(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】組換えタンパク質を発現させるためのTIS配列およびシグナルペプチド配列の新規の組み合わせ
(51)【国際特許分類】
C12N 15/79 20060101AFI20240222BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240222BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240222BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240222BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240222BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240222BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240222BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
C12N15/79 Z
C12N15/63 Z
C12N15/13 ZNA
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/11 Z
(21)【出願番号】P 2022554809
(86)(22)【出願日】2021-03-17
(86)【国際出願番号】 SE2021050233
(87)【国際公開番号】W WO2021188034
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2022-10-11
(32)【優先日】2020-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(32)【優先日】2020-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(32)【優先日】2020-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(32)【優先日】2020-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(32)【優先日】2020-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(32)【優先日】2020-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】522359512
【氏名又は名称】エックスブレイン バイオファーマ エービー
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミルザデー、キアヴァシュ
(72)【発明者】
【氏名】ランベルグ、ヴェロニカ
(72)【発明者】
【氏名】チャツィッサヴィドウ、ナタリー
(72)【発明者】
【氏名】サミュエルソン、パトリック
(72)【発明者】
【氏名】バシリ、シアヴァシュ
(72)【発明者】
【氏名】エデブリンク、ペル
(72)【発明者】
【氏名】スティヴンソン、ジョアンナ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクストロム、デイヴィッド
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/181162(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/058389(WO,A1)
【文献】BMC Bioinformatics,2008年,Vol.9,232 (p.1-16),doi:10.1186/1471-2105-9-232
【文献】Applied Microbiology and Biotechnology,2018年05月08日,Vol.102,pp.5953-5964,https://doi.org/10.1007/s00253-018-8986-5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C12N 5/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類細胞において組換えタンパク質を発現させるためのDNA構造物であって、前記DNA構造物は、
-TIS配列であるSEQ ID NO:1の核酸配列と、
-シグナルペプチドをコードする核酸配列と
を備え、
SEQ ID NO:1の前記核酸配列は、
-前記シグナルペプチドの1番目のアミノ酸残基をコードする前記核酸配列におけるATG開始コドンと、
-前記シグナルペプチドの2番目のアミノ酸残基をコードする前記核酸配列における前記ATG開始コドンの下流にある最初の2個のヌクレオチドと
を含む、
DNA構造物。
【請求項2】
前記TIS配列は、mRNA転写産物中のタンパク質翻訳開始点として機能するRNAモチーフ中に転写する、請求項1に記載のDNA構造物。
【請求項3】
前記TIS配列は、mRNA転写産物中のタンパク質翻訳開始点として機能するRNAモチーフ中に転写するコザック配列である、請求項1または2に記載のDNA構造物。
【請求項4】
SEQ ID NO:1の前記核酸配列は、
-ATG開始コドンの上流にある6個のヌクレオチドと、
-ATG開始コドンの下流にある2個のヌクレオチドと
を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のDNA構造物。
【請求項5】
シグナルペプチドをコードする前記核酸配列は、SEQ ID NO:2の核酸配列を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のDNA構造物。
【請求項6】
SEQ ID NO:1の前記核酸配列は、
-SEQ ID NO:2におけるATG開始コドンと、
-SEQ ID NO:2の前記核酸配列における前記ATG開始コドンの下流にある最初の2個のヌクレオチドと
を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のDNA構造物。
【請求項7】
前記DNA構造物は前記組換えタンパク質をコードする核酸配列を備え、前記組換えタンパク質は好ましくは抗体であり、前記抗体は最も好ましくはモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、または前記抗体の断片である、請求項1から6のいずれか一項に記載のDNA構造物。
【請求項8】
前記組換えタンパク質をコードする前記核酸配列を備える前記DNA構造物は、モノクローナル抗体、好ましくはIgG4モノクローナル抗体である、請求項7に記載のDNA構造物。
【請求項9】
シグナルペプチドをコードする前記核酸配列は、前記組換えタンパク質をコードする前記核酸配列に動作可能に連結されている、請求項1から8のいずれか一項に記載のDNA構造物。
【請求項10】
前記組換えタンパク質をコードする前記核酸配列は、
-抗体の重鎖をコードする第1の核酸配列と、
-抗体の軽鎖をコードする第2の核酸配列と
を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載のDNA構造物。
【請求項11】
シグナルペプチドをコードする前記核酸配列は、
抗体の前記重鎖をコードする前記第1の核酸配列、および/または
抗体の前記軽鎖をコードする前記第2の核酸配列と
に動作可能に連結されている、請求項10に記載のDNA構造物。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載のDNA構造物を備える発現ベクター。
【請求項13】
請求項1から11のいずれか一項に記載のDNA構造物を備える発現カセットであって、前記発現カセットは、プロモーター、ターミネーター、および選択マーカーを含む、発現カセット。
【請求項14】
