(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】樹脂シート、容器、キャリアテープ、及び電子部品包装体
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20240221BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240221BHJP
B29C 48/08 20190101ALI20240221BHJP
B29C 51/02 20060101ALI20240221BHJP
B65D 71/70 20060101ALI20240221BHJP
B65D 73/02 20060101ALI20240221BHJP
B65D 85/86 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
B32B27/00 104
B32B27/30 B
B29C48/08
B29C51/02
B65D71/70
B65D73/02 K
B65D85/86 300
(21)【出願番号】P 2022547403
(86)(22)【出願日】2021-06-07
(86)【国際出願番号】 JP2021021608
(87)【国際公開番号】W WO2022054355
(87)【国際公開日】2022-03-17
【審査請求日】2023-06-13
(31)【優先権主張番号】P 2020151113
(32)【優先日】2020-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 岳史
(72)【発明者】
【氏名】谷中 亮輔
【審査官】馳平 憲一
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/00、27/30
B29C 48/08
B29C 51/02
B65D 71/70
B65D 73/02
B65D 85/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートと、該基材シートの少なくとも一方の表面に設けられた、シリコーンを含む表面層と、を備え、
前記表面層における前記シリコーンの含有量が、0.3~4.0g/m
2であり、
前記基材シートは、スチレン-共役ジエンブロック共重合体(A)が29~65質量部、ポリスチレン樹脂(B)が25~60質量部、及び耐衝撃性ポリスチレン樹脂(C)が8~20質量部の割合(但し、前記(A)成分、前記(B)成分及び前記(C)成分の合計は100質量部)で含まれる樹脂組成物から形成されてなる、成形用の樹脂シート。
【請求項2】
前記表面層が、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、及び変性シリコーンオイルからなる群より選択される少なくとも1種のシリコーンオイルを含む、請求項1に記載の樹脂シート。
【請求項3】
前記表面層が、水酸基、フェノール基及びカルボキシル基からなる群より選択される少なくとも1種の基を有する変性シリコーンオイルを含む、請求項1に記載の樹脂シート。
【請求項4】
前記表面層が、導電性材料を更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂シート。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂シートを製造する方法であって、
前記基材シートの少なくとも一方の表面に、前記シリコーンを含む塗工液を、乾燥後の前記シリコーンの付着量が0.3~4.0g/m
2となるように塗布し、乾燥することにより前記表面層を形成する工程、
を備える、樹脂シートの製造方法。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂シートの成形体である、容器。
【請求項7】
前記容器が、底壁部と該底壁部の周縁から立設する側壁部とを有する凹形状に成形された部位を有しており、当該部位の下記式(1)から算出される延伸倍率DRが3.5以上である、請求項6に記載の容器。
DR=IA/OA …(1)
[式(1)中、IAは、前記底壁部及び前記側壁部の内側面の総面積を示し、OAは、凹形状の開口面積を示す。]
【請求項8】
請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂シートの成形体であって、物品を収容できる収容部が設けられている、キャリアテープ。
【請求項9】
前記収容部は、底壁部と該底壁部の周縁から立設する側壁部とを有する凹形状に設けられており、当該収容部の下記式(2)から算出される延伸倍率DRが3.5以上である、請求項8に記載のキャリアテープ。
DR=IA/OA …(2)
[式(2)中、IAは、前記底壁部及び前記側壁部の内側面の総面積を示し、OAは、凹形状の開口面積を示す。]
【請求項10】
