(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】通信システム
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/32 20060101AFI20240221BHJP
H04B 1/38 20150101ALI20240221BHJP
H01P 3/12 20060101ALI20240221BHJP
H01P 1/22 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
H01Q1/32 Z
H04B1/38
H01P3/12
H01P1/22
(21)【出願番号】P 2021529715
(86)(22)【出願日】2019-07-25
(86)【国際出願番号】 EP2019070007
(87)【国際公開番号】W WO2021004643
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-07-22
(31)【優先権主張番号】102019118531.9
(32)【優先日】2019-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508237443
【氏名又は名称】コンダクティクス-バンプフラー ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウインター,ニコラス
【審査官】齊藤 晶
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102013002227(DE,A1)
【文献】特開平02-067018(JP,A)
【文献】特開2000-174656(JP,A)
【文献】特開2001-187572(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104822578(CN,A)
【文献】Bill Schweber,RF Attenuators: For When You Have Too Much of a Good Thing,インターネット<https://www.digikey.jp/ja/articles/rf-attenuators-for-when-you-have-too-much-of-a-good-thing>,2015年09月10日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/32
H04B 1/38
H01P 3/12
H01P 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(4;104)の移動経路に平行に延在し、固定局(5;105)の送受信装置(7;107A、107B)に接続される少なくとも1つのアンテナ(6;106A、106B)、ならびに前記車両(4;104)の少なくとも1つのアンテナ(3;103A、103B)が突出するスロット付き導波管(1;101)を使用する、所定の前記移動経路に沿って誘導される前記車両(4;104)と前記固定局(5;105)との間の通信用の通信システムであって、前記車両(4;104)の前記アンテナ(3;103A、103B)は、前記車両(4;104)の移動中に前記スロット付き導波管(1;101)の長手方向に移動され、調整可能な減衰を伴う減衰ユニット(11;111A、111B)が、前記車両(4;104)の前記アンテナ(3;103A、103B)と前記車両(4;104)の送受信装置(10;110)との間に接続され
、
前記減衰ユニット(11;111A;111B)が、減衰制御部(13;113)に接続され、前記減衰制御部に、前記車両(4;104)の前記送受信装置(10;110)から受信信号の電力を示す信号が供給されること、および前記減衰制御部(13;113)が、前記受信信号の前記電力の関数として、前記減衰ユニット(11;111A、111B)の前記減衰を調整すること、
または、
前記減衰ユニット(11;111A;111B)が、減衰制御部(13;113)に接続され、前記減衰制御部に、前記車両(4;104)の制御装置(9;109)から前記車両(4;104)の位置を示す信号が供給されること、および前記減衰制御部(13;113)が、前記車両(4;104)の前記位置の関数として、前記減衰ユニット(11;111A、111B)の前記減衰を調整すること、
