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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】ロータリードレッサおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 53/12 20060101AFI20240221BHJP
   B24B 53/07 20060101ALI20240221BHJP
   B24D 3/00 20060101ALI20240221BHJP
   B24D 3/06 20060101ALI20240221BHJP
   B24D 5/00 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
B24B53/12 Z
B24B53/07
B24D3/00 310B
B24D3/00 320B
B24D3/00 330G
B24D3/06 B
B24D5/00 P
B24D3/00 340
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023554347
(86)(22)【出願日】2023-03-23
(86)【国際出願番号】 JP2023011441
【審査請求日】2023-09-06
(31)【優先権主張番号】P 2022052113
(32)【優先日】2022-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220103
【氏名又は名称】株式会社アライドマテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】末光 文也
(72)【発明者】
【氏名】中山 龍治
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/145491(WO,A1)
【文献】特開2003-205470(JP,A)
【文献】特開2010-184325(JP,A)
【文献】国際公開第2017/163487(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/203848(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/098764(WO,A1)
【文献】特開2013-010148(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 53/12
B24B 53/07
B24D 3/00
B24D 3/06
B24D 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
台金に超砥粒が金属結合材により1層に結合された超砥粒層を有するロータリードレッサであって、
前記超砥粒は、第1の平均粒径を有する第1の超砥粒と、前記第1の平均粒径より小さい第2の平均粒径を有する第2の超砥粒を有し、
前記第1の超砥粒および前記第2の超砥粒のうち前記超砥粒層の表面に出ている複数の前記超砥粒には作用面が形成され、
前記超砥粒の集中度が最も高い領域において、前記作用面をなだらかに接続する仮想面の面積に対する複数の前記作用面の合計面積比率が30%以上60%以下であり、
前記第2の平均粒径は、前記第1の平均粒径の30%以上80%以下であり、
前記第1の超砥粒および前記第2の超砥粒のうち、の最大粒径と最小粒径との比(前記第1の超砥粒の最大粒径D1/前記第2の超砥粒の最小粒径D3)は、1.3以上4以下である、ロータリードレッサ。
【請求項2】
前記第1の平均粒径は、300μm以上800μm以下である、請求項1に記載のロータリードレッサ。
【請求項3】
前記超砥粒は、人工合成ダイヤモンドである、請求項1または2に記載のロータリードレッサ。
【請求項4】
前記超砥粒層の断面を見たときに、一定の範囲内において、それぞれの前記第1の超砥粒と前記台金との距離の平均値は、それぞれの前記第2の超砥粒と前記台金との距離の平均値より小さい、請求項1または2に記載のロータリードレッサ。
【請求項5】
前記第2の平均粒径は、前記第1の平均粒径の32%以上80%以下である、請求項1または2に記載のロータリードレッサ
【請求項6】
前記第2の平均粒径は、前記第1の平均粒径の32%以上77%以下である、請求項1または2に記載のロータリードレッサ
【請求項7】
請求項1または2に記載のロータリードレッサを製造する方法であって、以下の工程を含むロータリードレッサの製造方法。