請求項8又は9に記載のキャリアテープと、前記キャリアテープの前記収容部に収容された電子部品と、蓋材として前記キャリアテープに接着されたカバーフィルムと、を備える、電子部品包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂シート、容器、キャリアテープ、及び電子部品包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器や自動車などの工業製品の中間製品の包装容器には、熱可塑性樹脂を含む樹脂シートを加熱成形して得られる真空成形トレイ、エンボスキャリアテープなどが使用されている。エンボスキャリアテープを作製する際には、通常、原反シートを所定の幅にスリット加工したスリット品(スリット原反)が成形機に供給され、ポケット等が連続的に設けられる。この場合、リール状に巻いたスリット原反が成形機に取り付けられる。
【0003】
一般に、樹脂シートの巻き取りやリール状物の作製においては、巻き取りを良好にするための調整や工夫がなされている(例えば、下記特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、樹脂シートの密着性が小さすぎると、巻きズレなどを十分に抑制することが難しくなる。エンボスキャリアテープの作製に用いられる樹脂シートの場合、リール状に巻いたスリット原反に巻きズレが発生したり、スリット原反を取り付ける際にシャフトへの接触等によってスリット原反の側縁部にズレが発生していると、ポケットの成形位置がズレる等の不良が発生しやすくなる。
【0006】
他方、エンボスキャリアテープの作製においては、包装する部品の形状によっては、ポケットを深絞り成形によって設ける場合がある。このような場合、樹脂シートには、穴等の発生を抑制しつつ所定の形状に成形できることが必要であるが、車載用途等の部品大型化によって成形性の要求水準は一層高くなっている。更に、設けられたポケットは、リールに巻かれた状態でも潰れにくい十分な強度を有していることが求められる。
【0007】
本発明は、スリット原反として用いる場合であっても大きなズレが生じにくく、深絞り成形する場合であっても良好に成形できる成形性を有し、十分な強度を有する成形体を得ることができる樹脂シート、並びにそれを用いて得られる容器、キャリアテープ、及び電子部品包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一側面は、基材シートと、該基材シートの少なくとも一方の表面に設けられた、シリコーンを含む表面層と、を備え、表面層におけるシリコーンの含有量が、0.3~4.0g/m2であり、基材シートは、スチレン-共役ジエンブロック共重合体(A)が29~65質量部、ポリスチレン樹脂(B)が25~60質量部、及び耐衝撃性ポリスチレン樹脂(C)が8~20質量部(但し、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計は100質量部)含まれる樹脂組成物から形成されてなる、成形用の樹脂シートを提供する。
【0009】
上記樹脂シートは、スリット原反として用いる場合であっても大きなズレが生じにくいという特性、換言すればスリット原反の十分な形状安定性を有することができる。また、上記樹脂シートは、深絞り成形する場合であっても良好に成形できる成形性を有し、十分な強度を有する成形体を得ることができる。
【0010】
表面層は、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、及び変性シリコーンオイルからなる群より選択される少なくとも1種のシリコーンオイルを含むことができる。
【0011】
表面層は、水酸基、フェニル基及びカルボキシル基からなる群より選択される少なくとも1種の基を有する変性シリコーンオイルを含むことができる。
【0012】
表面層は、導電性材料を更に含むことができる。
【0013】
本発明の別の側面は、上記の樹脂シートを製造する方法であって、上記基材シートの少なくとも一方の表面に、上記シリコーンを含む塗工液を、乾燥後のシリコーンの付着量が0.3~4.0g/m2となるように塗布し、乾燥することにより上記表面層を形成する工程を備える樹脂シートの製造方法を提供する。
【0014】
本発明の別の側面は、上記の樹脂シートの成形体である容器を提供する。
【0015】
容器は、底壁部と該底壁部の周縁から立設する側壁部とを有する凹形状に成形された部位を有しており、この部位の下記式(1)から算出される延伸倍率DRが3.5以上であってもよい。
DR=IA/OA …(1)
[式(1)中、IAは、底壁部及び側壁部の内側面の総面積を示し、OAは、凹形状の開口面積を示す。]
【0016】
本発明の別の側面は、上記の樹脂シートの成形体であって、物品を収容できる収容部が設けられているキャリアテープを提供する。
【0017】
収容部は、底壁部と該底壁部の周縁から立設する側壁部とを有する凹形状に設けられており、この収容部の下記式(2)から算出される延伸倍率DRが3.5以上であってもよい。
DR=IA/OA …(2)
[式(2)中、IAは、底壁部及び側壁部の内側面の総面積を示し、OAは、凹形状の開口面積を示す。]
【0018】
本発明の別の側面は、上記のキャリアテープと、キャリアテープの収容部に収容された電子部品と、蓋材としてキャリアテープに接着されたカバーフィルムとを備える電子部品包装体を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、スリット原反として用いる場合であっても大きなズレが生じにくく、深絞り成形する場合であっても良好に成形できる成形性を有し、十分な強度を有する成形体を得ることができる樹脂シート、並びにそれを用いて得られる容器、キャリアテープ、及び電子部品包装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】樹脂シートの実施形態を示す模式断面図である。
