(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】台車の異常を判定する方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
B60P 1/00 20060101AFI20240221BHJP
【FI】
B60P1/00 Z
(21)【出願番号】P 2023177819
(22)【出願日】2023-10-13
【審査請求日】2023-10-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514154813
【氏名又は名称】フィブイントラロジスティクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】内田 陽介
(72)【発明者】
【氏名】福喜多 俊
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特許第7152821(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 1/00- 1/64
B60P 3/00- 9/00
G01G 19/02-19/03
B62D 53/00
B61B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気モータで走行する牽引車に牽引される、搬送荷物が積載可能な台車
自体の異常を判定する方法であって、正常な台車を牽引したときの牽引車の走行速度と台車に積載される搬送荷物の重量と牽引車の電気モータ負荷データ値との数的関係性を予め登録しておき、
判定される台車に積載される搬送荷物の重量を台車に積載される前に計量し、判定される台車と正常な台車が同じ設計で作られていることを前提条件として、判定される台車を牽引したときの牽引車の走行速度と台車に積載される搬送荷物の重量に基づいて得られた牽引車の電気モータ負荷データ値の取得値と、判定される台車を牽引したときと同じ牽引車の走行速度と台車に積載される搬送荷物の重量の条件に基づいて前記数的関係性から推定される正常な台車を牽引したときの牽引車の電気モータ負荷データ値の推定値とを比較し、取得値が推定値より特定の量以上又は特定の割合以上大きい場合に牽引した台車
自体を異常と判定することを特徴とする方法。
【請求項2】
電気モータ負荷データ値が、電気モータに負荷される電流値又はトルク値であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
異なる設計の台車が複数存在するときに異なる設計の台車ごとに数的関係性を予め登録し、判定される台車の設計に合わせて牽引車の電気モータ負荷データ値の取得値と推定値を比較し、台車
自体の異常を判定することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
牽引車が、無人搬送車であることを特徴とする請求項1~
3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
牽引車が、台車包囲バーを有し、台車包囲バーが、台車の両側方及び後方を包囲して台車を牽引するように構成されていることを特徴とする請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
牽引車が、台車に直接連結して台車を牽引するように構成されていることを特徴とする請求項
4に記載の方法。
【請求項7】
搬送荷物が、折りたたみコンテナとその中に収納される荷物とからなることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
台車が、平台車、六輪台車、又はカゴ台車であることを特徴とする請求項1~
3のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
電気モータで走行する牽引車に牽引される、搬送荷物が積載可能な台車
自体の異常を判定するシステムであって、前記システムが、判定される台車に積載される搬送荷物の重量を
積載前に計量する計量手段、判定される台車を牽引したときの牽引車の走行速度及び電気モータ負荷データ値を計測する計測手段、正常な台車を牽引したときの牽引車の走行速度と台車に積載される搬送荷物の重量と牽引車の電気モータ負荷データ値との数的関係性を登録する記憶手段、判定される台車を牽引したときと同じ牽引車の走行速度と台車に積載される搬送荷物の重量の条件に基づいて記憶手段に登録された数的関係性から正常な台車を牽引したときの牽引車の電気モータ負荷データ値の推定値を推定する推定手段、及び判定される台車と正常な台車が同じ設計で作られていることを前提条件として、計測手段から得られた判定される台車を牽引したときの電気モータ負荷データ値の取得値と、取得値を計測したときの牽引車の走行速度と台車に積載される搬送荷物の重量の条件に基づいて推定手段から得られた正常な台車を牽引したときの牽引車の電気モータ負荷データ値の推定値とを比較し、取得値が推定値より特定の量以上又は特定の割合以上大きい場合に台車
