(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】コンクリート構造物の製造方法
(51)【国際特許分類】
E04G 9/10 20060101AFI20240221BHJP
E04G 23/02 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
E04G9/10 101A
E04G23/02 A
(21)【出願番号】P 2022019870
(22)【出願日】2022-02-10
【審査請求日】2022-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】391051049
【氏名又は名称】株式会社エステック
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】小川 恒郎
(72)【発明者】
【氏名】松居 良美
(72)【発明者】
【氏名】吉原 正博
(72)【発明者】
【氏名】岡本 郁也
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-059961(JP,A)
【文献】特開平03-161301(JP,A)
【文献】特許第5771347(JP,B1)
【文献】特許第3133211(JP,B2)
【文献】特許第3085862(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 9/10
E04B 2/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状に形成され、一方の面がコンクリート構造物の成形面となる枠板を備える型枠を設置する型枠設置工程と、
設置した前記型枠に対してコンクリートを打設する打設工程と、
を備えるコンクリート構造物の製造方法であって、
前記型枠設置工程は、
表面と裏面とを有する板状に構成され、表裏方向でのコンクリートの劣化因子の透過を防止する防護板を、前記裏面が前記成形面に対向する向きで、前記枠板に取付ける板取付工程と、
前記防護板の前記表面に接着部材を設ける接着設置工程と、を備え、
前記型枠設置工程で設置された前記防護板
となる板材の表面は、
凹凸加工によって少なくとも一部が複数の凹部および凸部を有する凹凸面となっているコンクリート構造物の製造方法。
【請求項2】
前記板取付工程は、前記成形面の面方向に複数の前記防護板を隣合うように並べて取付ける工程であり、
前記型枠設置工程で隣合って取付けられた前記防護板どうしの継目には、該継目を覆う覆い部が設けられている請求項1に記載のコンクリート構造物の製造方法。
【請求項3】
前記覆い部は、隣合う前記防護板の前記継目を形成する端部どうしを連結するよう構成されている請求項2に記載のコンクリート構造物の製造方法。
【請求項4】
前記覆い部は、隣合う前記防護板の表面側に設けられる請求項2または請求項3に記載のコンクリート構造物の製造方法。
【請求項5】
前記型枠設置工程は、打設されたコンクリートに埋設されて抜止めとなる抜止部材を前記防護板の表面に対して表裏方向で突設する抜止設置工程を備える請求項1ないし請求項4の何れかに記載のコンクリート構造物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コンクリート構造物修復方法が開示されている。すなわち、下面又は壁面に損傷を受けたコンクリート構造物の修復方法であって、コンクリート構造物における下面又は壁面の修復箇所をはつった後、断面修復材を保持した型枠を修復箇所に近接又は当接させることによって、はつりによって欠損した空隙箇所に断面修復材を補充するとともに、型枠に対しはつり面に向かって所定圧力を付与しつづける、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで近年、コンクリート構造物の劣化対策が注目されている。しかしながら、上記特許文献1のコンクリート構造物修復方法では、劣化に対する有効な対策がとられていない。この場合、劣化とは、コンクリート構造物の塩害や、コンクリート構造物における二酸化炭素の侵入による中性化での鉄筋の錆びなど、劣化因子による損傷である。なお、このような劣化に対しては、コンクリート構造物を修復する場合に限らず、コンクリート構造物を新規に建立する場合にも求められる。
