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特許7441361情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 19/00 20110101AFI20240221BHJP
【FI】
G06T19/00 C
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023087238
(22)【出願日】2023-05-26
【審査請求日】2023-08-02
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 https://www.mlit.go.jp/plateau/file/libraries/doc/plateau_tech_doc_0039_ver01.pdf (ウェブサイトの掲載日 令和5年3月27日)
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 優
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 剣一
(72)【発明者】
【氏名】高岡 莉人
(72)【発明者】
【氏名】福迫 裕太
【審査官】佐野 潤一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第111652908(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104200031(CN,A)
【文献】特開2019-025621(JP,A)
【文献】特開2007-200011(JP,A)
【文献】特開2012-110550(JP,A)
【文献】特開2000-200361(JP,A)
【文献】特開2018-089329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 13/00-19/00
A63F 13/00
G09G 5/00
H04N 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮想空間内で移動体を移動させる移動制御部と、
前記仮想空間内に配置される複数の構造物の位置及び形状を含む構造物データを取得する取得部と、
前記構造物データが含む前記複数の構造物の一部である部分構造物を包含する対象領域であって、前記部分構造物に接する表面を有する対象領域を決定する決定部と、
前記移動体の少なくとも一部が前記対象領域に包含されていることを条件として、前記仮想空間内の前記部分構造物の位置と前記移動体の位置との関係を特定する特定部と、
を有する、情報処理装置。
【請求項2】
前記決定部は、前記複数の構造物の一部である第1の前記部分構造物の前記対象領域と、前記複数の構造物の別の一部である第2の前記部分構造物の前記対象領域と、を異ならせる、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記決定部は、第1の前記部分構造物の前記対象領域と、第2の前記部分構造物の前記対象領域と、を互いに重ならないように決定する、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記部分構造物は、前記構造物データが含む複数の建物のうち1つの建物と、前記構造物データが含む一又は複数の建物における一又は複数のフロアと、のどちらかである、
請求項1から3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記対象領域は、複数の面が前記部分構造物に接する多面体である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記特定部は、前記移動体の少なくとも一部が前記対象領域に包含されていることを条件として、前記部分構造物と前記移動体とが接触するか否かを、前記関係として特定する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記特定部は、前記移動体の少なくとも一部が前記対象領域に包含されていることを条件として、前記部分構造物の位置と前記移動体の位置との間の距離を、前記関係として特定する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
情報端末が前記仮想空間を表示するための視点と前記対象領域との間の距離が所定の閾値以下であることを条件として、前記対象領域に包含されている前記移動体及び前記部分構造物を前記情報端末に表示させる表示制御部をさらに有する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記取得部は、前記複数の構造物を包含する指定領域を含む前記構造物データを取得し、
前記特定部は、前記構造物データが含む前記指定領域を用いずに、前記決定部が決定した前記対象領域を用いて、前記関係を特定する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項10】
