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特許7441268研磨用または研削用のキャリアおよびそれを用いた磁気ディスク用アルミ基板の製造方法
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  • 特許-研磨用または研削用のキャリアおよびそれを用いた磁気ディスク用アルミ基板の製造方法 図1
  • 特許-研磨用または研削用のキャリアおよびそれを用いた磁気ディスク用アルミ基板の製造方法 図2
  • 特許-研磨用または研削用のキャリアおよびそれを用いた磁気ディスク用アルミ基板の製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】研磨用または研削用のキャリアおよびそれを用いた磁気ディスク用アルミ基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/28 20120101AFI20240221BHJP
   B24B 7/17 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
B24B37/28
B24B7/17 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022091572
(22)【出願日】2022-06-06
(62)【分割の表示】P 2017150986の分割
【原出願日】2017-08-03
(65)【公開番号】P2022107820
(43)【公開日】2022-07-22
【審査請求日】2022-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】390003193
【氏名又は名称】東洋鋼鈑株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 純一
(72)【発明者】
【氏名】山本 靖雄
(72)【発明者】
【氏名】水落 憲一
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-025637(JP,A)
【文献】特開2004-146471(JP,A)
【文献】特開2004-114208(JP,A)
【文献】特開平10-296596(JP,A)
【文献】特開平11-033900(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0173222(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/28
B24B 7/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨装置または研削装置で用いられる研磨用または研削用のキャリアであり、前記キャリアは、研磨または研削の対象物である基板を保持するための複数個の同一径の円形保持孔を有する基板保持部と、該基板保持部の外周に設けられたギア部を有する円盤状であり、前記ギア部のピッチ円の直径が294mmであるキャリアであって、
前記キャリアは
前記複数個の円形保持孔は前記キャリアの中心と前記各円形保持孔の中心との距離が等しい位置に配置されており、
各円形保持孔の中心同士を結ぶピッチ円の直径が175mm以上178mm以下であり、かつ、前記キャリアの中心を通り、前記円形保持孔に接する接線において前記キャリアの中心と前記接線と円形保持孔の接点間の距離を中心-接点間距離としたときに、前記中心-接点間距離が72mm以上75mm以下であり、
前記キャリアは、厚みが0.25mm~0.6mmであり、
前記キャリアの隣接する2つの円形保持孔の円弧同士が最も近接する箇所での距離(d)が4mm以上7mm以下であり、
前記キャリアは、素材がアラミド樹脂であることを特徴とするキャリア。
【請求項2】
前記キャリアは、アラミド樹脂、ポリエステル樹脂またはCFRP、アラミド樹脂の3層構造であることを特徴とする請求項1に記載のキャリア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨用または研削用のキャリアおよびそれを用いた磁気ディスク用アルミ基
板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスク用基板には、円盤状のガラス基板やアルミ基板等が用いられている。これ
らの基板は、表裏面に対して研削処理や、必要に応じてめっき処理が施された後に、研磨
