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  • 特許-離型フィルムおよび電子装置の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】離型フィルムおよび電子装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20240221BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240221BHJP
   C08J 7/04 20200101ALI20240221BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20240221BHJP
   H01L 21/603 20060101ALI20240221BHJP
   H05K 3/00 20060101ALN20240221BHJP
【FI】
B32B27/00 L
B32B27/30 D
C08J7/04 Z CER
C08J7/04 Z CEZ
H01L21/60 311Z
H01L21/603 Z
H05K3/00 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022501725
(86)(22)【出願日】2021-01-25
(86)【国際出願番号】 JP2021002452
(87)【国際公開番号】W WO2021166560
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2022-08-17
(31)【優先権主張番号】P 2020026329
(32)【優先日】2020-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220099
【氏名又は名称】三井化学東セロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】谷本 周穂
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 孝
(72)【発明者】
【氏名】西浦 克典
(72)【発明者】
【氏名】伊東 祐一
(72)【発明者】
【氏名】木下 仁
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-184008(JP,A)
【文献】特開2001-232712(JP,A)
【文献】特開2006-231916(JP,A)
【文献】特開2007-008153(JP,A)
【文献】特許第5784858(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C08J 7/04-7/06
H01L 21/603
H05K 3/32-3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品の加熱圧着による接合に用いられる離型フィルムであって、
耐熱性樹脂層(A)と、
前記耐熱性樹脂層(A)の一面上に配置され、かつ、フッ素系樹脂を含む離型層(B)と、を備え、
前記耐熱性樹脂層(A)の厚みが5μm以上23μm未満であり、
前記離型層(B)の厚みが0.01μm以上5μm以下であり、
前記離型フィルムの厚みが5μm超え25μm未満であり、
3以上の電子部品を一括接合するために用いられ
前記耐熱性樹脂層(A)を構成する耐熱性樹脂は、軟化点、ガラス転移温度および融点のいずれかが200℃以上である、または、軟化点、ガラス転移温度および融点のいずれも有さないものである、離型フィルム。
【請求項2】
請求項1に記載の離型フィルムにおいて、
前記耐熱性樹脂層(A)がポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、液晶ポリマー、ポリエステル、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリアセタール、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、塩化ビニリデン樹脂、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリメチルペンテン、シリコーン樹脂およびこれらの架橋物からなる群から選択される一種または二種以上を含む離型フィルム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の離型フィルムにおいて、
前記耐熱性樹脂層(A)の330℃における貯蔵弾性率E’が1.0×10Pa以上である離型フィルム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の離型フィルムにおいて、
前記フッ素系樹脂がパーフルオロアルキル基およびパーフルオロポリエーテル骨格からなる群から選択される一種または二種以上の構造を含む離型フィルム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の離型フィルムにおいて、
前記フッ素系樹脂がポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、およびテトラフルオロエチレンとパーフルオロアルコキシエチレンとの共重合体からなる群から選択される一種または二種以上を含む離型フィルム。
