(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】生体関連物質の採取キット及び採取方法
(51)【国際特許分類】
G01N 1/10 20060101AFI20240222BHJP
G01N 1/00 20060101ALI20240222BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20240222BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240222BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20240222BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20240222BHJP
C12Q 1/24 20060101ALI20240222BHJP
C12M 1/30 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
G01N1/10 V
G01N1/00 101H
G01N33/48 S
G01N33/53 M
C12M1/34 Z
C12M1/00 A
C12Q1/24
C12M1/30
(21)【出願番号】P 2022524374
(86)(22)【出願日】2021-05-07
(86)【国際出願番号】 JP2021017447
(87)【国際公開番号】W WO2021235236
(87)【国際公開日】2021-11-25
【審査請求日】2023-04-21
(31)【優先権主張番号】P 2020088191
(32)【優先日】2020-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020122748
(32)【優先日】2020-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502338292
【氏名又は名称】ユニバーサル・バイオ・リサーチ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098589
【氏名又は名称】西山 善章
(74)【代理人】
【識別番号】100141025
【氏名又は名称】阿久津 勝久
(72)【発明者】
【氏名】田島 秀二
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】実開平1-152236(JP,U)
【文献】特表2020-503497(JP,A)
【文献】特表2020-544076(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00-1/44
G01N 33/48
G01N 33/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体関連物質の採取具と、前記採取具及び前記生体関連物質の保存溶液を収容する容器本体と、前記容器本体を密閉するキャップ部とを備える、生体関連物質の採取キットであって、
前記採取具は、前記生体関連物質を採取する採取体と、前記採取体を収容する収容体と、前記生体関連物質及び前記保存溶液を前記容器本体の外部から吸引するための吸引用空間と備える、生体関連物質の採取キット。
【請求項2】
請求項1に記載の生体関連物質の採取キットであって、
前記キャップ部は、前記吸引用空間と接続するキャップ側挿入口と、前記キャップ側挿入口を密閉するシールとを備える、生体関連物質の採取キット。
【請求項3】
請求項2に記載の生体関連物質の採取キットであって、
前記シールは、前記外部から穿孔可能なシールである、生体関連物質の採取キット。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の生体関連物質の採取キットであって、
前記採取体は、前記生体関連物質及び前記保存溶液を吸収可能であり、伸縮可能な材料から形成され、
前記採取体を圧縮せずに前記容器本体に配置した非圧縮状態で、前記採取具の一端は、前記容器本体から突出する、生体関連物質の採取キット。
【請求項5】
請求項4に記載の生体関連物質の採取キットであって、
前記採取体を圧縮して前記容器本体に配置した圧縮状態で、前記採取具の一端は、前記容器本体に収容される、生体関連物質の採取キット。
【請求項6】
請求項5に記載の生体関連物質の採取キットであって、
前記圧縮状態で、前記容器本体は前記キャップ部によって密閉される、生体関連物質の採取キット。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の生体関連物質の採取キットであって、
前記収容体は、一つ又は複数の開口を有する、生体関連物質の採取キット。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の生体関連物質の採取キットであって、
前記収容体は、細長い籠体である、生体関連物質の採取キット。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の生体関連物質の採取キットであって、
前記採取具は、前記採取体を前記収容体に対して押圧する押圧体を備える、生体関連物質の採取キット。
