(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】警報器
(51)【国際特許分類】
G08B 23/00 20060101AFI20240221BHJP
G08B 25/00 20060101ALI20240221BHJP
G08B 25/10 20060101ALI20240221BHJP
G08B 17/00 20060101ALI20240221BHJP
G08B 21/00 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
G08B23/00 530Z
G08B25/00 520A
G08B25/10 A
G08B17/00 C
G08B21/00 A
(21)【出願番号】P 2022047201
(22)【出願日】2022-03-23
【審査請求日】2023-03-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000190301
【氏名又は名称】新コスモス電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 和也
【審査官】大橋 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-132303(JP,A)
【文献】特開2016-174196(JP,A)
【文献】特開2001-006079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 17/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内蔵するソフトウェアに含まれる命令に従って動作する警報器であって、前記警報器は、
前記ソフトウェアを記憶する記憶部と、
周囲環境を監視して監視結果に基づく報知を行う報知機能、及び前記記憶部を前記記憶部の記憶内容に従って制御する制御部と、
を備え、
前記記憶部は、少なくとも、それぞれが前記ソフトウェアの一部を記憶する第1記憶領域、第2記憶領域、及び第3記憶領域を有していて前記ソフトウェアのアップデートが可能なように構成されており、
前記制御部は、前記報知機能に関する命令を含む前記ソフトウェアの第1部分を前記第1記憶領域に記憶させ、前記ソフトウェアの第2部分を前記第2記憶領域に記憶させ、前記第3記憶領域を用いて前記第1部分又は前記第2部分のアップデートを行わせ、
前記第1部分のアップデートにおいて、外部機器から通信によって送られる前記第1部分のアップデート後の命令を前記第3記憶領域に記憶させ、
前記第1部分のアップデート後に、前記第1部分を実行するときには前記第3記憶領域に記憶されている命令を実行し、アップデートされていない前記第2部分を実行するときには前記第2記憶領域に記憶されている命令を実行するように構成されている、警報器。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第2部分のアップデートにおいて、前記第2部分のアップデート後の命令を前記第3記憶領域に記憶させ、
前記第2部分のアップデート後に、前記第2部分を実行するときには前記第3記憶領域に記憶されている命令を実行し、アップデートされていない前記第1部分を実行するときには前記第1記憶領域に記憶されている命令を実行するように構成されている、請求項1記載の警報器。
【請求項3】
前記第2部分は、前記報知機能以外の機能に関する命令からなり、
前記制御部は、前記第2部分のアップデートの間及び前記第2部分のアップデートの完了時に前記報知機能の動作を継続させるように構成されている、請求項1又は2記載の警報器。
【請求項4】
前記警報器の状態を所定の周期で外部機器に送る定期通信を行う通信部をさらに備え、
前記第2部分は、前記定期通信に関する命令を含んでいる、請求項3記載の警報器。
【請求項5】
前記通信部は、前記第1部分のアップデートの間、アップデートされない前記第2部分に含まれる命令に従って前記定期通信を継続するように構成されている請求項4記載の警報器。
【請求項6】
前記制御部は、前記監視結果に基づいて警報の要否を判断し、
前記通信部は、警報が必要と判断されている間、前記定期通信において前記警報器が警報状態にあることを前記外部機器に送るように構成されている、請求項4又は5記載の警報器。
【請求項7】
前記制御部及び前記通信部は、前記ソフトウェアを内蔵していて前記報知機能、及び前記定期通信を制御する半導体装置を共有している、請求項4~6のいずれか1項に記載の警報器。
【請求項8】
内蔵するソフトウェアに含まれる命令に従って動作する警報器であって、前記警報器は、
前記ソフトウェアを記憶する記憶部と、
周囲環境を監視して監視結果に基づく報知を行う報知機能、及び前記記憶部を前記記憶部の記憶内容に従って制御する制御部と、
を備え、
前記記憶部は、少なくとも、それぞれが前記ソフトウェアの一部を記憶する第1記憶領域、第2記憶領域、及び第3記憶領域を有していて前記ソフトウェアのアップデートが可能なように構成されており、
前記制御部は、
前記報知機能に関する命令を含む前記ソフトウェアの第1部分を前記第1記憶領域に記憶させ、
前記ソフトウェアの第2部分を前記第2記憶領域に記憶させ、
前記第1部分及び前記第2部分の両方がアップデートされるときは、
前記第1部分及び前記第2部分のうちの一方のアップデート後の命令を前記第3記憶領域に記憶させ、
前記第1部分及び前記第2部分のうちのアップデート前の前記一方が記憶されている、前記第1記憶領域又は前記第2記憶領域に、前記第1部分及び前記第2部分のうちの他方
のアップデート後の命令を記憶させるように構成されている、警報器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周囲環境を監視する警報器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工場や住宅における火災やガス漏れなどを検知して警報を発する警報器には、温度や、各種のガスの存在などを検知するセンサなどの感知手段と、その検知結果に基づいて異常の有無を判断するマイコンなどの制御手段と、制御手段の判断結果に基づいて光や音声などを警報として発する報知手段などが備えられている。このような警報器において制御手段のマイコンなどは、ROMなどの記憶手段に格納されたプログラムに従って感知手段や報知手段を制御して、周囲環境を監視すると共に異常検知時に警報を発するように構成されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、複数の警報器が無線通信で警報情報を共有することにより連動して警報を発する警報システムにおいて、制御回路が実行するプログラムを、第1記憶部に格納したプログラムと第2記憶部に格納したプログラムとの間で切り替えることによって、親局としての機能と子局としての機能とを切り替えることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
