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特許7441224制動システムを動作させるための方法及び装置、制動システム
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  • 特許-制動システムを動作させるための方法及び装置、制動システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】制動システムを動作させるための方法及び装置、制動システム
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/00 20060101AFI20240221BHJP
   B60T 13/74 20060101ALI20240221BHJP
   B60T 11/26 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
B60T8/00 Z
B60T13/74 D
B60T11/26 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021533700
(86)(22)【出願日】2019-12-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-10
(86)【国際出願番号】 EP2019084895
(87)【国際公開番号】W WO2020120676
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-09-06
(31)【優先権主張番号】102018221815.3
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス カマール
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク ツィプリヒ
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン ティンシュミット
(72)【発明者】
【氏名】マークス シュマールホルツ
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0021816(US,A1)
【文献】特開2010-241171(JP,A)
【文献】特開2011-131886(JP,A)
【文献】特表2010-524754(JP,A)
【文献】米国特許第05454632(US,A)
【文献】独国特許出願公開第102015213710(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 8/00
B60T 13/74
B60T 11/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の制動システム(1)を動作させるための方法であって、
前記制動システム(1)は、変位可能に支承されたピストン(3)を備えたマスタブレーキシリンダ(2)と、前記マスタブレーキシリンダ(2)内で前記ピストンを、配設された制動回路(14、15)内の圧力を上昇及び下降させるために変位させるように、前記ピストン(3)と機械的に連結されている電気機械式制動倍力装置(9)とを有し、特にノイズ最小化のために、前記自動車の動作状態に応じて前記ピストン(3)の復帰速度が低減される、方法において、
前記自動車が圧力上昇要求について監視され、圧力上昇要求が検出された場合には、前記復帰速度の低減が解除され
前記圧力上昇要求を監視するために、安全制動システム、特にESP制御装置の出力信号が監視される、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記圧力上昇要求を監視するために、前記制動システム(1)の制御可能な液圧発生器(20、21)が活動度について監視され
前記活動度を検出するために、前記液圧発生器(20、21)の動作電流及び/又は動作電圧が監視される、
請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記液圧発生器(20、21)により圧力上昇が行われた後、予め設定可能な期間の経過後に初めて、前記復帰速度の低減の解除が撤回される、
請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記期間として、250乃至1000ms、特に500msが予め設定される、
請求項に記載の方法。
【請求項5】
自動車の制動システム(1)を動作させるための装置であって、
