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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】回路基板及びこれを備えるモジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/13 20060101AFI20240221BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20240221BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20240221BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20240221BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20240221BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
H01L23/12 C
H01L23/12 Q
H01L25/04 C
H05K3/28 B
H05K1/02 Q
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021546908
(86)(22)【出願日】2020-09-15
(86)【国際出願番号】 JP2020034891
(87)【国際公開番号】W WO2021054316
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2023-05-18
(31)【優先権主張番号】P 2019171912
(32)【優先日】2019-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 晃正
(72)【発明者】
【氏名】小橋 聖治
(72)【発明者】
【氏名】西村 浩二
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-268824(JP,A)
【文献】国際公開第2013/094213(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/147193(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/022133(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/188273(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/13
H01L 23/12
H01L 25/07
H05K 3/28
H05K 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス基板と、前記セラミックス基板に接合されている一つ又は複数の回路板と、少なくとも一つの前記回路板の表面に半田レジストと、を備え、
前記表面に前記半田レジストが設けられている前記回路板と前記セラミックス基板との接合面に直交する断面でみたときに、前記回路板の回路端と前記半田レジストの内側端部との前記接合面に沿う距離Lが1.0mm以上であ
前記距離L と、前記半田レジストの内側端部と外側端部との間の距離L との差が、0.3~1.5mmである、回路基板。
【請求項2】
前記断面でみたときに、前記回路板は側部に前記接合面に近接するにつれて拡がる勾配部を有する、請求項1に記載の回路基板。
【請求項3】
前記断面でみたときに、前記回路板の側部の全体が前記接合面に近接するにつれて拡がるように形成されている、請求項1又は2に記載の回路基板。
【請求項4】
前記断面でみたときに、前記回路板は、前記接合面側から、側部に前記接合面に近接するにつれて拡がる勾配部と、前記接合面から離れるにつれて拡がる逆勾配部とを、この順に有する、請求項1又は2に記載の回路基板。
【請求項5】
前記回路板の前記表面は、ニッケル及びリンを含有するめっき膜で構成される、請求項1~4のいずれか一項に記載の回路基板。
【請求項6】
前記回路板は、金属部と、当該金属部と前記セラミックス基板とを接合するろう材層と、を有し、
前記ろう材層は、Ag、Cu、Sn及びTiを含み、
AgとCuの合計100質量部に対し、Snを4質量部以上含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の回路基板。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の回路基板と、半田によって前記回路板と電気的に接続されている電極と、前記回路基板の前記回路板側とは反対側に放熱部と、を備えるモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は回路基板及びこれを備えるモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
