(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】流体中に含まれるDNA配列のコピー数を算定する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/686 20180101AFI20240221BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20240221BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20240221BHJP
C12Q 1/6851 20180101ALI20240221BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20240221BHJP
【FI】
C12Q1/686 Z
C12M1/00 A
C12M1/34 Z
C12Q1/6851 Z
C12N15/09 Z
(21)【出願番号】P 2022537635
(86)(22)【出願日】2020-12-17
(86)【国際出願番号】 EP2020086752
(87)【国際公開番号】W WO2021122979
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-07-19
(31)【優先権主張番号】102019220020.6
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ゼバスティアン ポドビエル
【審査官】西村 亜希子
(56)【参考文献】
【文献】ANALYTICAL CHEMISTRY,AMERICAN CHEMICAL SOCIETY,2011年11月,VOL:83, NR:21,PAGE(S):8158 - 8168,https://pubs.acs.org/doi/10.1021/ac201658s
【文献】JOURNAL OF THE AMERICAN CHEMICAL SOCIETY,米国,VOL:141, NR:4,PAGE(S):1515 - 1525,https://pubs.acs.org/doi/pdf/10.1021/jacs.8b09073
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q
C12M
C12N 15/
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体中に含まれるDNA配列のコピー数を算定する方法(100)であって、
‐流体の少なくとも1つの所定の部分を少なくとも2つのコンパートメントに分割する過程(102)と、
‐前記少なくとも2つのコンパートメントに分割された流体について、前記少なくとも2つのコンパートメントにおけるそれぞれ1つの反応を可能にし、それぞれ1つの反応結果(532)を得るための反応条件を設定する過程(105)と、
‐前記コンパートメントにおいて発生した反応の反応結果(532)を表す信号(530)の強度を識別する過程(110)と、
‐或るコンパートメント内において増幅反応が起こる確率を最初に前記コンパートメント内に存在するコピー数の関数として示す反応特異的検出確率関数を考慮してコピー数を算定するために信号(530)を評価する過程(115)と、
を含む方法(100)。
【請求項2】
前記コピー数の算定のための前記評価する過程(115)において、前記コンパートメントへの
、最初に存在す
るコピーの分布の統計的記述のために二項分布関数を使用する、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項3】
前記識別する過程(110)において、光信号(530)の強度を識別する、請求項1又は2に記載の方法(100)。
【請求項4】
前記評価する過程(115)において、前記流体を複数のDNA配列について検査する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項5】
前記設定する過程(105)を少なくとも部分的に前記分割する過程(102)の後に行う、請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項6】
前記評価する過程(115)において、1反応コンパートメント当たり1コピーよりも真に大きい検出限界を有する増幅反応を用いる、請求項1乃至
5のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項7】
前記識別する過程(110)において、光信号(530)のスペクトル情報を記録する、請求項1乃至
6のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項8】
少なくとも1つの更なる信号を識別し、前記信号を用いて前記コンパートメント内において発生した反応の反応結果を前記信号から算定するために、前記識別する過程(110)を、再び少なくとも1回実行する、請求項1乃至
7のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項9】
前記識別する過程(110)間の時間間隔を変化させ又は可変とし
、前記評価する過程(115)において
、光信号(530)の値、前記光信号
(530)の値の増加、及び/又は、前記光信号(530)の増加の値の変化率が最大となるサイクル、温度及び/又は時間間隔を特定する、請求項
8に記載の方法(100)。
【請求項10】
前記方法(100)の過程(105、110)を繰り返し実行する場合、設定する過程(105)及び識別する過程(110)を少なくとも部分的に時間的に互いに並行して実行する、請求項1乃至
9のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項11】
前記流体を分割する過程(102)を、キャビティを有する収容ユニットを用いて行う、請求項1乃至
10のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項12】
請求項1乃至
11のいずれか一項に記載の方法(100)の過程(105、110、115)を、対応するユニット(505、510、515)において実行及び/又は制御するように構成された制御装置(500)。
【請求項13】
請求項1乃至
11のいずれか一項に記載の方法(100)の過程(105、110、115)を実行及び/又は制御するように構成されたコンピュータプログラム。
【請求項14】
請求項
13に記載のコンピュータプログラムが格納された機械可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
従来技術
本発明は、独立請求項に係る流体中に含まれるDNA配列のコピー数を算定する方法及び装置に関する。コンピュータプログラムも本発明の主題である。
【背景技術】
【0002】
標的特異的DNA塩基配列の増幅は、特に、患者試料の分子診断分析において大きい役割を果たす。いわゆるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の開発以来、核酸の種々の検出オプション及び増幅反応が数多く確立されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
発明の概要
こうした背景の下、本明細書に提示するアプローチにより、独立請求項による改良された方法、さらにはこの方法を用いる改良された制御装置、そして最後に対応するコンピュータプログラムが提示される。従属請求項に記載の手段により、独立請求項に記載の装置の有利な更なる開発及び改良が可能である。
【0004】
本明細書に提示するアプローチにおいては、例えば、低感度の検出反応を用いた場合であっても試料中に含まれるDNA配列のコピー数の絶対的定量が可能である。さらに、本明細書に提示するアプローチにより、試験結果を特定するために低い特異性及び/又は既知の偽陽性率を有する検出反応を有利に用いる可能性がもたらされる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に提示するアプローチにより、流体中に含まれるDNA配列のコピー数を算定する方法が提示され、本方法は、流体の少なくとも一部を、コンパートメント、反応コンパートメント又はアリコートとも称され得る少なくとも2つのパーティションに分割する過程を含む。本方法は、少なくとも2つのパーティション/コンパートメントに分割された流体について、少なくとも2つのパーティション/コンパートメントにおける反応を可能にし、それぞれ1つの反応結果を得るための反応条件を設定する過程をさらに含む。本方法は、パーティション/コンパートメントにおいて発生した可能性がある反応の反応結果を表す信号、例えば光信号の強度を識別する過程をさらに含む。最後に、本方法は、或るパーティション/コンパートメント内において増幅反応が起こる確率を最初にそのパーティション/コンパートメント内に存在するコピー数の関数として示す反応特異的検出確率関数を考慮してコピー数を算定するために信号、例えば光信号を評価する更なる過程を含む。
【0006】
この場合、識別する過程においては、例えば、光信号が複数のパーティション/コンパートメントからの情報を含み又は表すように空間分解能により光信号を識別することができる。
【0007】
このため、例えば、分割する過程、設定する過程、識別する過程及び評価する過程を含む、以下においてはDNA標的又は遺伝子標的とも称される、流体中に含まれるDNA配列のコピー数を算定する方法が提示される。
【0008】
分割する過程においては、流体とも称される試料液体を、例えば、少なくとも1つの収容ユニットを用いて少なくとも2つのパーティション/コンパートメントに分配する。設定する過程においては、少なくとも2つのパーティション/コンパートメントに分割された流体について、少なくとも2つのパーティション/コンパートメントにおける流体の反応を可能にし、場合によっては引き起こし、これによって、(例えば、陽性又は陰性の)反応結果を得るための反応条件を設定する。識別する過程においては、コンパートメントにおいて発生した可能性がある反応の反応結果を表す信号、特に光信号を識別する。評価する過程においては、流体中のコピー数を(統計的不確実性の範囲内において)特定するために信号、特に光信号、即ち、少なくとも2つのコンパートメントの反応結果を評価する。
【0009】
設定する過程においては、例えば、検出反応が原則的に起こるための外部から調節可能な物理的条件のような必要条件と、例えば、DNA標的分子が十分なコピー数で存在し、検出されるような十分反応条件とを区別することもでき、この際、設定する過程においては、特に、外部から調節可能であり、検出反応が起こり得るのに必要な物理的な環境条件が作り出され、コンパートメントへのDNA標的分子の分配が、特に、分割する過程において行われる。
【0010】