工程(1):型の内面に所定の形状を形成した反転型を製作し、めっき法を利用してこの内面に前記第1および前記第2の超砥粒を付着させる工程。
工程(2):さらに肉盛りめっきを行い、前記第1および前記第2の超砥粒をめっき金属により埋め込んで固定する工程。
工程(3):前記反転型の中心に芯金をセットし、前記第1および前記第2の超砥粒と前記芯金とを接合する工程。
工程(4):外側の前記反転型を取り除く工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロータリードレッサに関する。本出願は、2022年3月28日に出願した日本特許出願である特願2022-052113号に基づく優先権を主張する。当該日本特許出願に記載された全ての記載内容は、参照によって本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
ロータリードレッサの寿命を長くするとともに切味や寿命のバラツキを小さくするものとして、国際公開第2017/145491号(特許文献1)に記載のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2017/145491号
【発明の概要】
【0004】
本開示のロータリードレッサは、台金に超砥粒が金属結合材により1層に結合された超砥粒層を有するロータリードレッサであって、超砥粒は、第1の平均粒径を有する第1の超砥粒と、第1の平均粒径より小さい第2の平均粒径を有する第2の超砥粒を有し、第1の超砥粒および第2の超砥粒のうち超砥粒層の表面に出ている複数の超砥粒には作用面が形成され、超砥粒の集中度が最も高い領域において、作用面をなだらかに接続する仮想面の面積に対する複数の作用面の合計面積比率が30%以上60%以下である。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1は、本開示の実施の形態に従ったダイヤモンドロータリードレッサ100の写真である。
図2図2は、実施の形態におけるダイヤモンドロータリードレッサ100の超砥粒層101に設けられる溝102の写真である。
図3図3は、作用面積の測定方法を説明するために示す、溝102を含む超砥粒層101の写真である。
図4図4は、作用面積の測定方法を説明するために示す、溝102を含むようにトリミングされる前の超砥粒層101の写真である。
図5図5は、作用面積の測定方法を説明するために示す、トリミングされた後の溝102の表面を示す写真である。
図6図6は、平面処理された溝102の写真から得られた、測定開始点からの各作用面205の高さ(横軸)と頻度(縦軸)を示すグラフである。
図7図7は、ダイヤモンドロータリードレッサ100の中心から外周に向かう方向に沿った、超砥粒層101の断面構造を示す図である。
図8図8は、面積比が測定された溝102を構成する超砥粒204の粒径と頻度とを示すグラフである。
図9図9は、作用面205を形成するための超砥粒204の研削方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[本開示が解決しようとする課題]
従来のロータリードレッサは、寿命が短いという問題があった。
【0007】
ロータリードレッサは、砥石の砥面の形状を成形する(ツルーイングまたはドレッシング)ものであり、代表的なものの一つとして歯車加工用砥石のツルーイングまたはドレッシングに用いられるディスク形状のものがある。このロータリードレッサは、複数の砥粒に作用面が形成され、これらの複数の作用面をなだらかに接続する仮想面の面積に対する複数の砥粒の作用面の合計面積比率を5~30%とし、ロータリードレッサの寿命を長くするとともに切味や寿命のバラツキを小さくするという効果を得るものである。
【0008】
上記構成のロータリードレッサは、歯車用のディスク形状のロータリードレッサとしては上記の効果が得られるが、総形ロータリードレッサなどに上記の特徴を適用しても、まだ寿命が短いという問題が残る。
【0009】
以上の問題を解決するためには、ダイヤの作用面積を増やす、そしてそのためには、ダイヤの作用面を形成するための加工量を増やす、粗粒間の間に微粒を詰めて砥粒を密にする、ことが考えられる。
【0010】
これらを実現するために、本開示は、以下の特徴を有するロータリードレッサに関する。
【0011】