【請求項10】
請求項9に記載の生体関連物質の採取キットであって、
前記押圧体は、前記吸引用空間を形成する、生体関連物質の採取キット。
【請求項11】
請求項10又は11に記載の生体関連物質の採取キットであって、
前記押圧体は、管状である、生体関連物質の採取キット。
【請求項12】
請求項9乃至11のいずれか一項に記載の生体関連物質の採取キットであって、
前記採取具は、前記押圧体を前記採取体に対して摺動可能に保持する収容体頭部を備える、生体関連物質の採取キット。
【請求項13】
請求項12に記載の生体関連物質の採取キットであって、
前記収容体頭部は、前記収容体に固定される、生体関連物質の採取キット。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の生体関連物質の採取キットであって、
前記収容体頭部は、前記押圧体に接触する一つ又は複数の突出部を備える、生体関連物質の採取キット。
【請求項15】
生体関連物質を採取する採取具と、前記採取具及び前記生体関連物質の保存溶液を収容する容器本体と、前記容器本体を密閉するキャップ部とを備える、生体関連物質の採取キットであって、
前記採取具は、前記生体関連物質を採取する採取体と、前記採取体を保持すると共に前記生体関連物質及び前記保存溶液を前記容器本体の外部から吸引するための吸引用空間を形成する支持体とを備える、生体関連物質の採取キット。
【請求項16】
請求項15に記載の生体関連物質の採取キットであって、
前記キャップ部は、前記吸引用空間と接続するキャップ側挿入口と、前記キャップ側挿入口を密閉するシールとを備える、生体関連物質の採取キット。
【請求項17】
請求項16に記載の生体関連物質の採取キットであって、
前記シールは、前記外部から穿孔可能なシールである、生体関連物質の採取キット。
【請求項18】
請求項15乃至17のいずれか一項に記載の生体関連物質の採取キットであって、
前記採取体は、液体を吸収可能であり伸縮可能な材料から形成され、
前記採取体を圧縮せずに前記容器本体に配置した非圧縮状態で、前記支持体の一端は、前記容器本体から突出する、生体関連物質の採取キット。
【請求項19】
請求項18に記載の生体関連物質の採取キットであって、
前記採取体を圧縮して前記容器本体に配置した圧縮状態で、前記支持体の一端は、前記容器本体に収容される、生体関連物質の採取キット。
【請求項20】
請求項19に記載の生体関連物質の採取キットであって、
前記圧縮状態で、前記容器本体は前記キャップ部によって密閉される、生体関連物質の採取キット。
【請求項21】
請求項20に記載の生体関連物質の採取キットであって、
前記圧縮状態で、前記保存溶液の液面が前記吸引用空間に位置するような液量で、前記保存溶液が前記容器本体に収容される、生体関連物質の採取キット。
【請求項22】
請求項15乃至21のいずれか一項に記載の生体関連物質の採取キットであって、
前記支持体は、前記生体関連物質及び前記保存溶液を前記外部から吸引するための支持体側挿入口を備える、生体関連物質の採取キット。
【請求項23】
請求項15乃至22のいずれか一項に記載の生体関連物質の採取キットであって、
前記支持体は、前記収容容器の内面側に開口する、1つ又は複数の側面開口を備える、生体関連物質の採取キット。
【請求項24】
請求項15乃至23のいずれか一項に記載の生体関連物質の採取キットであって、
前記支持体は、前記採取体を保持する保持部を備える、生体関連物質の採取キット。
【請求項25】
請求項24に記載の生体関連物質の採取キットであって、
前記保持部は、その上下両端にそれぞれ前記保存溶液及び前記生体関連物質を流通可能とする孔を備える、生体関連物質の採取キット。
【請求項26】
請求項1乃至25のいずれか一項に記載の生体関連物質の採取キットであって、
前記容器本体はラベルを備え、前記ラベルには、バーコード、QRコード(登録商標)、被検者の情報が書き込めるネーム部、の少なくとも一つが形成されている、生体関連物質の採取キット。
【請求項27】
請求項1乃至26のいずれか一項に記載の生体関連物質の採取キットであって、
前記生体関連物質は唾液である、生体関連物質の採取キット。
【請求項28】
請求項1乃至27のいずれか一項に記載の生体関連物質の採取キットを用いる、生体関連物質の採取方法であって、
前記生体関連物質を前記採取具に採取する工程と、
前記採取具を前記容器本体内に収容する工程と、
前記採取体を前記圧縮状態とするために、前記押圧体の一端を押圧して前記採取体を圧縮する工程と、
前記採取体を前記非圧縮状態とするために、前記押圧体の一端の押圧を開放して前記採取体を拡張する工程と、
前記採取体を前記圧縮状態として、前記容器本体を前記キャップ部で密閉する工程とを備える、生体関連物質の採取方法。
【請求項29】
請求項28に記載の生体関連物質の採取方法であって、
前記採取具を圧縮する工程と、前記採取具を拡張する工程とを交互に繰り返す、生体関連物質の採取方法。
【請求項30】
請求項1乃至27のいずれか一項に記載の生体関連物質の採取キットを用いて採取された生体関連物質を検査する検査装置であって、
前記吸引用空間から前記生体関連物質及び前記保存溶液を吸引する分注器を備える、検査装置。
【請求項31】
請求項3又は17に記載の生体関連物質の採取キットを用いて採取された生体関連物質を検査する検査装置であって、