ロボット及びモーター等の産業機器の高性能化に伴い、パワーモジュールに搭載される半導体素子から発生する熱も増加の一途を辿っている。この熱を効率よく放散させるため、良好な熱伝導を有するセラミックス基板を備える回路基板が用いられている。このような回路基板には、セラミックス基板と金属板の接合時における加熱及び冷却工程、及び使用時のヒートサイクルによって熱応力が発生する。これに伴って、セラミックス基板にクラックが発生したり、金属板が剥離したりする場合がある。
【0003】
そこで、セラミックス回路基板に発生する熱応力を緩和するため、特許文献1では、セラミックス基板の一方面に設けられた金属回路の回路端部の角度を所定の範囲にすることが提案されている。特許文献2では、熱サイクルによる耐久性を向上するため、銅板の端部の形状を特定のものにすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-175525号公報
【文献】国際公開第2013/094213号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
回路基板は、用いられる用途に応じて、信頼性に十分に優れることが求められる。例えば、電車の駆動部及び電気自動車等のパワーモジュールの分野では、ヒートサイクルが過酷な条件となっても、優れた信頼性を維持することが求められる。一方で、回路基板を例えばモジュール化する際に半田を用いて回路板に電極を接続すると、回路板の表面に塗布した半田に起因してセラミックス基板に熱応力(引張応力)が生じる。この熱応力は、セラミックス基板における回路板の回路端近傍に集中し、これがヒートサイクルにおける耐久性低下の要因となっていた。
【0006】
そこで、本開示は、ヒートサイクルに対する耐久性に優れる回路基板、及びモジュールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面に係る回路基板は、セラミックス基板と、セラミックス基板に接合されている一つ又は二つ以上の回路板と、少なくとも一つの回路板の表面に半田レジストと、を備え、表面に半田レジストが設けられている回路板とセラミックス基板との接合面に直交する断面でみたときに、回路板の回路端と半田レジストの内側端部との接合面に沿う距離Lが1.0mm以上である。
【0008】
上記回路基板は、少なくとも一つの回路板の表面に半田の流動を抑制する半田レジストを備える。このため、半田が回路板の回路端の近傍に流出すること抑制できる。そして、回路板の回路端と半田レジストの内側端部との距離Lが1.0mm以上であることから、半田が回路端付近にまで流出することが抑制される。これによって、セラミックス基板において回路板の回路端付近に生じる熱応力が低減され、ヒートサイクルに対する耐久性を向上することができる。
【0009】
上記断面でみたときに、上記回路板は、側部に接合面に近接するにつれて拡がる勾配部を有していてよい。これによって、セラミックス基板において回路板の回路端付近に生じる熱応力が分散され、ヒートサイクルに対する耐久性を一層向上することができる。
【0010】
上記断面でみたときに、上記回路板の側部の全体が接合面に近接するにつれて拡がるように形成されていてよい。これによって、セラミックス基板において回路板の回路端付近に生じる熱応力が分散され、ヒートサイクルに対する耐久性を一層向上することができる。
【0011】
上記断面でみたときに、上記回路板は、上記接合面側から、側部に上記接合面に近接するにつれて拡がる勾配部と、上記接合面から離れるにつれて拡がる逆勾配部とを、この順に有していてもよい。
【0012】
上記回路板の表面は、ニッケル及びリンを含有するめっき膜で構成されていてよい。表面が上記めっき膜で構成されている回路板は、半田のぬれ性が良く半田が流動し易い。上述の回路基板は、半田レジストを備えるとともに距離Lが所定値以上であることから、回路板の表面がめっき膜で構成されていても、半田が回路端近傍まで流出することを抑制できる。したがって、ヒートサイクルに対する耐久性を向上することができる。
【0013】
上記回路基板は、金属部と、当該金属部とセラミックス基板とを接合するろう材層と、を有し、ろう材層は、Ag、Cu、Sn及びTiを含み、AgとCuの合計100質量部に対し、Snを4質量部以上含んでよい。このようなろう材層を有する接合部は、セラミックス基板と回路板とを十分強固に接合させることができる。
【0014】