本方法は、例えば医療分野において、例えば、患者試料の検査に使用することができる。本方法を用いて検査される試料液体は、例えば水溶液、例えば、体液、塗抹標本、分泌物、痰、組織試料、又は、試料物質を付着させたデバイス等の、例えばヒト由来の生体物質から得られるものである。試料液体には、例えば、医学、臨床、診断又は治療に関連する種、例えば、細菌、ウイルス、細胞、循環腫瘍細胞、セルフリーDNA若しくは他のバイオマーカー、及び/又は、特に上記の物体の成分が含まれる。特に、上記の種の少なくとも1つから抽出又は採取されたDNA分子が試料液体中に存在する。特に、試料液体は、例えば少なくとも1つの収容ユニットの少なくとも2つのコンパートメントにおいて、例えば少なくとも2つの(互いに独立した)増幅反応を行うための、特に、例えば等温増幅反応又はポリメラーゼ連鎖反応による分子レベルにおけるDNA検出のためのマスターミックス又はその成分である。本明細書においては、このような試料液体は、例えば流体と称される。必要反応条件は、例えば、流体中において特定の反応が起こるために必要な外的影響である。コンパートメントは、例えば、キャビティ若しくはマイクロキャビティ内に、又は、非混和性の第2の相中の小滴として、設けることができる。有利には、多数のコンパートメントにより、同時に2つ以上の反応が可能である。コンパートメントから発せられ、特にコンパートメント内において起こり得る少なくとも1つの特定の反応の発生を示す信号、特に光信号、例えば蛍光信号は、例えば識別装置、例えば空間分解能を有するセンサ及び蛍光プローブの光学励起のための光源によって記録することができる。有利には、本方法によって広範な測定範囲内における定量を行うことができ、及び/又は、感度を低下させた、特に従来技術に従って行われるデジタルPCRでは定量的な試料分析が可能ではない(これには1反応コンパートメント当たり1コピーの範囲の検出限界が必要である)、1コンパートメント当たり1コピーより真に大きい検出限界の検出反応を用いて定量を行うことができる。
【0011】
一実施形態によると、分割する過程において、試料液体/流体の少なくとも一部を少なくとも2つの反応コンパートメントに分配することができ、流体のパーティション/アリコートが、その中で互いに独立した検出反応が行われ得る反応コンパートメントとして存在する。有利には、これを自動化されたプロセスによって可能とすることができる。例えば、流体のパーティションは、キャビティ若しくはマイクロキャビティ内に存在するものとしてもよく、又は、液滴の界面を安定化し、液滴/反応コンパートメントの望ましくない結合に対抗する界面活性剤を用いて、例えば油等の第2の相中の液滴/小滴として実現するものとしてもよい。
【0012】
一実施形態によると、分配する過程において、試料液体/流体の少なくとも一部を反応コンパートメントの生成に役立つマイクロキャビティに分配することができ、その際、マイクロキャビティ内に、例えば(特に)、少なくとも1つの特定のDNA標的の検出に使用され得る標的特異的プライマー及び/又はプローブを入れておくことができる。種々の標的特異的プライマー及び/又はプローブを装置の所定のマイクロキャビティ内に規定して入れておくことにより、例えば、小型の収容ユニットを用いて、試料を異なるDNA標的について検査することができる。特に、多重性能が制限された検出反応も、このために使用することができる。
【0013】
一実施形態によると、分配する過程において、マイクロキャビティ、特にマイクロキャビティ内に存在する反応コンパートメントが少なくとも2つの異なる容量を有するように、試料液体/流体の少なくとも一部を反応コンパートメントの生成に役立つマイクロキャビティに分配することができる。このようにして、例えば、この場合の試料液体中のDNA標的の濃度で、反応コンパートメント内に存在するコピー数の絶対数が反応コンパートメントの容量に対応するため、定量範囲をさらに拡大することができる。その結果、例えば、コンパートメントにおける反応の特定の検出限界が、例えば、1コンパートメント当たりxコピーである場合、より小さい反応コンパートメントを付加的に使用することにより、試料液体中のより高いDNA標的濃度を定量的に算定することもできる。
【0014】
一実施形態によると、設定する過程において、必要反応条件は、検出反応を引き起こし得る物理的条件とすることができる。物理的条件は、例えば、温度、温度プロファイル、又は、更なる流体若しくは物質の添加とすることができ、これにより、有利には、特に、コンパートメント内に存在する流体のパーティションにおける反応が可能となり、場合によっては誘発され得る。
【0015】
一実施形態によると、識別する過程において、例えば、少なくとも2つの反応コンパートメントから発せられる信号、特に光信号を、少なくとも1種類の蛍光プローブを用いて発生させ、検出ユニットによって識別することができる。少なくとも1種類の蛍光プローブは、例えば流体に添加され、例えば流体中に存在する成分に結合する物質として形成することができる。この結合により、例えば光信号が認識可能となる。このために、例えば、蛍光プローブを最初にフルオロフォアとクエンチャーとから構成することにより、フェルスター共鳴エネルギ移動により、初めに認識可能な光学蛍光信号が蛍光プローブから発生しないようにすることができる。蛍光プローブがDNA分子に結合すると、蛍光プローブが、例えば、ポリメラーゼ酵素のエキソヌクレアーゼ活性によって分解されることにより、フルオロフォア及びクエンチャーが(空間的に)互いに分離し、認識可能な蛍光信号がフルオロフォアによって発生し得る。有利には、これにより、例えば、増幅反応の発生と組み合わせて、特定のDNA配列の存在を光学的に検出することができる。
【0016】
一実施形態によると、識別する過程は、少なくとも2つのコンパートメント内において発生した可能性がある反応の反応結果を表す更なる信号、特に更なる光信号を識別することができるように、再び少なくとももう一度実行することができる。有利には、特に(陽性又は陰性の)検出反応の時間的経過を光信号に基づいて追跡することができるように、識別する過程を数回実行可能であり、例えば、複数の測定値を評価することができる。
【0017】