プロセッサが実行する、
仮想空間内で移動体を移動させるステップと、
前記仮想空間内に配置される複数の構造物の位置及び形状を含む構造物データを取得するステップと、
前記構造物データが含む前記複数の構造物の一部である部分構造物を包含する対象領域であって、前記部分構造物に接する表面を有する対象領域を決定するステップと、
前記移動体の少なくとも一部が前記対象領域に包含されていることを条件として、前記仮想空間内の前記部分構造物の位置と前記移動体の位置との関係を特定するステップと、
を有する、情報処理方法。
【請求項11】
プロセッサに、
仮想空間内で移動体を移動させるステップと、
前記仮想空間内に配置される複数の構造物の位置及び形状を含む構造物データを取得するステップと、
前記構造物データが含む前記複数の構造物の一部である部分構造物を包含する対象領域であって、前記部分構造物に接する表面を有する対象領域を決定するステップと、
前記移動体の少なくとも一部が前記対象領域に包含されていることを条件として、前記仮想空間内の前記部分構造物の位置と前記移動体の位置との関係を特定するステップと、
を実行させる、情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮想空間に関する情報を処理するための情報処理装置、情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、仮想空間において、キャラクタから第1距離以下の範囲内に位置する複数のオブジェクトを抽出し、抽出した複数のオブジェクトのいずれかから第2距離以下の範囲内にキャラクタが進入した場合に、キャラクタとオブジェクトとが接触したと判定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-201786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
仮想空間において、複数の構造物それぞれと複数の移動体それぞれとの間で接触(衝突)等の位置関係を特定することが求められる場合がある。特許文献1に記載の技術では、複数のキャラクタそれぞれと複数のオブジェクトそれぞれとの間で総当たり的に距離を算出する必要があるため、計算負荷が大きくなりやすいという問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、仮想空間において構造物の位置と移動体の位置との関係を特定するための計算負荷を軽減できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の情報処理装置は、仮想空間内で移動体を移動させる移動制御部と、前記仮想空間内に配置される複数の構造物の位置及び形状を含む構造物データを取得する取得部と、前記構造物データが含む前記複数の構造物の一部である部分構造物を包含する対象領域であって、前記部分構造物に接する表面を有する対象領域を決定する決定部と、前記移動体の少なくとも一部が前記対象領域に包含されていることを条件として、前記仮想空間内の前記部分構造物の位置と前記移動体の位置との関係を特定する特定部と、を有する。
【0007】
前記決定部は、前記複数の構造物の一部である第1の前記部分構造物の前記対象領域と、前記複数の構造物の別の一部である第2の前記部分構造物の前記対象領域と、を異ならせてもよい。
【0008】
前記決定部は、第1の前記部分構造物の前記対象領域と、第2の前記部分構造物の前記対象領域と、を互いに重ならないように決定してもよい。
【0009】
前記部分構造物は、前記構造物データが含む複数の建物のうち1つの建物と、前記構造物データが含む一又は複数の建物における一又は複数のフロアと、のどちらかであってもよい。
【0010】
前記対象領域は、複数の面が前記部分構造物に接する多面体であってもよい。
【0011】
前記特定部は、前記移動体の少なくとも一部が前記対象領域に包含されていることを条件として、前記部分構造物と前記移動体とが接触するか否かを、前記関係として特定してもよい。
【0012】
前記特定部は、前記移動体の少なくとも一部が前記対象領域に包含されていることを条件として、前記部分構造物の位置と前記移動体の位置との間の距離を、前記関係として特定してもよい。
【0013】
前記情報処理装置は、情報端末が前記仮想空間を表示するための視点と前記対象領域との間の距離が所定の閾値以下であることを条件として、前記対象領域に包含されている前記移動体及び前記部分構造物を前記情報端末に表示させる表示制御部をさらに有してもよい。
【0014】
前記取得部は、前記複数の構造物を包含する指定領域を含む前記構造物データを取得し、前記特定部は、前記構造物データが含む前記指定領域を用いずに、前記決定部が決定した前記対象領域を用いて、前記関係を特定してもよい。
【0015】
本発明の第2の態様の情報処理方法は、プロセッサが実行する、仮想空間内で移動体を移動させるステップと、前記仮想空間内に配置される複数の構造物の位置及び形状を含む構造物データを取得するステップと、前記構造物データが含む前記複数の構造物の一部である部分構造物を包含する対象領域であって、前記部分構造物に接する表面を有する対象領域を決定するステップと、前記移動体の少なくとも一部が前記対象領域に包含されていることを条件として、前記仮想空間内の前記部分構造物の位置と前記移動体の位置との関係を特定するステップと、を有する。