請求項1から11のいずれか一項に記載のDNA構造物を備え、好ましくは真核細胞である宿主細胞。
【請求項15】
前記宿主細胞は哺乳類細胞である、請求項14に記載の宿主細胞。
【請求項16】
請求項1から11のいずれか一項に記載のDNA構造物によって発現されるRNA。
【請求項17】
組換えタンパク質をコードする1つまたは複数のオープンリーディングフレーム、またはそれの1つまたは複数のポリペプチド鎖を、請求項1から11のいずれか一項に記載の1つまたは複数のDNA構造物中にクローニングする段階と、
得られた前記核酸配列を宿主細胞中にトランスフェクトする段階であって、前記宿主細胞は好ましくは真核細胞、より好ましくは哺乳類細胞である、段階と
を備える、組換えタンパク質を発現させる方法。
【請求項18】
トランスフェクトされた前記核酸配列を前記宿主細胞のゲノム中に組み込む段階をさらに備える、請求項1
7に記載の方法。
【請求項19】
シグナルペプチドを発現させるためのDNA構造物であって、前記DNA構造物はシグナルペプチドをコードする核酸配列を備え、シグナルペプチドをコードする前記核酸配列はSEQ ID NO:2の核酸配列を含む、DNA構造物。
【請求項20】
請求項
19に記載のDNA構造物を備える発現ベクター。
【請求項21】
請求項
19に記載のDNA構造物を備える発現カセットであって、前記発現カセットは、プロモーター、ターミネーター、および選択マーカーを含む、発現カセット。
【請求項22】
請求項
19に記載のDNA構造物を備える宿主細胞。
【請求項23】
請求項
19に記載のDNA構造物によって発現されるRNA。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のTIS配列を含むDNA構造物に関する。DNA構造物はまた、シグナルペプチドをコードする核酸配列を含んでもよい。加えて、DNA構造物はまた、組換えタンパク質、またはそれの1つまたは複数のポリペプチド鎖をコードする核酸配列を含んでもよい。本発明は、上記DNA構造物を含む発現ベクター、発現カセット、および宿主細胞にさらに関する。さらに、本発明は、宿主細胞によって発現される組換えタンパク質、および組換えタンパク質を発現させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
組換え細胞株における定常状態タンパク質濃度レベルの主要な決定要因は、(1)発現カセットのゲノム組込み部位、(2)プロモーター強度、(3)転写産物の翻訳効率、ならびに(4)分解速度に影響するタンパク質フォールディングおよび翻訳後修飾を包含する。組換えチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株の生成のために、高い発現量を容易にするランダムな組込み部位が、しばしばスクリーニングされる。発現ベクターそのものも、高い転写を生じるプロモーター配列、および適切な翻訳開始を可能にする翻訳開始点(TIS)などの調節要素を含有する[1]。もどかしいことには、高い発現量を容易にするはずの調節要素がすべて選択されるとしても、タンパク質収量は文脈依存的に異なるおそれがある。したがって、組換え細胞株を生成する際に、合理的設計においてガイドとなる解決法が非常に求められている。
【0003】
タンパク質合成は、細胞のエネルギー収支の大きい割合を使い切るため[2]、進化において、タンパク質産生の種々の時期は緻密に調節されてきた。真核細胞翻訳開始期は、12個の開始因子を必要とし、タンパク質合成中の律速段階と考えられている[3]。この開始期はおそらく、エネルギー消費を最小限にするために、進化中、緻密に調節されるようになった。翻訳開始の効率を調節する主要な要素は、ATG開始コドンを取り囲むmRNAヌクレオチド配列に埋め込まれている。TIS内のこのヌクレオチドバイアスは、1980年代に発見され、コザック配列として一般的に公知である[4]。それ以来、リボソーム構造の研究により、TIS配列が、いかにリボソームと相互作用し、翻訳開始のためのコンフォメーションの変更を生じさせるかが明らかになってきた[5]。それらの生物学的影響に起因して、種々の強度を有するTIS配列は、正確な開始部位のための、および発現量を微調整するための指標として自然に進化してきた[6]。
【0004】
通常、天然に存在する強いTIS配列は、組換え産生物のために発現ベクターを改変する場合に選択される。他のTISの変異体の中でも、ATG開始コドンに先行する哺乳動物コンセンサス配列GCCACC[7]が、その場限りの構造設計中に定型的に導入される。この配列は、天然に見出される高度に発現された遺伝子に一般的であり、大量の転写産物のための翻訳開始速度を微調整することによって生物の適応度を高めると考えられる。自然進化とは対照的に、流加組換え発現条件は、プロテオームを変化させ、細胞に対して代謝負担を課すものであり、これは決して自然環境を模倣するものではない[8]。その結果として、最近の研究では、組換え実験のための最適な翻訳速度をもたらす共通の配列特徴を同定するべく、TISライブラリーを実験的にスクリーニングすることに焦点が当てられている[9、10]。
【0005】
しかしながら、先行技術では、確実に使用し得る1つのユニークでユニバーサルな配列は示唆されていない。その結果として、GCCACCATG配列より良好な技術的効果を提供できるTIS配列が必要とされている。
【0006】
さらに、哺乳類細胞は、組換え生物製剤の産生のための宿主として一般的に使用される。チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞由来の細胞株は、g/L範囲での産生収量を定型的に可能にし得る。しかしながら、この分野における進歩にもかかわらず、発現量は予測不能に、かつ文脈依存的に変動し得、細胞株発達中に所望の発現量を得るための合理的設計を限定する。この問題を解決するべく、抗体の力価および産生性に最終的に影響を与えることを目標として、本発明において翻訳開始点(TIS)を変化させた。
【0007】
[発明の目的]
本発明の目的は、翻訳開始速度を増大させることである。
【0008】
本発明のさらなる目的は、タンパク質の品質に影響を与えずに翻訳開始速度を増大させることである。
【0009】
本発明のさらなる目的は、タンパク質の生物学的類似性を維持しながら翻訳開始速度を増大させることである。
【0010】
本発明のさらなる目的は、翻訳後修飾を維持しながら翻訳開始速度を増大させることである。
【0011】
本発明のさらなる目的は、グリカンに基づく翻訳後修飾を維持しながら翻訳開始速度を増大させることである。
【0012】
本発明のさらなる目的は、種の酸性および塩基性分布を維持しながら翻訳開始速度を増大させることである。
【0013】
本発明のさらなる目的は、組換えタンパク質の発現を増大させることである。
【0014】
本発明のさらなる目的は、組換えタンパク質の力価を増大させることである。
【0015】
本発明のさらなる目的は、抗体またはそれの断片の力価を増大させることである。
【0016】
本発明のさらなる目的は、モノクローナル抗体の力価を増大させることである。
【発明の概要】
【0017】
本発明の目的は、特許請求の範囲において開示される主題、および下記の本発明の態様において開示される主題によって達成される。
【0018】
本発明の第1の態様は、哺乳類細胞において組換えタンパク質を発現させるのに好適なDNA構造物に関し、DNA構造物は、SEQ ID NO:1の核酸配列を有し、SEQ ID NO:1の核酸配列はTIS配列である。
【0019】
好ましい実施形態において、SEQ ID NO:1の核酸配列は、
-ATG開始コドンの上流にある6個のヌクレオチド、および/または
-ATG開始コドンの下流にある2個のヌクレオチド
を含む。
【0020】
好ましい実施形態において、DNA構造物は、シグナルペプチドをコードする核酸配列をさらに有する。
【0021】
好ましい実施形態において、DNA構造物は、組換えタンパク質、またはそれの1つまたは複数のポリペプチド鎖をコードする核酸配列をさらに有する。
【0022】
本発明の第2の態様は、哺乳類細胞において組換えタンパク質を発現させるためのDNA構造物に関し、DNA構造物は、
