(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】洋上装置のための係留索システム
(51)【国際特許分類】
B63B 21/20 20060101AFI20240221BHJP
F03D 13/25 20160101ALI20240221BHJP
B63B 35/00 20200101ALI20240221BHJP
B63B 21/00 20060101ALI20240221BHJP
D07B 1/16 20060101ALI20240221BHJP
G02B 6/44 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
B63B21/20 Z
F03D13/25
B63B35/00 T
B63B21/00 B
D07B1/16
G02B6/44 366
G02B6/44 396
G02B6/44 381
(21)【出願番号】P 2021546702
(86)(22)【出願日】2019-10-04
(86)【国際出願番号】 EP2019076936
(87)【国際公開番号】W WO2020164761
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】102019103305.5
(32)【優先日】2019-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】521154291
【氏名又は名称】エル・ヴェー・エー リニューワブルズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】RWE Renewables GmbH
【住所又は居所原語表記】RWE Platz 4, 45141 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ヤーン
(72)【発明者】
【氏名】ゼバスティアン オーベルメイヤー
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-80658(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0226584(US,A1)
【文献】再公表特許第2013/084818(JP,A1)
【文献】特開昭59-29305(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/154802(US,A1)
【文献】特表2015-520061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 21/00,35/00,
D07B 1/16,
F03D 13/25,
G02B 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洋上装置(450
)を水底(456)に固定するための、係留索システム
(200、300、400)であって、
- 少なくとも1つの被覆
(206)によって取り囲まれた少なくとも1本の係留索
(202)と、
- 少なくとも1本の光ファイバケーブル
(204)によって形成された少なくとも1つの状態センサ
(204)と、
を備え、
- 前記少なくとも1本の光ファイバケーブル
(204)は、少なくとも1本の光ファイバ(208)を備え、
- 前記少なくとも1本の光ファイバ(208)は、前記光ファイバケーブル
(204)の管状要素(212)内に配置され、
- 前記光ファイバケーブル
(204)は、前記管状要素(212)を取り囲む外装層(214)を備え、
- 前記外装層(214)は、繊維複合材料および/または金属から形成された外装索を複数備える、
係留索システム
(200、300、400)。
【請求項2】
前記光ファイバケーブル
(204)は、前記係留索
(202)に隣接して前記係留索システム
(200、300、400)内に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の係留索システム
(200、300、400)。
【請求項3】
- 前記係留索システム
(200、300、400)は、ほぼ円形の横断面域を有し、
- 前記少なくとも1本の光ファイバケーブル
(204)は、前記係留索システム
(200、300、400)の前記ほぼ円形の横断面域の中心に延在する、
ことを特徴とする、請求項1または2に記載の係留索システム
(200、300、400)。
