(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】経路案内装置、および、経路案内方法
(51)【国際特許分類】
G01C 21/34 20060101AFI20240221BHJP
G08G 1/0969 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
G01C21/34
G08G1/0969
(21)【出願番号】P 2023046132
(22)【出願日】2023-03-23
(62)【分割の表示】P 2019120702の分割
【原出願日】2019-06-28
【審査請求日】2023-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】500578216
【氏名又は名称】株式会社ゼンリンデータコム
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】世古 将伸
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-069751(JP,A)
【文献】特開2012-225672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00-21/36、23/00-25/00
G08G 1/00-99/00
G09B 23/00-29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
経路案内装置であって、
現在位置を取得する位置取得部と、
経路を案内する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記現在位置が前記経路を逸脱した場合におけるリルートの手法を、
経路案内1回あたり又は予め定められた距離あたりのリルートの発生回数を表す値、および、リルートの発生間隔を表す値のうちの少なくとも一方に応じて
、
サーバとの通信を介してリルートを行う第1の手法と、
前記通信を介さずにリルートを行う第2の手法と、
のうちのいずれか一方に変更し、
前記制御部は、前記発生回数を表す値が第1閾値未満、または、前記発生間隔を表す値が第2閾値未満の場合に、前記第1の手法に前記リルートの手法を変更する、
経路案内装置。
【請求項2】
経路案内装置であって、
現在位置を取得する位置取得部と、
経路を案内する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記現在位置が前記経路を逸脱した場合におけるリルートの手法を、経路案内1回あたり又は予め定められた距離あたりのリルートの発生回数を表す値、および、リルートの発生間隔を表す値のうちの少なくとも一方に応じて、
サーバとの通信を介してリルートを行う第1の手法と、
前記通信を介さずにリルートを行う第2の手法と、
のうちのいずれか一方に変更し、
前記制御部は、前記発生回数を表す値が第1閾値以上であり、かつ、前記発生間隔を表す値が第2閾値以上である場合に、前記第2の手法に前記リルートの手法を変更する、
経路案内装置。
【請求項3】
コンピューターにより実行される経路案内方法であって、
(A)現在位置を取得する工程と、
(B)経路を案内する工程と、
を備え、
前記工程(B)では、前記現在位置が前記経路を逸脱した場合におけるリルートの手法を、
経路案内1回あたり又は予め定められた距離あたりのリルートの発生回数を表す値、および、リルートの発生間隔を表す値のうちの少なくとも一方に応じて
、
サーバとの通信を介してリルートを行う第1の手法と、
前記通信を介さずにリルートを行う第2の手法と、
のうちのいずれか一方に変更し、
前記工程(B)では、前記発生回数を表す値が第1閾値未満、または、前記発生間隔を表す値が第2閾値未満の場合に、前記第1の手法に前記リルートの手法を変更する、
経路案内方法。
【請求項4】
コンピューターにより実行される経路案内方法であって、
(A)現在位置を取得する工程と、
(B)経路を案内する工程と、
を備え、
前記工程(B)では、前記現在位置が前記経路を逸脱した場合におけるリルートの手法を、経路案内1回あたり又は予め定められた距離あたりのリルートの発生回数を表す値、および、リルートの発生間隔を表す値のうちの少なくとも一方に応じて、
サーバとの通信を介してリルートを行う第1の手法と、
