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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】筒状体の内面潤滑装置
(51)【国際特許分類】
   B22D 17/20 20060101AFI20240222BHJP
   F16N 5/00 20060101ALI20240222BHJP
   F16N 7/32 20060101ALI20240222BHJP
   F16N 7/34 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
B22D17/20 H
F16N5/00
F16N7/32 A
F16N7/34
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019240135
(22)【出願日】2019-12-16
(65)【公開番号】P2020104175
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2022-10-12
(31)【優先権主張番号】P 2018248938
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】518006581
【氏名又は名称】株式会社PREX
(73)【特許権者】
【識別番号】518402370
【氏名又は名称】株式会社クローラル
(74)【代理人】
【識別番号】100088867
【弁理士】
【氏名又は名称】西野 卓嗣
(72)【発明者】
【氏名】和田 泰秀
(72)【発明者】
【氏名】橋本 成広
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-142877(JP,A)
【文献】特表2005-518942(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 17/20
B29C 45/17
F16N 5/00
F16N 7/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑剤噴霧ヘッドが筒状体内に位置した状態で、前記潤滑剤噴霧ヘッドから前記筒状体内に潤滑剤を噴霧する装置であって、
前記潤滑剤噴霧ヘッドには、前記筒状体の延在方向に沿って一方の側に向かって潤滑剤を噴霧する一方向噴霧孔と他方の側に向かって潤滑剤を噴霧する他方向噴霧孔とが備えられ
前記潤滑剤噴霧ヘッドには潤滑剤供給管が接続され、当該潤滑剤供給管は潤滑剤供給路を介して一方向噴霧孔と他方向噴霧孔に接続され、
前記一方向噴霧孔に接続される一方の潤滑剤供給路および前記他方向噴霧孔に接続される他方の潤滑剤供給路には、夫々潤滑剤を選択的に遮断する開閉装置が備えられ
前記開閉装置は、常時は閉成され前記空気供給路から空気が供給されることによって開放して潤滑剤の通過を許容するように構成されていることを特徴とする筒状体の内面潤滑装置。
【請求項4】
前記第2の空気供給路の断面積は、前記第1の空気供給路の断面積よりも小である請求項記載の筒状体の内面潤滑装置。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状体の内面潤滑装置であって、特にアルミニウム合金等の非鉄金属用ダイカストマシンの金属溶湯をキャビティへ送るダイカストプランジャの、円筒状のスリーブの内面の潤滑に好適な装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイカストプランジャにおいては、スリーブの内周面を、ピストン状のプランジャチップの外周面が摺動するので、摺動面に摩耗が生じる。場合によってはかじりが生じたりする。これら摩耗やかじりを抑制するため、摺動面に潤滑剤を塗布して摺動を円滑にするのが一般的である。
【0003】
しかし、潤滑剤の塗布量が過剰であったり、あるいは塗布むらにより部分的に過剰であったりすると、余剰分がスリーブ内へ注入された金属溶湯中にガス又は介在物として巻き込まれ、結果的にダイカスト製品に混入して製品欠陥をもたらす。このため、潤滑剤を適切に塗布する技術が種々開示されている。
【0004】
先ず特許文献1に記載の潤滑装置(従来技術)について、図7図8に従い説明する。
図7は従来技術によるダイカストプランジャの軸方向の要部断面図、図8はプランジャチップ、ジョイント、プランジャロッド部分の拡大断面図である。