【請求項4】
前記少なくとも1本の光ファイバケーブル(104、204)は、少なくとも2本の光ファイバ(208)を備えることを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載の係留索システム
(200、300、400)。
【請求項5】
粘弾性流体(210)が光ファイバケーブル
(204)の前記管状要素(212)内に配置されることを特徴とする、請求項4に記載の係留索システム
(200、300、400)。
【請求項6】
洋上装置(45
0)を水底(456)に固定するための、請求項1~5の何れか一項に記載の係留索システム
(200、300、400)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、洋上装置のための、特に洋上装置を水底(英:subsea floor,独:Unterwasserboden)に取り付けるための、係留索システムに関する。更に、本出願は、係留索監視システム、係留索監視システムの作動方法、コンピュータプログラム、および使用に関する。
【背景技術】
【0002】
所謂再生可能エネルギー源から電気エネルギーを供給するために、少なくとも1つの風力タービンを有する風力エネルギーシステムがますます使用されるようになっている。特に、風の運動エネルギーを電気エネルギーに変換するように、風力タービンが構成されている。このようなシステムにおけるエネルギー収率を上げるために、風の発生確率が高い場所に風力エネルギーシステムが設置されている。特に、洋上位置は、比較的連続した風況と高い平均風速とを通常特徴とするので、所謂洋上風力エネルギーシステムと洋上ウインドファームとがますます設置されるようになっている。
【0003】
通常、洋上風力エネルギーシステムおよび洋上ウインドファームは、複数の洋上風力タービンなどの複数の洋上装置と少なくとも1つの洋上変電所とをそれぞれ有する。洋上変電所を介して、洋上風力エネルギーシステムは、例えば、陸上変電所または別の変電所および洋上変換所にそれぞれ電気的に接続される。陸上変電所は、公共送電網に接続され得る。2つの洋上装置の間で、または洋上装置と陸上装置との間で、電力を送電するために、沖合電力ケーブルが海底ケーブルの形態で敷設されている。
【0004】
水底、特に海底、への洋上風力エネルギーシステムの係留は、基礎構造(例えば、モノパイル、トリポッド、トリパイル、またはジャケット基礎)によって行うのが一般的慣行であったが、洋上風力エネルギーシステムを、特に400m超などの大水深区域に、設けるために、浮体式洋上風力エネルギー装置などの浮体式洋上装置の設置がますます検討されている。
【0005】
上記の浮体式(しかし、稼働中は静止している)洋上風力エネルギー装置を、更には他の洋上装置も、設置するために、これら装置を係留システムによって水底に固定、特に係留、することが公知である。現在、この目的のために、相互接続された多数の鋼環から形成された係留鎖が一般に使用されている。
【0006】
このような係留鎖は相対的に重く、特に水深が増すに伴い、製造および設置コストが著しく増すので、特に大深度においては、公知の係留鎖システムの代わりに、所謂係留索システム(時には係留索とも略称)がますます使用されると想定されている。1つの係留索システムは、少なくとも1本以上の(例えば金属製)係留索と、この少なくとも1本の係留索を取り囲む被覆とを通常備える。係留鎖システムに比べ、係留索システムは、特に400m超の水深において、より容易に設置可能であり、製作もより低コストで可能である。
【0007】
ただし、このような係留索システムによって係留される洋上装置の一問題は、係留索システムの損傷、特に係留索システムの破断、すなわち所謂索切断、が洋上装置の稼働にかなりの障害をもたらすことである。特に、浮体式洋上風力エネルギー装置の場合、これは、電力生産をかなりの時間にわたって停止させ得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本出願の目的は、索切断の危険性を少なくとも低減する洋上装置用係留索システムを提供することである。
【0009】
本出願の第1の態様によると、本課題は、洋上装置のための、特に、洋上装置を水底に固定するための、請求項1に記載の係留索システムによって解決される。本係留索システムは、少なくとも1つの被覆によって取り囲まれた係留索を少なくとも1本備える。本係留索システムは、少なくとも1本の光ファイバケーブルによって形成された状態センサを少なくとも1つ備える。