【
図2】キャリアテープの収容部について説明するための図である。
【
図3】キャリアテープの収容部について説明するための図である。
【
図4】キャリアテープの一実施形態を示す一部切り欠き斜視図である。
【
図5】電子部品包装体の一実施形態を示す一部切り欠き斜視図である。
【
図6】スリット原反の形状安定性の評価方法を示す図である。
【
図7】成形性を評価するための判定基準を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0022】
[樹脂シート]
本実施形態の樹脂シートは、成形用の樹脂シートであり、基材シートと、基材シートの少なくとも一方の表面に設けられた、表面層と、を備える。
【0023】
図1は、本実施形態の樹脂シートの実施形態を示す模式断面図である。
図1の(a)に示す樹脂シート10は、基材シート1と、基材シート1の一方の面に設けられた表面層2とを備える。また、
図1の(b)に示す樹脂シート12は、基材シート1と、基材シートの一方の面に積層された表面層2と、基材シートの他方の面に積層された第2の表面層3とを備える。表面層2及び第2の表面層3は、同じ組成を有するものであってもよく、異なる組成を有するものであってもよい。
【0024】
<基材シート>
基材シートは、樹脂組成物から形成することができる。樹脂組成物は、スチレン-共役ジエンブロック共重合体(A)、ポリスチレン樹脂(B)、及び耐衝撃性ポリスチレン樹脂(C)を含むことができる。
【0025】
スチレン-共役ジエンブロック共重合体(A)としては、その構造中にスチレン系単量体を主体とする重合体ブロックと共役ジエン単量体を主体とする重合体ブロックとを含有する重合体を用いることができる。
【0026】
スチレン系単量体としては、スチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、1,3-ジメチルスチレン、α-メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、1,1-ジフェニルエチレン等が挙げられる。スチレン系単量体は、スチレンを主体とし、スチレン以外の上記成分を微量成分として1種以上含むことができる。
【0027】
共役ジエン単量体としては、その構造中に共役二重結合を有する化合物であればよく、例えば1,3-ブタジエン(ブタジエン)、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、2-メチルペンタジエン等が挙げられる、これらのうち、ブタジエン、イソプレンが好ましい。共役ジエン単量体は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
スチレン系単量体を主体とする重合体ブロックは、スチレン系単量体に由来する構造のみからなる重合体ブロックであってもよく、スチレン系単量体に由来する構造を50質量%以上含有する重合体ブロックであってもよい。
【0029】
共役ジエン単量体を主体とする重合体ブロックは、共役ジエン単量体に由来する構造のみからなる重合体ブロックであってもよく、共役ジエン単量体に由来する構造を50質量%以上含有する重合体ブロックであってもよい。
【0030】
スチレン-共役ジエンブロック共重合体(A)における共役ジエン含有量は、基材シートの機械特性の観点から、(A)成分の質量基準で、10~25質量%とすることができる。ここで、共役ジエン含有量とは共役ジエン単量体に由来する構造の全共重合体中に占める質量の割合を意味する。
【0031】
スチレン-共役ジエンブロック共重合体(A)は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
スチレン-共役ジエンブロック共重合体(A)は、例えば、共役ジエンがブタジエンである場合、スチレン-ブタジエン(SB)の二元共重合体であってもよく、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)の三元共重合体(SBS)であってもよく、スチレンブロックが3つ以上でブタジエンブロックが2つ以上の複数のブロックで構成される樹脂であってもよい。
【0033】
スチレン-共役ジエンブロック共重合体(A)は、各ブロック間のスチレンとブタジエンの組成比が連続的に変化するようないわゆるテーパーブロック構造を有するものであってもよい。また、スチレン-共役ジエンブロック共重合体(A)は、市販のものをそのまま用いることもできる。
【0034】
スチレン-共役ジエンブロック共重合体(A)は、深絞り成形における成形性の観点から、その成分中のスチレン系単量体の重合体ブロック(以下、「スチレンブロック」という場合もある。)のGPCで測定したピーク分子量が30,000~120,000の範囲にあってもよく、スチレンブロックの分子量分布曲線の半値幅が0.8~1.25の範囲、より好ましくは1.05~1.25の範囲にあってもよい。なお、(A)成分のスチレンブロックの分子量分布曲線は、以下の方法によって求めることができる。