【請求項6】
3以上の電子部品が熱硬化型接着剤を介して接合された電子装置を製造するための製造方法であって、
前記熱硬化型接着剤を介して、3以上の前記電子部品が積層された積層体を準備する準備工程と、
前記積層体と、加熱ヘッドとの間に、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の離型フィルムを前記離型層(B)側が前記積層体に向くように配置した状態で、前記加熱ヘッドにより前記積層体を押圧することにより、隣接する前記電子部品同士を加熱圧着により電気的に接続する一括接合工程と、
を含む電子装置の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の電子装置の製造方法において、
前記熱硬化型接着剤が非導電性フィルムを含む電子装置の製造方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載の電子装置の製造方法において、
前記一括接合工程における前記加熱ヘッドの加熱温度が300℃以上である電子装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型フィルムおよび電子装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子装置の製造工程には、異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)や非導電性接着フィルム(NCF:Non Conductive Adhesive Film)等のフィルム状の接着剤を用いて、電子装置に用いられる各種の部品や部材(以下、電子部品とも呼ぶ。)同士を加熱圧着により電気的に接続する工程がある。
ACFやNCF等の接着剤は、例えばエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を含んでいる。2つの電子部品の間に接着剤を配置し、電子部品同士を加熱圧着すると、接着剤に含まれる熱硬化性樹脂が熱によって硬化して、電子部品同士を接合することができる。
ここで、電子部品同士を加熱圧着する工程では、加熱加圧するための加熱加圧ヘッド部と電子部品との間に、加熱加圧ヘッド部と電子部品との接着を防止するための離型フィルムが配置される。
【0003】
このような離型フィルムに関する技術としては、例えば、特許文献1(特許第6470461号)に記載のものが挙げられる。
【0004】
特許文献1には、熱加圧ヘッドによる圧着対象物の熱圧着時に上記圧着対象物と上記熱加圧ヘッドとの間に供給及び配置されて、上記圧着対象物と上記熱加圧ヘッドとの固着を防ぐ耐熱離型シートであって、ポリイミド基材と、上記ポリイミド基材の一方の主面上に配置されたポリテトラフルオロエチレン(PTFE)層とを有し、上記PTFE層を構成するPTFEの数平均分子量が600万以上であり、上記ポリイミド基材から上記PTFE層を剥離するのに要する剥離力が0.5N/20mm以上である耐熱離型シートが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6470461号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで近年、半導体デバイスの高密度化および小型化が可能になるシリコン貫通電極(TSV)技術が注目され、開発が進められている。本技術を用いることで、半導体チップ等の電子部品を積層し、3次元構造を形成することができるため、従来のデバイスに比べて、大幅な高密度化および小型化を達成することができる。
本技術では、複数の電子部品を積み上げた後に加熱圧着するため、下層のチップにまで熱が伝わるように、従来よりもヒーターを高温化している。特に、3以上の電子部品をプレボンディングにより積層し、次いで、ポストボンディングにより、積層した3以上の電子部品を一括接合する多段一括ボンディングプロセスにおいて、ヒーター温度は従来よりもさらに高温化している。それに伴い、離型フィルムにおいても、更なる耐熱性が要求されている。
【0007】
本発明者らの検討によれば、離型フィルムを介してヒーターにより電子部品同士を加熱圧着する場合、電子部品を構成する半導体や金属材料と離型フィルムが、高温になるほど剥離し難くなることが見出された。
従来、フッ素系樹脂フィルム等が、当該用途の離型フィルムとして使用されている。2つの電子部品の間にACFやNCF等の接着剤を配置して、高温下で電子部品同士を加熱圧着する場合、高温になるほど接着剤を構成する樹脂成分と、離型フィルムとが溶融して融着するため、接着剤の一部が離型フィルムに付着してしまう場合があることが明らかになった。
接着剤の一部が離型フィルムに付着してしまうと、離型フィルムに付着した接着剤が、製造ライン中に脱落し、製造ラインの汚染や停止が起こり、製品の歩留まりが低下してしまう懸念がある。
接着剤の一部が離型フィルムに付着してしまう詳細な理由は明らかではないが、以下の理由が考えられる。電子部品同士を加熱圧着する場合、例えば、離型フィルムは300℃以上に加熱される。このとき、接着剤を構成する樹脂成分は溶融状態になっており、さらに離型フィルムの離型層が軟化して溶融状態に近い状態になっていると考えられる。そして、溶融した接着剤の一部と、溶融状態に近い離型層の一部とが相溶してしまう。これにより、電子部品から離型フィルムを剥離した際に、接着剤の一部が離型フィルムの離型層の表面に残ってしまい、その結果、接着剤の一部が離型フィルムに付着してしまうと考えられる。