前記通信を介さずにリルートを行う第2の手法と、
のうちのいずれか一方に変更し、
前記工程(B)では、前記発生回数を表す値が第1閾値以上であり、かつ、前記発生間隔を表す値が第2閾値以上である場合に、前記第2の手法に前記リルートの手法を変更する、
経路案内方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経路案内を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
サーバから地図データを受信する経路案内装置では、通信量を削減することが求められている。例えば、特許文献1には、経路案内に対するユーザの忠実度と閾値とを比較し、忠実度が閾値以下である場合に、忠実度が閾値よりも大きい場合よりも、地図情報の配信エリアを狭くしてデータの通信量を削減することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した従来の技術では、忠実度に応じて地図情報の配信エリアは調整されるものの、経路逸脱時においてリルート処理が発生した場合におけるデータ通信量の削減については考慮されていない。そのため、リルート処理時においてデータ通信量を削減可能な技術が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本発明の一形態によれば、経路案内装置が提供される。この経路案内装置は、経路を案内するためのデータをサーバから取得するためのデータ取得部と、取得された前記データを記憶する記憶部と、現在位置を取得する位置取得部と、前記データと前記現在位置とに基づき表示部を制御して経路案内を行う制御部と、を備え、前記制御部は、前記現在位置が前記経路を逸脱した場合に、前記記憶部に既に記憶されている前記データを用いてリルートを行うか、前記サーバにリルートを行わせて新たなデータを取得するかを、前記リルートの発生に関する統計結果に応じて決定することを特徴とする。
このような形態によれば、リルートの発生に関する統計結果に応じて、記憶部に既に記憶されているデータを用いてリルートを行うことができるので、リルート処理時におけるデータ通信量を削減することが可能になる。
(2)上記形態の経路案内装置において、前記制御部は、前記リルートの発生回数が第1閾値以上であり、かつ、前記リルートの発生間隔が第2閾値以上である場合に、前記記憶部に既に記憶されている前記データを用いてリルートを行ってもよい。
このような形態であれば、例えば、リルートが実行される回数は多いものの、すぐに元の経路に戻る傾向があるためにリルートの発生間隔が長くなるユーザに対しては、記憶部に既に記憶されているデータを用いてリルートを行うことができるので、データ通信量を削減できる。
(3)上記形態の経路案内装置において、前記制御部は、前記発生回数が前記第1閾値未満、または、前記発生間隔が前記第2閾値未満の場合に、前記サーバにリルートを行わせて前記新たなデータを取得してもよい。
このような形態であれば、例えば、経路に従って移動する傾向があるためにリルートの発生回数が少ないユーザや、経路逸脱時に元の経路に戻らない傾向があるためにリルートの発生間隔が短いユーザに対しては、サーバにリルートを行わせて経路案内を行うことができる。
(4)上記形態の経路案内装置において、前記制御部は、前記発生回数が前記第1閾値未満の場合には、前記発生回数が前記第1閾値以上の場合よりも、前記サーバから一度に取得するデータ量を大きくしてもよい。このような形態であれば、リルートの発生に関する統計結果に応じて、一度に取得するデータ量を調整できるので、データ通信量を適正化することができる。
本発明は、上述した経路案内装置以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、コンピュータにより実行される経路案内方法や、経路を案内するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムが記録された一時的でない有形な記録媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】経路表示システムの概略構成を示す説明図である。
【
図2】第1実施形態における経路案内処理のフローチャートである。
【
図3】既に記憶されたデータを用いたリルート処理の概要を示す説明図である。
【
