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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】重水素の製造設備
(51)【国際特許分類】
   C25B 1/01 20210101AFI20240221BHJP
   C25B 15/08 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
C25B1/01 Z
C25B15/08 304
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023185665
(22)【出願日】2023-10-30
【審査請求日】2023-10-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000158312
【氏名又は名称】岩谷産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136098
【弁理士】
【氏名又は名称】北野 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100137246
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勝也
(72)【発明者】
【氏名】真下 峻徳
(72)【発明者】
【氏名】泉 浩一
(72)【発明者】
【氏名】安達 拓
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第116555792(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第112760665(CN,A)
【文献】特表2020-505218(JP,A)
【文献】特開2011-146642(JP,A)
【文献】特開2023-031403(JP,A)
【文献】中国実用新案第213556260(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第101298317(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 1/00-15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重水を収容可能である原料タンクと、
第1配管を介して前記原料タンクと接続される重水素発生部と、
第2配管を介して前記重水素発生部と接続され、重水分の吸着および脱着が可能な除湿装置を含み、前記重水素発生部にて発生した気体を除湿するための第1の除湿部と、
前記第1の除湿部と外部とを接続する第3配管と、
第4配管を介して前記第1の除湿部と接続され、前記第1の除湿部における前記除湿装置から回収された重水を分離する重水分離部と、
を備え、
前記重水分離部と前記第2配管とを接続する第5配管と、
前記重水分離部と前記原料タンクとを接続し、前記第1の除湿部における前記除湿装置から回収された重水を前記原料タンクに戻すための戻しラインである第6配管と、
を含む、
重水素の製造設備。
【請求項2】
前記第1の除湿部は、
重水分の吸着および脱着が可能な複数の前記除湿装置と、
前記第2配管と接続し、前記複数の除湿装置のうち第1の除湿装置が前記重水素発生部と接続する状態と、前記複数の除湿装置のうち第2の除湿装置が前記重水素発生部と接続する状態と、を切り換えることが可能である第1切換部と、
前記第3配管と接続し、前記複数の除湿装置のうち第1の除湿装置が外部と接続する状態と、前記複数の除湿装置のうち第2の除湿装置が外部と接続する状態と、を切り換え可能な第2切換部と、を備え、
前記第2切換部の下流から分岐して前記第2切換部に接続する第7配管を含む、
請求項に記載の重水素の製造設備。
【請求項3】
前記第5配管の途上にポンプが備えられている、
請求項または請求項に記載の重水素の製造設備。
【請求項4】
前記第2配管の途上に、冷却部が備えられ、
前記冷却部は第8配管を介して前記原料タンクに接続されている、
請求項または請求項に記載の重水素の製造設備。
【請求項5】
重水を収容可能である原料タンクと、
第1配管を介して前記原料タンクと接続される重水素発生部と、
を備え、
前記原料タンクには前記原料タンクから気体を排出するための第9配管が接続され、
前記第9配管の下流には、重水分の吸着および脱着が可能な複数の除湿装置を含み、原料タンクから排出される気体を除湿するための第2の除湿部が接続され、
第10配管を介して前記第2の除湿部と接続され、前記第2の除湿部における前記除湿装置から回収された重水を分離する重水分離部と、
前記重水分離部と前記原料タンクとを接続し、前記第2の除湿部における前記除湿装置から回収された重水を前記原料タンクに戻すための戻しラインと、を備える、
重水素の製造設備。
【請求項6】
前記第2の除湿部の下流には前記第2の除湿部と外部とを接続する第11配管が接続され、
前記第2の除湿部は、
前記第9配管と接続し、前記複数の除湿装置のうち第3の除湿装置が前記原料タンクと接続する状態と、前記複数の除湿装置のうち第4の除湿装置が前記原料タンクと接続する状態と、を切り換え可能である第3切換部と、