前記穿孔可能なシールを穿孔する穿孔具と、
前記キャップ側挿入口を通過して前記吸引用空間に挿入され、前記吸引用空間から前記生体関連物質及び前記保存溶液を吸引する分注器とを備える、検査装置。
【請求項32】
請求項30又は31に記載の検査装置であって、
前記検査装置は、前記生体関連物質から核酸を抽出し、抽出した核酸を増幅し、増幅した核酸を検査する、検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体関連物質の採取キット及び採取方法に関し、より詳細には、唾液等の生体関連物質に含まれるウイルス等の病原体を採取するための生体関連物質の採取キット及び採取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウイルス等の病原体の検出には、遺伝子工学の発展に伴い普及したポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を利用したPCR法が用いられている。病原体を含む唾液等の生体関連物質を市販の採取キットで採取し、生体関連物質から核酸(DNAまたはRNA)を抽出し、PCR法により核酸を増幅して、増幅された核酸に基づき病原体が検出される。
【0003】
2019年末から新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックに世界はさらされている。COVID-19の検出にはPCR法が用いられている。人体からCOVID-19を採取する際、現時点では鼻から綿棒を挿入し鼻咽頭の粘液を採取し、採取した粘液中のCOVID-19を抽出し、手作業を多く含むPCR法によりCOVID-19の核酸を増幅して、増幅された核酸に基づきCOVID-19を検出している。非特許文献1には、PCR法を用いてCOVID-19を検出する際、鼻咽頭の粘液から採取する手法に比べて、唾液から採取する手法が優れていることが記載されている。
【0004】
一方、唾液等を採取する採取キット(生体試料採取装置)は、例えば、特許文献1に提案されている。特許文献1の生体試料採取装置は、採取器本体10の先端に固定された吸収体12を用いて、唾液を採取するものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Anne L. Wyllie, et. al., “Saliva is more sensitive for SARS-CoV-2 detection in COVID-19 patients than nasopharyngeal swabs”, medRxiv, 2020年4月16日
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
PCR法を用いてCOVID-19を検出する際、全ての処理が自動化されておらず、人手による処理が含まれるため、検出処理数の制限及びコンタミネーションのおそれが生じている。また、特許文献1に記載の生体試料採取装置は、吸収体12に唾液を採取した後、台7上で吸収体12をローラで絞って得た唾液を分析するものである。したがって、特許文献1に記載の生体試料採取装置において、ローラで絞って得た唾液を検査装置に移動するという手作業が発生し、検出処理数の制限及びコンタミネーションのおそれが生じる。
【0008】
そこで、本発明は、PCR装置等の検査装置に唾液等の生体関連物質を効率よく提供することができる、生体関連物質の採取キット及び採取方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の各態様は次の通り構成される。
[態様1]
生体関連物質の採取具と、前記採取具及び前記生体関連物質の保存溶液を収容する容器本体と、前記容器本体を密閉するキャップ部とを備える、生体関連物質の採取キットであって、
前記採取具は、前記生体関連物質を採取する採取体と、前記採取体を収容する収容体と、前記生体関連物質及び前記保存溶液を前記容器本体の外部から吸引するための吸引用空間と備える、生体関連物質の採取キット。
【0010】
[態様2]
態様1に記載の生体関連物質の採取キットであって、
前記キャップ部は、前記吸引用空間と接続するキャップ側挿入口と、前記キャップ側挿入口を密閉するシールとを備える、生体関連物質の採取キット。
[態様3]
態様2に記載の生体関連物質の採取キットであって、
前記シールは、前記外部から穿孔可能なシールである、生体関連物質の採取キット。
[態様4]
態様1乃至3のいずれか一項に記載の生体関連物質の採取キットであって、
前記採取体は、前記生体関連物質及び前記保存溶液を吸収可能であり、伸縮可能な材料から形成され、
前記採取体を圧縮せずに前記容器本体に配置した非圧縮状態で、前記採取具の一端は、前記容器本体から突出する、生体関連物質の採取キット。
【0011】
[態様5]
態様4に記載の生体関連物質の採取キットであって、
前記採取体を圧縮して前記容器本体に配置した圧縮状態で、前記採取具の一端は、前記容器本体に収容される、生体関連物質の採取キット。
[態様6]
態様5に記載の生体関連物質の採取キットであって、
前記圧縮状態で、前記容器本体は前記キャップ部によって密閉される、生体関連物質の採取キット。
[態様7]
態様1乃至6のいずれか一項に記載の生体関連物質の採取キットであって、