【0008】
一方、支持体層にポリイミド等の耐熱性樹脂を用いることにより、離型フィルムの耐熱性を向上させることができる。しかし、本発明者らの検討によれば、このような耐熱性離型フィルムは、電子部品同士を加熱圧着する工程において、2つの電子部品の間に位置する接着剤に熱を上手く伝えられない場合があることが明らかになった。よって、耐熱性離型フィルムは電子部品への熱伝導性に劣っていた。
すなわち、本発明者らは、従来の離型フィルムには、電子部品同士を高温で加熱圧着する際において、電子部品への熱伝導性と、電子部品からの離型性とのバランスを良好にするという観点において、改善の余地があることを見出した。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、電子部品同士を高温で加熱圧着する際において、電子部品への熱伝導性と電子部品からの離型性とのバランスに優れた離型フィルムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた。その結果、耐熱性樹脂層(A)と、フッ素系樹脂を含む離型層(B)とを備え、各層の厚みおよび全体の厚みが特定の範囲にある離型フィルムが、電子部品同士を高温で加熱圧着する際において、電子部品への熱伝導性と電子部品からの離型性とのバランスに優れることを見出し、本発明に至った。
【0011】
本発明によれば、以下に示す離型フィルムおよび電子装置の製造方法が提供される。
【0012】
[1]
電子部品の加熱圧着による接合に用いられる離型フィルムであって、
耐熱性樹脂層(A)と、
上記耐熱性樹脂層(A)の一面上に配置され、かつ、フッ素系樹脂を含む離型層(B)と、を備え、
上記耐熱性樹脂層(A)の厚みが25μm未満であり、
上記離型層(B)の厚みが5μm以下であり、
上記離型フィルムの厚みが25μm未満である離型フィルム。
[2]
上記[1]に記載の離型フィルムにおいて、
上記耐熱性樹脂層(A)がポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、液晶ポリマー、ポリエステル、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリアセタール、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、塩化ビニリデン樹脂、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリメチルペンテン、シリコーン樹脂およびこれらの架橋物からなる群から選択される一種または二種以上を含む離型フィルム。
[3]
上記[1]または[2]に記載の離型フィルムにおいて、
上記耐熱性樹脂層(A)の330℃における貯蔵弾性率E’が1.0×10Pa以上である離型フィルム。
[4]
上記[1]乃至[3]のいずれか一つに記載の離型フィルムにおいて、
上記フッ素系樹脂がパーフルオロアルキル基およびパーフルオロポリエーテル骨格からなる群から選択される一種または二種以上の構造を含む離型フィルム。
[5]
上記[1]乃至[4]のいずれか一つに記載の離型フィルムにおいて、
上記フッ素系樹脂がポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、およびテトラフルオロエチレンとパーフルオロアルコキシエチレンとの共重合体からなる群から選択される一種または二種以上を含む離型フィルム。
[6]
上記[1]乃至[5]のいずれか一つに記載の離型フィルムにおいて、
3以上の電子部品を一括接合するために用いられる離型フィルム。
[7]
3以上の電子部品が熱硬化型接着剤を介して接合された電子装置を製造するための製造方法であって、
上記熱硬化型接着剤を介して、3以上の上記電子部品が積層された積層体を準備する準備工程と、
上記積層体と、加熱ヘッドとの間に、上記[1]乃至[6]のいずれか一つに記載の離型フィルムを上記離型層(B)側が上記積層体に向くように配置した状態で、上記加熱ヘッドにより上記積層体を押圧することにより、隣接する上記電子部品同士を加熱圧着により電気的に接続する一括接合工程と、
を含む電子装置の製造方法。
[8]
上記[7]に記載の電子装置の製造方法において、
上記熱硬化型接着剤が非導電性フィルムを含む電子装置の製造方法。
[9]
上記[7]または[8]に記載の電子装置の製造方法において、
上記一括接合工程における上記加熱ヘッドの加熱温度が300℃以上である電子装置の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電子部品同士を高温で加熱圧着する際において、電子部品への熱伝導性と電子部品からの離型性とのバランスに優れた離型フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る実施形態の離型フィルムの構造の一例を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には共通の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。また、数値範囲の「A~B」は特に断りがなければ、A以上B以下を表す。
【0016】
1.離型フィルム
以下、本実施形態に係る離型フィルム50について説明する。