のいずれか一方もしくは両方であることを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記減衰ユニット(11;111A、111B)が、アナログまたはデジタルインターフェース(19;28;30)を有し、それを介して、減衰が、前記インターフェース(19;28;30)において供給される制御信号によって、調整可能であることを特徴とする、請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記減衰ユニット(11;111A、111B)は、連続的に可変の減衰を伴う減衰要素(29)を有し、
前記減衰の値は
、制御信号によって前記減衰ユニット(11;111A、111B)のインターフェース(30)から導出されるアナログ信号によって調整可能であることを特徴とする、請求項1
または2に記載の通信システム。
【請求項4】
切替装置(17、18;20、21、22、23)が前記減衰ユニット(11;111A、111B)に設けられ、それによって前記車両(4;104)の前記アンテナ(3;103A、103B)は、前記車両(4;104)の前記送受信装置(10;110)に直接、または間に接続された少なくとも1つの減衰要素(14、15;24、25)を介して、選択的に接続され得ることを特徴とする、請求項1
または2に記載の通信システム。
【請求項5】
前記切替装置(17、18;20、21、22、23)は、前記車両(4;104)の減衰制御部(13;113)によって前記減衰ユニット(11;111A、111B)のインターフェース(19;28)を介して作動させることができることを特徴とする、請求項
4に記載の通信システム。
【請求項6】
異なる減衰の少なくとも2つの減衰要素(14、15)が設けられること、および前記アンテナ(3;103A、103B)は、前記車両(4;104)の前記切替装置(17、18)によって、直接的に、または前記減衰要素(14、15)のうちの1つを介して、前記車両(4;104)の前記送受信装置(10;110)に選択的に接続され得ることを特徴とする、請求項
4または
5に記載の通信システム。
【請求項7】
少なくとも2つの減衰要素(24、25)が設けられること、および前記アンテナ(3;103A、103B)は、直接的に前記切替装置(20、21、22、23)を介して、または前記減衰要素(24、25)のうちの1つを介して、またはいくつかの減衰要素(24、25)の直列回路を介して、前記車両(4;104)の前記送受信装置(10;110)に選択的に接続され得ることを特徴とする、請求項
4または
5に記載の通信システム。
【請求項8】
2つのアンテナ(103A、103B)が、前記車両(104)に所定の間隔で
進行方向に前後に配置され、車両(104)の前記送受信装置(110)が、前記アンテナ(103A、103B)のための2つの接続部を有すること、および調整可能な減衰を伴う減衰ユニット(111A、)が、前記車両(104)の各アンテナ(103A、103B)と前記車両(104)の前記送受信装置(110)との間に接続されることを特徴とする、請求項1から
7のいずれか一項に記載の通信システム。
【請求項9】
前記減衰ユニット(111A、111B)は、それらの減衰が互いに独立して調整可能であるいくつかの出力で減衰制御部(113)に接続されることを特徴とする、請求項
8に記載の通信システム。
【請求項10】
受信信号の電力を示す信号が、前記車両(104)の前記送受信装置(110)から前記減衰制御部(13;113)に供給されること、および前記減衰制御部(113)が、前記受信信号の前記電力の関数として、前記減衰ユニット(111A、111B)の前記減衰を調整することを特徴とする、請求項
9に記載の通信システム。
【請求項11】
車両(104)の
位置を示す信号が、車両(104)の
制御装置(109)により
前記減衰制御部(113)に供給されること、および前記減衰制御部(113)が、前記車両(104)の前記位置の関数として、前記減衰ユニット(111A、111B)の前記減衰を調整することを特徴とする、請求項
9または
10に記載の通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブル(序文部分)に記載の通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
そのような通信システムは、例えば、特許文献1から公知である。それは、所定の移動経路に沿って誘導される車両と固定局との間で、高帯域幅および雑音耐性を備える通信を可能にする。アンテナは、スロットを通って導波路の空洞内に突出し、車両が移動している間に導波路に沿って伝搬する電磁波を受信および/または送信することができるように、車両に配置される。固定局の対応するアンテナは、導波路の一端に配置される。
【0003】