台金に超砥粒が金属結合材により1層に結合された超砥粒層を有するロータリードレッサであって、超砥粒は、第1の平均粒径を有する第1の超砥粒と、第1の平均粒径より小さい第2の平均粒径を有する第2の超砥粒を有し、第1の超砥粒および第2の超砥粒のうち超砥粒層の表面に出ている複数の超砥粒には作用面が形成され、超砥粒の集中度が最も高い領域において、作用面をなだらかに接続する仮想面の面積に対する複数の作用面の合計面積比率が30~60%である。
【0012】
合計面積比率が30%未満であれば、作用面が少なすぎて寿命が低下する。合計面積比率が60%を超えると作用面が多すぎて切れ味が悪化する。
【0013】
合計面積比率を30%以上60%以下にするには、平均粒径が小さめの超砥粒を使えば実現しやすくなる。ロータリードレッサの切味や寿命を向上させるためには、たとえば、平均粒径が0.3~0.8mm程度の大きめの超砥粒を使う必要がある。大きめの超砥粒を使った場合、仮想面の面積に対する複数の作用面の合計面積比率が小さくなりやすい。合計面積比率を大きくするためには超砥粒に作用面を形成するために研削する量が多くなる。小径の第2の超砥粒を組み合わせることで、作用面を形成するための研削量が少なくても、仮想面の面積に対する複数の作用面の合計面積比率を30~60%のように大きくできる。これにより、ロータリードレッサとしての寿命も向上する。
【0014】
このような構成のロータリードレッサとすることで、耐摩耗性が高くなり、切味・寿命ともに安定したものが実現できる。
【0015】
加工する際にはダイヤが作用するので、ダイヤを増やすと寿命が向上する。
研削ホイールは集中度(砥粒数)が切味などの性能に大きく影響するが、ロータリードレッサの場合は作用するダイヤ部の作用面積が性能に大きく影響し、特に平均粒径が300~800μm程度の砥粒を使用することが多いため、性能への影響が顕著に出る。本開示においては、超砥粒の作用面積比率が高いため、ドレッサとしての切味が良好で、寿命も向上する。
【0016】
好ましくは、第2の平均粒径は、第1の平均粒径の30%以上80%以下である。第2の超砥粒の平均粒径を第1の超砥粒の平均粒径の30~80%とすれば、第1の超砥粒の間に第2の超砥粒が入りやすく砥粒密度がより高くなり、砥粒の作用面積比率を高めやすい。
【0017】
超砥粒として人工合成ダイヤモンドを使用すると、ダイヤの結晶面が明確に現れた形状のため、結晶面が台金の接合面と平行に近い状態で接合される。その結果、超砥粒が安定した形で密に接合され、超砥粒に作用面を形成するための研削量は少なくても作用面積比率を高くすることができる。その結果、作用面形成が容易になるとともに、超砥粒層の厚みが厚くなるので寿命も向上する。
【0018】
好ましくは、第1の超砥粒および第2の超砥粒のうちのの最大粒径と最小粒径との比(第1の超砥粒の最大粒径D1/第2の超砥粒の最小粒径D3)は、1.3~4である。
【0019】
好ましくは、第1の平均粒径は、300μm以上800μm以下である。ロータリードレッサで砥石をドレスするのに、砥石の砥粒の粒径は100μmから200μm程度のものがあり、ロータリードレッサの砥粒径は砥石の砥粒の粒径より大きくしないとロータリードレッサのドレス性能が低下するため、300μm以上とする。また、ロータリードレッサの超砥粒層の総形形状として、Rが400μm程度までのものがあり、この形状に対応できるようにするため、第1の砥粒の平均粒径は800μm以下が好ましい。
【0020】
好ましくは、超砥粒は、人工合成ダイヤモンドである。
好ましくは、超砥粒層の断面を見たときに、一定の範囲内において、それぞれの第1の超砥粒と台金との距離の平均値は、それぞれの第2の超砥粒と台金との距離の平均値より小さい。
【0021】
好ましくは、本開示のロータリードレッサは、次の工程を含む工程により製作される。
工程(1)として、型の内面に所定の形状を形成した反転型を製作し、めっき法を利用してこの型の内面に超砥粒を付着させる工程である。
【0022】
工程(2)として、さらに肉盛りめっきを行い、超砥粒をめっき金属により埋め込んで完全に固定する工程である。
【0023】
工程(3)として、反転型の中心に芯金をセットし、超砥粒と芯金とを接合する工程である。
【0024】
工程(4)として、外側の反転型を取り除く工程である。
以上のように、反転法(または、反転めっき法)により、製作される。
【0025】
以上のように反転法で本開示のロータリードレッサを製作すれば、ロータリードレッサの砥粒層の表面側に第1の超砥粒と第2の超砥粒の双方が存在することになり、複数の超砥粒に形成された作用面の合計面積比率を高めやすくなり、寿命も向上する。また、本開示のロータリードレッサでドレッシングする場合に、平均粒径の小さい第2の超砥粒もドレッシングに有効に作用させることができるので、超砥粒全体の個数を少なめにしても複数の超砥粒に形成された作用面の合計面積比率を高めることが可能になる。