【0016】
本発明の第3の態様のプログラムは、プロセッサに、仮想空間内で移動体を移動させるステップと、前記仮想空間内に配置される複数の構造物の位置及び形状を含む構造物データを取得するステップと、前記構造物データが含む前記複数の構造物の一部である部分構造物を包含する対象領域であって、前記部分構造物に接する表面を有する対象領域を決定するステップと、前記移動体の少なくとも一部が前記対象領域に包含されていることを条件として、前記仮想空間内の前記部分構造物の位置と前記移動体の位置との関係を特定するステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、仮想空間において構造物の位置と移動体の位置との関係を特定するための計算負荷を軽減できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係る情報処理システムの模式図である。
図2】実施形態に係る情報処理システムのブロック図である。
図3】取得部が取得する構造物データを説明するための模式図である。
図4】決定部が抽出する部分構造物を説明するための模式図である。
図5】決定部が決定する対象領域を説明するための模式図である。
図6】特定部が部分構造物の位置と移動体の位置との関係を特定する方法を説明するための模式図である。
図7】表示制御部が対象領域ごとに移動体及び部分構造物を情報端末に表示させるか否かを切り替える方法を説明するための模式図である。
図8】実施形態に係る情報処理装置が実行する例示的な情報処理方法のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[情報処理システムの概要]
図1は、本実施形態に係る情報処理システムの模式図である。情報処理システムは、情報処理装置1と、情報端末2と、を含む。情報処理システムは、複数の情報端末2を含んでもよい。情報処理システムは、その他のサーバ、端末等の機器を含んでもよい。
【0020】
情報処理装置1は、情報端末2に表示される仮想空間を管理するコンピュータである。仮想空間は、コンピュータ上に形成された仮想的な空間(例えば、メタバース)である。仮想空間は、情報端末2において面積又は体積を有する領域として表示される。一方、ユーザが生活する実際の空間(例えば、地球上の空間)を現実空間という。
【0021】
情報処理装置1は、仮想空間内に複数の仮想的な構造物Sを配置する。構造物Sは、例えば、建物である。情報処理装置1は、配置された複数の構造物Sの内部又は外部において、仮想的な移動体Mを移動させる。移動体Mは、例えば、人間を模したアバタ、又はアバタや物を運ぶ乗り物である。情報処理装置1は、仮想空間内の構造物Sの位置と移動体Mの位置との関係(接触、接近等)を特定し、移動体Mを構造物Sと重ならないように移動させる。これにより、情報処理装置1は、例えば、現実空間を模した仮想空間において避難誘導等を目的とした人流シミュレーションをすることができる。
【0022】
情報端末2は、ユーザが利用するコンピュータである。ユーザは、情報端末2に表示された仮想空間、仮想空間内の構造物S、及び仮想空間内で移動する移動体Mを見る人間である。また、ユーザは、情報端末2において、移動体Mを移動させるための操作を行ってもよい。情報端末2は、例えば、スマートフォン、タブレット端末又はパーソナルコンピュータである。情報端末2は、操作を受け付けるためのタッチパネルやキーボード等の操作部と、情報を表示するための液晶ディスプレイ等の表示部と、を有する。情報端末2は、ネットワークを介して情報処理装置1と通信可能である。
【0023】
本実施形態に係る情報処理装置1が実行する処理の概要を以下に説明する。情報処理装置1は、仮想空間内に配置される複数の構造物Sの位置及び形状を含む構造物データを取得する。構造物Sは、例えば、内部を移動体Mが移動可能な建物である。
【0024】
情報処理装置1は、構造物データが含む複数の構造物Sの一部である部分構造物を抽出し、抽出した部分構造物を包含する対象領域を決定する。部分構造物は、例えば、1つの建物、又は1つの建物におけるフロア(階層)である。対象領域は、例えば、部分構造物に接する表面を有する3次元領域である。
【0025】
情報処理装置1は、移動体Mの少なくとも一部が対象領域に包含されていることを条件として、仮想空間内の部分構造物の位置と移動体Mの位置との関係を特定する。情報処理装置1は、例えば、移動体Mが部分構造物の壁面又は底面それぞれに接触しているか否かを特定する。情報処理装置1は、特定した部分構造物の位置と移動体Mの位置との関係に基づいて、仮想空間内で移動体Mを移動させる。
【0026】
このように、情報処理装置1は、構造物データが含む複数の構造物Sの一部である部分構造物ごとに対象領域を決定し、決定した対象領域内の移動体Mに対して部分構造物との位置関係を特定する。これにより、情報処理装置1は、位置関係の特定対象とする部分構造物と移動体Mとの組み合わせの数を減らすことができるため、仮想空間において構造物Sの位置と移動体Mの位置との関係を特定するための計算負荷を軽減できる。
