(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】大規模言語モデルを用いた電子カルテシステム
(51)【国際特許分類】
G16H 10/60 20180101AFI20240222BHJP
【FI】
G16H10/60
(21)【出願番号】P 2023133861
(22)【出願日】2023-08-21
【審査請求日】2023-09-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502351659
【氏名又は名称】株式会社医療情報技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100196760
【氏名又は名称】大野 浩司
(72)【発明者】
【氏名】姫野 信吉
【審査官】今井 悠太
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-184169(JP,A)
【文献】特開2022-059448(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111209924(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大規模言語モデルを併用した電子カルテシステムにおいて、任意に指定された文書カテゴリーの文書の処理に必要な項目の情報を電子カルテから抽出する、電子カルテ項目抽出手段を備え、
前記抽出された電子カルテ内容を、大規模言語モデルのプロンプトとして提供する、電子カルテ内容のプロンプトへの転記手段を備え、
前記電子カルテ項目抽出手段は、文書カテゴリーごとに必要とされる電子カルテ項目のリストを管理する文書カテゴリーごと電子カルテ抽出項目管理手段を有することを特徴とする電子カルテシステム。
【請求項2】
前記プロンプトに対する回答内容を、電子カルテの当該文書に転記する回答内容の電子カルテへの転記手段を備えていることを特徴とする請求項1記載の電子カルテシステム。
【請求項3】
前記大規模言語モデルの回答において、電子カルテに追加のオーダー文書、記録文書、病名登録文書のうち、少なくともいずれかを作成する電子カルテ追加文書作成手段を有することを特徴とする請求項1又は2記載の電子カルテシステム。
【請求項4】
前記大規模言語モデルは、外部システムとの連携手段を有することを特徴とする請求項1又は2記載の電子カルテシステム。
【請求項5】
前記大規模言語モデルは、
医療専用の学習データで追加学習され、回答に際しては前記医療専用の学習データのみを参照する、参照データ限定手段を有することを特徴とする請求項1又は2記載の電子カルテシステム。
【請求項6】
前記大規模言語モデルのプロンプトにおいて、複数のプロンプト内容を一括して入力する一括処理プロンプト作成手段を有することを特徴とする請求項1又は2記載の電子カルテシステム。
【請求項7】
前記大規模言語モデルにおいて、指定された文書カテゴリーの文書について、前記電子カルテ項目抽出手段で得られる患者情報をプロンプト内容として入力し、推奨される内容を回答として求める文書内容推奨手段を有することを特徴とする請求項1又は2記載の電子カルテシステム。
【請求項8】
前記電子カルテシステムは電子カルテモジュールごとにAPIを備え、前記大規模言語モデルは、必要な処理に関し、前記APIを介して前記電子カルテモジュールを呼び出して処理を行うことを特徴とする請求項1又は2記載の電子カルテシステム。
【請求項9】
前記必要な処理を一連のまとまった一連処理群として登録し、前記大規模言語モデルに対して、一連処理群として指定可能とする一連処理群管理手段を有することを特徴とする請求項8記載の電子カルテシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大規模言語モデルを用いて高機能化し、ユーザーインターフェイスを改良した電子カルテシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療現場などでは医療上の指示(オーダー)や記録を効率的に記録するためのコンピュータシステム(電子カルテ)が広く用いられるようになってきている。また、近年人工知能(AI:Artificial Intelligence の進歩が著しく、とりわけ大量の文献やデータを学習させ自然言語での問い合わせ、回答を可能とした大規模言語モデル(LLM:Large Language Models)が注目されている。
この出願に関連する先行技術文献としては次のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2023-523644号公報