火災の発生やガスの存在などを検知して警報を発する警報器の分野では、警報器が使用される国や自治体が定める法規に適合するための要件、例えば感知性能に関する規定や、異常と判断すべき温度やガスの濃度の基準などが変更されることがある。また、前述の特許文献1のように警報器は外部機器と通信回線で接続して使用されることがある。そしてこのような警報器を含む、通信機能を有する機器が準拠する通信プロトコルにおいては、新たな通信技術の開発やインフラストラクチャーの発展に呼応して、及び/又は、日々出現する新手のハッキング技術に対抗すべく、絶えずバージョンアップが重ねられている。
【0006】
そのため、通信機能を有する警報器は元より、単独で動作する警報器においても、例えば法規の変更や技術の伸展に追随すべく、また、警報器に対する新たな脅威から警報器の機能を保護すべく、警報器の使用開始後においても警報器の制御方式を記述したソフトウェアを適宜アップデートすることが求められる。そして、そのような制御用ソフトウェアが適宜アップデートされない場合は、例えば法規の改正に対応できず、警報器自体が動作可能であるにも関わらずその警報器を実質的に使用できなくなったり、通信のセキュリティを脅かす悪意のある技術の脅威に警報器が晒されたりすることにもなり得る。
【0007】
一方、周囲環境の異常を報せる警報器では、制御用ソフトウェアのアップデート中に、例えば周囲環境の監視機能や警報の発報機能が停止すると、周囲環境が異常な状態にあることの報知が遅れてしまって使用者を危険に晒してしまう可能性がある。また、そのような監視や発報などの機能以外に警報器に付加された機能、例えば前述の通信機能においても、制御用ソフトウェアのアップデート中にその機能が停止すると、情報を共有している外部機器への送信が遅れてしまうことがある。その結果、他の警報器と適切に連動できなかったり、外部の制御装置による制御を適切に受けられなかったりして、やはり使用者の安全確保に支障が生じてしまうことがある。また、このような制御用ソフトウェアのアップデート中の各機能の停止は、前述したような、警報器に対して定められる法規に違反してしまうことも考えられる。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、新たな制御方式を適宜取り入れることができ、しかも、警報器が有する個々の機能の無用な停止を少なくすることができる警報器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の警報器は、内蔵するソフトウェアに含まれる命令に従って動作する警報器であって、前記警報器は、前記ソフトウェアを記憶する記憶部と、周囲環境を監視して監視結果に基づく報知を行う報知機能、及び前記記憶部の機能を前記記憶部の記憶内容に従って制御する制御部と、を備え、前記記憶部は、少なくとも、それぞれが前記ソフトウェアの一部を記憶する第1記憶領域、第2記憶領域、及び第3記憶領域を有していて前記ソフトウェアのアップデートが可能なように構成されており、前記制御部は、前記報知機能に関する命令を含む前記ソフトウェアの第1部分を前記第1記憶領域に記憶させ、前記ソフトウェアの第2部分を前記第2記憶領域に記憶させ、前記第3記憶領域を用いて前記第1部分又は前記第2部分のアップデートを行わせるように構成されている。
【0010】
前記第2部分は、前記報知機能以外の機能に関する命令からなり、前記制御部は、前記第2部分のアップデートの間及び前記第2部分のアップデートの完了時に前記報知機能の動作を継続させるように構成されていてもよい。
【0011】
前記警報器の状態を所定の周期で外部機器に送る定期通信を行う通信部をさらに備え、前記第2部分は、前記定期通信に関する命令を含んでいてもよい。
【0012】
前記通信部は、前記第1部分のアップデートの間、前記定期通信を継続するように構成されていてもよい。
【0013】
前記制御部は、前記監視結果に基づいて警報の要否を判断し、前記通信部は、警報が必要と判断されている間、前記定期通信において前記警報器が警報状態にあることを前記外部機器に送るように構成されていてもよい。
【0014】
前記制御部及び前記通信部は、前記ソフトウェアを内蔵していて前記報知機能、及び前記定期通信を制御する半導体装置を共有していてもよい。
【0015】
前記アップデートは、外部機器と前記通信部との無線通信を介して行われてもよい。
【0016】
前記制御部は、前記第1部分又は前記第2部分のアップデートにおいて、前記第1部分又は前記第2部分のアップデート後の命令を前記第3記憶領域に記憶させ、前記第1部分又は前記第2部分の実行時に参照する前記記憶部の領域を前記第1記憶領域又は前記第2記憶領域から前記第3記憶領域に変更するように構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、新たな制御方式を適宜取り入れることができ、しかも、警報器が有する個々の機能の無用な停止を少なくすることができる警報器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態の警報器の一例の概略を示すブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態の警報器が備える記憶部の記憶領域の構成を示す模式図である。
【
図3】本発明の一実施形態の警報器における動作の一例を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の一実施形態の警報器の他の例の概略を示すブロック図である。
【
図5】本発明の一実施形態の警報器の他の例における動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る警報器を説明する。但し、以下に説明される実施形態及び添付の図面は、本発明に係る警報器の一例を示しているに過ぎない。本発明に係る警報器の構成及び作用は、以下に説明される実施形態及び添付の図面に例示される構成及び作用に限定されない。
【0020】
<基本構成>
図1には、本発明の一実施形態の警報器100の主要な構成要素がブロック図で示されている。一実施形態の警報器100は、例えば、住居や工場などに設置されたり、使用者に携帯されたりして、警報器100の周囲の環境を監視する。そして、警報器100は、周囲の環境が特定の状態にある場合にはそれを検知して、例えば、警報を発したり、信号を送ったりして、周囲環境が特定の状態にあること、例えば人体や物的資産に危害が及び得る異常な状態にあることを、周囲の人や所定の機器に報せる。特定の状態としては、火災の発生、ガスもれ、一酸化炭素の充満、煙の充満、過剰な温湿度、などが例示されるが、警報器100が検知する特定の状態は、これらに限定されない。