この種の通信システムにおける受信信号の電力は、電磁波の伝搬に基づく任意の通信システムと同様に、送信アンテナと受信アンテナとの間の距離次第である。送信電力および移動経路の長さを互いに適合させて、一方では、可能な最長の距離にある送信機と受信機との間で、ノイズの影響を受けないメッセージ送信に十分な信号対ノイズ比が保証され、他方では、メッセージの送信の干渉または受信機の損傷さえも引き起こす可能性がある、受信信号の電力の過度な高さに起因する受信機の過負荷が、送信機と受信機との間が可能な最短距離にあるとき、存在しないようにしなければならない。最初に指定された条件による最大送信電力、結果として伝送経路の最長の長さは、最後に指定された条件によって制限される。
【0004】
固定局と車両の両方についてまさに述べている文献の送受信装置は、減衰器を介してそれらの対応するアンテナに接続されている。したがって、送信機から受信機への経路の信号は、常に2つの減衰器、すなわち、1つは送信機と送信アンテナとの間、1つは受信アンテナと受信機との間を通る。これらの減衰器の設計により、送信機の所与の出力電力および受信機の入力感度において、大部分がノイズのない動作のためのレベル調整を行うことができる。しかし、先に説明した伝送経路の最長の長さの制限はまた、この概念に適用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】独国特許出願公開第102013002227号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の従来技術を考慮すると、本発明の根本的な問題は、伝送経路の最長の長さを増加させることである。
この問題は、請求項1の特徴を有する通信システムによって解決される。有利な実施形態が、対応する従属請求項に記載されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、車両の移動経路に平行に延在し、車両の送受信装置(transmitting and receivingdevice)に接続された少なくとも1つのアンテナと、固定局の送受信装置に接続された少なくとも1つのアンテナが突出するスロット付き導波管(slotted waveguide)を使用する、所定の移動経路に沿って誘導される車両と固定局との間の通信用の通信システムにおいて、車両のアンテナは、車両の移動中に長手方向に移動され、調整可能な減衰を伴う減衰ユニットが、車両のアンテナと車両の送受信装置との間に接続される。これにより、送信電力の増加に起因して車両が固定局に接近する際にアンテナが受信する信号電力が過度に増加する場合に、送信機の送信電力を増加させ、減衰ユニットによって受信機が過負荷になることを防止して、通信範囲を拡大することができる。
【0008】
減衰ユニットは、好適には、アナログまたはデジタルインターフェースを有し、それを介して、その減衰は、インターフェースに適用される制御信号によって調整可能である。この場合の減衰の調整は、車両側で、したがって非中心的に行うことができ、スロット付き導波管を介して追加で制御信号を送信することを必要としない。
【0009】
減衰ユニットが、減衰制御部(attenuation control)に接続され、それに、受信信号の電力を示す信号が、送受信装置から供給されること、および減衰制御部が、受信信号の電力の関数として、減衰ユニットの減衰を調整することが特に有利である。受信機にとって、送信機と受信機との間の特定の距離を下回ることが大きすぎるため、その電力は、減衰の変動を必要とする直近の基準である。
【0010】
減衰ユニットはまた、車両の制御装置から車両の位置を示す信号が供給される減衰制御部に接続することができ、減衰制御部は、車両の位置に応じて減衰ユニットの減衰を調整することができる。車両の位置、したがって伝送経路の長さは、信号の電力が規定された方法で伝送経路の長さの増加と共に減少するため減衰を調整するための基準として受信信号の電力の代替として使用することができるか、または、例えば、妥当性試験(plausibility test)の前後関係(context)において、両方の基準を組み合わせることができる。
【0011】
減衰ユニットの好都合な実施態様は、連続的に可変の減衰を伴う減衰器に存在し、その値は、それに供給される制御信号から減衰ユニットのインターフェースによって導出されるアナログ信号によって調整可能である。この実施態様の利点は、減衰の連続的な変化により、その値を常に最適に設定できることである。
【0012】
減衰ユニットのより単純な実装形態は、切替装置が設けられ、それによって車両のアンテナは、車両の送受信装置に直接、または間に接続された少なくとも1つの減衰ユニットを介して、選択的に接続され得るという事実からなる。こうすることで、減衰の段階的な変化が可能になり、それにより減衰設定の十分な精度も対応する段階数で達成可能になる。切替装置は、車両の減衰制御部によって、減衰ユニットのインターフェースを介して、好都合に作動させることができる。