一実施形態によると、識別する過程は、異なる信号、特に異なる光信号、特に異なる波長の光信号を検出するために数回実行される。例えば、このようにして異なる蛍光プローブを使用することができる。特に、異なる吸収スペクトル及び発光スペクトルを有する少なくとも2つの異なる蛍光プローブを反応コンパートメント内において使用することもでき、これにより、特に、コンパートメントにおける異なるDNA標的の存在について結論を導き出すことができる。このようにして、例えば、スペクトル多重化が可能となり、1つの反応コンパートメント内において少なくとも2つの異なるDNA標的の存在について試料液体を検査することができる。
【0018】
一実施形態によると、識別する過程間の時間間隔を変化させ又は可変とすることができ、特に、評価する過程において、光信号の値、光信号の値の増加、及び、付加的又は代替的に光信号の増加の値の変化率が最大となり得るサイクルと、付加的又は代替的に時間間隔とを特定することができる。この際、例えば、時間間隔、温度又はサイクルを、例えば、光信号の光度、強度等の最大値が得られるように変化させることができる。これにより、有利には、周期的検出反応、例えばポリメラーゼ連鎖反応を用いる場合、最初に試料中に含まれるコピー数と相関し、場合により反応結果の検証に有利に使用され得るct値を特定することができる。
【0019】
さらに、本方法の過程を繰り返し実行する場合、識別する過程及び評価する過程を少なくとも部分的に時間的に互いに並行して実行することができる。有利には、これにより、反応の経過を算定することができ、及び/又は、コンパートメントにおける反応結果及びこれによるコピー数の算定に必要な時間を短縮することができる。
【0020】
一実施形態によると、評価する過程において、流体中に最初に含まれる絶対コピー数を、少なくとも2つのパーティション/コンパートメントの反応結果を用い、二項分布に基づいて、及び/又は、反応の定量的な検出特性を含む、例えば反応特異的検出確率関数の態様において、計算することができる。この場合、二項分布には、一般的な分布関数として極限の場合のポアソン分布及びガウス分布が含まれる。この場合、反応の定量的な検出特性は、特に、最初に反応コンパートメント内に存在していたコピー数の関数としての(また、特に、分配する過程及び/又は設定する過程において確立される規定の境界条件下における)反応の開始の確率を表す。そのため、有利には、既知の反応特異的検出確率関数を用いて、最初に試料液体中に存在していた少なくとも1つの遺伝子標的のコピー数を、統計的有意性をもって算定することができる。
【0021】
本方法は、例えば、ソフトウェア若しくはハードウェアにより、又は、ソフトウェアとハードウェアとの混合形態において、例えば制御装置に実装することができる。
【0022】
さらに、本明細書に提示するアプローチにおいては、本明細書に提示する方法の変形形態の過程を対応する装置において実行、制御又は実装するように構成される制御装置を作製する。この制御装置の形態における本発明の実施形態によっても、本発明の基礎をなす課題を迅速かつ効率的に解決することができる。
【0023】
このために、制御装置は、信号若しくはデータを処理するための少なくとも1つの計算ユニット、信号若しくはデータを記憶するための少なくとも1つの記憶ユニット、センサからセンサ信号を読み取り若しくは制御信号をアクチュエータに出力するためのセンサ若しくはアクチュエータに対する少なくとも1つのインタフェース、及び/又は、通信プロトコルに組み込まれた、データを読み取り若しくは出力するための少なくとも1つの通信インタフェースを備え得る。計算ユニットは、例えば、信号プロセッサ、マイクロコントローラ等とすることができ、記憶ユニットは、フラッシュメモリ、EEPROM又は磁気記憶ユニットとすることができる。通信インタフェースは、データを無線及び/又は有線により読み込み又は出力するように構成することができ、有線データを読み込み又は出力することができる通信インタフェースは、このデータを、例えば、電気的又は光学的に、対応するデータ伝送線から読み込み又は対応するデータ伝送線に出力することができる。
【0024】
この場合の制御装置は、センサ信号を処理し、これに応じて制御信号及び/又はデータ信号を出力する電気機器であると理解することができる。制御装置は、ハードウェア及び/又はソフトウェアに基づいて構成され得るインタフェースを有することができる。ハードウェアに基づく構成の場合、インタフェースを、例えば制御装置の種々の機能を有する、いわゆるシステムASICの一部とすることができる。しかしながら、インタフェースがそれ自体の集積回路であり又は少なくとも部分的に個別の部品からなることもあり得る。ソフトウェアに基づく構成の場合、インタフェースは、例えば、他のソフトウェアモジュールと並んでマイクロコントローラ上に存在するソフトウェアモジュールであるものとしてもよい。
【0025】
有利な設計においては、制御装置により流体中に含まれる少なくとも1つのDNA配列のコピー数を算定する方法の制御を行う。このために、制御装置は、例えば、反応条件を設定するための調整信号、及び、コンパートメントにおいて発生した可能性がある反応の反応結果を表す光信号等のセンサ信号にアクセスすることができる。制御は、調整信号を出力するように構成される調整ユニット、及び、光信号を識別するように構成される識別ユニット等のアクチュエータによって行われる。
【0026】
半導体メモリ、ハードディスクメモリ又は光メモリ等の機械可読キャリア又は記憶媒体に格納することができ、特に、プログラム製品又はプログラムがコンピュータ又は装置上において実行される場合に、上述の実施形態の1つによる方法の過程を実行、実装及び/又は制御するために使用される、プログラムコードを有するコンピュータプログラム製品又はコンピュータプログラムも有利である。
【0027】
本明細書に提示するアプローチの実施例を図面に示し、以下の記載において、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】流体中に含まれるDNA配列のコピー数を算定する方法の一実施例のフローチャートである。
