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特許7441376研磨パッド用ドレッサ、ドレス方法、研磨方法、及びワークの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】研磨パッド用ドレッサ、ドレス方法、研磨方法、及びワークの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 53/12 20060101AFI20240221BHJP
   B24B 53/017 20120101ALI20240221BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
B24B53/12 Z
B24B53/017 A
H01L21/304 622M
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023510466
(86)(22)【出願日】2022-11-30
(86)【国際出願番号】 JP2022044300
(87)【国際公開番号】W WO2023132165
(87)【国際公開日】2023-07-13
【審査請求日】2023-04-04
(31)【優先権主張番号】P 2022000415
(32)【優先日】2022-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004293
【氏名又は名称】株式会社ノリタケカンパニーリミテド
(74)【代理人】
【識別番号】100095577
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 富雅
(72)【発明者】
【氏名】岸本 正俊
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 毅裕
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-346927(JP,A)
【文献】特開2003-175468(JP,A)
【文献】特開2007-152511(JP,A)
【文献】特開2020-157421(JP,A)
【文献】特開2020-104234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B53/00-57/04
H01L21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨用のパッド表面のドレッサであって、
前記パッド表面に対向する直径DCDの円形のドレス面と該ドレス面に配置されるペレットとを備え、
前記ペレットは、前記ドレス面の中心を共有して、直径PCDn、但しn=1~5、の各円周領域に配置され、該ペレットは周方向に均等に配置され、
前記各円周領域に配置される前記ペレットの面積率が、下記表1の1型、2型若しくは3型の何れか一つである、ドレッサ。
【表1】
【請求項2】
前記ペレットの面積率が前記1型である、請求項1に記載のドレッサ。
【請求項3】
研磨用のパッド表面のドレッサであって、
前記パッド表面に対向するドレス面と該ドレス面に配置されるペレットとを備え、ここに、パッド表面の径は300~1500mmであり、該パッド表面の中心を軸として前記パッド表面の回転数は5~100rpmであり、前記ドレス面の径は前記パッド表面の径の1/2であり、前記ドレス面の軸は前記パッドの軸とその周縁との中間に位置して、該ドレス面は前記パッド表面の回転に連れ回りされる、
前記パッド表面の中心を軸として前記パッド表面を回転させながら、かつ前記ドレス面自体をその中心を軸に回転させたとき、
前記パッド表面の中心から放射方向の仮想線を通過する前記ペレットの軌跡密度のバラツキが、2000以下となるように前記ペレットが配置されているドレッサ。
【請求項4】
前記バラツキが1500以下となる請求項3に記載のドレッサ。
【請求項5】
研磨用のパッド表面のドレス方法であって
前記パッド表面に対向するドレス面と該ドレス面に配置されるペレットとを備えるドレッサによる前記パッド表面をドレスするドレス方法であって、ここに、パッド表面の径は300~1500mmであり、該パッド表面の中心を軸として前記パッド表面の回転数は5~100rpmであり、前記ドレス面の径は前記パッド表面の径の1/2であり、前記ドレス面の軸は前記パッドの軸とその周縁との中間に位置して、該ドレス面は前記パッド表面の回転に連れ回りされる、