前記収容体は、一つ又は複数の開口を有する、生体関連物質の採取キット。
[態様8]
態様1乃至7のいずれか一項に記載の生体関連物質の採取キットであって、
前記収容体は、細長い籠体である、生体関連物質の採取キット。
【0012】
[態様9]
態様1乃至8のいずれか一項に記載の生体関連物質の採取キットであって、
前記採取具は、前記採取体を前記収容体に対して押圧する押圧体を備える、生体関連物質の採取キット。
[態様10]
態様9に記載の生体関連物質の採取キットであって、
前記押圧体は、前記吸引用空間を形成する、生体関連物質の採取キット。
[態様11]
態様10又は11に記載の生体関連物質の採取キットであって、
前記押圧体は、管状である、生体関連物質の採取キット。
[態様12]
態様9乃至11のいずれか一項に記載の生体関連物質の採取キットであって、
前記採取具は、前記押圧体を前記採取体に対して摺動可能に保持する収容体頭部を備える、生体関連物質の採取キット。
【0013】
[態様13]
態様12に記載の生体関連物質の採取キットであって、
前記収容体頭部は、前記収容体に固定される、生体関連物質の採取キット。
[態様14]
態様12又は13に記載の生体関連物質の採取キットであって、
前記収容体頭部は、前記押圧体に接触する一つ又は複数の突出部を備える、生体関連物質の採取キット。
【0014】
[態様15]
生体関連物質を採取する採取具と、前記採取具及び前記生体関連物質の保存溶液を収容する容器本体と、前記容器本体を密閉するキャップ部とを備える、生体関連物質の採取キットであって、
前記採取具は、前記生体関連物質を採取する採取体と、前記採取体を保持すると共に前記生体関連物質及び前記保存溶液を前記容器本体の外部から吸引するための吸引用空間を形成する支持体とを備える、生体関連物質の採取キット。
【0015】
[態様16]
態様15に記載の生体関連物質の採取キットであって、
前記キャップ部は、前記吸引用空間と接続するキャップ側挿入口と、前記キャップ側挿入口を密閉するシールとを備える、生体関連物質の採取キット。
[態様17]
態様16に記載の生体関連物質の採取キットであって、
前記シールは、前記外部から穿孔可能なシールである、生体関連物質の採取キット。
[態様18]
態様15乃至17のいずれか一項に記載の生体関連物質の採取キットであって、
前記採取体は、液体を吸収可能であり伸縮可能な材料から形成され、
前記採取体を圧縮せずに前記容器本体に配置した非圧縮状態で、前記支持体の一端は、前記容器本体から突出する、生体関連物質の採取キット。
【0016】
[態様19]
態様18に記載の生体関連物質の採取キットであって、
前記採取体を圧縮して前記容器本体に配置した圧縮状態で、前記支持体の一端は、前記容器本体に収容される、生体関連物質の採取キット。
[態様20]
態様19に記載の生体関連物質の採取キットであって、
前記圧縮状態で、前記容器本体は前記キャップ部によって密閉される、生体関連物質の採取キット。
[態様21]
態様20に記載の生体関連物質の採取キットであって、
前記圧縮状態で、前記保存溶液の液面が前記吸引用空間に位置するような液量で、前記保存溶液が前記容器本体に収容される、生体関連物質の採取キット。
【0017】
[態様22]
態様15乃至21のいずれか一項に記載の生体関連物質の採取キットであって、
前記支持体は、前記生体関連物質及び前記保存溶液を前記外部から吸引するための支持体側挿入口を備える、生体関連物質の採取キット。
[態様23]
態様15乃至22のいずれか一項に記載の生体関連物質の採取キットであって、
前記支持体は、前記収容容器の内面側に開口する、1つ又は複数の側面開口を備える、生体関連物質の採取キット。
[態様24]
態様15乃至23のいずれか一項に記載の生体関連物質の採取キットであって、
前記支持体は、前記採取体を保持する保持部を備える、生体関連物質の採取キット。
【0018】
[態様25]
態様24に記載の生体関連物質の採取キットであって、
前記保持部は、その上下両端にそれぞれ前記保存溶液及び前記生体関連物質を流通可能とする孔を備える、生体関連物質の採取キット。
[態様26]
態様1乃至25のいずれか一項に記載の生体関連物質の採取キットであって、
前記容器本体はラベルを備え、前記ラベルには、バーコード、QRコード(登録商標)、被検者の情報が書き込めるネーム部、の少なくとも一つが形成されている、生体関連物質の採取キット。
【0019】
[態様27]
態様1乃至26のいずれか一項に記載の生体関連物質の採取キットであって、
前記生体関連物質は唾液である、生体関連物質の採取キット。
[態様28]
態様1乃至27のいずれか一項に記載の生体関連物質の採取キットを用いる、生体関連物質の採取方法であって、
前記生体関連物質を前記採取具に採取する工程と、
前記採取具を前記容器本体内に収容する工程と、
前記採取体を前記圧縮状態とするために、前記押圧体の一端を押圧して前記採取体を圧縮する工程と、
前記採取体を前記非圧縮状態とするために、前記押圧体の一端の押圧を開放して前記採取体を拡張する工程と、
前記採取体を前記圧縮状態として、前記容器本体を前記キャップ部で密閉する工程とを備える、生体関連物質の採取方法。
【0020】
[態様29]
態様28に記載の生体関連物質の採取方法であって、
前記採取具を圧縮する工程と、前記採取具を拡張する工程とを交互に繰り返す、生体関連物質の採取方法。