前記制動システム(1)は、変位可能に支承されたピストン(3)を備えたマスタブレーキシリンダ(2)と、前記マスタブレーキシリンダ(2)内で前記ピストン(3)を、配設された制動回路(14、15)内の液圧を上昇及び降下させるために変位させるように、前記ピストン(3)と機械的に連結されている電気機械式制動倍力装置(9)とを有し、前記制動倍力装置(9)を制動要求に応じて制御するように構成されている制御装置(22)が設けられている装置において、
前記制御装置(22)は、請求項1乃至のいずれか一項に記載の方法を実施するように構成されている、
ことを特徴とする装置。
【請求項6】
自動車のための制動システム(1)であって、
変位可能に支承されたピストン(3)、特にタンデムピストンを有するマスタブレーキシリンダ(2)と、
前記マスタブレーキシリンダ(2)内で前記ピストン(3)を、液圧を上昇及び下降させるために変位させるように、前記ピストン(3)と機械的に連結されている電気機械式制動倍力装置(9)と、
請求項に記載の装置と、
が設けられている制動システム(1)。
【請求項7】
制御可能な液圧発生器(20、21)が設けられており、前記液圧発生器(20、21)は、特に、安全制動システムによって制御可能である、
請求項に記載の制動システム。
【請求項8】
前記マスタブレーキシリンダ(2)は、前記ピストン(3)と協働する少なくとも1つのオリフィス(2)を有し、前記オリフィス(2)は、ブレーキ液のためのリザーバ(11)と流体技術的に接続されている、
請求項又はに記載の制動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の制動システムを動作させるための方法に関する。制動システムは、変位可能に支承されたピストンを備えたマスタブレーキシリンダと、マスタブレーキシリンダ内でピストンを、配設された制動回路内の圧力を上昇及び下降させるために変位させるように、ピストンと機械的に連結されている電気機械式制動倍力装置とを有し、ここで、特にノイズ最小化のために、自動車の動作状態に応じてピストンの復帰速度が低減又は制限される。
【0002】
さらに、本発明は、上述のように構成された制動システムを動作させるための装置及びかかる制動システムに関する。
【背景技術】
【0003】
従来技術
冒頭において述べた形式の方法及び装置並びに制動システムは、従来技術から既に知られている。自動車の電気化が着々と進んでおり、このことは、自動車の制動システムについても当てはまる。特に、もはや真空式制動倍力装置として作用するのではなく、電気機械式制動倍力装置として構成された制動倍力装置が開発され、これは、制動倍力を電気的に供給する。電気機械式制動倍力装置は、制動力アシストを運転者に対し個々に設定し得るという利点を有する。この場合、制動力アシストの動特性を、ソフトウェアパラメータを介して閉ループ制御して整合させることができる。従って、例えば運転者自身によって、例えば個々の運転者プロフィルを介して、動特性の変化を整合又は制限することができる。ただし、外的要因によっても、制動力アシストの動特性が整合されるという結果がもたらされるようにすることができる。これについては、例えば、種々の交通状況又は自動車の動作状態が要因となる。従って、例えば、制動力アシストの制限を、制動倍力装置の高められた動作温度に応じて行うことができる。また、自動車乗員のために走行快適性を改善することを目的として、ノイズ発生を阻止する又はごくわずかに抑制するために制動倍力装置の動特性を制限するということも知られている。その際に、最大出力と必要とされる制限との間において妥協を選択しなければならないことも多い。全く電気のみによって駆動可能な自動車の場合には特に、ごくわずかなノイズレベルしか生じない車両室内において、最小限度のノイズ発生を維持することがより重要となり、それというのも、電気機械式制動倍力装置のようなアクチュエータのノイズは、乗員によって比較的はっきりと知覚されるからである。そのために、現在の動作状態に応じて圧力を上昇及び降下させるために、種々の運動速度を選択することが知られている。自動車の停止状態においては、例えば、圧力上昇動特性及び圧力降下動特性に対してわずかな要求しか適用されないため、制動倍力装置の動作においては、ノイズ特性の最適化に重点が置かれる。これに対し、走行中は、圧力上昇に重点が置かれる。圧力降下及びそのために必要とされる復帰速度については、ノイズ発生と圧力降下動特性との間において妥協が行われる。よって、低減される復帰速度は、ノイズ発生の低減に有利な結果となるように選択される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の開示
