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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】液体吐出装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20240221BHJP
   B41J 29/00 20060101ALI20240221BHJP
   B41J 29/42 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
B41J2/175 501
B41J29/00 A
B41J29/42 F
B41J2/175 115
B41J2/175 133
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2023060830
(22)【出願日】2023-04-04
(62)【分割の表示】P 2019073078の分割
【原出願日】2019-04-05
(65)【公開番号】P2023089061
(43)【公開日】2023-06-27
【審査請求日】2023-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土岐 宣浩
(72)【発明者】
【氏名】松村 英明
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-187787(JP,A)
【文献】特開2017-081125(JP,A)
【文献】特開2017-077705(JP,A)
【文献】特開2004-330471(JP,A)
【文献】特開2006-239934(JP,A)
【文献】特開2004-130574(JP,A)
【文献】特開2004-330470(JP,A)
【文献】特開2017-081120(JP,A)
【文献】特開2014-188929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B41J 29/00
B41J 29/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を注入するための注入部を有し、液体を吐出する吐出ヘッドへ供給される液体を収容するタンクと、
前記タンクの液体を前記吐出ヘッドへ供給するための供給路と、
前記供給路を開く開状態と前記供給路を閉じる閉状態とに切り替えるバルブ部と、前記バルブ部の切り替えを操作可能な操作部と、を有するバルブユニットと、
前記操作部を覆うカバーと、
前記カバーが開いていることを検知する第1検知ユニットと、
前記第1検知ユニットにより前記カバーが開いていることを検知した場合は、前記カバーを閉じるようにユーザを促す通知を行う制御手段と、を備え、
前記操作部により前記バルブ部を前記閉状態とし前記カバーが前記操作部を覆った後、前記バルブ部の前記閉状態が維持されることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記第1検知ユニットにより前記カバーが開いていることを検知した場合は、前記吐出ヘッドが液体を吐出する動作を中止することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
液体を注入するための注入部を有し、液体を吐出する吐出ヘッドへ供給される液体を収容するタンクと、
前記タンクの液体を前記吐出ヘッドへ供給するための供給路と、
前記供給路を開く開状態と前記供給路を閉じる閉状態とに切り替えるバルブ部と、前記バルブ部の切り替えを操作可能な操作部と、を有するバルブユニットと、
前記操作部を覆うカバーと、
前記カバーが開いていることを検知する第1検知ユニットと、
前記第1検知ユニットにより前記カバーが開いていることを検知した場合は、前記吐出ヘッドが液体を吐出する動作を中止する制御手段と、を備え、
前記操作部により前記バルブ部を前記閉状態とし前記カバーが前記操作部を覆った後、前記バルブ部の前記閉状態が維持されることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項4】
前記第1検知ユニットは、前記カバーとの接触状態を検知することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記注入部にはタンクキャップが取り付けられ、ユーザが前記タンクキャップを取り外すことで前記タンクに液体を注入可能となることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記タンクは、空気を収容するバッファ室を有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
ユーザに対する通知を表示する表示ユニットを備えることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記吐出ヘッドによる記録動作の準備の前に前記バルブ部が前記閉状態である場合、前記操作部を操作するようにユーザに通知することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記吐出ヘッドと対向する位置にプラテンを備え、
前記操作部が露出した状態において、前記プラテンも露出することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記バルブ部が閉じていることを検知する第2検知ユニットを備えることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項11】
前記バルブ部が開いていることを検知する第2検知ユニットを備えることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項12】
前記吐出ヘッドを搭載して移動するキャリッジを備えることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項13】
前記操作部は、前記キャリッジが所定の位置に位置する状態において操作可能であることを特徴とする請求項12に記載の液体吐出装置。
【請求項14】
前記制御手段は、前記操作部を操作することにより前記バルブ部を前記閉状態とするようにユーザに通知することを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項15】
前記吐出ヘッドへ供給される液体を収容する第2タンクと、
前記第2タンクの液体を前記吐出ヘッドへ供給するための第2供給路と、を備え、
前記バルブ部は、前記閉状態において前記第2供給路を閉じることを特徴とする請求項1から14のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項16】