本開示の一側面に係るモジュールは、上述のいずれかの回路基板と、半田によって回路板と電気的に接続されている電極と、回路基板の金属層側とは反対側に放熱部と、を備える。上記回路基板は回路板の表面に半田レジストを備え、距離Lが所定値以上であることから、半田が回路板の回路端近傍にまで流出することを抑制できる。したがって、セラミックス基板において回路板の回路端付近に生じる熱応力が低減され、モジュールのヒートサイクルに対する耐久性を向上することができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、ヒートサイクルに対する耐久性に優れる回路基板、及びモジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、一実施形態に係る回路基板の平面図である。
図2図2は、図1のII-II線断面図である。
図3図3は、一実施形態に係る回路基板における回路板の回路端近傍を示す拡大断面図である。
図4図4は、別の実施形態に係る回路基板における回路板の回路端近傍の断面を示す拡大断面図である。
図5図5は、さらに別の実施形態に係る回路基板における回路板の回路端近傍の断面を示す拡大断面図である。
図6図6は、一実施形態に係るモジュールを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、場合により図面を参照して、本開示の一実施形態について説明する。ただし、以下の実施形態は、本開示を説明するための例示であり、本開示を以下の内容に限定する趣旨ではない。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用い、場合により重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、各要素の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0018】
図1は、本実施形態の回路基板の平面図である。回路基板100は、セラミックス基板10とセラミックス基板10の表面10Aに接合されている3つの回路板20と、回路板20の表面に半田レジスト30と、を備える。半田レジスト30は、回路板20の表面において半田塗布領域32を区画するように回路板20の表面の上縁に沿って設けられている。本開示では、回路板20とセラミックス基板10との接合面における回路板20の外縁を回路端25と称する。
【0019】
図2は、図1のII-II線断面図である。回路板20は接合面20aにおいてセラミックス基板10と接合している。図2は、接合面20aに直交する面で切断したときの回路基板100の断面を示している。セラミックス基板10の表面10Aには回路板20が接合され、裏面10Bには放熱板40が接合されている。回路板20と放熱板40は同じ材質で構成されていてもよいし、異なる材質で構成されていてもよい。導電性及び放熱性を向上する観点から、例えば主成分としてCuを含有してよい。回路板20は電気信号を伝達する機能を有するのに対し、放熱板40は熱を伝達する機能を有するものであってよい。ただし、放熱板40は、電気信号を伝達する機能を有してもよい。
【0020】
回路板20及び放熱板40は、それぞれ、ろう材層24を有している。回路板20及び放熱板40は、ろう材層24によって、セラミックス基板10の表面10A及び裏面10Bに接合されている。回路板20及び放熱板40は接合するろう材層24の材質及び厚みは同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0021】
回路板20は、側部28の全体が、セラミックス基板10と回路板20との接合面20aに近接するにつれて拡がるように形成されている。放熱板40の側部48も同様にセラミックス基板10と放熱板40との接合面40aに近接するにつれて拡がるように形成されている。セラミックス基板10の厚みは例えば0.5~2mmであってよく、0.9~1.1mmであってもよい。回路板20の厚みは、例えば0.1~1mmであってよく、0.2~0.5mmであってもよい。放熱板40の厚みは、例えば0.1~1mmであってよく、0.2~0.4mmであってもよい。
【0022】
図3は、回路基板100における回路板20の回路端25近傍を示す拡大断面図である。図3図2と同様に接合面20aに直交する面で切断したときの断面を示している。回路板20は、側部28に、セラミックス基板10と回路板20との接合面20aに近接するにつれて拡がる勾配部29を有する。回路板20は、側部28の全体が接合面20aに近接するにつれて拡がるように形成されている。
【0023】
回路端25と半田レジスト30の内側端部30Aとの接合面20aに沿う距離Lは、1.0mm以上である。これによって、セラミックス基板10において回路板20の回路端25付近に生じる熱応力が低減され、ヒートサイクルに対する耐久性を向上することができる。同様の観点から、距離Lは、1.5mm以上であってよい。一方、半田塗布領域32の十分なサイズを確保する観点から、距離Lは5mm以下であってよく、4mm以下であってもよい。