前記パッド表面の中心を軸として前記パッド表面を回転させながら、かつ前記ドレス面自体をその中心を軸に回転させたとき、前記パッド表面の中心から放射方向の仮想線を通過する前記ペレットの軌跡密度のバラツキが、2000以下となるように前記ペレットが配置されている、ドレス方法。
【請求項6】
前記軌跡密度の分布の前記仮想線に沿った近似曲線が凸型である、請求項5に記載のドレス方法。
【請求項7】
前記軌跡密度の分布の前記仮想線に沿った近似曲線の最大値が前記仮想線の中央付近に存在する、請求項5に記載のドレス方法。
【請求項8】
研磨材を内包する研磨用のパッドでワークを研磨する研磨方法であって、
請求項1に記載のドレッサを準備するステップと、
前記ドレッサのドレス面を前記パッド表面へ押圧し、前記ドレッサ及び/又は前記パッドを回転させるドレッシングステップと、
前記パッドはLHA研磨パッドであり、
ドレッシングされた前記パッドでワークを研磨する研磨ステップと、を含む研磨方法であって、
前記ドレッシングステップを、同一のドレッサを用いて、ドレッシング作業を30分以上実行可能な、研磨方法。
【請求項9】
前記ドレッシングステップにおいて、前記パッドに対し前記ドレッサを連れ回りとする、請求項8に記載の研磨方法。
【請求項10】
ワークの製造方法であって、
請求項1に記載のドレッサを準備するステップと、
前記ドレッサのドレス面を前記パッド表面へ押圧し、前記ドレッサ及び/又は前記パッドを回転させるドレッシングステップと、
ドレッシングされた前記パッドで前記ワークを研磨する研磨ステップと、を備え、
前記パッドはLHA研磨パッドであり、該パッドとして、同一のドレッサを用いて行なわれた前記ドレッシングステップとして30分以上実行可能な、
ワークの製造方法。
【請求項11】
前記ドレッシングステップにおいて、前記パッドに対し前記ドレッサを連れ回りとする、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
研磨用のパッド表面のドレッサであって、
前記パッド表面に対向する直径DCDの円形のドレス面と該ドレス面に配置されるペレットとを備え、
前記ペレットは、前記ドレス面の中心を共有して、直径PCDn、但しn=1~5、の各円周領域に配置され、
ここに、パッド表面の径を920mmとし、該パッド表面の中心を軸として前記パッド表面の回転数は35rpmとし、前記ドレス面の回転は前記パッドの回転に連れ回されるものとし、
前記ペレットが下記表2の1~3型の条件を満足するとき、
【表2】
前記パッド表面の中心から放射方向の仮想線を通過する前記ペレットの軌跡密度のバラツキが、2000以下となるドレッサ。
【請求項13】
研磨用のパッド表面をドレッサ方法であって、
前記パッド表面に対向する直径DCDの円形のドレス面と該ドレス面に配置されるペレットとを備え、
前記ペレットは、前記ドレス面の中心を共有して、直径PCDn、但しn=1~5、の各円周領域に配置され、
ここに、パッド表面の径を920mmとし、該パッド表面の中心を軸として前記パッド表面の回転数は35rpmとし、前記ドレス面の回転は前記パッドの回転に連れ回されるものとし、
前記ペレットが下記表3の1~3型の条件を満足するとき、
【表3】
前記パッド表面の中心を軸として前記パッド表面を回転させながら、かつ前記ドレス面自体をその中心を軸に回転させたとき、前記パッド表面の中心から放射方向の仮想線を通過する前記ペレットの軌跡密度のバラツキが、2000以下となるドレス方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は研磨パッド用ドレッサに関する。
【背景技術】
【0002】
研磨パッド用ドレッサ(以下、単に「ドレッサ」と略することがある)には研磨対象となるパッドを平坦に研磨する機能が要求される。
そのため、従来から、各種の対策がとられてきた(特許文献1~3参照)。
ドレッサはペレットとこれを支持する保持部材とから構成され、保持部材においてパッドに対向する面(ドレス面)の所定の位置にペレットが配置される。
ドレス面の回転中心から同心円上に等間隔でペレットを配置することが一般的であり(特許文献1参照)。特許文献2では円形のドレス面においてその半径とペレットの粒径との関係を規定することで、ペレットに対する平坦研磨を担保している。
その他、本願発明に関係する先行文献として、特許文献3及び特許文献4を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-141204号公報