【0035】
まず(A)成分を、I.M.KOLTHOFF,et al.,J.Polym.Sci.,1,429(1946)に記載の方法に準拠して、四酸化オスミウムを触媒としてクロロホルムにより酸化分解を実施する。これにより得たスチレンブロックをテトラヒドロフラン溶媒に溶解し、GPC法により分子量曲線を得る。そして、この分子量曲線より標準ポリスチレン(単分散)を用いたスチレン換算によってピーク分子量を求めることができる。この際のGPC法の測定は常法によるが、主要な測定条件は以下のとおりである。
カラム温度:40℃
検出方法:示差屈折法
移動相:テトラヒドロフラン
サンプル濃度:2質量%
検量線:標準ポリスチレン(単分散)により作成
【0036】
スチレンブロックの分子量分布曲線の半値幅は、上記で得られるスチレンブロックの分子量分布曲線を用いて求めることができる。具体的には、分子量を対数表示で横軸の1,000~1,000,000の範囲を15cmとして、縦軸に濃度(質量比)を任意の高さで表示し、ピークトップの高さの50%のピークの横軸の幅を半値幅とする。この場合、ピークトップの高さは横軸に垂直であり、高さの50%のピークの幅は横軸に水平であることが必要である。
【0037】
スチレンブロックのピーク分子量及び分子量分布曲線の半値幅は、例えば、(A)成分のスチレンブロック部分の重合時に、開始剤を添加する時間を調節する方法等により調節することができる。
【0038】
スチレン-共役ジエンブロック共重合体(A)は、シート製膜性の観点から、重量平均分子量(Mw)が80,000~220,000であってもよい。本明細書において、重量平均分子量(Mw)は、GPCを用いる常法で求めた標準ポリスチレン換算の分子量分布曲線より求めることができる。
【0039】
ポリスチレン樹脂(B)は、一般にGPPSと言われている樹脂であり、単量体としてスチレンが主体であるが、微量成分としてo-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、1,3-ジメチルスチレン、α-メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、1,1-ジフェニルエチレン等の芳香族ビニル化合物の1種以上を含有するものであってもよい。ポリスチレン樹脂(B)は、市販の樹脂を用いることもできる。
【0040】
ポリスチレン樹脂(B)は、重量平均分子量(Mw)が200,000~400,000であってもよい。
【0041】
耐衝撃性ポリスチレン樹脂(C)は、一般にHIPSと言われている樹脂であって、スチレン系単量体がグラフトした微粒子状のグラフトゴムを含有するポリスチレン樹脂を用いることができる。スチレン系単量体は、(A)成分におけるものと同様の単量体を用いることができる。グラフトゴムは、ゴム成分にスチレン系単量体をグラフト共重合させてグラフト枝を形成したものであり、グラフトゴム中のゴム成分としては、例えば1,3-ブタジエン(ブタジエン)、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、2-メチルペンタジエン等を単量体とするジエン系ゴムが用いられる。グラフトゴムとして、ジエン成分が50質量%以上のスチレン-共役ジエンブロック共重合体の熱可塑性エラストマーを用いることもできる。シート製膜性の観点から、グラフトゴムは、ポリブタジエン、スチレン-ブタジエンブロック共重合体が好ましい。
【0042】
(C)成分中のグラフトゴムは、透明性の観点から、その粒子径が2.0μm以上3.0μm以下であってもよく、2.3μm以上2.7μm以下であってもよい。なお、グラフトゴムの粒子径は、レーザー回折方式粒子アナライザーにより測定したグラフトゴム分の平均粒子径を意味する。
【0043】
シート製膜性と透明性の観点から、基材シートは、基材シートを100質量%としたときの基材シート中のグラフトゴムのゴム量が0.75~1.90質量%であることが好ましい。この場合、(C)成分中のグラフトゴムのゴム量と、基材シート中の(C)成分の配合比率を調整して、基材シート中のゴム量を上記の範囲内とすることができる。なお、(C)成分中のグラフトゴム含有量は、MEKとアセトンの質量比50/50の混合溶媒に溶解した時の不溶分を遠心分離で回収し、その質量の値から算出することができる。
【0044】
耐衝撃性ポリスチレン樹脂(C)は、重量平均分子量(Mw)が150,000~210,000であってもよい。
【0045】
樹脂組成物における(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の含有量は、成形性及び強度を両立する観点から、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の合計を100質量部としたときに、それぞれ、29~65質量部、25~60質量部、及び8~20質量部とすることができる。
【0046】
シート製膜性の観点から、樹脂組成物における(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計含有量は、樹脂組成物全量基準で、80質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。