前記タンクはブラックインクを収容し、前記第2タンクはカラーインクを収容することを特徴とする請求項15に記載の液体吐出装置。
【請求項17】
液体を注入するための注入部を有し、液体を吐出する吐出ヘッドへ供給される液体を収容するタンクと、
前記タンクの液体を前記吐出ヘッドへ供給するための供給路と、
前記供給路を開く開状態と前記供給路を閉じる閉状態とに切り替えるバルブ部と、前記バルブ部の切り替えを操作可能な操作部と、を有するバルブユニットと、
前記操作部を覆うカバーと、を備える液体吐出装置を制御する方法であって、
前記カバーが開いていることを検知する第1検知工程と、
前記第1検知工程において前記カバーが開いていることを検知した場合は、前記カバーを閉じるようにユーザを促す通知を行う制御工程と、を有し、
前記操作部により前記バルブ部を前記閉状態とし前記カバーが前記操作部を覆った後、前記バルブ部の前記閉状態が維持されることを特徴とする液体吐出装置の制御方法。
【請求項18】
前記制御工程では、前記第1検知工程において前記カバーが開いていることを検知した場合は、前記吐出ヘッドが液体を吐出する動作を中止することを特徴とする請求項17に記載の液体吐出装置の制御方法。
【請求項19】
液体を注入するための注入部を有し、液体を吐出する吐出ヘッドへ供給される液体を収容するタンクと、
前記タンクの液体を前記吐出ヘッドへ供給するための供給路と、
前記供給路を開く開状態と前記供給路を閉じる閉状態とに切り替えるバルブ部と、前記バルブ部の切り替えを操作可能な操作部と、を有するバルブユニットと、
前記操作部を覆うカバーと、を備える液体吐出装置を制御する方法であって、
前記カバーが開いていることを検知する第1検知工程と、
前記第1検知工程において前記カバーが開いていることを検知した場合は、前記吐出ヘッドが液体を吐出する動作を中止する制御工程と、を有し、
前記操作部により前記バルブ部を前記閉状態とし前記カバーが前記操作部を覆った後、前記バルブ部の前記閉状態が維持されることを特徴とする液体吐出装置の制御方法。
【請求項20】
前記制御工程では、前記吐出ヘッドによる記録動作の準備の前に前記バルブ部が前記閉状態である場合、前記操作部を操作するようにユーザに通知することを特徴とする請求項17から19のいずれか1項に記載の液体吐出装置の制御方法。
【請求項21】
前記バルブ部が閉じていることを検知する第2検知工程を有することを特徴とする請求項17から20のいずれか1項に記載の液体吐出装置の制御方法。
【請求項22】
前記バルブ部が開いていることを検知する第2検知工程を有することを特徴とする請求項17から20のいずれか1項に記載の液体吐出装置の制御方法。
【請求項23】
前記制御工程では、前記操作部を操作することにより前記バルブ部を前記閉状態とするようにユーザに通知することを特徴とする請求項17から22のいずれか1項に記載の液体吐出装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクを吐出する記録ヘッドと、記録ヘッドに供給するインクを収容するインクタンクとの間をチューブで連結したインクジェット記録装置が知られている。特許文献1では、記録ヘッドとインクタンクの間のチューブを閉塞可能なバルブを、記録装置の前面に備えたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-188929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、記録装置の記録動作中であっても容易に操作可能な位置にバルブが配置されている。従って、記録装置の記録動作中にユーザの誤操作等によりバルブが閉じられると、記録ヘッドへのインクの供給に不具合が生じてしまう場合がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ユーザによるバルブの誤操作を抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る液体吐出装置は、
液体を注入するための注入部を有し、液体を吐出する吐出ヘッドへ供給される液体を収容するタンクと、
前記タンクの液体を前記吐出ヘッドへ供給するための供給路と、
前記供給路を開く開状態と前記供給路を閉じる閉状態とに切り替えるバルブ部と、前記バルブ部の切り替えを操作可能な操作部と、を有するバルブユニットと、
前記操作部を覆うカバーと、
前記カバーが開いていることを検知する第1検知ユニットと、
前記第1検知ユニットにより前記カバーが開いていることを検知した場合は、前記カバーを閉じるようにユーザを促す通知を行う制御手段と、を備え、
前記操作部により前記バルブ部を前記閉状態とし前記カバーが前記操作部を覆った後、前記バルブ部の前記閉状態が維持されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ユーザによるバルブの誤操作を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1(a)は一実施形態に係る記録装置を示す斜視図であってカバー部材の一部をカットして示す図である。図1(b)は一実施形態に係る記録装置を示す斜視図であってカバー部材が開状態の記録装置を示す斜視図である。
図2】一実施形態に係るインクタンク、記録ヘッド及びこれらをつなぐ供給用チューブ概略図である。
図3】一実施形態に係るインクタンクと記録ヘッドの位置関係を示す模式図である。
図4図4(a)は一実施形態に係る手動弁の概略を示す斜視図であって手動弁が開いている状態を示す図である。図4(b)は一実施形態に係る手動弁の概略を示す斜視図であって手動弁が閉じている状態を示す図である。
図5図5(a)は一実施形態に係る手動弁の概略を示す断面図であって手動弁が開いている状態を示す図である。図5(b)は一実施形態に係る手動弁の概略を示す断面図であって手動弁が閉じている状態を示す図である。
図6】一実施形態に係る回復ユニットの概略を示す斜視図である。
図7】一実施形態に係る記録ヘッドと吸引キャップを模式的に表す図である。
図8】一実施形態に係る吸引ポンプの概略を示す図である。
図9】一実施形態に係る記録装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図10】一実施形態に係るユーザによる手動弁の誤操作を防ぐためのCPUの処理の一例を示すフローチャートである。
図11】一実施形態に係る手動弁とキャリッジの位置関係を示す斜視図である。
図12】一実施形態に係る記録ヘッドの交換時のCPUの処理の一例を示すフローチャートである。
図13】一実施形態に係る輸送設定モード時のCPUの処理の一例を示すフローチャートである。