【0024】
半田塗布領域32の十分なサイズを確保しつつ、半田塗布領域32の外部に半田が流出することを十分に抑制する観点から、半田レジスト30の幅、すなわち、半田レジスト30の内側端部30Aと外側端部30Bとの間の距離Lは、0.5mm~3mmであってよく、1.0~2.0mmであってもよい。距離Lと距離Lの差(L-L)は、0.3~1.5mmであってよい。これによって、熱応力の低減作用を十分に維持しつつ、半田塗布領域32から半田が流出することを十分に抑制することができる。
【0025】
半田レジスト30は、通常の材料を用いて形成することが可能であり、例えば、エポキシ樹脂等の樹脂成分と無機粒子とを含有する。回路板20は、内部に金属部27と、金属部27を覆うめっき膜22と、セラミックス基板10側にろう材層24とを有する。金属部27は、導電性及び熱伝導性を向上する観点から、例えば銅、アルミニウム又はこれらの合金で構成されていてよい。
【0026】
めっき膜22は、半田のぬれ性を向上する観点から、無電解Niめっき膜であってよい。無電解Niめっき膜は、ニッケルを1~12質量%含有するニッケル-リンめっき膜であってよい。このような無電解Niめっき膜を備えることによって、ヒートサイクルに対する耐久性に優れつつ、半田のぬれ性にも優れる回路基板100とすることができる。
【0027】
セラミックス基板10は、窒化アルミニウムを含有するものであってよい。セラミックス基板10と回路板20とを接合する機能を有するろう材層24は、ろう材を加熱して生成されるものであってよい。ろう材層24は、例えば、Ag、Cu、Sn及びTiを含む。Tiは窒化アルミニウムと反応することから、Tiを含有することによって、窒化アルミニウムを含有するセラミックス基板10と回路板20との接合強度を十分に高くすることができる。上記反応を促進する観点から、Tiは水素化物(TiH)として含まれていてよい。AgとCuの合計100質量に対するTiHの含有量は例えば1~8質量部であってよい。また、セラミックス基板10と回路板20との間に発生する熱応力を緩和する観点から、AgとCuの合計100質量に対するZrの含有量は2質量部未満であってよく、1質量部未満であってもよい。
【0028】
ろう材層24は、Snを含有することによって低い温度でセラミックス基板10と回路板20とを接合することができる。このため、AgとCuの合計100質量に対するSnの含有量は4質量部以上であってよく、8質量部以上であってもよい。なお、Snが多すぎると、TiとSiの化合物が生じ、接合不良部が部分的に発生する場合がある。このため、AgとCuの合計100質量に対するSnの含有量は30質量部以下であってよく、20質量部以下であってもよい。ろう材層24の厚みは、3~20μmであってよく、5~15μmであってよい。めっき膜22の厚みは1~8μmであってよく、2~6μmであってもよい。
【0029】
図4は別の実施形態に係る回路基板における回路板の回路端近傍の断面を示す拡大断面図である。図4は、図3と同様に接合面20aに直交する断面を示している。図4の回路板21は、図3の回路板20と同様に、側部21Aに接合面20aに近接するにつれて拡がる勾配部29を有する。回路板21も、側部28の全体が接合面20aに近接するにつれて拡がるように形成されている。
【0030】
本実施形態に係る回路基板は、このような形状を有する回路板21が、回路板20の代わりにセラミックス基板10に接合される。このような回路基板では、セラミックス基板10において回路板21の回路端25付近に生じる熱応力が分散され、回路基板のヒートサイクルに対する耐久性を一層向上することができる。回路板21の側部21Aの輪郭は、図4に示すように変曲点を2つ有する曲線状であってよく、変曲点を3つ以上有する曲線状であってよく、階段状であってもよい。回路板21は、図3の回路板20と同様にめっき膜22、金属部27及びろう材層24を有する。
【0031】
図5はさらに別の実施形態に係る回路基板における回路板の回路端近傍の断面を示す拡大断面図である。図5も、図3と同様に接合面20aに直交する断面を示している。図5の回路板23の側部23Aは、回路板23の上端及び下端の間に、上端及び下端よりも、回路板23の内部側に窪んでいる窪み部70が形成されている。回路板23は、側部23Aに、接合面20a側から、セラミックス基板10と回路板23との接合面20aに近接するにつれて拡がる勾配部29、及び、接合面20aから離れるにつれて拡がる逆勾配部29Aを、この順に有する。なお、図3及び図4の回路板20及び回路板21は、逆勾配部を有しない。
【0032】