[態様30]
態様1乃至27のいずれか一項に記載の生体関連物質の採取キットを用いて採取された生体関連物質を検査する検査装置であって、
前記吸引用空間から前記生体関連物質及び前記保存溶液を吸引する分注器を備える、検査装置。
【0021】
[態様31]
態様3又は17に記載の生体関連物質の採取キットを用いて採取された生体関連物質を検査する検査装置であって、
前記穿孔可能なシールを穿孔する穿孔具と、
前記キャップ側挿入口を通過して前記吸引用空間に挿入され、前記吸引用空間から前記生体関連物質及び前記保存溶液を吸引する分注器とを備える、検査装置。
[態様32]
態様30又は31に記載の検査装置であって、
前記検査装置は、前記生体関連物質から核酸を抽出し、抽出した核酸を増幅し、増幅した核酸を検査する、検査装置。
【発明の効果】
【0022】
本発明の生体関連物質の採取キット及び採取方法は、採取した生体関連物質を検査装置に効率よく提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る採取キットを示す斜視図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る採取具を示す分解側面図である。
【
図3】
図2の唾液採取体及び収容体を示す側面図である。
【
図4】
図2の採取具の組立状態を示す斜視図である。
【
図5】唾液採取後の採取具を容器本体に収容する前の状態を示す側面図である。
【
図6】唾液採取後の採取具を容器本体に収容した後の状態を示す側面図である。
【
図7】唾液採取後の採取キットを示す斜視図である。
【
図8】
図7の採取キットからの唾液吸引処理を示す斜視図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態に係る採取キットを示す斜視図である。
【
図12】
図10の採取キットを用いた、唾液の溶出処理を示す概念図である。
【
図13】
図10の採取キットからの吸引処理を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の生体関連物質(例えば唾液)の採取キット及び採取方法に係る各実施形態を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図において、同一部分には同一符号を付し適宜説明を省略する。各図において、各部分の相対的な大きさ及び/又は配置は、原則として正確に図示しているが、本発明はこれらに限定はされない。また、本発明において、採取される生体関連物質は、唾液に限定されず、生体から採取される体液等の任意の生体関連物質を含むことができる。
【0025】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る生体関連物質の採取キット1の構成を、
図1~
図4を用いて説明する。
図1に示すように、採取キット1は、唾液の採取具10と、唾液が採取された採取具10を収容する容器本体22と、容器本体22を密閉するキャップ部24とから構成される。容器本体22には、唾液を希釈及び保存するためにバッファー等の保存溶液が予め注がれ、容器本体22は、キャップ部24で密閉された状態で提供される。保存溶液は、例えば1~2ml程度とすることができる。なお、採取具10は、容器本体22に収容されない状態(
図4)で、提供される。
【0026】
容器本体22の周面には、ラベル26が貼付される。容器本体22は、好ましくは有底円筒状に形成される。ラベル26には、好ましくはIDバーコード又はQRコード(登録商標)が印刷され、より好ましくは被験者の名前や属性等の被験者情報を記載するネーム部を有している。
【0027】
キャップ部24の上面部には、好ましくは、シール28で覆われ閉鎖されたキャップ側挿入口29(破線)が形成されている。シール28は、好ましくは、穿孔可能なアルミ製のシール、又は剥離可能なシールとすることができる。容器本体22の長さは、例えば7~8cmとすることができる。なお、
図1は、唾液等の採取後に採取具10の全体が容器22に収容された状態を示している。
【0028】
次に、採取具10の構造を
図2~
図4を用いて説明する。採取具10は、唾液を吸収可能であって伸縮可能な材料から形成される唾液吸収体(採取体)12と、唾液吸収体12を収容(支持)する収容体(支持体)14と、唾液吸収体12を押圧する押圧体16と、収容体14の上端に取り付けられる(固定される)収容体頭部18とから構成される。
【0029】
唾液吸収体12の形状は、
図3に示すように、好ましくは角柱とすることができる。なお、唾液吸収体12の形状は角柱に限定されず、円柱、又は多角柱とすることもできる。唾液吸収体12は、スポンジ、綿等の繊維、又は多孔質状の軟質材から形成することができる。収容体14は、後述する唾液吸収体12の押圧処理の際に変形しない程度の剛性を有する樹脂から形成することができる。収容体14は、好ましくは、
図2及び
図3に示すように細長い籠体とすることができる。収容体14の外径は、容器本体22の内径より小さく形成されている。収容体14の外径は、好ましくは、容器本体22の内径に対して、80%~90%の値とすることができる。
【0030】
図2及び