【0005】
そこで、本発明は、劣化対策ができる型枠を用いたコンクリート構造物の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、板状に形成され、一方の面がコンクリート構造物の成形面となる枠板を備える型枠を設置する型枠設置工程と、設置した前記型枠に対してコンクリートを打設する打設工程と、を備えるコンクリート構造物の製造方法であって、前記型枠設置工程は、表面と裏面とを有する板状に構成され、表裏方向でのコンクリートの劣化因子の透過を防止する防護板を、前記裏面が前記成形面に対向する向きで、前記枠板に取付ける板取付工程と、前記防護板の前記表面に接着部材を設ける接着設置工程と、を備え、前記型枠設置工程で設置された前記防護板の表面は、少なくとも一部が複数の凹部および凸部を有する凹凸面となっているコンクリート構造物の製造方法。
【0007】
上記コンクリート構造物の製造方法によれば、防護板の表面には少なくとも一部が凹凸面に形成され、防護板の表面には接着部材が設けられているので、打設したコンクリートの表面にしっかりと取付けられる。また、防護板は、コンクリートの劣化因子、すなわち、塩害や二酸化炭素の侵入による中性化の劣化因子の透過を防止するので、コンクリート構造物の劣化を有効に防止できる。
【0008】
本発明では、前記板取付工程は、前記成形面の面方向に複数の前記防護板を隣合うように並べて取付ける工程であり、前記型枠設置工程で隣合って取付けられた前記防護板どうしの継目には、該継目を覆う覆い部が設けられている。
【0009】
上記コンクリート構造物の製造方法によれば、板取付工程では成形面の面方向に複数の防護板を隣合うように並べて、防護板どうしの継目には、継目を覆う覆い部が設けられているから、継目が生じたとしても、覆い部によって、打設工程でもコンクリートが外部に漏れない。
【0010】
本発明では、前記覆い部は、隣合う前記防護板の前記継目を形成する端部どうしを連結するよう構成されている。
【0011】
上記コンクリート構造物の製造方法によれば、覆い部は、隣合う防護板の継目を形成する端部どうしを連結しているから、継目どうしが連結し易い。
【0012】
本発明では、前記覆い部は、隣合う前記防護板の表面側に設けられる。
【0013】
上記コンクリート構造物の製造方法によれば、覆い部は、隣合う防護板の表面側に設けられて、表面側は、打設工程でコンクリートが打設される側であるから、コンクリート構造物の製造後に、外部から見える防護板において、覆い部が裏面側に露出しない。
【0014】
本発明では、前記型枠設置工程は、打設されたコンクリートに埋設されて抜止めとなる抜止部材を前記防護板の表面に対して表裏方向で突設する抜止設置工程を備える。
【0015】
上記コンクリート構造物の製造方法によれば、コンクリートに埋設されて抜止めとなる抜止部材を防護板の表面に対して表裏方向で突設する抜止設置工程を備えるから、打設したコンクリートに対して防護板が外れにくい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のコンクリート構造物の製造方法では、防護板の表面には少なくとも一部が凹凸面と接着部材が設けられているので、打設したコンクリートの表面にしっかりと取付けられ、また、防護板はコンクリートの劣化因子の透過を防止するので、コンクリート構造物の劣化を有効に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態のコンクリートスラブに加工を施した断面図である。
【
図2】同被劣化領域のコンクリートを仮想線で表した断面図である。
【
図3】同鉄筋の一部を露出させた被劣化領域の断面図である。
【
図4】同はつり面にプライマーを施した断面図である。
【
図5】同枠板仮合わせ工程を表すコンクリートパネル型枠の平面図である。
