(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】最適リサージュスキャニングのためのスキャニング条件の決定及び保持方法
(51)【国際特許分類】
G02B 26/10 20060101AFI20240221BHJP
【FI】
G02B26/10 C
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022149246
(22)【出願日】2022-09-20
【審査請求日】2022-12-05
(31)【優先権主張番号】10-2021-0124891
(32)【優先日】2021-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519341706
【氏名又は名称】テグ キョンプク インスティテュート オブ サイエンス アンド テクノロジー
【氏名又は名称原語表記】DAEGU GYEONGBUK INSTITUTE OF SCIENCE AND TECHNOLOGY
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100224683
【氏名又は名称】齋藤 詩織
(72)【発明者】
【氏名】ソン チョル
(72)【発明者】
【氏名】イム ジンテク
【審査官】近藤 幸浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-020873(JP,A)
【文献】米国特許第10939802(US,B2)
【文献】特開2012-093577(JP,A)
【文献】国際公開第2012/101782(WO,A1)
【文献】特開2011-053137(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第113015881(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B26/10
G09G 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッシング装置によって行われる最適リサージュスキャニングのためのスキャニング条件の決定及び保持方法において、
2軸に対してそれぞれ既定の周波数範囲内の周波数組み合わせでマッピング時間遅延差による最小スキャニング密度を最大とする場合の周波数組み合わせ及びマッピング時間遅延差
を選択する段階と、
実際位相変化によって調節された遅延インデックスによって、実際時間遅延差と
、前記選択された周波数組み合わせにおける前記マッピング時間遅延差である最適時間遅延差との偏差を補償するために変調された駆動位相オフセットを印加して最適スキャニングを保持する段階と、
を含む、最適リサージュスキャニングのためのスキャニング条件の決定及び保持方法。
【請求項2】
マッピング時間遅延は、各軸の遅延インデックスを通じて調節され、各軸位相は、前記遅延インデックスによって決定された位相変化量を有し、前記位相変化量を反映して、前記駆動位相オフセットが変調される、請求項1に記載の最適リサージュスキャニングのためのスキャニング条件の決定及び保持方法。
【請求項3】
前
記選択する段階は、
前記既定の周波数範囲内で周波数組み合わせを選択する段階と、
選択された前記周波数組み合わせのマッピング時間遅延差による最小スキャニング密度をシミュレーションする段階と、
前記周波数組み合わせを選択する段階及び前記最小スキャニング密度をシミュレーションする段階を、前記既定の周波数範囲内のあらゆる周波数組み合わせに対して繰り返して行う段階と、
前記最小スキャニング密度が既定値以上であり、最大である場合の周波数組み合わせとマッピング時間遅延差とをそれぞれ最適周波数組み合わせ及び最適時間遅延差で選択する段階と、
を含む、請求項1に記載の最適リサージュスキャニングのためのスキャニング条件の決定及び保持方法。
【請求項4】
前記周波数組み合わせを選択する段階は、
小数点N桁数を有した小数点周波数組み合わせを選択する、請求項3に記載の最適リサージュスキャニングのためのスキャニング条件の決定及び保持方法。
【請求項5】
前記最適スキャニングを保持する段階は、
前記実際時間遅延差と前記最適時間遅延差との偏差をリアルタイムで算出する段階と、
前記リアルタイムで算出された偏差を補償するために変調された駆動位相オフセットを印加する段階と、
を含む、請求項3に記載の最適リサージュスキャニングのためのスキャニング条件の決定及び保持方法。
【請求項6】
プロセッシング装置によって行われる最適リサージュスキャニングのためのスキャニング条件の決定方法において、
2軸に対してそれぞれ既定の周波数範囲内で周波数組み合わせを選択する段階と、
選択された前記周波数組み合わせのマッピング時間遅延差による最小スキャニング密度をシミュレーションする段階と、