前記第11配管と接続し、前記複数の除湿装置のうち第3の除湿装置が外部と接続する状態と、前記複数の除湿装置のうち第4の除湿装置が外部と接続する状態と、を切り換え可能な第4切換部と、を備え、
前記第11配管は、前記第4切換部の下流から分岐して前記第4切換部に接続する第12配管を含む、
請求項に記載の重水素の製造設備。
【請求項7】
第2配管を介して前記重水素発生部と接続され、重水分の吸着および脱着が可能な除湿装置を含む第1の除湿部と、
前記第1の除湿部と外部とを接続する第3配管と、
第4配管を介して前記第1の除湿部と接続され、前記第1の除湿部における前記除湿装置から回収された重水を分離する重水分離部と、
を備え、
前記重水分離部と前記第2配管とを接続する第5配管と、
前記重水分離部と前記原料タンクとを接続し、前記第1の除湿部における前記除湿装置から回収された重水を前記原料タンクに戻すための戻しラインである第6配管と、
を含む、
請求項またはに記載の重水素の製造設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、重水素の製造設備に関する。
【背景技術】
【0002】
水の電気分解によって水素ガスを製造するための装置が知られている。例えば特許文献1には、給水タンクと、酸素ガスを発生させる陽極室および水素ガスを発生させる陰極室を備える水電気分解モジュールと、を備える装置が開示されている。特許文献1の装置は、電気分解に必要な量よりも過剰な水を水電解モジュールの陽極側に供給し、電気分解がされずに残った水と酸素ガスとを含む気液混合状態の流体を水電解モジュールから排出させるとともに、流体に含まれている水を再び水電解モジュールの陽極側に供給するように構成されている。
【0003】
特許文献2には、電解槽と除湿装置とを含む水素発生装置が開示されている。特許文献2の水素発生装置は、水素発生装置から取り出される水分を含む水素ガスを除湿装置へ供給し、除湿することにより得られる乾燥水素を製品ガスとする。特許文献2の装置は、除湿装置として吸着カラムを備える。吸着カラムの再生工程において吸着カラムから排出される水分と水素ガスとを含む湿潤な水素ガスは、再び水素ガスラインに戻される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-183556号公報
【文献】特開2020-189282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水の電気分解によって水素を製造する場合、製品である水素ガスの回収効率を上げることが望まれていた。一方で、原料である水は入手容易かつ安価であることから、電気分解装置から未反応原料として排出される水を回収する検討は進んでいなかった。しかしながら、重水の電気分解によって重水素を製造する場合、原料として用いられる重水は供給量に限りがあり高価である。このため、製品である重水素ガスの回収効率を向上させるだけでなく、原料のロスを削減し、重水を余すことなく利用することが望ましい。
【0006】
この現状に鑑み、本開示の目的の一つは、重水の利用効率が高く、かつ、高純度の重水素を製造できる重水素の製造設備を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示にかかる重水素の製造設備は、重水を収容可能である原料タンクと、第1配管を介して前記原料タンクと接続される重水素発生部と、前記原料タンクから排出される気体、または、前記重水素発生部にて発生した気体を除湿するための除湿部と、を備える。前記除湿部には、前記除湿部において回収された重水を前記原料タンクに戻すための戻しラインが接続されている。
【0008】
本開示にかかる重水素の製造設備は、重水を収容可能である原料タンクと、第1配管を介して原料タンクと接続される重水素発生部と、第2配管を介して前記重水素発生部と接続される第1の除湿部と、前記第1の除湿部と外部とを接続する第3配管と、第4配管を介して前記第1の除湿部と接続される重水分離部と、を備える。前記製造設備は、前記重水分離部と前記第2配管とを接続する第5配管と、前記重水分離部と前記原料タンクとを接続する第6配管と、を含む。
【0009】
本開示にかかる重水素の製造設備は、重水を収容可能である原料タンクと、第1配管を介して原料タンクと接続される重水素発生部と、を備える。前記原料タンクには前記原料タンクから気体を排出する第9配管が接続される。前記第9配管の下流には、重水分の吸着および脱着が可能な複数の除湿装置を含む第2の除湿部が接続される。前記製造設備は、前記第9配管から分岐し、前記原料タンクに接続する第10配管を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示にかかる重水素の製造設備によれば、重水の利用効率が高く、かつ、高純度の重水素を製造できる重水素の製造設備が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本開示にかかる実施の形態である重水素の製造設備の構成を示す説明図である。
図2図2は、本開示にかかる実施の形態である重水素の製造設備の構成を示す説明図である。
図3図3は、本開示にかかる実施の形態である重水素の製造設備の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施の形態の概要]
初めに、本開示にかかる重水素の製造設備の概要を列挙して説明する。