図1は、本発明に係る実施形態の離型フィルム50の構造の一例を模式的に示した断面図である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係る離型フィルム50は、電子部品の加熱圧着による接合に用いられる離型フィルムであって、耐熱性樹脂層(A)と、耐熱性樹脂層(A)の一面上に配置され、かつ、フッ素系樹脂を含む離型層(B)と、を備え、耐熱性樹脂層(A)の厚みが25μm未満であり、離型層(B)の厚みが5μm以下であり、上記離型フィルムの厚みが25μm未満である。
【0018】
本発明者らは、電子部品同士を高温で加熱圧着する際において、電子部品への熱伝導性と電子部品からの離型性とのバランスに優れた離型フィルムを実現するために、鋭意検討を重ねた。その結果、耐熱性樹脂層(A)と、フッ素系樹脂を含む離型層(B)とを備え、各層の厚みおよび全体の厚みが上記範囲にあることにより、電子部品同士を加熱圧着する際に接着剤の付着を抑制でき、離型性を向上できるとともに、電子部品への熱伝導性が良好になることを初めて見出した。
本実施形態に係る離型フィルム50は、耐熱性樹脂層(A)を備えることにより、離型フィルム50の耐熱性を向上させつつ、耐熱性樹脂層(A)、フッ素系樹脂を含む離型層(B)および離型フィルム50の厚みを相対的に薄くすることができ、その結果、離型フィルム50の熱伝導性を良好に維持することができる。
すなわち、本実施形態に係る離型フィルム50は、耐熱性樹脂層(A)と、フッ素系樹脂を含む離型層(B)とを備え、各層の厚みおよび全体の厚みが上記範囲にあることにより、電子部品同士を高温で加熱圧着する際において、電子部品への熱伝導性と電子部品からの離型性とのバランスを良好にすることが可能となる。
【0019】
本実施形態に係る離型フィルム50全体の厚みは25μm未満であるが、電子部品同士を高温で加熱圧着する際において電子部品への熱伝導性をより一層向上させる観点から、23μm以下が好ましく、22μm以下がより好ましく、20μm以下がさらに好ましく、18μm以下がさらにより好ましく、15μm以下がさらにより好ましい。
また、本実施形態に係る離型フィルム50全体の厚みは、好ましくは5μm超え、より好ましくは8μm超え、さらに好ましくは10μm超えである。耐熱性樹脂層(A)の厚みが上記下限値以上であることにより、離型フィルム50の耐熱性、搬送性、ハンドリング性等を向上させることができる。さらに、耐熱性樹脂層(A)の厚みが上記下限値以上であることにより、離型フィルム50の耐熱性がより一層向上し、電子部品同士を高温で加熱圧着する際において、電子部品からの離型性をより一層良好にすることができる。
【0020】
本実施形態に係る離型フィルム50は電子部品の加熱圧着による接合に用いられる。より具体的には、2つの電子部品の間にACFやNCF等の接着剤を配置して、電子部品同士を加熱圧着する工程で使用する離型フィルムとして用いることができる。さらに、本実施形態に係る離型フィルム50は、3以上の電子部品を一括接合する工程で使用する離型フィルムとして好適に用いることができる。
ここで、3以上の電子部品を一括接合する工程としては、3以上の電子部品をプレボンディングにより積層し、次いで、ポストボンディングにより、積層した3以上の電子部品を一括接合する多段一括ボンディングプロセスが挙げられる。
ただし、本実施形態に係る離型フィルム50は、ACFやNCF等の接着剤を用いた電子部品同士の電気的な接続に限定されず、加熱圧着による電子部品の接合に広く用いることができる。
【0021】
接合する電子部品の種類は特に限定されないが、例えば、IC、LSI、ディスクリート、発光ダイオード、受光素子等の半導体チップや半導体パネル、半導体パッケージ、インターポーザー;金属基板やガラス基板等の各種基板類(基板上に電極が設けられていてもよい);プリント回路基板、TCP(Tape Carrier Package)、FPC(Flexible Printed Circuit)等の各種回路類(TCPやFPC上にIC等が設けられていてもよい);ITO(Indium Tin Oxide)層等の透明導電層;等が挙げられる。
離型フィルム50は、複数の異なる電子部品がモジュール化された電子部品の接合にも用いることができる。
【0022】
次に、本実施形態に係る離型フィルム50を構成する各層について説明する。
【0023】
<耐熱性樹脂層(A)>
耐熱性樹脂層(A)は耐熱性を有する樹脂層であり、電子部品同士を加熱圧着により接合する際に、熱源により加熱される側、すなわち加熱加圧ヘッド部と接する側の層である。
耐熱性樹脂層(A)を備えることにより、離型フィルム50の機械的特性が向上し、離型フィルム50の搬送性やハンドリング性を向上させることができる。さらに、電子部品同士を加熱圧着する際の離型層(B)の軟化を抑制でき、その結果、溶融した接着剤の一部と、離型層(B)の一部とが相溶してしまうことを抑制することができる。
ここで、本実施形態において、耐熱性とは高温での寸法安定性や熱分解安定性を意味する。すなわち、耐熱性に優れるほど、高温における膨張や収縮、軟化等の変形や溶融、分解等が起き難いことを意味する。
耐熱性樹脂層(A)は一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
耐熱性樹脂層(A)は耐熱性樹脂を含む。ここで、耐熱性樹脂層とは、例えば、主成分として耐熱性樹脂を含む層をいう。主成分とは、最も多く含まれる樹脂成分をいう。
耐熱性樹脂層(A)は特に限定されないが、例えば、樹脂フィルムが挙げられる。