前記周波数組み合わせを選択する段階及び前記最小スキャニング密度をシミュレーションする段階を、前記既定の周波数範囲内のあらゆる周波数組み合わせに対して繰り返して行う段階と、
前記最小スキャニング密度が既定値以上であり、最大である場合の周波数組み合わせとマッピング時間遅延差と
を選択する段階と、
を含む、最適リサージュスキャニングのためのスキャニング条件の決定方法。
【請求項7】
前記周波数組み合わせを選択する段階は、
小数点N桁数を有した小数点周波数組み合わせを選択する、請求項6に記載の最適リサージュスキャニングのためのスキャニング条件の決定方法。
【請求項8】
請求項6に記載の最適リサージュスキャニングのためのスキャニング条件の決定方法であって、
前記方法
は、
実際位相変化によって調節された遅延インデックスによって、実際時間遅延差と
、前記最小スキャニング密度が前記既定値以上であり、最大である場合の前記選択された周波数組み合わせにおける前記マッピング時間遅延差である最適時間遅延差との偏差をリアルタイムで算出する段階と、
前記リアルタイムで算出された偏差を補償するために変調された駆動位相オフセットを印加する段階と、
を含む、
最適リサージュスキャニングのためのスキャニング条件の決定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、最適リサージュスキャニングのためのスキャニング条件の決定及び保持方法に係り、より詳細に説明すれば、リサージュスキャニングを具現するに当って、最適のスキャニング条件を決定し、持続的に一定レベル以上のスキャニング密度を保証することができる最適リサージュスキャニングのためのスキャニング条件の決定及び保持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リサージュスキャニング(Lissajous scanning)は、2軸(X軸、Y軸)に互いに異なる周波数を有した正弦波(sine wave)を印加することで具現されるものであって、最適のリサージュスキャニングを具現するために、多様な研究が進められている。下記の説明において、FF(Fill Factor)は、リサージュパターンが全体ピクセルを満たす程度に対する指標であって、100%が最大である。また、マッピング位相(mapping phase)は、ソフトウェア上でのイメージ生成時に使われる正弦波の位相を意味し、駆動位相(driving phase)は、ハードウェアを通じてスキャナーに印加される正弦波の位相を意味する。
【0003】
先行技術1(米国登録特許US 10,939,802、2020.03.09.公告)は、リサージュスキャニングのための2軸周波数であって、整数周波数を使用し、反復リサージュパターンでFFを高めるために、FFが既定値よりも低ければ、駆動位相を調節する技術を開示する。
【0004】
先行技術2(Hoy,C.L.,Durr,N.J.and Ben-Yakar,A.,2011.Fast-updating and nonrepeating Lissajous image reconstruction method for capturing increased dynamic information.Applied optics,50(16),pp.2376-2382)では、非反復リサージュパターンのためにフレームレート(すなわち、イメージング速度)を調節する方法を開示する。
【0005】
先行技術3(Loewke,N.O.,Qiu,Z.,Mandella,M.J.,Ertsey,R.,Loewke,A.,Gunaydin,L.A.,Rosenthal,E.L.,Contag,C.H.and Solgaard,O.,2019.Software-Based Phase Control,Video-Rate Imaging,and Real-Time Mosaicing With a Lissajous-Scanned Confocal Microscope.IEEE transactions on medical imaging,39(4),pp.1127-1137)では、スキャニング時に外乱によって発生するイメージ歪曲(image distortion)に対してソフトウェア的にマッピング位相を調節してイメージを再構成する技術を開示する。
【0006】
先行技術4(Wang,J.,Zhang,G.and You,Z.,2020.Design rules for dense and rapid Lissajous scanning.Microsystems & Nanoengineering,6(1),pp.1-7)では、稠密であり、速いリサージュスキャニングのための2軸周波数及び位相オフセットについての条件を説明する。
【0007】
しかし、前述した先行技術は、次のような限界を有する。
【0008】
先行技術1及び先行技術4は、反復リサージュパターンのみに該当するものであって、非反復リサージュパターンに対しては考慮することができない。