【0026】
この方法で製作されたロータリードレッサでは、第1の超砥粒および第2の超砥粒の最下端から台金までの距離は、それぞれの超砥粒によりランダムにばらついており揃っていない。この芯金は、台金であってもよく台金でなくてもよい。芯金が台金で無い場合には芯金と台金を接合する構成をさらに備える。
【0027】
作用面の測定方法について説明する。図1は、本開示の実施の形態に従ったダイヤモンドロータリードレッサ100の写真である。図1で示すように、ダイヤモンドロータリードレッサ100は、台金103と、台金103の表面に設けられた超砥粒層とを有する。
【0028】
台金103は、例えば、ステンレス鋼により構成される。台金103は円柱形状であり、台金103の外周面には超砥粒層101が設けられる。超砥粒層101においては、超砥粒としてのダイヤモンドが固定されている。なお、ダイヤモンドに換えてCBN(立方晶窒化ホウ素)を用いてもよい。さらに、ダイヤモンドと立方晶窒化ホウ素が混在していてもよい。
【0029】
超砥粒層101には、円周方向に延びる溝102が形成されている。この溝102は、被加工物の形状に沿って形成されている。このようなダイヤモンドロータリードレッサ100は、いわゆる総形砥石をドレッシングするものである。
【0030】
図2は、実施の形態におけるダイヤモンドロータリードレッサ100の超砥粒層101に設けられる溝102の写真である。図2で示すように、溝102においては、超砥粒204の作用面205が露出している。作用面205は、相手材(砥石)に接触してドレッシングする面である。超砥粒204はメッキ層203により保持されている。図2における2桁の数字は、各超砥粒204を識別するための番号である。溝102では超砥粒204の集中度が最も高い。最も集中度が高い領域に関しては、超砥粒層101において、周方向の長さ10mm以上且つ砥粒数が50個以上含まれるよう軸方向(周方向と直交する方向)に分割した領域で作用面を測定した際、最も集中度が高い場所を選択する。このような超砥粒204における作用面205の面積率について以下の方法で測定する。
【0031】
測定機:キーエンス製VR5000。測定原理は「光切断法」。解析手順は、(1)3次元測定する。(2)下記A,Bの何れかもしくは両方で形状を平面化する。A:うねり除去(カットオフ処理)。ある波長以上のうねりを平面化する。B:2次曲線補正。2次曲線で形状全体をフィッティングして得られた円弧形状を平面化する。(3)閾値を設定し、作用面積を計算する。
【0032】
図3は、作用面積の測定方法を説明するために示す、溝102を含む超砥粒層101の写真である。図3で示すように、焦点を溝102の一番深いところにセットして、溝102を含む超砥粒層を撮影する。X方向は溝102を横切る方向である。Y方向は溝102の延びる方向に沿った円周方向である。X方向およびY方向に沿った超砥粒層101の高さを図3において示している。
【0033】
図4は、作用面積の測定方法を説明するために示す、溝102を含むようにトリミングされる前の超砥粒層101の写真である。最も集中度が高い箇所(目視で砥粒の集中度が高い部分)を3箇所選択し、測定箇所とする。この部分が含まれるようにトリミングする。測定範囲の大きさは、Y方向の長さを10mm以上として砥粒が50個~200個程度入る範囲とする。
【0034】
図5は、作用面積の測定方法を説明するために示す、トリミングされた後の溝102の表面を示す写真である。図5で示すように、溝102のみが写るようにトリミング領域105を設定してトリミングを実行する。そして、トリミング領域105の画像を平面補正する。平面補正は、うねり補正および二次曲線補正を含む。これにより、曲面であった溝102の写真を、平面の写真に置き換えることができる。
【0035】
図6は、平面処理された溝102の写真から得られた、測定開始点からの各作用面205の高さ(横軸)と頻度(縦軸)を示すグラフである。各超砥粒204の作用面205(ダイヤトップ)の測定開始点からの高さにはばらつきがある。最も頻度が大きい高さを基準の高さとする。図6では、1.320mmが基準の高さとなる。この高さから0.02mm低い高さを閾値とする。
【0036】
不要部を除外する設定を行う。微小領域除外設定において、ノイズ除去の下限値を[0.01mm]とし、これより面積の小さい領域は、合計の面積から除去する。