【0010】
従来技術とは異なり、本出願によると、状態センサを係留索システム内に設けることによって、特に係留索システムに一体化することによって、索切断の危険性が少なくとも低減される係留索システムが提供される。係留索システムの軽微な損傷でさえも早期に難なく検出できるので、傷害を排除するための対策を早期に開始できる。索切断による洋上風力エネルギー装置の生産停止を防止、または少なくとも最小化、できる。
【0011】
特に、本出願による係留索システムは、洋上装置、特に浮体式の(しかし稼働中は好ましくは静止している)洋上装置、を固定する役割を担う。本出願による係留索システムの別の用途は、洋上装置、特に洋上装置の浮体、への少なくとも1つの更なる(水面下に位置する)構造要素の接続である。特に、浮体式洋上装置は、少なくとも1つの浮体を有し得る。浮体式洋上装置は、浮体式洋上風力エネルギー装置、特に洋上風力タービンまたは洋上変電所、であることが好ましい。
【0012】
このような洋上装置を、本出願による少なくとも1つの係留索システムを介して、特に複数の係留索システムを介して、水底(例えば、海底)に固定、特に係留、できる。これにより、特に、浮体式洋上風力エネルギー装置を大水深、例えば400m超の、区域に設置できる。本係留索システムは、より浅い水深でも使用可能であることを理解されたい。
【0013】
本出願による係留索システムとは、少なくとも1本の天然繊維および/または合成繊維、および/または少なくとも1本の鋼線および鋼索、によって少なくとも部分的に形成された細長い(特に管状の)要素であると理解されたい。特に、係留索システムは、鎖要素を有さない。
【0014】
現在、(索状)係留索システムは、金属、特に鋼、および/またはプラスチック、特に少なくとも1つの繊維複合材料、で形成された係留索を少なくとも1本備える。2本以上の係留索が設けられ得ることが好ましい。特に、2本以上の係留索が撚り合わされ得る。少なくとも1本の係留索によって、特に、海底(英:subsea floor,独:Unterseeboden)への洋上装置の機械的固定を保証できる。
【0015】
この少なくとも1本の係留索を保護するために、本係留索システムは(外部)被覆を備える。この被覆は、少なくとも1本の係留索を半径方向に取り囲んで封入する。この被覆は、プラスチック、特に少なくとも1つの繊維複合材料、によって形成可能であることが好ましい。
【0016】
軽微な損傷(例えば微細な亀裂)でさえも早期に検出し、ひいては索切断の危険性を防止するために、本出願によると、光ファイバケーブルの形態の状態センサを係留索システムに設けることが提案される。この光ファイバケーブルは、特に、線状の状態センサとして設計される。この光ファイバケーブルは、少なくとも1本の光ファイバを有し得る。特に、この光ファイバケーブルは、係留索システムの機械的状態および構造上の状態を少なくとも示す係留索システムパラメータを検出するように構成される。例えば、係留索システムの振動(または放音)を状態センサによって検出できる。その後、これらを評価することによって、係留索システムの機械的状態および構造上の状態に関する推断を引き出すことができる。
【0017】
特に、光ファイバケーブルは、係留索システムに一体化される。すなわち、(外部)被覆によって(半径方向に)取り囲まれて封入される。光ファイバケーブルは、(係留索システムの長手方向に見て)係留索システムのほぼ全体に沿って延在し得ることが好ましい。換言すると、本出願による係留索システムの1つの実施形態によると、少なくとも1本の光ファイバケーブルは、洋上装置、特に洋上装置の浮体、に固定され得る係留索システムの第1端から係留索システムの他端まで、ほぼ延在し得ることが好ましい。他端は、係留要素(例えば基礎)に接続され得る、または係留要素(例えば基礎)を備え得る。これにより、係留索システムのほぼ全体の監視が可能になる。
【0018】
少なくとも1本の光ファイバケーブルは、(光学的)係留索監視システムの状態センサとしての役割を担うことができ、好ましくは光学時間領域反射率測定法(OTDR)に基づき、作動させることができる。特に、このような光ファイバケーブルは位置依存の監視を可能にするので、微細な亀裂などのあらゆる損傷に加え、係留索システム上の微細な亀裂の位置までも突き止めることができる。
【0019】
本出願による係留索システムの別の実施形態によると、光ファイバケーブルは、(少なくとも1本の)係留索に(直接)隣接させて、係留索システム内に配置され得る。例えば、光ファイバケーブルは、少なくとも1本の係留索に密接し得る、すなわち、当該係留索に少なくとも区間ごとに接触し得る。これにより、少なくとも1本の(機械的)支持用係留索の監視を向上できる。