本実施形態に係る回路基板は、このような形状を有する回路板23が、回路板20の代わりにセラミックス基板10に接合される。このような回路基板であっても、距離Lが上述の範囲にあることによって、セラミックス基板10において回路板23の回路端25付近に生じる熱応力が低減され、回路基板のヒートサイクルに対する耐久性を向上することができる。回路板23は、図3の回路板20と同様にめっき膜22、金属部27及びろう材層24を有する。
【0033】
本開示の回路基板の製造方法の一例を説明する。まず、無機化合物の粉末、バインダ樹脂、焼結助剤、可塑剤、分散剤、及び溶媒等を含むスラリーを成形してグリーンシートを得る工程を行う。
【0034】
無機化合物の例としては、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ケイ素(Si)、炭化ケイ素、及び酸化アルミニウム等が挙げられる。焼結助剤としては、希土類金属、アルカリ土類金属、金属酸化物、フッ化物、塩化物、硝酸塩、及び硫酸塩等が挙げられる。これらは一種のみ用いてもよいし二種以上を併用してもよい。焼結助剤を用いることにより、無機化合物粉末の焼結を促進させることができる。バインダ樹脂の例としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、及び(メタ)アクリル系樹脂等が挙げられる。
【0035】
可塑剤の例としては、精製グリセリン、グリセリントリオレート、ジエチレングリコール、ジ-n-ブチルフタレート等のフタル酸系可塑剤、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル等の二塩基酸系可塑剤等が挙げられる。分散剤の例としては、ポリ(メタ)アクリル酸塩、及び(メタ)アクリル酸-マレイン酸塩コポリマーが挙げられる。溶媒としては、エタノール及びトルエン等の有機溶媒が挙げられる。
【0036】
スラリーの成形方法の例としては、ドクターブレード法及び押出成形法が挙げられる。次に、成形して得られたグリーンシートを脱脂して焼結する工程を行う。脱脂は、例えば、400~800℃で、0.5~20時間加熱して行ってよい。これによって、無機化合物の酸化及び劣化を抑制しつつ、有機物(炭素)の残留量を低減することができる。焼結は、窒素、アルゴン、アンモニア又は水素等の非酸化性ガス雰囲気下、1700~1900℃に加熱して行う。これによって、セラミックス基板10を得ることができる。必要に応じてセラミックス基板10はレーザー加工によって端部を切断し、形状を整えてもよい。
【0037】
上述の脱脂及び焼結は、グリーンシートを複数積層した状態で行ってもよい。積層して脱脂及び焼結を行う場合、焼成後の基材の分離を円滑にするため、グリーンシート間に離型剤による離型層を設けてよい。離型剤としては、例えば、窒化ホウ素(BN)を用いることができる。離型層は、例えば、窒化ホウ素の粉末のスラリーを、スプレー、ブラシ、ロールコート、又はスクリーン印刷等の方法により塗布して形成してよい。積層するグリーンシートの枚数は、セラミックス基板の量産を効率的に行いつつ、脱脂を十分に進行させる観点から、例えば5~100枚であってよく、10~70枚であってもよい。
【0038】
このようにして、図1及び図2に示すようなセラミックス基板10が得られる。続いて、セラミックス基板10と、一対の金属基板を用いて複合基板を得る工程を行う。具体的には、まず、ろう材を介して、セラミックス基板10の表面10A及び裏面10Bに一対の金属基板をそれぞれ貼り合わせる。金属基板は、セラミックス基板10と同様の平板形状であってよい。ろう材は、セラミックス基板10の表面10A及び裏面10Bに、ロールコーター法、スクリーン印刷法、又は転写法等の方法によって塗布する。ろう材は、例えば、Ag、Cu、Sn及びTiH等の金属及び金属化合物成分、有機溶媒、及びバインダ等を含有する。ろう材の粘度は、例えば5~20Pa・sであってよい。ろう材における有機溶媒の含有量は、例えば、5~25質量%、バインダ量の含有量は、例えば、2~15質量%であってよい。
【0039】
ろう材が塗布されたセラミックス基板10の表面10A及び裏面10Bに、金属基板を貼り合わせた後、加熱炉で加熱してセラミックス基板10と金属基板とを十分に接合させて複合基板を得る。加熱温度は例えば700~900℃であってよい。炉内の雰囲気は窒素等の不活性ガスであってよく、大気圧未満の減圧下で行ってもよいし、真空下で行ってもよい。加熱炉は、複数の接合体を連続的に製造する連続式のものであってもよいし、一つ又は複数の接合体をバッチ式で製造するものであってもよい。加熱は、接合体を積層方向に押圧しながら行ってもよい。
【0040】
次に、複合基板における金属基板の一部を除去して回路板20を形成する工程を行う。この工程は、例えば、フォトリソグラフィによって行ってよい。具体的には、まず、複合基板の表面に感光性を有するレジストを印刷する。そして、露光装置を用いて、所定形状を有するレジストパターンを形成する。レジストはネガ型であってもよいしポジ型であってもよい。未硬化のレジストは、例えば洗浄によって除去する。
