0075】
一実施形態では、前立腺がん療法はアンドロゲン遮断療法である。
【0076】
一実施形態では、対象は、以前にアンドロゲン遮断療法で疾患進行を示してきた。
【0077】
一実施形態では、患者はアンドロゲン遮断療法に依然として反応している。
【0078】
一実施形態では、対象はアンドロゲン遮断療法で以前に治療されていない。
【0079】
一実施形態では、アンドロゲン遮断療法は、エンザルタミド、アパルタミド、またはアビラテロンである。
【0080】
一実施形態では、薬学的に許容可能な塩または共結晶は、メシル酸塩または共結晶である。
【0081】
一実施形態では、対象は、PSAの上昇を伴う無症候性の非転移性疾患を有し、測定可能な疾患に対するスキャンが陰性である。
【0082】
一実施形態では、対象は、PSAの上昇を伴う転移性疾患を有し、転移性疾患に対するスキャンが陽性であり、アンドロゲン遮断療法または化学療法(タキサン前)で治療されていない。
【0083】
一実施形態では、対象は、PSAの上昇を伴う転移性疾患を有し、転移性疾患に対するスキャンが陽性であり、アビラテロン、エンザルタミド、もしくはアパルタミド、または化学療法(タキサン前)で治療されていない。
【0084】
一実施形態では、対象は、無症候性の非転移性疾患を有し、測定可能な疾患に対するスキャンが陰性であり、PSAの上昇を伴わない。
【0085】
一実施形態では、対象は、転移性疾患を有し、転移性疾患に対するスキャンが陽性であるが、PSAの上昇を伴わず、アンドロゲン遮断療法または化学療法(タキサン前)で治療されていない。
【0086】
一実施形態では、対象は、転移性疾患を有し、転移性疾患に対するスキャンが陽性であるが、PSAの上昇を伴わず、アビラテロン、エンザルタミド、もしくはアパルタミド、または化学療法(タキサン前)で治療されていない。
【0087】
一実施形態では、対象は、転移性疾患を有し、アビラテロン、エンザルタミド、もしくはアパルタミドで治療されてきたが、化学療法(タキサン前)を受けていない。
【0088】
一実施形態では、アンドロゲン遮断療法と、1-ベンジル-6-(3,5-ジメチルイソオキサゾル-4-イル)-N-メチル-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-アミン(化合物I)および1-ベンジル-6-(3,5-ジメチルイソオキサゾル-4-イル)-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-アミンから選択される化合物およびその薬学的に許容可能な塩または共結晶とで、以前に化学療法(タキサン前)を受けていない対象に同時治療することで、用量制限毒性として血小板減少症を欠くことによって、予想外の優れた安全性プロファイルを示す。
【0089】
一実施形態では、対象は、転移性疾患を有し、アビラテロン、エンザルタミド、もしくはアパルタミドで治療されてきたが、化学療法(タキサン前)を受けていないため、別のアンドロゲン遮断療法による治療は推奨されない。
【0090】
一実施形態では、対象は転移性疾患を有し、アンドロゲン遮断療法および化学療法で治療されている。
【0091】
いくつかの実施形態では、対象はヒトである。
【0092】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるBETブロモドメイン阻害剤は、別の治療剤と同時投与され、任意に免疫チェックポイント阻害剤とさらに併用される。本明細書で使用される場合、「同時」とは、BETブロモドメイン阻害剤および他の治療剤が、数秒(例えば、15秒、30秒、45秒、60秒以下)、数分(例えば、1分、2分、5分以下、10分以下、または15分以下)、または1~8時間の時間差で投与されることを意味する。同時投与される場合、BETブロモドメイン阻害剤および他の治療剤は、二つ以上の投与で投与されてもよく、別個の組成物または剤形に含まれてもよく、同一または異なるパッケージに含まれてもよい。
【0093】
特定の実施形態では、本発明の併用療法で投与されるBETブロモドメイン阻害剤は、化合物Iおよび1-ベンジル-6-(3,5-ジメチルイソオキサゾル-4-イル)-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-アミンから選択され、25~200mg/日の用量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、化合物Iおよび1-ベンジル-6-(3,5-ジメチルイソオキサゾル-4-イル)-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-アミンから選択される化合物が、36~144mg/日の用量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、本発明の併用療法で使用するために化合物Iおよび1-ベンジル-6-(3,5-ジメチルイソオキサゾル-4-イル)-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-アミンから選択される化合物が、48~120mg/日の用量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、本発明の併用療法で使用するために化合物Iおよび1-ベンジル-6-(3,5-ジメチルイソオキサゾル-4-イル)-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-アミンから選択される化合物が、48mg、60mg、72mg、96mg、または120mg/日の用量で対象に投与される。本明細書に記載される実施形態のいずれかにおいて、化合物Iおよび1-ベンジル-6-(3,5-ジメチルイソオキサゾル-4-イル)-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-アミンから選択される化合物は、80mg~160mgのエンザルタミドと組み合わせて投与されてもよい。本明細書に記載される実施形態のいずれかにおいて、化合物Iおよび1-ベンジル-6-(3,5-ジメチルイソオキサゾル-4-イル)-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-アミンから選択される化合物は、80mg、120mg、または160mgのエンザルタミドと組み合わせて投与されてもよい。本明細書に記載される実施形態のいずれかにおいて、化合物Iおよび1-ベンジル-6-(3,5-ジメチルイソオキサゾル-4-イル)-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-アミンから選択される化合物は、500mg~1,000mgのアビラテロンと組み合わせて投与されてもよい。