【0025】
耐熱性樹脂層(A)は耐熱性樹脂を含む。耐熱性樹脂層(A)を構成する耐熱性樹脂としては、例えば、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、液晶ポリマー、ポリエステル、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリアセタール、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、塩化ビニリデン樹脂、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリメチルペンテン、シリコーン樹脂およびこれらの架橋物等から選択される一種または二種以上の樹脂を挙げることができる。
これらの中でも、耐熱性や機械的強度、透明性、価格等のバランスに優れる観点から、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトンおよびポリエステルから選択される一種または二種以上が好ましく、ポリイミドがより好ましい。
【0026】
耐熱性樹脂層(A)を構成する耐熱性樹脂は軟化点、ガラス転移温度および融点のいずれかが200℃以上であることが好ましく、220℃以上であることがより好ましい。あるいは耐熱性樹脂層(A)を構成する耐熱性樹脂は軟化点、ガラス転移温度および融点のいずれも有さないものであることが好ましく、分解温度が200℃以上であることがより好ましく、分解温度が220℃以上であることがさらに好ましい。
このような耐熱性樹脂を用いると、耐熱性樹脂層(A)の耐熱性をより一層良好にすることができる。
【0027】
本実施形態に係る離型フィルム50において、電子部品同士を加熱圧着する際の接着剤の付着をより一層抑制する観点から、耐熱性樹脂層(A)の330℃における貯蔵弾性率E’は、好ましくは1.0×10Pa以上、より好ましくは5.0×10Pa以上、さらに好ましくは1.0×10Pa以上である。
また、本実施形態に係る離型フィルム50において、耐熱性樹脂層(A)の330℃における貯蔵弾性率E’の上限は特に限定されないが、例えば、1.0×1010Pa以下である。これにより、電子部品表面に形成された凹凸への追従性が向上し、電子部品と離型性フィルムとの間に隙間が生じてしまうことを抑制できる。その結果、電子部品同士を加熱圧着する際の電子部品への熱伝導性をより一層向上させることができる。
耐熱性樹脂層(A)の330℃における貯蔵弾性率E’は、例えば、耐熱性樹脂層(A)を構成する樹脂の種類や樹脂組成を制御することにより上記範囲内に制御することができる。
【0028】
耐熱性樹脂層(A)の厚さは25μm未満であるが、電子部品同士を高温で加熱圧着する際において電子部品への熱伝導性をより一層向上させる観点から、23μm未満が好ましく、20μm未満がより好ましく、18μm未満がさらに好ましく、15μm未満がさらにより好ましい。
また、耐熱性樹脂層(A)の厚みは、好ましくは5μm以上、より好ましくは8μm以上、さらに好ましくは10μm以上である。耐熱性樹脂層(A)の厚みが上記下限値以上であることにより、離型フィルム50の耐熱性、搬送性、ハンドリング性等を向上させることができる。さらに、耐熱性樹脂層(A)の厚みが上記下限値以上であることにより、離型フィルム50の耐熱性がより一層向上し、電子部品同士を高温で加熱圧着する際において、電子部品からの離型性をより一層良好にすることができる。
【0029】
耐熱性樹脂層(A)は、単層であっても、二種以上の層であってもよい。
【0030】
耐熱性樹脂層(A)は他の層との接着性を改良するために、表面処理を行ってもよい。具体的には、コロナ処理、プラズマ処理、アンダーコート処理、プライマーコート処理等を行ってもよい。
【0031】
<離型層(B)>
離型層(B)は離型性を有する層であり、電子部品同士を加熱圧着により接合する際に、電子部品と対向するように配置される層(すなわち、電子部品側に配置される層)であり、電子部品同士の加熱圧着後に電子部品から離型フィルム50を剥離するために設けられる層である。
離型層(B)は特に限定されないが、例えば、コーティング層や樹脂フィルム等が挙げられる。
ここで、本実施形態において、離型性を有するとは、例えば、水に対する接触角が80°以上である場合をいう。
【0032】
離型層(B)は、フッ素系樹脂を含む。
本実施形態に係るフッ素系樹脂は、離型性をより一層良好にする観点から、パーフルオロアルキル基およびパーフルオロポリエーテル骨格からなる群から選択される一種または二種以上の構造を含む樹脂がより好ましい。
【0033】
フッ素系樹脂の数平均分子量は、電子部品表面へのフッ素成分の付着を抑制する観点や高温時における離型性の観点から、10万以上が好ましく、20万以上がより好ましく、50万以上がさらに好ましく、100万以上がさらにより好ましい。
また、フッ素系樹脂の数平均分子量の上限は600万未満が好ましく、500万以下がより好ましく、450万以下がさらに好ましく、400万以下がさらにより好ましい。数平均分子量の上限が上記範囲にあると、フッ素系樹脂の分散液や溶液を製膜するときに均質な離型層(B)を形成できる点で好ましい。
フッ素系樹脂の数平均分子量は、Suwa et al., Journal of Applied Polymer Science, vol. 17, pp. 3253-3257 (1973) に記載の手法に基づいて、示差走査熱量分析(DSC)により測定することができる。