【0027】
[情報処理システムの構成]
図2は、本実施形態に係る情報処理システムのブロック図である。図2において、矢印は主なデータの流れを示しており、図2に示したもの以外のデータの流れがあってもよい。図2において、各ブロックはハードウェア(装置)単位の構成ではなく、機能単位の構成を示している。そのため、図2に示すブロックは単一の装置内に実装されてもよく、あるいは複数の装置内に分かれて実装されてもよい。ブロック間のデータの授受は、データバス、ネットワーク、可搬記憶媒体等、任意の手段を介して行われてもよい。
【0028】
情報処理装置1は、通信部11と、記憶部12と、制御部13と、を有する。情報処理装置1は、2つ以上の物理的に分離した装置が有線又は無線で接続されることにより構成されてもよい。また、情報処理装置1は、コンピュータ資源の集合であるクラウドによって構成されてもよい。
【0029】
通信部11は、ネットワークを介して情報端末2との間でデータを送受信するための通信コントローラを有する。通信部11は、情報端末2又はその他の装置からネットワークを介して受信したデータを制御部13に通知する。また、通信部11は、ネットワークを介して、制御部13から出力されたデータを情報端末2又はその他の装置に送信する。
【0030】
記憶部12は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブ等を含む記憶媒体である。記憶部12は、制御部13が実行するプログラムを予め記憶している。記憶部12は、情報処理装置1の外部に設けられてもよく、その場合にネットワークを介して制御部13との間でデータの授受を行ってもよい。
【0031】
制御部13は、取得部131と、決定部132と、特定部133と、移動制御部134と、表示制御部135と、を有する。制御部13は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサであり、記憶部12に記憶されたプログラムを実行することにより、取得部131、決定部132、特定部133、移動制御部134及び表示制御部135として機能する。
【0032】
以下、情報処理装置1が実行する処理について詳細に説明する。情報処理装置1が仮想空間に関する処理を開始する際に、取得部131は、仮想空間内に配置される複数の構造物Sの位置及び形状を含む構造物データDを取得する。取得部131は、例えば、記憶部12に予め記憶された構造物データDを取得する。
【0033】
図3は、取得部131が取得する構造物データDを説明するための模式図である。構造物データDは、複数の構造物Sそれぞれの位置を示す情報(例えば、仮想空間内の座標)と、複数の構造物Sそれぞれの形状を示す情報(例えば、3次元形状データ)と、を含む。構造物Sは、例えば、仮想的な建物であり、移動体Mが移動可能な通路を内部に含む。また、構造物Sは、山、谷等の地形、又は道路、橋梁、トンネル等の土木構造物を含んでもよい。
【0034】
構造物データDは、複数の構造物Sである複数の建物それぞれを示す建物情報と、複数の構造物Sである複数の建物それぞれを構成する一又は複数のフロア(階層)を示すフロア情報と、の少なくとも一方をさらに含んでもよい。建物情報は、例えば、構造物データDが含む複数の構造物Sを1つの建物ごとに区画する情報である。フロア情報は、例えば、構造物データDが含む複数の構造物Sそれぞれを一又は複数のフロアごとに区画する情報である。
【0035】
構造物データDは、複数の構造物Sを包含する指定領域Rを含んでもよい。指定領域Rは、例えば、複数の構造物Sとの位置関係を特定する移動体Mを抽出するための領域(バウンディング・ボックスともいう)であって、構造物データDが含む複数の構造物Sに対して共通の領域である。後述の特定部133は、構造物データDが指定領域Rを含んでいる場合であっても、構造物データDが含む指定領域Rを用いることなく、構造物Sと移動体Mとの位置関係を特定する。
【0036】
決定部132は、取得部131が取得した構造物データDが含む複数の構造物Sの一部である部分構造物S1を抽出する。決定部132は、複数の部分構造物S1を抽出してもよい。図4(a)、図4(b)は、決定部132が抽出する部分構造物S1を説明するための模式図である。
【0037】
部分構造物S1は、構造物データDが含む複数の構造物Sである複数の建物のうち1つの建物と、構造物データDが含む複数の構造物Sである一又は複数の建物における一又は複数のフロアと、のどちらかである。図4(a)の例では、決定部132は、構造物データDが含む複数の建物のうち1つの建物を、部分構造物S1として抽出する。この場合に、決定部132は、例えば、構造物データDが含む建物情報に基づいて、構造物データDが含む複数の建物を建物ごとに分けることにより、部分構造物S1を抽出する。
【0038】
図4(b)の例では、決定部132は、構造物データDが含む一又は複数の建物における一又は複数のフロアを、部分構造物S1として抽出する。この場合に、決定部132は、例えば、構造物データDが含むフロア情報に基づいて、構造物データDが含む複数の建物を一又は複数のフロアごとに分けることにより、部分構造物S1を抽出する。