-TIS配列であるSEQ ID NO:1の核酸配列と、
-シグナルペプチドをコードする核酸配列と
を有する。
【0023】
好ましい実施形態において、SEQ ID NO:1の核酸配列は、
-ATG開始コドンの上流にある6個のヌクレオチド、および/または
-ATG開始コドンの下流にある2個のヌクレオチド
を含む。
【0024】
好ましい実施形態において、シグナルペプチドをコードする核酸配列は、SEQ ID NO:2の核酸配列を含む。
【0025】
好ましい実施形態において、SEQ ID NO:1の核酸配列は、
-シグナルペプチドの1番目のアミノ酸残基をコードする核酸配列におけるATG開始コドンと、
-シグナルペプチドの2番目のアミノ酸残基をコードする核酸配列におけるATG開始コドンの下流にある最初の2個のヌクレオチドと
を含む。
【0026】
好ましい実施形態において、SEQ ID NO:1の核酸配列は、
-SEQ ID NO:2におけるATG開始コドンと、
-SEQ ID NO:2の核酸配列におけるATG開始コドンの下流にある最初の2個のヌクレオチドと
を含む。
【0027】
本発明の第3の態様は、哺乳類細胞において組換えタンパク質を発現させるためのDNA構造物に関し、DNA構造物は、
-TIS配列であるSEQ ID NO:1の核酸配列と、
-シグナルペプチドをコードする核酸配列と、
-組換えタンパク質、好ましくはモノクローナル抗体、より好ましくはIgG4モノクローナル抗体のためにコードする核酸配列と
を有する。
【0028】
好ましい実施形態において、SEQ ID NO:1の核酸配列は、
-ATG開始コドンの上流にある6個のヌクレオチド、および/または
-ATG開始コドンの下流にある2個のヌクレオチド
を含む。
【0029】
好ましい実施形態において、シグナルペプチドをコードする核酸配列は、SEQ ID NO:2の核酸配列を含む。
【0030】
好ましい実施形態において、SEQ ID NO:1の核酸配列は、
-シグナルペプチドの1番目のアミノ酸残基をコードする核酸配列におけるATG開始コドンと、
-シグナルペプチドの2番目のアミノ酸残基をコードする核酸配列におけるATG開始コドンの下流にある最初の2個のヌクレオチドと
を含む。
【0031】
好ましい実施形態において、SEQ ID NO:1の核酸配列は、
-SEQ ID NO:2におけるATG開始コドンと、
-SEQ ID NO:2の核酸配列におけるATG開始コドンの下流にある最初の2個のヌクレオチドと
を含む。
【0032】
好ましい実施形態において、シグナルペプチドをコードする核酸配列は、組換えタンパク質のためにコードする核酸配列に動作可能に連結されている。
【0033】
本発明の第4の態様は、哺乳類細胞において組換えタンパク質を発現させるためのDNA構造物に関し、DNA構造物は、
-SEQ ID NO:1の核酸配列をそれぞれが含む、第1および第2の核酸配列であって、SEQ ID NO:1の核酸配列はTIS配列である、第1および第2の核酸配列と、
-シグナルペプチドをコードする第1の核酸配列と、
-シグナルペプチドをコードする第2の核酸配列と、
-抗体の重鎖をコードする第1の核酸配列と、
-抗体の軽鎖をコードする第2の核酸配列と
を有する。
【0034】
好ましい実施形態において、SEQ ID NO:1の核酸配列は、
-ATG開始コドンの上流にある6個のヌクレオチド、および/または
-ATG開始コドンの下流にある2個のヌクレオチド
を含む。
【0035】
好ましい実施形態において、シグナルペプチドをコードする核酸配列は、SEQ ID NO:2の核酸配列を含む。
【0036】
好ましい実施形態において、シグナルペプチドをコードする第1および第2の核酸配列はそれぞれ、SEQ ID NO:2の核酸配列を含む。
【0037】
好ましい実施形態において、それぞれがSEQ ID NO:1の核酸配列を含む第1および第2の核酸配列は、
-シグナルペプチドの1番目のアミノ酸残基をコードする第1および第2の核酸配列におけるATG開始コドンと、
-シグナルペプチドの2番目のアミノ酸残基をコードする第1および第2の核酸配列におけるATG開始コドンの下流にある最初の2個のヌクレオチドと
を含む。
【0038】
好ましい実施形態において、SEQ ID NO:1の核酸配列を含む第1および第2の核酸配列は、
-シグナルペプチドをコードする第1および第2の核酸配列のSEQ ID NO:2におけるATG開始コドンと、
-シグナルペプチドをコードする第1および第2の核酸配列のSEQ ID NO:2におけるATG開始コドンの下流にある最初の2個のヌクレオチドと、
を含む。
【0039】
好ましい実施形態において、シグナルペプチドをコードする第1の核酸配列は、抗体の重鎖をコードする第1の核酸配列に動作可能に連結されている。
【0040】
好ましい実施形態において、シグナルペプチドをコードする第2の核酸配列は、抗体の軽鎖をコードする第2の核酸配列に動作可能に連結されている。
【0041】
好ましい実施形態において、抗体の重鎖をコードする第1の核酸配列は、SEQ ID NO:5のアミノ酸配列をコードする。
【0042】
好ましい実施形態において、抗体の軽鎖をコードする第2の核酸配列は、SEQ ID NO:7のアミノ酸配列をコードする。
【0043】
好ましい実施形態において、それぞれ抗体の重鎖および軽鎖のためにコードする第1および第2の核酸配列はそれぞれ、SEQ ID NO:5およびSEQ ID NO:7のアミノ酸配列をコードする。
【0044】
好ましい実施形態において、抗体の重鎖をコードする第1の核酸配列は、SEQ ID NO:4の配列を含む。
【0045】
好ましい実施形態において、抗体の軽鎖のためにコードする第2の核酸配列は、SEQ ID NO:6の配列を含む。
【0046】
好ましい実施形態において、それぞれ抗体の重鎖および軽鎖をコードする第1および第2の核酸配列はそれぞれ、SEQ ID NO:4およびSEQ ID NO:6の配列を含む。
【0047】
好ましい実施形態において、DNA構造物は、SEQ ID NO:8およびSEQ ID NO:9の核酸配列を有する。得られる抗体の重鎖および軽鎖は、それぞれ、切断されたシグナルペプチド、または切断されていないシグナルペプチドを含んでもよい。シグナルペプチドが切断されていない場合、切断されていないシグナルペプチドを有する上記重鎖および軽鎖のそれぞれは、それぞれSEQ ID NO:10およびSEQ ID NO:11のアミノ酸配列を含む。
【0048】
好ましい実施形態において、DNA構造物は、SEQ ID NO:12およびSEQ ID NO:13の核酸配列を有する。得られる抗体の重鎖および軽鎖は、それぞれ、切断されたシグナルペプチド、または切断されていないシグナルペプチドを含んでもよい。シグナルペプチドが切断されていない場合、切断されていないシグナルペプチドを有する上記重鎖および軽鎖のそれぞれは、それぞれSEQ ID NO:10およびSEQ ID NO:11のアミノ酸配列を含む。
【0049】
本発明の第5の態様は、アミノ酸配列をコードする核酸配列を含むDNA構造物に関し、アミノ酸配列は、
-ニボルマブ(Opdivo、CAS番号946414-94-4)のためのアミノ酸配列と、
-ニボルマブの重鎖アミノ酸配列に融合されたSEQ ID NO:3のシグナルペプチドと、
-ニボルマブの軽鎖アミノ酸配列に融合されたSEQ ID NO:3のシグナルペプチドと
を含む。
【0050】
好ましい実施形態において、ニボルマブの重鎖アミノ酸配列は、SEQ ID NO:5の配列を含む。
【0051】
好ましい実施形態において、ニボルマブの軽鎖アミノ酸配列は、SEQ ID NO:7の配列を含む。
【0052】
本発明の第6の態様は、本発明の第1~第5の態様のうちのいずれか1つによるDNA構造物を備える発現ベクターに関する。
【0053】
好ましい実施形態において、発現ベクターは、以下の核酸要素、
-プロモーター、
-ターミネーター、
-選択マーカー、
-複製起点、および/または
-抗生物質耐性マーカー
のうちの1つまたは複数を備え、