図14図14(a)は他の実施形態に係る手動弁の概略を示す斜視図であって手動弁が開いている状態を示す図である。図14(b)は他の実施形態に係る手動弁の概略を示す斜視図であって手動弁が閉じている状態を示す図である。
図15図15(a)は他の実施形態に係る手動弁の概略を示す斜視図であって手動弁が開いている状態を示す図である。図15(b)は他の実施形態に係る手動弁の概略を示す斜視図であって手動弁が閉じている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する場合がある。
【0010】
本明細書において、「記録」(「印字」、「印刷」という場合もある)とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わず、また人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、または媒体の加工を行う場合も表すものとする。
【0011】
また、「記録媒体(シート)」とは、一般的な画像形成装置で用いられる記録紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム(OHP)、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、搬送の可能な媒体も含むものである。
【0012】
また、「インク」(「液体」と言う場合もある)とは、上記「記録(印刷)」の定義と同様広く解釈されるべきもので、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成または記録媒体の加工、或いはインクの処理(例えば記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)に供され得る液体を表すものとする。
【0013】
<第一実施形態>
<インクジェット記録装置の概略構成>
図1(a)は、第一実施形態に係るインクジェット記録装置1(以下、記録装置1)を示す斜視図である。内部の説明のため後述するカバー部材112の一部をカットして示している。記録装置1は、記録媒体にインクを吐出する記録ヘッド14と、記録ヘッド14に供給するインクを収容するインクタンク17を備える。また、記録装置1は、インクタンク17から記録ヘッド14へのインクを供給するためのインク供給路155(図3参照)を形成する供給用チューブ15と、を有する。また、記録装置1は、記録ヘッド14を着脱可能に搭載して往復移動するキャリッジ13を有する。
【0014】
また、記録装置1は、シート状の記録媒体19を給送する複数のローラ(搬送手段)を有しており、これらによりキャリッジ13(記録ヘッド14)の移動方向(主走査方向)と直交する搬送方向に記録媒体19が搬送される。また、記録ヘッド14が移動する範囲の下方には記録ヘッド14と対向するようにプラテン22が設けられている。
【0015】
キャリッジ13には回転可能に軸支された着脱操作部143が設けられている。ユーザは、着脱操作部143を操作することでキャリッジ13から記録ヘッド14を脱着することができる。また、これら内部構成品の全体を覆うように筐体11が設けられている。筐体11は、開口部111aを有する本体111と、開口部111aを覆うカバー部材112とを含む。カバー部材112は本体111(装置)に対して開閉可能に支持されている。
【0016】
次に、図1(b)を用いて第一実施形態に係るカバー部材112の構成および手動弁16の配置について説明する。図1(b)は、カバー部材112が開状態の記録装置1を示す斜視図である。カバー部材112が開いている状態では、キャリッジ13と、記録ヘッド14と、プラテン22と、供給用チューブ15と、手動弁16とが露出されている状態になる。
【0017】
本実施形態の場合、手動弁16は、供給用チューブ15が形成するインク供給路155を閉塞・連通させるためのバルブであり、ユーザにより手動で操作可能な操作部161を含む。すなわち、手動弁16は、インク供給路155に配され、インクタンク17と記録ヘッド14を連通する開状態と連通しない閉状態とに切替可能である。また、操作部161は手動弁16の切り替えを操作可能である。さらに、操作部161の操作位置を示すように、印刷マーク166とメンテナンスマーク167が示されている。操作部161が印刷マーク166で示される側にある場合、手動弁16はインク供給路155を閉塞しておらず、インクタンク17から記録ヘッド14へインクが供給可能な状態にある。よって、記録装置1は記録媒体19に記録可能である。一方、操作部161がメンテナンスマーク167で示される側にある場合、手動弁16がインク供給路155を閉塞し、インクタンク17から記録ヘッド14へインクが供給されない。したがって、ユーザはインク供給路155におけるインクの移動が抑制された状態で記録ヘッド14の交換作業等を行うことができる。また、印刷マーク166及びメンテナンスマーク167により、ユーザは手動弁16の状態を直感的に認識することができる。
【0018】
記録媒体幅191は、本実施形態の記録装置1が印刷可能な最大サイズの記録媒体19の幅を示している。ここで、幅方向は、搬送手段による記録媒体19の搬送方向と直交する方向である。本実施形態では、カバー部材112の幅112aは、幅方向において記録媒体幅191よりも大きい。そして、カバー部材112に覆われている領域であって、且つ搬送される記録媒体19の通過領域内に手動弁16が配されている。言い換えると、手動弁16が記録ヘッド14の幅方向の記録範囲内に配置されている。これにより、記録装置1を幅方向において小型化することができる。
【0019】
さらに、記録装置1は、カバー部材112の状態を検知可能なカバーセンサ18を有している。例えば、カバーセンサ18は、カバー部材112の開状態と閉状態とを検知可能である。具体的には、カバー部材112の内側に突起18aが設けられ、突起18aがカバーセンサ18と当接している場合はカバー部材112が閉状態と検知し、当接していない場合はカバー部材112が開状態と検知する。さらに、インクタンク17の上部には、インク注入口176及びインクタンクキャップ177(図3参照)を覆うように、インクタンクカバー179が回動して開閉可能に配置されている。
【0020】
次に、図2を用いてインクタンク17及び供給用チューブ15の構成について説明する。図2は、インクタンク17(インク収容部)、記録ヘッド14及びこれらをつなぐ供給用チューブ15の概略図である。記録装置1は、対応するインク色毎に複数のインクタンク17を有している。本実施形態では、ブラック用インクタンク171・シアン用インクタンク172・マゼンタ用インクタンク173・イエロー用インクタンク174の4つのインクタンク17が設けられている。本実施形態では、記録装置1の幅方向の一方側にブラック用インクタンク171が設けられ、その他方側にシアン用インクタンク172・マゼンタ用インクタンク173・イエロー用インクタンク174が並んで設けられている。すなわち、図1に示すように、ブラック用インクタンク171とカラー用インクタンクの間を、記録が完了した記録媒体19が通過するように設けられている。