【0047】
樹脂組成物は、導電性材料、酸化防止剤、アンチブロッキング剤等を含有していてもよい。樹脂組成物が導電性材料を含有する場合、形成される基材シートは導電性又は帯電防止性を有することができる。
【0048】
上述した樹脂組成物を用いて基材シートを製造する方法としては、一般的な方法を用いることができる。例えば、(A)~(C)の各成分を、所定の割合で配合し、タンブラー等の混合機を用いて混合し、押出機で混練りしてペレット状コンパウンドとする。このペレット状のコンパウンドを、φ65mm押出機とTダイとを用いて押出成形して、基材シートを製造することができる。また、この押出工程で発生する所謂「耳」の部分等を粉砕し、基材シートの強度、成形加工後の成形品に大きな影響の無い範囲で、基材シートの原料として戻してもよい。
【0049】
基材シートの厚みは、その用途に応じて適宜設定することができ、例えば、50μm~3mmであってもよく、100μm~1mmであってもよく、150~600μmであってもよい。
【0050】
<表面層>
表面層は、成形性の観点から、シリコーンを含むことができる。表面層は、シリコーンとして、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、及び変性シリコーンオイルからなる群より選択される少なくとも1種のシリコーンオイルを含むことができる。
【0051】
表面層は、基材シートとの密着性、スリット原反の形状安定性の観点から、水酸基、フェノール基及びカルボキシル基からなる群より選択される少なくとも1種の基を有する変性シリコーンオイルを含むことができる。
【0052】
表面層におけるシリコーンの含有量は、成形性及びスリット原反の形状安定性の観点から、0.3~4.0g/m2とすることができ、0.5~2.5g/m2とすることができる。
【0053】
表面層は、導電性材料を更に含むことができる。この場合、表面層は導電層としても機能することができる。導電性材料としては、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ(CNT)、黒鉛、ケッチェンブラック等が挙げられる。カーボンナノチューブを用いると、形成される表面層の透明性の低下を抑制することができる。例えば、直径がφ3~15nm、長さが0.5~3μmのカーボンナノチューブを用いることができる。
【0054】
導電性材料は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0055】
表面層における導電性材料の含有量は、帯電防止、透明性の観点から、0.01~1.0g/m2とすることができ、0.05~0.5g/m2とすることができる。
【0056】
導電性材料を含む表面層は、表面抵抗率が104~1010Ω/□であることが好ましい。表面抵抗率がこの範囲であると、樹脂シートを電子部品包装用の成形体を作製するために好適に用いることができ、静電気による電子部品の破壊や、外部から電気が流入することによる電子部品の破壊を防止することが容易となる。
【0057】
<第2の表面層>
図1の(b)に示す樹脂シート12のように、第2の表面層3が設けられる場合、第2の表面層3に上述した導電性材料を含有させてもよい。この場合、第2の表面層を導電層として機能させることができる。
【0058】
第2の表面層における導電性材料の含有量は、帯電防止、透明性の観点から、0.05~3.0g/m2とすることができ、0.1~1.5g/m2とすることができる。また、第2の表面層は、表面抵抗率が104~1010Ω/□であることが好ましい。
【0059】
本実施形態の樹脂シートは、加工が施されていない原反シートであってもよく、スリット品(スリット原反)などの所定の加工が施されたものであってもよい。
【0060】
本実施形態の樹脂シートは、真空成形法、圧空成形法、プレス成形法等といった公知の熱成形方法によって、用途に応じた形状に成形することができる。なお、プレス成形法は、真空成形法や圧空成形法に比べて、底付きの円筒や角筒形状をシャープに成形できるが、穴空きが生じやすい。本実施形態の樹脂シートは、成形性に優れていることから、プレス成形法による成形(特には、深絞り成形)をする場合であっても、穴空きを抑制しつつ良好な形状に成形することができる。そのため、本実施形態の樹脂シートは、プレス成形用(特には、深絞り成形用)樹脂シートとしても有用である。
【0061】
本実施形態の樹脂シートは、IC等の能動部品、ICを備える部品、コンデンサやコネクタ等の受動部品や機構部品の包装容器の材料として使用することができ、真空成形トレイ、マガジン、エンボスが設けられたキャリアテープ(エンボスキャリアテープ)などに好適に使用できる。
【0062】
本実施形態の樹脂シートによれば、スリット原反として用いる場合であっても大きなズレが生じにくいという特性、換言すればスリット原反の十分な形状安定性を有することができる。また、本実施形態の樹脂シートは、深絞り成形する場合であっても良好に成形できる成形性を有し、十分な強度を有する成形体を得ることができる。
【0063】
[樹脂シートの製造方法]
本実施形態に係る樹脂シートは、上述した基材シートの少なくとも一方の表面に、上述した各成分を含む塗工液を塗布し、乾燥することにより表面層を形成する工程を備える方法によって製造することができる。