図4】第2実施形態における経路案内処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態における経路表示システム10の概略構成を示す説明図である。経路表示システム10は、経路案内装置100と、サーバ200とを備える。経路案内装置100は、例えば、車両に搭載して利用することが可能であり、また、歩行中に使用することも可能である。本実施形態において、経路案内装置100は、スマートフォンによって構成されている。なお、経路表示システム10を、広義の経路案内装置として捉えることも可能である。
【0009】
経路案内装置100は、送受信アンテナと無線基地局と交換局とを含む通信キャリア70を介して、インターネット80に接続されたサーバ200にアクセスすることができる。経路案内装置100は、第1制御部110と、第1通信部120と、タッチパネル124と、表示部126と、測位部136と、記憶部138と、を備える。
【0010】
第1通信部120は、通信キャリア70を介してサーバ200と無線通信を行うための通信回路を備える。第1通信部120は、ユーザに経路を案内するためのデータをサーバ200から取得するためのデータ取得部として機能する。経路を案内するためのデータには、例えば、地図データと、経路データと、案内データと、が含まれる。地図データは、道路や地物の形状を表すデータである。経路データは、出発地から目的地までの経路を表すデータである。案内データは、経路データが表す経路周辺における案内標識や交差点の画像、インターチェンジの出入口の画像等を含むデータである。第1通信部120によって取得されたデータは、記憶部138に記憶される。
【0011】
表示部126は、サーバ200から受信したデータによって表される各種の情報を表示する装置である。表示部126としては、液晶モニタや有機ELモニタを採用することができる。
【0012】
タッチパネル124は、表示部126に重畳して設けられており、指やペンによるユーザからのタッチ操作を受け付ける。経路案内装置100は、タッチパネル124に限らず、各種ボタンやジョイスティック、タッチパッドなどの他の入力装置を備えていてもよい。
【0013】
測位部136は、GNSS(Global Navigation Satellite System/全球測位衛星システム)受信機を備え、GNSSを構成する人工衛星から受信した電波に基づいて現在位置の緯度および経度を測位する。測位部136は、現在位置を取得する位置取得部として機能する。
【0014】
第1制御部110は、CPUやメモリを備えたコンピュータとして構成されており、表示部126をはじめ、経路案内装置100の動作全体を制御する。第1制御部110は、そのメモリに記録されたコンピュータプログラムがCPUによって実行されることにより、経路案内部112および統計処理部114として機能する。コンピュータプログラムは、メモリカードなどの一時的でない有形な記録媒体に記録されていてもよい。
【0015】
経路案内部112は、第1通信部120によってサーバ200から受信した各種データと、測位部136によって取得された現在位置とに基づき表示部126を制御して経路案内を行う。具体的には、経路案内部112は、現在位置周辺の地図データをサーバ200から取得して地図を表示部126に表示し、さらに、その地図上に経路データによって表される経路を表示する。そして、経路と現在位置との関係に基づき、右左折する地点や乗降するインターチェンジ等を表す画像を、案内データに基づき表示する。
【0016】
本実施形態において、経路案内部112は、地図データ、経路データ、案内データを、後述する経路案内処理時にサーバ200から取得する。地図データについては、経路案内部112は、現在位置が移動した際に、現在位置周辺の地図データを、メッシュ状に分割されたパーセル単位で取得する。経路データについては、経路案内部112は、初回の経路探索時、および、リルート時に取得する。リルートとは、現在位置が経路から逸脱した際に、新たな経路を設定する処理である。詳細は後述するが、本実施形態では、初回の経路探索はサーバ200によって行われ、リルートは、サーバ200または経路案内装置100のいずれかで行われる。案内データについては、経路案内部112は、現在位置が経路上を、予め定められた距離進む毎に取得する。
【0017】
統計処理部114は、リルートの発生に関する統計処理を行う。具体的には、統計処理部114は、リルートの「発生回数」と「発生間隔」とを算出する。