自体を異常と判定する判定手段を備えることを特徴とするシステム。
【請求項10】
電気モータ負荷データ値が、電気モータに負荷される電流値又はトルク値であることを特徴とする請求項
9に記載のシステム。
【請求項11】
記憶手段が、異なる設計の台車が複数存在するときに異なる設計の台車ごとに数的関係性を登録するように構成され、判定手段が、判定される台車の設計に合わせて牽引車の電気モータ負荷データ値の取得値と推定値を比較し、台車
自体の異常を判定するように構成されることを特徴とする請求項
9又は
10に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気モータで走行する牽引車に牽引され、かつ荷物を積載して搬送できる台車の異常を簡単に判定することができる方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
商業施設や物流施設などでは、商品や荷物の搬送のためにそれらを積載可能な様々な台車が使用されている。これらの台車は、日々の運用で繰り返し使用されることによって徐々に劣化し、長期間使用すると異常や故障を発生することが多い。異常や故障が発生した場合は、台車の直進性が失われ、任意の方向にスムーズに移動できなくなったり、車輪の転がり抵抗が増加して移動のために必要とされる力負荷が増大する。こうなると、台車の稼働率が低下するだけではなく、さらに台車のハンドリングが不安定になることによる事故が発生する可能性がある。
【0003】
従来は、台車の移動は、人の手でなされることが一般的であったため、これらの異常や故障は、人の感覚的な部分で判断することができ、異常な台車が発生するとすぐに廃棄又は修理することが可能であった。
【0004】
しかしながら、近年、人手不足の解消のために、台車の移動は、電気モータで走行する牽引車(例えば無人の自動搬送車(AGV))で牽引して行なわれることが多くなり、台車の劣化の不具合を人の感覚で即座に認識することができなくなっていた。そのため、異常のある台車を荷物の搬送のためにそのまま運用しつづけて、荷物の搬送の効率を低下させたり、大きな労災につながる危険な事故を発生させてしまう問題があった。
【0005】
かかる問題に着目して、それを解決しようとした従来技術は全くなく、関連する技術として、走行台車に加速度センサを取り付け、加速度の変化により車体本体に対する荷重を推定する荷重推定装置が提案されているにすぎない(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の従来技術の問題を解消するために創案されたものであり、その目的は、電気モータで走行する牽引車に牽引され、かつ搬送荷物を積載できる台車の異常を簡単に判定することができる方法及びシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成するために牽引車に牽引される台車の異常の判定方法について鋭意検討した結果、正常な台車を牽引車で牽引したときの牽引車の走行速度と台車に積載される搬送荷物の重量と牽引車の電気モータ負荷データ値との間に特定の数的関係性があり、同じ牽引車の走行速度で同じ積載搬送荷物の重量の条件で牽引車が同じ設計の台車を牽引した場合、牽引車の電気モータ負荷データ値(例えば電流値又はトルク値)に関して、異常な台車は、正常な台車より明確に大きい値を示すことを見出した。そして、かかる知見に基づいて、正常な台車の前述の数的関係性を異なる設計の台車ごとに予め登録しておき、判定される台車と正常な台車が同じ設計で作られていることを前提条件として、判定される台車を牽引する牽引車の電気モータ負荷データ値の取得値を、同じ牽引車の走行速度で同じ積載搬送荷物の重量の条件で正常な台車を牽引したときの前述の数的関係性から推定された牽引車の電気モータ負荷データ値の推定値と比較し、取得値が推定値より特定の量又は特定の割合以上大きい場合にその台車を異常と判定することにより、人手によらず簡単に異常な台車を判定できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0009】
即ち、本発明は、上記の知見に基づいて完成したものであり、以下の(1)~(11)の構成を有するものである。