発現ベクターは、制限酵素によって切断可能な少なくとも1個のマルチクローニングサイトをさらに備え、好ましくは、制限酵素は、EcoRI、NdeI、NotI、XhoI、PspXI、PaeR71、BbsI、StyI、AvrII、BanI、Acc65I、KpnI、Eco53kI、SacI、BamHI、XbaI、SalI、AccI、PstI、SbfI、SphI、またはHindIIIである。
【0054】
好ましい実施形態において、選択マーカーは、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)またはグルタミンシンテターゼ(GS)をコードする遺伝子を有する。
【0055】
本発明の第7の態様は、本発明の第1~第5の態様のうちのいずれか1つによるDNA構造物を備える発現カセットに関する。
【0056】
本発明の第8の態様は、本発明の第1~第5の態様のうちのいずれか1つによるDNA構造物を備える宿主細胞に関し、上記宿主細胞は好ましくは真核細胞、より好ましくは哺乳類細胞である。
【0057】
好ましい実施形態において、宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。
【0058】
好ましい実施形態において、宿主細胞は、CHO-DG44細胞またはCHO GS-/-細胞である。
【0059】
本発明の第9の態様は、本発明の第1~第5の態様のうちのいずれか1つによるDNA構造物によって発現される組換えタンパク質に関する。
組換えタンパク質は、1つまたは複数のポリペプチド鎖を含んでもよい。
【0060】
好ましい実施形態において、組換えタンパク質は、抗体、抗体断片、酵素、およびホルモンである。
【0061】
好ましい実施形態において、組換えタンパク質は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、または上記モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体の断片である。
【0062】
好ましい実施形態において、組換えタンパク質は、ニボルマブである。ニボルマブはヒトIgG4モノクローナル抗体である。それは、Opdivoの商品名で販売され、いくつかのタイプの癌を治療するのに使用される薬剤である治療抗体である。これには、悪性黒色腫、肺癌、腎細胞癌、ホジキンリンパ腫、頭頸部癌、大腸癌、および肝臓癌が含まれる。それは典型的に、静脈への緩徐な注射によって使用される。
【0063】
本発明の第10の態様は、本発明の第1~第5の態様のうちのいずれか1つによるDNA構造物によって発現されるRNAに関する。
【0064】
本発明の第11の態様は、
a.組換えタンパク質をコードする1つまたは複数のオープンリーディングフレーム、またはそれの1つまたは複数のポリペプチド鎖を、本発明の第1~第3の態様のうちのいずれか1つによる1つまたは複数のDNA構造物中にクローニングする段階と、
b.得られた核酸配列を宿主細胞中にトランスフェクトする段階であって、宿主細胞は好ましくは真核細胞、より好ましくは哺乳類細胞である、段階と
を含む、組換えタンパク質を発現させる方法に関する。
【0065】
好ましい実施形態において、方法は、トランスフェクトされた核酸配列を宿主細胞のゲノム中に組み込む段階をさらに含む。
【0066】
本発明の第13の態様は、
a.本発明の第4または第5の態様によるDNA構造をクローニングする段階と、
b.得られた核酸配列を宿主細胞中にトランスフェクトする段階であって、宿主細胞は好ましくは真核細胞、より好ましくは哺乳類細胞である、段階と
を含む、組換えタンパク質を発現させる方法に関する。
【0067】
好ましい実施形態において、方法は、トランスフェクトされた核酸配列を宿主細胞のゲノム中に組み込む段階をさらに含む。
【0068】
本発明の第14の態様は、任意のタイプの宿主細胞(原核細胞、真核細胞、および/または酵母細胞を含む)においてシグナルペプチドを発現させるためのDNA構造物に関し、DNA構造物はシグナルペプチドをコードする核酸配列を有し、シグナルペプチドをコードする核酸配列はSEQ ID NO:2の核酸配列を含む。SEQ ID NO:2の核酸配列は、SEQ ID NO:3のアミノ酸配列を含むシグナルペプチドをコードする。さらなる態様は、上記DNA構造物を含む発現ベクター、発現カセット、および宿主細胞に関する。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【
図1】TIS
EVOを含有するミニプールに関する、抗体産生が高い細胞培養物を同定する増大された可能性-チャートは、TIS
CON(黒色)またはTIS
EVO(中空)を含有するミニプールに関する、回収日における力価の値(g/L)を表す。
【0070】
【
図2】TIS
EVOを含有するミニプールに関する、抗体産生が高い細胞培養物を同定する増大された可能性-チャートは、TIS
CON(黒色)またはTIS
EVO(中空)を含有するミニプールに関する、回収日における平均産生性、平均Qp、(pg/c/d)を表す。
【0071】
【
図3】モノクローナル抗体(mAb)発現CHO-DG44細胞株の力価および比産生性の比較-TIS
CON(黒点)またはTIS
EVO(中空の点)を持つ細胞株の最終累積力価の値(g/L)。
【0072】
【
図4】mAb発現CHO-DG44細胞株の力価および比産生性の比較-TIS
CON(黒点)またはTIS
EVO(中空の点)を持つ細胞株の最終累積比産生性、Qp、(pg/c/d)。
【0073】
【
図5】商業的に得られるニボルマブ(すなわち、これらのサンプルはTIS
CONおよびTIS
EVOを使用せずに作製された)のグリカンのプロフィール。
【0074】
【
図6】TIS
CON含有ミニプールに由来するニボルマブ変異体のグリカンのプロフィール。
【0075】
【
図7】TIS
EVO含有ミニプールに由来するニボルマブ変異体のグリカンのプロフィール。
【0076】
【
図8】TIS
CONミニプールに由来するニボルマブ変異体の電荷分布。先発品はAAX2414と標識されている。
【0077】
【
図9】TIS
EVOミニプールに由来するニボルマブ変異体の電荷分布。先発品はAAX2414と標識されている。
【発明を実施するための形態】
【0078】
当技術分野において、TIS配列は、mRNA転写産物中のタンパク質翻訳開始点(TIS)として機能するRNA配列と呼ばれることがある[9]。しかしながら、本発明においてはその代わりに、TIS配列という用語は、上記RNA配列を転写するDNA配列を指す。
【0079】
確実に使用され得る1つのユニークでユニバーサルな配列を先行技術の研究が提案していないため、本発明者は、哺乳類細胞において抗体を産生するための組換え発現系において先行技術のGCCACCATGGA配列(本明細書でTISCONと標識される)よりも良好な技術的効果を提供する新規の核酸TIS配列(本明細書でTISEVOと呼ばれる)を設計した。
【0080】
本明細書でTISEVOと呼ばれる新規のTIS配列は、本発明においてSEQ ID NO:1とも呼ばれるTCGGTCATGGCの核酸配列を含む。
【0081】
本発明において、核酸という用語は、互いに共有結合された少なくとも2個のヌクレオチドを意味する。さらに、一本鎖の開示は相補鎖の配列も開示する。したがって、核酸配列は、開示される一本鎖の相補鎖も包含する。
【0082】
SEQ ID NO:1の核酸配列は、哺乳類細胞において組換えタンパク質を発現させるのに好適であるDNA構造物中に含まれる。SEQ ID NO:1のTISEVO核酸配列は、
-ATG開始コドンの(すぐ)上流にある6個のヌクレオチド(すなわち、ATG開始コドンのAが+1の位置である、-6から-1までの位置のヌクレオチドを含む)と、
-ATG開始コドンの(すぐ)下流にある2個のヌクレオチド(すなわち、ATG開始コドンのGが+3の位置である、+4から+5までの位置のヌクレオチドを含む)と
を含む。
【0083】
本発明において、DNA構造物という用語は、宿主細胞に(例えば、発現ベクターまたは発現カセットを使用することによって)挿入されることになる核酸の人工的に構築されたセグメントを意味する。
【0084】