【
図6】同枠板仮合わせ工程においてバックアップ材を施した断面図である。
【
図7】同防護板調整工程を表す防護板の平面図である。
【
図8】同凹凸加工工程を表す防護板の平面図である。
【
図9】同防護板接合工程を表す防護板の平面図である。
【
図10】同抜止設置工程を表す防護板の平面図である。
【
図11】同抜止設置工程を表す防護板の断面図である。
【
図12】同防護組板設置工程を表す防護板と枠板との断面図である。
【
図13】同接着設置工程を表す防護板の平面図である。
【
図14】同枠板取付工程を表す被劣化領域の断面図である。
【
図15】同打設工程を表す被劣化領域の断面図である。
【
図16】同脱型工程を表す被劣化領域の修復された断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法を説明する。本実施形態では、コンクリート構造物、すなわちコンクリート梁(以下、梁と称する)の断面修復方法について説明する。そして、この断面修復方法は、梁の劣化対策、すなわち、塩害対策及び/又は中性化対策を可能とするものである。この場合、劣化因子とは、コンクリートの塩害、コンクリートの中性化、その他の因子としてコンクリートのひび割れから侵入する、水分や酸素による鉄筋の錆び、を含む概念である。
【0019】
本実施形態では、梁において、劣化を被った被劣化領域に対して断面修復方法を実施する。この断面修復方法は、コンクリート除去工程A、型枠設置工程B、打設工程C、脱型工程Dと、を有する。
【0020】
初めに、梁1の断面修復方法では、
図1から
図4に示すように、コンクリート除去工程Aを実施する。コンクリート除去工程Aは、被劣化領域2の劣化部から梁1を除去する方法であり、次の方法による。
【0021】
(1)まず、
図1に示すように、梁1における被劣化領域2として、被劣化領域2の劣化部にコンクリートカッタによって切目3を入れて、フェザーエッジとならないような加工δを施した後、
図2で示すように、梁1に埋め込まれている鉄筋4の前端部が露出するよう、図の仮想線で示すごとくコンクリートRCをはつり取る(はつり工程)。
【0022】
(2)次に、
図3に示すように、はつり取った梁1の被劣化領域2の表側面に清掃を施す。以下、本実施形態では、この表面側をはつり面5とする。また、はつり面5から露出した鉄筋4に、清掃を施す(清掃工程)。
【0023】
(3)次に、
図4に示すように、梁1の被劣化領域2におけるはつり面5全域に、プライマー6を塗布するようにする。なお、プライマー6として、アクリル系エマルジョンが用いられる(はつり面塗布工程)。
【0024】
以上(1)~(3)が、コンクリート除去工程Aであり、(1)~(3)を順番で行う。
【0025】
次に、梁1の断面修復方法として、
図5~
図14に示すように、型枠設置工程Bを実施する。型枠設置工程Bは、被劣化領域2の劣化部にコンクリートパネル型枠7(
図14参照)を設置する方法である。以下、コンクリートパネル型枠7を単にコンパネ型枠7と称し、コンパネ型枠7を設置する工程として、次の工程による。すなわち、
枠板仮合わせ工程B1、
防護板調整工程B2、
凹凸加工工程B3、
防護板接合工程B4
抜止設置工程B5、
防護組板設置工程B6
接着設置工程B7、
枠板取付工程B8、
と、を備えている。
【0026】
つまり、型枠設置工程Bは、枠板仮合わせ工程B1、防護板調整工程B2、凹凸加工工程B3、防護板接合工程B4、抜止設置工程B5、防護組板設置工程B6、接着設置工程B7、および枠板取付工程B8とに分類される。以下、順次説明する。
【0027】
(4)枠板仮合わせ工程B1について説明する。枠板仮合わせ工程B1は、
図5に示すように、コンパネ型枠7の枠板8,9を、被劣化領域2のサイズに合わせる工程である。枠板8,9は、はつり面5に平行に対向する一方枠板8と、一方枠板8と直交する方向に延びる四方側の他方枠板9,9であって、はつり取った後の残留コンクリート10(
図3、