【0018】
本実施形態において、「発生回数」とは、出発地から目的地までの経路案内1回につき、経路逸脱によってリルートが発生した回数の平均値である。リルートの発生回数が多ければ、交差点を見逃しやすい傾向のユーザであるか、もしくは、経路に従わない傾向を有するユーザであると判断できる。リルートの発生回数が少なければ、経路に従う傾向を有するユーザであると判断できる。なお、発生回数は、予め定められた距離あたりのリルート発生回数の平均値であってもよい。
【0019】
本実施形態において、「発生間隔」とは、リルートが発生してから次にリルートが発生するまでの平均時間である。リルートの発生間隔が短ければ、経路に従わない傾向を有するユーザであると判断でき、リルートの発生間隔が長ければ、経路に従う傾向を有するユーザであると判断できる。なお、上述した発生回数および発生間隔は、平均値に限らず、中央値や最頻値などの他の統計値によって定められてもよい。
【0020】
サーバ200は、第2通信部202と、地図情報記憶部214と、第2制御部204と、を備えている。第2通信部202は、インターネット80を介して経路案内装置100と通信を行うための回路である。
【0021】
地図情報記憶部214には、地図データと、道路ネットワークデータと、案内データとが記憶されている。地図データは、ポリゴンによって地形や地物の形状を表す。道路ネットワークデータは、道路を表すリンクデータと、交差点や屈曲点、行き止まりを表すノードデータとにより道路の繋がり状態を表すデータである。ノードデータには、緯度および経度を表す情報が含まれる。リンクデータには、そのリンクデータを構成するノードを示す情報と、その道路の通過に要する旅行時間を表すコスト情報とが含まれる。案内データは、案内標識や交差点の画像、インターチェンジの出入口の画像等を表す。案内データは、ノードデータあるいはリンクデータに対応付けられている。
【0022】
第2制御部204は、CPUやメモリを備えており、サーバ200の動作全体を制御する。第2制御部204は、そのメモリに記憶されたコンピュータプログラムがCPUによって実行されることにより、経路探索部206、地図データ送信部208、案内データ送信部210として機能する。コンピュータプログラムは、光ディスクなどの一時的でない有形な記録媒体に記録されていてもよい。
【0023】
経路探索部206は、経路案内装置100から経路探索要求あるいはリルート要求を、第2通信部202を介して受信した場合に、それらの要求に従って経路を探索する。より具体的には、経路探索部206は、経路案内装置100から受信した経路探索要求またはリルート要求によって指定された出発地から目的地までの経路を、地図情報記憶部214に記憶された道路ネットワークデータを用いて探索し、経路データを生成する。経路探索に用いるアルゴリズムとしては、周知のダイクストラ法やA-Starアルゴリズム等を用いることができる。経路探索部206は、生成した経路データを、経路案内装置100に送信する。
【0024】
地図データ送信部208は、経路案内装置100から要求された位置周辺の地図データを、地図情報記憶部214から読み込み、経路案内装置100に送信する。
【0025】
案内データ送信部210は、経路案内装置100から要求された取得範囲の案内データを、地図情報記憶部214から読み込み、経路案内装置100に送信する。
【0026】
図2は、経路案内装置100において実行される経路案内処理のフローチャートである。この処理は、経路案内装置100に対して、経路の案内を開始するための所定の操作が行われた場合に実行される。
【0027】
ステップS10において、第1制御部110は、ユーザから出発地および目的地の指定を受け付け、その出発地から目的地までの経路探索をサーバ200に要求する。出発地が指定されない場合、第1制御部110は、測位部136によって測位された現在位置を出発地としてもよい。サーバ200の経路探索部206は、経路案内装置100から受信した経路探索要求に従い、道路ネットワークデータを用いて経路探索を行い、その結果生成された経路データを経路案内装置100に送信する。
【0028】