【
図2】流体中に含まれるDNA配列のコピー数を算定する方法の一実施例のフローチャートである。
【
図3】一実施例による流体中に含まれるDNA配列のコピー数を算定する方法の評価する過程のフローチャートである。
【
図4】一実施例による流体中に含まれるDNA配列のコピー数を算定する方法を用いて行われる一連の測定の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下の本発明の好ましい実施例の説明において、異なる各図面に同様の作用を有するものとして示している要素には、同一又は同様の参照符号を使用しており、これらの要素の説明の繰り返しは省略する。
【0030】
図1は、一実施例による流体中に含まれる少なくとも1つのDNA配列のコピー数を算定する方法100のフローチャートを示している。方法100は、例えば、分子実験室診断の分野に適用可能である。方法100は、例えば、以下の図面の1つに記載されているような制御装置によって制御可能である。
【0031】
方法100の過程102においては、流体の少なくとも一部を少なくとも2つのパーティション/コンパートメントに分割する。方法100は、少なくとも2つのパーティション/コンパートメントに分割された流体について、少なくとも2つのパーティション/コンパートメントにおける反応を可能にし、それぞれ1つの反応結果を得るための必要反応条件を設定する更なる過程105を含む。識別する過程110においては、コンパートメントにおいて発生した可能性がある反応の反応結果を表す信号、例えば光信号の強度を識別する。信号を評価する過程115においては、信号を評価する。評価は、コンパートメント内のコピー数の統計的分布を考慮し、このコンパートメント内において増幅反応が起こる確率を最初にコンパートメント内に存在するコピー数の関数として示す反応特異的検出確率関数を用いて行われる。このようにして、コンパートメント内において得られた反応結果に基づき、最初に流体中に存在していた少なくとも1つの標的/DNA配列のコピー数を統計的精度で算定することができる。
【0032】
従って、定量的な反応結果の算定は、この場合、少なくとも2つの(互いに独立した)検出反応の統計的評価に基づいて行われる。広い測定範囲において、可能な限り正確な定量を達成するためには、概して多数、典型的には10を超え、より好ましくは50乃至1000、又は、さらには10000乃至100000のコンパートメントが好ましい。コンパートメントの数は、定量範囲によって段階分けされ、定量範囲をどのような大きさにすべきかに応じて、互いに独立した多数の反応コンパートメントが必要とされる。
【0033】
分割する過程102は、本実施例によると、設定する過程105の前に行われる。この際、流体/試料液体を分配/区分化/分注する最初の過程がその後の評価の基礎となる。この関連において、「コンパートメント」又は「反応コンパートメント」とは、その中で検出反応が起こる可能性がある限定/局限された液体体積と理解される。コンパートメントの生成は、例えば、マイクロキャビティ内において行うことができ、又は、第2の非混和性の液体中に小滴を発生させることによっても行うことができる。マイクロキャビティ内に反応コンパートメントを生成させるためには、特に、隣接するチャネルを介してマイクロキャビティに初めに試料液体を充填し、続いて試料液体と混和しない第2の液体、例えば油で封止して、試料液体をマイクロキャビティに隣接する領域から(完全に)排除することができる。
【0034】
流体の区分化又は分割は、本明細書に提示する方法に特徴的なものであり、特に、コンパートメントにおける陽性/陰性反応を数えることによって定量が行われる。
【0035】
本実施例によると、例えば、反応条件は、例えばパーティション/コンパートメントにおける反応を可能にし得る物理的条件、例えば温度又は温度プロファイルを表す。概して、特異的検出反応は、特に、反応によって検出可能な少なくとも1つの分子がコンパートメント内にある場合にのみ起こることにここでは留意すべきである。そうでなければ、偽陽性の反応結果がコンパートメントに存在する。
【0036】
反応コンパートメントにおける反応結果は、例えば光信号によって、例えば蛍光プローブを用いて特定される。例えば、蛍光プローブは、例えば流体中の他の物質に結合することにより、反応結果を認識可能にし得る物質として実現される。本実施例によると、再識別は矢印125によって表される。本実施例によると、さらに任意に、識別する過程110間の時間間隔が変化させられ又は可変とされる。さらに、評価する過程115において、光信号の値、値の増加及び/又は値の変化率が最大となるサイクル及び/又は時間間隔を特定することができる。このように、例えば、温度依存性の蛍光を示す蛍光色素を用いることにより、例えばポリメラーゼ連鎖反応の実行との関連で温度サイクルの追跡を達成することができる。このように、光信号は、コンパートメント内の反応を検出する機能に加えて、コンパートメント内の温度プロファイルの制御、ひいては、特に、必要反応条件の設定の制御のためにも使用することができる。
【0037】
本実施例によると、評価する過程115においては、流体中に最初に含まれる少なくとも1つのDNA配列の絶対コピー数(コピー数の期待値)を、個々のコンパートメント内において起こる可能性がある反応の反応結果を用い、一般に二項分布に基づいて計算する。この場合、二項分布には、一般的な分布関数として極限の場合のポアソン分布及びガウス分布が含まれる。これにより、感度を低下させた検出反応、特に検出限界、即ち、検出下限(LOD)が1より真に大きい検出反応を用いると、検出コンパートメント内に最初にDNA配列のコピーが複数存在する場合であっても、少なくとも1つのDNA配列のコピー数の計算が可能である。
【0038】