図3に示すように、収容体14は、その上端から唾液吸収体12及び押圧体16を受け入れる受入口14aと、受入口14aの周囲で収容体14の外周面から外側に突出するリブ(フランジ)14bと、収容体14の側面に形成される一つ又は複数の側面開口(スリット)14cとから構成される。側面開口14cは、収容体14が収容容器22に収容された状態で、収容容器22の内面側に開口する。唾液及び保存溶液は、側面開口14cを介して収容体14内部に侵入することができる。収容体14は、好ましくは樹脂成型することができる。
【0031】
押圧体16は、
図2に示すように全体として管状であり、その内部が、後述するように唾液及び保存溶液を吸引されるための吸引用空間Sを構成する。押圧体16は、上端開口16aと、押圧体15の下部側面に形成される一つ又は複数の側面開口(スリット)16bと、側面開口16bを形成する細長い一つ又は複数の足部16cとから構成される。足部16cの下端は、唾液吸収体12が収容体14に収容された状態で、唾液吸収体12の上端に接触する。押圧体16は、好ましくは樹脂成型することができる。
【0032】
収容体頭部18は、
図2に示すように、扁平な筒状又はリング状である。収容体頭部18は、収容体頭部18の下側に環状に設けられる複数の爪部18aと、収容体頭部18の上側に環状に設けられる一つ又は複数の突出部18bとから構成される。
図4に示すように収容体14に収容体頭部18を取り付けると、爪部18aはリブ14bと係合して、収容体頭部18を収容体14に対して固定する。一つ又は複数の突出部18bは、収容体頭部18の内側に向いて傾斜している。
図4に示すように収容体14に対して収容体頭部18を固定した状態で、一つ又は複数の突出部18bの先端は、押圧体16の外周面に接触しているため、押圧体16を収容体14に対して軸線方向Aに沿って摺動可能に保持することができる。
【0033】
採取キット1を用いた唾液の採取方法を、
図5~
図7を参照して説明する。唾液採取前、唾液採取キット1は、好ましくは、採取具10と、キャップ部24で密封された容器本体22(保存溶液入り)とが不図示のパッケージにそれぞれ密封されている。採取者(例えば医師又は被採取者等)は、採取具10及び容器本体22をパッケージから取り出し、採取具10の唾液吸収体12に唾液を採取する。唾液の採取は、好ましくは、採取具10の収容体14の上部及び/又は押圧体16を手で持って、口腔内、舌上、又は舌下に、唾液吸収体12を収容する収容体14の下部を配置して、唾液を唾液吸収体12に吸収(採取)することができる。採取される唾液の量は、例えば1ml以上とすることができる。
【0034】
唾液吸収体12が唾液を吸収した後、採取者は、
図5に示すように、採取具10を容器本体22内に挿入する。挿入後、
図6に示すように、容器本体22の上端開口から採取具10の一端又は上部(押圧体16)が上方に突出した状態となる。唾液吸収体12は、伸縮可能であるため、採取者は、
図6の矢印方向Pに唾液吸収体12を押圧して唾液吸収体12を圧縮する。唾液吸収体12は、好ましくは、PVAスポンジから構成することができる。PVAスポンジ製の唾液吸収体12は、唾液等及び保存溶液を吸収することにより、伸縮可能となる。PVAスポンジとは、ポリビニルアルコール(PVA)製で、連続気孔を備えたものである。PVAスポンジは、乾燥状態では硬質だが含水状態では、柔軟性及び/又は弾性を有する。
【0035】
唾液吸収体12が十分に圧縮された状態が、
図1に示されている。
図1の状態で、採取具10(押圧体16)の全体が、容器本体22に収容されている。唾液吸収体12は、好ましくは、弾性変形可能であるため、採取者が採取具10から手を離すと押圧が解放され、唾液吸収体12は容器本体22内で長手方向Aに沿って上方に拡張する。押圧及び開放を交互に複数繰り返すことにより、採取された唾液が保存溶液中に十分に溶出して安定化される。
【0036】
図6に示したように、非押圧時に、採取具10の上部(押圧体16)は、容器本体22の上端から上方に突出長Lだけ突出した状態となっている。突出長Lは、例えば、十分な押圧及び開放を行うために、好ましくは、少なくとも1cm以上、より好ましくは2~3cm以上とすることができる。
【0037】
図7は唾液採取完了後の採取キット1を示しており、
図1の状態の採取具10及び容器本体22がキャップ部24で密閉された状態となっている。唾液吸収体12は圧縮可能であるため、スクリュー式のキャップ部24で圧縮しつつ、容器本体22を密閉することができる。
【0038】
図7の状態で、採取キット1は、PCR検査装置に移送されて唾液に含まれる病原体(ウイルス等)の核酸が分析される。この分析には、好ましくは、プレシジョン・システム・サイエンス株式会社が提供するPCR全自動検査システム(geneLEADシリーズ)を用いることができる。このPCR全自動検査システムは、唾液を採取した採取キット1から人手を介さずにPCR検査を実行することができる。
【0039】
このPCR全自動検査システムは、採取キット1から唾液が溶けた保存溶液を吸引する分注器30を備える。このPCR全自動検査システムは、好ましくは、採取キット1のシール26を穿孔する穿孔具(不図示)を備える。このPCR全自動検査システムは、好ましくは、吸引した唾液を含む保存溶液に対して前処理を実行して病原体の核酸を抽出する抽出処理と、抽出した核酸をPCR法により増幅する増幅処理と、増幅した核酸を検出する検出処理とを自動的に実行することができる。