ステップS12において、第1制御部110は、現在のタイミングが、案内データを取得するタイミングであれば、第1制御部110は、現在位置から経路に沿って、予め定められた取得範囲内の案内データの送信をサーバ200に要求して取得する。当該経路案内処理の実行直後には、第1制御部110は、現在位置から経路に沿って15km先までの案内データの取得を行う。また、現在のタイミングが、地図データを取得するタイミングであれば、第1制御部110は、現在位置周辺の地図データをパーセル単位でサーバ200に要求して取得する。
【0029】
ステップS14において、第1制御部110の経路案内部112は、ステップS10およびステップS12の処理において取得された経路データ、案内データおよび地図データを用いて、表示部126を制御して経路案内を行う。具体的には、地図データが表す地図を表示部126に描画し、その地図の上に経路データによって表される経路を描画する。そして。現在位置が、案内データに対応する位置に到来した場合には、その案内データを用いて、交差点や交通標識、インターチェンジの出入り口を表す画像等を表示する。経路案内部112は、これらの画像に限らず、音声を発信して案内を行ってもよい。
【0030】
ステップS16において、第1制御部110は、リルートを行うか否かを判断する。具体的には、第1制御部110は、現在位置が、経路から逸脱した場合に、リルートを行うと判断する。第1制御部110は、現在位置が経路から予め定められた距離(例えば、50m)、遠ざかった場合に、経路から逸脱したと判断することができる。
【0031】
ステップS16においてリルートを行わないと判断した場合、第1制御部110は、ステップS18において、経路案内が終了したか否かを判断する。第1制御部110は、現在位置が目的地付近に到達した場合、または、ユーザから経路案内を終了させる所定の操作が行われた場合に、経路案内を終了すると判断する。経路案内を終了すると判断した場合には、第1制御部110は、当該経路案内処理を終了させる。一方、経路案内を終了しないと判断した場合には、処理を上述したステップS12に戻し、経路案内処理を続行させる。
【0032】
ステップS16においてリルートを行うと判断した場合、ステップS20において、第1制御部110の統計処理部114は、リルートの発生に関する統計処理を行う。つまり、上述した発生回数および発生間隔の最新の値の算出を行う。
【0033】
ステップS24において、第1制御部110は、リルートの発生回数が第1閾値よりも多いか否かを判断する。第1閾値は予め定められており、例えば、5回である。発生回数が5回とは、上記のとおり、本実施形態では、経路案内1回につきリルートの発生回数が平均5回であることを意味する。
【0034】
ステップS24において、リルートの発生回数が第1閾値未満と判断された場合、ステップS26において、第1制御部110は、案内データの取得範囲を大きい値に設定する。本実施形態では、この値を15Kmにする。そのため、次回、上記ステップS12の処理が実行された際には、15Km毎に、案内データが取得される。
【0035】
案内データの取得範囲を大きい値に設定した後、ステップS28において、第1制御部110は、サーバ200にリルート要求を送信する。サーバ200の経路探索部206は、リルート要求に従い、経路案内装置100の現在位置から目的地までの経路を探索し、新たな経路データを経路案内装置100に送信する。第1制御部は、サーバ200から新たな経路データを受信し、以降、新たな経路データを用いて経路案内処理を続行する。
【0036】
上記ステップS24において、リルートの発生回数が第1閾値以上と判断された場合、ステップS30において、第1制御部110は、リルートの発生間隔が第2閾値よりも長いか否かを判断する。第2閾値は予め定められており、例えば、15分である。発生間隔が15分とは、上記のとおり、本実施形態では、リルートからリルートまでの平均時間が15分であることを意味する。
【0037】
ステップS30において、リルートの発生間隔が第2閾値未満であると判断された場合、ステップS32において、第1制御部110は、案内データの取得範囲を小さい値に設定する。本実施形態では、この値を5Kmにする。そのため、次回、上記ステップS12の処理が実行された際に、5Km毎に、案内データが取得される。
【0038】
ステップS30において、リルートの発生間隔が第2閾値以上であると判断された場合、ステップS34において、第1制御部110は、サーバ200に対してリルート要求を行うことなく、既に記憶部138に記憶されているデータを用いてリルート処理を行い、元の経路に戻るための案内を行う。
【0039】