ダイカストプランジャ101を稼働する際は、チップ102の先端121をスリーブ109の後端111近くまで後退させ、スリーブ109の注湯口110へ金属溶湯をM方向に注入した後、チップ102を前進してスリーブ109内に溜まった金属溶湯をキャビティへ送る。
図7及び図8において、チップ102とロッド103は、それぞれジョイント104との螺合部141、142により結合してある。
【0005】
二流路105は図8に示すように二重管構造をしており、二流路105の外側流路52で空気が供給され、内側流路53で潤滑剤が供給されるようになっている。そして、内側流路153の出口側端154を外側流路152よりも窪入位置にして、この部分にて二流体式噴霧ノズルを構成するようにしてある。
ここで発生した潤滑剤を含む霧状体は円環溝状の分配路106を経由して一流路7へ流れる。
このようにして、潤滑剤を含む霧状体はノズル108からスリーブの内面191に向けて噴射され、潤滑される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-279645号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のような従来装置では、図7、8から明らかなようにまず前記ロッド103にその延在方向に延在する細長い二流路105を穿設しなければならない
また、二流路105はロッド103の中心軸から離間し、冷却水路112とはその断面が同心円ではないので、ロッド103の加工が極めて困難であった。
特に、二流路105を設けるために偏芯位置に長い貫通孔を穿設することは高度な加工技術を必要としかつ長時間を要する。
また、偏心位置に二流路105のための貫通孔が穿設されていると、当該ロッド103に軸方向と平行な方向から力が加えられた場合、その応力はロッド103の径方向に不均一になって曲がりやすくなりスムーズに進退し難くなるという課題もあった。
【0008】
更に、前述および図7から明らかなように、内側流路153の出口側端154を外側流路152よりも窪入位置にしているので、空気と潤滑剤の混合部である内側流路153の出口側端154からノズル108まで距離があって、潤滑剤の霧の粒子が大きくなって、スリーブの内面191を均一に潤滑することができなかった。
本発明は係る従来技術の課題を解決せんとするものであり、プランジャロッドに二流路105を穿設することなく、スリーブの内面191を容易にかつ確実に潤滑することが可能な筒状体の内面潤滑装置である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明は、潤滑剤噴霧ヘッドが筒状体内に位置した状態で、前記潤滑剤噴霧ヘッドから前記筒状体内に潤滑剤を噴霧する装置であって、前記潤滑剤噴霧ヘッドには、前記筒状体の延在方向に沿って一方の側に向かって潤滑剤を噴霧する一方向噴霧孔と、他方の側に向かって潤滑剤を噴霧する他方向噴霧孔とが備えられていることを特徴とする。
本発明によると、前記潤滑剤噴霧ヘッドには、前記筒状体の延在方向に沿って一方の側に向かって潤滑剤を噴霧する一方向噴霧孔と、他方の側に向かって潤滑剤を噴霧する他方向噴霧孔とが備えられているので、前記筒状体内の一方と他方に潤滑剤を確実に噴霧することができる。
【0010】
(2)前記潤滑剤噴霧ヘッドは、前記筒状体内に入出可能に構成されていることが望ましい。
潤滑剤噴霧ヘッドが前記筒状体内に入出可能に構成されていると、必要に応じて筒状体内に潤滑剤を噴霧できる。
特に筒状体がダイカストマシンのスリーブである場合、スリーブに金属溶湯が供給されない工程においてスリーブ内に潤滑剤を噴霧することができる。
【0011】
(3)潤滑剤は、前記一方向噴霧孔と他方向噴霧孔とから選択的に噴霧されることが望ましい。
潤滑剤が前記一方向噴霧孔と他方向噴霧孔とから選択的に噴霧されると、必要に応じて筒状体内の一方側と他方側に潤滑剤を噴霧できる。
特に筒状体がダイカストマシンのスリーブである場合、金属溶湯が送出された後のスリーブ内およびチップの端面側を1台の潤滑剤噴霧ヘッドで選択的に潤滑することが可能となる。
【0012】
(4)潤滑剤は、前記一方向噴霧孔と他方向噴霧孔とから同時に噴霧されてもよい。
潤滑剤が前記一方向噴霧孔と他方向噴霧孔とから同時に噴霧されると、筒状体内の一方側と他方側に同時に潤滑剤を噴霧できる。
特に筒状体がダイカストマシンのスリーブである場合、金属溶湯が送出された後のスリーブ内およびチップの端面側を1台の潤滑剤噴霧ヘッドで同時に潤滑することが可能となる。
【0013】
(5)前記一方向噴霧孔は、前記筒状体の内面の全周に向かって潤滑剤を噴霧する方向に開口されていることが望ましい。