換言すると、検出反応特異的な増幅特性に基づく定量DNA分析の可能性がもたらされる。
【0039】
デジタルPCRがこれまで用いられてきた変法である。デジタルPCRにおいては、少なくとも1つの蛍光プローブと分析対象の試料物質とを含むPCRマスターミックスを、初めに空間的に分離された、即ち、互いに独立した多数の反応コンパートメントに分割する。反応コンパートメントの熱サイクル後に、蛍光信号に基づいて、どの反応コンパートメントにおいて増幅が起こったかを算定する。続いて、単に陽性(及び陰性)反応を数えることにより、ポアソン統計に基づき、最初に試料中に存在する標的特異的DNAの量を絶対的に定量することができる。
【0040】
デジタルPCRにおけるポアソン統計に基づく定量は、この場合、既に反応コンパートメントにおける個々のDNA標的分子の存在を確実に検出することができる高感度PCR検出反応に基づく。しかしながら、検出反応の感度(いわゆる検出下限、LOD)は、低くなることがあり、概して特異性、即ち、特定の標的を確実に検出し得る精度と競合する。検出反応の特異性が過度に低いと、偽陽性結果につながる虞がある。従って、検出反応の設計(例えば、プライマー設計)においては、概して、反応の感度と特異性との間の適当な妥協点を見出す必要がある。検出反応の非常に高い特異性の有利な条件は、単一コピー範囲における非常に高い感度とは両立し得ない可能性がある。
【0041】
これまで用いられてきたアプローチとは対照的に、新たに提示されたアプローチにおいては、DNA配列の複数のコピーが反応コンパートメント内に存在していてもよく、「検出反応の定量的な増幅特性」に基づいて、最初に流体中に存在するDNA配列のコピー数を統計的に推定することができる。この場合、「検出反応の定量的な増幅特性」は、最初に反応コンパートメント内に存在する、反応によって増幅されるDNA配列のコピー数の関数としてのDNA配列の検出のための増幅反応が起こる確率を表す。統計的計算は、特に、二項分布を用いて行うことができる。
【0042】
本実施例によると、本明細書において流体又は試料液体と称される試料中のDNA配列/標的DNAの絶対的定量を、感度を低下させた場合、即ち、検出反応のいわゆる検出下限(LOD)が>1の場合にも可能にする方法100がこのために提示される。さらに、本実施例による方法100においては、感度及び特異性に関する増幅反応の一般的な検出特性(即ち、特に偽陽性率も場合により含む)、特に増幅反応の開始挙動が、ここから確かな試験結果を算定するために考慮される。
【0043】
従って、導入する過程102において、本明細書において流体と称される、試料物質が含まれる液体を、例えば、マイクロキャビティ内に存在し得る、コンパートメントとも称される多数の反応コンパートメントに分割することが可能な方法100が提示される。本実施例によると、方法100は、コンパートメントにおいて、例えば、増幅反応がその中で起こることを可能にする適当な物理的条件、例えば温度又は温度プロファイルを生成するための設定する過程105を含む。識別する過程110においては、個々のコンパートメントにおける反応結果の検出は、例えば、蛍光プローブによって発生する光信号によって行われる。これに対し、個々のコンパートメントの各々から光信号が発せられ、これがコンパートメントにおける反応結果を示すことにさらに留意する。ここでいう「光信号」は、この場合、個々のコンパートメントから発せられる複数の光信号を含む。評価する過程115においては、複数のコンパートメントにおける反応結果の統計的評価は、例えば、定量的な検出反応特性を含む、ポアソン分布及びガウス分布の極限の場合を有する一般的な分布関数としての二項分布に基づき、特に検出反応の開始挙動の定量的記述を用い、即ち、特に検出反応の感度及び特異性(即ち、特に偽陽性率も場合により含む)を考慮して行われる。さらに、統計的に確認された試験結果を導き出し、場合により流体中に最初に存在していた、例えば少なくとも1つのDNA配列の絶対コピー数を、統計的有意性をもって計算する。
【0044】
有利には、これにより、最初に試料液体中に存在する少なくとも1つの遺伝子標的のDNAコピーの絶対的定量に多数の所与の検出反応を使用することができる。特に、検出反応の低い感度、即ち、1より真に大きい検出下限も十分である。特に、より高い特異性及びより低い感度を特徴とする検出反応を定量に使用することができる。例えば、ポアソン統計によって記述される範囲に限定される、従来技術によるデジタルPCRと比較して、一般的な二項統計に基づく本明細書に記載の方法100においては、場合により同様の分注装置を用いて、他の測定範囲内における定量を達成することができる。しかしながら、本実施例によると、これは増幅反応の感度特性に依存する。遺伝子標的に対して異なる感度及び/又は特異性を有する異なる設計の検出反応を組み合わせることにより、より広い測定範囲内における定量を有利に行うことができる。同様に、本実施例によると、本明細書に提示する方法100に基づいて、低い特異性及び既知の有意な偽陽性率を有する検出反応も確かな試験結果を算定するために使用することができる。この場合、試料液体を多数のコンパートメントに分注し、互いに(ほぼ)独立した増幅反応を行うことにより、既知の反応特異的偽陽性率を含む実験的に算定された陽性反応の割合に基づき、統計的有意性をもって試料の真の性質を推定することができる。
【0045】