図3は、ステップS34におけるリルート処理の概要を示す説明図である。上記ステップS34では、第1制御部110は、サーバ200から取得された経路R1から、現在位置が逸脱した場合、その逸脱した地点RPから経路R1に戻る経路R2を、記憶部138に既に記憶されている地図データを用いて探索する。地図データには、道路の形状を表すデータが含まれているため、第1制御部110は、各道路の形状に基づき、元の経路R1に戻る経路R2を求める。第1制御部110は、地図データによって表される地図画像上に、元の経路R1に戻るための経路R2を描画することによって、元の経路R1に戻るための案内を行う。なお、第1制御部110は、予め、経路データが表す経路周辺のリンクデータおよびノードデータを取得しておき、それらのデータを用いてリルートを行ってもよい。第1制御部110は、リルートした経路R2に対応する案内データが記憶部138に記憶されていない場合には、地図データの中から、経路R2に対応する部分を拡大表示したり、予め記憶部138に記憶された汎用的な右左折画像等を用いたりして案内を行ってもよい。
【0040】
ステップS34において、元の経路に戻る案内を行った後、第1制御部110は、ステップS18において、経路案内が終了したか否かを判断する。第1制御部110は、経路案内を終了すると判断した場合には、当該経路案内処理を終了させ、経路案内を終了しないと判断した場合には、処理を上述したステップS12に戻し、経路案内処理を続行させる。
【0041】
以上で説明した本実施形態の経路案内装置100によれば、リルートの発生に関する統計結果に応じて、記憶部138に既に記憶されているデータを用いてリルートを行うか、サーバ200にリルートを行わせて新たなデータを取得するかを決定することができる。そのため、リルート処理時においてデータ通信量を削減することが可能になり、既に記憶部138に記憶されているデータを無駄にすることを抑制できる。
【0042】
また、本実施形態では、リルートの発生回数が第1閾値以上であり、かつ、リルートの発生間隔が第2閾値以上の場合に、サーバ200に対してリルート要求を行うことなく、記憶部138に既に記憶されているデータを用いて元に戻るための経路を案内する。そのため、例えば、曲がるべき交差点を見逃す傾向があるためにリルートが実行される回数は多いものの、すぐに元の経路に戻る傾向があるためにリルートの発生間隔が長くなるユーザに対しては、記憶部138に既に記憶されている案内データを用いて経路案内を行うことができるので、データ通信量を削減できる。
【0043】
また、本実施形態では、リルートの発生回数が第1閾値未満、または、リルートの発生間隔が第2閾値未満の場合には、経路逸脱時にサーバ200に対してリルート要求を行う。そのため、例えば、経路に従って移動する傾向があるためにリルートの発生回数が少ないユーザや、経路逸脱時に元の経路に戻らない傾向があるためにリルートの発生間隔が短いユーザに対しては、サーバ200からデータを取得した場合であっても、そのデータが無駄になる可能性が低いので、サーバ200にリルートを行わせて経路案内を行うことができる。
【0044】
また、本実施形態では、リルートの発生回数が第1閾値未満の場合には、リルートの発生回数が第1閾値以上の場合よりも、一度に取得する案内データの取得範囲を大きくする。そのため、例えば、経路に従って移動する傾向があるためにリルートの発生回数が少ないユーザについては、案内データをまとめて取得でき、経路を頻繁に逸脱するためにリルートの発生回数が多いユーザについては、案内データを小さな単位で取得できる。この結果、リルートの発生に関する統計結果に応じて、一度に取得するデータ量を調整できるので、データ通信量を適正化することができる。
【0045】
B.第2実施形態:
図4は、第2実施形態における経路案内処理のフローチャートである。
図4に示したフローチャートにおいて、
図2に示した第1実施形態における経路案内処理と同じ処理内容については、同じステップ番号を付している。第2実施形態における経路案内装置100の構成は、第1実施形態の経路案内装置100と同じであるため、説明は省略する。
【0046】