前記一方向噴霧孔は、前記筒状体の内面の全周に向かって潤滑剤を噴霧する方向に開口されていると、一度に前記筒状体の内面の全周を同時に潤滑することができる。
特に筒状体がダイカストマシンのスリーブである場合、例えば金属溶湯が送出された後のスリーブ内全体を一時に潤滑することが可能となる。
【0014】
(6)前記他方向噴霧孔は、前記筒状体の内面の一部に向かって潤滑剤を噴霧する方向に開口されていることが望ましい。
前記他方向噴霧孔は、前記筒状体の内面の一部に向かって潤滑剤を噴霧する方向に開口されていると、必要に応じて適宜の部分を潤滑することが可能となる。
特に筒状体がダイカストマシンのスリーブである場合、金属溶湯が送出された後のチップの端面側の必要に応じた部分を潤滑することが可能となる。
【0015】
(7)前記潤滑剤噴霧ヘッドには複数本の空気供給管が接続され、1本の空気供給管は一方の空気供給路を介して前記一方向噴霧孔に接続され、他の1本の空気供給管は他方の空気供給路を介して前記他方向噴霧孔に接続されていることが望ましい。
1本の空気供給管は一方の空気供給路を介して前記一方向噴霧孔に接続され、他の1本の空気供給管は他方の空気供給路を介して前記他方向噴霧孔に接続されていると、供給された空気は、空気が供給された空気供給管に接続された方の空気供給路を通過して噴霧孔から噴射されることになる。
【0016】
(8)前記潤滑剤噴霧ヘッドには潤滑剤供給管が接続され、当該潤滑剤供給管は潤滑剤供給路を介して一方向噴霧孔と他方向噴霧孔に接続されていることが望ましい。
前記潤滑剤噴霧ヘッドには潤滑剤供給管が接続され、当該潤滑剤供給管は潤滑剤供給路を介して一方向噴霧孔と他方向噴霧孔に接続されていると、1本の潤滑剤供給管から供給された潤滑剤は両方の噴霧孔から噴霧されることになる。
【0017】
(9)前記一方向噴霧孔に接続される一方の潤滑剤供給路および前記他方向噴霧孔に接続される他方の潤滑剤供給路には、夫々潤滑剤を選択的に遮断する開閉装置が備えられていることが望ましい。
潤滑剤供給路に、潤滑剤を選択的に遮断する開閉装置が備えられていると、必要な噴霧孔にのみ潤滑剤を供給することが可能となる。
【0018】
(10)前記開閉装置は、常時は閉成され前記空気供給路から空気が供給されることによって開放して潤滑剤の通過を許容するように構成されていることが望ましい。
前記開閉装置が、常時は閉成され前記空気供給路から空気が供給されることによって開放して潤滑剤の通過を許容するように構成されていると、空気が供給された側の開閉装置のみが開放することになる。
【0019】
(11)前記開閉装置は、前記空気供給路から供給される空気圧によってシリンダ内を移動するピストンによって開閉するように構成されることが望ましい。
前記開閉装置が、前記空気供給路から供給される空気圧によってシリンダ内を移動するピストンによって開閉するように構成されると、空気が供給された側の開閉装置のみが空気圧によって開放することになる。
【0020】
(12)前記潤滑剤噴霧ヘッドにおいて、各空気供給管に接続される第1の空気供給路と第2の空気供給路が連通され、前記第1の空気供給路は前記シリンダに接続され、前記第2の空気供給路は前記噴霧孔に接続されていることが望ましい。
各空気供給管に接続される第1の空気供給路と第2の空気供給路が連通され、前記第1の空気供給路は前記シリンダに接続され、前記第2の空気供給路は前記噴霧孔に接続されていると、連通されている第1の空気供給路および第2の空気供給路から供給される空気が前記シリンダおよび噴霧孔に供給されることになる。
【0021】
(13)前記第2の空気供給路の断面積は、前記第1の空気供給路の断面積よりも小であることが望ましい。
前記第2の空気供給路の断面積が、前記第1の空気供給路の断面積よりも小であると、前記第1の空気供給路から空気が供給された場合、前記第1の空気供給路内の空気圧が前記第2の空気供給路内の空気圧よりも高圧になり、前記シリンダ内のピストンを動作させることになる。
【0022】
(14)本発明は、金属溶湯を円筒状のプランジャスリーブを通過させてキャビティへ送出するための、前記プランジャスリーブ内を往復動するピストン状のプランジャチップが備えられた鋳造ダイカストマシンの、前記プランジャスリーブの内面を潤滑する装置であって、前記プランジャスリーブには前記金属溶湯を供給するための開口が設けられ、前記開口から潤滑剤噴霧ヘッドを前記プランジャスリーブ内に挿入し、前記潤滑剤噴霧ヘッドから前記プランジャスリーブ内に潤滑剤を噴霧するための、前記潤滑剤噴霧ヘッドに、前記プランジャスリーブの延在方向に沿って、前記プランジャチップの往動方向に噴霧する一方向噴霧孔と、前記プランジャチップの復動方向に噴霧する他方向噴霧孔とが備えられていることを特徴とする。