本明細書に記載される実施形態のいずれかにおいて、化合物Iおよび1-ベンジル-6-(3,5-ジメチルイソオキサゾル-4-イル)-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-アミンから選択される化合物は、500mg、750mg、または1,000mgのアビラテロンと組み合わせて投与されてもよい。本明細書に記載される実施形態のいずれかにおいて、化合物Iおよび1-ベンジル-6-(3,5-ジメチルイソオキサゾル-4-イル)-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-アミンから選択される化合物は、120mg~240mgのアパルタミドと組み合わせて投与されてもよい。本明細書に記載される実施形態のいずれかにおいて、化合物Iおよび1-ベンジル-6-(3,5-ジメチルイソオキサゾル-4-イル)-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-アミンから選択される化合物は、120mg、180mg、または240mgのアパルタミドと組み合わせて投与されてもよい。本明細書に記載される実施形態のいずれかにおいて、化合物Iおよび1-ベンジル-6-(3,5-ジメチルイソオキサゾル-4-イル)-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-アミンから選択される化合物は、一日二回100mg~300mgのダロルタミドと組み合わせて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、36~144mgの化合物Iは、80mg~160mgのエンザルタミド、500mg~1,000mgのアビラテロン、120mg~240mgのアパルタミド、または一日二回100mg~300mgのダロルタミドと組み合わせて投与される。
【0094】
特定の実施形態では、本発明の併用療法で投与されるBETブロモドメイン阻害剤は、化合物Iの薬学的に許容可能な塩または共結晶および1-ベンジル-6-(3,5-ジメチルイソオキサゾル-4-イル)-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-アミンから選択され、対応する遊離塩基の25~200mg/日の用量に相当するヒトへの曝露を提供する用量レベルで対象に投与される。特定の実施形態では、化合物Iの薬学的に許容可能な塩または共結晶および1-ベンジル-6-(3,5-ジメチルイソオキサゾル-4-イル)-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-アミンから選択される化合物は、対応する遊離塩基の36~144mg/日の用量に相当するヒトへの曝露を提供する用量レベルで本発明の併用療法で投与されてもよい。特定の実施形態では、化合物Iの薬学的に許容可能な塩または共結晶および1-ベンジル-6-(3,5-ジメチルイソオキサゾル-4-イル)-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-アミンから選択される化合物は、対応する遊離塩基の48~96mg/日の用量に相当するヒトへの曝露を提供する用量レベルで本発明の併用療法で投与されてもよい。本明細書に記載される実施形態のいずれかにおいて、化合物Iの薬学的に許容可能な塩または共結晶、および1-ベンジル-6-(3,5-ジメチルイソオキサゾル-4-イル)-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-アミンから選択される化合物は、80mg~160mgのエンザルタミド、500mg~1,000mgのアビラテロン、または120mg~240mgのアパルタミドと組み合わせて投与されてもよい。
【0095】
特定の実施形態では、対象は、TMPRSS2-ERG、SLC45A3-ERG、NDRG1-ERG、DUX4-ERG、ELF4-ERG、ELK4-ERG、BZW2-ERG、CIDEC-ERG、DYRK1A-ERG、EWSR1-ERG、FUS-ERG、GMPR-ERG、HERPUD1-ERG、KCNJ6-ERG、ZNRF3-ERG、ETS2-ERG、ETV1-ERG、HNRNPH1-ERG、PAK1-ERG、PRKAB2-ERG、SMG6-ERG、SLC45A3-FLI1、TMPRSS2-ETV1、SLC45A3-ETV1、FOXP1-ETV1、EST14-ETV1、HERVk17-ETV1、ERVK-24-ETV1、C15ORF21-ETV1、HNRPA2B1-ETV1、ACSL3-ETV1、OR51E2-ETV1、ETV1 S100R、RBM25-ETV1、ACPP-ETV1、BMPR1B-ETV1、CANT1-ETV1、ERO1A-ETV1、CPED1-ETV1、HMGN2P46-ETV1、HNRNPA2B1-ETV1、SMG6-ETV1、FUBP1-ETV1、KLK2-ETV1、MIPOL1-ETV1、SLC30A4-ETV1、EWSR1-ETV1、TMPRSS2-ETV4、KLK2-ETV4、CANT1-ETV4、DDX5-ETV4、UBTF-ETV4、DHX8-ETV4、CCL16-ETV4、EDIL3-ETV4、EWSR1-ETV4、SLC45A3-ETV4、UBTF-ETV4、XPO7-ETV4、TMPRSS2-ETV5、SLC45A3-ETV5、ACTN4-ETV5、EPG5-ETV5、LOC284889-ETV5、RNF213-ETV5、SLC45A3-ELK4を含む、活性化変異および/または転座のいずれかを介して、ETS転写因子ファミリーの活性化を有する。
【0096】
特定の実施形態では、対象は、活性化変異および/または転座のいずれかを介して、ETS転写因子ファミリーの活性化を有しており、これには特定の実施形態では、対象が、活性化変異および/または転座のいずれかを介して、ETS転写因子ファミリーメンバーであるTMPRSS2-ERGの活性化を有することが含まれる。
【0097】
特定の実施形態では、対象は、12週間の治療でPSAの2.5倍未満の増加を有する。
【0098】
特定の実施形態では、対象は、12週間の治療で少なくとも2倍のPSAの減少を有する。
【0099】
特定の実施形態では、対象は、4週間または8週間の治療のいずれかでPSAにスパイクを有する。4週間でのスパイクは、化合物Iによる治療の開始(0週目)と比較した4週間の治療でのPSAの増加と、それに続く治療の4週目から8週目までのPSAの減少として定義される。8週間でのスパイクは、4週間の治療(4週目)と比較した8週間の治療でのPSAの増加と、それに続く治療の8週目から12週目までのPSAの減少として定義される。