本開示にかかる重水素の製造設備は、重水を収容可能である原料タンクと、第1配管を介して前記原料タンクと接続される重水素発生部と、前記原料タンクから排出される気体、または、前記重水素発生部にて発生した気体を除湿するための除湿部と、を備える。前記除湿部には、前記除湿部において回収された重水を前記原料タンクに戻すための戻しラインが接続されている。
【0013】
重水素の利用拡大に伴って重水素(D)ガスの安定供給が望まれている。重水素を製造するための方法として、重水(DO)を電気分解し、重水素(D)ガスを得る方法がある。重水の電気分解は、大略的には軽水(HO)の電気分解と同様の設備や条件で実施できるが、原料である重水の価格が軽水の価格よりも遥かに高額であること等から、重水の利用効率を可及的に向上させることが望まれる。また同時に、半導体製造等に用いられる重水素ガスは高純度であることが求められる。
【0014】
重水素の製造設備に関する検討が進められ、従来は未利用のまま装置外に排出されていた重水を回収して原料タンクに戻すことが検討された。そして、具体的に回収すべき重水分として、次の2つが見出された。第1に、生成した重水素ガス中に重水分として含有され、除湿装置において吸着除去される重水分である。第2に、原料タンク中の気相部に流通された窒素ガスや酸素ガス等に含まれる飽和水蒸気としての重水分である。
【0015】
本開示にかかる重水素(D)の製造設備は、原料タンクの気相部に流通された気体、または、重水素発生部にて発生した気体を除湿するための除湿部と、を備え、前記除湿部には、前記除湿部において回収された重水を前記原料タンクに戻すための戻しラインが接続されている。戻しラインを通じて重水が原料タンクに戻され、重水素の原料として再度利用される。この構成によれば、従来は未利用のまま装置外に排出されていた重水分を回収し、原料として利用できる。このため、重水の利用効率を向上させることができる。また、原料タンクと、重水素発生部と、除湿部と、戻しラインとを一連の配管で接続することによって、製造設備の閉鎖系内で重水分を回収し、原料タンクに戻すことができる。このため、系外からの不純物の混入が防止され、高純度の重水素ガスを製造できる。
【0016】
前記重水素の製造設備において、前記除湿部は重水分の吸着および脱着が可能な除湿着装置を含んでよい。重水分の吸脱着による除湿装置は、重水分の脱着によって重水分を容易に回収できるとともに、脱着によって除湿装置を再生させて再度利用することができる。また、重水分の吸脱着による除湿装置は公知の構成であり、公知の構成を利用して効率的に本開示にかかる効果を得ることができる。
【0017】
本開示にかかる重水素の製造設備は、重水を収容可能である原料タンクと、第1配管を介して前記原料タンクと接続される重水素発生部と、第2配管を介して前記重水素発生部と接続される第1の除湿部と、前記第1の除湿部と外部とを接続する第3配管と、第4配管を介して前記第1の除湿部と接続される重水分離部と、を備える。前記製造設備は、前記重水分離部と前記第2配管とを接続する第5配管と、前記重水分離部と前記原料タンクとを接続する第6配管と、を含む。
【0018】
上記製造設備によれば、除湿部と重水分離部が配管(第4配管)を介して接続されている。また、重水分離部で分離された重水素ガスは、配管(第5配管)を介して除湿部の上流に戻され、重水分離部で分離された重水は配管(第6配管)を通じて原料タンクに戻される。これらの構成によれば、除湿部から排出される重水および重水素の混合流体からそれぞれを分離し、重水および重水素を再度利用することができる。
【0019】
前記重水素の製造設備において、前記第1の除湿部は、重水分の吸着および脱着が可能な複数の除湿装置と、第1切換部と、第2切換部と、を備えてよい。前記第1切換部は、前記第2配管と接続し、前記複数の除湿装置のうち第1の除湿装置が前記重水素発生部と接続する状態と、前記複数の除湿装置のうち第2の除湿装置が前記重水素発生部と接続する状態と、を切り換えることが可能である。前記第2切換部は、前記第3配管と接続し、前記複数の除湿装置のうち第1の除湿装置が外部と接続する状態と、前記複数の除湿装置のうち第2の除湿装置が外部と接続する状態と、を切り換え可能である。前記第1の除湿部は、前記第2切換部の下流から分岐して前記第2切換部に接続する第7配管を含んでよい。
【0020】
この構成によれば、第1の除湿部において、第1および第2の除湿装置のうち、一方の除湿装置で吸着(除湿)を行いながら、同時に他方の除湿装置で脱着(再生)を行うことができる。このため、本開示にかかる効果を発揮しつつ連続的に重水素の製造を行うことが可能で、製造効率にも優れる。
【0021】
前記重水素の製造設備において、前記第5配管の途上にポンプが備えられていてもよい。この構成によれば、除湿部の脱着によって回収され、重水分離部で分離された重水素ガスを加圧して第2配管に合流させることが可能であり、より効率良く重水素の製造を行うことができる。
【0022】
前記重水素の製造設備において、前記第2配管の途上に冷却部が備えられ、前記冷却部は第8配管を介して前記原料タンクに接続されていてもよい。この構成によれば、除湿部に至る前に、第2配管を流通する湿潤な重水素ガスから重水分の一部を回収し、原料タンクに戻すことができる。また、除湿部において吸着される重水分を低減することができる。これらの構成によって、より効率良く重水素の製造を行うことができる。