【0013】
減衰を段階的に変化させ得る1つのことは、異なる減衰の少なくとも2つの減衰器が設けられるという事実、およびアンテナは、車両の切替装置によって、直接的に、または減衰器のうちの1つを介して、車両の送受信装置に選択的に接続され得るという事実からなる。減衰を段階的に変化させ得る別のことは、少なくとも2つの減衰器が設けられるという事実、およびアンテナは、切替装置によって、直接的に、または減衰器のうちの1つを介して、またはいくつかの減衰器の直列回路を介して、または車両の送信装置または受信装置に選択的に接続され得るという事実からなる。
【0014】
2つのアンテナを、車両の進行方向に所定の間隔で前後に配置することもできる。この場合の車両の送受信装置は、アンテナ用の2つの接続部を有し、車両の各アンテナと車両の送受信装置との間には、調整可能な減衰を伴う減衰ユニットが接続される。このような構成は、長い輸送システムに対して長い伝送経路を設けることになっている通信システムにおいて有利である。この場合、スロット付き導波管はいくつかの部分からなり、それらの各々の間には、アンテナがその領域内で移動しているときに1つだけのアンテナを使用している間に通信の中断に至る隙間が設けられる。切替可能な減衰器を各々が備えた前後2つのアンテナを使用することによって、そのような間隙での通信の中断を回避することができる。
【0015】
有利にも、この場合の減衰ユニットは、それらの減衰が互いに独立して調整可能であるいくつかの出力で減衰制御部に接続される。この目的のために、受信信号の電力を示す信号が、車両の送受信装置から減衰制御部に供給され、減衰制御部が、受信信号の電力の関数として、減衰ユニットの減衰を調整するか、または、車両の位置を示す信号が車両の制御装置から減衰制御部に供給され、減衰制御部が車両の位置の関数として減衰ユニットの減衰を調整する。ここでは、例えば妥当性試験の目的で、両方の基準の組み合わせも可能である。
以下、例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】アンテナが突出しているスロット付き導波管の概略的な断面図を示す。
【
図2】本発明による通信システムの追加の構成要素のブロック図を伴う、
図1の矢印A-Aの方向におけるスロット付き導波管の概略的な縦断面を示す。
【
図3】本発明による通信システムの構成要素の、第1の実施形態の、
図2の車両側のブロック図を示す。
【
図4】本発明による通信システムの構成要素の、第2の実施形態の、
図2の車両側のブロック図を示す。
【
図5】本発明による通信システムの構成要素の、第3の実施形態の、
図2の車両側のブロック図を示す。
【
図6】本発明による通信システムの第2の実施形態の、
図2に対応する図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、所定の移動経路に沿って誘導される車両4と固定局5との間および/またはいくつかのそのような車両間の通信のための通信システムにおいて従来技術で使用されるスロット付き導波管1の概略的な断面図を示す。車両のアンテナ3は、スロット付き導波管1に沿って伝搬する電磁波を放射および受信するために、スロット2を通ってスロット付き導波管1内に突出する。車両が所定の移動経路に沿って移動すると、アンテナ3は次いで、それと共にスロット付き導波管1の長手方向に移動する。車両4は、特に規定の走行経路に沿ってレールによって誘導され得る。
【0018】
図2に示すように、固定局5のアンテナ6も、スロット付き導波管1内に突出している。これは、以下で送受信機7と呼ばれる送受信装置7に接続されている。固定局5のアンテナ6は、車両4のアンテナ3と同様に、スロット2を通ってスロット付き導波管1内に突出することもできるが、移動可能である必要がないため、そうする必要はない。送受信機7は、固定ステーション5の制御装置8に接続され、これは輸送システム全体を制御し、またいくつかの車両4を含むこともでき、および/または、例えばビデオ信号および状況通知によって、その動作を監視する。制御装置8は、制御機能を発揮することができるが、その必要はなく、専ら動作を監視する目的で機能することもできる。この目的のため、継続的な双方向のデータ通信が、固定局5の制御装置8と、車両4の制御装置9との間で発生し、それは伝送経路としてのスロット付き導波管1を介して、車両4の移動を制御する。
【0019】
また、