【0034】
本実施形態に係るフッ素系樹脂としては、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、PVF(ポリフッ化ビニル)、PFA(テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルコキシエチレンとの共重合体)、FEP(テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体)、ETFE(テトラフルオロエチレンとエチレンとの共重合体)、ECTFE(クロロトリフルオロエチレンとエチレンとの共重合体)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとフッ化ビニリデンとの3元共重合体、フッ素ゴム等から選択される一種または二種以上を挙げることができる。
これらの中でも、離型性に優れる点から、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、FEP(テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体)およびPFA(テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルコキシエチレンとの共重合体)からなる群から選択される一種または二種以上のフッ素系樹脂がより好ましい。
ポリテトラフルオロエチレンとしては、例えば、ダイキン工業株式会社製「ポリフロンPTFE」、三井・ケマーズフロロプロダクツ社製「テフロン(登録商標)PTFE」等を挙げることができる。
テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体としては、例えば、ダイキン工業株式会社製「ネオフロンFEP」、または三井・ケマーズフロロプロダクツ社製「テフロン(登録商標)FEP」等を挙げることができる。
テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルコキシエチレンとの共重合体としては、例えば、ダイキン工業株式会社製「ネオフロンPFA」、または三井・ケマーズフロロプロダクツ社製「テフロン(登録商標)PFA」等を挙げることができる。
【0035】
本実施形態に係るフッ素系樹脂は、耐熱性樹脂層(A)およびプライマー層(P)等の離型層(B)と接する、離型フィルムを構成する層と200℃未満の温度にて結合可能な反応基を有することが好ましい。離型層(B)と接する層と200℃未満の温度にて結合可能な反応基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、ビニル基、スチリル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、メルカプト基、アルコキシシリル基、イソシアネート基等が挙げられる。中でもアルコキシシリル基が、離型フィルム表面のフッ素系樹脂の濃度を高めることができるため好ましい。
アルコキシシリル基としては、例えば、メトキシシリル基、エトキシシリル基、イソプロポキシシリル基等が挙げられる。反応性の観点から、メトキシシリル基、エトキシシリル基が好ましい。
【0036】
また、離型層(B)は、導電性材料を含んでもよい。これにより、電子部品同士を加熱圧着により接合する工程における離型フィルム50への静電気の発生を抑制でき、電子部品の接合をより安定して行うことができる。導電性材料としては特に限定されないが、例えば、カーボン粒子等が挙げられる。
【0037】
また、離型層(B)は、離型層(B)の厚みを薄くすることが可能な点から、フッ素系コーティング層であることが好ましい。フッ素系コーティング層であると、離型層(B)の厚みを薄くすることができるため、電子部品同士を加熱圧着する際の離型層(B)の軟化をより一層抑制でき、その結果、溶融した接着剤の一部と、離型層(B)の一部とが相溶してしまうことをより一層抑制することができる。これにより、電子部品同士を加熱圧着する際の接着剤の付着をより一層抑制することが可能となる。
フッ素系コーティング層は、例えば、フッ素系樹脂を含むフッ素系コーティング剤を耐熱性樹脂層(A)に塗工して乾燥することにより形成することができる。また、フッ素系コーティング剤はフッ素系樹脂のラテックスであってもよいし、フッ素系樹脂の溶液であってもよい。
【0038】
離型層(B)の厚みは5μm以下であるが、電子部品同士を高温で加熱圧着する際において電子部品への熱伝導性をより一層向上させる観点や,接着剤の付着をより一層抑制する観点から、好ましくは4μm以下、より好ましくは3μm以下である。離型層(B)の厚みの下限は特に限定されないが、例えば、0.01μm以上である。
【0039】
離型層(B)は単層であっても、二種以上の層であってもよい。
また、離型層(B)は、他の層との接着性を改良するために、表面処理を行ってもよい。具体的には、コロナ処理、プラズマ処理、アンダーコート処理、プライマーコート処理等を行ってもよい。
【0040】
<プライマー層(P)>
本実施形態に係る離型フィルム50は、離型層(B)の塗布性および離型性を向上させる観点から、離型層(B)の下層すなわち離型層(B)と耐熱性樹脂層(A)の間にプライマー層(P)を有してもよい。プライマー層(P)はシロキサン結合(-Si-O-)やシロキサン結合を有するシラン系化合物の前駆体、またはシラノール基を有していることが好ましい。