図4参照)に対向する他方枠板9,9とから構成される。なお、一方枠板8と他方枠板9,9どうしは、本実施形態では組付けられた状態で接合されている。この際、一方枠板8は、はつり面5から所定間隔だけ前方に離間して配置される。この所定間隔とは、本来有していた梁1の外郭RCa(
図2参照)であるコンクリートRC表面までの距離とする。また、他方枠板9,9は、梁1における残留コンクリート10の側面11,11(周囲)に一致させる。このような枠板8,9では、その一方の面である表面が、梁1の成形面12となっている。成形面12とは、修復後の梁1の外郭面である。このようにして組付けられた枠板8,9は、一旦、被劣化領域2から外される。
【0028】
図6に示すように、バックアップ材13(例えば多孔質としてのスポンジや、あるいはパッキンゴム等)を、残留コンクリート10に貼る。バックアップ材13は、他方枠板9,9が合わせられる残留コンクリート10の側面11,11(外周)に貼付けられる。以上が、枠板仮合わせ工程B1とされる。
【0029】
(5)次に、防護板調整工程B2を説明する。防護板調整工程B2は、
図7に示すように、防護板14を枠板8,9に合わせて調整する工程である。防護板14は、本実施形態として、表面14aと裏面14bとを有する板状に構成されており、表裏方向での劣化因子の透過を防止する非透過性のアクリル製の板材が用いられる。劣化因子とは、コンクリートの、塩害(塩分)及び/又は二酸化炭素の侵入による中性化の劣化因子、あるいはその他の因子として、コンクリートのひび割れから侵入する、水分や酸素による鉄筋4の錆び、を含む概念である。防護板14は、例えば、厚み略2mmの板材が用いられる。防護板14は、はつり面5に対向する向きが平行となるよう、一方枠板8の成形面12に、裏面14bが配置される。また、防護板14は、残留コンクリート10の側面11,11に対する向きが平行となるよう、他方枠板9,9の成形面12に、裏板14bが配置される。また、防護板14は、枠板である一方枠板8、他方枠板9,9の各サイズに合わせて切断される。以上が、防護板調整工程B2とされる。
【0030】
(6)次に、凹凸加工工程B3を説明する。凹凸加工工程B3は、
図8に示すように、防護板14の表面14a全体に、凹凸加工Wが施される工程である。換言すれば、凹凸加工Wは目荒しであり、本実施形態では、凹凸加工Wは、サンダー(例えば、サンダーペーパー)を用いて、防護板14の表面14aの、縦横に形成される。以上が、凹凸加工工程B3とされる。本実施形態では、凹凸加工Wは表面14aの全周に施される。
【0031】
(7)ところで、
図9に示すように、枠板8,9に合わせた防護板14に、継目15が生じたとすると、継目15を覆う覆い部16を施す。なお、以下の説明として、枠板8,9に合わせた防護板14に継目15が生じた場合で説明することとする。この際、覆い部16は、防護板14と同様の材質であり、同様の厚みである。
【0032】
次に、防護板接合工程B4を説明する。防護板接合工程B4は、隣合う防護板14の継目15を形成する端部14cどうしを、覆い部16で連結する工程である。この際、枠板8,9の面方向と防護板14との面方向を合わせるように設置する。また、覆い部16は、隣合う防護板14の表面側に設けられる。そして、覆い部16の表面16aにも、上記で用いたサンダーによって凹凸加工Wが施される。また、防護板14と覆い部16とは同じ材質であり、その接着には両面粘着テープ17が用いられて、防護板14と覆い部16とが接合される。覆い部16は、1つの継目15全体を覆うように設けられる。以上が、防護板接合工程B4とされる。
【0033】
(8)次に、抜止設置工程B5を説明する。抜止設置工程B5は、
図10、
図11に示すように、後述する打設されたコンクリートR(例えば
図15参照)に埋設される抜止部材18を、防護板14の表面に対して表裏方向で突設する工程である。この場合、まず、防護板14の表裏方向で、且つ所定位置に
図10で示すような穿設孔20を設ける。穿設孔20は、例えば一枚の防護板14の四隅に穿設し、また、四隅に穿設した穿設孔20の対角線状に一つ穿設する。そして、継目15には覆い部16が形成されていたとしても、防護板14と覆い部16に亘って穿設孔20を形成する。なお、穿設孔20を形成する手段として、溶着方法(例えば、半田ごて)を用いて形成することができる。そして、各穿設孔20に対して、