図2に示すように、車両4の制御装置9は、この目的のために、車両4に搭載された、以下で送受信機10と称する送受信装置10に、接続されている。この送受信機10は、減衰ユニット11を介して車両4のアンテナ3に接続されている。減衰ユニット11は、相互的であり、すなわち、送受信機10から車両4のアンテナ3へ、およびアンテナ3から送受信機10という逆方向の両方の可能な通過方向において、同じ方法で信号を減衰させる。減衰ユニット11の減衰は、制御ライン12を介して調整可能である。これには減衰制御部13が接続されており、これは送受信機10および制御装置9に接続されている。減衰ユニット11の最大の減衰は、固定局5からの車両4の可能な最小距離において、減衰ユニット11がその最大限の減衰に設定されているとき、送受信機7が固定局5に送信するときに車両4の送受信機10の入力が過負荷にならず、車両4の送受信機10が送信するときに固定局5の送受信機7の入力が過負荷にならないようにレイアウトされる。
【0020】
車両4が固定局5から遠ざかると、送受信機7および10の一定の送信電力ではアンテナ3および6で受信可能な信号のレベルが低下し、一定の距離では、2つの送受信機7および10の少なくとも一方の受信の入力における信号対雑音比が、ノイズフリーのメッセージの送信には低すぎる値に達する。これが発生する前であっても、車両4の減衰制御部13は、減衰ユニット11の減衰をより低い値に適時に調整し、それにより、2つの受信機7および10の各々によって受信可能な信号電力が、両方の送受信機7および10の対応する受信入力における信号対雑音比の結果として生じる増加がほぼノイズのないメッセージ送信を可能にする程度まで増加する。
【0021】
減衰ユニット11がない構成またはアンテナ3と送受信機10との間の信号経路に固定の減衰値の減衰器が接続された構成と比較して、車両4が固定局5と通信することができる最長距離は、減衰ユニット11の減衰を選択的に調整することによって、アンテナ3と車両4の送受信機11との間の減衰を距離の関数として変化させる本発明の能力により、大幅に拡張される。
【0022】
減衰ユニット11の減衰距離の関数として調整することは、信号のレベルが減衰を変更する必要性に関する直接的な基準を表すので、送受信機10の受信入力の信号のレベルの測定によって行われることが好ましい。この信号のレベルは、送受信機10によって減衰制御部13に継続的に報告される。減衰制御部13は、その情報を用いて、減衰ユニット11の減衰を、制御ライン12によって、対応する最適な値に調整する。
【0023】
しかし、車両4と固定局5との距離も、減衰ユニット11の減衰を変化させる基準として用いることができる。したがって、本発明による通信システムが構成要素として考えられるタイプの輸送システムでは、走行経路に沿った光学的マーキングの構成が一般的であり、それによって車両4の制御装置9は、走行経路に沿ったその位置、したがって車両側のアンテナ3から固定局5のアンテナ6までの距離も、光学センサによって決定することができる。
【0024】
この情報は、減衰ユニット11の減衰の変化に関する決定を行うために、減衰制御部13によって送受信機10のアンテナ入力に到達する信号の現在のレベルの代替として、またはそれに加えて、使用することができる。この目的のために、減衰制御部13は、車両4の制御装置9に接続されている。また、原則として、2つの情報(受信した信号のレベルまたは車両の位置)のうちの一方のみが、減衰を調整するための基準として十分である。
【0025】
送受信機7および10の送信電力は常に、通信システムの最大限要求された範囲に従って選択される。車両4が固定局5から最長距離にある場合、減衰ユニット11の減衰は、その最小限可能な値に設定される。車両4がこのような位置から固定局5の方向に移動し、その結果、送受信機7および10によって受信される信号の電力が対応して増加すると、減衰ユニット11の減衰は、制御ライン12を介して減衰制御部13によってさらに増加し、その結果、送受信機7および10の受信入力における信号の電力は、車両4と固定局5との間の可能な最小限の距離に達するまで、常に許容範囲で維持される。
【0026】
調整可能な減衰ユニット11を有する本発明による通信デバイスの車両側の部分の第1の実施形態を、
図3に示す。この減衰ユニット11は、異なるサイズの固定した減衰の2つの減衰器14および15と、非常に制限された減衰の短いライン16と、2つのスイッチ17および18と、インターフェース19とからなる。スイッチ17の場合のアンテナ3、およびスイッチ18の場合の送受信機10におけるそれぞれの1つの接続は、スイッチ17および18によって、3つの他の接続のうちの1つに、選択的に接続される。これらの2つのスイッチ17および18の各々において、第1の減衰器14は、これらの3つの他の接続のうちの第1のものに接続され、第2の減衰器15は、これらの3つの他の接続のうちの第2のものに接続され、短いライン16は、これらの3つの他の接続のうちの第3のものに接続される。
【0027】