参考文献
Aggarwal,R.,Zhang,T.,Small,E.J.& Armstrong,A.J.(2014)Neuroendocrine prostate cancer: subtypes,biology,and clinical outcomes.J Natl Compr Canc Netw,12(5),719-26.

Antonarakis,E.S.,Lu,C.,Wang,H.,Luber,B.,Nakazawa,M.,Roeser,J.C.,Chen,Y.,Mohammad,T.A.,Chen,Y.,Fedor,H.L.,Lotan,T.L.,Zheng,Q.,De Marzo,A.M.,Isaacs,J.T.,Isaacs,W.B.,Nadal,R.,Paller,C.J.,Denmeade,S.R.,Carducci,M.A.,Eisenberger,M.A.& Luo,J.(2014)AR-V7 and resistance to enzalutamide and abiraterone in prostate cancer.N Engl J Med,371(11),1028-38.

Arora,V.K.,Schenkein,E.,Murali,R.,Subudhi,S.K.,Wongvipat,J.,Balbas,M.D.,Shah,N.,Cai,L.,Efstathiou,E.,Logothetis,C.,Zheng,D.& Sawyers,C.L.(2013)Glucocorticoid receptor confers resistance to antiandrogens by bypassing androgen receptor blockade.Cell,155(6),1309-22.

Asangani,I.A.,Dommeti,V.L.,Wang,X.,Malik,R.,Cieslik,M.,Yang,R.,Escara-Wilke,J.,Wilder-Romans,K.,Dhanireddy,S.,Engelke,C.,Iyer,M.K.,Jing,X.,Wu,Y.M.,Cao,X.,Qin,Z.S.,Wang,S.,Feng,F.Y.& Chinnaiyan,A.M.(2014)Therapeutic targeting of BET bromodomain proteins in castration-resistant prostate cancer.Nature,510(7504),278-82.

Asangani,I.A.,Wilder-Romans,K.,Dommeti,V.L.,Krishnamurthy,P.M.,Apel,I.J.,Escara-Wilke,J.,Plymate,S.R.,Navone,N.M.,Wang,S.,Feng,F.Y.& Chinnaiyan,A.M.(2016)BET Bromodomain Inhibitors Enhance Efficacy and Disrupt Resistance to AR Antagonists in the Treatment of Prostate Cancer.Mol Cancer Res,14(4),324-31.

Azad,A.A.,Volik,S.V.,Wyatt,A.W.,Haegert,A.,Le Bihan,S.,Bell,R.H.,Anderson,S.A.,McConeghy,B.,Shukin,R.,Bazov,J.,Youngren,J.,Paris,P.,Thomas,G.,Small,E.J.,Wang,Y.,Gleave,M.E.,Collins,C.C.& Chi,K.N.(2015b)Androgen receptor gene aberrations in circulating cell-free DNA: biomarkers of therapeutic resistance in castration-resistant prostate cancer.Clin Cancer Res,21(10),2315-24.

Beltran,H.,Tomlins,S.,Aparicio,A.,Arora,V.,Rickman,D.,Ayala,G.,Huang,J.,True,L.,Gleave,M.E.,Soule,H.,Logothetis,C.& Rubin,M.A.(2014)Aggressive variants of castration-resistant prostate cancer.Clin Cancer Res,20(11),2846-50.

Bianchini,D.,Lorente,D.,Rodriguez-Vida,A.,Omlin,A.,Pezaro,C.,Ferraldeschi,R.,Zivi,A.,Attard,G.,Chowdhury,S.& de Bono,J.S.(2014)Antitumour activity of enzalutamide(MDV3100)in patients with metastatic castration-resistant prostate cancer(CRPC)pre-treated with docetaxel and abiraterone.Eur J Cancer,50(1),78-84.

Ceribelli,M.,Kelly,P.N.,Shaffer,A.L.,Wright,G.W.,Xiao,W.,Yang,Y.,Mathews Griner,L.A.,Guha,R.,Shinn,P.,Keller,J.M.,Liu,D.,Patel,P.R.,Ferrer,M.,Joshi,S.,Nerle,S.,Sandy,P.,Normant,E.,Thomas,C.J.& Staudt,L.M.(2014)Blockade of oncogenic IkappaB kinase activity in diffuse large B-cell lymphoma by bromodomain and extraterminal domain protein inhibitors.Proc Natl Acad Sci U S A,111(31),11365-70.

Chan,S.C.,Selth,L.A.,Li,Y.,Nyquist,M.D.,Miao,L.,Bradner,J.E.,Raj,G.V.,Tilley,W.D.& Dehm,S.M.(2015)Targeting chromatin binding regulation of constitutively active AR variants to overcome prostate cancer resistance to endocrine-based therapies.Nucleic Acids Res,43(12),5880-97.

Chou,T.C.and Talalay,P.,(1984)Quantitative analysis of dose-effect relationships: The combined effects of multiple drugs or enzyme inhibitors,Advances in Enzyme Regulation 22,27-55.

Dang,Q.,Li,L.,Xie,H.,He,D.,Chen,J.,Song,W.,Chang,L.S.,Chang,H.C.,Yeh,S.& Chang,C.(2015)Anti-androgen enzalutamide enhances prostate cancer neuroendocrine(NE)differentiation via altering the infiltrated mast cells --> androgen receptor(AR)--> miRNA32 signals.Mol Oncol,9(7),1241-51.

Gallagher,S.J.,Mijatov,B.,Gunatilake,D.,Gowrishankar,K.,Tiffen,J.,James,W.,Jin,L.,Pupo,G.,Cullinane,C.,McArthur,G.A.,Tummino,P.J.,Rizos,H.& Hersey,P.(2014)Control of NF-kB activity in human melanoma by bromodomain and extra-terminal protein inhibitor I-BET151.Pigment Cell Melanoma Res,27(6),1126-37.

Gao,L.,Schwartzman,J.,Gibbs,A.,Lisac,R.,Kleinschmidt,R.,Wilmot,B.,Bottomly,D.,Coleman,I.,Nelson,P.,McWeeney,S.& Alumkal,J.(2013)Androgen receptor promotes ligand-independent prostate cancer progression through c-Myc upregulation.PloS one,8(5),e63563.