(1)電気モータで走行する牽引車に牽引される、搬送荷物が積載可能な台車自体の異常を判定する方法であって、正常な台車を牽引したときの牽引車の走行速度と台車に積載される搬送荷物の重量と牽引車の電気モータ負荷データ値との数的関係性を予め登録しておき、判定される台車に積載される搬送荷物の重量を台車に積載される前に計量し、判定される台車と正常な台車が同じ設計で作られていることを前提条件として、判定される台車を牽引したときの牽引車の走行速度と台車に積載される搬送荷物の重量に基づいて得られた牽引車の電気モータ負荷データ値の取得値と、判定される台車を牽引したときと同じ牽引車の走行速度と台車に積載される搬送荷物の重量の条件に基づいて前記数的関係性から推定される正常な台車を牽引したときの牽引車の電気モータ負荷データ値の推定値とを比較し、取得値が推定値より特定の量以上又は特定の割合以上大きい場合に牽引した台車自体を異常と判定することを特徴とする方法。
(2)電気モータ負荷データ値が、電気モータに負荷される電流値又はトルク値であることを特徴とする(1)に記載の方法。
(3)異なる設計の台車が複数存在するときに異なる設計の台車ごとに数的関係性を予め登録し、判定される台車の設計に合わせて牽引車の電気モータ負荷データ値の取得値と推定値を比較し、台車自体の異常を判定することを特徴とする(1)に記載の方法。
(4)牽引車が、無人搬送車であることを特徴とする(1)~(3)のいずれかに記載の方法。
(5)牽引車が、台車包囲バーを有し、台車包囲バーが、台車の両側方及び後方を包囲して台車を牽引するように構成されていることを特徴とする(4)に記載の方法。
(6)牽引車が、台車に直接連結して台車を牽引するように構成されていることを特徴とする(4)に記載の方法。
(7)搬送荷物が、折りたたみコンテナとその中に収納される荷物とからなることを特徴とする(1)~(4)のいずれかに記載の方法。
(8)台車が、平台車、六輪台車、又はカゴ台車であることを特徴とする(1)~(3)のいずれかに記載の方法。
(9)電気モータで走行する牽引車に牽引される、搬送荷物が積載可能な台車自体の異常を判定するシステムであって、前記システムが、判定される台車に積載される搬送荷物の重量を積載前に計量する計量手段、判定される台車を牽引したときの牽引車の走行速度及び電気モータ負荷データ値を計測する計測手段、正常な台車を牽引したときの牽引車の走行速度と台車に積載される搬送荷物の重量と牽引車の電気モータ負荷データ値との数的関係性を登録する記憶手段、判定される台車を牽引したときと同じ牽引車の走行速度と台車に積載される搬送荷物の重量の条件に基づいて記憶手段に登録された数的関係性から正常な台車を牽引したときの牽引車の電気モータ負荷データ値の推定値を推定する推定手段、及び判定される台車と正常な台車が同じ設計で作られていることを前提条件として、計測手段から得られた判定される台車を牽引したときの電気モータ負荷データ値の取得値と、取得値を計測したときの牽引車の走行速度と台車に積載される搬送荷物の重量の条件に基づいて推定手段から得られた正常な台車を牽引したときの牽引車の電気モータ負荷データ値の推定値とを比較し、取得値が推定値より特定の量以上又は特定の割合以上大きい場合に台車自体を異常と判定する判定手段を備えることを特徴とするシステム。
(10)電気モータ負荷データ値が、電気モータに負荷される電流値又はトルク値であることを特徴とする(9)に記載のシステム。
(11)記憶手段が、異なる設計の台車が複数存在するときに異なる設計の台車ごとに数的関係性を登録するように構成され、判定手段が、判定される台車の設計に合わせて牽引車の電気モータ負荷データ値の取得値と推定値を比較し、台車自体の異常を判定するように構成されることを特徴とする(9)又は(10)に記載のシステム。
【発明の効果】
【0010】
本発明の方法及びシステムによれば、無人搬送車のような牽引車で台車を牽引する場合でも、判定される台車を牽引する牽引車の電気モータ負荷データ値の取得値を、正常な同じ設計の台車の同じ牽引条件での同データ値の推定値と比較した場合の変化の大きさによって台車の異常を判定できるので、人の感覚で管理していた台車の故障や事故につながる台車の異常を簡単にかつ客観的に判定することができる。従って、本発明の方法及びシステムによれば、異常のある台車を牽引して荷物を搬送することによる稼働率の低下、故障した台車を使い続けてしまうことによる床や壁等の施設の損傷、ドーリ供給機、オリコン段積み機等の他設備の故障、さらには労災を招く危険な事故の発生などを事前に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明において使用される台車の四つの例を概略的斜視図で示す。