【0023】
本開示にかかる重水素の製造設備は、重水を収容可能である原料タンクと、第1配管を介して前記原料タンクと接続される重水素発生部と、を備える。前記原料タンクには前記原料タンクから気体を排出する第9配管が接続される。前記第9配管の下流には、重水分の吸着および脱着が可能な複数の除湿装置を含む第2の除湿部が接続される。前記製造設備は、前記第2の除湿部と前記原料タンクとを接続する第10配管を備える。
【0024】
上記製造設備によれば、原料タンクから排出される気体が除湿装置を通過する。この構成によれば、原料タンク中の気体に含有される飽和水蒸気分の重水素が除湿装置で回収されうる。また、除湿装置で回収された重水分は配管(第10配管)を通じて原料タンクに戻される。すなわち、原料タンク中の気体に含有される飽和水蒸気分を回収して、重水素の原料として利用できる。また、閉鎖系で重水分の回収および原料タンクへの戻しを行うことが可能であり、不純物の混入を回避して高純度の重水素を製造できる。
【0025】
前記重水素の製造設備において、前記第2の除湿部の下流には前記第2の除湿部と外部とを接続する第11配管が接続されてよい。前記第2の除湿部は、第3切換部と、第4切換部と、を備えてよい。前記第3切換部は、前記第9配管と接続し、前記複数の除湿装置のうち第3の除湿装置が前記原料タンクと接続する状態と、前記複数の除湿装置のうち第4の除湿装置が前記原料タンクと接続する状態と、を切り換える可能である。前記第4切換部は、前記第11配管と接続し、前記複数の除湿装置のうち第3の除湿装置が外部と接続する状態と、前記複数の除湿装置のうち第4の除湿装置が外部と接続する状態と、を切り換え可能である。前記第11配管は、前記第4切換部の下流から分岐して前記第4切換部に接続する第12配管を含んでよい。
【0026】
これらの構成によれば、第3および第4の除湿装置のうち、一方の除湿装置で吸着(除湿)を行いながら、同時に他方の除湿装置で脱着(再生)を行うことができる。このため、本開示にかかる効果を発揮しつつ連続的に重水の製造を行うことが可能で、製造効率にも優れる。また、装置外部から気体を導入することなく、除湿装置の再生を行うことが可能である。このため、不純物の混入を回避して高純度の重水素を製造する効果がより確実に得られる。
【0027】
[実施の形態の具体例]
次に、本開示にかかる重水素の製造設備の具体的な実施の形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照符号を付し、その説明は繰り返さない。なお、本明細書では、重水素の製造設備において、原料タンクに近い側を「上流側」、製品ガスの取り出し口や設備外部への排出口に近い側を「下流側」と称する。ただし、設備の運用において、設備の各部分を流通する流体の流通方向はこれに制限されず、工程に応じて流体の流通方向が切り換えられる。
【0028】
(重水素の製造設備)
(実施の形態1)
図1は、本開示にかかる実施の形態である重水素の製造設備1の構成を示す説明図である。図1を参照して、重水素の製造設備1は、液体状態の重水(DO)を収容する原料タンク10と、重水素発生部20と、第1の除湿部としての除湿部30と、戻しライン40と、を備える。製造設備1は、重水素発生部20において生成する重水素ガスに混入する重水分を回収して、原料タンク10に戻すことができる。また、製造設備1は、重水分の回収に使用される重水素ガスも回収できる。
【0029】
原料タンク10と重水素発生部20とは、第1配管としての配管71を介して接続されている。重水素発生部20は電気分解装置を含む。重水素発生部20では、原料である重水が電気分解され、重水素(D)と酸素とが発生する。重水素発生部20で発生した重水素は、重水素ガスと重水素発生部を通過した未反応の重水とを含む湿潤な重水素ガス(wet D)として、第2配管としての配管72内を流通する。配管72は、重水素発生部20と除湿部30との間を接続する。除湿部30において湿潤な重水素ガスから重水素が取り除かれる。なお、重水素発生部20には図示していないラインが接続され、重水素発生部20で発生する酸素は当該ラインを介して取り出されうる。
【0030】
除湿部30は、重水分の吸着および脱着が可能である除湿装置31,32を含む。除湿装置31,32は具体的には、ゼオライト、シリカゲル、アルミナ等の吸着剤が充填されたカラムであってよい。除湿装置31と除湿装置32は互いに並列に配置されている。互いに並列に配置されているとは、除湿装置32を経由することなく除湿装置31を通過する管路が構成され、かつ、除湿装置31を経由することなく除湿装置32を通過する管路が構成されうることを意味している。
【0031】
除湿部30は、配管72に接続する第1切換部51を含む。第1切換部51は4つの切換弁を含む。第1切換部51の切換弁の開閉によって、第1の除湿装置としての除湿装置31が配管72を介して重水素発生部20と接続する状態と、第2の除湿装置としての除湿装置32が配管72を介して重水素発生部20と接続する状態と、を切り換えることができる。
【0032】
除湿部30の下流側に、第3配管としての配管73が接続されている。除湿部30において除湿された重水素ガス(製品ガス)が、配管73を通じて製造装置の外部に取り出される。除湿部30は、配管73に接続する第2切換部52を含む。第2切換部52は4つの切換弁を含む。第2切換部52の切換弁の開閉によって、除湿装置31が外部と接続する状態と、除湿装置32が外部と接続する状態と、を切り換えることができる。配管73は第2切換部52の下流から分岐して第2切換部52に接続する第7配管としての配管77を含む。