【0009】
また、先行技術2及び先行技術3は、最適のリサージュスキャニングを具現するための周波数及び位相に対する条件を決定し、それを保持するための方法に対しては提示することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、リサージュスキャニングを具現するに当って、最適のスキャニング条件を決定し、持続的に一定レベル以上のスキャニング密度を保証することができる最適リサージュスキャニングのためのスキャニング条件の決定及び保持方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような技術的課題を果たすための本発明の実施形態によれば、最適リサージュスキャニングのためのスキャニング条件の決定及び保持方法において、2軸に対してそれぞれ既定の周波数範囲内の周波数組み合わせでマッピング時間遅延差による最小スキャニング密度を最大とする場合の周波数組み合わせ及びマッピング時間遅延差を最適スキャニング条件で選択する段階;及び実際位相変化によって調節された遅延インデックスによって、実際時間遅延差と前記最適スキャニング条件で選択された最適時間遅延差との偏差を補償するために変調された駆動位相オフセットを印加して最適スキャニングを保持する段階;を含む。
【0012】
マッピング時間遅延は、各軸の遅延インデックスを通じて調節され、各軸位相は、前記遅延インデックスによって決定された位相変化量を有し、前記位相変化量を反映して、前記駆動位相オフセットが変調される。
【0013】
前記最適スキャニング条件で選択する段階は、前記既定の周波数範囲内で周波数組み合わせを選択する段階;選択された前記周波数組み合わせのマッピング時間遅延差による最小スキャニング密度をシミュレーションする段階;前記周波数組み合わせを選択する段階及び前記最小スキャニング密度をシミュレーションする段階を、前記既定の周波数範囲内のあらゆる周波数組み合わせに対して繰り返して行う段階;及び前記最小スキャニング密度が既定値以上であり、最大である場合の周波数組み合わせとマッピング時間遅延差とをそれぞれ最適周波数組み合わせ及び最適時間遅延差で選択する段階;を含みうる。
【0014】
前記周波数組み合わせを選択する段階は、小数点N桁数を有した小数点周波数組み合わせを選択することができる。
【0015】
前記最適スキャニングを保持する段階は、前記実際時間遅延差と前記最適時間遅延差との偏差をリアルタイムで算出する段階;及び前記リアルタイムで算出された偏差を補償するために変調された駆動位相オフセットを印加する段階;を含みうる。
【0016】
また、本発明の実施形態によれば、最適リサージュスキャニングのためのスキャニング条件の決定方法において、2軸に対してそれぞれ既定の周波数範囲内で周波数組み合わせを選択する段階;選択された前記周波数組み合わせのマッピング時間遅延差による最小スキャニング密度をシミュレーションする段階;前記周波数組み合わせを選択する段階及び前記最小スキャニング密度をシミュレーションする段階を、前記既定の周波数範囲内のあらゆる周波数組み合わせに対して繰り返して行う段階;及び前記最小スキャニング密度が既定値以上であり、最大である場合の周波数組み合わせとマッピング時間遅延差とを最適スキャニング条件で選択する段階;を含む。
【0017】
また、本発明の実施形態によれば、最適リサージュスキャニングのためのスキャニング条件の保持方法において、実際位相変化によって調節された遅延インデックスによって、実際時間遅延差と最適スキャニング条件で選択された最適時間遅延差との偏差をリアルタイムで算出する段階;及び前記リアルタイムで算出された偏差を補償するために変調された駆動位相オフセットを印加する段階;を含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、リサージュスキャニングを具現するに当って、小数点を有した周波数組み合わせでより柔軟に周波数組み合わせを選択することができる。また、最適のスキャニング条件を決定し、持続的に一定レベル以上のスキャニング密度を保証することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】リサージュスキャニングで使われるイメージングパラメータを説明する図面である。
【
図2】反復及び非反復リサージュパターンを説明する図面である。
【
図3】リサージュパターンのためのX及びY波形で位相及び時間遅延の概念を説明する図面である。
【
図4】非反復リサージュパターンでスキャニング密度の変化を説明する図面である。
【
図5】非反復リサージュパターンで各軸のマッピング時間遅延による最小スキャニング密度の変化を説明する図面である。
【
図6】位相に対する分析に比べて時間遅延差の分析が有する利点を説明する図面である。
【
図7】本発明の実施形態によって与えられた周波数範囲内で最適の周波数組み合わせ及び時間遅延差を決定する方法を説明する図面である。