【0020】
係留索システムは、従来どおり、ほぼ円形の横断面域を有し得る。特に好適な一実施形態によると、少なくとも1本の光ファイバケーブルは、係留索システムのほぼ円形の横断面域の中心に延在し得る。その後、長手方向軸を形成する光ファイバケーブルの周囲に、複数の係留索が配置、特に巻回、され得る、例えば撚り合わされ得る、ことが好ましい。光ファイバケーブルを係留索システムのほぼ円形の横断面域の中心に配置することによって、特に、係留索システムの(ほぼ)対称的な構造をもたらすことができる。加えて、光ファイバケーブルの周囲に巻回された、好ましくは複数の、係留索の監視を更に向上できる。
【0021】
既に説明したように、少なくとも1本の光ファイバケーブルは、少なくとも1本の光ファイバ、好ましくは少なくとも2本の光ファイバ、を備え得る。本出願による係留索システムの好適な一実施形態によると、この少なくとも1本の光ファイバは、光ファイバケーブルの管状要素内に配置され得る。換言すると、この少なくとも1本の光ファイバは、少なくとも1つの保護層、特に保護管、によって(半径方向に)取り囲まれ得る。この少なくとも1本の光ファイバは、単一モードファイバでも多モードファイバでもよい。
【0022】
本出願による係留索システムの好適な一実施形態において、管状要素は、プラスチック材料および/またはガラス繊維材料および/または炭素繊維材料から、および/または少なくとも1本の係留索を形成する材料から、形成され得る。この少なくとも1本の光ファイバケーブルに対して少なくとも1本の係留索が加える力の低減を実現できる。
【0023】
また、特に、ガラス製の管をこの少なくとも1本の光ファイバのための管要素として使用できる。
【0024】
この管状要素をプラスチック材料である高密度ポリエチレン(HDPE)製にし得ることが特に好ましい。対応するプラスチック材料が係留索システムの諸要件を特に十分に満たすことが分かっている。
【0025】
光ファイバケーブルは、管状要素を取り囲む外装層を備え得ることが好ましい。この外装層は、複数の外装索から形成され得ることが好ましい。これら外装索は、繊維複合材料で形成され得ることが好ましい。代わりに、または加えて、これら外装索の少なくとも一部は、金属、特に鋼、で形成され得る。光ファイバケーブルの少なくとも1本の光ファイバの保護を更に向上させることができる。
【0026】
本出願による係留索システムの特に好適な一実施形態によると、粘弾性流体が光ファイバケーブルの管状要素内に配置され得る。換言すると、少なくとも1本の光ファイバは、粘弾性流体で満たされた管状要素内に延在し得る。少なくとも1本の光ファイバの保護が更に強化され得る。この粘弾性流体は、ゲル材料またはゲル状塊であり得ることが好ましい。シリコーンゲルが特に適している。
【0027】
更に、本出願による係留索システムの更なる一実施形態によると、少なくとも1つのバリア保護層、特に砂保護層(英:sand protection layer,独:Sandschutzschicht)、が少なくとも1本の係留索、特に複数の係留索、と(外部)被覆との間に配置されるようにできる。したがって、係留索は更に良好に保護される。
【0028】
他の複数の実施形態において、係留索システムは、充填材や、外装層に隣接するプラスチック層、などの更なる要素を備え得ることを理解されたい。外装層は、特に、プラスチック層の下に位置する構成要素等々を一緒に保持するために、設けられ得る。
【0029】
既に説明したように、少なくとも1本の係留索は、繊維複合材料で形成され得る。複数の係留索が少なくとも部分的に金属、特に鋼、で、および少なくとも部分的に繊維複合材料で、形成され得ることが好ましい。同じことは、複数の外装索にも該当することが好ましい。ここでは、複数の異なる繊維複合材料を使用できる。特に抵抗力のある係留索システムを提供するために、炭素繊維を繊維複合材料として使用できることが好ましい。他の複数の変形例においては、加えて、または代わりに、他の繊維積層材料、例えば、ガラス繊維および/またはアラミド繊維、またはこれらに類するもの、も使用され得ることを理解されたい。
【0030】
本出願の更なる一態様は、上記の係留索システムの状態を監視するための係留索監視システムである。この係留索監視システムは、監視対象の係留索システムの少なくとも1本の光ファイバケーブルに接続可能な監視装置を少なくとも1つ備える。この監視装置は、評価ユニットを備える。この評価ユニットは、光ファイバケーブルによって受信可能な少なくとも1つのセンサ信号を評価するように構成される。