【0021】
なお、インクタンク17は各インク色のインクタンクの総称であり、以下で説明するインクタンク17についての構成を各インク色のインクタンクがそれぞれ有するものとする。また、後述の供給用チューブ15と各インク色の供給用チューブ151~154についても同様である。
【0022】
また、インクタンク17には、記録ヘッド14へインクを供給するための供給用チューブ15がそれぞれ取り付けられている。本実施形態の場合、供給用チューブ15は、インクタンク17から記録ヘッド14へインクを供給するためのインク供給路155を形成する供給路形成部材である。本実施形態では、供給用チューブ15を構成するチューブはエラストマ等の可撓性を備えた材料により構成され、記録ヘッド14の移動に伴って屈曲したり、チューブが押しつぶされることでその内部のインク供給路155を遮断させたりすることが可能である。
【0023】
また、インクタンク17には、その内部と大気とを連通させるための大気連通チューブ178がそれぞれ取り付けられている。また、インクタンク17の上部には、インクを注入するためのインク注入口(注入部)176が設けられている。また、インク注入口176には、インク注入口176を封止するためのインクタンクキャップ177が取り付けられている。ユーザは、インクタンクキャップ177を取り外すことでインク注入口176からインクタンク17内へインクを注入することができる。
【0024】
また、供給用チューブ15及び大気連通チューブ178には、インク又は空気の連通を遮断するインクタンク弁180がそれぞれ設けられている。本実施形態では、インクタンク弁180は、ブラック側とカラー側とにそれぞれ設けられている。
【0025】
ブラック側のインクタンク弁180が閉じると、ブラック用インクタンク171に接続される供給用チューブ15のインク供給路155及び大気連通チューブ178内の流路の連通をそれぞれ閉塞する。カラー側のインクタンク弁180が閉じると、シアン用インクタンク172・マゼンタ用インクタンク173・イエロー用インクタンク174にそれぞれ接続される供給用チューブ15のインク供給路155及び大気連通チューブ178内の流路を閉塞する。
【0026】
手動弁16は、供給用チューブ15におけるインクタンク弁180と記録ヘッド14の間に設けられ、内部のインク又は空気の連通、非連通を切り替える。手動弁16が閉塞すると、ブラック用供給用チューブ151、シアン用供給用チューブ152、マゼンタ用供給用チューブ153、イエロー用供給用チューブ154のインク供給路155の連通が一体的に遮断される。
【0027】
図3は、インクタンク17と記録ヘッド14の位置関係を示す模式図である。記録装置1は、記録ヘッド14のインク吐出口142からインクが漏れ出ることを防ぐために、インクタンク17の気液交換部175は、記録ヘッド14のインク吐出口142よりも高さ方向において高さHだけ低い位置に設けられている。すなわち、インク吐出口142に高さH分の水頭差による負圧がかかる構成としている。なお、気液交換部175はインクのメニスカスが保たれる開口面積で構成される。また、インクタンク17の下部にはバッファ室17aが設けられている。バッファ室17aは、インクを収容するインク収容室17b内の空気が気圧変動や温度変化等によって膨張したときに、気液交換部175のメニスカスを破壊して押し出されたインクを収容することができる。これによって、インクが大気連通チューブ178を通ってインクタンク17から漏出するのを防止する。
【0028】
また、ジョイント部182は供給用チューブ15と記録ヘッド14の流路を接続する部材であり、着脱操作部143に設けられる。キャリッジ13から記録ヘッド14を取り外すためにユーザが着脱操作部143を開く方向に操作すると、ジョイント部182が記録ヘッド14から外れる。これにより、供給用チューブ15と記録ヘッド14の接続が遮断される。また、ユーザが記録ヘッド14をキャリッジ13に装着する際は、着脱操作部143を閉じて、不図示の押圧部を押圧することでジョイント部182のジョイント接続を実現する。ジョイント部182のジョイント接続によって、供給用チューブ15と記録ヘッド14の流路が再び連通し、記録ヘッド14へのインク供給が可能となる。
【0029】
次に、図1(a)、図1(b)、図2図3を用いて本実施形態に係るインク供給系の構成および印刷動作(記録動作)が可能になるまでの流れを説明する。
【0030】
インクの注入時には、ユーザは、インクタンクカバー179を開け、インクタンクキャップ177を外し、インク注入口176からインクボトル等のインクをインクタンク17へ注入する。このとき、不図示の機構によりインクタンクカバー179が開くことに連動してインクタンク弁180が閉じ、インク供給路155および大気連通チューブ178の流路が閉塞される。また、ユーザは、インクの注入が完了すると、インクタンクキャップ177によりインク注入口176を密閉して、インクタンクカバー179を閉める。このとき、インクタンクカバー179が閉まることに連動してインクタンク弁180が閉状態から開状態に切り替わり、インク供給路155及び大気連通チューブ178の流路が連通する。つまり、インクタンクキャップ177が外されインク注入口176が大気開放されている間は、インクタンク弁180によってインク供給路155及び大気連通チューブ178の流路が閉塞されることとなる。
【0031】
記録装置1は、インク注入完了を検知した後に、記録ヘッド14の吐出口面に吸引キャップ211(図6参照)を押し当て、インク吐出口142からインクの吸引動作を行うことができる。この吸引動作によって、供給用チューブ15内及び記録ヘッド14内にインクが充填される。なお、インク注入完了の検知は、カバーセンサ18によりカバー部材112が閉じられたのを検知することで行われる。しかしながらこれに限らず、インクタンク17のインク残量を検知する残量検知手段により所定量以上のインクが注入されたのを検知することで、インク注入完了を検知する形態であってもよい。そして、インクが充填された記録ヘッド14のインク吐出口142から記録動作に伴いインクが吐出されると、インクが減少した分だけ記録ヘッド14内の負圧が高まり、インクタンク17から記録ヘッド14へインクが供給される。これにより、インクタンク17内のインクが所定量未満になるまで、インクタンク17から記録ヘッド14へ連続的にインクが供給され続ける。
【0032】
次に、本実施形態に係る手動弁16の構成について説明する。図4(a)と図4(b)は、本実施形態に係る手動弁16の概略を示す斜視図である。また、図5(a)と図5(b)が本実施形態に係る手動弁16の概略を示す断面図である。図5における、印刷マーク166とメンテナンスマーク167の位置は仮想的な位置である。記録装置1においては、印刷マーク166とメンテナンスマーク167は図1(b)に占めす位置に配されている。