図11で示す抜止部材18を差込む。本実施形態では、抜止部材18は、釘が用いられ、釘としては、プラスチック製の釘が用いられる。釘は、胴部18aと、平らな頭部18bとを有する。そして、穿設孔20が冷却されないうちに、釘の胴部18aを、防護板14ないし覆い部16に裏側から表側に向けて突設させる。穿設孔20が冷却されないうちに、釘の胴部18aを貫通させ、穿設孔20が冷却させると、穿設孔20部分の領域が、胴部18aに溶着(癒着)して、釘は防護板14から外れることが難しい状態となる。なお、頭部18bは防護板14の裏側に配置する。なお、継目15が形成された複数(本実施形態では二枚)の防護板14、一枚の覆い部16、および複数の釘を組合せた状態を、以下、防護組板21と称する。以上が、抜止設置工程B5とされる。
【0034】
(9)次に、防護組板設置工程B6を説明する。防護組板設置工程B6は、板取付工程に相当するもので、
図12に示すように、防護組板21を枠板の成形面12に取付ける。具体的に、各防護組板21と、一方枠板8と、他方枠板9,9とは合わせられているので、各防護組板21、一方枠板8、他方枠板9,9とは、表裏で一致させられる。また、各防護組板21における釘の頭部18bは平らに形成されているので、例えば、その接着には、両面粘着テープ17が用いられて、防護組板21と枠板8,9とが取付けられて連結される。防護組板21と枠板8,9とが取付けられて連結された状態を型枠組品22と称する。なお、枠板8,9の成形面12と防護板14との間には、釘の頭部18bによって生じる隙間が形成されている。以上が、防護組板設置工程B6とされる。
【0035】
(10)次に、接着設置工程B7を説明する。接着設置工程B7は、
図13に示すように、防護板14の表面14aに接着部材を設け工程である。この際、防護板14の表面14a全体に接着部材を設けており、接着部材として、プライマー23の塗布が行われる。プライマー23として、アクリル系エマルジョンが用いられる。
【0036】
(11)次に、枠板取付工程B8を説明する。枠板取付工程B8は、
図14に示すように、型枠組品22を、被劣化領域2に組付ける工程である。枠板取付工程B8では、防護板14を、裏面が成形面12に対向する向きで、枠板8,9に取付けるようにする。この際、枠板仮合わせ工程B1に準ずるようにして、一方枠板8に対向する防護板14の表面14a側をはつり面5に対向させ、他方枠板9,9に対向する防護板14の表面14a側を、残留コンクリート10の側面11,11に対向させて、被劣化領域2に組付ける。ところで、バックアップ材13は、残留コンクリート10の側面11,11に貼付けられるから、他方枠板9,9に対向する防護板14を被劣化領域2に取付ける際には、バックアップ材13の厚み相当だけ、防護板14を拡げる必要が生じる場合もありうる。また、支保工として一方セパレータ25を、鉄筋4のスターラップに取付け、他方セパレータ24どうしを組付けて、一方枠板8と他方枠板9,9を、残留コンクリート10(被劣化領域2)に保持する。このとき、各セパレータ24,25において、一方枠板8および他方枠板9,9の外部に配置された座金26と、各枠板8,9との間に、支保工用角材27を取付けておき、支保工用角材27の両端を保持することで、各枠板8,9が変形しないように保持しておく。また、次の工程である打設工程Cで実施されるコンクリート注入ホース28、エア抜きホース29を、コンパネ型枠7に取付けられる。本実施形態では、コンクリート注入ホース28が一方枠板8に装着され、一対のエア抜きホース29が他方枠板9の所定位置に装着することも可能である。以上が、枠板取付工程B8とされ、(4)~(11)の工程を順次施工することにより、型枠設置工程Bを終了する。
【0037】
型枠設置工程Bの、次工程となる打設工程Cを実施する。打設工程Cは、成形面12と、これを囲繞するコンパネ型枠7との間に、新たな梁1となるコンクリートRを打設する方法である。打設工程Cは、次のようにして行う。
【0038】
(12)打設工程Cは、