本明細書に提示する方法100は、基本的な実施形態において過程102、105、110、115を含む。方法100の過程102においては、試料物質が含まれる流体を多数の反応コンパートメントに分割する。流体は、特に核酸を含有する。本実施例によると、コンパートメントは、特に、全て同等の容量を有する。方法100の過程105においては、コンパートメントにおいて、増幅反応がその中で起こることを可能にする温度又は温度プロファイル等の適当な物理的条件を確立する。特に、これらは、核酸に基づく方法、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応又は等温増幅法である。方法100の過程110においては、例えば、少なくとも1つの蛍光プローブによって発生する光信号に基づいて、個々のコンパートメントにおける反応結果の検出を行う。例えば、特定のPCR産物の存在を示す標的特異的蛍光プローブを含むマスターミックスを用いて、定量ポリメラーゼ連鎖反応を検出反応として用いることができる。このようにして、蛍光信号(の増加)に基づいて、反応速度をリアルタイムで追跡することができる。方法100の過程115においては、複数のコンパートメントにおける反応結果の統計的評価を行う。特に、極限の場合のポアソン分布及びガウス分布を含む一般的な分布関数としての二項分布に基づき、検出反応の定量的特性を含む評価を行う。これは特に、感度及び特異性に関して反応の開始挙動を用いることを意味する。当該反応の開始挙動から、統計的に確認された陽性又は陰性の試験結果を導き出し、任意に、試料液体中に統計的確率で最初に存在していた少なくとも1つのDNA配列/遺伝子標的の絶対コピー数の計算を行う。例えば、検出反応として定量ポリメラーゼ連鎖反応を用いる場合、さらに付加的に、任意に個々のコンパートメントにおける反応速度を、標準反応(規定の最初に存在するコピー数で行う)と比較することにより、最初に試料中に存在するDNA量を推定し、反応コンパートメントに基づいて統計的に算定された試験結果と組み合わせることができる。
【0046】
図2は、一実施例による流体中に含まれるDNA配列のコピー数を算定する方法100のフローチャートを示している。ここに示す方法100は、
図1に説明した方法100に相当する又は類似するものであってよい。過程105、110のみ、本実施例によると、並行して実施可能であるため、異なった形態により示されている。即ち、本実施例によると、方法100の過程を繰り返し実行する場合、設定する過程105及び識別する過程110を少なくとも部分的に時間的に互いに並行して実行することができる。さらに、本実施例によると過程102、115を変更せずに実行することができる。
【0047】
また、本実施例によると、流体中に存在する少なくとも1つのDNA配列の絶対コピー数の特定を可能にする方法100が提示され、感度を低下させた、即ち、検出下限(LOD)が1より真に大きい検出反応をこのために使用することができる。さらに、これにより、それ自体では確かな試験結果が得られない、限られた感度及び特異性の検出反応を用いても確かな、場合により定量的な試験結果を導き出すことが可能である。
【0048】
換言すると、本実施例によれば、過程105及び過程110が並行して実行され、即ち、蛍光信号の検出が増幅反応を実行する際に複数の時点において行われる。これにより、反応プロセスを付加的に算定することができ、陽性及び陰性の検出反応のより確実な識別が可能となり得る。特に、本実施例によると、例えば、定量ポリメラーゼ連鎖反応において、蛍光信号の増加又は蛍光信号の増加の変化率が最大となるサイクル(「ct値」)を付加的に特定することができる。この値は、最初に流体中に含まれるコピー数とも相関するため、場合により試験結果の検証に付加的に使用することができる。
【0049】
図3は、一実施例による流体中に含まれるDNA配列のコピー数を算定する方法の評価する過程115のフローチャートを示している。評価する過程115は、
図1又は
図2のいずれかに説明した評価する過程115に相当するものであってよい。
【0050】
過程115においては、特に、方法の識別する過程からの反応結果、即ち、例えば、測定された陽性率に基づき、検出反応の開始挙動の定量的特性p
s(c)及びコンパートメントへの試料DNAの統計的分布
【数1】
を考慮する所定の関数gを用いて、最初に流体中に存在する絶対コピー数を計算する。
【0051】
以下、関数gの算定をより正確に説明することにより、最初に試料中に存在していた遺伝子標的のDNA量の計算が、特定の境界条件下において特異的検出反応について測定された陽性率に基づき、統計的有意性をもって可能となる。特に、関数gを提供するために、初めに所与のマイクロ流体コンパートメントにおける検出反応の定量的特性が、例えば、検出確率関数、捕捉率(POD)関数又は「検出反応の感度特性」とも称され得る関数p
s(c)によって(近似的に)記述され(少なくとも関連の測定範囲について)、これは、正確にc個のコピーがコンパートメント内に存在する場合に、このコンパートメントにおいて増幅反応が起こる確率を示す。(簡略化した)近似的記述には、ここでは例えばヘビサイド関数Θを用いることができ、
p
s,Θ,LOD(c)=Θ(c-c
LOD)
となり、ここで、c
LODは、検出反応の検出下限(LOD)を示す。概して、多数の実験的データセットに基づいて算定されているため、使用される試験セットアップにおけるアッセイ特性をさらに正確に表す、例えば、多項式等のより複雑な関数も増幅反応の開始挙動の定量的特性評価p
s(c)に適している。更なる(近似的)記述は、例えば、上述のヘビサイド関数p
s,Θ,LOD(c)を幅wのガウス関数
【数2】
で畳み込むことによって得られ、最初にコンパートメント内に存在するコピー数cに依存する連続的な増幅反応の開始を、関数
【数3】
によって表すことができる。
【0052】
コンパートメントの数n及びコンパートメント当たりの平均初期コピー数
【数4】
の場合、以下の二項分布
【数5】
が得られ、これは最初に正確にc個のコピーが存在するコンパートメントの割合を表し、即ち、
【数6】
である。
【0053】
増幅特性の定量的記述のために上に提示した関数p
s(c)を用いると、陽性の検出反応iが起こるコンパートメントの割合fは、