【
図8】
図7の(a3)のスキャニング条件を満足する場合のスキャニング密度の変化を示す図面である。
【
図9】本発明の実施形態によって非反復リサージュパターンで最適スキャニング条件を保持する過程を説明する図面である。
【
図10】本発明の実施形態による時間遅延差の偏差補償に対する実験の結果を示す図面である。
【
図11】本発明の実施形態による最適リサージュスキャニングのためのスキャニング条件の決定及び保持方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明による望ましい実施形態を詳しく説明する。この過程で図面に示された線の厚さや構成要素の大きさなどは、説明の明瞭性と便宜上、誇張して示されている。
【0021】
また、後述する用語は、本発明での機能を考慮して定義された用語であって、これは、使用者、運用者の意図または慣例によって変わりうる。したがって、このような用語に対する定義は、本明細書の全般に亘った内容に基づいて下されなければならない。
【0022】
図1は、リサージュスキャニングで使われるイメージングパラメータを説明する図面である。
【0023】
図1を参照すれば、(a)は、サンプリングレート(sampling rate;SR)を示すものであって、TTL(transistor-transistor logic)クロック信号の周波数でSRは3.2MHzである。
【0024】
(b)は、(a)に示されたTTLクロック信号によって生成されるサンプルを示すものであって、TTLクロック信号が0Vから5Vに上がる度に新たなサンプルが生成される。
【0025】
(c)は、(b)に示されたサンプルをより広い時間軸で示したものであって、リサージュパターンを形成するための互いに異なる周波数を有する2つの正弦波(X waveform、Y waveform)が見られる。X及びY波形でそれぞれサンプリング数(Sampling number;SN)ほどのサンプルを用いて1つのフレームを形成すれば、(d)のような結果が得られる。ここで、SNは、1つのフレームの形成に使われるサンプルの数を示す。
【0026】
(d)において、それぞれのフレームに表われた緑色線は、リサージュパターンを形成する過程で撮れたサンプルであって、SN個のデータポイントからなっている。ここで、フレームレート(Frame rate;FR)は、1つのフレームを得る速度を示すものであって、下記の数式1によって計算される。
【0027】
【0028】
露出数(exposure number;EN)は、1つのイメージを形成するために蓄積するフレーム数を示すものであって、ENほどのフレームを蓄積して形成されたスキャニングパターンが(e)に示されている。また、イメージング速度は、イメージを得る速度を示すものであって、下記の数式2のように定義される。
【0029】
【0030】
図2は、反復及び非反復リサージュパターンを説明する図面である。
【0031】
反復リサージュ(Repeating Lissajous)パターンとは、各イメージに該当するスキャニングパターンが同じ場合を言い、非反復リサージュ(Non-Repeating Lissajous)パターンとは、各イメージに該当するスキャニングパターンが互いに異なる場合を言う。
【0032】
図2を参照すれば、(a)は、各軸周波数(f
x、f
y)として1048Hz、1248Hzを使用し、イメージングパラメータとしてSR=3.2MHz、SN=10,000、EN=40を使用し、前述した数式1及び数式2によってFR=320Hz、IS=8Hzになる。2つの周波数の最大公約数は、8(赤色ボックス)であり、2つの周波数を最大公約数で割った時の分け前は、それぞれ131、156(青色ボックス)であって、2つの分け前は互いに素である。この場合、あらゆるイメージで352×352ピクセルを82.28%のスキャニング密度(SD)で満たして反復リサージュパターンが得られる。
【0033】
(b)は、各軸周波数(fx、fy)として小数点周波数である1048.1Hz、1248Hzを使用し、この場合、最大公約数は、1(赤色ボックス)であり、分け前は、それぞれ1048.1、1248(青色ボックス)である。イメージングパラメータとして(a)と同じ値を使用すれば、それぞれのイメージごとにスキャニング密度(SD)が互いに異なる非反復リサージュパターンが得られる。
【0034】
図2から反復リサージュパターンでは、あらゆるイメージが同じスキャニング密度値を有するが、非反復リサージュパターンでは、それぞれのイメージが互いに異なるスキャニング密度値を有するということが分かる。
【0035】
また、非反復リサージュパターンでも、スキャニング密度の変化が周期を有しうるが、このようなスキャニング密度の変化週期を反復イメージ数(Repeated image number;R)と言う。
【0036】