請求項1の特徴を備えた本発明に係る方法が有する利点とは、特に、外部のシステムからの、特に安全制動システムからの、例えば自動車のESPシステムからの圧力上昇要求の結果、運転者が本来要求した量を超えて液圧が高められた場合においても、常に即時の圧力降下が保証されるということである。そのために、本発明によれば、自動車が圧力上昇要求について監視され、圧力上昇要求が検出された場合には、復帰速度の低減が解除されるように構成されている。自動車の特定の動作状態及び走行状況において、例えば、車線の維持などを保証するために、安全制動システムの圧力上昇要求が発生する可能性がある。その場合には、この圧力上昇要求が、運転者により要求されて制動倍力装置により供給される制動力又は制動システム内の対応する圧力要求に重畳される。例えば、制動システム内の液圧発生器により行われる能動的な圧力上昇の結果、マスタブレーキシリンダにおいては、圧力が同時に降下しながら、車輪ブレーキにおいては液圧が上昇することになる。これによって、ピストン及び/又は制動倍力装置と連結されたブレーキペダルは、ペダルの力が同等のままである場合には、簡単に下がることになる。運転者にとって減速が容易になることから、ある程度の量であれば、このように下がることは、望ましいことである。しかしながら、例えば、緊急制動がもはや不要になったために、運転者がブレーキペダルを離したとき、即ち、ブレーキペダルの操作を終了したときは、直ちに、能動的な圧力上昇を打ち切る必要がある。ただし、マスタブレーキシリンダ内におけるピストンの復帰速度が制限又は低減されていることによって、例えば、復帰速度が低減されているがゆえに、マスタブレーキシリンダのオリフィスが開放するまでにより長い時間がかかることから、圧力降下が遅れることになる。従って、このような低減を解除すれば、圧力要求が識別されたときに、以下のことが達成される。即ち、ピストンがより速く戻るように動作させられ、ひいては圧力降下がより速く行われ、特に、マスタブレーキシリンダのオリフィスがより速く連通又は開放され、それによって、車輪ブレーキにおいて又は少なくとも1つの制動回路内若しくは複数の制動回路内において、迅速な圧力降下が保証される。
【0005】
本発明の好ましい発展形態によれば、圧力上昇要求を監視するために、安全制動システム、特にESP制御装置の出力信号が監視される。安全制動システムが能動的な圧力上昇を指示した場合には、そのことが、ここでは直接的に検出されて、圧力上昇要求が存在しているときには復帰速度の制限又は低減が解除されるようにして、復帰速度を整合する際に考慮される。これによって、即時に圧力降下が行われ、特に追加制動が阻止されるということが保証される。出力信号を、安全制動システムによりこの目的のために特別に供給される出力信号とすることができ、又は、安全制動システムからいずれにせよ供給される、例えば圧力上昇を実施する液圧発生器を制御するために用いられる出力信号とすることができる。特に、安全制動システムを、ESP(ESP=electronic stability program、エレクトロニック・スタビリティ・プログラム)制御装置とすることができ、この制御装置は、これが自動車の安定化に用いられる場合には、特定の走行状況のときに自動的に制動要求又は圧力上昇要求を発生させる。
【0006】
任意選択的に、圧力上昇要求を監視するために、制動システムの制御可能な液圧発生器が活動度について監視される。安全制動システム自体を監視する代わりに、この場合には安全制動システムによって制御可能な上述の又は1つの液圧発生器が活動度について監視される。液圧発生器が、例えばESP制御装置によって、液圧を高める又は発生させるように制御されると、例えばアクチュエータ、特に電気モータが起動されて電気的に駆動される。このような活動度は、液圧発生器の簡単な監視によって検出可能であり、圧力上昇要求が検出されたときに復帰速度の低減を解除するために、本発明の趣旨に沿って評価可能である。
【0007】
特に、そのために、活動度を検出するために液圧発生器の動作電流及び/又は動作電圧が監視される。例えば、検出された動作電流及び/又は検出された動作電圧は、予め設定可能な個々の限界値と比較され、それによって、液圧発生器が液圧を高めるように制御されるのか、又は、アイドリング状態にあるのかを識別することができる。
【0008】
さらに好ましくは、液圧発生器により圧力上昇が行われた後、予め設定可能な期間の経過後に初めて、復帰速度の低減の解除が撤回されるように構成されている。これによって、復帰速度の低減が早めに解除され、そのことにより、追加制動のリスクが生じることが阻止される。
【0009】
さらに好ましくは、不所望な追加制動を確実に阻止するために、期間が250ms乃至1000ms、特に500msとなるように構成されている。
【0010】
請求項7の特徴を備えた本発明に係る装置は、制動要求に応じて制動倍力装置を制御するように構成された制御装置を有する。従って、制動倍力装置は、例えば、所望の制動力を発生させるために、自動車の使用者によって操作可能なブレーキペダルのブレーキペダル位置に応じて制御される。本発明によれば、制御装置は、特に、意図したとおりの使用において、即ち、特に、自動車又は制動システムに組み込まれた状態において、本発明に係る方法を実施するように構成されている。これによって、既に挙げた利点がもたらされる。