【
図2】
図2は、本発明において使用される搬送荷物の二つの例(a),(b)を概略的斜視図で示す。
【
図3】
図3は、本発明において使用される牽引車の典型例を示し、(a)は、台車を直接連結して牽引するタイプの牽引車の一例の各方向からの概略図、(b)は、台車を台車包囲バーで拘束して牽引するタイプの牽引車の一例の各方向からの概略図である。
【
図4】
図4は、本発明において台車に搬送荷物が積載されるまでの流れの一例を概略的に示す。
【
図5】
図5は、本発明において牽引車の電気モータ負荷データ値を認識する流れの一例を概略的に示す。
【
図6】
図6は、本発明において牽引車の電気モータ負荷データ値による台車の異常の判定方法の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の台車の異常を判定するための方法及びシステムの典型的な実施形態を図面に基づいて以下説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0013】
本発明の台車は、一般に物品の仕分けや配送を取り扱う業界において、牽引車によって牽引される搬送物品が積載可能な台車である。本発明の台車は、底部に走行車輪を有すれば特に限定されないが、物品を載せる底部が全体として平面形状を有するものが好ましく、例えば平台車、六輪台車、又はカゴ台車が好ましく使用される。平台車としては、例えば
図1に示されるものが使用される。
【0014】
本発明の台車に積載される搬送荷物は、安定して積載されやすい形態であれば特に限定されないが、例えば
図2(a)に示される折りたたみコンテナ(オリコン)や
図2(b)に示される容器と、その中に収納される荷物とから構成される搬送荷物であることができる。本発明の台車は、電気モータで走行する牽引車に牽引されることができ、その牽引車は、無人搬送車(AGV)であることが好ましい。牽引車としては、例えば
図3(a)に示すように台車1に直接連結して台車1を牽引するように構成された牽引車3、または
図3(b)に示すように牽引車3が台車包囲バー4を有し、台車包囲バー4が台車1の両側方及び後方を包囲して台車1を牽引するように構成された牽引車3が挙げられ、これらのいずれのタイプのものを使用してもよい。
【0015】
本発明の方法では、まず正常な台車を牽引車で牽引したときの牽引車の走行速度と台車に積載される搬送荷物の重量と牽引車の電気モータ負荷データ値との数的関係性を予め把握し、登録しておくことが必要である。牽引車の電気モータ負荷データ値は、電気モータの負荷を客観的に数字で表現できるデータ値であれば特に限定されず、例えば牽引車の電気モータに負荷される電流値又はトルク値を使用することができる。
【0016】
本発明の方法における数的関係性は、牽引車の走行速度が一定の場合、台車を牽引するために必要な力(F)が、台車の重量とそれに積載される搬送荷物の重量の合計(mg)の増加に従ってほぼ一次関数的に増加するという技術常識に基づくものであり、例えば一次関数を利用した数式や、牽引車の走行速度と台車の積載搬送荷物の重量に基づいて正常な電気モータ負荷データ値が示される対応表のようなものであることができる。この数的関係性は、具体的には牽引車の走行速度が一定の場合、台車の積載搬送荷物の重量の増加により牽引車の電気モータ負荷データ値が増大する傾向を示すものであり、例えば正常な台車の積載搬送荷物の重量や牽引車の走行速度をそれぞれ変化させた場合の牽引車の電気モータ負荷データ値を多数とっておき、それらの各値間の前記傾向から数的関係式又は数的対応表を作成することにより、予め把握することができる。
【0017】
判定される台車を牽引する牽引車の走行速度や台車の積載搬送荷物の重量が確定すれば、前述の予め把握された数的関係性から同じ牽引条件で同じ設計の正常な台車を牽引したときの牽引車の電気モータ負荷データ値を推定することができる。判定される台車を牽引したときの牽引車の電気モータ負荷データ値の取得値を、同じ設計の正常な台車を同じ牽引条件で牽引した場合の牽引車の電気モータ負荷データ値の推定値と比較することにより、台車が異常かどうかを簡単に判定することができる。このとき、取得値が推定値より特定の量以上又は特定の割合以上大きい場合に台車を異常と判定する。
【0018】
この数的関係性は、同じ設計の正常な台車を同じ牽引車で同じ走行速度で牽引すれば、牽引車の電気モータ負荷データ値は、特に走行する床条件などを互いに変えない限り、ほぼ同じであることを利用したものであり、本発明では、異常な台車は、正常な台車のようにスムーズに牽引できず、余計な牽引力(電気モータ負荷)を牽引車に与えることに基づいて台車の異常の判定を行なうようにしている。