後述する本発明の実施形態によって、リサージュスキャニングのための周波数組み合わせで小数点を有した小数点N桁数の周波数を選択すれば、非反復リサージュパターンである場合にも、最大10N秒ごとにリサージュパターンが反復される。すなわち、この場合のR値は、IS×10Nである。例えば、小数点1桁数の周波数を選択すれば、最大10秒ごとにリサージュパターンが反復され、スキャニング密度の変化は、最大80の周期を有する。
【0037】
図3は、リサージュパターンのためのX及びY波形で位相及び時間遅延の概念を説明する図面である。
【0038】
図3を参照すれば、3種のX及びY波形(X
driv、Y
driv)、(X
act、Y
act)、(X
map、Y
map)があるということが分かり、それぞれ駆動、実際、マッピングのための波形である。駆動波形(X
driv、Y
driv)は、各軸周波数(f
x、f
y)を有し、位相(Φ
xdriv、Φ
ydriv)を有した駆動電圧を示す波形である。実際波形(X
act、Y
act)は、実際光の経路を示すために使われ、各軸周波数(f
x、f
y)を有し、位相(Φ
xact、Φ
yact)を有する。したがって、実際波形は、駆動波形と同じ周波数を有し、位相差(ΔΦ
xact、ΔΦ
yact)を有する。マッピング波形(X
map、Y
map)は、イメージ形成のための波形であり、各軸周波数(f
x、f
y)を有し、位相(Φ
xmap、Φ
ymap)を有する。正確なイメージを得るためには、マッピング波形の位相を調節して(X
map、Y
map)を(X
act、Y
act)と一致させなければならない。
【0039】
あらゆる波形は、総SR×10N個の時間インデックス(ti∈{1,2,...SR×10N})からなり、各時間インデックスに該当する時間値は、ti/SRであって、総10N秒間の波形である。位相差(ΔΦ)は、時間インデックス軸上では時間遅延(td)値として表現され、Φ=2πf×td/SRで表われる。駆動時間遅延(tdxdriv、tdydriv)は、各駆動波形の時間遅延であり、駆動位相を表現する時に使われる。実際時間遅延(tdxact、tdyact)は、実際波形の時間遅延であり、実際位相を示すために使われる。マッピング時間遅延(tdxmap、tdymap)は、マッピング波形の時間遅延であり、マッピング位相を示すために使われる。この際、マッピング時間遅延は、各軸遅延インデックス(dix、diy)を通じて調節可能であり、各軸位相は、遅延インデックスに対して(2πfx×dix/SR、2πfx×diy/SR)の変化量を有する。
【0040】
図4は、非反復リサージュパターンでスキャニング密度の変化を説明する図面である。
【0041】
図4を参照すれば、例えば、各軸周波数(f
x、f
y)として小数点周波数である(1053.5Hz、1248.5Hz)を使用し、各軸マッピング時間遅延(td
xmap、td
ymap)を(810、515)に設定すれば、各イメージごとにスキャニング密度が大幅に変化するということが分かる。例えば、最大スキャニング密度(SD
max)は、79.69%を有し、最小スキャニング密度(SD
min)は、55.7%を有するということが分かる。
【0042】
図5は、非反復リサージュパターンで各軸のマッピング時間遅延による最小スキャニング密度の変化を説明する図面である。
【0043】
図5を参照すれば、各軸のマッピング時間遅延が変わることによって、最小スキャニング密度(SD
min)が変化するが、(b1)2つの軸のマッピング時間遅延差(Δtd
map)が同じ場合(すなわち、左下-右上対角線上の位置)には、最小スキャニング密度がほぼ同一であり、(b2)2つの軸のマッピング時間遅延差が変わることによって(すなわち、左上-右下対角線上の位置)、一定の規則なしにランダムに最小スキャニング密度が変化するということが分かる。
【0044】
(b1)は、295の差を有するマッピング時間遅延値に対するマッピング位相(Φxmap、Φymap)及び最小スキャニング密度(SDmin)値を示す。マッピング位相は、時間遅延インデックスに対して2πf×td/SRで表現されるので、各軸周波数(fx、fy)が互いに異なることによって、他の勾配を有するということが分かる。SDminは、総±760の時間遅延範囲(各マッピング位相に換算時に、約(±90°、±104°))内に0.2%以内の変化を有するので、SDminは、Δtdmapが同一であれば、一定であると仮定することができる。
【0045】
(b2)から分かるように、1つの周波数組み合わせで最小スキャニング密度(SD
min)を最大にするマッピング時間遅延差が存在し、
図5に示された例示では、最小スキャニング密度(SD
min)を最大にするマッピング時間遅延差は、285であり、この場合の最小スキャニング密度は、59.94%である。
【0046】