TISEVO核酸配列は、mRNA転写産物中のタンパク質翻訳開始点として機能するUCGGUCAUGGCのRNA配列(本明細書でSEQ ID NO:14とも呼ばれる)中に転写する。換言すると、TISEVO核配列はコザック様配列である。
【0085】
上に言及するDNA構造物は、シグナルペプチドをコードする核酸配列さらに含んでもよい。そのようなDNA構造物において、SEQ ID NO:1の核酸配列は、
-シグナルペプチドの1番目のアミノ酸残基をコードする核酸配列におけるATG開始コドンと、
-シグナルペプチドの2番目のアミノ酸残基をコードする核酸配列におけるATG開始コドンの下流にある最初の2個のヌクレオチドと
を含んでもよい。
【0086】
本発明において、シグナルペプチドという用語は、発現されることになる組換えタンパク質のN末端に融合されたリーダーペプチドを指す。シグナルペプチドは、組換えタンパク質が、産生される宿主細胞から分泌されるのを容易にする。シグナルペプチドは典型的に、細胞からの分泌時に残部から切断される。
【0087】
本発明のある実施形態において、本発明によるシグナルペプチドをコードする核酸配列は、シグナルペプチドのN末端の終端に1番目のアミノ酸としてメチオニン(M)を有するシグナルペプチドを発現する核酸配列の修飾を含む。
そのようなシグナルペプチドは、Kober et al[11]、Haryadi R.et al[12]、US10066019、Ramezani A.et al[15]、およびPeng L.et al[16]に記載のものから選択されてもよく、これらのすべては、真核宿主細胞における組換えタンパク質発現のためのシグナルペプチドの使用に関する。本発明による修飾は、ATG開始コドンの下流にある1番目のコドンを、最初の2個のヌクレオチドをGCに交換することによって変更することを包含する。得られるシグナルペプチドは、シグナルペプチドのN末端の終端にある最初の2個のアミノ酸としてMAを含む。
【0088】
本発明のある実施形態において、シグナルペプチドをコードする核酸配列は、SEQ ID NO:2の核酸配列を含む。そのようなDNA構造物において、SEQ ID NO:1の核酸配列は、
-SEQ ID NO:2におけるATG開始コドンと、
-SEQ ID NO:2の核酸配列におけるATG開始コドンの下流にある最初の2個のヌクレオチドと
を含むことになる。
【0089】
DNA構造物は、組換えタンパク質をコードする核酸配列さらに含んでもよい。そのようなDNA構造物において、シグナルペプチドをコードする核酸配列は、組換えタンパク質をコードする核酸配列に動作可能に連結されていてもよい。組換えタンパク質は、抗体、多量体タンパク質、単量体タンパク質、酵素、および/またはホルモンであってもよい。しかしながら、他の組換えタンパク質も想定され得る。
【0090】
抗体という用語は、本発明において、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、またはそれらの断片に属するものとされる。そのような抗体の断片(本明細書で抗体断片とも呼ぶ)は、抗原結合部位または可変領域を含むインタクト抗体の一部である。抗体断片は、Fab断片、Fab'断片、Fab'-SH断片、F(ab')2断片、Fd断片、Fv断片、二重特異性抗体、三重特異性抗体、および/または単鎖Fv(scFv)分子であってもよい。
【0091】
本発明のある実施形態において、DNA構造物は、
-2個のSEQ ID NO:1の核酸配列と、
-シグナルペプチドをコードする2個の核酸配列と、
-組換えタンパク質と
を含み、
シグナルペプチドをコードする核酸配列は、同じ配列であっても異なる配列であってもよい、すなわち、シグナルペプチドは同じシグナルペプチドであっても異なるシグナルペプチドであってもよい。同じまたは異なるシグナルペプチドを発現するベクターの構築は、Kober et al[11]、Haryadi R.et al[12]、およびLi F.et al[13]に記載されるように、当技術分野で公知である。組換えタンパク質は、好ましくは抗体である。さらに、シグナルペプチドをコードする核酸配列のそれぞれは、組換えタンパク質の2個の核酸配列(重鎖および軽鎖をコードする核酸配列など)に動作可能に連結されている。
【0092】
本発明のある実施形態において、DNA構造物は、
-それぞれがSEQ ID NO:1の核酸配列を含む第1および第2の核酸配列と、
-シグナルペプチドをコードする第1の核酸配列と
-シグナルペプチドをコードする第2の核酸配列と、
-抗体の重鎖をコードする第1の核酸配列と、
-抗体の軽鎖をコードする第2の核酸配列と
を含む。
【0093】
そのようなDNA構造物において、SEQ ID NO:1の第1および第2の核酸配列は、
-シグナルペプチドをコードする第1および第2の核酸配列におけるATG開始コドンと、
-シグナルペプチドをコードする第1および第2の核酸配列におけるATG開始コドンの下流にある最初の2個のヌクレオチドと
を含む。
【0094】
シグナルペプチドをコードする第1の核酸配列は、抗体の重鎖をコードする第1の核酸配列に動作可能に連結されている。同様に、シグナルペプチドをコードする第2の核酸配列は、抗体の軽鎖をコードする第2の核酸配列に動作可能に連結されている。
【0095】
本発明のある実施形態において、シグナルペプチドをコードする第1および第2の核酸配列のDNA構造物はそれぞれ、SEQ ID NO:2の核酸配列を有してもよい。
そのようなDNA構造物において、SEQ ID NO:1の第1および第2の核酸配列は、
-シグナルペプチドをコードする第1および第2の核酸配列のSEQ ID NO:2におけるATG開始コドンと、
-シグナルペプチドをコードする第1および第2の核酸配列のSEQ ID NO:2におけるATG開始コドンの下流にある最初の2個のヌクレオチドと、
を含む。
【0096】
抗体の重鎖をコードする第1の核酸配列は、SEQ ID NO:5のアミノ酸配列をコードしてもよい。抗体の軽鎖をコードする第2の核酸配列は、SEQ ID NO:7のアミノ酸配列をコードしてもよい。
【0097】
抗体の重鎖をコードする第1の核酸配列は、SEQ ID NO:4の核酸配列を含んでもよい。抗体の軽鎖のためにコードする第2の核酸配列は、SEQ ID NO:6の核酸配列を含んでもよい。
【0098】
DNA構造物は、SEQ ID NO:8またはSEQ ID NO:12の核酸配列を含んでもよく、上記配列は、
-SEQ ID NO:1の核酸配列を含む第1の核酸配列と、
-SEQ ID NO:2の核酸配列を含む、シグナルペプチドをコードする第1の核酸配列と、
-SEQ ID NO:4の核酸配列を含む、抗体の重鎖をコードする第1の核酸配列と、
を含み、
SEQ ID NO:1の第1の核酸配列は、
-シグナルペプチドをコードする第1の核酸配列のSEQ ID NO:2におけるATG開始コドンと、
-上記ATG開始コドンの下流にある最初の2個のヌクレオチドと
を含む。
【0099】
DNA構造物は、SEQ ID NO:9またはSEQ ID NO:13の核酸配列を含んでもよく、上記配列は、
-SEQ ID NO:1の核酸配列を含む第2の核酸配列と、
-SEQ ID NO:2の核酸配列を含む、シグナルペプチドをコードする第2の核酸配列と、
-SEQ ID NO:6の核酸配列を含む、抗体の軽鎖をコードする第2の核酸配列と
を含み、
SEQ ID NO:1の第2の核酸配列は、
-シグナルペプチドをコードする第2の核酸配列のSEQ ID NO:2におけるATG開始コドンと、
-上記ATG開始コドンの下流にある最初の2個のヌクレオチドと
を含む。
【0100】
DNA構造物は、SEQ ID NO:8およびSEQ ID NO:9の核酸配列の両方を含んでもよい。代替的には、DNA構造物は代わりに、SEQ ID NO:12およびSEQ ID NO:13の核酸配列の両方を含んでもよい。SEQ ID NO:12および13の核酸はそれぞれ、SEQ ID NO:12および13の核酸それぞれが制限酵素認識部位をさらに含むことにおいてのみ、SEQ ID NO:8および9の核酸とは異なる。
【0101】
上に開示されるDNA構造物は、哺乳類細胞中にトランスフェクトするのに好適な発現ベクターに組み込まれてもよい。そのようなベクターは、以下の核酸要素、