【文献】特許5809880号公報
【文献】特開2006-55944号公報
【文献】特許5511266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
研磨パッドの研磨対象は専ら半導体基板であり、その上に形成される半導体素子の微細化に伴い、半導体基板にはより高い平坦度が求められている。そのため、研磨パッドにもより高い平坦度が求められる。従って、ドレッサにも、研磨パッドをより平坦にする機能が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ドレス面に対する好適なペレットの面積と配置との関係を見出すに至った。
即ち、この発明の第1局面は次のように規定される。
研磨用のパッド表面のドレッサであって、
前記パッド表面に対向する直径DCDの円形のドレス面と該ドレス面に配置されるペレットとを備え、
前記ペレットは、前記ドレス面の中心を共有して、直径PCDnの円周領域に配置され、
前記円周領域に配置される前記ペレットの面積率が、下記表1の1型、2型若しくは3型の何れか一つである、ドレッサ。
【表1】
【0006】
このように規定される第1局面のドレッサによれば、研磨パッドを平坦に研磨することができた。特に、研磨パッドの内径の凹みを有効に防止できた。
研磨パッドへ高い平坦度を付与できるドレッサによれば、研磨パッドに対するドレッシング時間を短縮することができるので、この点で、半導体基板等の製造プロセスにおけるスループットの向上に寄与できる。更には、ドレッシング時間の短縮及び高い平坦度は研磨パッド自体の寿命を向上させ、この点においても、半導体基板等の製造プロセスにおけるスループットの向上に寄与できる。
本発明者らの検討によれば、第1局面に規定のドレッサは、ドレッシング時に、研磨パッドに対して従動させる、即ち研磨パッドに対して連れ回させても、その効果が発揮される。ドレッサの回転を制御できる場合も同様である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1はこの発明の実施形態のドレッサ及びペレット並びに研磨パッドの関係を示す模式図である。
図2図2は表1で規定されるドレッサのドレス面におけるペレットの配置態様を示す。
図3図3は実施例1のドレッサ(A)によるパッドの研磨結果(B)及びそのペレットの軌跡密度(C、シミュレーション結果)を示す。
図4図4は比較例1のドレッサ(A)によるパッドの研磨結果(B)及びそのペレットの軌道軌跡密度(C、シミュレーション結果)を示す。
図5図5は1型に含まれる他の実施例2~5の実施形態のドレッサのドレス面におけるペレットの配置態様と、そのペレットの軌跡密度を示す。
図6図6は実施例6、7のドレッサのドレス面におけるペレットの配置態様と、そのペレットの軌跡密度を示す。
図7図7は比較例2のドレッサのドレス面におけるペレットの配置態様と、そのペレットの軌跡密度を示す。
図8図8は実施例1のドレッサのドレス面におけるペレットの配置態様と、ドレス面に適用される仮想的なメッシュの各格子における密度分布を示す。
図9図9は実施例2のドレッサのドレス面におけるペレットの配置態様と、ドレス面に適用される仮想的なメッシュの各格子における密度分布を示す。
図10図10は実施例3のドレッサのドレス面におけるペレットの配置態様と、ドレス面に適用される仮想的なメッシュの各格子における密度分布を示す。
図11図11は実施例4のドレッサのドレス面におけるペレットの配置態様と、ドレス面に適用される仮想的なメッシュの各格子における密度分布を示す。
図12図12は実施例5のドレッサのドレス面におけるペレットの配置態様と、ドレス面に適用される仮想的なメッシュの各格子における密度分布を示す。
図13図13は実施例6のドレッサのドレス面におけるペレットの配置態様と、ドレス面に適用される仮想的なメッシュの各格子における密度分布を示す。
図14図14は実施例7のドレッサのドレス面におけるペレットの配置態様と、ドレス面に適用される仮想的なメッシュの各格子における密度分布を示す。
図15図15は比較例2のドレッサのドレス面におけるペレットの配置態様と、ドレス面に適用される仮想的なメッシュの各格子における密度分布を示す。
図16図16は実施例1のドレッサと比較例1のドレッサを用いたときのLHA研磨パッドに対する研磨回数と研磨レートとの比較を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は実施形態のドレッサ、ペレット及び研磨パッドの関係を示す模式図である。