【0033】
除湿部30が除湿装置31,32と、第1切換部51および第2切換部52とを備えることによって、一方の除湿装置(例えば除湿装置31)で除湿を行いながら、同時に他方の除湿装置(例えば除湿装置32)の再生を実施できる。除湿および再生のために、図示しない温度調節装置が備えられる。なお、実施の形態の例として2つの除湿装置31,32を含む例を説明したが、本開示にかかる重水素の製造設備の除湿部は例えば3、4、6等のさらに多くの除湿装置を備える構成であってもよい。除湿および再生の工程については後述される。
【0034】
除湿部30は、第4配管としての配管74を介して重水分離部50と接続されている。配管74は第1切換部51に接続している。除湿装置31,32の再生を行う際には、除湿装置31,32から脱着した重水分を含む重水素ガスが、配管74を通じて取り出される。重水分離部50は、第5配管としての配管75を介して配管72に接続している。また、重水分離部50は、第6配管としての配管76を介して原料タンク10に接続している。重水分離部50は、冷却凝縮装置57と、気液分離装置58と、を含む。冷却凝縮装置57は具体的には例えば、熱交換器であってよい。気液分離装置58は具体的には例えばセパレータを含む。セパレータとしては具体的には例えば、遠心分離式の気液分離機、フロート式の気液分離機を含んでよい。除湿装置31,32の再生は例えば250℃程度の高温で行われるため、脱着された重水分は気体ないし重水蒸気となり、再生用ガスである重水素ガスと混合気体となって排出される。冷却凝縮装置57において前記混合気体が冷却され、混合気体に含まれる重水分が凝縮し、液体の重水となる。次いで、気液分離装置58で、重水と、重水素ガスとが分離される。気液分離装置58で分離された気体である重水素ガスは、配管75を通って配管72に供給される。気液分離装置58で分離された液体である重水は、配管76を通って原料タンク10に戻される。これらの構成によって、除湿装置から脱着された重水と、再生工程に使用される重水素ガスの両方を回収し、再利用できる。
【0035】
配管75の途上にはポンプ91が設けられ、重水素ガスを昇圧して配管72に合流させることができる。配管72の途上には逆止弁が備えられ、重水素ガスが流れる方向を規制している。
【0036】
(実施の形態2)
図2は、本開示にかかる実施の形態である重水素の製造設備100の構成を示す説明図である。図2を参照して、重水素の製造設備100は、液体の重水を収容する原料タンク110と、重水素発生部120と、第2の除湿部としての除湿部160と、戻しラインである配管140と、を備える。製造設備100において、原料タンク110には重水が収容される。また、原料タンク110中の気相部は、原料である重水への軽水その他の不純物の混入を回避するために、例えば窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスや酸素ガス等でパージされる(以下、原料タンクの気相部に流通されたガスを、タンク循環ガスと称することがある)。製造設備100は、原料タンク110に流通されたタンク循環ガスに含まれる飽和水蒸気分の重水蒸気を回収し、重水として原料タンク110に戻すことができる。
【0037】
製造設備100は、第1配管としての配管171を介して原料タンク110と接続された重水素発生部120を備える。重水素発生部120は例えば電気分解装置を含む。重水素発生部120では、重水が電気分解され、重水素と酸素とが発生する。発生した重水素は配管(図示省略)を通じて取り出される。原料タンク110にはまた、第9配管としての配管179が接続されている。配管179は、原料タンク110の気相部から気体を取り出せるように、原料タンク110の上部(鉛直方向における上部)に接続することが望ましい。配管179の下流側に、除湿部160が接続されている。配管179には飽和水蒸気分の重水蒸気を含むタンク循環ガスが流通される。配管179を通じて原料タンク110から取り出されたタンク循環ガスは、除湿部160で除湿される。
【0038】
除湿部160の下流側に、第11配管としての配管181が接続されている。除湿部160において除湿されたタンク循環ガスは、配管181を通じて製造装置の外部に排出される。
【0039】
除湿部160は、重水分の吸着および脱着が可能である第3の除湿装置としての除湿装置163と、第4の除湿装置としての除湿装置164とを含む。除湿装置163,164は具体的には、ゼオライト、シリカゲル、アルミナ等の吸着剤が充填されたカラムであってよい。除湿装置163と除湿装置164とは、互いに並列に配置されている。除湿部160はまた、第3切換部153と、第4切換部154を、と含む。第3切換部153は配管179と接続している。第3切換部153は4つの切換弁を含む。第3切換部153の切換弁の開閉によって、除湿装置163が配管179を介して原料タンク110と接続する状態と、除湿装置164が配管179を介して原料タンク110と接続する状態と、を切り換えることができる。
【0040】