Isikbay,M.,Otto,K.,Kregel,S.,Kach,J.,Cai,Y.,Vander Griend,D.J.,Conzen,S.D.& Szmulewitz,R.Z.(2014)Glucocorticoid receptor activity contributes to resistance to androgen-targeted therapy in prostate cancer.Horm Cancer,5(2),72-89.

Jin,R.,Sterling,J.A.,Edwards,J.R.,DeGraff,D.J.,Lee,C.,Park,S.I.& Matusik,R.J.(2013)Activation of NF-kappa B signaling promotes growth of prostate cancer cells in bone.PloS one,8(4),e60983.

Lamb,A.D.,Massie,C.E.& Neal,D.E.(2014)The transcriptional programme of the androgen receptor(AR)in prostate cancer.BJU Int,113(3),358-66.

Loriot,Y.,Bianchini,D.,Ileana,E.,Sandhu,S.,Patrikidou,A.,Pezaro,C.,Albiges,L.,Attard,G.,Fizazi,K.,De Bono,J.S.& Massard,C.(2013)Antitumour activity of abiraterone acetate against metastatic castration-resistant prostate cancer progressing after docetaxel and enzalutamide(MDV3100).Ann Oncol,24(7),1807-12.

Nadiminty,N.,Tummala,R.,Liu,C.,Yang,J.,Lou,W.,Evans,C.P.& Gao,A.C.(2013)NF-kappaB2/p52 induces resistance to enzalutamide in prostate cancer: role of androgen receptor and its variants.Mol Cancer Ther,12(8),1629-37.

Nakazawa,M.,Antonarakis,E.S.& Luo,J.(2014)Androgen receptor splice variants in the era of enzalutamide and abiraterone.Horm Cancer,5(5),265-73.

Noonan,K.L.,North,S.,Bitting,R.L.,Armstrong,A.J.,Ellard,S.L.& Chi,K.N.(2013)Clinical activity of abiraterone acetate in patients with metastatic castration-resistant prostate cancer progressing after enzalutamide.Ann Oncol,24(7),1802-7.

Schrader,A.J.,Boegemann,M.,Ohlmann,C.H.,Schnoeller,T.J.,Krabbe,L.M.,Hajili,T.,Jentzmik,F.,Stoeckle,M.,Schrader,M.,Herrmann,E.& Cronauer,M.V.(2014)Enzalutamide in castration-resistant prostate cancer patients progressing after docetaxel and abiraterone.Eur Urol,65(1),30-6.

Scher,H.I.,Halabi,S.,Tannock,I.,Morris,M.,Sternberg,C.N.,Cardussi,M.A.,Eisenberger,M.A.,Higano,C.,Bubley,G.J.,Dreicer,R.,Petrylak,D.,Kantoff,P.,Basch,E.,Kelly,W.K.,Figg,W.D.,Small,E.J.,Beer,T.M.,Wilding,G.,Martin,A.,Hussain,M.(2008)Design and End Point of Clinical Trials for Patients with Progressive Prostate Cancer and Castrate Levels of Testosterone: Recommendations of the Prostate Cancer Clinical Trials Working Group.J.Clin.Onco.26,1148-1159.

Shah,N.,Wang,P.,Wongvipat,J.,Karthaus,W.R.,Abida,W.,Armenia,J.,Rockowitz,S.,Drier,Y.,Bernstein,B.E.,Long,H.W.,Freedman,M.L.,Arora,V.K.,Zheng,D.& Sawyers,C.L.(2017)Regulation of the glucocorticoid receptor via a BET-dependent enhancer drives antiandrogen resistance in prostate cancer.Elife,6.

Welti,J.,Sharp,A.,Yuan,W.,Dolling,D.,Nava Rodrigues,D.,Figueiredo,I.,Gil,V.,Neeb,A.,Clarke,M.,Seed,G.,et al.(2018)Targeting Bromodomain and Extra-Terminal(BET)Family Proteins in Castration-Resistant Prostate Cancer(CRPC).Clinical cancer research : an official journal of the American Association for Cancer Research 24,3149-3162.

Wyatt,A.W.& Gleave,M.E.(2015)Targeting the adaptive molecular landscape of castration-resistant prostate cancer.EMBO Mol Med,7(7),878-94.

Wyce,A.,Degenhardt,Y.,Bai,Y.,Le,B.,Korenchuk,S.,Crouthame,M.C.,McHugh,C.F.,Vessella,R.,Creasy,C.L.,Tummino,P.J.& Barbash,O.(2013)Inhibition of BET bromodomain proteins as a therapeutic approach in prostate cancer.Oncotarget,4(12),2419-29.

Zeng,W.,Sun,H.,Meng,F.,Liu,Z.,Xiong,J.,Zhou,S.,Li,F.,Hu,J.,Hu,Z.& Liu,Z.(2015)Nuclear C-MYC expression level is associated with disease progression and potentially predictive of two year overall survival in prostate cancer.Int J Clin Exp Pathol,8(2),1878-88.