【0040】
PCR全自動検査システムは、唾液を採取した採取キット1に対して、穿孔具で採取キット1のシール26を穿孔した後、
図8に示すように、分注器30の下端部32(分注器30の分注チップ32)を容器本体22に収容された採取具10内の吸引用空間Sに直接挿入して、唾液が溶けた保存溶液を直接吸引することができる。
【0041】
図1及び
図4に示したように、採取具10の押圧体16は、上端開口16aを有し、全体として有底筒状に形成されており、分注器30の下端部32の挿入を阻害する突起等が無い吸引用空間S(
図2)を有する。したがって、唾液等を含む保存溶液を容器本体22から分注器30で吸引する際、分注器30の下端部32は、キャップ部24の穿孔されたアルミシール26、及びキャップ側挿入口29、上端開口16aを介して、収容体14の吸引用空間S内に位置する、唾液を含む保存溶液までスムーズに挿入可能となる。
【0042】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係る生体関連物質の採取キット101の全体構成を説明する。
図9に示すように、採取キット101は、生体関連物質(唾液)の採取具110と、生体関連物質が採取された採取具110を収容する容器120とから構成される。
【0043】
採取具110は、液体を吸収可能であり伸縮可能な材料から形成される唾液吸収体112(採取体)と、唾液吸収体112を支持するために、唾液吸収体112に比べて剛性が高く非伸縮性の材料から形成されるホルダー114(支持体)とから構成される。ホルダー114は、好ましくは筒状であり、ホルダー114の長手方向(軸線方向)Aに沿って貫通している。唾液吸収体112は、スポンジ、綿等の繊維、多孔質状の軟性材から形成することができる。ホルダー114は、好ましくは、後述する唾液吸収体の押圧処理の際に変形しない程度の剛性を有する樹脂から形成することができる。ホルダー114は、好ましくは、概略円筒状であり、その円筒の外径は、容器本体122の内径より小さく形成されている。ホルダー114の外径は、好ましくは、容器本体122の内径に対して、80%~90%の値とすることができる。
【0044】
容器120は、有底筒状の容器本体122と、容器本体122をスクリュー式で密閉するキャップ部124と、容器本体122の周面に貼付されたラベル126とから構成される。容器本体122は、好ましくは有底円筒状に形成される。ラベル126には、好ましくはIDバーコード又はQRコード(登録商標)が印刷され、より好ましくは被験者の名前や属性等の被験者情報を記載するネーム部を有している。キャップ部124の上面部には、好ましくは、シール128で覆われ閉鎖されたキャップ側挿入口129(破線)を備えている。シール128は、好ましくは、穿孔可能なアルミ製のシール、又は剥離可能なシールとすることができる。容器本体122の長さは、例えば7~8cmとすることができる。
【0045】
図10に示すように、ホルダー114は、一対のアーム部114a、114a(一対の支持材または挟持部)と、アーム部114a、114aに形成される一つ又は複数の側面開口114bと、唾液吸収体112を固定(挟持)するために、一対のアーム部114a、114aのそれぞれの下端に形成された窪みを有する保持部114cと、一対のアーム部114a、114aの上端間に形成されるホルダー側挿入口114dとから構成される。側面開口114bは、収容容器122の内面側に開口している。側面開口114bは、好ましくは、一対のアーム部114a、114aの間の接合部に形成するか、1つのアーム部114aの側面に形成することができる。保持部114cは、好ましくは、上下両端にそれぞれ保存溶液Bを流通可能とする孔114eを有している。ホルダー114は、好ましくは樹脂成型することができる。
【0046】
図10に示すように、唾液吸収体112は、その長手方向(軸線方向)Aに延びる吸収部112a(採取部)と、吸収部112aの上端に接続される被固定部112bとから構成される。吸収部112aは、
図10では四角柱としたが、これに限定されず、多角柱状、円柱状、または球状等の、任意の柱形状とすることができる。吸収部112aの長手方向Aの長さは、好ましくは3~7cm、より好ましくは約5cmとすることができる。被固定部112bは、長手方向(軸線方向)Aに対して実質的に直角な方向に吸収部112aから突出することにより、凸部112cを形成している。
【0047】
図11は、採取キット101の組み立て状態を示している。容器本体122には、唾液等の体液を希釈及び保存するためにバッファー等の保存溶液Bが予め注がれている。唾液吸収体112の被固定部112bがホルダー114の固定部(挟持部)114c(
図11)に挟持された状態で、一対のアーム部114a、114aは一体化される。一対のアーム部114a、114aの一体化は、篏合又は接着によって実行される。これによって、唾液吸収体112は、ホルダー114に対して固定される。この固定状態で唾液吸収体112及びホルダー114は、保存溶液Bが入った容器本体122に収容されて、容器本体122がキャップ部124によって密閉される。保存溶液Bは、例えば1~2ml程度とすることができる。
【0048】