本発明では、このような各周波数組み合わせで最小スキャニング密度を最大にするマッピング時間遅延差である最適時間遅延差(Δtdopt)を探して一定レベル以上のスキャニング密度を保証することができる方法を提案する。
【0047】
図6は、位相に対する分析に比べて時間遅延差の分析が有する利点を説明する図面である。
【0048】
図6を参照すれば、最上のグラフは、
図5で求められた最適時間遅延差(Δtd
opt)が285である時のスキャニング密度を示し、最小スキャニング密度(SD
min)は、59.94%である。この際、マッピング時間遅延(td
xmap、td
ymap)は、(810、525)が使われ、これに対応するマッピング位相(Φ
xmap、Φ
ymap)は、(96.00°、73.74°)である。すなわち、最適の条件である時、マッピング位相差(Φ
xmap-Φ
ymap)は、22.26°である。
【0049】
もし、各マッピング位相に同様に20°ずつ加えれば、マッピング位相差は22.26°に保持されるが、時間遅延差が188になる。この際、スキャニング密度グラフから分かるように、SDmin値が59.94%から55.44%に減り、これは同じマッピング位相差を有しても、SDminが保持されないということを示す。
【0050】
一方、各マッピング時間遅延に同様に200ずつ加えれば、マッピング時間遅延差は285に保持されるが、マッピング位相差は、17.87°になる。この際、SDmin値が59.94%に保持されることが分かる。これは、直ちに最適条件での位相差を求めても、各位相値によってSDminが変わるが、最適時間遅延差を探すならば、各マッピング時間遅延値とは関係なく、その差のみ同じであれば、SDmin値が保持されるということを意味する。
【0051】
図7は、本発明の実施形態によって与えられた周波数範囲内で最適の周波数組み合わせ及び時間遅延差を決定する方法を説明する図面である。
【0052】
図7を参照すれば、(a1)は、各軸周波数(f
x、f
y)が(1053.5Hz、1248.5Hz)である場合であって、マッピング時間遅延差が285である時、最小スキャニング密度が最大である59.94%である。
【0053】
(a2)は、各軸周波数(fx、fy)が(1053.6Hz、1248.7Hz)である場合であって、マッピング時間遅延差が261である時、最小スキャニング密度が最大である21.52%である。
【0054】
(a3)は、角軸周波数(fx、fy)が(1053.8Hz、1248.8Hz)である場合であって、マッピング時間遅延差が261である時、最小スキャニング密度が最大である81.14%である。
【0055】
すなわち、(a3)でのように、(fx、fy、Δtdopt)が(1053.8Hz、1248.8Hz、261)である場合、最も高い最小スキャニング密度を保証することができるということが分かる。
【0056】
図8は、
図7の(a3)のスキャニング条件を満足する場合のスキャニング密度の変化を示す図面である。
【0057】
【0058】
したがって、本発明では、与えられた周波数範囲内で各軸周波数を変更しながらマッピング時間遅延差による最小スキャニング密度をシミュレーションして最小スキャニング密度が最大である場合の各軸周波数とマッピング時間遅延差(fx、fy、Δtdopt)とを最適スキャニング条件で選択することにより、非反復リサージュスキャニングでも優れた性能を提供することができる。
【0059】
図9は、本発明の実施形態によって非反復リサージュパターンで最適スキャニング条件を保持する過程を説明する図面である。
【0060】
先行技術3に開示されたように、イメージ再構成のためにマッピング位相の変化は必須的であり、このために、時間遅延インデックスを調節するが、これにより、前述したように選択された最適スキャニング条件から偏差(deviation)が発生し、このような偏差は、最小スキャニング密度に影響を及ぼす。
【0061】
【0062】
(b)は、(a)で求められた偏差(Δdidev)を補償するように駆動時間遅延を-Δdidevで与えるようにした結果である。ここで、y軸駆動位相を0とすれば、x軸駆動位相を調節して駆動位相オフセット(ΔΦdriv)を調節することができ、オフセット値で-2πf×Δdidev/SRを印加することにより、実際マッピング時間遅延差に最適になるように作る。言い換えれば、本発明では、既定の最適スキャニング条件に該当する最適時間遅延差と実際時間遅延差との偏差(Δdidev)をリアルタイムで計算して、それを補償するために変調された駆動位相オフセット(ΔΦdriv=-2πf×Δdidev/SR)を印加して偏差による影響を無くす。
【0063】
図9の(b)は、このような駆動位相オフセットを印加した場合のスキャニング密度の変化を示すものであって、変調された駆動位相オフセットを印加することにより、
図8に示された最適スキャニング条件の場合と同一になるということが分かる。
【0064】
図10は、本発明の実施形態による時間遅延差の偏差補償に対する実験の結果を示す図面である。