【数7】
によって得られる。
【0054】
増幅反応の開始の近似的なヘビサイド記述p
s,Θ,LOD(c)により、式
【数8】
が得られ、
【数9】
となる。ガウス記述については、対応して、
【数10】
が得られる。反応特性のこれらの(近似的、経験的)記述によると、増幅反応が起こるコンパートメントの割合fは、コンパートメント当たりの平均初期コピー数
【数11】
、及び、例えば、検出反応の経験的に既知の検出下限c
LOD、並びに、場合により開始の幅wと直接的に関連している。これに応じて、未知の試料の場合、測定された陽性率fに基づき、既知のc
LOD(及び、場合により既知のw)によって、コンパートメント当たりの初期平均コピー数
【数12】
を推定することができ、これにより、少なくとも部分範囲/区間においてfの変化に関して関数
【数13】
の単調性が存在する限りにおいて試料中の絶対コピー数を算定することができる。
【0055】
前段落において選択した積分項による連続的な記述においては、二項係数をベータ関数によって記述することができる。連続的な表現に加えて、離散的な記述も全般的に使用することができ、
【数14】
となり、他の式もこれと同様に得られる。
【0056】
図4は、一実施例による流体中に含まれるDNA配列のコピー数を算定する方法を用いて行われる一連の測定400の概略図を示している。ここで、特に、曲線図によって示されている一連の測定400の反応結果は、例えば、上述の
図1乃至
図3のいずれかにおいて説明したような方法を用いて得ることができる。
【0057】
換言すると、本実施例によれば、特に、識別する過程において撮影された蛍光顕微鏡写真の概略図の例示的な一連の実験的測定400が示されている。この際、標的特異的プライマー及び診断に関連する遺伝子標的の蛍光プローブを用いるPCR検出反応を使用した。アプローチには遺伝子標的を含有する規定量の鋳型DNAをそれぞれ用いた。コンパートメント当たりの平均コピー数
【数15】
は、2、5、10及び20コピー毎コンパートメント(cpc)であった。熱サイクル後に撮影した
図4(a)乃至
図4(d)の蛍光顕微鏡写真の概略図においては、増幅が行われた反応コンパートメントが明るく見えるのに対し、それ以外は暗く見える。対応する定量PCR増幅曲線を同様に概略的に
図4(e)乃至
図4(h)に示している。検出反応の陽性率は、
【数16】
の初期コピー毎コンパートメント(cpc)での42%から、5cpcでの77%及び10cpcでの93%、さらには20cpcでの100%にわたる(
図4(a)乃至
図4(d)を参照されたい)。最初に存在する平均コピー数
【数17】
、並びに、二項統計(96個のコンパートメント、及び、1、2、5、10、20コピー毎コンパートメント、cpcのコンパートメント当たりの平均コピー数を用いた場合の分布関数の説明については、
図4(i)を参照されたい)を考慮し、一連の測定400に基づき、実験的に算定された陽性率fに基づいて、検出反応の感度特性p
s(c)を推定することができる。
【0058】
加えて、
図4(j)は、コンパートメント当たりの平均コピー数に対してプロットした、実験的に算定された陽性率(測定点)、並びに、増幅反応に特徴的な適当なパラメータを用いて、ヘビサイド記述(差し込み図、細線)及びガウス記述(差し込み図、太線)によって増幅反応の開始挙動をモデル化することにより得られる、計算された陽性率(曲線)のプロットを示している。
図4(j)に示す曲線は、パラメータc
LOD=2.6(ヘビサイド-開始、細線)又はc
LOD=2.5、w=2.95(ガウス開始、太線)について得られた、計算された陽性率を示す。特に、ガウス記述を用いる場合、実験的に算定された陽性率との良好な一致を得ることができる。これに応じて、増幅反応の開始は、コンパートメント当たりの平均初期コピー数
【数18】
が2乃至20の範囲において定量的に表すことができる。この場合、逆に、得られた増幅反応の開始挙動の定量的記述を用いて、実験的に算定された陽性率から最初に試料液体中に存在するコピー数を算定することも可能である。
【0059】
図5は、一実施例による制御装置500のブロック図を示している。制御装置500は、本実施例によれば、調整ユニット505、識別ユニット510及び評価ユニット515を備える。調整ユニット505は、この場合、例えば、少なくとも2つのパーティション/コンパートメントにおける反応を可能にし、反応結果を得るために、例えば、加熱装置及び/又は冷却装置として構成される調整装置525に調整信号520を供給するように構成されている。識別ユニット510は、パーティション/コンパートメントにおいて発生した可能性がある反応の反応結果532を表す光信号530を識別するように構成される。光信号530は、この場合、例えば、センサ装置535によって認識可能である。評価ユニット515は、光信号530及び/又は反応結果532を評価し、この評価からコピー数を算定するように構成される。コピー数は、例えば、評価結果540として図中にグラフにより表示することができる。例えば、算定されたコピー数は医学、臨床、診断又は治療に関連するものであり、場合により更なる情報を含む、算定されたコピー数に応じて患者の処置を行うことができる。
【0060】
実施例が第1の特徴と第2の特徴との間に「及び/又は」の接続を含む場合、これは、一実施形態による実施例が第1の特徴及び第2の特徴の両方を有し、更なる実施形態による実施例が第1の特徴のみ又は第2の特徴のみを含むと読み取るべきである。
【0061】
本発明に係る方法に関する例示的な仕様を以下に示す。
反応コンパートメントの数:
2乃至1000000、好ましくは10乃至30000
反応コンパートメントの容量:
5pl乃至100μl、好ましくは500pl乃至1μl
検出反応:
等温増幅反応又は(定量)ポリメラーゼ連鎖反応