【0033】
手動弁16は、ユーザが操作可能な操作部161と、保持部162と、受け部材163と、変位部材164と、カム165とを含む。
【0034】
保持部162は、供給用チューブ15を保持する。供給用チューブ15は、一方が記録ヘッド14に接続し、他方がインクタンク17に接続している。そして、供給用チューブ15は、記録ヘッド14の移動に伴って屈曲可能な屈曲領域を含む。供給用チューブ15において、屈曲領域が記録ヘッド14と保持部162の間になるように手動弁16が配置されている。すなわち、手動部16は、供給用チューブ15のうちキャリッジ13の移動に伴って動かない領域に配置される。また、供給用チューブ15は、記録ヘッド14側の第1固定部184とインクタンク17側の第2固定部183によって固定されるが、本実施形態では、第2固定部183を保持部162が兼ねている。これにより、部品点数を削減することができる。
【0035】
変位部材164は、供給用チューブ15に干渉する方向に変位可能な部材である。言い換えれば、変位部材164は供給用チューブ15に向かって進退可能に設けられている。また、受け部材163は、供給用チューブ15に対して干渉する方向に変位する変位部材164を受けるための部材である。受け部材163は供給用チューブ15に対して変位部材164が設けられている側と反対側に設けられている。そして、変位部材164が受け部材163に対して供給用チューブ15を押し付けながら供給用チューブ15を潰すことによりインク供給路155が閉塞される。
【0036】
カム165は、変位部材164を変位させる。本実施形態の場合、カム165は、操作部161と一体に設けられている。カム165は、カム面1651において変位部材164と当接している。ユーザが操作部161を操作するとカム165がそれに伴って回転し、カム面1651に押された変位部材164が変位する。これにより、ユーザは操作部161を介してインク供給路155を閉塞・連通させることができる。
【0037】
次に、本実施形態に係る手動弁16が供給用チューブ15を閉塞する動作について説明する。図4(a)は、変位部材164が供給用チューブ15を潰しておらず、インク供給路155が連通している状態(開放状態)を示す。この時、操作部161は印刷マーク166で示される側に位置している。この状態では、供給用チューブ15内のインクはインク供給路155を介してインクタンク17から記録ヘッド14へ供給可能である。この状態から、ユーザが操作部161をメンテナンスマーク167で示される側に回転操作すると、手動弁16と一体に設けられているカム165のカム面1651も回転し、カム面1651は変位部材164を供給用チューブ15と干渉する方向に変位させる。
【0038】
図4(b)は、変位部材164が供給用チューブ15を潰しており、インク供給路155が閉塞されている状態(閉塞状態)を示す。図5(b)に示すように、供給用チューブ15は、変位部材164と受け部材163との間に押し潰され、そのインク供給路155が閉塞される。この時、供給用チューブ15はインクタンク17のインクを記録ヘッド14に供給することができない状態であり、また、インクが無い場合には大気が連通していない状態となる。
【0039】
なお、本実施形態では、手動弁16が閉じることで全てのインク色の供給用チューブ15のインク供給路155を同時に閉塞している。しかしながら、各インク色の供給用チューブ15毎に手動弁16が複数設けられ、それぞれのインク供給路155が個別に閉塞可能であってもよい。また、ブラック側とカラー側のそれぞれに手動弁16が設けられてもよい。
【0040】
再び図1(a)及び図1(b)を参照する。操作部161は図1(a)で示したように筐体11及びカバー部材112で覆われる位置に配置されている。すなわち、操作部161は、カバー部材112が開いたときに露出するように設けられている。記録装置1は、カバーセンサ18によりカバー部材112の開状態が検知されている間は、記録ヘッド14による記録動作を行わないように制御されている。カバー部材112の内側に操作部161が設けられていることで、ユーザが記録装置1の記録動作中等に誤って操作部161を操作することを抑制することができる。
【0041】
また、本実施形態では、カバーセンサ18が設けられているため、記録装置1は、ユーザが操作部161を操作できる状態であるかを、カバーセンサ18を用いて検知することができる。ここで、カバーセンサ18はメカ的な接触を検知するメカセンサに限らず、例えば光学センサ等であってもよい。
【0042】
また、図4(a)と図4(b)で示すように、手動弁16には、手動弁16の開閉状態検知する手動弁センサ168が設けられている。本実施形態では、手動弁センサ168はメカニカルに作動するスイッチである。ユーザが操作部161を操作すると、操作部161に設けられた作動部材16aが手動弁センサ168の可動部分を可動させることで手動弁センサ168が作動する。これにより、手動弁16の閉塞状態と開放状態を検知することができる。なお、手動弁センサ168には光学センサやその他の周知の構成を採用可能である。
【0043】
図6は、回復ユニット21の概略を示す斜視図である。本実施形態では、記録装置1は、記録ヘッド14の吐出性能(記録性能)を維持または回復するための回復ユニット21を有する。本実施形態では、回復ユニット21は、筐体11の本体111の内部に設けられている。回復ユニット21は、記録ヘッド14をキャッピングする吸引キャップ211と、吸引キャップ211内のインクを吸引する吸引機構212を含む。そして、吸引機構212は、吸引キャップ211に接続される吸引用チューブ213と、吸引用チューブ213を介して吸引キャップ211内のインクを吸引する吸引ポンプ214と、を有する。ここで、吸引用チューブ213は、吸引キャップ211内のインクを吸引するためのインク吸引路2131(図7参照)を形成する吸引路形成部材である。また、本実施形態では、吸引用チューブ213は、供給用チューブ15と同様、エラストマ等の可撓性を備えた部材により構成される。
【0044】
また、回復ユニット21は、インク吐出口142の吐出口面をワイピングするためのワイパー221、ワイパー221を保持する保持部材(不図示)、ワイバー221に付着したインクを除去するためのインク除去部材(不図示)等を備えている。なお、これらの構成は周知であり、説明を省略する。
【0045】