【文献】特開2023-73095号公報
【文献】特許5484317号公報
【文献】特許7313757号公報
【0004】
【文献】ChatGPTの頭の中 スティーブン ウルフラム ハヤカワ新書009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
医療の実施に当たっては、患者の症状や診察所見を基に検査計画を組み立て、検査結果に応じて治療計画を立て、治療を実施し、その記録を残してゆく。医師や看護師など多様な職種の医療者が関わるため、効率的な医療活動には、電子カルテが有用であることは論を待たない。しかし医学の進歩は早く、次々に新しく有効性の高い薬剤や治療法が開発されている。最新の医療知識への更新は、医療者にとって大きな負担となっている。
検査や処置などの医療上の指示(オーダー)の組み立てや、実施記録などは、医療者の手作業で行われている。このため、膨大な作業量が必要になり長時間労働を生んでいる。また、医療者の知識や技能レベルの差から治療効果のばらつきが生じている。
【0006】
本発明はかかる従来の問題点を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、大量かつ最新の医療知識を学習させた大規模言語モデルを用いて、電子カルテにおける医療者のオーダー文書や記録文書作成を支援し、効率的な医療活動を支援するシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するための手段として請求項1記載の電子カルテシステムでは、大規模言語モデルを併用した電子カルテシステムにおいて、任意に指定された文書カテゴリーの文書の処理に必要な項目の情報を電子カルテから抽出する、電子カルテ項目抽出手段を備え、前記抽出された電子カルテ内容を、大規模言語モデルのプロンプトとして提供する、電子カルテ内容のプロンプトへの転記手段を備え、前記電子カルテ項目抽出手段は、文書カテゴリーごとに必要とされる電子カルテ項目のリストを管理する文書カテゴリーごと電子カルテ抽出項目管理手段を有することを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の電子カルテシステムでは、請求項1記載の電子カルテシステムにおいて、前記プロンプトに対する回答内容を、電子カルテの当該文書に転記する回答内容の電子カルテへの転記手段を備えていることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の電子カルテシステムでは、請求項1又は2記載の電子カルテシステムに おいて、前記大規模言語モデルの回答において、電子カルテに追加のオーダー文書、記録文書、病名登録文書のうち、少なくともいずれかを作成する電子カルテ追加文書作成手段を有することを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の電子カルテシステムでは、請求項1又は2記載の電子カルテシステムにおいて、前記大規模言語モデルは、外部システムとの連携手段を有することを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の電子カルテシステムでは、請求項1又は2記載の電子カルテシステムに おいて、前記大規模言語モデルは、医療専用の学習データで追加学習され、回答に際しては前記医療専用の学習データのみを参照する、参照データ限定手段を有することを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の電子カルテシステムでは、請求項1又は2記載の電子カルテシステムにおいて、前記大規模言語モデルのプロンプトにおいて、複数のプロンプト内容を一括して入力する一括処理プロンプト作成手段を有することを特徴とする。
【0014】
請求項7記載の電子カルテシステムでは、請求項1又は2記載の電子カルテシステムにおいて、前記大規模言語モデルにおいて、指定された文書カテゴリーの文書について、前記電子カルテ項目抽出手段で得られる患者情報をプロンプト内容として入力し、推奨される内容を回答として求める文書内容推奨手段を有することを特徴とする。
【0015】
請求項8記載の電子カルテシステムでは、請求項1又は2記載の電子カルテシステムにおいて、前記電子カルテシステムは電子カルテモジュールごとにAPIを備え、前記大規模言語モデルは、必要な処理に関し、前記APIを介して前記電子カルテモジュールを呼び出して処理を行うことを特徴とする。
【0016】