図1(A)はドレッシング作業における研磨パッドPとドレッサDとの位置関係を示す。ドレッシング作業において、研磨パッドPは図示しない駆動装置によりその中心を軸に回転される。この例では、ドレッサDの中心が図示しない支軸に回転自在に軸支されて研磨パッドPに当てつけられて、研磨パッドPの回転に従動して連れ回される。
ドレッサDを回転駆動する軸に取り付けて、研磨パッドPの回転から独立してドレッサDの回転を制御することもできる。
【0009】
研磨パッドPの外周の直径(この明細書で単に「径」ということがある)や材質は研磨対象に応じて任意に選択することができる。半導体基板用としては、例えば、研磨パッドPの径はΦ300~1500mmとすることができ、その材質として硬質ポリウレタン、不織布、スエード等を挙げられる。
ドレッシング作業における研磨パッドPの回転数はドレッサDの径、ペレットの材質、ドレッサDの圧力等に応じて任意に選択できる。
半導体基板用の研磨パッドP(径Φ300~1500mm)に対して、ドレッシング作業時の回転数は5~100rpmとすることができる。
かかる研磨パッドPは、汎用的な研磨装置のターンテーブルに固定される。
【0010】
ドレッサDは保持部材1とペレット3とを備えている。
保持部材1は円盤状の部材であり、一面の中心が軸に回転自在に軸支される。研磨パッドPに対向する他面がペレット支持面5となる(図1(B)参照)。
このペレット支持面5に複数のペレット3が所定のルールに従って分配され、かつ固定される。
【0011】
ドレス面は、研磨パッドPへ作用する面であり、その観点から、最も外側に存在するペレット(その外側縁)が描く円周によりドレス面は画定されるべきものである。この例では、保持部材1の外周縁と最外郭のペレット3とがほぼ一致している。その結果、ペレット支持面5とドレス面とは一致する。なお、研磨パッドPに当接するペレット3の自由端の径(自由端を円形近似したときの直径)はドレス面の直径に比べて極めて小さいので、この明細書では、円形のペレット支持面5をドレス面として説明を進めていく。
ドレス面5の回転中心は、保持部材1の回転中心と一致している。
【0012】
ペレット3には基台に硬質の粒子を担持させたものを用いることができる。基台は例えば円柱状の鋼材であり、その自由端側に硬質粒子が担持され、その他端側はペレット支持面5にロウ付け等の汎用的な方法で固定される。この例では、基台の自由端を円形とし、そこに硬質粒子が均等に分配かつ固定されている。自由端の径はΦ5~30mmとすることできる。この自由端を楕円形や多角形とすることもできる。
硬質粒子は、研磨パッドPを研磨してこれをドレッシングできるものであれば特に制限されないが、ダイヤモンド、窒化ホウ素、炭化ホウ素、炭化ケイ素、酸化アルミニウムなどの汎用的な材料が採用される。
硬質粒子の平均粒径も任意に選択でき、例えばダイヤモンドであれば、0.1~250μmのものを採用できる。
硬質粒子は基台の自由端に対し、エポキシ系接着剤やワックス等を用いて固定されている。
【0013】
図1(B)の模式図において、ドレス面5の回転中心Oから半径方向に5つの円周が点線で描かれている。この点線上にペレット3の自由端の中心が配置され、各ペレット3は周方向に均等に分配されている。この点線で表される円周は、半径方向に変化させることができる(円周領域)。
第1実施形態(1型)では、ドレス面5の直径DCDに対して、その中心Oを共有して、直径PCDnの円周領域に配置されるペレット3の面積率を表2のように規定する。
【表2】
【0014】
表2の各値について、図2を用いて詳細に説明する。
図2(A)は直径PCD1の円周領域に配置されるペレットを示す。即ち、ドレス面5の直径DCDに対し、図2(A)において点線D1で示される円周領域にペレット3の中心が配置される。直径PCD1の円周領域にはPCD1/DCD=80~100%の幅がある。
表1では、直径PCD1の円周領域上に配置されるペレット3の自由端の面積率が15±5%である。
この面積率は次のように規定される。
ドレス面5に存在するすべてのペレット3の自由端の総面積に対する、直径PCD1の円周領域に存在するペレット3の自由端の総面積の比である。以下、他の円周領域においても同様にして面積率は演算される。
【0015】
図2(B)は直径PCD2の円周領域に配置されるペレットを示す。即ち、ドレス面5の直径DCDに対し、図2(B)において点線D2で示される円周領域にペレット3の中心(自由端の中心を指す、この明細書で同じ)が配置される。直径PCD2の円周領域にはPCD2/DCD=60~80%の幅がある。