【0031】
特に認識されているのは、光ファイバケーブルから受信可能なセンサ信号を評価することによって、監視対象の係留索の(瞬間的な)機械的および/または構造上の状態を推断できることである。例えば、センサ信号の評価に基づき、係留索システムが機械的および構造的に損なわれているかどうか、例えば、係留索に1つ以上の(微細な)亀裂があるかどうか、を検出できる。これにより、係留索システムの損傷の早期検出が可能になるので、特に、洋上装置の稼働を損なう係留索システムの損傷、特にケーブル切断、が発生する前に、係留索システムの損傷を補修するための対策を開始できる。
【0032】
この監視装置は、洋上装置上または内に設置され得ることが好ましい。評価は、特に、振幅、周波数、相、およびこれらに類するもの評価を含む。
【0033】
本出願による係留索監視システムの第1の実施形態によると、評価ユニットは、センサ信号を少なくとも1つの対照基準と比較するように構成される。例えば、この対照基準は、限界値および/または許容パラメータ範囲でもよい。例えば、少なくとも1つの限界値によって規定可能な許容パラメータ範囲をセンサ信号から得られたパラメータ値が超えると、評価は、特に、係留索システムの状態が損なわれているとの評価結果に至る。これは、例えば、検出された係留索システムの振動および/または放音が振動または音の許容範囲外である場合に該当し得る。この場合、検出された逸脱に関する対応メッセージ/情報を出力できる。
【0034】
例えば、測定された少なくとも1つのパラメータ値と限界値との間の差異に基づき、傷害および損傷の強さおよび程度を判定できることが好ましい。上で更に説明したように、係留索システム上の損傷位置も求めることができる。
【0035】
他方、センサ信号から得られた少なくとも1つのパラメータ値が許容パラメータ範囲内にある、例えば、少なくとも1つの限界値を超えていない、場合、評価は、特に、係留索システムの状態は損なわれていないとの評価結果に至る。これは、例えば、検出された係留索システムの振動が許容振動範囲内にある場合に該当し得る。
【0036】
対照基準は、例えば、固定的に設けられていてもよく、および、例えば、シミュレーションによって予め算出されていても、および/または試験によって決定されていても、よい。少なくとも1つの対照基準、すなわち特に、少なくとも1つの(位置依存の)限界値および/または少なくとも1つの(位置依存の)許容パラメータ範囲、は、各係留索システムについて個々に決定可能であることが好ましい。特に好適な一実施形態によると、少なくとも1つの対照基準は、監視対象の係留索システムの少なくとも1つの履歴センサ信号に基づくことができる。特に、認識されているのは、製造公差、係留索システムの諸寸法(特に、さまざまな長さ)、および/または係留索システムの設置場所において遭遇する環境条件、の故に、第1の係留索システムの実際の許容(位置依存)パラメータ範囲(例えば、許容振動強度)は、別の係留索システムの実際の許容(位置依存)パラメータ範囲とは異なり得ることである。
【0037】
それぞれの係留索システムの個々の特性、および/またはそれぞれの設置場所の個々の環境特性、に応じて最適化された監視を各係留索システムについて可能にするために、特に提案されるのは、設置後、最初に、各係留索システムについて複数のセンサ信号を記録することである。設置(直)後の係留索システムの構造上の状態が良好且つ適正である、すなわち損傷のない状態である、と想定し、(複数の異なる時点において、且つ特定期間(例えば、X週、X月、等々)にわたって記録された)複数のセンサ信号を記録できることが好ましい。これらセンサ信号は許容センサ信号と見做すことができるので、これらセンサ信号に基づき、少なくとも1つの対照基準を(例えば、平均化、極限値の形成、等々によって)決定できる。例えば、この対照基準を使用して、最大許容振動強度および/または音レベルを各係留索システムについて決定できる。その後、比較動作によって、簡単な、且つ同時に信頼性が高い、方法で、係留索システムを監視できる。
【0038】
記録された少なくとも1つのセンサ信号および/または少なくとも1つの対照基準は、係留索監視システムのデータメモリに記憶可能である。
【0039】