【0041】
レジストパターンを形成した後、エッチングによって、金属基板のうちレジストパターンに覆われていない部分を除去する。これによって、当該部分にはセラミックス基板10の表面10A及び裏面10Bの一部が露出する。その後、レジストパターンを除去すれば、回路基板100が得られる。以上、回路基板100の製造方法の一例を説明したが、これに限定されるものではない。なお、エッチングの条件又はエッチングの回数を変えることによって、回路板20の側部28の形状を調整することができる。
【0042】
図6は、一実施形態に係るモジュールを模式的に示す断面図である。図6のモジュール200は、ヒートサイクルに対する耐久性に優れることから、例えば大電流を扱うパワーモジュールであってよい。モジュール200は、回路基板100と、回路基板100の放熱板40側に半田接続部52を介して放熱部80が接合されている。放熱部80は、回路板20及び放熱板40よりも高い熱伝導率を有する。このような放熱部80を備えることによって、電極60に接続される半導体素子等を効率よく冷却することができる。放熱部はアルミニウム等の金属とSiC等のセラミックスとの複合材料で構成されていてよい。半田接続部52は、Pbフリー半田であってよく、SnとPbの共晶半田であってもよい。
【0043】
モジュール200における回路基板100の回路板20には、半田50によってL字型の電極60が電気的に接続されている。電極60は図示しない半導体素子に接続されていてもよい。すなわち、モジュール200は半導体モジュールであってよい。半田50としては、Pbフリー半田であってよく、SnとPbの共晶半田であってもよい。半田50は、半田塗布領域32内に設けられている。回路基板100の距離Lが所定値以上であることから、半田50が回路板20の回路端25近傍に形成されることを抑制できる。したがって、セラミックス基板10において回路板20の回路端25付近に生じる熱応力が低減され、モジュール200のヒートサイクルに対する耐久性を向上することができる。
【0044】
以上、本開示の実施形態を説明したが、本開示は上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、モジュール200における回路基板は回路板20ではなく、図4の回路板21、図5の回路板23又はこれらとは異なる形状の回路板を備えるものであってよい。また、セラミックス基板10の裏面10Bに設けられる放熱板40は、回路板20、回路板21、又は回路板23と同様の形状を有していてもよい。また、回路基板における全ての回路板における距離Lが上述の範囲である必要はなく、少なくとも一つの回路板における距離Lが上述の範囲であればよい。
【実施例
【0045】
実施例及び比較例を参照して本開示の内容をより詳細に説明するが、本開示は下記の実施例に限定されるものではない。
【0046】
[回路基板の作製]
(実施例1-1)
図2に示すような断面構造を有する回路基板を以下の手順で作製した。厚さ1mmの窒化アルミニウム製のセラミックス基板、厚さ0.3mmの銅板A、及び厚さ0.25mmの銅板Bを準備した。セラミックス基板の両面の所定箇所にろう材aを塗布した。ろう材aの組成は、表1に示すとおりであった。なお、表1中の数字は、AgとCuの合計を100質量部としたときの各成分の質量部を示している。
【0047】
ろう材aを介して、銅板A、セラミックス基板及び銅板Bをこの順に貼り合わせ、真空中、800℃で1時間加熱した。このようにしてセラミックス基板に銅板A及び銅板Bを接合して複合基板を得た。露光装置を用いて銅板Aの上に所定形状を有するレジストパターンを形成した後、塩化銅水溶液、次いで過酸化水素と酸性フッ化アンモニウムの混合液を用いてエッチングを行い、レジストパターンに覆われていない部分を除去した。その後、アルカリ剥離液でレジストパターンを除去した。
【0048】
その後、塩化銅水溶液にて2回目のエッチングを行って、セラミックス基板上において回路板の構成部分となる金属部の形状を整えた。その後、Ni-Pめっき液(リン濃度:8~12質量%)を用いて無電解メッキ処理を行い、セラミックス基板上にめっき膜を有する回路板を形成した。この回路板は、図4に示すように、側部の全体が接合面に近接するにつれて拡がるように形成されていた。
【0049】
回路板の上面の所定位置に半田レジストを塗布して乾燥させ、図3に示すような断面構造を有する回路基板を得た。図3における距離L及び距離Lは、表2に示すとおりとした。
【0050】
(実施例1-2)
ろう材aの代わりに表1のろう材bを用いたこと以外は、実施例1-1と同様にして回路基板を作製した。
【0051】
(実施例1-3)