図7は記録ヘッド14と吸引キャップ211を模式的に表す図である。供給用チューブ15は記録ヘッド14の上部に連結している。また、吸引キャップ211は、後述のキャップ駆動部217(図9参照)により記録ヘッド14のインク吐出口142に対して進退可能に設けられており、インク吐出口142が設けられた吐出口面を下からキャッピングすることができる。記録ヘッド14の内部はインクによって完全に満たされることは無く、常に空気層144が存在している。なお、吸引キャップ211は記録装置1内の所定の位置に設けられており、回復動作が行われる際は、キャリッジ13により記録ヘッド14が吸引キャップ211の上方の回復位置に位置するように移動する。
【0046】
ここで、吸引機構212による吸引キャップ211内のインクの吸引動作について説明する。図8は吸引ポンプ214の概略を示す断面図である。本実施形態の場合、吸引機構212は、ブラック用及びカラー用の2本の吸引用チューブ213を含む。
【0047】
吸引ポンプ214は、コロ215と、電動モータ等を含み回転駆動するポンプ駆動部216(図9参照)と、ポンプ駆動部216の回転に伴い自転する回転部材219と、回転部材219から径方向外側に突出して設けられるコロ駆動部材218と、を含む。
【0048】
コロ215は、回転部材219の回転軸の周りを周回可能に設けられている。回転部材219が回転(自転)すると、コロ駆動部材218は回転部材219の軸周りを周回する。そして、コロ駆動部材218がコロ215に当接した状態で回転部材219の軸周りを周回することにより、コロ215は回転部材219の軸周りを周回する。そして、吸引機構212はインク吐出口142が吸引キャップ211に覆われた状態で、コロ215が回転部材219の周りを周回して吸引用チューブ213をしごくことによって吸引キャップ211内部に負圧を生じさせることで吸引を行う。
【0049】
本実施形態の場合、2本の吸引用チューブ213が回転部材219を挟んで上下に並んで設けられている。また、本実施形態の場合、コロ215が3個設けられており、3個のコロが回転により順次2本の吸引用チューブ213をしごくことによって同時に2本の吸引用チューブ213で吸引が行われる。
【0050】
また、吸引用チューブ213の一端は廃液タンク(不図示)に接続しており、吸引ポンプ214により吸引されたインクは吸引用チューブ213を介して廃液タンクに排出される。
【0051】
また、本実施形態の場合、吸引ポンプ214は、コロ215が吸引用チューブ213をつぶした状態でポンプ駆動部216の駆動を停止することにより、インク吸引路2131を閉塞することができる。すなわち、本実施形態では、吸引ポンプ214がインク吸引路2131の閉塞バルブを兼ねているといえる。よって、記録装置1が従来備える回復動作用の吸引ポンプ214が、インク吸引路2131の閉塞バルブを兼ねるので、記録装置1の部品点数の削減を図ることができる。しかしながら、吸引ポンプ214とは別にインク吸引路2131の閉塞バルブを備える構成も採用可能である。この場合、手動弁16のように手動で操作可能なバルブや、モータ等の駆動源により自動で開閉可能なバルブ等、種々の構成のバルブを採用可能である。
【0052】
<ハードウェア構成>
図9は、記録装置1のハードウェア構成の一例を示す図である。CPU201は、記録装置1を統括的に制御する。ROM202は、CPU201の制御プログラムや各種データ等を格納する。RAM203は、各種データを一時格納する。例えば、CPU201は、ROM202に記憶されたプログラムをRAM203に読み出して実行することにより、プリンタ100の動作制御及びデータ処理を実行する。
【0053】
記録ヘッド14は、CPU201から送信される制御信号に従って記録媒体19へのインクの吐出を行う。キャリッジ駆動部207は、例えばモータを含み、不図示のモータドライバを介してCPU201から送信される制御信号によってキャリッジ13の移動を行う。このとき、例えば不図示のラック・ピニオン機構等によりモータの回転運動が往復運動に変換される。ポンプ駆動部216は、例えばモータを含み、不図示のモータドライバを介してCPU201から送信される制御信号に従って吸引ポンプ214を駆動する。キャップ駆動部217は、例えばモータを含み、不図示のモータドライバを介してCPU201から送信される制御信号に従って吸引キャップ211を駆動する。このとき、例えば不図示のラック・ピニオン機構等によりモータの回転運動が往復運動に変換される。外部I/F208は、PC等と接続して記録データ等の受信やステータス信号等の送信を行う。
【0054】
CPU201は、キャリッジ駆動部207、吸引ポンプ214及び吸引キャップ211に制御信号を送信することで記録ヘッド14の回復制御を行う。表示部209は、装置情報や設定画面、ジョブ情報等、各種のユーザインタフェース画面を表示する。一例として表示部209は液晶ディスプレイである。例えば、表示部209は筐体11の本体111のユーザから視認しやすい位置に設けられてもよい。入力部204は、ユーザによる入力を受け付ける。例えば、入力部204はタッチパネルやハードキーであってもよい。カバーセンサ18及び手動弁センサ168の検知結果はCPU201に送信される。なお、図9は、本実施形態に係る構成を中心に示す概略図であって、記録装置1が他の構成を有していてもよい。
【0055】
<記録装置の作動>
記録装置1の作動について説明する。記録装置1の記録動作中にユーザが誤って手動弁16を閉じてしまうと、インクタンク17から記録ヘッド14へのインクの供給に不具合が生じる場合がある。上述のように、第一実施形態に係る記録装置1では、操作部161がカバー部材112に覆われるように設けられていることによりユーザによる手動弁16の誤操作を抑制している。それに加え、記録動作時にユーザによる手動弁16の誤操作をより効果的に防ぐために以下の処理を行っている。
【0056】
図10は、記録動作時にユーザによる手動弁16の誤操作を防ぐためのCPU201の処理の一例を示すフローチャートである。例えば、このフローチャートは、CPU201がROM202に記憶されたプログラムをRAM203に読み出して実行することにより実現される。また、例えば、このフローチャートは、記録装置1が記録動作を開始すると開始する。
【0057】
S1001で、CPU201は、カバー部材112が開かれているか否かを確認する。例えば、CPU201は、カバーセンサ18の検知結果に基づいてカバー部材112の開閉状態を確認する。CPU201は、カバー部材112が開いている場合はS1002の処理に進み、閉じている場合はS1008の処理に進む。S1002で、CPU201は、記録動作を停止する。
【0058】
S1003で、CPU201は、キャリッジ13を移動させる。ここで、図11を参照する。図11は、手動弁16とキャリッジ13の位置関係を示す斜視図である。本実施形態では、CPU201は、キャリッジ13を操作部161の上方において操作部161を覆うように停止させる。例えば、キャリッジ13の着脱操作部143によって操作部161の少なくとも一部を覆う位置にキャリッジ13を停止させればよい。これにより、ユーザが手動弁16を操作しにくくなるため、ユーザによる手動弁16の誤操作を防ぐことができる。