【0021】
本実施形態の警報器100は、
図1に示されるように、ソフトウェアSWを記憶する記憶部4と制御部10とを備えている。警報器100は、記憶部4に内蔵するソフトウェアSWに含まれる命令に従って動作し、周囲環境を監視して監視結果に基づく報知を行う。制御部10は、ソフトウェアSWを含む記憶部4の記憶内容に従って、警報器100が担う周囲環境の監視から監視結果に基づく報知までの報知機能、及び記憶部4の機能を制御する。
図1の例の警報器100は、さらに、電源部3と、検知部12と、報知部13と、を備えている。
【0022】
制御部10は、主に処理装置1で構成され、例えば処理装置1と、その周辺部品(図示せず)とで構成される。処理装置1は、マイコンやASICなどの半導体装置からなり、記憶部4に内蔵されたプログラムSWに従って動作する。
図1の例では、処理装置1は記憶部4を含んでいる。処理装置1は、プログラムSWに従うだけでなく、処理装置1の外部のROMなどの記憶装置(図示せず)や処理装置1が記憶部4以外に備える記憶手段(図示せず)のような、警報器100が備え得る任意の記憶領域に格納されたプログラムに従って動作してもよい。
【0023】
処理装置1は、好ましくは、演算機能、比較機能、記憶機能などを有し、警報器100の動作中に、検知部12による周囲環境の監視から報知部13による異常の報知に至るまでの報知機能に関する動作を全体的に制御する。例えば処理装置1は、検知部12による周囲環境の監視動作の開始や停止を制御する。また、処理装置1は、検知部12から得られる検知データが示す、一酸化炭素やガスの濃度、周囲の温度、及び、煙の濃度などが、所定の閾値を超えているか否かを判断する、そして、温度や濃度などが閾値を超えている場合には、例えばその超過の程度に応じて報知の態様(音声の鳴動の仕方や発光の仕方など)を決定し、決定した方法で報知部13に報知を実行させる。また、処理装置1は、記憶部4の記憶機能を制御する。例えば、処理装置1は、記憶部4に対して、対象のアドレスを指定して、所望の情報を記憶するように指示する。さらに処理装置1は、記憶部4に、所望のアドレスに記憶している情報を出力するように指示する。
【0024】
記憶部4は、
図1の例において処理装置1に含まれている。
図1の例の記憶部4は、処理装置1に組み込まれた、例えば、EEPROM(エレクトリック・イレーサブル・プログラマブルROM)又はフラッシュメモリなどの、再書き込み可能な不揮発性のメモリ空間で構成されている。このような再書き込み可能なメモリにソフトウェアSWが格納されている。なお、記憶部4は、
図1の例と異なり、処理装置1の外部に設けられていてもよい。その場合も、好ましくは不揮発性の、EEPROMやフラッシュメモリなどのような再書き込み可能なメモリ装置で構成される。
【0025】
図1の処理装置1は、記憶部4以外に、図示されていない任意のメモリ空間を備えていてもよい。そのようなメモリ空間は、前述したEEPROMやフラッシュメモリの他、ROM、PROM、RAM、及び各種のレジスタなどであり得る。これら任意のメモリ空間には、例えば、警報の発報の判断基準であって検知部12の検知データと比較される閾値、この閾値と検知データとの比較結果に対応付けられた報知部13での報知態様、処理装置1における演算処理の中間データなどが記憶され得る。
【0026】
電源部3は、制御部10を含む警報器100の内部の各構成要素に電力を供給する。電源部3は、例えば、商用電源(図示せず)から供給される電力を各構成要素に供給する。その場合、電源部3は、例えば、商用電源から供給される交流電力を所望の電圧の直流電力に変換するインバータや、警報器100内の構成要素に印加される電源電圧を安定化させる電圧レギュレータなどによって構成され得る。電源部3は、乾電池などの一次電池やバッテリなどの二次電池の直流電力を警報器100内の各構成要素に供給してもよい。
図1の例の警報器100は、電源部3から制御部10などへの電力の供給と停止とを切り替える電源スイッチSを備えている。
【0027】
検知部12は、主に、警報器100の周囲の監視対象領域の物理現象を監視して監視データを出力する各種のセンサから構成される。各種のセンサは、たとえば、一酸化炭素ガス(CO)、メタンガス(CH4)又はプロパンガス(C3H8)を検知する各種ガスセンサ、サーミスタなどからなる温度センサ、湿度センサ、煙センサ、又は臭気センサなどであってよい。検知部12は、これらセンサの一つ又は複数で構成され得る。例えば、各種のガスセンサによって、警報器100の周囲の空間におけるガス漏れが検知される。また、温度センサ及び煙センサなどによって、警報器100の周囲での火災の発生が検知される。
【0028】
報知部13は、例えば、発光ダイオード、ディスプレイ、ブザー及び/又はスピーカーなどの、警報器100のユーザーなどへの報知手段により構成され、光の放射、鳴動、及び/又は音響を発することにより警報を発する。また、報知部13は、警報を発する以外にも、警報器100の状態や、警報を発するに至らない監視領域の環境に関する情報をユーザーなどに伝えるために動作してもよい。
【0029】
警報器100では、前述したように、ソフトウェアSWは、EEPROMやフラッシュメモリなどのような再書き込み可能なメモリで構成される記憶部4に記憶されている。すなわち、記憶部4は、ソフトウェアSWのアップデートが、警報器100の使用開始後にも、従って警報器100の工場出荷後であっても、可能なように構成されている。例えば、処理装置1が備えるCPU(図示せず)の制御の下で、記憶部4を構成するフラッシュメモリなどの記憶内容が書き換えられ、その結果、ソフトウェアSWがアップデートされる。警報器100が従う命令を含むソフトウェアSWのアップデートが警報器100の使用開始後にも可能なので、例えば、適合すべき法規の改定や警報器100の仕様変更への対応が求められる際に、ソフトウェアSWをアップデートすることによって、その改定や変更に応じた適切な動作を警報器100にさせることができる。
【0030】
ソフトウェアSWは、処理装置1が行う動作に関する命令が記述された制御プログラムなどのソフトウェアを含み得る。ソフトウェアSWは、処理装置1のハードウェアと密接に結びついたソフトウェアであって、制御部10が担う報知機能に関する所望の動作をさせるべく処理装置1の基本的な制御を司るソフトウェアを含んでいてもよい。すなわち、ソフトウェアSWは、処理装置1のメモリ(例えばEEPROMやフラッシュメモリで記憶部4を構成する記憶手段)に書き込まれている、処理装置1に関するファームウェアであってもよい。警報器100の使用開始後にもアップデート可能なソフトウェアSWが処理装置1に関するファームウェアであると、例えば、法規の変更などによって処理装置1による基本的な制御方式の変更が求められる場合でも、その変更に容易に対応することができる。例えば警報器100の分解及び/又は処理装置1の交換などを行うことなく、処理装置1の基本的な制御方式を更新することができる。