Zou,Z.,Huang,B.,Wu,X.,Zhang,H.,Qi,J.,Bradner,J.,Nair,S.& Chen,L.F.(2014)Brd4 maintains constitutively active NF-kappaB in cancer cells by binding to acetylated RelA.Oncogene,33(18),2395-404.
【実施例
【0100】
組織培養培地および試薬を、ThermoFisher Scientificから取得した。エンザルタミド、アパルタミド、酢酸アビラテロン、およびダロルタミドを、Selleck Chemicalsから取得した。Toronto Research Chemicalsのメトリボロン(R1881)。
実施例1:化合物Iの合成
ステップA:5-ブロモ-N-(フェニルメチレン)ピリジン-2,3-ジアミン(化合物B)の合成
【0101】
出発材料Aをメタノールおよび酢酸に溶解した。溶液を0~5℃に冷却し、ベンズアルデヒドを滴加した。反応が完了すると、プロセス水およびNaHCO溶液を滴下し、温度を低く保った(0~5℃)。固体を濾過し、1:1のメタノール/水で洗浄し、続いて乾燥して、化合物Bを94%の収率および+99%の純度でHPLCにより残した。H-NMR(DMSO-d):δ 8.75(1H)、8.04(2H)、7.93(1H)、7.65(1H)、7.50-7.60(3H)。
ステップB:N-ベンジル-5-ブロモピリジン-2,3-ジアミン(化合物C)の合成
【0102】
化合物Bをエタノールに溶解し、15~25℃の温度を維持しながらNaHBを少しずつ添加した。反応混合物を、HPLCによりモニタリングしながら反応が完了するまで8~15時間攪拌した。HCl溶液を加え、pHを6~7に調整し、続いてプロセス水を加え、温度を15~25℃に維持した。混合物を1~5時間攪拌し、濾過し、エタノール/水の混合物で洗浄した。約60℃で15~20時間乾燥した後、化合物Cを得た。H-NMR(DMSO-d):d 7.2-7.4(6 H)、6.55(1 H)、5.70-5.83(3 H)、4.30(2 H)。
ステップC:N-ベンジル-5-(3,5-ジメチル-1,2-オキサゾル-4-イル)ピリジン-2,3-ジアミン(化合物D)の合成
【0103】
化合物C、化合物G、およびリン酸カリウム三塩基三水和物を混合し、続いて1,4-ジオキサンおよびプロセス水を添加した。得られた混合物を、窒素で完全にパージした。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)を加え、化合物Cと化合物Dとの比が1%以下になるまで、混合物を90℃以上に加熱した。冷却後、反応混合物を濾過し、固体を1,4-ジオキサンで洗浄し、次いで濃縮した。プロセス水を加え、混合物を、母液中に残留する化合物Dの量が0.5%以下になるまで攪拌した。化合物Dを、濾過により単離し、1,4-ジオキサン/水およびt-ブチルメチルエーテルで順次洗浄した。湿潤ケーキを、塩化メチレンおよびシリカゲル中で混合した。攪拌後、混合物を濾過し、次いで濃縮した。混合物を冷却し、t-ブチルメチルエーテルを加えた。生成物を濾過により単離し、塩化メチレン、t-ブチルメチルエーテル、および水分レベルが0.5%以下になるまで乾燥させた。H-NMR(DMSO-d):δ 7.30-7.45(4 H)、7.20-7.25(2 H)、6.35(1 H)、5.65-5.80(3 H)、4.30-4.40(2 H)、2.15(3 H)、1.95(3 H)。
ステップD:1-ベンジル-6-(3,5-ジメチル-1,2-オキサゾル-4-イル)-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-オン(化合物E)の合成
【0104】
カルボニルジイミダゾール固体を、化合物Dおよびジメチルスルホキシドの攪拌混合物に加えた。混合物を、化合物Dと化合物Eとの比がNMT0.5%になるまで加熱した。混合物を冷却し、プロセス水を数時間にわたって添加した。得られた混合物を、周囲温度で少なくとも2時間攪拌した。生成物を濾過により単離し、プロセス水で洗浄した。ジメチルスルホキシドは、熱および真空を使用して乾燥する前に、NMT 0.5%であることが検証された。水分レベルがNMT 0.5%のときに乾燥が完了し、化合物Eが残された。H-NMR(DMSO-d):δ 11.85(1 H)、7.90(1 H)、7.20-7.45(6 H)、5.05(2 H)、3.57(3 H)、2.35(3 H)、2.15(3 H)。
ステップE: 4-[1-ベンジル-2-クロロ-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-6-イル]-3,5-ジメチル-1,2-オキサゾール(化合物F)の合成
【0105】
化合物Eおよびオキシ塩化リンを混合し、次いで、滴下して添加することができるジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)で処理した。得られた混合物を、数時間加熱し、冷却し、反応完了確認のためにサンプリングした。化合物Eと化合物Fとの比が0.5%以下である場合、反応は完了した。さもなければ、反応物をさらに加熱し、前と同様にサンプリングした。反応が完了した後、混合物を濃縮し、次いで冷却した。酢酸エチルを加え、混合物を真空下で数回濃縮した。酢酸エチル(EtOAc)を濃縮物に加え、混合物を冷却し、次いで重炭酸ナトリウム水溶液に加えた。有機相を分離し、有機層を重炭酸ナトリウム水溶液、次いで水で洗浄した。有機相を濃縮し、酢酸エチルを加え、混合物を濃縮して、水分レベルが0.2%以下であることを確認した。酢酸エチル中の混合物を、炭素で脱色した。混合物を濃縮し、n-ヘプタンを添加した。生成物を濾過により単離し、真空下で乾燥させた。乾燥は、残留水分、酢酸エチル、およびn-ヘプタンが0.5%以下のときに完了した。H-NMR(MeOH-d):δ 8.40(1 H)、7.90(1 H)、7.25-7.45(5 H)、5.65(2 H)、2.37(3 H)、2.22(3 H)。