-プロモーター、
-ターミネーター、
-選択マーカー、
-複製起点、および/または
-抗生物質耐性マーカー
を含んでもよい。
【0102】
発現ベクターは、EcoRI、NdeI、NotI、XhoI、PspXI、PaeR71、BbsI、StyI、AvrII、BanI、Acc65I、KpnI、Eco53kI、SacI、BamHI、XbaI、SalI、AccI、PstI、SbfI、SphI、および/またはHindIIIなどの制限酵素によって切断可能な少なくとも1個のマルチクローニングサイトをさらに含んでもよい。
【0103】
哺乳類細胞とともに使用するための発現ベクター、および典型的にそのような発現ベクター中に含まれる核酸要素は、Li F.et al[13]およびNoh S.H.et al[14]に記載されており、本発明におけるこれらの発現ベクターの使用は、下記に記載の発現ベクターの実施形態において示される。
【0104】
発現ベクターは、1つまたは複数のプロモーターを含んでもよい。プロモーターは、遺伝子発現を起こし、遺伝子発現を調節することが可能な任意のプロモーターであってもよい。好ましくは、プロモーターは、CHO細胞などの哺乳類細胞中の組換えタンパク質の発現に効果的であることが示されるプロモーターであってもよい。さらに好ましい実施形態において、プロモーターは、CHO-DG44細胞における組換えタンパク質の発現に効果的である。
本発明において使用されてもよいプロモーターの具体例は、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターおよび/または伸長因子アルファ(EF1α)プロモーターである。
【0105】
-抗体の重鎖をコードする第1の核酸配列と、
-抗体の軽鎖をコードする第2の核酸配列と
を含むDNA構造物を有する発現ベクターにおいて、
発現ベクターは、第1の転写産物として第1の核酸配列を発現するための第1のプロモーターと、第2の転写産物として第2の核酸配列を発現するための第2のプロモーターとを含んでもよい。次いで、第1の転写産物は、重鎖ポリペプチドへと翻訳され、第2の転写産物は軽鎖ポリペプチドへと翻訳されることになり、得られる抗体は上記重鎖および軽鎖ポリペプチドによって生成されることになる。そのような発現ベクターにおいて、第1および第2のプロモーターは、本発明の実施形態において同じであっても異なっていてもよい。そのような発現ベクターにおいて、好ましい実施形態は、2つのCMVプロモーター、すなわち、抗体の重鎖および軽鎖をコードする第1および第2の核酸配列のそれぞれに1つの使用を包含する。
【0106】
発現ベクターのある実施形態において、5'未翻訳領域におけるイントロン配列は、プロモーターの後に含まれて、宿主細胞の核から細胞質への、転写されたmRNAの核外輸送を増大する。さらに、1つまたは複数の3'ポリアデニル化シグナル配列も、発現ベクター中に含まれてmRNAレベルを最大化してもよい。発現ベクターに含まれてもよいポリアデニル化シグナル配列のいくつかの例は、SV40後期または初期ポリアデニル化シグナル配列、およびウシ成長ホルモンポリアデニル化配列である。
【0107】
本発明において、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)をコードする遺伝子などの代謝選択マーカーは、CHO-DG44細胞へとトランスフェクトされることになる発現ベクターにおける選択マーカーとして使用されてもよい。DNA構造物は、DHFR阻害剤であるメトトレキサート(MTX)を使用して増幅され得る。
【0108】
代替のマーカーは、CHO GS-/-細胞へとトランスフェクトされることになる発現ベクターにおける選択マーカーとして使用されてもよいグルタミンシンターゼ(GS)をコードする遺伝子である。GSは、アンモニアおよびグルタミン酸のグルタミンへの変換に触媒作用を及ぼし、MSXはGSタンパク質の活性を阻害する。
【0109】
本発明で使用されてもよい複製起点は、pUC起点、pBR 322起点;pACYC起点、pSC101起点、およびColE1起点から選択されてもよい。ただし、これらの複製起点の派生物および当技術分野で使用される他の複製起点も使用されてもよい。使用されてもよい真核細胞の複製起点の例は、SV40複製起点である。
【0110】
抗生物質耐性マーカーは、その産生物が、クロラムフェニコール、アンピシリン、ゼオシン、ブレオマイシン、ゲンタマイシン、ストレプトマイシン、テトラサイクリン、カナマイシン、およびネオマイシンなどの抗生物質に耐性を付与する遺伝子を含む。したがって、発現ベクターにおいて使用される抗生物質耐性マーカーのいくつかの例は、クロラムフェニコール耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ゼオシン耐性遺伝子、ブレオマイシン耐性遺伝子、ゲンタマイシン耐性遺伝子、ゲンタマイシン耐性遺伝子、ストレプトマイシン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、およびネオマイシン耐性遺伝子である。発現ベクターにおけるこれらの抗生物質耐性マーカーの使用は、当技術分野で公知であり、例えば、Li F.et al[13]およびUS8138324を参照されたい。
【0111】
使用されてもよい他の抗生物質選択マーカーは、ピューロマイシンアセチルトランスフェラーゼ、ブラストサイジンデアミナーゼ、ヒスチジノールデヒドロゲナーゼ、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ、ゼオシン耐性遺伝子、ブレオマイシン耐性遺伝子、およびアミノグリコシドホスホトランスフェラーゼである。これらのマーカーはそれぞれ、ピューロマイシン、ブラストサイジン、ヒスチジノール、ハイグロマイシン、ゼオシン、ブレオマイシン、およびネオマイシン(G418)を選択的試薬として使用する。
【0112】
発現ベクターはまた、1つまたは複数の転写終止領域を含んでもよい。転写終止領域は典型的に、コード配列の下流にあって、効率的な転写終止を提供する。
【0113】
抗体の重鎖および軽鎖の発現における使用のための本発明の特定の実施形態において、本発明の発現ベクターは、Li F.et al[13]の「Cell line development」の章にも示される以下の核酸要素、
-発現されることになる抗体の重鎖および軽鎖をコードする第1および第2の核酸配列、
-2つのCMVプロモーター、すなわち、抗体の重鎖および軽鎖をコードする第1および第2の核酸配列のそれぞれに1つ、
-5'未翻訳領域におけるイントロン配列は、CMVプロモーターのそれぞれの後に含まれる、
-3'ポリアデニル化シグナル配列は、上記5'未翻訳領域のそれぞれの後に含まれる、
-選択マーカーDHFRをコードする遺伝子、
-抗体の重鎖および軽鎖をコードする第1および第2の核酸配列のそれぞれの前(すなわち上流)にTIS配列(すなわちコザック配列)およびシグナルペプチドを含むDNA構造物、ならびに
-抗生物質耐性マーカー
を含む。
【0114】
上に開示されるDNA構造物はまた、哺乳類細胞中にトランスフェクトするのに好適な発現カセットに含まれてもよい。そのような発現カセットは、以下の核酸要素、
-プロモーター、
-ターミネーター、および
-選択マーカー
を含んでもよい。
【0115】
本発明において使用される宿主細胞株は、Li F.et al[13]およびNoh S.H.et al[14]に説明されるように発達させてもよい。発現ベクターおよび発現カセットの上述の実施形態を受け入れる宿主細胞は、好ましくは、ヒト、ハムスター、またはマウス細胞株由来の哺乳類宿主細胞である。本発明の好ましい実施形態において、CHO-DG44細胞またはCHO GS-/-細胞などのCHO細胞を使用してもよい。
【0116】
上ですでに論じたように、DNA構造物、発現ベクター、宿主細胞、および方法の様々な実施形態は、組換えタンパク質、またはそれの1つまたは複数のポリペプチド鎖を発現させるために使用され得る。発現され得るタンパク質の例は、抗体、抗体断片、酵素、およびホルモンである。
【0117】