【0065】
図10を参照すれば、(a)でのように、約20分間に各軸のマッピング遅延インデックス(di
x、di
y)を変更しながらイメージングを行い、この際の遅延インデックスは、実際位相を示すことができるように(すなわち、正しいイメージが得られるように)変調された。したがって、マッピング遅延インデックスの差は、直ちに実際遅延インデックス差(Δdi
act)として表現される。
【0066】
(b)の点線は、この場合の実際遅延インデックス差(Δdiact)を示し、最適時間遅延差(Δtdopt)と偏差(Δdidev)とが存在する。この際、変調された駆動位相オフセット(ΔΦdriv)を印加した時、実際時間遅延差(Δtdact)を最適値にする。
【0067】
(c)及び(d)でのように、変調された駆動位相オフセット(ΔΦdriv)を印加した場合(赤色、w/)と印加していない場合(青色、w/o)とにスキャニング密度の変化態様は大きな差を示すというが分かる。言い換えれば、本発明の実施形態によって変調された駆動位相オフセット(ΔΦdriv)を印加した場合には、スキャニング密度が安定的であるが、印加していない場合には、スキャニング密度の変動(fluctuation)が激しいことが分かる。
【0068】
図11は、本発明の実施形態による最適リサージュスキャニングのためのスキャニング条件の決定及び保持方法を示すフローチャートである。
【0069】
図11を参照すれば、本発明の実施形態による最適リサージュスキャニングのためのスキャニング条件の決定及び保持方法は、大きく最適リサージュスキャニングのためのスキャニング条件を決定する段階(ステップS110)と最適スキャニングを保持する段階(ステップS120)とに区分される。
【0070】
最適リサージュスキャニングのためのスキャニング条件を決定する段階(ステップS110)では、まず、2軸に対してそれぞれ既定の周波数範囲内で任意の周波数組み合わせを選択する(ステップS111)。ここで、周波数組み合わせは、整数周波数だけではなく、小数点を有した小数点周波数を含みうる。また、本発明の実施形態では、小数点1桁数の周波数組み合わせを例としたが、必ずしもこれに制限されるものではなく、ハードウェアの性能によって小数点N桁数まで拡張される。
【0071】
以後、選択された周波数組み合わせのマッピング時間遅延差による最小スキャニング密度をシミュレーションする(ステップS112)。
【0072】
前述したS111及びS112段階は、既定の周波数範囲内のあらゆる周波数組み合わせに対して繰り返して行われる。一実施形態によれば、各軸に対して既定の周波数範囲内で周波数昇順に、または降順に周波数を選択しながら周波数範囲内のあらゆる周波数組み合わせに対してマッピング時間遅延差による最小スキャニング密度をシミュレーションすることができる。
【0073】
以後、最小スキャニング密度が既定値以上であり、最大である場合の周波数組み合わせとマッピング時間遅延差とを最適スキャニング条件で選択する(ステップS113)。
【0074】
最適スキャニングを保持する段階(ステップS120)では、まず、マッピング位相変化による実際時間遅延差と最適時間遅延差との偏差(Δdidev)をリアルタイムで算出し(ステップS121)、該算出された偏差(Δdidev)を補償するために変調された駆動位相オフセットで印加する(ステップS122)。
【0075】
図11を参照して、前述した本発明の実施形態による最適リサージュスキャニングのためのスキャニング条件の決定及び保持方法は、イメージプロセッシングが可能なプロセッシング装置によって行われる。
【0076】
前述した本発明の実施形態によれば、リサージュスキャニングのための各軸の周波数を小数点を有した周波数まで拡張することにより、選択可能な周波数組み合わせの場合の数が多くなる。これにより、狭い帯域幅を有したスキャナーでも、周波数範囲内でより柔軟に周波数組み合わせを選択して最適のリサージュスキャニングを可能にする条件を探す可能性が高くなる。これにより、スキャナー製作時に許容誤差(tolerance)と柔軟性とが増加する。
【0077】
また、非反復リサージュパターンでも、最適のスキャニング条件を決定してスキャニング密度の大きな変化なしに持続的に優れた性能を保持することができ、さらに既定の最適スキャニング条件に該当する最適時間遅延差と実際時間遅延差との偏差をリアルタイムで計算して、それを補償するために変調された駆動位相オフセットを印加して補償することにより、実際位相の変化による影響を最小化することができる。
【0078】
本発明は、図面に示された実施形態を参考にして説明されたが、これは、例示的なものに過ぎず、当業者ならば、これにより多様な変形及び均等な他実施形態が可能であるという点を理解できるであろう。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって決定されねばならない。