【0059】
S1004で、CPU201は、ユーザに対して通知を行う。通知の内容は、ユーザが操作部161を操作しないように促すものであればよい。例えば、CPU201は、カバー部材112を閉じるようユーザに促す旨の通知や、操作部161を操作しないように促す旨の通知を行う。例えば、CPU201は、表示部209にメッセージを表示させたり、外部I/F208を介して接続するPC等の端末にメッセージを表示させたりすることにより通知を行う。また、CPU201は、音声により通知を行ってもよい。
【0060】
S1005で、CPU201は、カバー部材112が閉じたか否かを確認する。例えば、CPU201は、カバーセンサ18の検知結果に基づいてカバー部材112の開閉状態を確認する。CPU201は、カバー部材112が閉じた場合はS1006の処理に進み、開いている場合は閉じるまでS1005の処理を繰り返す。
【0061】
S1006で、CPU201は、通知を終了する。S1007で、CPU201は、記録動作が終了したか否かを確認する。CPU201は、記録動作が終了していない場合、S1001の処理に戻り、終了している場合は本フローチャートを終了する。
【0062】
以上説明したように、記録装置1は、記録動作中にカバー部材112が開かれるとユーザが操作部161を操作しないように作動するため、ユーザによる手動弁16の誤操作を防ぐことができる。なお、S1002のキャリッジ13の移動とS1003の通知はいずれもユーザによる手動弁16の誤操作を抑制するためのものであり、いずれか一方の処理のみが実施されてもよい。また、記録動作中に限らず、カバー部材112を開く必要のない状況でカバー部材112が開かれたときは、CPU201はS1003の通知を行ってもよい。
【0063】
図12は、記録ヘッド14の交換時におけるCPU201の処理の一例を示すフローチャートである。記録ヘッド14を交換する必要が生じた場合には、記録装置1はユーザに記録ヘッド14の交換作業を通知する。そして図12に示す処理が開始する。例えば、このフローチャートは、CPU201がROM202に記憶されたプログラムをRAM203に読み出して実行することにより実現される。
【0064】
S1201で、CPU201は、記録ヘッド14が吸引キャップ211と対向するキャップ位置に位置するようにキャリッジ13を移動させる。
【0065】
S1202で、CPU201は、ユーザに対しカバー部材112を開けるよう通知を行う。例えば、CPU201は、表示部209にカバー部材112を開けるよう促す旨のメッセージを表示したり、音声メッセージを発声したりしてユーザに通知する。
【0066】
S1203で、CPU201は、カバーセンサ18の検知結果に基づいてカバー部材112が開いたか否かを確認する。CPU201は、カバー部材112が開いている場合はS1204の処理に進み、カバー部材112が閉じている場合はS1203の処理を繰り返す。なお、CPU201は、入力部204がユーザによる開動作完了の入力を受け付けたか否かに基づいて、カバー部材112が開いたか否かを確認してもよい。
【0067】
S1204で、CPU201は、手動弁16を閉じるようユーザに対して通知する。例えば、CPU201は、表示部209にメッセージを表示する。なお、このとき、キャリッジ13はキャップ位置に位置し、着脱操作部143が筐体11の本体111に覆われている。これにより、手動弁16が開いた状態でユーザが着脱操作部143を誤って操作してしまうことを防止することができる。なお、キャップ位置に限らず、キャリッジ13の着脱操作部143が本体111に覆われる位置であればよい。
【0068】
S1205で、CPU201は、手動弁16が閉じられたか否かを確認する。例えば、CPU201は、手動弁センサ168の検知結果に基づいて手動弁16が閉じられたか否かを確認する。CPU201は、手動弁16が閉じられたことを確認した場合はS1206の処理に進み、確認しない場合はS1205の処理を繰り返す。
【0069】
なお、CPU201は、手動弁16の操作が完了したことについてのユーザによる入力を入力部204が受け付けたことに基づいて、手動弁16の操作が完了したことを確認してもよい。これにより、手動弁センサ168が設けられていない場合であっても、CPU201は手動弁16が閉じたか否かの確認をすることができる。
【0070】
S1206で、CPU201は、キャリッジ13をヘッド交換位置まで移動させる。ヘッド交換位置は、例えば、開口部111aから記録ヘッド14が露出する位置である。このとき、CPU201は、上述の図11で示すように、キャリッジ13によって操作部161の少なくとも一部を覆う位置を、キャリッジ13のヘッド交換位置としてもよい。これにより、ユーザが操作部161を誤って再操作して手動弁16を開状態にしてしまうことを防ぐ。
【0071】
S1207で、CPU201は、例えば表示部209にメッセージを表示することにより、ユーザへ記録ヘッド14の交換作業を促す通知を行う。S1208で、CPU201は、記録ヘッド14が交換されたか否かを確認する。CPU201は、記録ヘッドが交換されている場合S1209の処理に進み、交換されていない場合S1208の処理を繰り返す。一例として、CPU201は、記録ヘッド14の交換作業が完了したことを、入力部204へのユーザによる入力により検知してもよい。
【0072】
S1209で、CPU201は、手動弁16を開状態へ操作する通知を行う。例えば、CPU201は、表示部209にメッセージを表示することにより通知を行う。
【0073】
S1210で、CPU201は、手動弁16が開状態に戻されたか否かを確認する。CPU201は、手動弁16が開いている場合はS1211の処理に進み、閉じている場合はS1210の処理を繰り返す。例えば、CPU201は、手動弁センサ168の検知結果に基づいて手動弁16が開状態に戻されたか否かを確認する。しかしながら、ユーザによる手動弁16の操作が完了したことを、入力部204へのユーザ入力によって検知してもよい。
【0074】
S1211で、CPU201は、ユーザに対しカバー部材112を閉じるよう通知を行う。例えば、CPU201は、表示部209にカバー部材112を閉じるよう促す旨のメッセージを表示したり、音声メッセージを発声したりしてユーザに通知する。
【0075】
S1212で、CPU201は、カバーセンサ18の検知結果に基づいてカバー部材112が閉じたか否かを確認する。CPU201は、カバー部材112が閉じている場合はS1213の処理に進み、カバー部材112が開いている場合はS1212の処理を繰り返す。なお、CPU201は、入力部204がユーザによる閉動作完了の入力を受け付けたか否かに基づいて確認してもよい。
【0076】