本発明において、文脈上明確に別段の規定がない限り、単数形の「a」、「an」、および「the」は、複数の参照を含むことが留意されるべきである。本発明はまた、明示的に記載されているかどうかにかかわらず、本明細書において提示される実施形態または要素「を含む(comprising)」、それら「から成る(consisting of)」、およびそれら「から本質的に成る(consisting essentially of)」他の実施形態を企図する。
【0118】
本発明は、非限定的な[実施例]の項に例示される複数の態様を有する。[実施例]の項において、ニボルマブ(Opdivo(登録商標))の重鎖および軽鎖をコードするDNA構造物が、TISCONを含む発現ベクターおよびTISEVOを含む発現ベクター中にクローニングされていることが留意されるべきである。
【0119】
ニボルマブに関するこれらの実施例は、本発明の好ましい実施形態を示しているが、実例としてのみ与られていることが理解されるべきである。上に開示される本発明の実施形態および以下の実施例から、当業者は、本発明の本質的特徴を確認することができ、その趣旨および範囲から逸脱することなく本発明の様々な変更および修正を行って、それを様々なタイプの治療抗体(mAbまたはそれの断片など)および免疫グロブリン(すなわち、IgG、IgM、IgD、IgA、およびIgE)に適合させることができる。したがって、本明細書で示され、説明されるものに加えて、本発明の様々な修正形態が、前述の説明から当業者には明らかになるであろう。そのような修正形態はまた、添付の特許請求の範囲の範囲に入ることが意図される。
【0120】
[実施例]
後述する実施例1および3は、SEQ ID NO:1のTISEVOを発現ベクター中に導入することによって、高いmAb(ニボルマブ)産生ミニプールを同定する可能性が、TISCONがトランスフェクトされたミニプールと比較して増大したことを示す。
【0121】
意外なことに、>4.2g/LのmAbを産生するモノクローナル細胞株の中で、14個のうち10個がTISEVOを持っていた。さらに、上位10個のTISEVO細胞株は、一般的に使用されるTISCONを有する細胞株の上位10個と比較して、平均で0.56g/L多くのmAb(ニボルマブ)を生じ、一方で品質および生物学的類似性は維持された。本発明は、CHO細胞株を発達させる際のTIS配列の重要性および影響を強調する。
【0122】
さらに、実施例2は、TISEVOおよびTISCONのうちのいずれも含まない発現ベクター系において発現されたOpdivo(登録商標)(すなわち、先発品であるニボルマブ)と比較した場合の、TISEVOによって発現されたニボルマブの同様の翻訳後修飾を示す。これは、TISEVOを使用した場合に、ニボルマブの品質および生物学的類似性が維持されたことを明確に示す。
【0123】
下記の実施例に関する実験的詳細については、読者は別の[材料および方法]の項を参照されたい。本文献において言及されるすべての公報、特許出願、特許、および他の参考文献は、それらの全体を参照により引用される。
【0124】
本明細書で開示される[実施例]および[材料および方法]の項は、単に説明のためのものであり、限定的であることは意図されていない。
【0125】
実施例1-TISEVOはミニプールの流加培養においてmAb収量を増大する
CHO-DG44において細胞株を発達させる際のTIS配列変異体の影響を比較するべく、TIS配列GCCACCATGGA(TISCON)を新規のTCGGTCATGGCのTIS配列(TISEVO)に変化させることによって、ヌクレオチド変化を発現ベクターに導入した。
【0126】
並列実験において、TIS
EVOベクターまたはTIS
CONベクター(すなわち、TIS
EVO配列またはTIS
CON配列を含むベクター)のいずれかを用いて電気穿孔によって細胞にトランスフェクトし、トランスフェクションから24時間後に、4000~8000個の生細胞/ウェルを96ウェルプレートに播種することによって組込み物を選択した。最も良好に成長しているコロニーをスクリーニングした後、静置培養において力価を測定し、上位のミニプールを拡張し、懸濁液に再適合させた。細胞特異的な生産性(pg/cell/day)および総力価(g/L)に基づく上位12個のミニプールを、振盪フラスコ中の流加研究においてさらに評価した。特に、上位12個のうち7個のミニプールはTIS
EVOをトランスフェクトした細胞であった。さらに、流加研究からのデータを分析した際、TIS
EVOを含有するミニプールに関して、96ウェルプレートにおいてコロニー形成が増大したのに加えて、より高い力価および細胞特異的な生産性が明確に示されていることがわかった。流加の結果は、産生の高い上位3個のミニプールは、TIS
EVOを有するベクターが組み込まれていたことを示した(
図1および
図2)。TIS
EVOを有するミニプール(15.2×10
6個の細胞/ml)に関して、平均最大生細胞密度(VCD)/mlは、TIS
CON(20.1×10
6個の細胞/ml)と比較してより低かった(データは示されず)。また、TIS
EVO組込み物に関して、延長された生存率があった(
図1および
図2、x軸)。これらの結果により、TIS
EVOを有するmRNAは、潜在的により効率的にリボソームを動員することによって、長寿命を促進し、それにより細胞特異的な生産性および力価を高めるが、わずかにVCDを阻害する(速い成長に利用可能なリボソームがより少ない)ことが示唆される。
【0127】
実施例2-比較可能なmAbグリカンプロフィールならびにTIS
EVOおよびTIS
CONミニプールの電荷分布
TIS
EVOをトランスフェクトされた細胞の産生性および力価の増大がタンパク質の品質に影響するかを評価するために、酸性種および塩基性種の電荷分布(
図8および
図9)、グリカンプロファイリング(
図5~
図7)、およびサイズ分布、すなわち翻訳後修飾(PTM)に関してミニプールを分析した。
図5~
図9において例示されるように、Water RapiFluor-MSワークフローから得られたデータにより、TIS
EVOおよびTIS
CONのうちのいずれも含まない発現ベクター系において発現されたOpdivo(登録商標)(すなわち、先発品であるmAb)と比較した場合に、TIS
EVOおよびTIS
CONそれぞれを含む発現ベクター系によって発現されたニボルマブのPTMパターンおよび電荷分布は同様であったことを示した。これは、翻訳開始速度の変化はタンパク質の品質にも生物学的類似性にも影響しなかったことを明確に示す。
【0128】
図5~
図8に開示されるグリカンは、以下のOxford表記名[18]、
-A2;
-F(6)A2(参考文献20のFA2と同じ);
-A2[3]G1;
-A2[6]G1;
-F(6)A2[3]G1(参考文献20のFA2[3]G1と同じ);
-F(6)A2[6]G1(参考文献20のFA2[6]G1と同じ);
-F(6)A2G2(参考文献20のFA2G2と同じ)
-M5;および
-F(6)A1
を有する。
【0129】
TIS
EVOを持つモノクローナル細胞株における増大したmAb産生
モノクローナル細胞株を生成するために、上位8個のミニプール(力価およびタンパク質の品質に基づく)を、蛍光活性化細胞分類(FACS)を使用して単一細胞として播種し、単一細胞の画像をモノクローン性のさらなる保証として撮影した。モノクローン性、細胞増殖、および産生性に基づく上位48個のクローンを拡張し、懸濁培養液に適合させた後、ambr15マイクロバイオリアクターにおいて評価した。生存率が70%未満となった際、または遅くとも培養14日目に、培養物を回収した。mAb産生モノクローナル細胞株の総収量および細胞特異的な生産性を分析した際、TIS
EVO含有細胞株とTIS
CON含有細胞株との間で力価および比産生性において明確な差異が観察された(
図3および
図4)。48個の培養クローンの中で、14個のクローンが4.2g/L以上の累積力価の値をもたらし、そのうち10個のクローンはTIS
EVOを持っていた。産生が最も高い細胞株もTIS
EVOを含有し、一般の最適化されていない流加プロセスにおいて6.1g/LのmAbを生じた(
図3)。さらに、細胞特異的な生産性を分析した際に、産生が高いもの14個のうち10個がTIS