ステップF:1-ベンジル-6-(3,5-ジメチル-1,2-オキサゾル-4-イル)-N-メチル-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-アミン(化合物I)の合成
【0106】
化合物Fを、テトラヒドロフラン(THF)中のメチルアミンと混合し、化合物Fと化合物Iとの比がHPLCによりNMT0.1%になるまで周囲温度で攪拌した。反応完了後、混合物を真空下で濃縮し、プロセス水を加え、生成物を濾過により単離した。濾過ケーキを、プロセス水で洗浄した。湿潤ケーキを塩酸に溶解し、得られた溶液を塩化メチレンで洗浄して不純物を除去した。水溶液を水酸化ナトリウム溶液で中和し、化合物Iを濾過により単離し、プロセス水で洗浄し、真空下で乾燥させた。必要に応じて、残留する塩酸を除去するために、乾燥物質をエタノールに溶解し、エタノール中の水酸化ナトリウムの溶液で処理し、その後にプロセス水を加えて生成物を沈殿させることができる。化合物Iを、濾過により単離し、プロセス水で洗浄し、乾燥させた。H-NMR(DMSO-d):δ 7.96(d、1H、J=2.0 Hz)、7.42(d、1H、J=2.0 Hz)、7.37(q、1H、J=4.2 Hz)、7.32(m、2H)、7.26(m、1H)、7.24(m、2H)、5.30(s、2H)、3.00(d、3H、4.5 Hz)、2.34(s、3H)、2.16(s、3H)。13C-NMR(DMSO-d):δ 164.8、158.4、157.7、156.0、141.1、136.4、128.6(2C)、127.5、127.4、127.2(2C)、115.8、114.2(2C)、44.5、29.3、11.2、10.3。
実施例2:化合物Iの結晶性メシル酸塩
【0107】
約5gの化合物Iをエタノール(115mL)に溶解し、エタノール(10mL、158.7mg/mL)中のメタンスルホン酸の溶液を1:1のモル比に従って添加した。混合物を、50℃で2時間振盪し、その後、半体積に濃縮し、一晩攪拌した。形成された固体(化合物Iの形態Iのメシル酸塩/共結晶)を単離し、乾燥させ、特徴解析した。
【0108】
化合物Iの形態Iのメシル酸塩/共結晶も、アセトンおよびアセトニトリルを含む他の溶媒および溶媒混合物から得られた。
【0109】
化合物Iの形態Iのメシル酸塩/共結晶は、Cu-Kα放射線管を使用する回析計で測定されるように、2-シータに関して、以下のピーク:8.4±0.2、10.6±0.2、11.7±0.2、14.5±0.2、15.3±0.2、16.9±0.2、18.2±0.2、19.0±0.2、19.9±0.2、20.5±0.2、22.6±0.2、23.8±0.2、および24.5±0.2、および27.6±0.2度を含む、XRPDによって特徴付けられた(図4)。
【0110】
化合物Iの形態Iのメシル酸塩/共結晶は、約207℃の温度で吸熱ピークを有するDSCによって特徴付けられた(図5)。
【0111】
化合物Iの形態Iのメシル酸塩/共結晶は、図6に示すサーモグラムを有するTGAにより特徴付けられ、化合物Iの形態Iが無水形態であることを確認した。
実施例3:化合物Iとエンザルタミドとの組み合わせによる、VCaP細胞生存率の相乗的阻害
【0112】
VCaP細胞(CRL-2876)を、10%の木炭除去FBSおよびペニシリン/ストレプトマイシンを含有するD-MEM培地中の96ウェルの平底プレートにウェル当たり10,000細胞の密度で播種し、37℃、5%のCOで24時間インキュベートした。培地を、0.1nMのR1881を含む10%の木炭除去FBSを含有するD-MEMに交換し、一定の比率の化合物Iまたはエンザルタミドのいずれかを単剤として、または両方の薬剤を四つの異なる濃度(2X IC50、1X IC50、0.5X IC50、0.25X IC50)で組み合わせて処理し、37℃、5%のCOで3~7日間インキュベートした。細胞を7日間インキュベートした場合、3日目または4日目に上述のように再処理した。細胞を7日間インキュベートした場合、3日目または4日目に上述のように再処理した。各濃度にトリプリケートウェルを使用し、0.1%のDMSOを含む培地のみを含むウェルを対照として使用した。細胞生存率を測定するために、アッセイ緩衝液(CellTiter Fluor Cell Viability Assay(Promega))にGF-AFC基質の1:100の希釈液を100uLずつ各ウェルに加え、37℃、5%のCOでさらに30~90分間インキュベートした。励起380~400nm/発光505nmで、蛍光光度計で蛍光を読み取り、ブランクウェルのシグナルを差し引いてバックグラウンドを補正した後、DMSO処理細胞に対する細胞力価の割合を計算した。単一薬剤に対するIC50値は、GraphPad Prismソフトウェアを使用して計算された。相乗効果の定量化は、Chou-Talalayアルゴリズム(Chou and Talalay、1984)に基づいて、CalcuSynソフトウェア(Biosoft)を使用して組み合わせ指数(CI)を計算し、実効線量(ED)50、75、および90のCI値の平均化によって行われた。図1に示されるように、化合物Iのエンザルタミドへの添加は、平均CI値が0.5のいずれかの単剤と比較して、細胞生存率の阻害を改善した。
実施例4:化合物Iとアパルタミド(ARN-509)との組み合わせによる、VCaP細胞生存率の相乗的阻害
【0113】