S1213で、CPU201は、キャリッジ13をキャップ位置へ移動させる。S1214で、CPU201は、吸引キャップ211を記録ヘッド14の吐出口面に対して密着させて、吸引ポンプ214を駆動する。これにより記録ヘッド14へのインク充填を行い、フローチャートを終了する。
【0077】
以上説明したように、記録ヘッド14の交換の際は、必要に応じてユーザに手動弁16の開閉を促すことにより、ユーザによる誤操作を防ぐことができる。また、手動弁16が閉じていることが確認されたうえで記録ヘッド14の交換通知がなされるので、交換時のインク漏れを抑制することができる。
【0078】
図13は、輸送設定モード時のCPU201の処理の一例を示すフローチャートである。記録装置1の修理やメンテナンスのためにユーザからサービスへ記録装置1を輸送する場合、輸送時のインク漏れ対策が必要となる場合がある。また、長期間に渡って記録装置1を使用せずに保管する場合には、手動弁16を閉じておくことが望ましい。そこで、本実施形態の記録装置1では、制御モードを輸送設定モードとした場合に、ユーザに手動弁の操作を促す一連の処理が行われる。例えば、このフローチャートは、CPU201がROM202に記憶されたプログラムをRAM203に読み出して実行することにより実現される。
【0079】
S1301からS1305までの処理は、それぞれS1201からS1205までの処理に相当する。また、S1306及びS1307の処理は、それぞれS1211及びS1212の処理に相当する。S1308で、CPU201は、吸引キャップ211により記録ヘッド14の吐出口面を密閉する。S1309で、CPU201は、ソフトのシャットダウン処理を行い、フローチャートを終了する。
【0080】
以上説明したように、輸送設定モードの場合には、CPU201は、手動弁16が閉じられていることを確認してからソフトのシャットダウン処理を行う。したがって、移送設定モードが選択されている状態で記録装置1の電源がオフになったときは必ず手動弁16が閉じられている状態となる。これにより、ユーザからサービスへの輸送時にユーザがインク漏れ対策を実施するのを忘れることを防ぐことができる。
【0081】
<作用効果>
以上説明したように、第一実施形態に係る記録装置1によれば、操作部161がカバー部材112を開けると露出する位置に配置される。そのため、ユーザが手動弁16を操作する前に必ずカバー部材112を開ける必要があり、ユーザによる操作部161の誤操作を防ぐことができる。また、記録ヘッド14の交換時においては、手動弁16が閉じられてから記録ヘッド14の交換をするようにユーザに促すため、手動弁16が開いた状態でユーザが記録ヘッド14の交換をすることによるインク漏れを防止することができる。ここで、手動弁16と着脱操作部143との距離が遠い場合にはユーザは手動弁16の操作を忘れたまま記録ヘッド14の交換を行ってしまう場合がある。しかし、本実施形態では、着脱操作部143を筐体11の本体111に覆われる位置に移動させることにより、手動弁16が閉じるまではユーザによる記録ヘッド14の交換を防止することができる。
【0082】
さらに、記録装置1の輸送時には輸送設定モードを選択することにより手動弁16が閉じられた状態で電源オフされるので、ユーザが手動弁16を閉じ忘れることを防ぐことができる。また、輸送時には手動弁16を閉塞させるので、例えば輸送中に記録装置1に衝撃が加えられて記録ヘッド14と吸引キャップ211が離れた場合でも、記録ヘッド14からのインクの漏出を低減することができる。これは特に、大容量のインクタンク17が設けられている場合に、インクタンク17内のインクが輸送中に記録ヘッド14から漏出することを抑制でき、記録装置1の汚染を低減することができて有効である。さらに、カバーセンサ18が印刷中にカバー部材112が開いたことを検出した場合に、記録装置1はユーザに手動弁16を操作しないように通知することも可能である。
【0083】
さらに本実施形態では、カバー部材112の幅112a内かつ記録可能な最大サイズの記録媒体幅191の中に手動弁16を配置している。したがって、インクタンク17から記録ヘッド14まで至る供給用チューブ15を短くすることができ、記録装置1の小型化と供給用チューブ15の部品コストダウンが可能である。
【0084】
<他の実施形態>
他の実施形態に係る手動弁の構成について説明する。なお、第一実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、説明を省略することがある。
【0085】
図14(a)と図14(b)は他の実施形態に係る手動弁30の概略を示す斜視図である。手動弁30は、その操作部301が着脱操作部143を覆うことのできる形状に形成されている点で第一実施形態に係る手動弁16と異なる。図14(a)で示すように手動弁30が開いている状態では、キャリッジ13の着脱操作部143が手動弁30の操作部301に覆われ、ユーザは着脱操作部143を操作することができない。一方、図14(b)で示すように手動弁30が閉じている状態では、着脱操作部143を操作可能な位置に操作部301が位置している。これにより、手動弁30が開いている状態で記録ヘッド14が外されてインク漏れが生じることを防ぐことができる。すなわち、操作部301は、ユーザが誤ったタイミングで記録ヘッド14の交換してしまうことを抑制する機能を有しているといえる。
【0086】
図15(a)と図15(b)は他の実施形態に係る手動弁40の概略を示す斜視図である。本実施形態では、図15(b)のように、手動弁40が閉状態のときに、操作部401がキャリッジ13の一部と当接する位置関係に配置されている。また図15(a)のように、手動弁40が開状態のときに、操作部401がキャリッジ13と当接しない位置関係に配置されている。このような構成により、本実施形態では、図15(b)の状態から図14(b)の状態へキャリッジ13を操作部401に当接させながら移動させることで、手動弁40を閉状態から開状態に切り替えることができる。すなわち、キャリッジ13の移動によって操作部401が連動し、手動弁40を閉状態から開状態に切り替えることができる。例えば、上述の輸送設定モードにおいては、ユーザがモード選択を行えば、CPU201がキャリッジ13を移動させて手動弁40を閉じ、シャットダウン処理を行うことができる。一方で、開状態の手動弁40はキャリッジ13と当接しないので、記録動作への影響もない。これにより、ユーザによる操作無しで、手動弁40の閉状態から開状態への動作を可能としている。
【0087】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0088】
1 記録装置、14 記録ヘッド、16 手動弁、201 CPU、112 カバー部材
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