【0037】
閾値、およびノイズ除去の下限値を用いて、作用面205の総面積、およびトリミング領域の面積に対する作用面205の面積比(55.2%)を算出する。
【0038】
図7は、ダイヤモンドロータリードレッサ100の中心から外周に向かう方向に沿った、超砥粒層101の断面構造を示す図である。超砥粒層101において、台金103の上に低融点合金202が積層されている。低融点合金202上にメッキ層203が積層されている。メッキ層により超砥粒204が固定されている。
【0039】
すなわち、超砥粒204の集中度が最も高い領域において、作用面205をなだらかに接続する仮想面206の面積に対する複数の作用面205の合計面積比率が図6の工程において算出される。
【0040】
超砥粒204の作用面205は、超砥粒204を研削または研磨することにより形成される。超砥粒204を研削または研磨する時間を変更することにより、作用面205の面積を調整できる。
【0041】
図8は、面積比が測定された溝102を構成する超砥粒204の粒径と頻度とを示すグラフである。超砥粒204の粒径を測定するために、溝102から超砥粒204を取り除く。具体的には、超砥粒204を保持する金属結合材に適した化学薬品による腐食加工または電解研磨により、超砥粒204を取り除く。たとえば、超砥粒204を保持する金属がニッケルの場合、ニッケル用エッチング液に作用面205を浸す。
【0042】
超砥粒204の粒径をMalvern製画像式粒度分布装置モフォロギにより測定する。測定の結果、少なくとも2つのピークP1,P2が存在する。ピークP1,P2間に存在する谷に境界線401を引き、境界線401よりも大径側を第1の超砥粒、境界線401よりも小径側を第2の超砥粒とする。
【0043】
第1の超砥粒の最大粒径D1、第1の超砥粒の最小粒径D2、第2の超砥粒の最大粒径D2、第2の超砥粒の最小粒径D3である。
【0044】
第1の超砥粒および第2の超砥粒の平均粒径はMalvern製画像式粒度分布装置モフォロギにより測定できる。
【0045】
超砥粒204の突出が少ない場合、図6で示す負荷曲線の山がブロードになる。これにより最大頻度の高さを決定することが困難になる。このような場合には、エッチング処理で超砥粒204を保持するメッキ層203を溶かして超砥粒204を突出させることで測定可能になる。
【0046】
この実施の形態においては、溝102において超砥粒204の面積比を測定したが、ダイヤモンドロータリードレッサ100においては、溝102が存在せず図2のX方向において高さが一定であるもの、さらには、X方向において外周に向かって凸形状を示すものがある。これらの場合でも上記の方法で最も集中度が高い部分の面積比を測定する。
【0047】
図9は、作用面205を形成するための超砥粒204の研削方法を説明するための図である。図9で示すように、超砥粒を構成する粗粒の第1の超砥粒1204および微粒の第2の超砥粒2204が台金103上にて固定されている。第1の超砥粒1204の頂面を基準面280としてそこから削り込み量Hを削り込むことで作用面205を形成する。削り込み量Hを大きくすることで作用面205の割合を大きくすることができる。
【0048】
超砥粒層101の断面を見たときに、一定の範囲内において、それぞれの第1の超砥粒1204と台金103との距離の平均値は、それぞれの第2の超砥粒2204と台金103との距離の平均値より小さい。
【0049】
(実施例1)
作用面積比率の違いによる性能差を確認するため、表1に示す仕様のロータリードレッサを製作し、砥石のドレス試験を行った。粗粒および微粒の平均粒径の単位はμmであり、他の表でも同じである。砥石径は300mm、砥石周速度は19.1m/s、砥石回転数は1216rpm、ロータリードレッサ径は70mm、ロータリードレッサ周速度は8.8m/s、ロータリードレッサ回転数は2400rpm、周速度比は0.46、切込み速度は0.3um/rev、ドレスアウトは3sec、砥石はCBN砥粒を用いたビトリファイドボンドホイールとした。
【0050】
【表1】
【0051】
表1において、寿命指数およびドレス時抵抗指数は、試料番号3における寿命およびドレス時抵抗を1とした場合の各試料番号の寿命およびドレス時抵抗の割合を示す。「超砥粒層表面の削り込み量」の単位はμmであり、図9のHに相当する量である。作用面積比率が30%よりも小さい試料では、作用面積比率が30%以上のものに比べても寿命が大幅に短くなる結果となった。
【0052】