EVOを含有し、最も良好なTIS
EVO変異体は約60pg/c/dのmAbを産生した(
図4)。まとめると、これらの結果により、ミニプール生成中に産生が高いものを同定する、ならびに高められた産生性および力価を有するモノクローナルDG44細胞株を同定する可能性の観点から、発明者の合理的に設計されたTIS
EVOは、標準的な一般的に使用されるTIS
CONと比較して優れていることが示される。
[材料および方法]
【0130】
ベクターの改変およびトランスフェクション
TISCONおよびTISEVOを比較するための発現ベクター(すなわち、TISCONベクターおよびTISEVOベクター)の両方は、Li F.et al[13]の「Cell line development」の章に開示される以下の核酸要素、
-発現されることになる抗体の重鎖および軽鎖をコードする第1および第2の核酸配列、
-2つのCMVプロモーター、すなわち、抗体の重鎖および軽鎖をコードする第1および第2の核酸配列のそれぞれに1つ、
-5'未翻訳領域におけるイントロン配列は、CMVプロモーターのそれぞれの後に含まれる、
-3'ポリアデニル化(ポリA)シグナル配列は、上記5'未翻訳領域のそれぞれの後に含まれる、
-選択マーカーDHFRをコードする遺伝子、
-発現されることになる抗体の重鎖および軽鎖をコードする第1および第2の核酸配列のそれぞれの前(すなわち上流)にあるシグナルペプチドをコードする核酸配列、
-シグナルペプチド核酸配列の上流にあるTIS配列(すなわちコザック配列)、ならびに
-抗生物質耐性マーカー
を含んだ。
【0131】
下記のパラグラフに記載されるようなニボルマブ(Opdivo(商標登録))の重鎖および軽鎖をコードする第1および第2の核酸配列をそれぞれ、2個のTISCON配列または2個のTISEVO配列のいずれかを含む発現ベクター中にクローニングした。ニボルマブの重鎖をコードする第1の核酸配列は、SEQ ID NO:4の配列を含み、一方でニボルマブの軽鎖をコードする第2の核酸配列は、SEQ ID NO:6の配列を含む。したがって、第1の核酸配列は、SEQ ID NO:5のアミノ酸配列を含む重鎖をコードし、一方で第2の核酸配列は、SEQ ID NO:7のアミノ酸配列を含む軽鎖をコードする。
【0132】
2個のTISCON配列を含むベクター(すなわちTISCONベクター)において、シグナルペプチドのそれぞれをコードする核酸配列は、アミノ酸配列MDLLHKNMKHLWFFLLLVAAPRWVLSのシグナルペプチドを発現させるための核酸配列を含んだ。このシグナルペプチドは、治療抗体のポリペプチド鎖を発現することに関してHaryadi R.et al[12]およびUS10066019において過去に開示されている。
【0133】
TISEVO配列を設計するために、TISCON配列のGCCACC配列をTCGGTC配列に変化させた。さらに、シグナルペプチドの1番目のアミノ酸のためにコードする、ATG開始コドンの下流にある1番目のコドンをGATからGCTに変更し、その位置でのアミノ酸置換を得た。これらの組み合わせの変更により、TCGGTCATGGCヌクレオチド配列(SEQ ID NO:1)を含むTISEVO配列を得た。
【0134】
2個のTISEVO配列(SEQ ID NO:1)を含む発現ベクターを、それぞれがSEQ ID NO:2の核酸配列を含むシグナルペプチドをコードする2個の核酸配列を含むように改変した。SEQ ID NO:1の核酸配列はそれぞれ、
-SEQ ID NO:2の配列におけるATG開始コドンと、
-SEQ ID NO:2の核酸配列におけるATG開始コドンの下流にある最初の2個のヌクレオチドと
を含んだ。
【0135】
SEQ ID NO:2の核酸配列は、アミノ酸配列MALLHKNMKHLWFFLLLVAAPRWVLS(SEQ ID NO:3)の新規のシグナルペプチドをコードし、当該新規のシグナルペプチドはいかなる先行技術文献においても過去に開示されていない。
【0136】
TISEVOの活性を試験するために、それぞれニボルマブの重鎖および軽鎖をコードするSEQ ID NO:8およびSEQ ID NO:9の核酸配列を含むDNA構造物を発現ベクター中にクローニングした。この目的のために使用したDNA構造物は、SEQ ID NO:12およびSEQ ID NO:13の核酸配列を含んだ。当該DNA構造物は、(i)それぞれ抗体の重鎖および軽鎖をコードするSEQ ID NO:8およびSEQ ID NO:9の核酸配列、ならびに(ii)発現ベクターへのクローニングを可能にする制限酵素認識部位を含む。
【0137】
その結果として、SEQ ID NO:8およびSEQ ID NO:12の核酸配列を含むDNA構造物はそれぞれ、
-SEQ ID NO:1の核酸配列(TISEVO)を含む第1の核酸配列と、
-SEQ ID NO:2の核酸配列を含む、シグナルペプチドをコードする第1の核酸配列と、
-SEQ ID NO:4の核酸配列を含む、抗体の重鎖をコードする第1の核酸配列と
を含み、
SEQ ID NO:1の上記第1の核酸配列は、
-シグナルペプチドをコードする第1の核酸配列のSEQ ID NO:2におけるATG開始コドンと、
-上記ATG開始コドンの下流にある最初の2個のヌクレオチドと
を含んだ。
【0138】
同様に、SEQ ID NO:9およびSEQ ID NO:13の核酸配列を含むDNA構造物はそれぞれ、
-SEQ ID NO:1の核酸配列(TISEVO)を含む第2の核酸配列と、
-SEQ ID NO:2の核酸配列を含む、シグナルペプチドをコードする第2の核酸配列と、
-SEQ ID NO:6の核酸配列を含む、抗体の軽鎖をコードする第2の核酸配列と
を含み、
SEQ ID NO:1の上記第2の核酸配列は、
-シグナルペプチドをコードする第2の核酸配列のSEQ ID NO:2におけるATG開始コドンと、
-上記ATG開始コドンの下流にある最初の2個のヌクレオチドと
を含んだ。
【0139】
TISCONの活性を試験するために、それぞれニボルマブの重鎖(SEQ ID NO:4)および軽鎖(SEQ ID NO:6)をコードする核酸配列を含む2個のDNA構造物を発現ベクター中にクローニングした。上述のTISEVOを試験するためのベクターと類似させて、ニボルマブの重鎖(SEQ ID NO:4)および軽鎖(SEQ ID NO:6)をコードする核酸配列のそれぞれをシグナルペプチドMDLLHKNMKHLWFFLLLVAAPRWVLSを発現する核酸配列に動作可能に連結させた。上記シグナルペプチドを発現する核酸配列のそれぞれを、GCCACCのTIS配列に動作可能に連結させた。
【0140】
その結果として、TISCONベクターおよびTISEVOベクターは、
-TISCONベクターは、GCCACCATGGAのTISCON配列を2個含んだ一方で、TISEVOベクターは「T」C「GGT」CATGG「C」のTISEVO配列を2個含んだこと、および
-TISCONベクターは、それぞれがアミノ酸配列M「D」LLHKNMKHLWFFLLLVAAPRWVLSのシグナルペプチドを発現する2個の核酸配列を含み、一方でTISEVOベクターは、それぞれがアミノ酸配列M「A」LLHKNMKHLWFFLLLVAAPRWVLSのシグナルペプチドを発現する2個の核酸配列を含んだこと
のみにおいて異なった(核酸配列およびアミノ酸配列における差異に「 」を付した)。
【0141】
ミニプールおよびクローン評価のための流加培養
ミニプールおよびクローン評価のための一般プロセスに従って標準的な流加プロセスを行った。125mLの振盪フラスコを使用して(ミニプール)、またはambr15マイクロバイオリアクターにおいて(クローン)、化学的に定義された25mLの産生培地中に、3×105個の細胞/mlの密度で細胞を植菌した。標準的な供給レジメンに従って、供給A、供給B、およびグルコースを加えた。細胞密度、生存率、産物濃度、グルコース、および乳酸に関して培養物を制御した。最大14日まで、または生存率が70%未満に低下するまで、細胞を培養した。
【0142】
[参考文献]
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【配列表】