処理が施される。例えば研磨処理の場合、被処理材である研磨用基板を保持するため複数
個の円形保持孔を有する円盤状の研磨用キャリアが用いられ、該円形保持孔内に研磨用基
板が収容され、その状態で研磨用キャリアは適宜の研磨装置に装着されて、研磨用基板の
表裏面の研磨が行われる。研削処理を行う場合にも、適宜の研削装置を用いて、基板に対
してほぼ同様な研削処理が行われる。
【0003】
特許文献1あるいは特許文献2には、基板の研磨処理に用いる研磨装置の一例が記載さ
れている。図3および図4は、従来知られた研磨装置の一例を示しており、研磨装置は、
図3に示すように、それぞれ所定の回転比率で回転駆動されるインターナルギア101お
よびサンギア102を有する研磨用キャリア装着部100を備えている。また、研磨装置
は、図4に示すように、研磨用キャリア装着部100を上下から挟持するようにして、互
いに逆回転駆動される上定盤103および下定盤104を有している。
【0004】
研磨用キャリア装着部100には、図5に一例を示すよう形状の円盤状の研磨用キャリ
ア1の適数個(図3に示した例では4個)が取り付けられる。この例において、研磨用キ
ャリア1は、被研磨体である基板50(図4に点線で示される)を保持するための複数個
(図の例では5個)の同一径の円形保持孔2を有する基板保持部3と、該基板保持部3の
外周に設けられたピッチ円5をなすギア部4、とからなる円盤状のものであり、図3に示
すように、そのギア部4を研磨用キャリア装着部100のインターナルギア101および
サンギア102にかみ合わせるようにして、取り付けられている。インターナルギア10
1およびサンギア102が回転することにより、研磨用キャリア1は、歯数の差に応じた
遊星運動を行う。
【0005】
研磨用キャリア1における円形保持孔2の配置形態はいくつか存在するが、特許文献2
に記載の研磨用キャリア1においては、図5に示すように、複数個の円形保持孔2は研磨
用キャリア1の中心Oと各円形保持孔2の中心Pとの距離が等しい位置に配置されており
、各円形保持孔2の中心Pを結ぶ線は、直径Dの一つのピッチ円6を形成するようにされ
ている。
【0006】
被研磨体である円形の基板50の素材には、ガラス基板やアルミ基板が多く用いられ、
そのような基板50が前記した円形保持孔2内に収容された状態で、前記したように研磨
用キャリア1に対して遊星運動が与えられると同時に、上定盤103および下定盤104
は互いに逆回転し、それらに設けられた研磨パッド105,106によって、基板50の
表裏の面が研磨される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2000-288919号公報
【文献】WO2014/156798A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、情報記録媒体の記録密度が求められ、また、記録媒体自体をより薄手のものとす
ることが求められている。磁気ディスク用のガラス基板あるいはアルミ基板についても同
様であり、基板の薄板化が課題となっている。また、基板の薄板化とともに、研磨装置あ
るいは研削装置において、該基板を保持する前記したキャリアをより薄手のものとするこ
とも課題となっている。本発明者らは、研磨用あるいは研削用のキャリアの薄板化につい
て、鋭意研究を行ってきているが、その過程で、キャリアが薄手のものとなると、図5
破線で囲った領域7のように、研磨用キャリア1に形成した円形保持孔2と円形保持孔2
との間の狭くなった箇所に、作業中に撓みが生じやすいこと、生じた撓みが引き金となっ
てキャリアが破損しやすいことを経験した。また、記録容量の増大化のために、磁気ディ
スク用基板等の大径化が検討されつつあるが、磁気ディスクの大径化に伴い、キャリアに
形成した円形保持孔も大型化され、互いに隣り合う円形保持孔2と円形保持孔2との間の
隙間が狭くなり、狭くなった箇所に撓みが生じやすくなると考えられる。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、現在、多く使用されている、外周
に形成したギア部のピッチ円の直径が294mmである研磨用あるいは研削用のキャリア
において、キャリアが薄手のものとなっても、また、基板を保持する円形保持孔の径が現
在よりも大きくなった場合でも、研磨装置あるいは研削装置による基板の研磨作業あるい
は研削作業中に、撓みや破損を生じ難くして、耐久性を向上させることを可能とした、研