【0031】
ソフトウェアSWの「アップデート」は、ソフトウェアSWの内容をより新しい内容に変更するものであれば、特に限定されない。ソフトウェアSWの「アップデート」は、警報器100の報知機能に関する命令のアップデートであってよく、報知機能以外の機能に関する命令のアップデートであってもよい。例えば、ソフトウェアSWの「アップデート」は、検知部12による周囲環境の監視動作、特定の状態にあることを報知すべきか否かの判断、如何なる態様で報知を行うかの判断、及び、報知部13による音や光などによる報知動作、などの制御に関するソフトウェアSWの内容の変更であり得る。また、ソフトウェアSWの「アップデート」は、制御部10による検知部12及び報知部13の点検項目、検知部12を構成する各センサについて適宜行われる補正のアルゴリズム、必要に応じて報知部13で発せられるメッセージの内容、及び、通常モードや低電力消費モードなどの警報器100の動作モード、などに関するソフトウェアSWの内容の変更であってもよい。さらに、ソフトウェアSWの「アップデート」は、後述する実施形態の他の例のように警報器が通信機能を有する場合は、通信機能に関する変更であってもよい。
【0032】
<記憶部の構成>
図2には、記憶部4の記憶領域の構成が模式的に示されている。
図2に示されるように、本実施形態では、記憶部4の記憶領域は、少なくとも三つに区分けされている。
図2の例では、記憶部4は、第1記憶領域A1、第2記憶領域A2、及び第3記憶領域A3を有している。
図2の例において第1記憶領域A1は、A-0000~A-FFFFまでのアドレス空間を有し、第2記憶領域A2は、B-0000~B-FFFFまでのアドレス空間を有し、第3記憶領域A3は、C-0000~C-FFFFまでのアドレス空間を有している。第1記憶領域A1、第2記憶領域A2、及び第3記憶領域A3は、いずれも、常時又は一時的にソフトウェアSWの一部を記憶する。換言すると、制御部10(
図1参照)は、第1~第3の記憶領域A1、A2、A3それぞれに、常時又は一時的にソフトウェアSWの一部を記憶させる。
図2には、第1記憶領域A1と第2記憶領域A2にソフトウェアSWの第1部分SW1及び第2部分SW2が記憶されていて第3記憶領域A3にはデータ(命令)が記憶されていない状態が示されている。
【0033】
記憶部4には、第1~第3の記憶領域A1、A2、A3それぞれに対応付けられたアドレスバスAB1(第1アドレスバス)、アドレスバスAB2(第2アドレスバス)、アドレスバスAB3(第3アドレスバス)が接続されている。さらに、記憶部4には、データバスDB1(第1データバス)とデータバスDB2(第2データバス)の二つのデータバスが接続されている。
図2の例の記憶部4では、アドレスバスAB1~AB3のいずれかとデータバスDB1、DB2の一方とを用いて第1~第3の記憶領域A1、A2、A3のいずれか一つについてデータ(命令)を読み出し若しくは書き込みながら、アドレスバスAB1~AB3の他のいずれかとデータバスDB1、DB2の他方とを用いて第1~第3の記憶領域A1、A2、A3の他のいずれか一つについてデータ(命令)を読み出し若しくは書き込むことができる。このように第1記憶領域A1、第2記憶領域A2、及び第3記憶領域A3は、互いに独立してアクセスされ得る、すなわち互いに独立してデータ(命令)の書き込み又は読み出しをされ得る記憶領域である。
【0034】
一方、ソフトウェアSWは、前述したように、少なくとも第1部分SW1と第2部分SW2とを含んでいる。第1部分SW1は、警報器100の報知機能に関する命令を含んでいるソフトウェアSWの一部である。第1部分SW1は、報知機能に関する命令だけを含んでいてもよく、報知機能外の機能に関する命令も含んでいてもよい。第2部分SW2は、第1部分SW1以外のソフトウェアSWの一部であって警報器100の任意の機能、動作、判断、及び/又は処理に関する命令を含み得る。第2部分SW2は、報知機能以外の機能に関する命令を含んでいる。例えば第2部分SW2は、報知機能以外の機能に関する命令からなり得る。しかし、第2部分SWは、報知機能に関する命令を含んでいてもよい。
【0035】
「報知機能に関する命令」は、周囲環境の監視の開始から監視結果に基づく報知に至るまでに警報器100の内部で必要とされる動作、判断、及び/又は処理に関する命令である。「報知機能に関する命令」は、例えば、検知部12(
図1参照)の作動時期や感度のような周囲環境の監視動作に関する命令、特定の状態と判断する閾値のような特定の状態にあるか否かの判断に関する命令、特定の状態と判断される監視結果と報知態様との対応付けのような報知態様の判断に関する命令、及び、光の強度や音声の音量や発話内容のような報知部13(
図1参照)による報知動作などの制御に関する命令であり得る。第1部分SW1は、例えばこれらの命令を含んでいる。しかし、第1部分SW1が含む「報知機能に関する命令」は、周囲環境の監視の開始から監視結果に基づく報知に至るまでの過程に関わる命令である限り、これらに限定されない。
【0036】
一方、第2部分SW2が、報知機能以外の機能に関して含み得る命令としては、例えば、検知部12及び報知部13の点検項目や、報知機能に直接影響しない動作モードの切り換え(例えば通常モードと低電力消費モードとの切り換え)などに関する命令が例示されるが、第2部分SWが報知機能以外の機能に関して含み得る命令は、これらに限定されない。
【0037】
本実施形態において制御部10は、記憶部4に、ソフトウェアSWの第1部分SW1及び第2部分SW2を、第1~第3の記憶領域A1、A2、A3のうちのいずれか二つにそれぞれ記憶させる。そして、制御部10は、第1部分SW1又は第2部分SW2のアップデートを行うときは、記憶部4に、第1~第3の記憶領域A1、A2、A3のうちの上記いずれか二つ以外の残りの一つを用いて行わせるように構成されている。なお、本明細書において「制御部10(又は後述する通信部20)が特定の動作又は処理をするように(又はしないように)構成される」は、制御部10(又は通信部20)にその特定の動作又は処理をさせる(又はさせない)命令が、制御部10の動作や処理を記述するプログラムに、すなわちソフトウェアSWに含まれていることを含んでいる。
【0038】
例えば、制御部10は、