表2では、直径PCD2の円周領域上に配置されるペレット3の自由端の面積率が10±5%である。
図2(C)は直径PCD3の円周領域に配置されるペレットを示す。即ち、ドレス面5の直径DCDに対し、図2(C)において点線D3で示される円周領域にペレット3の中心が配置される。直径PCD3の円周領域にはPCD3/DCD=40~60%の幅がある。
表2では、直径PCD3の円周領域上に配置されるペレット3の自由端の面積率が45±5%である。
【0016】
図2(D)は直径PCD4の円周領域に配置されるペレットを示す。即ち、ドレス面5の直径DCDに対し、図2(D)において点線D4で示される円周領域にペレット3の中心が配置される。直径PCD4の円周領域にはPCD4/DCD=20~40%の幅がある。
表2では、直径PCD4の円周領域上に配置されるペレット3の自由端の面積率が30±5%である。
図3(E)はは直径PCD5の円周領域に配置されるペレットを示す。即ち、ドレス面5の直径DCDに対し、図2(E)において点線D5で示される円周領域にペレット3の中心が配置される。直径PCD5の円周領域にはPCD5/DCD=0~20%の幅がある。
表2では、直径PCD5の円周領域上に配置されるペレット3の自由端の面積率が0%である。
【0017】
上記の例では、各円周領域においてペレットは周方向に均等に配置されているが、必ずしもその必要はない。例えば、回転中心0を中心として、各円周領域にて点対称に配置することができる。
更には、表2の条件を満足して、同一の円周領域に存在するペレットの自由端の重心が回転中心と一致するように配置することもできる。
各円周領域PCD1-5は幅を有する。各幅内において、ペレットの中心は半径方向へ偏移させることができる。このようにペレット3の配置が、ドレス面5の半径方向へ分散しているときは、全てのペレット3の自由端の重心をドレス面Pの回転中心と一致させることが好ましい。
表2に示すペレット面積率を満足する範囲で、各ペレットの自由端の面積に変化を与えることができる。
【0018】
表2の条件を満足するドレッサ(実施例1)として、下記のものを準備した(図3(A)参照)。なお、ドレス面の直径はΦ360mm、研磨パッドPに当接する各ペレット3の円形自由端の直径はΦ16mmである。
【表3】
【0019】
比較例1として、表4の条件のドレッサを準備した(図4(A)参照)。ドレス面の直径及び各ペレット3の形状は実施例1と同じである。
【表4】
【0020】
実施例1及び比較例1の各ドレッサを用いて、研磨パッドのドレッシングを同じ条件で行った。結果を図3(B)及び図4(B)に示す。実施例1における研磨パッド表面の厚みバラツキは50μmであり、比較例1のそれは400μmであった。なお、研磨パッド表面の厚みのバラツキは、研磨パッド表面において最も研磨された部位(最も薄い部位)と最も研磨されなかった部位(最も厚い部位)との厚さの差である。
ドレッシングの条件は次の通りであった。
パッド直径:920mm
パッド回転数:35rpm
ドレッサ回転数:約30rpm(連れ回り)
ドレス圧力:30kPa
ドレッサ位置:272mm
ドレッシング時間:30秒/回×60回(合計30分)実施
ペレット材料:メタルダイヤ砥石
使用研磨装置:不二越機械SPM14
また、研磨パッドの表面の形状(半径方向の位置及びその高さ)はダイヤルゲージを用いて計測した。
【0021】
図3(B)及び図4(B)の結果から、比較例1のドレッサを用いるドレッシングによれば、研磨パッドが中心側で凹むよう研磨されているのに対し、実施例1のドレッサによれば、かかる凹みは見られず、研磨パッドは極めて平坦に研磨されていることがわかる。
【0022】
本願発明者らは、実施例のドレッサと比較例のドレッサとの違いは、ドレッシング作業を行うときの、研磨パッドに干渉するペレットの頻度に起因するのではないかと考えた。
そこで、上記条件でドレッシングを実行したときの研磨パッドに対する各ペレットの軌跡をシミュレートし、研磨パッドの中心から放射方向の仮想線を通過するペレットの軌跡の密度を演算した。実施例1の結果を図3(C)に示す。図3(C)において太線が軌跡密度を示し、その細線はその近似曲線である。軌跡密度はパッド面に対するペレット軌跡との重なり度合いを示す。軌跡密度の近似曲線は2次多項式で近似したものである。
ちなみに、図3(C)の近似曲線は
y=-0.0482x+13.874x+1633.6 で表される。