第4切換部154は配管181と接続している。第4切換部154は4つの切換弁を含む。第4切換部154の切換弁の開閉によって、除湿装置163が外部と接続する状態と、除湿装置164が外部と接続する状態と、を切り換えることができる。また、配管181は第4切換部154の下流から分岐して第4切換部154に接続する第12配管としての配管182を含む。
【0041】
除湿部160は、第10配管としての配管180を介して、重水分離部150と接続されている。配管180は除湿部160の第3切換部153に接続している。除湿装置163,164の再生を行う際には、除湿装置163,164から脱着した重水分を含むタンク循環ガスが配管180を通じて重水分離部150に送られる。重水分離部150は、戻しラインである配管140を介して原料タンク110に接続している。重水分離部150は、冷却凝縮装置157と、気液分離装置158と、を含む。除湿装置163,164の再生は例えば250℃程度の高温で行われるため、除湿装置から脱着された重水分は気体ないし重水蒸気となり、再生用ガスとして用いられたタンク循環ガスと混合気体となって排出される。例えば熱交換器である冷却凝縮装置151において前記混合気体が冷却されて、混合気体に含まれる重水分は液体の重水となる。気液分離装置158で、重水と、タンク循環ガスとが分離される。気液分離装置158で分離されたタンク循環ガスは、排出ラインである配管185を通じて設備外部に放出される。また、気液分離装置158で分離された重水は、配管140を通って原料タンク110に戻される。これらの構成によって、タンク循環ガスに含まれる飽和水蒸気分として原料タンクから排出された重水分を、原料として再利用できる。
【0042】
(実施の形態3)
図3は、本開示にかかる実施の形態である重水素の製造設備200の構成を示す説明図である。図3を参照して、重水素の製造設備200は、原料タンク210と、電気分解装置を含む重水素発生部220と、重水素発生部220から取り出される湿潤な重水素ガスを除湿するための第1の除湿部230と、原料タンク210から取り出されるタンク循環ガス中の重水分を除湿するための第2の除湿部260と、を備える。製造設備200の構成のうち、前述の製造設備1および製造設備100と共通する構成については一部説明を省略する。
【0043】
(重水素ライン)
原料タンク210と重水素発生部220は、第1配管としての配管271で接続されている。重水素発生部220と除湿部230は、第2配管としての配管272を介して接続されている。第1の除湿部230は、第4配管としての配管274を介して重水分離部250と接続されている。重水分離部250は、第5配管としての配管275を介して第2配管としての配管272に接続され、また、第6配管としての配管276を介して原料タンク210と接続されている。これらの構成によって、除湿部230から回収される重水分が原料タンク210へ戻されることができるとともに、除湿部230の再生に利用された重水素ガスも回収される。
【0044】
配管271の途上にはポンプ292が備えられ、原料である重水を加圧して重水素発生部220に送り込むことができる。重水素発生部220には、重水素ガスの取り出しラインである配管272と、重水素発生部220で発生した酸素の取り出しラインである配管283とが接続されている。配管283は原料タンク210に接続する。
【0045】
配管272の途上には逆止弁C1および冷却部255が備えられている。冷却部255は、第8配管としての配管278を介して原料タンク210に接続されている。配管272には、未反応の原料である重水分を含む気液混合流体が流通する。この湿潤な重水素ガスが冷却部255で冷却され、冷却部255において凝縮した重水は配管278を通じて原料タンク210に回収される。
【0046】
冷却部255で冷却されることによって重水分の一部が除かれた湿潤重水素ガス(Wet D)が、配管272を通じて除湿部230に送られる。除湿部230は、第1の除湿装置としての除湿装置231と、第2の除湿装置としての除湿装置232と、切換弁V1~V4を含む第1切換部251と、切換弁V5~V8を含む第2切換部252とを含む。除湿装置231、232は互いに並列に配置されている。第1切換部251は、除湿装置231、232の上流側に配置されている。第1切換部251は配管272と接続する。第1切換部251は配管274と接続する。第2切換部252は、除湿装置231、232の下流側に配置されている。第2切換部252は、製品ガスである乾燥重水素ガス(Dry D)の取り出しラインである配管273と接続する。除湿部230は、第2切換部252の下流から分岐して第2切換部252に接続する第7配管としての配管277を含む。配管277の途上には、流量制御弁である弁V10と、流量計FGと、切換弁V9とが備えられる。
【0047】
重水分離部250は、冷却凝縮装置257と気液分離装置258とを含む。冷却凝縮装置257は、具体的には熱交換器であってよい。重水分離部250の構成は製造設備1における重水分離部50と同様である。重水分離部250において分離された重水素ガスは、配管275を通じて配管272に送られる。配管275には、ポンプ291および逆止弁C2が設けられている。配管272には圧力計PGが備えられる。重水分離部250において分離された重水は、配管276を通じて原料タンク210に回収される。
【0048】
(重水素発生部からの重水および重水素の回収再利用方法)
上記の設備において、重水および重水素を回収する方法を説明する。