図2に示されるように、記憶部4に、ソフトウェアSWの第1部分SW1を第1記憶領域A1に記憶させ、第2部分SW2を、第2記憶領域A2に記憶させる。そして、その場合、制御部10は、記憶部4に、第3記憶領域A3を用いて、第1部分SW1又は第2部分SW2のアップデートを行わせる。以下では、この場合を例に本実施形態の警報器100の構成や作用が説明される。しかし、前述したように、制御部10は、第1~第3の記憶領域A1、A2、A3のうちの任意の二つに第1部分SW1又は第2部分SW2をそれぞれ記憶させ、それら二つの部分のいずれかのアップデートの際には、第1~第3の記憶領域A1、A2、A3のうちの残りの一つを用いて行わせることができる。
【0039】
制御部10は、具体的には、
図2の例における第1部分SW1又は第2部分SW2のアップデートでは、第1部分SW1又は第2部分SW2のアップデート後の命令を第3記憶領域A3に記憶させる。すなわち、制御部10は、第1部分SW1のアップデートでは、記憶部4に、第1部分SW1のアップデート後の命令を第3記憶領域A3に記憶させる。また制御部10は、第2部分SW2のアップデートでは、記憶部4に、第2部分SW2のアップデート後の命令を第3記憶領域A3に記憶させる。さらに、制御部10は、第3記憶領域A3への第1部分SW1又は第2部分SW2のアップデート後の命令の書き込み完了後、第1部分SW1又は第2部分SW2の実行時に参照する記憶部4の領域を第1記憶領域A1又は第2記憶領域A2から第3記憶領域A3に変更する。
【0040】
すなわち、制御部10は、第1部分SW1のアップデートでは、第3記憶領域A3への第1部分SW1のアップデート後の命令の書き込み完了後、第1部分SW1の実行時に参照する記憶部4の領域を第1記憶領域A1から第3記憶領域A3に変更する。また、制御部10は、第2部分SW2のアップデートでは、第3記憶領域A3への第2部分SW2のアップデート後の命令の書き込み完了後、第2部分SW2の実行時に参照する記憶部4の領域を第2記憶領域A2から第3記憶領域A3に変更する。例えば、制御部10は、第3記憶領域A3へのアップデート後の命令の書き込み後に第1部分SW1及び第2部分SW2のうちのアップデートされた一方に含まれる命令を実行する場合に、処理装置1によって次に実行されるべき命令が格納されている記憶部4のアドレスを保存するプログラムカウンタ(図示せず)をC-0000にセットする。
【0041】
本実施形態では、制御部10が、このようにソフトウェアSWのアップデートを行う、具体的には、アップデート後の第1部分SW1又は第2部分SW2が含む命令を第3記憶領域A3に書き込ませ、その後にアップデート後の第1部分SW1又はアップデート後の第2部分SW2を実行するときには第3記憶領域に記憶された命令を実行する。そのため、第1部分SW1及び第2部分SW2のいずれか一方を実行しながら、その一方のアップデートを行うこと、又は他方のアップデートを行うことができる。例えば、第2部分SW2を実行しながら、報知機能に関する命令を含む第1部分SW1のアップデートを行うことができる。またアップデート前の第1部分SW1を実行しながら、第1部分SW1のアップデートを行うことができる。そして、アップデートされない第1部分SW1を実行しながら、すなわち、報知機能を機能停止にすることなく、第2部分SW2のアップデートを行うことができる。従って制御部10は、前述したように第2部分SW2が報知機能以外の機能に関する命令からなる場合、第2部分SW2のアップデートの間、そのアップデートで変更されない警報器100の報知機能の動作を継続させるように構成され得る。
【0042】
このように本実施形態に依れば、警報器がその動作に関して従うソフトウェアをアップデートすることによって、新たな制御方式などを適宜取り入れることができ、しかも、警報器が有する個々の機能に関して必ずしも必要でない機能停止を少なくすることができる。例えば警報器に関わる法規の改定や技術の伸展に対応若しくは追随することができる。また、警報器に求められる不断の周囲環境の監視及びその結果に基づく報知が、そのような改定後の法規への対応や伸展する技術への追随をもたらすソフトウェアのアップデートの最中も、略絶えることなく継続されると考えられる。
【0043】
なお、本実施形態の警報器100において、ソフトウェアSWの第1部分SW1及び第2部分SW2の両方がアップデートされてもよい。その場合、例えば、まず第1部分SW1及び第2部分SW2のいずれか一方が第3記憶領域A3を用いてアップデートされる。そして、第1部分SW1及び第2部分SW2の他方が、アップデート前の第1部分SW1及び第2部分SW2の一方が記憶されていた第1記憶領域A1又は第2記憶領域A2を用いてアップデートされてもよい。また、記憶部4は、さらに第4記憶領域(図示せず)を有していてもよく、その場合、例えば第1部分SW1が第3記憶領域A3を用いて、そして第2部分SW2が図示されない第4記憶領域を用いて、それぞれアップデートされてもよい。
【0044】
<警報器の動作フロー>
図3には、ソフトウェアSW(
図1参照)のアップデートを含む、本実施形態の警報器100における電源投入からの基本的な動作を示すフローチャートが示されている。
図3に示されるように、本実施形態の警報器100では、例えば電源スイッチS(
図1参照)のオン操作や、電源プラグ(図示せず)のコンセントへの挿入によって警報器100の内部回路に電力が供給されると(ステップS0)、制御部10(
図1参照)によるリセット動作P0が行われ(ステップS1)、さらに点検(初期点検)P1が実行される(ステップS2)。
【0045】
リセット動作P0としては、例えば、前述したプログラムカウンタを例えばA-0000番地のような所定のアドレスに設定すること、処理装置1(
図1参照)が備える各種のレジスタなどの一次記憶領域をクリアすること、及び、各種のフラグを“真(1)”又は“偽(0)”の特定の状態に設定すること、などが例示される。点検P1では、例えば、検知部12及び報知部13(
図1参照)を構成するセンサやスピーカーなどのハードウェアの点検を行うことによって報知機能の点検が実施される。例えば処理装置1が、検知部12や報知部13に点検用の信号を送信し、検知部12や報知部13から適切な応答があるか否かを判断し、報知部13などを動作させることによってその判断結果をユーザーなどに知らせる。点検P1が行われるので、例えば警報器100が工場での出荷検査から長期の保管後に使用開始される場合でも、また、長期の停止期間の後に警報器100が再稼働される場合でも、報知機能不全の警報器100が監視の用に供されるのを防ぐことができる。このように制御部10は、警報器100の電源投入時に、警報器100の所定のリセット動作P0及び報知機能に関する点検P1を含む初期動作P10を行うように構成されていてもよい。
【0046】