【0011】
請求項8の特徴を備えた本発明に係る制動システムは、本発明に係る装置が設けられていることを特徴としている。ここでは、既に挙げた利点がもたらされる。
【0012】
特に、制動システムは、制御可能な液圧発生器を有し、この液圧発生器は、特に、安全制動システム、特にESP制御装置によって制御可能である。液圧発生器は、例えば、電動液圧発生器として構成されており、この液圧発生器は、必要に応じて個々の液圧を制動倍力装置により供給される量を超えて上昇させるために、制動システム内に、特に制動システムの1つ又は複数の制動回路内に、流体技術的に組み込まれている。既述のように、特に液圧発生器及び/又は安全制動システムは、圧力上昇要求が存在するか否かについて監視される。そのために、制御装置は、好ましくは、液圧発生器及び/又は安全制動システムと信号技術的に接続されている。任意選択的に、制御装置は、液圧発生器の活動度を検出するために、液圧発生器に配設された電流センサ及び/又は電圧センサを有する。
【0013】
本発明の好ましい発展形態によれば、マスタブレーキシリンダは、ピストンと協働する少なくとも1つのオリフィスを有し、このオリフィスは、ブレーキ液のためのリザーバと流体技術的に接続されている。特に、少なくとも1つのオリフィスは、マスタブレーキシリンダとリザーバとの間の唯一の接続を成すものである。よって、オリフィスがピストンを介して連通させられて初めて、完全な圧力上昇を行うことができ、従って、ブレーキ液をマスタブレーキシリンダからリザーバへと流入させて戻すことができる。制動システム、装置又はここで説明する方法の有利な構成によって、オリフィスが特に早期に連通させられ、従って、即時の圧力上昇が保証される、ということが達成される。ここで、任意選択的に、ピストンは、タンデムピストンとして構成されており、従って、各ピストン部分に、マスタブレーキシリンダのそれぞれ少なくとも1つのオリフィスが配設されており、ここで、オリフィスは、それぞれリザーバと流体技術的に接続されている。
【0014】
次に、図面を参照しながら、本発明について詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】自動車の有利な制動システムを簡略化して示す図である。
図2】復帰速度について説明するグラフである。
図3】制動システムを動作させるための有利な方法について説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1には、ここには詳細には描かれていない自動車の有利な制動システム1が簡略化されて示されている。図1のサイズの比率は、見易くする理由により選択されているに過ぎず、現実とは一致していない。
【0017】
制動システム1は、マスタブレーキシリンダ2を有し、このシリンダ2内に、タンデムピストンとして構成されたピストン3が、軸線方向に変位可能に支承されている。タンデムピストンは、第1のピストン部分4と第2のピストン部分5とを有し、第1のピストン部分4は、マスタブレーキシリンダ2の端面に支持されている第1のばね部材6の力に抗して変位可能であり、第2のピストン部分5は、第1のピストン部分4に他方の端部において支持されているばね部材7に向かって変位可能である。ピストン3は、ピストンロッド8を介して電気機械式制動倍力装置9と連結されている。制動倍力装置9は、制御可能な電気モータ10を有し、マスタブレーキシリンダ2とピストン部分4及び5とによって形成された圧力チャンバ内において液圧を上昇させるために、必要に応じてマスタブレーキシリンダ2内へピストン3を動作させるために、電気モータ10は、ギアを介してピストンロッド8と連結されている。ここで、電気モータ10は、特に、制動倍力装置9と連結されたブレーキペダル(図1には示されていない)に応じて制御され、これにより、ブレーキペダルを用いて表された運転者の制動要求に応じて、制動システム1内に液圧が形成される。
【0018】
これに加えて、マスタブレーキシリンダ2は、リザーバ11と接続されており、リザーバ11は、2つのオリフィス12を介して、マスタブレーキシリンダ2と流体技術的に接続されている。図1に示されている実施形態の場合、オリフィス12は、ピストン部分4、5内に形成された開口部13のレベルに位置しており、これらの開口部13を介して、リザーバ11から圧力チャンバ又はマスタブレーキシリンダ2への流体技術的接続が形成されている。ピストン部分4、5がマスタブレーキシリンダ2の閉じた端面の方向に変位させられると、ピストン部分4、5によりオリフィス12が閉鎖され、リザーバ11とのさらなるブレーキ液交換が阻止される。
【0019】
両方の圧力チャンバは、制動システム1のそれぞれ1つの制動回路14、15と接続されている。両方の制動回路14、15は、それぞれ2つの車輪ブレーキ16又は17を有し、これらは、自動車のそれぞれ1つの車輪に配設されている。この場合、圧力チャンバは、複数の弁を介して車輪ブレーキ16と接続可能であり又は接続されており、それらの弁は、図面においては、簡略化されてブロック18によってまとめられている。