また、作用面積比率が60%を超えるものは、このような作用面積比率のものを製造するのに非常に手間がかかり、歩留まりも悪い結果となった。すなわち、超砥粒層表面の削り込み量が大きく手間をかけて65%のものを製作して試験をしたが、ドレス時の抵抗が高く、ビビリ振動が発生する結果となった。
【0053】
さらに従来のロータリードレッサと比較するため、砥粒の平均粒径が650μm1種類のものを製作した。試料番号10から16で示すように作用面積比率の異なるものを製作し、試料番号1から9と比較したら、寿命はドレス時の抵抗は大きな差が無かったが、ロータリードレッサを製作し、作用面積比率を調整するのに非常に手間がかかり、量産するには難しい状況であった。
【0054】
(実施例2)
次に、第1の砥粒と第2の砥粒の粒径比の違い、および砥粒径の最大と最小の比の違いによる差について、試験を行った。
【0055】
これらの粒径比の好ましい範囲を設定しているのは、主にロータリードレッサの性能上の問題よりも高品質のロータリードレッサを製造する上での問題によるものである。
【0056】
この試験では、第1の砥粒の平均粒径は650μmのものにしておき、第2の砥粒の平均粒径を変えていくことで、粒径比の違いと砥粒径の最大と最小の比の違いによる差を確認した。さらに、得られたロータリードレッサを用いて寿命とドレス抵抗を評価した。
【0057】
この実施例2で製造した試料番号21から50を表2および3において示す。
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
この試験では、ロータリードレッサを製作し、砥粒に作用面を形成するために超砥粒層の表面を砥石により削り込んでいく。「超砥粒層表面の削り込み量」の単位はμmであり、図9のHに相当する量である。この削り込む量を段階的に増やしていき、この時の作用面積比率の変化の仕方を見る。さらに、各段階で第1の超砥粒の作用面積比率と第2の超砥粒の作用面積比率も測定し、第2の砥粒がどの程度ドレスに作用する状態になっているかも確認した。超砥粒層の表面を削り込む時の工程を図9に示す。
【0061】
この結果、平均粒径比が30~80%の範囲を外れるものは、どの段階においても第2の超砥粒の作用面積が0%かあるいはごく僅かであった。これに対し、平均粒経比が30~80%に入っているものは第2の超砥粒にも作用面が形成されている割合が高まることが確認された。そのため、第2の超砥粒を入れることで作用面積比率を高める制御がしやすく、高品質のロータリードレッサを容易に製作できることが分かる。
【0062】
また、砥粒径の最大と最小の比の違いで見ると、最大粒径/最小粒径の値が1.3~4を外れるものは、どの段階においても第2の砥粒の作用面積が0%になっていた。最大粒径/最小粒径の値が1.3~4に入るものは、第2の砥粒にも作用面が形成されていた。そのため、第2の超砥粒を入れることで作用面積比率を高める制御がしやすく、高品質のロータリードレッサを容易に製作できることが分かる。
【0063】
そして、実施例1と同様の条件で試料番号21から50を用いて砥石のドレス試験を行った。その結果を表4および5に示す。
【0064】
【表4】
【0065】
【表5】
【0066】
表4および5において、寿命指数およびドレス時抵抗指数は、試料番号3における寿命およびドレス時抵抗を1とした場合の各試料番号の寿命およびドレス時抵抗の割合を示す。表4および5から、実施例1の表1と同様の傾向が現れているのが分かった。
【0067】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0068】
100 ダイヤモンドロータリードレッサ、101 超砥粒層、102 溝、103 台金、105 トリミング領域、202 低融点合金、203 メッキ層、204 超砥粒、205 頂面、280 基準面、401 境界線、1204 第1の超砥粒、2204 第2の超砥粒。
【要約】
ロータリードレッサは、台金に超砥粒がメッキ層により1層に結合された超砥粒層を有するロータリードレッサであって、超砥粒は、第1の平均粒径を有する第1の超砥粒と、第1の平均粒径より小さい第2の平均粒径を有する第2の超砥粒を有し、第1の超砥粒および第2の超砥粒のうち超砥粒層の表面に出ている複数の超砥粒には作用面が形成され、超砥粒の集中度が最も高い領域において、複数の作用面をなだらかに接続する仮想面の面積に対する複数の作用面の合計面積比率が30%以上60%以下である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9