点検P1の実施後、周囲環境の監視が行われる(ステップS3)。すなわち検知部12によって警報器100の周囲の温度やガスの濃度などが感知され、周囲環境が特定の状態にある場合には、警報などを発してユーザーなどに報知される。そのような周囲環境の監視と並行して、ソフトウェアの第1部分又は第2部分のアップデートが求められると(ステップS4で“F”又は“S”)、前述したような方法で、記憶部4の記憶領域(例えば第3記憶領域A3(
図2参照))にアップデート後の第1部分又は第2部分が書き込まれる(ステップS5又はS6)。前述したように、ステップS5又はステップS6での書き込み中も、ソフトウェアの第1部分及び第2部分に含まれる命令に基づく処理は、処理装置1によって実行され得る。なお、ソフトウェアのアップデートは、例えば、警報器100のユーザーによる第1部分及び/又は第2部分のアップデートを指示する警報器100へのスイッチ操作や、アップデート後の第1部分又は第2部分を記憶する媒体と警報器100との接続などによって求められ得る。
【0047】
一方、ソフトウェアのアップデートが求められていない場合には(ステップS4で“N”)、監視の停止が求められない(ステップS8で“N”)限り、ステップS3に戻って周囲環境の監視が継続される。一方、監視の終了が求められる場合は(ステップS8で“Y”)、周囲環境の監視が終了する(ステップS9)。なお、周囲環境の監視の停止は、例えば、電源スイッチSのオフ操作若しくは他の所定の入力手段(図示せず)を通じた監視停止の指示の入力、又は、図示されない電源プラグのコンセントからの引き抜き操作、などによって要求される。
【0048】
図3の例では、ステップS5又はステップS6におけるアップデート後の第1部分又はアップデート後の第2部分の書き込み後、リセット動作P0(ステップS7)が実行され、監視の停止が求められない(ステップS8で“N”)限り、ステップS3に戻って周囲環境の監視が継続される。すなわち、アップデート後の第1部分又はアップデート後の第2部分の書き込み後には、初期動作P10のうちのリセット動作P0だけが行われている。リセット動作P0において、例えば、前述したプログラムカウンタが、
図2の例の第3記憶領域A3内の所定のアドレス(例えば第3記憶領域A3の先頭アドレスであるC-0000)に設定されてもよい。
【0049】
このように
図3の例では、アップデート後の第1部分又はアップデート後の第2部分の所定の記憶領域への書き込み後、リセット動作P0は実行されるが、検知部12や報知部13などが点検される点検P1は実施されない。そのため、ソフトウェアのアップデート後に、警報器100の報知機能が機能しない期間の発生を防ぐことができる。
【0050】
すなわち、点検P1の実行中は、点検用の信号に応答したり点検用の疑似環境について感知したりする必要があるため、例えば検知部12が実際の周囲環境の監視をなし得ないことがある。人体などのへの危害を未然に防ぐべく用いられる警報器100にとって、そのように周囲環境の監視ができない期間が生じることは好ましくない。一方、ソフトウェアのアップデート中に検知部12や報知部13に故障が生じる可能性は低いと考えられる。特に、第2部分のアップデートであってその第2部分が報知機能以外の機能に関する命令からなる場合、アップデートが報知機能に支障をもたらす可能性は極めて低いと考えられる。従って、
図3の例のように、電源投入後に行われる点検P1がソフトウェアのアップデート後には実施されなくても、報知機能に問題は生じ難い。むしろ、警報器100の本質的機能である報知機能が停止することを防ぐことができる。
【0051】
制御部10は、
図3の例のように、第1部分のアップデート後、及び第2部分のアップデート後のいずれか又は両方において、初期動作P10のうちのリセット動作P0だけを行うように構成されていてもよい。すなわち制御部10は、ソフトウェアの第2部分が報知機能以外の機能に関する命令からなる場合、第2部分のアップデート中だけでなくアップデートの完了時にも、報知機能の動作を継続させるように構成され得る。
【0052】
<一実施形態の警報器の他の例>
図4には、一実施形態の警報器の他の例である警報器101の主要な構成要素がブロック図で示されている。警報器101は、通信部20を含んでいる点で、
図1に示される警報器100と異なっている。
図4において、
図1の例の警報器100の構成要素と同様の構成要素については、
図1に付された符号と同じ符号が付されるか省略され、その構成要素に関する繰り返しとなる説明は省略される。
【0053】
図4に示されるように、警報器101は、
図1の例の警報器100と同様に、制御部10と、記憶部4と、電源部3と、検知部12と、報知部13とを含み、さらに通信部20を含んでいる。通信部20は、警報器101と外部機器Eとの間の通信を制御し、且つ実行する。すなわち通信部20は、警報器101が有する警報器101と外部機器Eとの間の信号の送信及び/又は受信を含む通信機能を担っている。制御部10と通信部20とは、好ましくは互いに相手方との間で信号の送受が可能なように構成されている。通信部20にも、電源部3から電源スイッチSを介して電力が供給される。
【0054】
通信部20は、無線回線C1又は有線回線C2を介して外部機器Eとの間で直接送受信を行ってもよく、無線回線C1又は有線回線C2で接続された、例えばインターネットやローカルエリアネットワーク(LAN)などのネットワークNを介して外部機器Eとの間で信号の送受信を行ってもよい。外部機器Eとしては、警報器101以外の同種、又は検知対象の異なる警報器、並びに、警報器101の動作を監視若しくは制御する、及び/又は、警報器101での検知結果若しくは警報発報経過を収集して統計処理若しくは解析するサーバーのような情報処理装置が例示される。しかし、外部機器Eはこれらに限定されない。
【0055】
通信部20は、主に、処理装置1及びその周辺部品(図示せず)と、送受信部22とで構成されている。すなわち、
図4の例において、制御部10及び通信部20は処理装置1を共有している。警報器101の処理装置1は、
図1の警報器100の処理装置1と同様に、ソフトウェアSWを内蔵していて警報器101の報知機能の制御を担う、マイコンやASICなどの半導体装置からなる。ソフトウェアSWは、通信部20のよる外部機器Eとの通信に関する命令が記述された制御プログラムなどのソフトウェアを含み得る。ソフトウェアSWは、処理装置1が備える記憶手段11の一部で構成される記憶部4に内蔵されている。処理装置1を構成する半導体装置は、
図4の例では、通信部20の通信、例えば後述する定期通信も制御する。すなわち、制御部10及び通信部20は、ソフトウェアSWを内蔵していて報知機能、及び通信部20による定期通信を制御する半導体装置を共有している。通信部20において処理装置1は、記憶部4に記憶されているソフトウェアSWが含む動作プログラムに従って外部機器Eとの通信を制御する。
【0056】