VCaP細胞(CRL-2876)を、10%の木炭除去FBSおよびペニシリン/ストレプトマイシンを含有するD-MEM培地中の96ウェルの平底プレートにウェル当たり10,000細胞の密度で播種し、37℃、5%のCOで24時間インキュベートした。培地を、0.1nMのR1881を含む10%の木炭除去FBSを含有するD-MEMに交換し、一定の比率の化合物Iまたはアパルタミドのいずれかを単剤として、または両方の薬剤を四つの異なる濃度(2X IC50、1X IC50、0.5X IC50、0.25X IC50)で組み合わせて処理し、37℃、5%のCOで3~7日間インキュベートした。細胞を7日間インキュベートした場合、3日目または4日目に上述のように再処理した。細胞を7日間インキュベートした場合、3日目または4日目に上述のように再処理した。各濃度にトリプリケートウェルを使用し、0.1%のDMSOを含む培地のみを含むウェルを対照として使用した。細胞生存率を測定するために、アッセイ緩衝液(CellTiter Fluor Cell Viability Assay(Promega))にGF-AFC基質の1:100の希釈液を100uLずつ各ウェルに加え、37℃、5%のCOでさらに30~90分間インキュベートした。励起380~400nm/発光505nmで、蛍光光度計で蛍光を読み取り、ブランクウェルのシグナルを差し引いてバックグラウンドを補正した後、DMSO処理細胞に対する細胞力価の割合を計算した。単一薬剤に対するIC50値は、GraphPad Prismソフトウェアを使用して計算された。相乗効果の定量化は、Chou-Talalayアルゴリズム(Chou and Talalay、1984)に基づいて、CalcuSynソフトウェア(Biosoft)を使用して組み合わせ指数(CI)を計算し、実効線量(ED)50、75、および90のCI値の平均化によって行われた。図2に示されるように、化合物Iのアパルタミドへの添加は、平均CI値が0.4のいずれかの単剤と比較して、細胞生存率の阻害を改善した。
実施例5:化合物Iと酢酸アビラテロンとの組み合わせによるLAPC-4細胞生存率の相乗的阻害
【0114】
LAPC-4細胞(CRL-13009)を、10%の木炭除去FBSおよびペニシリン/ストレプトマイシンを含有するIMDM培地中の96ウェルの平底プレートにウェル当たり5,000細胞の密度で播種し、37℃、5%のCOで24時間インキュベートした。培地を、1nMのR1881を含む10%の木炭除去FBSを含有するIMDMに交換し、一定の比率の化合物Iまたは酢酸アビラテロンのいずれかを単剤として、または両方の薬剤を四つの異なる濃度(2X IC50、1X IC50、0.5X IC50、0.25X IC50)で組み合わせて処理し、37℃、5%のCOで3~7日間インキュベートした。各濃度にトリプリケートウェルを使用し、0.1%のDMSOを含む培地のみを含むウェルを対照として使用した。細胞生存率を測定するために、アッセイ緩衝液(CellTiter Fluor Cell Viability Assay(Promega))にGF-AFC基質の1:100の希釈液を100uLずつ各ウェルに加え、37℃、5%のCOでさらに30~90分間インキュベートした。励起380~400nm/発光505nmで、蛍光光度計で蛍光を読み取り、ブランクウェルのシグナルを差し引いてバックグラウンドを補正した後、DMSO処理細胞に対する細胞力価の割合を計算した。単一薬剤に対するIC50値は、GraphPad Prismソフトウェアを使用して計算された。相乗効果の定量化は、Chou-Talalayアルゴリズム(Chou and Talalay、1984)に基づいて、CalcuSynソフトウェア(Biosoft)を使用して組み合わせ指数(CI)を計算し、実効線量(ED)50、75、および90のCI値の平均化によって行われた。図3に示されるように、化合物Iの酢酸アビラテロンへの添加は、平均CI値が0.09のいずれかの単剤と比較して、細胞生存率の阻害を改善した。
実施例6:臨床開発
【0115】
化合物Iは、CRPCを有するヒトにおいて、単剤として、およびエンザルタミドとの組み合わせで試験されている。化合物Iの薬学的に許容可能な塩またはその共結晶、特に化合物Iの形態Iのメシル酸塩/共結晶、ならびにアビラテロン、アパルタミド、およびダロルタミドなどの他の治療剤を、同様に試験することができる。
【0116】
フェーズ1b用量漸増試験(3+3デザイン)は、化合物I+エンザルタミドの薬物動態、安全性、忍容性、および標的関与を評価した。用量漸増を、最大耐量に達することなく、144mgの用量まで試験した。追加の用量レベルおよび投与スケジュールを検討して、最大治療効果をさらに定義することができる。標的関与を血液アッセイで測定し、mRNAのレベルの変化を、MYC、CCR1、IL1RN、GPR183、HEXIM1、PD-L1、IL-8、A2AR、TIM-3を含む多数のマーカーについて検出した。
フェーズ2a用量漸増試験では、化学療法未経験であり、エンザルタミドおよび/またはアビラテロンで進行した対象において、48mgおよび96mgの用量で、エンザルタミドと組み合わせた化合物Iを評価した。薬物動態、安全性、忍容性、および標的関与、PSA反応、ならびに忍容性の高い用量での放射線学的進行までの時間を使用して、推奨されるフェーズ2b用量を決定した。対象の血液および腫瘍サンプルは、分子的にプロファイルされて、併用療法に対する応答性対非応答性対象を決定し、機序の証明を提供する。
【0117】
図7および以下の表に示すように、フェーズ2a試験で評価されたデータは、エンザルタミド単独では24~28週間と予想されるのと比較して、全体的なrPFSが44.6週間となり、化合物I+エンザルタミドで治療された二次のmCRPC患者の継続したrPFSの有益性を示す。アビラテロンおよびエンザルタミドの進行者は、化合物Iとエンザルタミドとの組み合わせと同様の利益を示した。腫瘍量が多い患者と少ない患者のrPFSの延長も検出され、これには二つの部分応答が含まれ、一つはアビラテロンで以前に進行した患者、一つはエンザルタミドで以前に進行したである。二人のアビラテロンでの進行者は117週間を超えてPSA90を有し、エンザルタミドで以前に進行した7人の患者は、52週間を超える化合物I+エンザルタミドを受けた。
【表1】
【0118】
図8および以下の表に示すように、PSA反応を有する患者は、120週時点で放射線無増悪生存期間中央値にまだ到達しておらず、4週目または8週目のいずれかにPSAスパイクを有する患者は、放射線無増悪生存期間中央値が45.9週であったのに対し、そのようなPSAスパイクまたは応答を示さなかった患者は、放射線無増悪生存期間中央値が31.3週であった。PSA反応は、スクリーニング値と比較して、12週時点でPSAの50%を超える低下として定義された。PSAスパイクは、実施例7に定義される。