磨用または研削用のキャリアを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による研磨装置または研削装置で用いられる研磨用または研削用のキャリアは、
研磨または研削の対象物である基板を保持するための複数個の同一径の円形保持孔を有す
る基板保持部と、該基板保持部の外周に設けられたギア部を有する円盤状であり、前記ギ
ア部のピッチ円の直径が294mmであるキャリアであって、前記複数個の円形保持孔は
前記キャリアの中心と前記各円形保持孔の中心との距離が等しい位置に配置されており、
各円形保持孔の中心同士を結ぶピッチ円の直径が175mm以上178mm以下であり、
かつ、前記キャリアの中心を通り、前記円形保持孔に接する接線において前記キャリアの
中心から前記接線の円形保持孔との接点までの間の距離を中心-接点間距離としたときに
、前記中心-接点間距離が72mm以上75mm以下であることを特徴とする。
【0011】
本願において、研磨装置における研磨の対象物はアルミ基材上にNi-Pめっき皮膜が
形成された状態のアルミ基板であり、研磨面はNi-Pめっき皮膜の表面になる。一方、
研削装置における研削の対象物はめっき皮膜を形成する前のアルミ基材であり、研削面は
アルミ基材の表面になる。
【0012】
後の実施例に記載するように、本発明によるキャリアでは、厚みが同じであり、かつ、
円形保持孔の直径が同じものであっても、前記各円形保持孔の中心を結ぶピッチ円の直径
が173mmであり、前記中心-接点間距離が71.8mmである従来の研磨用キャリア
と比較して、正常状態で使用される使用時間を、ほぼ2倍にまで延長することができた。
円形保持孔の直径を2mm程度大きくしても、前記各円形保持孔の中心を結ぶピッチ円の
直径、および前記中心-接点間距離を、本発明の範囲内とすることにより、やはり正常状
態で使用される使用時間を長くすることができる。
【0013】
すなわち、本発明によるキャリアを用いることにより、被研磨体あるいは被研削体であ
る基板の薄板化と大径化の双方に適切に対処することが可能となる。
【0014】
本発明による研磨用キャリアの厚みは、被研磨体あるいは被研削体の厚みよりも薄けれ
ばよいが、0.25mm~0.6mmの厚みであることが好ましく、0.5mm~0.6
mmの厚みであることがより好ましい。
【0015】
本発明によるキャリアにおいて、素材としては、アラミド樹脂、FRP、PC等を用い
ることができ、特にアラミド樹脂が好ましい。キャリアには、これらの素材を単独で用い
てもよく、また、アラミド樹脂、ポリエステル樹脂またはCFRP、アラミド樹脂の3層
構造としてもよい。
【0016】
本発明は、さらに、上記したいずれかのキャリアにおける円形保持孔内に被研磨体であ
るアルミ基板を保持する工程と、アルミ基板を保持したキャリアを研磨装置に装着してア
ルミ基板の両面を研磨する工程と、を少なくとも含むことを特徴とする磁気ディスク用ア
ルミ基板の製造方法をも開示する。
【発明の効果】
【0017】
本発明による研磨用または研削用のキャリアを用いることにより、研磨装置または研削
装置による基板の研磨作業または研削作業において、基板の薄板化および大径化に対応し
ながら、長時間の研磨処理または研削処理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一実施の形態である研磨用キャリアを示す平面図。
図2】研磨用キャリアの部分拡大図。
図3】研磨装置を説明するための図。
図4】研磨装置の部分的断面図。
図5】研磨用キャリアに生じる撓み領域を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明によるキャリアの一実施の形態を、キャリアが研磨
用キャリアである場合を例として、説明する。なお、以下に説明する研磨用キャリアは、
図3および図4を参照して先に説明したような、従来知られた研磨装置(あるいは研磨用
キャリア装着部)100と共に用いることができる。よって、以下の説明では、研磨用キ
ャリアについてのみを説明し、それを用いる研磨装置および研磨用キャリア装着部100
についての説明は、省略する。
【0020】
図1に示す研磨用キャリア10は、アラミド樹脂製であり、全体として、中心Oを持つ
円盤状であり、厚みは0.5mmである。研磨用キャリア10は、本体部である基板保持
部13と、基板保持部13の外周に形成したギア部14とを有している。前記ギア部14
がなすピッチ円15の中心は、研磨用キャリア10の中心Oと共通であり、ピッチ円15
の直径は、294mmである。なお、研磨用キャリア10の厚みは、0.25mm~0.