シロキサン結合やシラノール基を有するプライマー層は、例えば、ペルヒドロポリシラザン(PHPS)を、大気中または、水蒸気雰囲気下で加熱して得られるシリカ膜や、アルコキシシランのゾルゲル反応により得られるシリカ膜等が挙げられる。
【0041】
プライマー層(P)の厚さは、例えば0.001μm以上1μm以下である。
【0042】
<その他の層>
本実施形態に係る離型フィルム50は、本実施形態の効果を損なわない範囲で、耐熱性樹脂層(A)と離型層(B)との間に、例えば接着層や凹凸吸収層、衝撃吸収層等をさらに有してもよい。
【0043】
2.離型フィルム50の製造方法
本実施形態に係る離型フィルム50の製造方法は特に限定されず、一般的に公知の積層フィルムの製造方法を採用することができる。例えば、本実施形態に係る離型フィルム50は、共押出成形法、ラミネート法、押出コーティング法、塗布法等の公知の製造方法を1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることによって作製することができる。耐熱性樹脂層(A)および離型層(B)の種類によって、公知の積層フィルムの製造方法から適切な製造方法を選択することができる。
さらに、本実施形態に係る離型フィルム50は、例えば耐熱性樹脂層(A)上にプライマー層(P)を形成後、離型層(B)をコーティングすることにより得ることもできる。プライマー層(P)および離型層(B)の形成法は特に限定されないが、各層を形成する化合物溶液を塗布乾燥する方法が挙げられる。
【0044】
3.電子装置の製造方法
本実施形態に係る離型フィルム50は、電子部品の加熱圧着による接合に用いられる。より具体的には、本実施形態に係る離型フィルム50は、第1電子部品と第2電子部品とが熱硬化型接着剤を介して接合された電子装置を製造するために好適に用いることができる。
本実施形態に係る離型フィルム50を用いた電子装置の製造方法は、例えば、熱硬化型接着剤を介して第1電子部品上に配置された第2電子部品と、加熱ヘッドとの間に、離型フィルム50を離型層(B)側が第2電子部品に向くように配置した状態で、加熱ヘッドにより第2電子部品を第1電子部品に向けて押圧することにより、第1電子部品および第2電子部品を加熱圧着により電気的に接続する工程を含む。
熱硬化型接着剤としては、例えば、公知の異方性導電接着フィルムや非導電性接着フィルム等のフィルム状接着剤を用いることができる。また、公知の異方性導電接着剤ペーストや非導電性接着剤ペーストを用いてもよい。これらの中でも、電子部品の接続は金属接続が好適に選択されることから、非導電性接着フィルムが好ましい。非導電性接着フィルムとしては、例えば、公知の非導電性接着フィルムを用いることができる。
【0045】
また、本実施形態に係る離型フィルム50を、3以上の電子部品を一括接合する工程で使用する離型フィルムとして用いる場合の電子装置の製造方法としては、以下の方法が挙げられる。
3以上の電子部品が熱硬化型接着剤を介して接合された電子装置を製造するための製造方法は、熱硬化型接着剤を介して、3以上の電子部品が積層された積層体を準備する準備工程と、上記積層体と、加熱ヘッドとの間に、本実施形態に係る離型フィルム50を離型層(B)側が積層体に向くように配置した状態で、加熱ヘッドにより積層体を押圧することにより、隣接する電子部品同士を加熱圧着により電気的に接続する一括接合工程と、を含む。
ここで、準備工程では、プレボンディングにより、電子部品同士を仮接着してもよい。この場合、加熱ヘッドの加熱温度は、例えば、330℃未満であり、加熱ヘッドにより積層体を押圧する時間は、例えば、1秒以下である。
また、一括接合工程では、3以上の電子部品を一括で十分に接合させるために、一括接合工程における加熱ヘッドの加熱温度は、例えば300℃以上であり、330℃以上であることが好ましい。また、一括接合工程における加熱ヘッドにより積層体を押圧する時間は、例えば、5秒以上、好ましくは8秒以上である。
【0046】
電子部品(第1電子部品および第2電子部品)としては特に限定されないが、例えば、IC、LSI、ディスクリート、発光ダイオード、受光素子等の半導体チップや半導体パネル、半導体パッケージ、インターポーザー;金属基板やガラス基板等の各種基板類(基板上に電極が設けられていてもよい);プリント回路基板、TCP(Tape Carrier Package)、FPC(Flexible Printed Circuit)等の各種回路類(TCPやFPC上にIC等が設けられていてもよい);ITO(Indium Tin Oxide)層等の透明導電層;等を挙げることができる。
【0047】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0048】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【実施例
【0049】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが本発明はこれに限定されるものではない。
【0050】
<材料>
離型フィルムの作製に用いた材料の詳細は以下の通りである。
【0051】
(耐熱性樹脂層(A))
A1:ポリイミド製フィルム(東レ・デュポン株式会社製、製品名:カプトン50H、厚み:12.5μm、330℃における貯蔵弾性率E’: 1.8×10Pa)