【0039】
決定部132は、抽出した部分構造物S1を包含する対象領域R1であって、部分構造物S1に接する表面を有する3次元領域である対象領域R1を決定する。図5(a)、図5(b)は、決定部132が決定する対象領域R1を説明するための模式図である。
【0040】
対象領域R1は、例えば、複数の面が部分構造物S1に接する多面体である。図5(a)の例では、決定部132は、四角柱状の部分構造物S1に6つの面が全て接する直方体を、対象領域R1として決定する。図5(b)の例では、決定部132は、円柱状の部分構造物S1に6つの面が全て接する直方体を、対象領域R1として決定する。決定部132は、直方体に限られず、その他の3次元形状を有する領域を、対象領域R1として決定してもよい。また、決定部132は、部分構造物S1に接する表面を有する3次元領域のうち、部分構造物S1の大きさとの差が最も小さい大きさの3次元領域を、対象領域R1として決定してもよい。これにより、情報処理装置1は、構造物Sと移動体Mとの位置関係の特定に用いる対象領域R1の大きさを小さくすることができるため、計算負荷を軽減することができる。
【0041】
決定部132は、複数の構造物Sの一部である第1の部分構造物S1の対象領域R1と、複数の構造物Sの別の一部である第2の部分構造物S1の対象領域R1と、を異ならせる。ここで決定部132は、第1の部分構造物S1の対象領域R1と、第2の部分構造物S1の対象領域R1と、を互いに重ならないように決定することが望ましい。これにより、情報処理装置1は、部分構造物S1と移動体Mとの互いに重複する組み合わせに対して位置関係を特定するための計算を行う必要がなくなるため、計算負荷を軽減することができる。
【0042】
対象領域R1は、構造物データDが含む指定領域Rよりも小さい領域であって、構造物データDが含む複数の構造物Sごとに異なる領域である。このように情報処理装置1は、構造物データDに予め設定された指定領域Rよりも小さい対象領域R1を用いることにより、構造物Sと移動体Mとの位置関係を特定するための計算負荷を軽減することができる。
【0043】
特定部133は、決定部132が決定した対象領域R1を用いて、仮想空間内の部分構造物S1の位置と移動体Mの位置との関係を特定する。図6は、特定部133が部分構造物S1の位置と移動体Mの位置との関係を特定する方法を説明するための模式図である。
【0044】
特定部133は、複数の移動体Mのうち、少なくとも一部が対象領域R1に包含されている一又は複数の移動体Mを抽出する。特定部133は、例えば、移動体Mの3次元形状の全部又は所定の割合が対象領域R1に包含されていることを条件として、当該移動体Mを、位置関係を特定する対象として抽出する。決定部132が複数の対象領域R1を決定した場合に、特定部133は複数の対象領域R1それぞれに対して一又は複数の移動体Mを抽出する。
【0045】
特定部133は、抽出した一又は複数の移動体Mそれぞれに対して、部分構造物S1との位置関係を特定する。特定部133は、例えば、部分構造物S1と移動体Mとが接触するか否かを、部分構造物S1の位置と移動体Mの位置との関係として特定する。また、特定部133は、例えば、移動体Mが部分構造物S1の壁面又は底面それぞれに接触しているか否かを特定してもよい。また、特定部133は、例えば、部分構造物S1の位置と移動体Mの位置との間の距離を、部分構造物S1の位置と移動体Mの位置との関係として特定してもよい。
【0046】
ここで特定部133は、構造物データDが含む指定領域Rを用いずに、決定部132が決定した対象領域R1を用いて、部分構造物S1の位置と移動体Mの位置との関係を特定する。情報処理装置1は、複数の構造物S全体に対して予め設定された指定領域Rよりも、部分構造物S1ごとに決定した対象領域R1を用いることにより、位置関係の特定対象とする部分構造物S1と移動体Mとの組み合わせの数を減らすことができるため、計算負荷を軽減することができる。
【0047】
移動制御部134は、特定部133が特定した部分構造物S1の位置と移動体Mの位置との関係を用いて、仮想空間内で移動体Mを移動させる。移動制御部134は、例えば、複数の移動体Mそれぞれを、仮想空間において所定の出発地点から所定の到着地点まで移動させる。ここで移動制御部134は、例えば、既知の物理シミュレーション方法を用いて、移動体Mが構造物Sに接触しないように、又は移動体Mが構造物Sから所定の距離を保つように、移動体Mを移動させる。これにより、情報処理装置1は、例えば、現実空間を模した仮想空間において避難誘導等を目的とした人流シミュレーションをすることができる。
【0048】
表示制御部135は、移動制御部134が移動体Mを移動させた結果を表示するための表示情報を情報端末2に送信する。移動制御部134が移動体Mを移動させた結果は、例えば、複数の移動体Mそれぞれが出発地点から到着地点まで移動できたか否か、及び移動の所要時間等を含む。また、移動制御部134が移動体Mを移動させた結果は、移動体Mが仮想空間内を移動する過程を表す情報(複数の移動体Mそれぞれが構造物S内を移動する画像等)を含んでもよい。情報端末2は、情報処理装置1から受信した表示情報に従って、移動制御部134が移動体Mを移動させた結果を表示部上に表示する。