原料タンク210から原料である重水を重水素発生部220に供給する。重水は、ポンプ292によって所定の圧力(例えば、0.8MPa程度)に調整される。重水素発生部220において重水を電気分解することによって、重水素と酸素とを発生させる。重水発生部は適切な電気分解装置が選択されうるが、具体的には例えば固体高分子型水電解セルを含む。重水の電気分解によって生じた重水素は、重水素発生部220の固体高分子膜を透過した未反応の重水とともに、気液混合重水の状態で冷却部255へ供給される。冷却部255は気液分離装置であり、具体的には例えば熱交換器である。冷却部255には冷却水が供給され、前述の気液混合水を冷却する。冷却水の温度は例えば5℃~30℃であってよく、5℃~25℃が好ましく、5℃~10℃がより好ましい。冷却部255において気液混合重水が冷却され、凝縮した重水は配管278を通じて原料タンク210に回収される。
【0049】
冷却部255において過剰分の重水が除去された湿潤重水素ガス(Wet D)は、配管272を通じて除湿部230に供給される。除湿部230における除湿装置231,232は、具体的には例えば吸着剤が収容された除湿筒ユニットを含む。吸着剤として、ゼオライト、シリカゲル、アルミナなど水分を吸着する多孔性材料が用いられる。除湿装置231、232は、一方が湿潤重水素ガスの乾燥に用いられ、同時に他方が再生される。除湿装置231、232は所定の基準(例えば、一定時間ごと、一定流通量ごと)に従って、乾燥と再生を切り替えて使用される。
【0050】
ここでは、除湿装置231を乾燥用、除湿装置232を再生用とする場合について説明する。第1切換部251の切換弁V1および第2切換部252の切換弁V7を開とすることで、配管272、除湿装置231、配管273が連通する。この状態で、除湿装置231は湿潤重水素ガスの乾燥用として用いられる。除湿装置231を通過した湿潤重水素ガスは露点-80℃程度まで除湿され、配管273を通じて製品ガスである乾燥重水素ガス(Dry D)として装置外に取り出される。また、流量制御弁V10、切換弁V9、V6を開とすることで、配管273を流通する乾燥重水素ガスの一部が除湿装置232に導入され、除湿装置232の再生に利用される。流量制御弁V10は例えばニードルバルブなどであってよい。流量制御弁V10の開度を調整し、再生工程に利用する乾燥重水素ガスの量を調整する。再生工程に利用する乾燥重水素ガスの量は、配管273を流通する乾燥重水素ガスの10%以下であることが好ましく、3%~5%であることがより好ましい。再生工程においては、除湿装置232をヒーターによって250℃程度まで加温することが好ましい。切換弁V4を開とすることで除湿装置232と配管274とが連通し、除湿装置232の除湿に用いられたガスは、配管274を通じて重水分離部250に導入される。
【0051】
再生工程において、除湿装置232の吸着剤に吸着していた重水が脱着し、除湿装置232に導入された乾燥重水素ガスは、重水分を含む重水素ガスとなる。この重水分を含む重水素ガスは配管274を通じて重水分離部250に導入され、重水分離部250の冷却凝縮装置257を通過する。冷却凝縮装置257は例えば水や不凍液等の冷媒で冷却される。冷却温度は、必要な性能が得られる限り制限されないが、重水の凝固点である4℃以上であることが好ましく、10℃以下であってよい。冷却凝縮装置257において、重水分を含む重水素ガスに含まれる重水が凝縮することによって、重水と、冷却温度(例えば10℃)における飽和水蒸気分の重水分を含む重水素ガスと、が得られる。気液分離装置258において、重水と、重水素ガスが分離され、重水は配管276を通じて原料タンク210に回収される。重水素ガスは、配管275を通じて、ポンプ291で所定の圧力(例えば0.8MPa)に加圧された上で配管272に送り込まれる。
【0052】
上述の設備および方法によれば、重水素ガスの全量を大気放出することなく製品として使用することが可能となり、重水蒸気は製品重水素に含まれる露点-80℃程度分のみのロスとなる。また、上記の設備によれば、重水素および重水素ガスの回収および再利用を閉鎖系で実施することが可能であり、装置外からの不純物の混入が回避され、高純度の重水素ガスを安定に製造できる。
【0053】
(不活性ガス、酸素ライン)
原料タンク210には、原料タンク210の気相部に流通される不活性ガス(例えば窒素ガス)を導入する配管284と、配管283とが接続されている。配管284は流量計FGを備え、原料タンク210内の重水量に応じて適切な量の窒素ガスが供給される。配管283を通じて、重水素発生部220で発生した酸素ガスと未反応の重水との気液混合物が原料タンク210に送られる。
【0054】
原料タンク210には、第9配管としての配管279が接続され、配管279を通じて原料タンク210内の気相部に流通されたガスが取り出される。原料タンク210を通過したガスは、原料タンクの温度に応じた飽和水蒸気分の重水分を含んでいる。配管279は、第2の除湿部としての除湿部260に接続している。第2の除湿部260は、第10配管としての配管280を介して重水分離部350と接続されている。重水分離部350は、戻しラインとしての配管240を介して、原料タンク210と接続されている。また、重水分離部350は、配管285を介して配管279に接続されている。配管285の途上にはポンプ293および逆止弁C4が備えられている。これらの構成によって、除湿部260の再生工程で回収される重水分が原料タンク210へ戻されることができる。また、除湿部260の再生に利用されたガスは再び除湿部260に供給される。