更なる一実施形態によると、監視装置は、少なくとも1つの測定信号発生装置を備え得る。この測定信号発生装置は、監視対象の係留索システムの光ファイバケーブルに光学測定信号を注入(結合)するように構成され得る。この評価ユニットは、光ファイバケーブル内の光学測定信号への応答として生成されたセンサ信号を受信する、更には特に評価する、ように構成可能である。特に、この評価は、測定信号とこの測定信号を引き起こしたセンサ信号とに基づいて行われ得る。
【0040】
既に説明したように、監視装置は、特にOTDR法により、作動され得る。例えば、測定信号発生装置は、少なくとも1つの光パルス、特にレーザパルス、を(例えば、3nsと20μsの間の、持続時間で)光ファイバケーブルに測定信号として注入できる。特に評価ユニットによって、後方散乱光をセンサ信号として経時的に測定できる。センサ信号の時間依存性を、特に、位置依存性に変換できるので、(例えば、センサ信号から得られた振動データ、音データ、等々に基づき)係留索システムの機械的および構造上の状態の空間的に分解された判定を行うことができる。
【0041】
別の実施形態によると、(瞬間)環境データ(例えば、水温、潮流方向、潮流強度、波高、等々)が評価中に考慮に入れられ得ることが好ましい。これら環境データは、係留索システムの実際の状態を変化させずに、センサ信号に影響を及ぼし得る。評価中に(瞬間)環境データ(例えば、水温、潮流方向、潮流強度、波高、等々)を考慮に入れることによって、監視の信頼性を向上させることができる。
【0042】
本出願の更なる一態様は、係留索監視システム、特に、上記の係留索監視システム、の作動方法である。本監視方法は、
- 監視対象の係留索システムの少なくとも1本の光ファイバケーブルに光学測定信号を注入させることと、
- 注入された光学測定信号への応答として当該光ファイバケーブルから受信された少なくとも1つのセンサ信号を評価することと、
を含み、
- 評価は、受信されたセンサ信号と少なくとも1つの対照基準とに基づき、監視対象の係留索システムの状態を判定することを含む。
【0043】
本出願の更に別の態様は、係留索監視システムが上記方法に従って作動されるように、プロセッサ上で実行可能な複数の命令を有するコンピュータプログラムである。特に、これら命令は、上記方法を実施するために、プロセッサによって読み出し可能な記憶媒体上に記憶され得る。
【0044】
本出願の更に別の態様は、洋上装置、特に洋上風力エネルギー装置、を水底に固定、特に係留、するための上記の係留索システムの使用である。
【0045】
係留索システム、係留索監視システム、方法、コンピュータプログラム、および使用の諸特徴は、互いに自由に組み合わせ可能である。特に、本明細書および/または従属請求項に記載の諸特徴は、独立請求項に記載の諸特徴を完全または部分的に回避することによっても、単独で、または互いに自由に組み合わされて、独立に発明に相当し得る。
【0046】
今や、本出願による係留索システム、本出願による係留索監視システム、本出願による方法、本出願によるコンピュータプログラム、および本出願による係留索システムの使用、を設計し、更に発展させるための可能性が複数存在する。この目的のために、一方では、独立特許請求項に従属する特許請求項を、他方では、図面に関連付けられた実施形態の説明を、参照されたい。図面は、以下の図を示している。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】本出願による係留索システムの
参考例の略断面図である。
【
図2】本出願による係留索システムの更なる一実施形態の略断面図である。
【
図3】本出願による係留索監視システムの一実施形態の概略図である。
【
図4】本出願による係留索監視システムの一実施形態を有する洋上装置の概略図である。
【
図5】本出願による方法の一実施形態のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
これらの図では、同様の要素のために同様の参照符号が使用されている。
【0049】
図1は、本出願による係留索システム100の
参考例の概略図、特に断面図、を示す。
【0050】
本ケースにおいて、係留索システム100は、(例えば鋼製の)係留索102と、少なくとも1本の光ファイバを備えた光ファイバケーブル104と、係留索102および光ファイバケーブル104を取り囲む(例えばプラスチック材料製の)外部被覆106とを備える。
【0051】
被覆106は、被覆106によって取り囲まれた構成要素102、104を保護する役割を担う。係留索102は、基本的に係留索システム102の設置後に発生した力を吸収する役割を担う。