本発明では、前記潤滑剤噴霧ヘッドに、前記プランジャスリーブの延在方向に沿って、前記プランジャチップの往動方向に噴霧する一方向噴霧孔と、前記プランジャチップの復動方向に噴霧する他方向噴霧孔とが備えられているので、前記プランジャチップの往動方向と復動方向に潤滑剤を噴霧することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、前記潤滑剤噴霧ヘッドには、前記筒状体の延在方向に沿って一方の側に向かって潤滑剤を噴霧する一方向噴霧孔と、他方の側に向かって潤滑剤を噴霧する他方向噴霧孔とが備えられているので、前記筒状体内の一方と他方に潤滑剤を確実に噴霧することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施の形態の軸方向の縦断面図である。
図2】本発明の一実施の形態の潤滑剤噴霧ヘッドの縦断面図である。
図3】本発明の一実施の形態の潤滑剤噴霧ヘッドの、前記図2とは断面方向が90度回転した位置にある一部縦断面図である。
図4】本発明の一実施の形態の潤滑剤噴霧ヘッドの前記図3とは反対側から見た部分背面図である。
図5】本発明の一実施の形態の、図1とは断面方向が90度回転した位置にある一部縦断面図である。
図6】本発明の一実施の形態の、図5とは反対側から見た一部縦断面図である。
図7】従来のダイカストプランジャの軸方向の要部断面図である。
図8】前記図7の拡大断面図である。
図9】本発明の他の実施の形態の、3個のアタッチメントが装着されている潤滑剤噴霧ヘッドの側面図である。
図10】本発明の更に他の実施の形態の、3個のアタッチメントが装着されている潤滑剤噴霧ヘッドの側面図である。
図11】本発明の更に他の実施の形態の、2個のアタッチメントが装着されている潤滑剤噴霧ヘッドの側面図である。
図12】本発明の更に他の実施の形態の、2個のアタッチメントが装着されている潤滑剤噴霧ヘッドの側面図である。
図13】本発明の一実施の形態の、空気供給路から吐出される空気と、潤滑剤供給路から吐出される潤滑剤が噴霧孔の上流側にて混合されるアタッチメントが装着されている潤滑剤噴霧ヘッドの断面図である。
図14】本発明の他の形態の、空気供給路から吐出される空気と、潤滑剤供給路から吐出される潤滑剤が噴霧孔の近傍にて混合されるアタッチメントが装着されている潤滑剤噴霧ヘッドの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の一実施の形態であるダイカストマシンのスリーブ(筒状体)2の内部を潤滑する潤滑剤噴霧ヘッド1について図1ないし図6に従い説明する。
図1図5図6において、スリーブ2の上部には金属溶湯を前記スリーブ2内に供給する注湯口3が開設されており、必要に応じて金属溶湯供給装置から注湯口3に金属溶湯が供給される。これらの図に示す状態では金属溶湯供給装置からは金属溶湯が供給されず、金属溶湯供給装置は図示せぬ位置に退避している。
【0026】
チップ4は復動位置にて停止しており、潤滑剤噴霧ヘッド1は、スリーブ2の上部に開設されている注湯口3の上方から挿入され、スリーブ2の中央部分で暫時固定されている。潤滑剤噴霧ヘッド1は図示せぬ手段によってスリーブ2の注湯口3から入出可能となっている。
【0027】
前記潤滑剤噴霧ヘッド1には上部に1本の潤滑剤供給管5が接続され、図1中の左側には2本の空気供給管6が接続されており、下端部近傍の左側には前方に潤滑剤を噴霧する前方噴霧孔(一方向噴霧孔)7が開設され、右側には後方噴霧孔(多方向噴霧孔)8が開設されている。
【0028】
前記前方噴霧孔7は、図6に示すように六角形のアタッチメント9に六角形状に6個穿孔されており、潤滑剤を前記スリーブ2の全内周壁に向けて噴霧するように形成されている。
一方、前記後方噴霧孔8は図7に示すように横長のアタッチメント10に水平に3個穿孔されており、図1に示すように、潤滑剤を主に前記チップ4の前端面の下側に向けて噴霧するように形成されている。
【0029】
次に、図2および図3に従い前記潤滑剤噴霧ヘッド1の内部構造について説明する。
2本の空気供給管6には、夫々鉛直方向に延在する一対の第1の空気供給路11が接続されており、この第1の空気供給路11は下端部で水平方向に屈曲しており、中心軸線が鉛直方向に延在する左右一対のシリンダ12に接続されている。
なお、図中で細い矢印は空気の流れを表し、太い矢印は潤滑剤の流れを表している。