図15に示すように、コンクリート注入ホース28によって、無収縮グラウト材からなるコンクリートRを、成形面12とコンパネ型枠7(型枠組品22)との間に注入する工程である。このとき、コンクリート注入ホース28からコンクリートRが注入されるとともに、エア抜きホース29によって、成形面12とコンパネ型枠7との間から空気が抜かれて、コンクリートRを打設する。そして、コンクリート注入ホース28、エア抜きホース29を外して、コンクリートRを養生する。なお、支保工用角材27は座金26を介してコンパネ型枠7に設置したままの状態とする。以上(13)の工程が、打設工程Cである。
【0039】
続いて、打設工程Cの次工程となる、脱型工程Dを実施する。脱型工程Dとして、養生されたコンクリートRからコンパネ型枠7が取除かれる。
【0040】
(13)脱型工程Dは、被劣化領域2からコンパネ型枠7を取外す工程である。この際、
図16に示すように、座金26を取外すとともに支保工用角材27が取外され、続いてコンパネ型枠7が取除かれる。そして、防護板14の表面14a全体に凹凸加工Wが施され、且つ防護板14の表面14a全体にプライマー23(接着部材)を設けているので、防護組板設置工程B6で行った、
図12で示す両面粘着テープ17と縁を切ることで、コンパネ型枠7のみがコンクリートRから外され、防護板14はコンクリートRからは外されず、防護板14はコンクリートRに保持されたままである。また、抜止部材18がコンクリートRに埋設しているので、防護板14が外れにくい。なお、一方セパレータ25、他方セパレータ24は、コンクリートRに埋められた状態としている。以上が脱型工程Dであり、コンクリートRの表面や防護板14の裏面などを清掃し、コンクリート構造物の製造方法が終了して、被劣化領域2が修復される。
【0041】
上記コンクリート構造物の製造方法によれば、防護板14の表面14aには凹凸面Wとプライマー23(接着部材)が設けられているので、打設工程Cで打設したコンクリートRの表面にしっかりと取付けられる。さらに、NEXCO規格であるコンクリートRと防護板14との付着強度1.5N/mm2が得られる結果となった。
【0042】
また、防護板14は表面14aと裏面14bとを有する板状に構成されて表裏方向での劣化因子の透過を防止するので、梁1(コンクリート構造物)の劣化を有効に防止できる。
【0043】
型枠設置工程B(防護板接合工程B4)は、成形面12の面方向に複数の防護板14を隣合うように並べて取付ける工程であり、隣合って取付けられた防護板14どうしの継目15には、継目15を覆う覆い部16が設けられている。したがって、防護板14どうしの合わせ目に継目15が生じたとした場合でも、打設工程CでコンクリートRが打設されたとしても、覆い部16によって、コンクリートRが外部に漏れない。また、覆い部16は、隣合う防護板14の継目15を形成する端部14cどうしを連結するよう構成されている。このように、覆い部16は、隣合う防護板14の継目15を形成する端部14cどうしを連結しているから、継目15どうしが連結し易い。
【0044】
しかも、覆い部16は、隣合う防護板14の表面14a側に設けられている。そして、防護板14の表面14a側は、打設工程CによってコンクリートRが打設された側であるから、防護板14が取付けられたコンクリートR表面において、覆い部16が外部側に露出しない。
【0045】
型枠設置工程Bでは、打設されたコンクリートRに埋設されて抜止めとなる抜止部材18を防護板14の表面に対して表裏方向で突設する抜止設置工程B5を備えている。このため、コンクリートRに埋設されて抜止めとなる抜止部材18を、防護板14の表面14aに対して表裏方向で複数突設しているから、打設したコンクリートRに対して防護板14が外れにくい。
【0046】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態では、防護板調整工程B2としてアクリル板を使用し、凹凸加工工程B3として、防護板14の表面14a全体に凹凸加工Wが施された例を示した。しかしながら、凹凸加工Wを施したアクリル板を、購入することもできる。なお、この場合では、型枠設置工程Bに凹凸加工工程B3は含まれない。