図1に例示の処理装置1は記憶手段11と計時手段21とを含んでいる。記憶手段11は、少なくともその一部で記憶部4を構成している。従って、記憶手段11は、少なくとも記憶部4を構成するEEPROMやフラッシュメモリなどの再書き込み可能な記憶領域を含み、記憶部4を構成する記憶領域以外にも、PROM、RAM、フラッシュメモリなどを構成する記憶領域を有し得る。
【0057】
計時手段21は、例えば、特定の時点からの経過時間をカウントする。計時手段21は、例えば処理装置1を構成するマイコンなどの半導体装置に構成されたカウンタやタイマであり得る。計時手段21は、例えば、後述する通信部20による「定期通信」において、最後に警報器101の状態が外部機器Eに送られてからの経過時間をカウントしてもよい。
【0058】
<通信部の構成及び作用>
送受信部22は、無線通信又は有線通信によって外部機器Eとの間で信号を送受する。通信部20が無線によって外部機器Eとの間で信号の送受信を行う場合には、送受信部22はアンテナ22aを備え得る。送受信部22は、外部機器Eと警報器101との間で電気信号を送受するように構成された、集積回路装置や個々の部品からなる電気回路などのハードウェアにより構成される。送受信部22は、外部機器Eとの通信に必要となる、信号の変換(アナログ/デジタル変換や信号のレベル変換など)、信号の増幅、信号の合成及び分解、信号の変調及び復調、外部機器Eとの間のリンクの設定、及び/又は誤り制御、などを行うように構成され得る。例えば、送受信部22は、外部機器Eとの通信に必要な信号処理を行うように設計されたASICなどからなる通信制御IC、又はモデムIC、及びその周辺回路で構成されていてもよい。
【0059】
通信部20において処理装置1は、警報器101の動作中に送受信部22で行われる、警報器101と外部機器Eとの間での交信に必要な動作を全体的に制御する。例えば、処理装置1は、警報器101における周囲環境の監視結果に基づいて実行される報知に関する情報を外部機器Eに送る動作を制御してもよい。この「報知に関する情報」は、例えば、検知部12で得られる逐次若しくは継続的な検知データ、周囲環境が特定の状態にあると判断する閾値(警報発報基準)、警報の発報履歴、及び、警報器101の状態(例えば正常状態で通常の監視実行中、電池式の場合の電池残量若しくは電池切れ、故障中、及び、警報発報中など)、などであり得る。処理装置1は、さらに、上記「報知に関する情報」以外の情報を外部機器Eに送る動作を制御してもよく、警報器101の制御に関する情報などの任意の情報を外部機器Eから受け取る動作を制御してもよい。
【0060】
通信部20は、通常の監視の実行中、電池切れ状態、故障中、及び、警報発報中などの上記「警報器101の状態」を所定の周期で外部機器Eに送る通信(定期通信)を行うように構成されていてもよい。所定の周期は、警報器101の検知対象や使用場所などによって適宜選択される。所定の周期は、例えば数分程度であってもよく、数時間、あるいは数日程度であってもよい。定期通信を行うことによって、外部機器Eから適時に適切な制御を受け得ることがある。例えば、制御部10によって検知部12での監視結果に基づいて警報の要否が判断され、その判断において警報が必要と判断されるときは、警報が必要と判断されている間、「定期通信」において警報器101が警報状態にあることを外部機器Eに送るように通信部20が構成されていてもよい。なお、「警報状態」では必ずしも報知部13によって警報が発せられるのではなく、例えばネットワークNを介して、警報器101の周囲環境が特定の状態にあることが遠隔地のヒトや機器に報知されてもよい。
【0061】
警報器101においても、記憶部4は、前述したように再書き込み可能なEEPROMなどによって構成されており、ソフトウェアSWのアップデートが警報器101の使用開始後にも可能なように構成されている。外部機器Eとの通信を制御する処理装置1が従う命令を含むソフトウェアSWのアップデートが警報器101の使用開始後にも可能なので、例えば、外部機器Eとの通信に用いる通信規格の変更などに応じて、ソフトウェアSWをアップデートすることができる。
【0062】
特に、警報器を含む各種機器間の通信において準拠される通信規格は、例えば新たに出現するハッキング技術などに対抗すべく、セキュリティ要件などに関して適宜改定されている。また通信規格は、新たに開発される通信技術を取り入れるべく改定されることもある。例えば、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)が制定するIEEE802.1において仕様が規定されているネットワーク規格であるTSN(Time-Sensitive Networking)では、2021年から遡る数年の間に幾度かの改定が行われている。ソフトウェアSWのアップデートが可能でないと、これら通信規格の改定に準拠できず、警報器101と外部機器Eとの間の通信がハッキングや盗聴などの脅威に晒されたり、警報器101の使用が制限されたりすることも起こり得る。これに対して警報器101では、警報器101の使用開始後もアップデートが可能なようにソフトウェアSWが内蔵されている。そのため、前述したように、外部機器Eとの通信に用いる通信規格の変更などに応じて、ソフトウェアSWをアップデートして警報器101を適切に動作させることができる。
【0063】
また、通信部20を備える警報器101では、ソフトウェアSWのアップデートは、通信部20と外部機器Eとの通信を介して行われてもよい。すなわち、アップデート後のソフトウェアSWが外部機器Eから送信され、通信部20で受信されたアップデート後のソフトウェアSWが、記憶部4に記憶されてもよい。さらに、通信部20は、前述したように、外部機器Eとの間で無線によって信号の送受信を行い得るので、ソフトウェアSWのアップデートは、外部機器Eと通信部20との無線通信に基づいて行われてもよい。すなわち、ソフトウェアSWのアップデートは、所謂「OTA(Over-The-Air)アップデート」であってもよく、前述したようにソフトウェアSWがファームウェアである場合は、「ファームウェアOTA」であってもよい。その場合、通信ケーブルのような物理的な回線を警報器101と外部機器Eとの間に設けることなく、例えば、容易に遠隔地からでもソフトウェアSWをアップデートすることができる。従って、例えば改定後の法規に従った周囲環境の監視及び警報の発報や、改定後の通信規格に沿ったセキュリティレベルの高い通信を、容易に警報器101に行わせることができる。
【0064】
図2を参照して前述したように、ソフトウェアSWは第1部分SW1及び第2部分SW2(
図2参照)を含んでおり、警報器101では第1部分SW1は警報器101の報知機能に関する命令を含んでいる。また警報器101ではソフトウェアSWは通信部20の動作に関する命令も含んでいる。
【0065】