【0019】
本発明のシステムでは、この数的関係性を登録する記憶手段を中央管理コンピュータに有することが好ましい。また、この数的関係性から電気モータ負荷データ値を推定する推定手段、電気モータ負荷データ値の取得値と推定値を比較し、その結果により台車の異常を判定する判定手段も中央管理コンピュータに有することが好ましい。
【0020】
本発明の方法では、異常かどうかを判定される台車に積載される搬送荷物の重量は、搬送荷物が台車に積載される前に計量されることが好ましい。台車に搬送荷物が積載されるまでの流れとしては、例えば
図4に示すものが一般的である。
図4に示すように、各台車に積載される例えばオリコンの形の搬送荷物2が計量コンベヤ5のような計量手段に載せられ、そこで搬送荷物2の重量が計量される。計量後、搬送荷物2は、いったん自動倉庫6内に格納される。中央管理コンピュータにより搬送荷物2の出庫を指示されると、搬送荷物2は、自動倉庫6から取り出され、搬送コンベヤ7の上に載せられて移動し、ロボットハンド8で把持されて集積される。所定の数が集積されると、ドーリ供給機(図示せず)から供給された台車1の上に集積した搬送荷物2を載せる。搬送荷物2を積載した台車1は、無人搬送車のような牽引車3に牽引されて運搬される。本発明のシステムでは、この流れの中で搬送荷物2の重量を計量する計量手段、例えば計量コンベヤ5を設けることが好ましい。計量手段で計量された搬送荷物は、行先別に積載される台車と紐付けされており、
図4に示すように自動倉庫からの出庫に合わせて行先別に各台車に積載される搬送荷物の総重量を本発明のシステムの中央管理コンピュータに無線通信で知らせることができるようになっている。
【0021】
図4に示すように行先別に台車1に搬送荷物2が積載された後は、
図5に示すように各台車を牽引車(例えば1号機、2号機)が必要な場所まで牽引して走行する。このとき、各牽引車の走行速度と電気モータ負荷データ値が同時に計測される。これらの計測手段としては、従来公知の手段を採用することができ、牽引車自身に設けられていることが好ましい。計測手段によって計測された各牽引車の走行速度と電気モータ負荷データ値は、本発明のシステムの中央管理コンピュータに無線通信で知らせることができるようになっている。例えば1号機の牽引車では、60kgの総重量の搬送荷物が台車に積載されているが、0.3m/sの走行速度で牽引した場合、10A(アンペア)の電気モータ負荷データ値が牽引車の計測手段で取得され、これらの取得値が中央管理コンピュータに送られる。2号機の牽引車では、28kgの総重量の搬送荷物が台車に積載されているが、0.5m/sの走行速度で牽引した場合、2Aの電気モータ負荷データ値が計測手段で取得され、これらの取得値が同様に中央管理コンピュータに送られる。
【0022】
中央管理コンピュータでは、異常かどうかを判定される台車(
図5,6では1号機,2号機)に関して、台車に積載される搬送荷物の重量の情報は、
図4に示すように計量手段から既に取得しており、さらに台車の走行速度と牽引車の電気モータ負荷データ値(取得値)の情報は、
図5に示すように牽引車に備えた計測手段から取得できている状態にある。また、中央管理コンピュータでは、判定される台車と同じ設計の正常な台車を牽引したときの牽引車の走行速度と台車に積載される搬送荷物の重量と牽引車の電気モータ負荷データ値との数的関係性を記憶手段に予め登録しており、前述の計量手段から取得した判定される台車の積載搬送荷物の重量と前述の計測手段から取得した牽引車の走行速度の情報に基づいて記憶手段に登録された数的関係性から同じ設計の正常な台車を牽引したときの牽引車の電気モータ負荷データ値(推定値)を推定手段によって推定できている状態にある。そして、これらの状態にあるとき、中央管理コンピュータは、判定される台車を牽引したときの牽引車の電気モータ負荷データ値の取得値と、推定手段から得られた同じ設計の正常な台車を牽引したときの牽引車の電気モータ負荷データ値の推定値とを比較し、この比較結果から特定の判定基準で台車を異常かどうかを判定する。この判定手段は、中央管理コンピュータに備わっていることが好ましい。判定基準は、電気モータ負荷データ値の取得値が推定値より特定の量以上及び/又は特定の割合以上大きい場合に台車を異常と判定することができる。特定の量は、電流値の場合、1A,2A,3A,4A,5A,6A,7A,8A,9A,10Aであることができる。また、特定の割合は、例えば10%,20%,30%,40%,又は50%であることができる。
【0023】
図6は、中央管理コンピュータにおいて、各台車がどのように異常かどうかを判定することを示す具体例を表わす。