減衰制御部13から減衰ユニット11へとつながる制御ライン12は、インターフェース19に接続され、インターフェースは、制御ライン12を介して供給されるデジタル制御信号から制御スイッチ17および18への内部制御信号を導出し、制御スイッチは、対応する制御ラインを介して接続される。制御ライン12を介して供給される制御信号によってスイッチ17および18のスイッチの位置を選択することにより、車両4の減衰制御部13は、アンテナ3を、2つの減衰器14または15のうちの一方を介して、またはライン16を介して直接、送受信機10に選択的に接続することができる。減衰器14および15の減衰が異なるため、減衰器14または15の一方がアンテナ3と送受信機10との間の信号経路に接続されている場合、減衰を2つの異なる値の間で変化させることができる。車両4と固定局5との間の距離の関数としてさらに細かい減衰のグラデーションを実現するために、3つより多い接続のスイッチを片側で使用し、異なる減衰値の2つより多い減衰器を使用することもできることが理解される。
【0028】
調整可能な減衰ユニット11を有する本発明による通信デバイスの車両側の部分の第2の実施形態を、
図4に示す。この実施形態では、2つの減衰器24および25は、アンテナ3と車両4の送受信機10との間に、個別にまたは直列に、固定した減衰で、4つのスイッチ20、21、22、および23によって、選択的に接続することができる。第1の減衰器24および第1の短いライン26は、
図2の第1の実施形態とまさに同様に、第1のスイッチ20を介してアンテナ3に接続される。同じタイプの第2の減衰器25および第2の短いライン27は、
図2の第1の実施形態とまさに同様に、第2のスイッチ23を介して送受信機10に接続される。2つのスイッチ21および22は、減衰器24および25と、ライン26および27との間に、直列に接続され、これにより、第1の減衰器24を第2の減衰器25または第2のライン27のいずれかと直列に接続することができ、あるいは第1のライン26を第2の減衰器25または第2のライン27のいずれかと直列に接続することができる。
【0029】
したがって、4つのスイッチ20、21、22、および23の位置を選択することによって、アンテナ3を送受信機10に直接接続することができる、すなわち、2つのライン26および27を介して、または第1のライン26および第2の減衰器25を介して、または第1の減衰器24および第2のライン27を介して、または両方の減衰器24および25の直列回路を介して、接続することができる。減衰器24および25が異なる減衰値を有する場合、減衰は、減衰器24および25の一方または両方が、アンテナ3と送受信機10との間の信号経路に接続されているときに、3つのステップで変更することができる。車両4と固定局5との間の距離の関数として一際細かい減衰のグラデーションを実装するために、減衰器とラインとの2つより多い組み合わせを、スイッチを介して直列に接続することもできるということが理解される。
【0030】
スイッチ20から23は、インターフェース28からの制御ラインを介して再び制御され、その入力には制御ライン12が接続され、それを介して、減衰ユニット11が車両4の減衰制御部13に接続される。
【0031】
調整可能な減衰ユニット11を有する本発明による通信デバイスの車両側の部分の第3の実施形態を、
図5に示す。この実施形態では、減衰器29には連続して可変の減衰が設けられている。この減衰器29は、ダイオードの形態で、電気的に調整可能なオーム抵抗を含み、その値はDC電圧の印加によって可変である。DC電圧は、フィルタリングによって簡単な方法で減衰される高周波メッセージ信号から分離することができる。減衰ユニット11のインターフェース30は、制御ライン12を介して減衰制御部13によって印加される信号から可変減衰器29の減衰を調整するためのDC電圧を生成する。
【0032】
可変減衰ユニット11の前述の実施形態を互いに組み合わせることも可能である。減衰器は、互いに直列および並列に接続することができ、連続的に可変の減衰を有する減衰器は、減衰の大きな変動と所望の減衰値の正確な調整の両方を実現するために、スイッチによって可変である直列および/または並列接続内で使用することができる。
【0033】
すべての実施形態における制御ライン12は、減衰制御部13が可変電圧の形態のアナログ信号を印加する単純な二線式ラインとすることができ、その大きさは設定される減衰の値に比例する。しかし、デジタル信号が伝送されるマルチワイヤ制御ライン12を使用することもでき、それにおいては、設定される減衰の値が符号化される。この場合、インターフェース19および28は、デコーダの機能を有し、インターフェース30はデジタルアナログ変換器の機能を有する。切り替え可能な減衰器に関する実施形態では、減衰を調整するためにアナログ電圧を使用することも可能であり、これは、スイッチの制御信号に対する閾値を比較することで、インターフェース19および20によって変換される。制御ライン12を実装するためのさらなる代替案は、シリアルデータ伝送用のデータラインである。この場合、インターフェース19、28、および30は、USB、イーサネット、またはRS485インターフェースを含むことができ、そのとき、減衰制御部13はまた、そのようなインターフェースを備えている。