【0064】
塗工液は、上述した成分をディゾルバー等を用いて混合することにより調製することができる。塗工液には、水、酢酸エチル、トルエン等の分散媒、分子中に芳香族を有するスルホン酸系分散剤等の分散剤を含有させてもよい。基材シートの変色、劣化を抑制する観点から、塗工液は水性であることが好ましく、この場合の各成分はエマルジョン又は水分散液の形態では配合することができる。
【0065】
塗工液の塗工手段としては、公知の方法を用いることができ、例えば、グラビアコーター、グラビアロール、バーコーター等が挙げられる。
【0066】
塗工液におけるシリコーンの含有量及び塗工液の塗工量は、乾燥後のシリコーンの付着量が上述した含有量の範囲となるように調整することができる。塗工液が導電性材料を含む場合も同様に、乾燥後の導電性材料付着量が上述した含有量の範囲となるように調整することができる。
【0067】
表面層が導電性材料を含む場合、塗工液にはアクリル系共重合体を含有させることができる。アクリル系共重合体は、例えばエマルジョンや水系分散液の形態で配合することができる。アクリル系共重合体の粒子径(平均粒子径はここではメジアン径の値である。)は、80nm~350nmであってもよく、100~250nmであってもよい。また、アクリル系共重合体は、表面層の導電性を適切に維持する観点から、ガラス転移温度Tgが25~80℃であることが好ましい。
【0068】
樹脂シートが第2の表面層を有する場合、第2の表面層は表面層と同様にして形成することができる。
【0069】
[容器、キャリアテープ及び電子部品包装体]
本実施形態の容器は、上記の本実施形態に係る樹脂シートの成形体である。容器は、用途に応じた形状に本実施形態に係る樹脂シートを成形することにより得ることができる。
【0070】
成形方法としては、真空成形法、圧空成形法、プレス成形法等の公知の熱成形方法を用いることができる。特に、本実施形態の樹脂シートをプレス成形法によって成形(特には深絞り成形)することにより、穴空きの発生を抑制しつつ容器のポケット形状をシャープに成形することができる。
【0071】
成形温度としては、80~500℃が挙げられる。
【0072】
容器は、底壁部と該底壁部の周縁から立設する側壁部とを有する凹形状に成形された部位を有しており、この部位の下記式(1)から算出される延伸倍率DRが3.5以上であってもよい。
DR=IA/OA …(1)
[式(1)中、IAは、底壁部及び側壁部の内側面の総面積を示し、OAは、凹形状の開口面積を示す。]
【0073】
本実施形態の容器においては、本実施形態に係る樹脂シートが成形性に優れることから、凹形状に成形された部位の上記延伸倍率DRが4.0以上であってもよく、5.0以上であってもよい。
【0074】
本実施形態のキャリアテープは、上記の本実施形態に係る樹脂シートの成形体であって、物品を収容できる収容部が設けられている。
【0075】
収容部は、底壁部と該底壁部の周縁から立設する側壁部とを有する凹形状に設けられており、この収容部の下記式(2)から算出される延伸倍率DRが3.5以上であってもよく、4.0以上であってもよく、5.0以上であってもよい。
DR=IA/OA …(2)
[式(1)中、IAは、底壁部及び側壁部の内側面の総面積を示し、OAは、凹形状の開口面積を示す。]
【0076】
図2は、キャリアテープの収容部について説明するための図であり、(a)は上面図であり、(b)は(a)に示されるII-II線の断面図である。
図2に示されるキャリアテープは、樹脂シート10を成形して設けられた収容部(ポケット)20を有している。なお、
図2の(a)中のAは、キャリアテープ(成形体)の進行方向を示す。
【0077】
この収容部20は、底壁部7と該底壁部7の周縁から立設する側壁部5,6とを有する凹形状を有しており、底壁部7の内側面と側壁部5の内側面及び側壁部6の内側面との成す角が略直角である。また、テープ表面における開口部は正方形又は長方形を有している。このような収容部の延伸倍率DRは、下記の式から算出することができる。
DR=[(SA1)+(SA2)+(BA)]/OA
ここで、SA1は、方向Aと平行な2つの側壁の内側面の合計面積を示し、2×X×Zから算出される。Xは側壁部の方向Aにおける辺長を示し、Zは収容部の深さを示す。SA2は、方向Aと直交する2つの側壁の内側面の合計面積を示し、2×Y×Zから算出される。Yは側壁部の方向Aと直交する方向における辺長を示し、Zは収容部の深さを示す。BAは、底壁部の内側面の面積を示し、X×Yから算出される。OAは、開口面積を示し、X×Yから算出される。
【0078】
図3も収容部について説明するための図であり、(a)は上面図であり、(b)は(a)に示されるIIIb-IIIb線の断面図であり、(c)は(a)に示されるIIIc-IIIc線の断面図である。なお、
図3の(a)中のAは、キャリアテープ(成形体)の進行方向を示す。ここでは、底壁部の内側面と、方向Aと平行な側壁部の内側面との成す角が略直角となっている。また、テープ表面における開口部は正方形又は長方形を有している。
【0079】
このような収容部の延伸倍率DRは、下記の式から算出することができる。
DR=[(SA1)+(SA2)+(BA)]/OA