同じく、図4(C)の近似曲線は
y=0.0495x-27.152x+6718.1 で表される。
【0023】
図3(C)の軌跡密度のバラツキは1250であった。このバラツキは近似曲線の最大値と最小値の差を指す。
図3(C)の結果から、実施例1のドレッサでは、研磨パッドの全域に対してペレットがほぼ均等に干渉していることがわかる。近似曲線から、研磨パッドの中央と外縁の間(仮想線の中央)において軌跡密度が高く(近似曲線が最大値を示し)、そこでの干渉頻度が高くなっていることがわかる。
【0024】
比較例1のドレッサについても実施例と同じシミュレートを実施し、その結果を図4(C)に示す。
図4(C)の結果から、比較例1のドレッサでは、研磨パッドに対してペレットの干渉が偏在していることがわかる。特に、研磨パッドの中心側においてペレットの軌跡密度が高くなっている。
軌跡密度のバラツキは3360であった。
【0025】
図3(C)の結果と図4(C)の結果から、軌跡密度のバラツキが所定値以下となれば、研磨パッドを平坦に研磨できることが予想される。
本発明者らは、改めて、表2の条件を満足するドレッサを作成した(実施例2~5、表5参照、実施例2~4においてドレス面及びペレットの大きさ、形状は実施例1と同じである。実施例5ではペレットの自由端の直径をΦ8mmとしている)。図5(A)に各実施例のドレッサのドレス面に対するペレットの配置態様を模式的に示す。図3(C)に準じて各ペレットの軌跡をシミュレートし、研磨パッドの中心から放射方向の仮想線を通過するペレットの軌跡の密度を演算した。結果を図5(B)に示す。実施例2~5のドレッサについても軌跡密度のバラツキが小さいことがわかる。また、軌跡密度の近似曲線の最大値が研磨パッドの中央と外縁の間に存在する。換言すれば、仮想線に沿った近似曲線が凸型になる。
実施例2~5による近似曲線は次の様に表される。
実施例2 y=-0.0787x+24.23x+1638.5
実施例3 y=-0.0511x+14.961x+1559.8
実施例4 y=-0.0447x+12.737x+1578.7
実施例5 y=-0.0817x+25.713x+1319.5
【0026】
軌跡密度のバラツキ及び/又は軌跡密度の近似曲線の形状を指標として、本発明者らは、ペレットの配置態様が表2の条件を外れるものについても検討した。
その結果、表5に示す条件2型、3型のドレッサ(実施例6、7)においても、低い、即ち(2000以下)の軌跡密度のバラツキと、軌跡密度の近似曲線の最大値が研磨パッドの中央と外縁の間に存在した。
【表5】
【0027】
図6(A)に、実施例6、7のドレッサのドレス面に対するペレットの配置態様を模式的に示す。実施例6、7のドレッサを用いたときの研磨パッドの中心から放射方向の仮想線を通過するペレットの軌跡の密度を演算し、図6(B)に示す。
他方、表6及び図7に示す関係にある比較例2のドレッサでは、軌跡密度のバラツキが2000を超え、かつ軌跡密度の近似曲線の最大値が研磨パッドの中央部分に存在することとなった。
【表6】

比較例7の近似曲線は次のように表される。
y=0.0186x-13.804x+4875.9
【0028】
実施例6より、下記表7の2型の関係を満足するドレッサによれば、研磨パッドを極めて平坦にドレッシングできるものと考えられる。
実施例7より、下記表7の3型の関係を満足するドレッサによれば、研磨パッドを極めて平坦にドレッシングできるものと考えられる。
【表7】
【0029】
以上より、この発明の第1局面として規定されるドレッサによれば、研磨パッドを平坦にドレッシングできる。
特に、研磨パッドにおける軌跡密度のバラツキを1500以下に抑制できる1型のドレッサによれば、より平坦度を向上させられる。
【0030】
実施例及び比較例におけるペレットの軌跡密度の比較より、この発明の他の局面は次のように規定できる。
研磨用のパッド表面のドレッサであって、
前記パッド表面に対向するドレス面と該ドレス面に配置されるペレットとを備え、
前記パッド表面の中心を軸として前記パッド表面を回転させながら、かつ前記ドレス面自体をその中心を軸に回転させたとき、前記パッド表面の中心から放射方向の仮想線を通過する前記ペレットの軌跡密度のバラツキが、2000以下、好ましくは1500以下となる、ドレッサ。
【0031】
更には、次の様に規定することもできる。
研磨用のパッド表面のドレッサであって、
前記パッド表面に対向するドレス面と該ドレス面に配置されるペレットとを備えるドレッサによる前記パッド表面をドレスするドレス方法であって、