【0020】
さらに、制動システム1は、電気モータ19を有し、これは、各制動回路14、15のそれぞれ1つの液圧発生器20若しくは21と結合可能であり又は結合されており、これによって、個々の制動回路内において液圧が必要に応じて高められる。そのために、電気モータ19は、例えば、制御装置22と接続されており、これは、ESPシステム又は制動安全システムから発せられた圧力上昇要求に応じて、電気モータ19を制御する。
【0021】
図2には、ピストン変位xに対するピストン3の復帰速度vが簡略化されたグラフにより示されている。
【0022】
自動車又は制動システムの動作状態に応じて、復帰速度vが低減又は制限される。そのために、図2においては、第1の実線曲線Iによって、走行中のピストン3の復帰速度が示されている。この場合に前提とすることは、通常の走行中は、制動システムの操作ノイズを上回る動作ノイズが発生し、従って、制動システム1の音は自動車の乗員には聞こえないということである。比較的わずかな走行ノイズしか発生しない又は走行ノイズがもはや発生しない停止状態において、制動システム1が音響的に作用することを阻止するために、破線IIによって示されているように、復帰速度vが最大値に制限される。ただし、曲線IIに従って低減された復帰速度によって、オリフィス12がピストン3によって遅れて開放されることになる。これにより、制動回路14、15内の圧力降下が遅延させられる。自動車1の停止状態においては、このことは、もはや重要ではない。しかしながら、走行中に、安全制動システムによって、例えば制動介入操作により、走行状態の安定性を確立するために必要とされる圧力上昇要求が発せされた場合には、好ましくは高められた液圧が制動システム1内に生じ、当該液圧は、ピストン3の低減された復帰速度によって遅延させられて降下させられ、従って、期間が延長され、場合によって走行快適性を損なう追加制動が生じる可能性がある。
【0023】
従って、有利には、ここでは、制動システム1は、圧力上昇要求の存在について監視される。そのために、制御装置22は、例えば、圧力上昇要求の発生について安全制動システムを監視する。このことは、例えば、安全制動システムの出力信号又は安全制動システムの制御信号を監視することによって行われる。選択的に、制御装置22は、液圧発生器20、21の活動度を検出するために、電気モータ19の動作電流及び/又は動作電圧を監視する。圧力上昇要求に基づいてそれらがアクティブである場合には、そのことは、高められた動作電流又は動作電圧によって簡単にかつ即時に識別される。
【0024】
圧力上昇要求が存在していることを制御装置22が検出した場合には、制御装置22は、迅速な圧力降下を保証するために、復帰速度の低減又はその制限が少なくとも一時的に解除されるように、復帰速度を制御する。このようにして、液圧発生器20、21によって圧力上昇が行われているにもかかわらず、ピストン3の迅速な復帰、ひいては迅速な圧力降下が確実に保証される。
【0025】
図3に基づいて、方法について詳細に説明する。第1のステップS1において、制動システム1が動作させられる。次いで、判断ステップS2において、特に制御装置22によって、制動システム1が圧力上昇要求の存在について監視される。圧力上昇要求が存在していなければ(ノー)、続くステップS3において、復帰速度vが上述の設定(曲線II)に従って低減され、制動倍力装置9が対応してステップS4において、運転者の制動要求に応じて駆動される。
【0026】
しかし、圧力上昇要求が存在している場合には(イエス)、ステップS5において復帰速度vの低減が解除される。その際に、任意選択的に、出力曲線IIIが設定され、図2に示されているように、この出力曲線IIIによって、ピストン3又はピストン部分4、5の可能な限り速い復帰を保証するために、曲線Iとの比較においてより小さいロッド変位のときに既に、より高い運動速度が達成される。
【0027】
続く判断ステップS6において、圧力上昇要求の存在が、新たに監視される。圧力上昇要求が存在している場合には(イエス)、この監視が繰り返され又は連続的に実施される。圧力上昇要求がもはや識別されなければ(ノー)、ステップS7において、まずは予め定められた期間だけ待機し、ここでは、特に500msの期間だけ待機し、その後、ステップS3において、復帰速度が再び通常値に制限又は低減される。さらに、この方法によれば、圧力上昇要求の実施に起因して制動システム1がいずれにせよ比較的高いノイズ発生を有する瞬間においては、比較的高い復帰速度が許容される、という利点がもたらされる。このようにして、高い復帰速度及びそれにより生成されるノイズを隠蔽するために、いずれにせよ高くなったノイズレベルが活用される。
図1
図2
図3