【0030】
また、前記第1の空気供給路11の下端部近傍には、鉛直下方向に延在する前記第1の空気供給路11よりも断面積が小なる一対の第2の空気供給路13が連通接続されている。
この一対の第2の空気供給路13の下端部近傍は水平方向に折曲され、その端部は夫々空気と潤滑剤を混合する一対の混合室18に至っている。
【0031】
前記シリンダ12内には鉛直方向に上下動し得るピストン14が挿入されており、当該ピストン14はコイルバネ15で下方向に付勢されている。なお、前記第1の空気供給路11は、前記ピストン14の拡径部16の下側で前記シリンダ12に接続されている。
前記ピストン14の拡径部16の下側には、鉛直方向に延在するロッド部17が垂下している。
【0032】
前記潤滑剤供給管5には鉛直方向に延在する潤滑剤供給路19が接続されており、その下端部は水平方向に逆T字型に二股に分岐し、夫々が、前記ロッド部17が摺動する一対の円筒部20の下端部近傍に接続されている。
【0033】
前記円筒部20の下端部にも潤滑剤供給路21が連接されており、その下端部近傍は水平方向に折曲され、その端部は夫々前記一対の混合室18に至っている。
前記各シリンダ12の上方には、前記コイルバネ15の付勢力を調節するための調整ボルト22が螺入されている。
【0034】
なお、前記ピストン14はコイルバネ15によって下方に付勢されており、前記のロッド部17の下端部は通常は前記潤滑剤供給路21を遮断しており(図の左側の潤滑剤供給路21を参照)、これが遮断装置として機能する。
【0035】
潤滑剤噴霧ヘッド1の構造は上記のように構成されており、一方の空気供給管6(図2では手前側、図3では左側)に空気が供給されると、当該空気は第1の空気供給路11を通過して右側のシリンダ12の下方に供給されるとともに、第2の空気供給路13を通過して右側の混合室18に供給される。
【0036】
前述のように第2の空気供給路13の断面積は第1の空気供給路11の断面積よりも小であるので、前記第1の空気供給路11内の気圧が上昇し、それによってピストン14はコイルバネ15の付勢力に抗して上昇する。そうすると、前記ロッド部17が上方に摺動し円筒部20の下端部に空隙が生じ(図2の右側の円筒部20参照)、潤滑剤は右側の混合室に供給されることになる。
【0037】
なお、この際、他方の空気供給管6(図2では奥側、図3では右側)には空気が供給されていないので、ピストン14はコイルバネ15の付勢力によって下方に位置し、潤滑剤供給路21は閉塞されることになり、左側の混合室18に潤滑剤は供給されないことになる。
【0038】
右側の混合室18に供給された潤滑剤と空気は、霧状となって前記六角形のアタッチメント9の前方噴霧孔7から前記スリーブ2の全内周壁に向けて噴霧されることとなる。
【0039】
また、他方の空気供給管6(図2では奥側、図3では右側)に空気が供給されると、当該空気は第1の空気供給路11を通過して左側のシリンダ12の下方に供給されるとともに、第2の空気供給路13を通過して左側の混合室18に供給され、前述と同様に左側の混合室18に供給された潤滑剤と空気は、霧状となって前記矩形のアタッチメント10の後方噴霧孔8から前記チップ4の端面の下方に向けて噴霧されることとなる。
【0040】
従って、両方の空気供給管6から空気が供給されると、右側の混合室18に供給された潤滑剤と空気は、霧状となって前記六角形のアタッチメント9の前方噴霧孔7から前記スリーブ2の全内周壁に向けて噴霧されるとともに、同時に左側の混合室18に供給された潤滑剤と空気は、霧状となって前記矩形のアタッチメント10の後方噴霧孔8から前記チップ4の端面の下方に向けて噴霧されることとなる。
【0041】
なお、空気圧や空気量は前記空気供給管6において制御され、潤滑剤の供給量は、調整ボルト22を上下することによって、前記潤滑剤供給路19とそれに連通する潤滑剤供給路21との間の空隙が変化し、それによって制御されることになる。
【符号の説明】
【0042】
1 潤滑剤噴霧ヘッド、2 スリーブ、3 注湯口、4 チップ、5 潤滑剤供給管、6 空気供給管、7 前方噴霧孔(一方向噴霧孔)、8 後方噴霧孔(多方向噴霧孔)、9 アタッチメント、10 アタッチメント、11 第1の空気供給路、12 シリンダ、13 第2の空気供給路、14 ピストン、15 コイルバネ、16 拡径部、17前記ロッド部、18 混合室、19潤滑剤供給路、20 円筒部、21 潤滑剤供給路、22 調整ボルト。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14