【0052】
特に、係留索102の第1端は、好ましくは浮体式の(しかし、稼働中はほぼ静止している)、洋上装置に接続され、他端は水底に取り付けられた係留手段に接続(固定)される。これにより、浮体式洋上装置を海底に固定的に係留できる。
【0053】
光ファイバケーブル104は、係留索102の第1端から係留索102の他端までほぼ延在する。光ファイバケーブル104は、線状の状態センサ104として構成される。特に、光ファイバケーブル104の使用によって、係留索システム100、特に少なくとも1本の係留索102、の機械的状態および構造上の状態をそれぞれ監視できる。
【0054】
図1から更に分かるように、少なくとも1本の係留索102を特に確実に監視できるように、光ファイバケーブル104は係留索102に直接隣接して配置されることが好ましい。
【0055】
図2は、本出願による係留索システム200の更なる一実施形態の略断面図を示す。
【0056】
図示の係留索システム200は、光ファイバケーブル204と、複数の係留索202と、(例えばプラスチック材料製の)外部被覆206とを備える。
【0057】
更に、場合によっては、バリア保護層218、特に砂保護層218、が係留索204と被覆206との間に配置される。バリア保護層218は、特に、係留索202を保護する役割を担う。
【0058】
更に、係留索システム200は、場合によっては、充填材220(フィラーとも呼称)を備え得る。特に、細長い係留索システム200のほぼ円形の横断面形状をもたらすために、係留索システム200の空洞が充填材220で満たされ得る。
【0059】
図から分かるように、光ファイバケーブル204は、係留索システム200の中心に配置される。特に、光ファイバケーブル204は、係留索システム200の中心軸を形成する。本実施形態において、複数の係留索202が光ファイバケーブル204の周囲に直接配置、特に巻回、される。
【0060】
係留索204は、少なくとも部分的に金属(例えば鋼)で、および少なくとも部分的に繊維複合材料(例えば炭素繊維)で、形成され得ることが好ましい。これにより、使用される各材料のプラスの特性(高い機械的強度(鋼)、低重量(炭素繊維)、等々)を組み合わせることができる。本出願の他の複数の変形例においては、全ての係留索が同じ材料で形成され得ることを理解されたい。
【0061】
この好適な実施形態において、光ファイバケーブル204は、以下のように形成される。
【0062】
本実施形態において、光ファイバケーブル204は、複数の光ファイバ208を備える。これら光ファイバ208は、管状要素212によって取り囲まれる。管状要素212は、金属、および/または少なくとも1つのプラスチック材料、で形成され得る。特に、管状要素212は、管状要素212の内部に配設された光ファイバ208を保護する役割を担う。
【0063】
この保護を更に向上させるために、外装層214が設けられる。外装層214は、現在、2つの部分外装層で形成されており、各部分外装層は複数の外装索で形成されている。特に、外装層214は、管状要素212を直接取り囲む。第1の部分外装層は、金属(例えば鋼)製の外装索で(のみ)形成され得ることが好ましく、更なる部分外装層は、繊維複合材料(例えば炭素繊維)製の外装索で(のみ)形成され得ることが好ましい。上記のように、これにより、使用される2つの材料のプラスの特性を外装層において組み合わせることができる。
【0064】
本出願の他の複数の変形例においては、単一の部分外装層、2より多い数の部分外装層、および/または(異なる)材料製の外装索、例えば、同じ材料製の全ての外装索、も設けられ得ることを理解されたい。
【0065】
更に、管状要素212は、粘弾性流体210、例えばシリコーンゲル、で満たされる。更に、光ファイバケーブル204は、本実施形態において、特に押出成形プラスチック製の、プラスチック層216を外層として有する。プラスチック層216は、光ファイバケーブル204のその他の構成要素208~214を一緒に保持するという務めを有する。
【0066】
図3は、本出願による係留索監視システム330の一実施形態の概略図を示す。係留索監視システムは、監視装置332を備える。監視装置332は、浮体式洋上装置に、または浮体式洋上装置上に、設置され得ることが好ましい。
【0067】
監視装置332は、少なくとも部分的にハードウェア手段によって、および/または少なくとも部分的にソフトウェア手段によって、形成され得る。特に、本監視装置は、相互接続用光ファイバケーブル334を介して、係留索システム300の光ファイバケーブルに通信可能に接続される。