前記パッド表面の中心を軸として前記パッド表面を回転させながら、かつ前記ドレス面自体をその中心を軸に回転させたとき、前記パッド表面の中心から放射方向の仮想線を通過する前記ペレットの軌跡密度のバラツキを、2000以下、好ましくは1500以下とする、ドレス方法。
【0032】
さらにこの発明は次のように規定することもできる。
研磨用のパッド表面のドレッサであって、
前記パッド表面に対向するドレス面と該ドレス面に配置されるペレットとを備え、
前記パッド表面の中心を軸として前記パッド表面を回転させながら、かつ前記ドレス面自体をその中心を軸に回転させたとき、前記パッド表面の中心から放射方向の仮想線を通過する前記ペレットの軌跡密度の分布の前記仮想線に沿った近似曲線が、凸型となるドレッサ。
【0033】
さらにこの発明は次のように規定することもできる。
研磨用のパッド表面のドレッサであって、
前記パッド表面に対向するドレス面と該ドレス面に配置されるペレットとを備えるドレッサによる前記パッド表面をドレスするドレス方法であって、
前記パッド表面の中心を軸として前記パッド表面を回転させながら、かつ前記ドレス面自体をその中心を軸に回転させたとき、前記パッド表面の中心から放射方向の仮想線を通過する前記ペレットの軌跡密度の分布の前記仮想線に沿った近似曲線を、凸型とする、ドレス方法。
【0034】
更にこの発明は次の様に規定することもできる。
研磨用のパッド表面のドレッサであって、
前記パッド表面に対向するドレス面と該ドレス面に配置されるペレットとを備え、
前記パッド表面の中心を軸として前記パッド表面を回転させながら、かつ前記ドレス面自体をその中心を軸に回転させたとき、前記パッド表面の中心から放射方向の仮想線を通過する前記ペレットの軌跡密度の分布の前記仮想線に沿った近似曲線の最大値が前記仮想線の中央付近に存在する、ドレッサ。
【0035】
更にこの発明は次のように規定することもできる。
研磨用のパッド表面のドレッサであって、
前記パッド表面に対向するドレス面と該ドレス面に配置されるペレットとを備えるドレッサによる前記パッド表面をドレスするドレス方法であって、
前記パッド表面の中心を軸として前記パッド表面を回転させながら、かつ前記ドレス面自体をその中心を軸に回転させたとき、前記パッド表面の中心から放射方向の仮想線を通過する前記ペレットの軌跡密度の分布の前記仮想線に沿った近似曲線の最大値を前記仮想線の中央付近に存在させる、ドレス方法。
【0036】
比較例1のドレッサではペレットがドレス面において、外周側に偏在している。他方、実施例1のドレッサでは、ペレットはドレス面の中央から外側に向かって漸減するように配置されている。
このことは、他の実施例のドレッサにも当てはまる。従って、本願発明は次のように規定することもできる。
研磨用のパッド表面のドレッサであって、
前記パッド表面に対向するドレス面と該ドレス面に配置されるペレットとを備え、
前記ドレス面に重ねられる仮想的なメッシュであって、第1格子と第2格子を備え、前記第2格子は、前記ドレス面の中心からみたとき、該第1格子より外側に位置し、
前記1格子に現れる前記ペレットの密度が前記第2格子に現れる前記ペレットの密度より大きい、ドレッサ。
【0037】
ここに、仮想的なメッシュの形状や大きさは任意に設定可能であるが、メッシュを構成する各格子は合同とし、その中に少なくともペレットの一部が含まれるものとする。
ドレス面の中心を第1格子の中心と一致させることが好ましい。
図8図14に実施例1~7のドレス面に適用されるメッシュの例を示した。図中の四角格子がメッシュであり、大きい円がドレス面、小さい円がペレットの自由端を示す。図右の数値列はメッシュの各格子に含まれるペレット数を示す。格子は全て同じ形状及び大きさであるので、格子に含まれるペレットの数が格子中のペレットの面積の密度を指す。格子の数のカウントにおいて、格子をまたぐものは各格子に1/2の面積が存在するものとしている。
【0038】
図8図14に示されるように、ドレス面の中心をカバーする格子(第1格子)とこれに連続してかつ外側に存在する格子(第2格子)とをペレットの密度で比較すると、前者の密度が後者の密度より大きい。同様に、当該第2格子とこれに連続してかつその外側に存在する格子(第3格子)とをペレットの密度で比較すると、前者の密度が後者の密度より大きい。
図15には比較例2のドレス面にメッシュを適用した例を示す。
この比較例2では、ドレス面の中心をカバーする格子(第1格子)とこれに連続してかつ外側に存在する格子(第2格子)とをペレットの密度で比較すると、前者の密度が後者の密度より小さい。