【0049】
表示制御部135は、複数の対象領域R1それぞれに対して、当該対象領域R1に包含されている移動体M及び部分構造物S1を情報端末2に表示させるか否かを切り替えてもよい。図7は、表示制御部135が対象領域R1ごとに移動体M及び部分構造物S1を情報端末2に表示させるか否かを切り替える方法を説明するための模式図である。
【0050】
表示制御部135は、例えば、情報端末2が仮想空間を表示するための視点Vと複数の対象領域R1それぞれとの間の距離D1を算出する。視点Vは、情報端末2におけるユーザによる操作によって指定された、仮想空間内の構造物S及び移動体Mを表示する基準となる点である。視点Vは、仮想空間内の構造物S及び移動体Mを撮像する仮想的なカメラの位置であってもよい。
【0051】
表示制御部135は、例えば、複数の対象領域R1それぞれに対して、距離D1が所定の閾値T以下であることを条件として、当該対象領域R1に包含されている移動体M及び部分構造物S1を情報端末2に表示させる。一方、表示制御部135は、例えば、複数の対象領域R1それぞれに対して、距離D1が所定の閾値Tより大きいことを条件として、当該対象領域R1に包含されている移動体M及び部分構造物S1を情報端末2に表示させない。閾値Tは、ユーザ又は仮想空間の管理者によって予め指定される。これにより、情報処理装置1は、表示対象とする部分構造物S1及び移動体Mの数を減らすことができるため、構造物S及び移動体Mを表示するための計算負荷を軽減できる。
【0052】
[情報処理方法のフロー]
図8は、本実施形態に係る情報処理装置1が実行する例示的な情報処理方法のフローチャートを示す図である。情報処理装置1が仮想空間に関する処理を開始させるための処理を実行する際に、取得部131は、仮想空間内に配置される複数の構造物Sの位置及び形状を含む構造物データDを取得する(S11)。
【0053】
決定部132は、取得部131が取得した構造物データDが含む複数の構造物Sの一部である部分構造物S1を抽出する(S12)。決定部132は、抽出した部分構造物S1を包含する対象領域R1であって、部分構造物S1に接する表面を有する3次元領域である対象領域R1を決定する(S13)。
【0054】
特定部133は、複数の移動体Mのうち、少なくとも一部が対象領域R1に包含されている一又は複数の移動体Mを抽出する(S14)。特定部133は、抽出した一又は複数の移動体Mそれぞれに対して、部分構造物S1の位置と移動体Mの位置との関係を特定する(S15)。
【0055】
移動制御部134は、特定部133が特定した部分構造物S1の位置と移動体Mの位置との関係を用いて、仮想空間内で移動体Mを移動させる(S16)。表示制御部135は、移動制御部134が移動体Mを移動させた結果を表示するための表示情報を情報端末2に送信する(S17)。情報端末2は、情報処理装置1から受信した表示情報に従って、移動制御部134が移動体Mを移動させた結果を表示部上に表示する。
【0056】
[実施形態の効果]
本実施形態に係る情報処理装置1は、構造物データDが含む複数の構造物Sの一部である部分構造物S1ごとに対象領域R1を決定し、決定した対象領域R1内の移動体Mに対して部分構造物S1との位置関係を特定する。これにより、情報処理装置1は、位置関係の特定対象とする部分構造物S1と移動体Mとの組み合わせの数を減らすことができるため、仮想空間において構造物Sの位置と移動体Mの位置との関係を特定するための計算負荷を軽減できる。
【0057】
なお、本発明により、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」に貢献することが可能となる。
【0058】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0059】
1 情報処理装置
2 情報端末
11 通信部
12 記憶部
13 制御部
131 取得部
132 決定部
133 特定部
134 移動制御部
135 表示制御部

【要約】
【課題】仮想空間において構造物の位置と移動体の位置との関係を特定するための計算負荷を軽減できるようにする。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る情報処理装置1は、仮想空間内で移動体を移動させる移動制御部134と、仮想空間内に配置される複数の構造物の位置及び形状を含む構造物データを取得する取得部131と、構造物データが含む複数の構造物の一部である部分構造物を包含する対象領域であって、部分構造物に接する表面を有する対象領域を決定する決定部132と、移動体の少なくとも一部が対象領域に包含されていることを条件として、仮想空間内の部分構造物の位置と移動体の位置との関係を特定する特定部133と、を有する。
【選択図】図2

図1
図2
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図8