【0068】
係留索システム300は、
図2に示されている実施形態による係留索システムにし得ることが好ましい。接続用光ファイバケーブル334は、係留索システム300の光ファイバケーブルの少なくとも1本の延長光ファイバによって形成され得る。
【0069】
本実施形態において、監視装置332は、評価ユニット338と、測定信号発生装置344と、データメモリ336と、通信モジュール340とを備える。以下においては、
図5の助けを借りて、監視装置332の動作をより詳細に説明する。
【0070】
第1ステップ501において、好ましくは少なくとも1つの光パルス、特にレーザパルス、の形態の測定信号が測定信号発生装置344によって生成される。この測定信号は、係留索システム300の光ファイバケーブルに、特に光ファイバケーブルの少なくとも1本の光ファイバに、供給(注入)される。この測定信号への応答として、好ましくは時間依存性の散乱光の形態の、センサ信号が係留索システム300の光ファイバケーブルから、特に評価ユニット338によって、受信され得る。
【0071】
受信されたセンサ信号を、ステップ502において、特に、データメモリ336に記憶可能な少なくとも1つの対照基準に基づき、評価できる。
【0072】
例えば、評価中、時間依存性のセンサ信号は、最初に位置依存性のセンサ信号に変換され得る。その後、位置依存性の対照基準と比較され得る。この位置依存性の対照基準は、特に、位置依存性パラメータの許容範囲を規定し得る。
【0073】
例えば、センサ信号から得られたパラメータ値が少なくとも1つの限界値によって規定可能な許容パラメータ範囲を超えた場合、評価は、係留索システム300の構造上の状態が損なわれているとの査定に至る。その後、対応する通知/メッセージを通信モジュール340から通信チャネル342を介して出力できる。この場合、例えば、測定された少なくとも1つのパラメータ値と閾値との間の差異に基づき、障害の程度を判定できることが好ましい。
【0074】
他方、センサ信号から得られた少なくとも1つのパラメータ値が許容パラメータ範囲内であった場合、例えば、少なくとも1つの限界値を超えなかった場合、評価は、特に、評価対象の係留索システムの状態は損なわれていないとの査定に至る。
【0075】
少なくとも1つの対照基準は、監視対象の係留索システム300の、以前記録された少なくとも1つの、好ましくは複数の、履歴センサ信号に基づくことが特に好ましい。ステップ502における評価中、場合によっては、監視対象の係留索システム300の環境データ(例えば、水温、潮流方向、潮流強度、波高、等々)が考慮に入れられ得る。
【0076】
図4は、水458の上に配置された洋上装置450の概略図を示す。洋上装置450は、2つの係留索システム400によって、海底456に固定、特に係留、されている。
【0077】
特に、洋上装置450は、浮体452を有する浮体式洋上風力タービン450である。各係留索システム400の一端が浮体452に機械的に取り付けられている。係留索システム400は、特に、
図2に示されている実施形態により形成され得る。
【0078】
各係留索システム400の他端は、何れの場合も、アンカー454を介して海底456に固定、特に係留、される。2より多い数の係留索システム400も使用され得ることを理解されたい。
【0079】
更に、係留索監視システム430は、監視装置432を備える。各係留索システム400の光ファイバケーブルは、接続用光ファイバケーブル434を介して、監視装置432に接続されている。監視装置432は、
図3に示されている監視装置と同様に形成され得る。係留索監視システム430の動作は、
図3の係留索監視システムの動作と同様であり得るので、上記説明を参照されたい。
【0080】
洋上装置450は、場合によっては、少なくとも1つの構造要素460を有し得る。図から分かるように、少なくとも1つの構造要素460は、少なくとも1つの係留索システム400(この場合、例えば2つの係留索システム)を介して、洋上装置450の浮体452に接続される。構造要素460は、水平面において三角形を形成し得る。その(3本の)脚は管形状でもよく、複数の係留索システム400を介して、浮体452に接続され得る。係留索システム400が上記のように監視され得る。特に、このような構造要素460は、バラスト体でもよく、洋上装置450の安定性を向上させる役割を担い得ることが好ましい。特に、洋上装置450の直立浮遊姿勢が稼働中(より高い安全度で)維持され得る。