6mmの範囲であれば、任意であってよい。被研磨体である円形の基板50の厚みに応じ
で、実験的に最適値を設定すればよい。
【0021】
基板保持部13には、被研磨体である円形の基板50(例えば、メッキを施したアルミ
基材)を保持するための5個の同一径である円形保持孔12が、基板保持部13に開口し
て形成されている。本実施形態では、互いに同一径を有する5個の円形保持孔12が形成
されている。各円形保持孔12の中心Pと研磨用キャリア10の中心Oとの距離s1はす
べて等しく、したがって、5つの円形保持孔12の中心Pを結ぶ円(ピッチ円16)の中
心は、研磨用キャリア10の中心Oと同じである。研磨用キャリア10において、ピッチ
円16の直径D(=2×s1)は、175mm以上178mm以下の範囲である。また、
5つの円形保持孔12は、周方向に等間隔で配置されており、隣接する円形保持孔12、
12の中心P,Pと研磨用キャリア10の中心Oとを結ぶ2本の直線がなす角度αは、す
べて360/5=72度である。
【0022】
また、図2の部分拡大図に示すように、研磨用キャリア10の中心Oを通り、各円形保
持孔12に接するように引いた接線17において、研磨用キャリア10の中心Oから、接
線17の円形保持孔12との接点tまでの間の距離を中心-接点間距離s2としたときに
、中心-接点間距離s2は72mm以上75mm以下となるようにされている。円形保持
孔12の中心Pと研磨用キャリア10の中心Oとの距離s1が一定値のとき、中心-接点
間距離s2の値に、円形保持孔12の半径rの大きさは左右される。
【0023】
今、一例として、ピッチ円16の直径Dを175mm(s1=87.5mm)とし、中
心-接点間距離s2が72mmの場合と、75mmの場合での、円形保持孔12の半径r
を求めると、r=(s1)-(s2) から演算して、中心-接点間距離s2が7
2mmの場合は、円形保持孔12の半径rは略50mmとなり、中心-接点間距離s2が
75mmの場合は、rは略45mmとなる。また、ピッチ円16の直径Dを178mm(
s1=89mm)とし、中心-接点間距離s2が72mmの場合と、75mmの場合での
、円形保持孔12の半径rを求めると、中心-接点間距離s2が72mmの場合には、円
形保持孔12の半径rは略52mm、中心-接点間距離s2が75mmの場合には、円形
保持孔12の半径rは略48mmとなる。
【0024】
すなわち、上記の研磨用キャリア10において、ピッチ円16の直径D(=2×s1)
が175mm以上178mm以下であるときに、円形保持孔12の半径rは45mm~5
2mmの範囲となり、結果、周方向に隣接する2つの円形保持孔12,12の円弧同士が
最も近接する箇所での距離d(図1を参照)は、略4mm~7mmとなる。
【0025】
なお、図5に基づき説明したピッチ円5の直径が294mmである従来から一般的に用
いられてきた研磨用キャリア1においては、ピッチ円6の直径Dは173mmであり、中
心-接点間距離s2に相当する距離は71.8mmであって、円形保持孔2の半径rは略
48mmである。5個の円形保持孔2が等しい周方向の角度で配置しているとした場合に
、周方向に隣接する2つの円形保持孔2,2の円弧同士が最も近接する箇所での距離dは
、約0.5mm~3mmであり、本発明による研磨用キャリア10の場合よりも、周方向
に隣接する2つの円形保持孔2,2の間隔は狭い。
【0026】
上記のように、本発明による研磨用キャリア10では、前記したピッチ円15の直径が
294mmである従来一般的に用いられてきた研磨用キャリアであっても、前記した直径
D(各円形保持孔12の中心Pを結ぶピッチ円16の直径)と、s2(研磨用キャリアの
中心Oから円形保持孔12に接するように引いた接線17において、研磨用キャリアの中
心Oから接線17の円形保持孔12との接点tまでの間の距離である中心-接点間距離)