塩化銅水溶液を用いる2回目のエッチングを行わなかったこと以外は、実施例1-1と同様にして回路基板を作製した。回路板の側部には、図5に示すように、回路板23の上端及び下端の間に、上端及び下端よりも、回路板23の内部側に窪んでいる窪み部が形成されていた。すなわち、回路板は、接合面側から、側部に接合面に近接するにつれて拡がる勾配部と、接合面から離れるにつれて拡がる逆勾配部とを、この順に有していた。
【0052】
(実施例2-1)
半田レジストの位置を調整し、距離L及び距離Lを、表2に示すとおりにしたこと以外は、実施例1-1と同様にして回路基板を作製した。
【0053】
(実施例2-2)
半田レジストの位置を調整し、距離L及び距離Lを、表2に示すとおりにしたこと以外は、実施例1-2と同様にして回路基板を作製した。
【0054】
(実施例2-3)
半田レジストの位置を調整し、距離L及び距離Lを、表2に示すとおりにしたこと以外は、実施例1-3と同様にして回路基板を作製した。
【0055】
(比較例1-1)
半田レジストの位置を調整し、距離L及び距離Lを、表2に示すとおりにしたこと以外は、実施例1-1と同様にして回路基板を作製した。
【0056】
(比較例1-2)
半田レジストの位置を調整し、距離L及び距離Lを、表2に示すとおりにしたこと以外は、実施例1-2と同様にして回路基板を作製した。
【0057】
(比較例1-3)
半田レジストの位置を調整し、距離L及び距離Lを、表2に示すとおりにしたこと以外は、実施例1-3と同様にして回路基板を作製した。
【0058】
(比較例2-1)
距離L及び距離Lを、表2に示すとおりにしたこと以外は、実施例1-1と同様にして回路基板を作製した。すなわち、半田レジストを設けなかったこと以外は、実施例1-1と同様にして回路基板を作製した。
【0059】
(比較例2-2)
距離L及び距離Lを、表2に示すとおりにしたこと以外は、実施例1-2と同様にして回路基板を作製した。すなわち、半田レジストを設けなかったこと以外は、実施例1-2と同様にして回路基板を作製した。
【0060】
(比較例2-3)
距離L及び距離Lを、表2に示すとおりにしたこと以外は、実施例1-3と同様にして回路基板を作製した。すなわち、半田レジストを設けなかったこと以外は、実施例1-3と同様にして回路基板を作製した。
【0061】
【表1】
【0062】
[ヒートサイクルに対する耐久性の評価]
L型形状を有する銅電極を準備した。共晶半田を用いて、各実施例及び各比較例の回路基板の回路板に銅電極を接続した。このとき、共晶半田は回路板の半田塗布領域の外側にはみ出ないようにした。比較例2-1~2-3では、共晶半田が回路板の側部にまではみ出ないようにした。
【0063】
銅電極が半田で接続された各回路基板のヒートサイクルに対する耐久性を以下の手順で評価した。各回路基板を、-40℃で30分間冷却した後、125℃で30分間加熱する一連の工程を1サイクルとして、当該サイクルを100回繰り返した。その後、セラミックス基板以外をエッチング処理にて除去し、セラミックス基板の表面のうち回路板の回路端付近を光学顕微鏡(倍率:20倍)で観察して、クラックの有無を評価した。各実施例及び各比較例について、2個ずつ回路基板を作製して評価を行った。クラックが発生していた回路基板の個数を表2の「条件1」の欄に示す。
【0064】
上記サイクルを200回繰り返して行った後、上述の手順と同様にしてクラックの有無を評価した。クラックが発生していた回路基板の個数を表2の「条件2」の欄に示す。
【0065】
【表2】
【0066】
表2には、ろう材の種類及び回路板の側部の形状も合わせて示した。比較例2-1~2-3では、耐久性の評価においていずれの場合もクラックが発生していた。比較例1-1~1-3では、ろう材の種類及び側部の形状に応じてクラックの発生数が変動した。一方、実施例1-1~1-3及び実施2-1~2-3では、いずれの場合もクラックが発生しなかった。すなわち、表2に示すとおり、回路板の回路端と半田レジストの内側端部との接合面に沿う距離Lを1.0mm以上にすることによって、ヒートサイクルに対する耐久性が向上することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本開示によれば、ヒートサイクルに対する耐久性に優れる回路基板、及びモジュールが提供される。
【符号の説明】
【0068】
10…セラミックス基板、10A…表面、10B…裏面、20,21,23…回路板、40…放熱板、20a,40a…接合面、21A,23A,28…側部、22…めっき膜、24…ろう材層、25…回路端、27…金属部、29…勾配部、29A…逆勾配部、30…半田レジスト、30A…内側端部、30B…外側端部、32…半田塗布領域、48…側部、50…半田、52…半田接続部、60…電極、70…窪み部、80…放熱部、100…回路基板、200…モジュール。
図1
図2
図3
図4
図5
図6