【0055】
除湿部260は、並列に配置された2つの除湿装置263、264と、第3切換部253と、第4切換部254とを含む。第3切換部253は除湿装置263、264の上流側に配置され、4つの切換弁V1’~V4’を含む。第4切換部254は除湿装置263、264の下流側に配置され、4つの切換弁V5’~V8’を含む。除湿部260は、第4切換部254の下流から分岐して第4切換部254に接続する、第12配管としての配管282を含む。配管282の途上には、流量制御弁である弁V10’と、流量計FGと、切換弁V9’とが備えられる。除湿部260の構成は除湿部160、除湿部230とおおむね同様であり、重複する説明は繰り返さない。除湿部260は、第11配管としての装置外部に接続する配管である配管281と接続する。配管281を通じて、不活性ガスや酸素ガスが設備外部に放出される。
【0056】
重水分離部350は、冷却凝縮装置357と、気液分離装置358とを含む。冷却凝縮装置357は、具体的には熱交換器であってよい。重水分離部350の構成は重水分離部150、250とおおむね同様であり、重複する説明は繰り返さない。重水分離部350において分離された重水は配管240を通じて原料タンク210に回収される。
【0057】
(原料タンク気相部からの重水の回収再利用方法)
上記の設備において、重水を回収する方法を説明する。
原料タンク210の気相部から配管279を通じて取り出された気体は、除湿部260で除湿された上で配管281を通じて設備外に放出される。除湿部260に供給される気体は、不活性ガス(例えば窒素ガス)と酸素ガスを含むとともに、飽和水蒸気分の重水蒸気を含む。重水分は除湿部260の除湿装置263または除湿装置264に吸着され、露点-80℃程度まで除湿された上で配管281を通じて放出される。除湿装置263,264は一方がタンク気相部ガスの乾燥に用いられ、同時に他方が再生される。除湿装置263、264は所定の基準(例えば、一定時間ごと、一定流通量ごと)に従って、乾燥と再生を切り替えて使用される。
【0058】
除湿部260におけるガス乾燥および除湿装置の再生は、除湿部230において実施されるものと同様に行うことができ、重複する説明は繰り返さない。
除湿装置の再生には、配管282および第4切換部254を通じて除湿部260に供給される、除湿済みのタンク循環ガスを乾燥用ガスとして用いる。再生工程において、除湿装置263(または除湿装置264)の吸着剤に吸着していた重水が脱着し、除湿装置263(または除湿装置264)に導入された乾燥用ガスは重水分を含むガスとなる。この重水分を含むガスは、配管280を通じて重水分離部350に導入され、重水分離部350の冷却凝縮装置357を通過する。冷却凝縮装置357において、重水分を含むガスに含まれる重水が凝縮することによって、重水と、冷却温度(例えば10℃)における飽和水蒸気分の重水分を含むガスとが得られる。気液分離装置358において、重水と、ガスとが分離され、重水は配管240を通じて原料タンク210に回収される。ガスは、配管285を通じて、ポンプ293で所定の圧力(例えば0.1MPa)に加圧された上で配管279に送り込まれ、再び除湿部260で除湿される。
【0059】
上述の設備および方法によれば、原料タンクの気相部に存在する気体に飽和水蒸気分として混入する重水を回収することが可能となり、ロスされる重水分は排気される乾燥ガス中に含まれる露点-80℃程度分のみとなる。また、上記の設備によれば、重水素の回収および再利用を閉鎖系で実施することが可能であり、装置外からの不純物の混入が回避され、高純度の重水素ガスを安定に製造できる。
【0060】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0061】
1、100、200 製造設備、10、110、210 原料タンク、20、120、220 重水素発生部、30、130、230、160、260 除湿部、31、32、163、164、231,232、263、264 除湿装置、40 戻しライン、50、150、250、350 重水分離部、51、251 第1切換部、52、252 第2切換部、57、157、257、357 冷却凝縮装置、58、158、258、358 気液分離装置、71、72、73、74、75、76、77、79、140、171、179、180、181、182、185、240、271、272、273、274、275、276、278、279、280、281、282、283、284、285 配管、91、291、292、293 ポンプ、153、253 第3切換部、154、254 第4切換部、255 冷却部。
【要約】
【課題】重水の利用効率が高く、かつ、高純度の重水素を製造できる重水素の製造設備を提供すること。
【解決手段】重水を収容可能である原料タンクと、第1配管を介して原料タンクと接続される重水素発生部と、前記原料タンクから排出される気体、または、前記重水素発生部にて発生した気体を除湿するための除湿部と、を備え、前記除湿部には、前記除湿部において回収された重水を前記原料タンクに戻すための戻しラインが接続されている、重水素の製造設備である。
【選択図】図3
図1
図2
図3