ここで、SA1は、方向Aと平行な2つの側壁の内側面の合計面積を示し、2×X1×Z’から算出される。X1は側壁部の方向Aにおける辺長を示し、Z’は側壁部の方向Aに平行な2つの辺の距離(間隔)を示す。SA2は、方向Aと直交する2つの側壁の内側面の合計面積を示し、2×[{(Y1+Y2)/2}×Z]から算出される。Y1及びY2はそれぞれ、側壁部の方向Aと直交する方向における辺長を示し、Zは収容部の深さを示す。BAは、底壁部の内側面の面積を示し、X1×Y1から算出される。X1は底壁部の方向Aにおける辺長を示し、Y1は底壁部の方向Aと直交する方向における辺長を示す。OAは、開口面積を示し、X2×Y2から算出される。X2は開口部の方向Aにおける辺長を示し、Y2は開口部の方向Aと直交する方向における辺長を示す。
【0080】
図4は、キャリアテープの一実施形態を示す斜視図である。
図4に示すキャリアテープ100は、エンボス成形によって収容部20が設けられた本実施形態に係る樹脂シートの成形体16からなるエンボスキャリアテープである。成形体16には、IC等の各種電子部品の封入工程等での搬送に使用することができる送り穴30が設けられている。収容部20の底部には、電子部品検査のための穴22が設けられていてもよい。
【0081】
本実施形態のキャリアテープは、リール状に巻き取ることができる。
【0082】
本実施形態のキャリアテープは、電子部品の包装用容器として好適である。電子部品としては、例えば、IC、LED(発光ダイオード)、抵抗、液晶、コンデンサ、トランジスター、圧電素子レジスター、フィルター、水晶発振子、水晶振動子、ダイオード、コネクタ、スイッチ、ボリュウム、リレー、インダクタ等が挙げられる。電子部品は、上記の部品を使用した中間製品であってもよく、最終製品であってもよい。
【0083】
本実施形態の電子部品包装体は、上記の本実施形態のキャリアテープと、キャリアテープの収容部に収容された電子部品と、蓋材として前記キャリアテープに接着されたカバーフィルムと、を備える。
図5は、電子部品包装体の一実施形態を示す一部切り欠き斜視図である。
図5に示す電子部品包装体200は、収容部20及び送り穴30が設けられた本実施形態に係る樹脂シートの成形体16からなるエンボスキャリアテープと、収容部20に収容された電子部品40と、エンボスキャリアテープに接着されたカバーフィルム50とを備える。
【0084】
カバーフィルムとしては、例えば、特許第4630046号や特許第5894578号に開示されるものが挙げられる。
【0085】
カバーフィルムは、電子部品を収容したエンボスキャリアテープの上面にヒートシールによって接着することができる。
【0086】
本実施形態の電子部品包装体は、リール状に巻き取ったキャリアテープ体として、電子部品の保管及び搬送に用いることができる。
【実施例】
【0087】
以下、実施例及び比較例によって、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0088】
[樹脂シートの作製]
(実施例1~14及び比較例1~6)
表1~3に示す原料を同表に示す組成割合(質量%)となるように各々計量し、高速混合機により均一混合した後、φ45mmベント式二軸押出機を用いて混練し、ストランドカット法によりペレット化し、基材シート形成用樹脂組成物を得た。この組成物を用い、φ30mm押出機(L/D=28)により、基材シートを作製した。なお、基材シートの厚みは0.4mmであった。
【0089】
得られた基材シートの片面に、グラビアコーター及びグラビアロールを用いて、表1~3に示す塗工液を、乾燥後のシリコーンの付着量が同表に示す量となるように塗工し、塗膜を80℃で乾燥して表面層を形成した。
【0090】
(実施例15)
表3に示す原料を同表に示す組成割合(質量%)となるように各々計量し、高速混合機により均一混合した後、φ45mmベント式二軸押出機を用いて混練し、ストランドカット法によりペレット化し、基材シート形成用樹脂組成物を得た。この組成物を用い、φ30mm押出機(L/D=28)により、基材シートを作製した。なお、基材シートの厚みは0.4mmであった。
【0091】
得られた基材シートの一方面に、グラビアコーター及びグラビアロールを用いて、表3に示す塗工液を、乾燥後のシリコーンの付着量が同表に示す量となるように塗工し、塗膜を80℃で乾燥して表面層を形成した。
【0092】
次いで、基材シートの他方面に、グラビアコーター及びグラビアロールを用いて、表3に示す塗工液を、乾燥後の導電性材料の付着量が同表に示す量となるように塗工し、塗膜を80℃で乾燥して導電層を形成した。
【0093】
(実施例16)
表3に示す原料を同表に示す組成割合(質量%)となるように各々計量し、高速混合機により均一混合した後、φ45mmベント式二軸押出機を用いて混練し、ストランドカット法によりペレット化し、基材シート形成用樹脂組成物を得た。この組成物を用い、φ30mm押出機(L/D=28)により、基材シートを作製した。なお、基材シートの厚みは0.4mmであった。
【0094】
得られた基材シートの片面に、グラビアコーター及びグラビアロールを用いて、表3に示す塗工液を、乾燥後のシリコーン及び導電性材料のそれぞれの付着量が同表に示す量となるように塗工し、塗膜を80℃で乾燥して表面層を形成した。
【0095】