【0047】
上記実施形態では、型枠設置工程Bは、枠板仮合わせ工程B1、防護板調整工程B2、凹凸加工工程B3、防護板接合工程B4、抜止設置工程B5、防護組板設置工程B6、接着設置工程B7、および枠板取付工程B8、とに分類され、これらの工程を順次施工することにより型枠設置工程Bが終了するようにした。しかしながら、これらの工程を順次施工する場合に限定されるものではなく、各工程の順番を入替えたり、統合して同時に行うこともできる。
【0048】
例えば、型枠設置工程Bとして、防護板調整工程B2、枠板仮合わせ工程B1、防護板接合工程B4、凹凸加工工程B3、抜止設置工程B5、防護組板設置工程B6、接着設置工程B7、枠板取付工程B8の順であってもよく、工程の順は適宜決めることができる。
【0049】
上記実施形態では、防護組板設置工程B6は、防護組板21を枠板の成形面12に取付ける工程であった。そして、防護組板21は、継目15が形成された複数の防護板14と、継目15を覆う覆い部16とを備えた。しかしながら、防護組板21としてこれに限定されるものではい。例えば、一の防護板14の表面14aに凹凸加工Wを施すとともに覆い部16を取付け、他の防護板14に凹凸加工Wを施し、また他の防護板14を枠板の成形面12に取付けて、一の防護板14と他の防護板14が覆い部16で覆われるように一の防護板14を枠板の成形面12に取付ける工程とすることもできる。
【0050】
このように、防護組板設置工程B6は、防護組板21として組上げたものを設置することに限定されず、各防護板14および覆い部16を枠板8,9に取付けながら組上げることもできる。また、防護組板設置工程B6に、凹凸加工工程B3や防護板接合工程B4を組込んで統合した工程とすることもできる。
【0051】
上記実施形態では、梁1の断面修復方法について説明した。しかしながら、本発明は、梁1の断面修復方法に限らず、他のコンクリート構造物であっても本発明は採用できる。そして、断面修復方法に限らず、本発明は、新設のコンクリート構造物であっても、採用できる。この場合では、コンクリート除去工程Aは必要がなく、新設のコンクリート構造物に合わせた、鉄筋設置工程、型枠設置工程B、打設工程C、脱型工程Dとして行われる。
【0052】
なお、上記実施形態では、防護板14の表面14a全部に凹凸加工Wをほどこしたがこれに限らず、表面14aの一部であってもよく、また覆い部16には施さなくてもよい。
【0053】
上記実施形態では、バックアップ材13を残留コンクリート10の側面11,11に設けたが、他方枠板9,9に設けることもできる。また、上記実施形態では、覆い部16は防護板14と同じ材質のアクリル板としたが、継目15を埋めるコーキング剤、シール部材などのように、別材質でもよい。上記実施形態では、抜止部材18としての釘は、穿設孔20に挿通した。しかしながら、抜止部材18としての釘は、穿設孔20に挿通させるのではなく、防護板14の表面14aに頭部18bを取付けるように、防護板14を貫通させることもできる。
【符号の説明】
【0054】
1…スラブ、2…被劣化領域、3…切目、4…鉄筋、5…はつり面、6…プライマー、7…コンパネ型枠、8…一方枠板、9…他方枠板、10…残留コンクリート、11,11…側面、12…成形面、13…バックアップ材、14…防護板、14a…表面、14b…裏面、14c…端部、15…継目、16…覆い部、16a…表面、17…両面粘着テープ、18…抜止部材、18a…胴部、18b…頭部、20…穿設孔、21…防護組板、22…型枠組品、23…プライマー、24…他方セパレータ、25…一方セパレータ、26…座金、27…支保工用角材、28…コンクリート注入ホース、29…エア抜きホース、A…コンクリート除去工程、B…型枠設置工程、B1…枠板仮合わせ工程、B2…防護板調整工程、B3…凹凸加工工程、B4…防護板接合工程、B5…抜止設置工程、B6…防護組板設置工程、B7…接着設置工程、B8…枠板取付工程、C…打設工程、D…脱型工程、R…コンクリート、RC…コンクリート、RCa…外郭、W…凹凸加工、δ…加工