【0034】
図3および
図4に示すスイッチは、好ましくは機械的スイッチではなく、半導体素子、特にトランジスタの形態の電子スイッチである。減衰ユニット11の異なる構成要素は、共通の基板に配置され、導電性トレースによって互いに接続することができる。この共通基板は、半導体技術によってすべての構成要素が集積されたシリコンチップであってもよい。
【0035】
本発明による通信システムの第2の実施形態を
図6に示す。
図2の実施形態とは対照的に、2つの減衰ユニット111Aおよび111Bが、互いに独立して調整可能な減衰を伴って車両104に、また2つのアンテナ103Aおよび03Bに、設けられる。減衰ユニット111Aおよび111Bは、
図3~
図5を参照して上述した第1の実施形態の減衰ユニット11と同じタイプのものである。それらは同じ減衰に定期的に調整される。車両104の送受信機110は、2つの異なるアンテナ接続部を有し、各アンテナ103Aまたは103Bは、その間に接続された減衰ユニット111Aまたは111Bを介して1つのアンテナに接続される。したがって、2つの制御ライン112Aおよび112Bは、車両104の減衰制御部113から、すなわち、各々が調整可能な減衰ユニット111Aおよび111Bに向かう。第1の実施形態と同様に、ここでの送受信機110および減衰制御部113はまた、車両104の制御装置109に接続されている。
【0036】
第2の実施形態は、長さがより長い輸送システムに対して提供され、これは、スロット付き導波管101が間隙131によって分離された少なくとも2つの異なる部分101Aおよび101Bからなることを必要とし、
図5に示される例における2つの別個の固定した送受信機107Aおよび107Bは、各々がそれ自体のアンテナ106Aおよび106Bに接続され、各々がスロット付き導波管101の異なる部分101Aまたは101Bのうちの1つに割り当てられ、固定局105の共通制御デバイス108に接続される。
【0037】
しかし、たった1つしかない固定送受信機107Aおよび単一のアンテナ106Aで十分な通信範囲が保証される場合には、間隙131がまた必要となり得るが、セクション101Aおよび101Bの長さに起因して、これらのセクションの全長における熱の変化には、公差が必要である。この場合、可撓性導体の断片によって接続されたアンテナが、スロット付き導波管101の異なる部分101Aまたは101Bの対向する端部に、間隙130で配置される。スロット付き導波管101の異なる部分101Aまたは101B間の信号の伝送は、この受動要素の配置を介して行われる。この構成では、追加の送受信機107Bおよび追加のアンテナ106Bが脱落している。
【0038】
車両104の2つのアンテナ103Aおよび103Bは、アンテナ103Aが常に、スロット付き導波管101の一方の部分101Aの中に、また他方のアンテナ103Bが他の部分101Bの中に、スロット付き導波管101の2つの部分101[101A]と101Bとの間にある間隙131で、突出するように、その進行方向において、互いに対してオフセットされている。これにより、車両104がスロット付き導波管101の2つの異なる部分101Aと101Bとの間の間隙131を走行する場合に、通信の中断が回避される。車両104のアンテナ103Aおよび103Bの各々と送受信機110の対応する接続部との間の2つの信号経路に設けられた減衰ユニット111Aおよび111Bは同一である。信号の経路は、独立して必要に応じて異なる減衰値に調整可能である。後者は、2つの異なる部分101Aと101Bとの間の間隙131が2つの固定アンテナ106Aおよび106Bから異なる距離で分離される場合に、対象となる場合がある。
【0039】
各間隙131の位置は既知であるため、車両104の制御装置109は、必要に応じて、間隙131に接近する走行中に減衰制御部113への制御信号を適時に生成することができ、これは、例えば、光学センサによって走行経路に沿って配置されたマーキングを走査することによって確立することができ、減衰制御部は、前記制御信号を受信すると、第2の信号経路の減衰を適切な値に調整する。その後、正しい時間に第2の信号経路に通信を切り替えることができる。本発明の第2の実施形態は、2つの部分101Aおよび101Bからなるスロット付き導波管101での使用に限定されず、任意の数の部分からなるスロット付き導波管で使用可能であることが理解される。