通信部20の動作に関する命令のうち警報器101の報知機能に関する命令、例えば、検知部12及び報知部13の制御や特定の状態の判断基準などに関する外部機器Eからの信号の受信に関する命令や外部機器Eを介した警報の発報に関する命令は、第1部分SW1に含まれ得る。また、通信部20の動作に関する命令のうち警報器101の報知機能以外の機能に関する命令は第2部分SW2に含まれ得る。例えば、第2部分SW2は、通常の監視の実行中のような「警報器100の状態」が所定の周期で外部機器Eに送られる前述した「定期通信」に関する命令を含んでいてもよい。そして、第1部分SW1のアップデートの間、アップデートされない第2部分SW2に含まれる命令に従って「定期通信」が継続されてもよい。すなわち、通信部20は、第1部分SW1のアップデートの間、前述した「定期通信」を継続するように構成されていてもよい。
【0066】
なお、
図2を参照して説明されたアップデートの方法によれば、第1部分SW1又は第2部分SW2のアップデートにおいて、アップデートされる部分にそのアップデート前に含まれている命令の実行がアップデート中でも可能である。従って、例えば第2部分SW2に含まれる命令に従って実行される「定期通信」は、第2部分SW2のアップデートにおいても、アップデート中はアップデート前の第2部分SW2に従って、そしてアップデート後はアップデート後の第2部分SW2に従って継続されてもよい。
【0067】
図5には、
図4の例の警報器101における、ソフトウェアのアップデートを含む動作の一例を示すフローチャートが示されている。
図5の例は、通信部20(
図4参照)において前述した「定期通信」が行われる例である。
図5において一点鎖線L1の左側には、主に制御部10(
図4参照)での処理が示され、一点鎖線L1の右側には、通信部20での処理が示されている。なお、
図5に示される各ステップのうち、
図3に示されるステップと同様の動作や処理を行うステップについては、
図3と同じ符号(ステップS1~S9)が付され、繰り返しとなる説明は、適宜省略される。一点鎖線L1の左側は
図3と略同じであるので、各ステップの説明の多くが省略される。
【0068】
図5の例においても、電源の投入(ステップS0)後、リセット動作P0(ステップS1)及び点検P1(ステップS2)が行われる。なお、
図5の例においてステップS1で行われるリセット動作P0は、警報器101と外部機器E(
図4参照)との間の通信リンクの設定を含んでいてもよい。また
図5の例において行われる点検P1では、通信部20が外部機器Eへ点検用の信号を送り、外部機器Eから適切な返信が送られてくるか否かを処理装置1が判断して報知部13(
図4参照)などを用いてその判断結果をユーザーなどに知らせてもよい。
【0069】
点検P0の実行後、制御部10において周囲環境の監視が開始され(ステップS3)、その監視と並行して、ソフトウェアの第1部分又は第2部分のアップデートが求められると(ステップS4で“F”又は“S”)、前述したような方法でアップデートが実行される(ステップS5又はS6)。警報器101では、ソフトウェアのアップデートは、アップデート後のソフトウェアを供給する外部機器Eから送られるアップデート後のソフトウェアの受信によって求められてもよい。外部機器Eから送られるアップデート後のソフトウェアを含むデータフレームには、第1部分のアップデートか第2部分のアップデートかを示すビット列からなる識別符号が含まれていてもよい。また、警報器101においてステップS7で実行されるリセット動作P0は、通信部20と外部機器Eとの通信履歴の消去や外部機器Eとの通信リンクの再設定などを含んでいてもよい。
【0070】
警報器101では、点検P1(ステップS2)の実行後、一点鎖線L1の右側に示されるように、通信部20によって、警報器101の状態が「定期通信」として外部機器Eに送信される(ステップS11)。通信部20は、定期通信を行うたびに、例えば計時手段21を構成するカウンタをリセットして時間のカウントを開始する。そして、制御部10によって周囲環境の監視が行われている間、通信部20は、計時手段21のカウント値に基づいて直前の定期通信から所定の時間が経過したかどうかを判断する(ステップS12)。通信部20は、ステップS12において所定の時間が経過していない場合は(ステップS12で“N”)、計時手段21の時間カウントをアップし(ステップS13)、監視の停止が求められていない限り(ステップS8で“N”)、ステップS12に戻って所定時間の経過の有無の判断を継続する。通信部20は、ステップS12において所定の時間が経過している場合は(ステップS12で“Y”)、「定期通信」として警報器101の状態を外部機器Eに送信する(ステップS14)。その後、通信部20は、計時手段21のカウント値をリセットする(ステップS15)。そして監視の停止が求められていない限り(ステップS8で“N”)、所定時間の経過の有無の判断が継続される。
図2を参照して説明された方法でソフトウェアのアップデートが実行されるので、アップデートの実行中も「定期通信」が継続され得る。
【0071】
図5に示されるように、本実施形態の警報器101では、周囲環境の監視中、ソフトウェアのアップデートが実行されていない間だけでなく、ソフトウェアのアップデート中も、そのアップデートと並行して、定期通信が継続され得る。例えば、正常状態で監視実行中、電池残量若しくは電池切れ、故障中、及び、警報発報中、などの警報器101の状態が、途絶えずに周期的に外部機器Eに送信され得る。そのため、外部機器Eによって警報器101が適切に制御されることがある。また、外部機器Eにおいて警報器101の稼働状態に関する有用なデータが収集されて解析に用いられることがある。さらに、公的機関などの定める基準に適合し得ることがある。
【0072】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0073】
また、上記実施形態では、説明の便宜上、実施形態の警報器の処理動作を処理フローに沿って順番に処理を行うフロー駆動型のフローチャートを用いて説明したが、本発明はこれに限られない。本発明では、警報器の処理動作を、イベント単位で処理を実行するイベント駆動型(イベントドリブン型)の処理により行ってもよい。この場合、完全なイベント駆動型で行ってもよいし、イベント駆動及びフロー駆動を組み合わせて行ってもよい。
【符号の説明】
【0074】
100、101 警報器
1 処理装置(半導体装置)
10 制御部
12 検知部
13 報知部
20 通信部
22 送受信部
3 電源部
4 記憶部
A1 第1記憶領域
A2 第2記憶領域
A3 第3記憶領域
AB1~AB3 アドレスバス
DB1、DB2 データバス
E 外部機器
S 電源スイッチ
SW ソフトウェア
SW1 第1部分
SW2 第2部分
P0 リセット動作
P1 点検
P10 初期動作