図6に示すように、1号機の牽引車に関して、中央管理コンピュータでは、台車の積載搬送荷物の総重量60kgを計量手段から取得し、牽引車の走行速度0.3m/sと電気モータ負荷データ値10Aを計測手段から取得する。一方、中央管理コンピュータでは、1号機の牽引車と同じ設計の正常な牽引車の同じ牽引条件での電気モータ負荷データ値の推定値5Aを記憶手段に登録された数的関係性から推定手段が推定する。
【0024】
次に、中央管理コンピュータの判定手段によって、得られた牽引車の電気モータ負荷データ値の取得値と推定値を比較し、台車が異常かどうかを判定する。判定基準が(i)取得値が推定値から5割以上多いとき、又は(ii)推定値から3A以上多いときに異常と設定される場合、1号機は、推定値5A+2.5A=7.5A<取得値10Aであり、推定値5A+3A=8A<取得値10Aであるので、(i),(ii)のいずれの判定基準でも台車は異常と判定される。
【0025】
2号機の牽引車に関しても、中央管理コンピュータによって同様に台車が異常かどうかを判定することができる。中央管理コンピュータは、2号機の牽引車に関しても台車の積載搬送荷物の総重量28kg、牽引車の走行速度0.5m/s、電気モータ負荷データ値2Aの取得値の情報と、数的関係性から推定される電気モータ負荷データ値1.8Aの推定値の情報を既に持っており、1号機と同様に台車が異常かどうかの判定を行なうことができる。2号機の牽引車を1号機と同じ判定基準で判定すると、2号機は、推定値1.8A+0.9A=2.7A>取得値2Aであり、推定値1.8A+3A=4.8A>取得値2Aであるので、(i),(ii)のいずれの判定基準でも台車は異常なしと判定される。
【0026】
判定される台車と推定値の推定に使用される正常な台車は、同じ設計で作られていることが必要である。即ち、牽引車の牽引力及び牽引速度に起因する台車の機械的性質などの設計が同じであることが必要である。異なる設計の台車が複数存在するときは、異なる設計の台車ごとに前述の数的関係性を予め把握して登録し、判定される台車の設計に合わせて牽引車の電気モータ負荷データ値の取得値と推定値を比較し、台車の異常を判定することが好ましい。また、台車を牽引する牽引車は、当然同じ設計であることが必要である。この場合、牽引車は、牽引力や牽引速度に起因する機械的性質の設計が同じであることが必要である。
【0027】
本発明の方法及びシステムについて典型的な例を上で説明したが、本発明の特許請求の範囲の要件を逸脱しない限り、細部の技術の変更や修正、従来技術の追加を適宜行なうことができる。例えば、本発明における積載搬送荷物の計量、牽引車の走行速度及び電気モータ負荷データ値の計測、数的関係性の把握・登録、電気モータ負荷データ値の推定、異常かどうかの判定の手段及び方法は、上記の例や設置場所に限定されず、広く従来技術を利用して実現可能である。また、異常な台車は同じ設計の正常な台車より牽引車の牽引負荷力が増加するということに基づく判定方法を採用する限り、数的関係性の決定方法、正常な台車からの電気モータ負荷データ値の推定値の推定方法、台車の異常の判定方法も上記の例に限定されず、様々な方法を採用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の方法及びシステムは、商業施設や物流施設で無人搬送車のような牽引車で台車を牽引して運用した場合でも台車の異常を人手によらずに簡単にかつ客観的に判定することができる。従って、本発明の方法及びシステムは、安全性を求められる人手不足の物流業界において極めて有用である。
【符号の説明】
【0029】
1 台車
2 搬送荷物
3 牽引車
4 台車包囲バー
5 計量コンベヤ
6 自動倉庫
7 搬送コンベヤ
8 ロボットハンド
【要約】
【課題】電気モータで走行する牽引車に牽引される、搬送荷物を積載できる台車の異常を簡単に判定することができる方法を提供する。
【解決手段】正常な台車を牽引したときの牽引車の走行速度と台車に積載される搬送荷物の重量と牽引車の電気モータ負荷データ値との数的関係性を予め登録しておき、判定される台車と正常な台車が同じ設計で作られていることを前提条件として、判定される台車を牽引したときの牽引車の走行速度と台車に積載される搬送荷物の重量に基づいて得られた牽引車の電気モータ負荷データ値の取得値と、判定される台車を牽引したときと同じ牽引車の走行速度と台車に積載される搬送荷物の重量の条件に基づいて前記数的関係性から推定される正常な台車を牽引したときの牽引車の電気モータ負荷データ値の推定値とを比較し、取得値が推定値より特定の量以上又は特定の割合以上大きい場合に牽引した台車を異常と判定する。
【選択図】
図6