とを、特定の範囲に限定したことにより、周方向に隣接する2つの円形保持孔12,12
の間隔を広くすることが可能となり、その結果、円形保持孔12,12の間に撓みが生じ
るのを低減できるようになって、研磨用キャリアの使用時間を長くすることが可能となる
【0027】
上記の研磨用キャリア10において、形成する円形保持孔12の数に制限はない。周方
向に配置されている円形保持孔12同士が衝接あるいは重ならないことを条件に任意であ
る。前記ギア部14のピッチ円15の直径が294mmであるキャリアにおいては、最大
数は5個であるが、4個以下であってもよい。生産性を考慮すると、5個であることが望
ましい。また、円形保持孔12の中心P同士を結ぶピッチ円16の直径Dが178mmを
超えると、円形保持孔12の外周と前記ピッチ円15との間の距離が狭くなりすぎて基板
保持部13の強度が低下するので、好ましくない。
【0028】
前記のように、本発明による研磨用キャリア10において、円形保持孔12の半径rは
45mm~52mm(直径90mm~105mm)が好ましく、47.5mm~48.5
mmがより好ましい範囲となる。したがって、ギア部のピッチ円の直径が294mmであ
る従来のキャリアと同じ大きさのキャリアでありながら、表1での本発明品2に示すよう
に、より大径の研磨用基板50を用いることも可能となる。また、後の実施例に示すよう
に、同じ直径の基板を用いる場合に、キャリアの有効使用時間が長くなる。
【0029】
【表1】
【0030】
(実施例)
以下、本発明者らが行った実施例と比較例を説明する。
研磨用キャリアとして、図1に示した形状の研磨用キャリア10を用いた。素材はアラ
ミド樹脂を用い、厚み0.5mmである。また、外周に形成したギア部14が形成するピ
ッチ円15の直径は、実施例および比較例のいずれも294mmである。
【0031】
比較例は、前記表1に示した従来のキャリアに相当する(従来品)。すなわち、円形保
持孔12の中心Pを結ぶピッチ円16の直径D(2×s1)を173mm、中心-接点間
距離s2を71.8mmとした。それにより、直径が96.5mm(r=48.25mm
)である円形保持孔12が周方向に等間隔で5個形成される。
【0032】
実施例として、同じ素材のキャリアを用いたが、円形保持孔12の中心Pを結ぶピッチ
円16の直径D(2×s1)を176mm、前記中心-接点間距離s2を73.6mmと
した(本発明品1)。この場合は、直径が96.5mm(r=48.25mm)である円
形保持孔12が周方向に等間隔で5個形成される。
【0033】
同じ研磨装置(システム精工株式会社製、品番:PH1308/750-50)を用い
、比較例のキャリア(従来品)および実施例のキャリア(本発明品1)における円形保持
孔内に、被研磨体であるアルミ基板(直径95m、厚み0.635mm)を保持して、研
磨作業を行い、キャリアが正常に機能しなくなるまでの、有効使用時間を測定した。結果
、比較例では112時間であり、実施例では246時間であった。
【0034】
従来から使用されているキャリアよりも実施例のキャリアの有効使用時間が長くなった
のは、周方向に隣接する円形保持孔12,12間の距離が大きくなったことが主因である
と考えられる。
【符号の説明】
【0035】
10…研磨用または研削用のキャリア、
12…円形保持孔、
13…基板保持部、
14…ギア部、
15…ギア部がなすピッチ円、
16…円形保持孔の中心を結ぶピッチ円、
17…研磨用キャリアの中心を通り、各円形保持孔に接する接線、
50…被研磨体である円形の基板、
O…キャリアの中心、
P…円形保持孔の中心、
r=円形保持孔の半径、
s1…円形保持孔の中心Pと研磨用キャリアOの中心との距離、
s2…研磨用キャリアの中心Oから接線17の円形保持孔12との接点tまでの間の距離

d:周方向に隣接する円形保持孔と円形保持孔との間の距離、
D…ピッチ円16の直径(=2×s1)
図1
図2
図3
図4
図5