【表2】
【0119】
ランダム化フェーズ2b試験を使用して、より多くの集団におけるフェーズ2用量を確認するとともに、併用療法に良好に反応する亜集団を特定する。化合物Iと別の治療剤とのいくつかの組み合わせを検討することができる。
【0120】
フェーズ3試験は、CRPCを有する対象に、化合物Iまたはその薬学的に許容可能な塩もしくは共結晶、および別の治療剤(アビラテロン、エンザルタミド、ダロルタミド、またはアパルタミド)をプラセボと比較した二重盲検ランダム化試験である。主要評価項目は、全生存期間または放射線学的進行までの時間でありうる。
実施例7:化合物Iおよびエンザルタミドを用いた治療で4週間または8週間でのPSAスパイク
【0121】
アビラテロンおよび/またはエンザルタミドで以前に進行したmCRPC患者を、化合物Iおよびエンザルタミドの組み合わせで一日一回投与した。数人の患者は、化合物Iの一日一回の投与後4週間または8週間のいずれかでPSAのスパイクを有した。図9は、4週目にPSAスパイクを有する2人の患者、および8週目にPSAスパイクを有する2人の患者の例を示す。4週間でのスパイクは、治療の開始(0週目)と比較した4週間の治療でのPSAの増加と、それに続く治療の4週目から8週目までのPSAの減少として定義される。8週間でのスパイクは、4週間の治療(4週目)と比較した8週間の治療でのPSAの増加と、それに続く治療の8週目から12週目までのPSAの減少として定義される。図8に示すように、PSAスパイクを有する対象は、PSAスパイクを有しなかった患者と比較して、より長い放射線無増悪生存期間を有していた(45.9対31.3週)。
実施例8:mCRPC患者におけるETS変異/融合の分布および化合物Iとエンザルタミドとの組み合わせに対する反応
【0122】
アビラテロンおよび/またはエンザルタミドで以前に進行したmCRPC患者を、化合物Iおよびエンザルタミドの組み合わせで一日一回投与した。ETSファミリーメンバーが関与する特徴付けられた変異または融合を有する患者、またはこうした融合または変異が存在しない患者、ならびにそれらの組み合わせに対するそれらの応答が図10に示される。レスポンダーは、化合物Iの投与後24週間を超えても、臨床的または放射線学的進行が見られない場合と定義され、ノンレスポンダーは、放射線学的または臨床的進行が見られるまでの期間が24週間以内と定義される。ETS変異または融合を有する患者は、レスポンダーとノンレスポンダーの間で同様に分布していたが、ETS変異または融合を有さない患者ではレスポンダーはいなかった。
実施例9:mCRPC患者におけるETS変異/融合、PSA反応またはスパイクの分布、および化合物Iとエンザルタミドとの組み合わせに対する反応
【0123】
アビラテロンおよび/またはエンザルタミドで以前に進行したmCRPC患者を、化合物Iおよびエンザルタミドの組み合わせで一日一回投与した。ETSファミリーメンバーが関与する特徴付けられた変異もしくは融合を有する患者、またはこうした融合または変異が存在しない患者、およびそれらの組み合わせに対するそれらの応答、ならびに4週間もしくは8週間のいずれかにPSA反応もしくはスパイクが存在するかしないかが図11に示される。レスポンダーは、化合物Iの投与後24週間を超えても、臨床的または放射線学的進行が見られない場合と定義され、ノンレスポンダーは、放射線学的または臨床的進行が見られるまでの期間が24週間以内と定義される。PSA反応は、化合物Iの投与開始後12週間でのPSAレベルに50%以上の減少があることによって定義される。ETS変異または融合を有する患者の存在は、4週間または8週間のいずれかでPSA反応またはPSAスパイクを有する患者に集中していた。
実施例10:mCRPC患者における化合物Iとエンザルタミドとの組み合わせに応答した腫瘍の免疫応答およびインターフェロンガンマシグナル伝達の誘導
【0124】
エンザルタミドで以前に進行したmCRPC患者に、エンザルタミドを継続しながら、化合物Iを一日一回投与した。腫瘍生検は、スクリーニング時(エンザルタミド投与)および投与後8週間(エンザルタミドおよび化合物I投与)に取得された。二つの生検について全トランスクリプトーム(RNA-Seq)解析を行い、STARソフトウェアを使用してアライメントを行い、BaseSpace(商標)Sequence Hubのデフォルトパラメータを使用したCufflinksを用いた差次的遺伝子発現分析を2018年12月から2019年8月の間に行った。SALMONアラインメントソフトウェアおよびBioConductorを使用して、追加の独立した分析を行った。差次的発現遺伝子シグネチャーの特定は、分子シグネチャーデータベース(Subramanian A,Tamayo P,et al.(2005,PNAS 102,15545-15550);Liberzon A,et al.(2011,Bionformatics 27,1739-1740);Liberzon A,et al.(2015,Cell Systems 1,417-425)からの遺伝子シグネチャーを用いて、遺伝子セット濃縮分析(GSEA)を用いて行われた。図12Aに示すように、いくつかの免疫関連シグネチャーは、治療中の生検において有意に増加した。関連する遺伝子セットは図中に示されており、各遺伝子セットに関与する遺伝子は、MSigDBからダウンロードすることができる。図12Bでは、これらの遺伝子セットに見られる遺伝子の一部は、増加の程度を示すためにグラフ化されている。適応免疫応答、抗原提示、およびインターフェロン-ガンマシグナル伝達に関与する遺伝子セットの増加は、化合物Iとエンザルタミドの組み合わせが免疫応答表現型を誘導し、したがって、患者が化合物I、エンザルタミド、およびチェックポイント阻害剤の三つの組み合わせに応答することを示唆する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A-B】