第2実施形態における経路案内処理が第1実施形態と大きく異なる点は、第1実施形態では、リルート発生の統計結果に基づいて案内データの取得範囲を変更するのに対して、第2実施形態では、案内データの取得範囲の変更を行わない点である。具体的には、第2実施形態では、ステップS20において統計処理を行った後、ステップS25において、リルートの発生間隔が第2閾値以上と判断された場合には、ステップS34において、記憶部138に既に記憶されたデータに基づきリルートが行われる。そして、ステップS25において、リルートの発生間隔が第2閾値未満と判断された場合には、ステップS28において、サーバ200に対してリルート要求が行われる。
【0047】
以上で説明した第2実施形態によっても、経路逸脱時において、リルートの統計結果に応じて、記憶部138に既に記憶されているデータを用いて経路案内を行うか、サーバ200にリルート要求を行って新たな経路データを取得するかを決定することができる。従って、リルート処理時におけるデータ通信量を削減することが可能になる。
【0048】
なお、上記ステップS25では、リルートの発生回数が第1閾値以上であるか否かを判断してもよい。この場合、例えば、リルートの発生回数が第1閾値以上であれば、サーバ200に対してリルート要求を行い、リルートの発生回数が第1閾値未満であれば、記憶部138に既に記憶されているデータを用いてリルートを行う。
【0049】
C.他の実施形態:
(C-1)上記実施形態において、第1制御部110は、リルート発生に関する統計結果に基づき、案内データの取得範囲を調整している。これに対して、あるいは、これに加えて、第1制御部110は、リルート発生に関する統計結果に基づき、地図データの取得範囲を調整してもよい。また、サーバ200は、経路探索を行った結果生成した経路データを、一度にまとめて送信するのではなく、経路案内装置100から求められた距離毎に送信するものとし、第1制御部110は、経路データの取得範囲を、リルート発生に関する統計結果に基づき調整してもよい。
【0050】
(C-2)上記実施形態の、
図2および
図4のステップS34に示したリルート処理において、第1制御部110は、記憶部138にリルート処理のために必要なデータが記憶されていない場合に、サーバ200からそのデータを取得してもよい。また、ステップS28と同様に、サーバ200にリルートを要求してもよい。
【0051】
(C-3)上記実施形態における統計処理において、第1制御部110は、統計処理を行う期間を例えば、1週間や1ヶ月などに制限し、古い統計情報を定期的に削除してもよい。こうすることにより、ユーザの最新の行動特性をデータ通信量に反映させることができる。
【0052】
(C-4)上記実施形態において、第1制御部110は、リルート発生に関する統計結果に応じて、案内データの取得範囲を、15Kmか5Kmかのいずれかに切り替えている。これに対して、第1制御部110は、案内データの取得範囲を、リルートの発生回数や発生間隔に応じた値に調整してもよい。例えば、リルートの発生回数が少ないほど、案内データの取得範囲を大きくしたり、リルートの発生間隔が短いほど、案内データの取得範囲を小さくしたりしてもよい。
【0053】
(C-5)上記実施形態では、第1制御部110は、リルートの発生に関する統計処理において、リルートの発生回数と発生間隔とを算出している。これらの値に代えて、あるいは、加えて、例えば、第1制御部110は、リルートの発生から元の経路に戻るまでの時間や走行距離の統計値を求めてもよい。この場合、例えば、リルートの発生から元の経路に戻るまでの時間や走行距離が短ければ、第1制御部110は、記憶部138に既に記憶されているデータを用いてリルートを行い、長ければ、サーバ200にリルート要求を行う。このような処理によっても、通信量の削減を図ることが可能である。
【0054】
(C-6)上記実施形態では、経路案内装置100は、スマートフォンによって構成されている。これに対して、経路案内装置100は、カーナビゲーションシステムや、タブレット、パーソナルコンピュータ、ゲーム機等の装置により構成されてもよい。
【0055】
本発明は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0056】
10…経路表示システム、70…通信キャリア、80…インターネット、100…経路案内装置、110…第1制御部、112…経路案内部、114…統計処理部、120…第1通信部、124…タッチパネル、126…表示部、136…測位部、138…記憶部、200…サーバ、202…第2通信部、204…第2制御部、206…経路探索部、208…地図データ送信部、210…案内データ送信部、214…地図情報記憶部