【0039】
各実施例のドレッサを用いると、研磨パッドの平坦度が向上するので、研磨パッドの寿命が約2倍に向上した。
半導体基板用の研磨装置にLHA研磨パッド(特許第5511266参照)と実施例1のドレッサをセットし、LHA研磨パッドを再生するためのドレッシング作業に要する1回あたりのドレス時間を30秒とし、その後LHA研磨パッドでワークを2時間研磨することを研磨作業の1サイクルとして、実施例1及び比較例1のドレッサを用いて研磨作業を行った。
研磨作業の回数(サイクル数)と研磨レート(nm/hour)との関係を図16に示す。図
16において横軸が研磨作業の回数、縦軸は研磨レートを指す。研磨レートはLHA研磨パッドの複数部分の厚さ変化をダイヤルゲージで計測しその平均値から求めた。
図16の結果より、実施例1のドレッサを用いた場合は120サイクルを超えての研磨作業が可能となることがわかる。他方、比較例1のドレッサを用いた場合は60サイクルを待たずして研磨レートが不安定になった。
即ち、実施例1のドレッサによれば、これと研磨パッドとを何ら取り換えることなく、60回以上、更には120回以上の研磨作業を実質的に連続して実行できることがわかる。ドレッシング時間の合計でみれば、実施例1のドレッサによれば、30分以上、更には1時間以上を実行できることとなる。
上記における研磨条件は次の通りであった。
ワーク:SiC基板
ワークの回転数:35rpm
LHA研磨パッド:直径Φ900mm
パッド回転数:35rpm
ドレッサ:実施例1
ドレッサ位置:272mm
研磨パッドを再生するのに要する1回当たりのドレス時間:30秒
【0040】
上記ドレッシング作業時間の上限は特に定められるものではないが、ワークに求められる平坦度が所定の値を下回ったとき、ドレッサを取り換える必要がある。
このことは、ドレッサ自体の寿命向上を意味し、その交換頻度を小さくできる。
研磨パッド及びドレッサの高寿命化により、研磨対象であるワーク(半導体基板等)26の製造スループットが向上する。
また、このように、研磨サイクルを2倍以上繰り返す事が出来る工程で製造されるワークの製造原価は廉価なものとなる。
上記において、1回当たりのドレッシング作業に要するドレス時間も削減されていることがわかる。なお、比較例1のような従来例のドレッサを用いたときのドレッシング作業1回に要する時間が60秒かかることがあった。
【0041】
各実施例のドレッサは、研磨パッドの回転に連れ回されるものであっても、研磨パッドに高い平坦度を与えることができる。換言すれば、研磨装置においてドレッサの回転盤の回転数を制御する機構が不要となる。よって、研磨装置が安価となり、もって、ワークの製造コストを引き下げることができる。
【0042】
以上より、この発明の他の局面は次のように規定できる。
研磨材を内包する研磨用のパッドでワークを研磨する研磨方法であって、
実施例のドレッサを準備するステップと、
前記ドレッサのドレス面を前記パッド表面へ押圧し、前記ドレッサ及び/又は前記パッドを回転させるドレッシングステップと、
前記パッドはLHA研磨パッドであり、
ドレッシングされた前記パッドでワークを研磨する研磨ステップと、を含む研磨方法であって、
前記ドレッシングステップを、同一のドレッサを用いて、ドレッシング作業を30分以上実行可能な、研磨方法。
上記ドレッシングステップにおいて、前記パッドに対し前記ドレッサを連れ回りとすることが好ましい。
【0043】
またこの発明は次のように規定することもできる。
ワークの製造方法であって、
実施例のドレッサを準備するステップと、
前記ドレッサのドレス面を前記パッド表面へ押圧し、前記ドレッサ及び/又は前記パッドを回転させるドレッシングステップと、
ドレッシングされた前記パッドで前記ワークを研磨する研磨ステップと、を備え、
前記パッドはLHA研磨パッドであり、該パッドとして、同一のドレッサを用いて行なわれた前記ドレッシング作業として30分以上実行可能な、
ワークの製造方法。
上記ドレッシングステップにおいて、前記パッドに対し前記ドレッサを連れ回りとすることが好ましい。
【0044】
この発明は、上記発明の実施形態の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【符号の説明】
【0045】
D ドレッサ
P 研磨パッド
1 保持部材
3 ペレット
5 ドレス面(ペレット支持面)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16