図12を参照しつつ、採取キット101を用いた、唾液の採取方法を説明する。唾液採取前、唾液採取キット101は、好ましくは採取具110と、密封された容器120(保存溶液B入り)とが不図示のパッケージにそれぞれ密封されている。採取者(例えば医師又は被採取者等)は、採取具110及び容器120をパッケージから取り出し、採取具110の唾液吸収体112に唾液を採取する。唾液の採取は、好ましくは、採取具110のホルダー114を手で持って口腔内、舌上、又は舌下に唾液吸収体112を配置して唾液を吸収(採取)することができる。採取される唾液の量は、例えば1ml以上とすることができる。
【0049】
唾液吸収体112が唾液を吸収した後、採取者は、
図12(a)に示すように、採取具110を唾液吸収体112側から容器本体122に挿入し、伸縮性の唾液吸収体112を矢印方向に押圧して圧縮する。次いで、
図12(b)に示すように唾液吸収体112が圧縮された状態において、採取者が採取具110から手を離すと押圧が解放され、
図12(a)に示すように、唾液吸収体112は容器本体122内で長手方向Aに拡張する。押圧及び開放を交互に複数繰り返すことにより、採取された唾液が保存溶液中に十分に溶出して安定化される。
【0050】
図12(a)に示すように、非押圧時に、支持体114の上側は、容器本体122の上端から上方に突出長Lだけ突出した状態となっている。
図12(a)に示すように、十分に押圧された状態では、支持体114の上側は、容器本体122の上端内に収容された状態(同じ高さ又は低い位置)となっている。突出長Lは、例えば、非押圧時の吸収部112aの長手方向の長さの80~90%とすることができる。または、突出長Lは、例えば、非押圧時の吸収部112aの長手方向の長さL1から、押圧時の吸収部112aの長手方向の長さL2(
図12(b))を引いた値とすることもできる。突出長Lは、例えば、十分な押圧及び開放を行うために、好ましくは、少なくとも1cm以上、より好ましくは2~3cm以上とすることができる。
【0051】
図12(c)は、
図12(b)の状態の採取体110及び容器本体122をキャップ部124で密閉した状態を示している。なお、
図12(b)及び(c)の状態において、保存溶液Bの液面は、支持体114内側に形成された吸引用空間Sに位置している。吸収部112aは圧縮可能であるため、スクリュー式のキャップ部124で圧縮しつつ密閉することができる。
【0052】
図12(c)の状態で、採取キット101は、PCR検査装置に移送されて唾液に含まれる病原体(ウイルス等)の核酸が分析される。この分析には、好ましくは、プレシジョン・システム・サイエンス株式会社が提供するPCR全自動検査システム(geneLEADシリーズ)を用いることができる。このPCR全自動検査システムは、唾液を採取した採取キット101から人手を介さずにPCR検査を実行することができる。
【0053】
このPCR全自動検査システムは、採取キット101から唾液が溶けた保存溶液Bを吸引する分注器30を備える。このPCR全自動検査システムは、好ましくは、採取キット101のシール126を穿孔する穿孔具(不図示)を備える。このPCR全自動検査システムは、好ましくは、吸引した唾液を含む保存溶液に対して前処理を実行して病原体の核酸を抽出する抽出処理と、抽出した核酸をPCR法により増幅する増幅処理と、増幅した核酸を検出する検出処理を自動的に実行することができる。
【0054】
PCR全自動検査システムは、唾液を採取した採取キット101に対して、穿孔具で採取キット101のシール126を穿孔した後、
図13に示すように、分注器30の下端部32(分注器30の分注チップ32)を採取キット101内の吸引用空間Sに直接挿入して、唾液が溶けた保存溶液Bを直接吸引することができる。
【0055】
図13に示したように、採取体110は、ホルダー側挿入口114dを有し、筒状に形成されており、分注器30の下端部32の挿入を阻害する突起等が無い吸引用空間Sを有する。したがって、唾液を含む保存溶液Bを容器本体122から分注器30で吸引する際、分注器30の下端部32は、キャップ部124の穿孔されたアルミシール126及びキャップ側挿入口129を介して、支持体114の吸引用空間Sに位置する保存溶液Bまでスムーズに挿入可能となる。
【0056】
第1及び第2の実施形態に用いるバッファー等の保存溶液は、唾液を採取する場合に、必要に応じて次の各添加剤を含むことができる。添加剤としては、唾液に含まれるムチンの凝固を阻害する凝固阻害剤、ムチンを希釈して凝固を阻害する希釈剤、唾液に含まれる酵素を不活化する不活化剤、唾液中のウイルスのRNAの分解を阻害して安定化させる安定化剤、唾液中のウイルスのタンパク質(エンベロープやカプシド)を分解又は変性するタンパク質分解酵素又はタンパク質変性剤、の任意の1つ又は複数とすることができる。
【0057】
1 採取キット
10 採取具
12 唾液吸収体(採取具)
14 収容体(保持体)
16 押圧体
18 収容体頭部
22 容器本体
24 キャップ部
26 ラベル
28 シール
29 キャップ側挿入口
30 分注器
A 長手方向(軸線方向)
P 押圧方向
101 採取キット
110 採取具
112 唾液吸収体(採取体)
114 ホルダー(支持体)
114a アーム部
114b 側面開口
114c 保持部
114d ホルダー側挿入口
120 容器
122 容器本体
124 キャップ部
126 ラベル
128 シール
129 キャップ側挿入口
B 保存溶液
S 吸引用空間