A2:ポリイミド製フィルム(東レ・デュポン株式会社製、製品名:カプトン100H、厚み:25μm、330℃における貯蔵弾性率E’: 1.7×10Pa)
A3:ポリイミド製フィルム(東レ・デュポン株式会社製、製品名:カプトン80EN、製品名:厚み:20μm、330℃における貯蔵弾性率E’: 6.1×10Pa)
耐熱性樹脂層(A)の330℃における貯蔵弾性率E’は以下の方法で測定した。
固体粘弾性測定装置(RSA-3、TAインスツルメント社製)を用いて、周波数1Hz、昇温速度3℃/min、ひずみ0.05%、チャック間距離20mm、サンプル幅10mmの条件で耐熱性樹脂層(A)の固体粘弾性をそれぞれ測定し、耐熱性樹脂層(A)の330℃における貯蔵弾性率E’をそれぞれ算出した。
【0052】
(離型層(B))
B1:ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)分散液1(ダイキン社製、製品名:Polyfluon-D、PTFEの数平均分子量:340万)
B2:ポリテトラフルオロエチレンフィルム(日東電工社製、製品名:ニトフロンNo.900UL、PTFEの数平均分子量:750万)
B1およびB2におけるPTFEの数平均分子量は、Suwa et al., Journal of Applied Polymer Science, vol. 17, pp. 3253-3257 (1973) に記載の手法に基づいて、示差走査熱量分析(DSC)により測定した。
また、離型層(B)の厚みはダイヤルゲージを用いて測定し、フィルムの幅方向で両端部および中央部3点の平均値を採用した。
【0053】
[実施例1]
耐熱性樹脂層(A1)上にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)分散液1を塗布した。その後、100℃の温度で5分乾燥させたのち、350℃で10分焼成し、厚み2.5μmの離型層(B1)を形成し、離型フィルムを得た。
【0054】
[実施例2]
離型層(B1)の厚みを5μmとした以外は、実施例1と同様の操作で離型フィルムを得た。
【0055】
[実施例3]
耐熱性樹脂層に(A3)を使用し、離型層(B1)の厚みを2.5μmとした以外は、実施例1と同様の操作で離型フィルムを得た。
【0056】
[比較例1]
市販のポリテトラフルオロエチレンフィルム(日東電工社製、製品名:ニトフロンNo.900UL、PTFEの数平均分子量:750万、厚み30μm)をそのまま用いた。
【0057】
[比較例2]
耐熱性樹脂層(A2)上にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)分散液1を塗布した。その後、100℃の温度で5分乾燥させたのち、350℃で10分焼成し、厚み10μmの離型層(B1)を形成し、離型フィルムを得た。
【0058】
[比較例3]
耐熱性樹脂層(A3)上にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)分散液1を塗布した。その後、100℃の温度で5分乾燥させたのち、350℃で10分焼成し、厚み5μmの離型層(B1)を形成し、離型フィルムを得た。
【0059】
<評価>
実施例および比較例で得られた離型フィルムについて以下の評価をおこなった。得られた結果を表1に示す。
【0060】
(1)電子部品同士を加熱圧着する際の接着剤の付着評価(離型性評価)
シリコンウェハ―上にNCF(特開2018-22819号公報の実施例1に記載のアンダーフィル絶縁フィルム)を接着した。次いで、NCF上に実施例および比較例で得られた離型フィルムを積層し、得られた積層体を350℃、圧着圧力0.6MPaの条件で、30秒間プレスした。次いで、積層体を室温まで冷却してから離型フィルムをNCFから剥離した。次いで、離型フィルムの表面を観察し、NCFの付着の有無を以下の基準で評価した。なお、離型フィルムおよびNCFのサイズはそれぞれ1x5cm、1x1cmである。試験後にNCFと接触した1x1cmの部位を観察した。
◎(非常に良い):離型フィルムの表面にNCFの接触痕がわずかに観察された以外は付着物が全く観察されなかった。
○(良い):離型フィルムの表面にNCFの接触痕が観察されたが、付着物は無かった。試験後もフィルムの表面は平滑であった。
×(悪い):離型フィルムの表面に粉状0.5~2mmの付着物が観察された。試験後のフィルムの試験部位に触れると付着物が脱落した。
【0061】
(2)実装用ボンダーを用いた熱伝導性試験
10mm角のシリコンウェハと、高さ3μmのバンプを有する10mm角のチップ(ウォルツ社製)の間に熱電対を挟んだチップ形状物を、50℃に熱したステージに置き、その上に離型フィルムを配置した。次に、310℃に設定した実装用ボンダーを用いて、荷重10Nで離型フィルムを介してチップ形状物を加圧し、加圧開始から15秒後のチップ形状物の温度を測定した。
【0062】
【表1】
【0063】
実装用ボンダーを用いた熱伝導性試験において、実施例のフィルムの方が、比較例の離型フィルムよりも、チップ形状物の温度が大きいためチップ形状物に熱を良好に伝えることができ、熱伝導性に優れることが確認された。
【0064】
この出願は、2020年2月19日に出願された日本出願特願2020-026329号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0065】
A 耐熱性樹脂層
B 離型層
50 離型フィルム
図1