表1~3に示す原料及び塗工液の詳細は下記のとおりである。
(スチレン-共役ジエンブロック共重合体)
スチレン-ブタジエンブロック共重合体:重量平均分子量150,000、スチレン含有量74質量%、ブタジエンを主体とする重合体ブロックの共役ジエン含有量26質量%
【0096】
(ポリスチレン樹脂)
ポリスチレン:重量平均分子量330,000
【0097】
(耐衝撃性ポリスチレン樹脂)
耐衝撃性ポリスチレン:重量平均分子量180,000、ゴム粒子径2.2μm
【0098】
[塗工液]
(a1)
ジメチルシリコーンオイル(商品名:KM-9782、信越化学工業社製、シリコーンエマルジョン、不揮発分37%)と、水とを混合して、不揮発分5%になるように塗工液を調整した。
【0099】
(a2)
メチルフェニルシリコーンオイル(商品名:KF-53、信越化学工業社製)と、酢酸エチルとを混合して、不揮発分5%になるように塗工液を調整した。
【0100】
(a3)
メチルハイドロジェンシリコーンオイル(商品名:KF-99、信越化学工業社製)と、酢酸エチルとを混合して、不揮発分5%になるように塗工液を調整した。
【0101】
(a4)
変性シリコーンオイル(水酸基含有)(商品名:KF-9701、信越化学工業社製)と、酢酸エチルとを混合して、不揮発分5%になるように塗工液を調整した。
【0102】
(a5)
変性シリコーンオイル(フェニル基含有)(商品名:KM-9739、信越化学工業社製、シリコーンエマルジョン、不揮発分30%)と、水とを混合して、不揮発分5%になるように塗工液を調整した。
【0103】
(a6)
変性シリコーンオイル(カルボキシル基含有)(商品名:DOWSIL DK Q2-103-22、ダウ・東レ社製、シリコーンエマルジョン、不揮発分21%)と、水とを混合して、不揮発分5%になるように塗工液を調整した。
【0104】
(b1)
シリコーンエマルジョン(商品名:KM-9782、信越化学工業社製)と、アクリル系共重合体エマルジョン(商品名:EC242、新中村化学社製)と、カーボンナノチューブ水分散液(商品名:N7006L、KJ特殊紙社製)とを、乾燥後における質量比が50:45:5となるように混合し、塗工液を調整した。
【0105】
(b2)
アクリル系共重合体エマルジョン(商品名:EC242、新中村化学社製)と、カーボンナノチューブ水分散液(商品名:N7006L、KJ特殊紙社製)とを、乾燥後における質量比が95:5となるように混合し、塗工液を調整した。
【0106】
[樹脂シートの評価]
樹脂シートの押出方向にサンプリングし、以下に示す方法によって評価を行った。これらの結果を表1~3にまとめて示す。
【0107】
(1)形状安定性
樹脂シートを幅640mmで400m巻いた原反を、23℃の環境下に1ヶ月間保管した後、幅24mmにスリットして、3インチの紙管に、巻き取り張力:1.0kgfで200m巻いたスリット原反を作製した。
図6に示すように、机に3インチの紙管60を置き、この紙管の上にスリット原反62の紙管部分64が重なるように載置した状態で、スリット原反62の外周部に1kgの重り66を載せた。このときの幅方向のズレ量を測定し、下記の判定基準で形状安定性を評価した。
<判定基準>
A:幅方向のズレが2mm以内である
B:幅方向のズレが2mm以上5mm未満である
C:幅方向のズレが5mm以上である
【0108】
(2)成形性
ヒーター温度190℃の条件で、プレス成形機により樹脂シートの成形を行い、表1~3に示す延伸倍率のポケットを有する成形体を作製した。なお、ポケットは、
図3に示されるものと同様の凹形状を有しており、各延伸倍率におけるポケットサイズは下記のとおりである。
<延伸倍率3.5倍>
X1:8mm、X2:8mm、Y1:7mm、Y2:9mm、Z:7mm
<延伸倍率4倍>
X1:8mm、X2:8mm、Y1:7mm、Y2:10mm、Z:8mm
<延伸倍率5倍>
X1:8mm、X2:8mm、Y1:7mm、Y2:10mm、Z:12.1mm
【0109】
得られた成形体のポケットを顕微鏡で観察し、ポケットの角(底壁部の周縁)11のシャープさを、
図7に示す評価基準に従って5段階で評価した。また、得られた成形体におけるポケットを目視で観察して、穴空きの発生の有無を確認した。これらの結果に基づき、下記の判定基準で成形性を評価した。
<判定基準>
A:シャープさが4以上であり、且つ、穴空きが無い
B:シャープさが3以上であり、且つ、穴空きが無い
C:穴空きが有る、又は、穴空きは無いがシャープさが2以下である
【0110】
(3)座屈強度
ストログラフ(東洋精機製作所製)を用いて、得られた成形体のポケットの開口部を下にして、ポケットの底壁部を深さ方向に圧縮したときの最大強度を測定し、これを座屈強度とした。
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
表1~3に示すように、実施例1~16ではスリット原反の形状安定性及び成形性の判定がB又はAであり、成形体は20N以上の座屈強度を有していることが確認された。
【符号の説明】
【0115】
1…基材シート、2…表面層、3…第2の表面層、5,6…側壁部、7…底壁部、10,12…樹脂シート、20…収容部、22…穴、30…送り穴、40…電子部品、50…カバーフィルム、100…キャリアテープ、200…電子部品包装体。