請求項9記載の電子カルテシステムでは、請求項8記載の電子カルテシステムにおいて、前記必要な処理を一連のまとまった一連処理群として登録し、前記大規模言語モデルに対して、一連処理群として指定可能とする一連処理群管理手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の電子カルテシステムでは、電子カルテ項目抽出手段を備えるので、大規模言語モデルを併用した電子カルテシステムにおいて、任意に指定された文書カテゴリーの文書の処理に必要な項目の情報を電子カルテから抽出する。
電子カルテ内容のプロンプトへの転記手段を備えるので、抽出された電子カルテ内容を、大規模言語モデルのプロンプトとして提供する。
【0018】
請求項2記載の電子カルテシステムでは、回答内容の電子カルテへの転記手段を備えるので、プロンプトに対する回答内容を電子カルテの当該文書に転記する。
【0019】
請求項3記載の電子カルテシステムでは、電子カルテ追加文書作成手段を備えるので、大規模言語モデルの回答において、必要に応じて、電子カルテに追加のオーダー文書、記録文書、病名登録文書のうち、少なくともいずれかを作成する。
【0020】
請求項4記載の電子カルテシステムでは、大規模言語モデルは、外部システムとの連携手段を有している。
【0021】
請求項1記載の電子カルテシステムでは、文書カテゴリーごと電子カルテ抽出項目管理手段を備えるので、電子カルテ項目抽出手段において、文書カテゴリーごとに必要とされる電子カルテ項目のリストを管理する。
【0022】
請求項5記載の電子カルテシステムでは、参照データ限定手段を備えるので、大規模言語モデルは、医療専用の学習データで強化学習され、回答に際しては前記医療専用の学習データのみを参照する。
【0023】
請求項6記載の電子カルテシステムでは、一括処理プロンプト作成手段を備えるので、大規模言語モデルのプロンプトにおいて、複数のプロンプト内容を一括して入力する。
【0024】
請求項7記載の電子カルテシステムでは、文書内容推奨手段を備えるので、大規模言語モデルにおいて、指定された文書カテゴリーの文書について、前記電子カルテ項目抽出手段で得られる患者情報をプロンプト内容として入力し、推奨される内容を回答として求める。
【0025】
請求項8記載の電子カルテシステムでは、電子カルテシステムは電子カルテモジュールごとにAPIを備え、前記大規模言語モデルは、必要な処理に関し、前記APIを介して前記電子カルテモジュールを呼び出して処理を行う。
【0026】
請求項9記載の電子カルテシステムでは、一連処理群管理手段を備えるので、必要な処理を一連のまとまった一連処理群として登録し、前記大規模言語モデルに対して、一連処理群として指定可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図2】大規模言語モデルでのユーザーインターフェイスの例である。
【
図3】電子カルテの各種文書カテゴリーの例を示す図である。
【
図4】大規模言語モデルを外部の連携システムを用いて拡張した例である。
【
図5】大規模言語モデルに追加学習させるデータの例である。
【
図6】電子カルテの薬剤処方オーダーを大規模言語モデルで修正する例である。
【
図7】電子カルテの薬剤処方オーダーに対応する病名の検証例である。
【
図8】不足している病名を検証し、電子カルテに病名の追加登録を行う例である。
【
図9】電子カルテから血液検査、放射線検査の履歴を参照し、推奨する検査オーダーを行う説明図である。
【
図10】大規模言語モデルを用いて電子カルテの参照を行い、必要な追加オーダーを行い、結果に基づいて内容修正を行い電子カルテに記録する流れを示す図である。
【
図11】文書カテゴリーごと電子カルテ抽出項目管理手段の図である。
【
図12】一括処理のプロンプトの一例を示す図である。
【
図13】症状、所見、検査所見、病名をプロンプト入力し、LLMに薬剤の推奨処方例を回答させている例を示す図である。
【
図14】LLM側が主体となって、電子カルテに抽出項目参照、検査及び処置のオーダー文書作成を行う概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、本発明のハードウェア構成図の一例である。
大規模言語モデルは、巨大なデータ、大量の計算資源を必要とするため、通常クラウド上にあり、インターネット回線からルーターを経由して医療機関内のLAN(Local Area Network)に接続される。
医療機関内には電子カルテのサーバーがある。
医師、看護師などのスタッフは、LANの接続された端末を介して、電子カルテ、大規模言語モデルを利用する。
なお、電子カルテシステムの一部ないし全部をクラウド上に構築したり、また軽量版であれば大規模言語モデルの一部もしくは全部を医療機関内に設置したりする構成も可能である。
【0029】
図2は、大規模言語モデル(LLM)でのユーザーインターフェイスの一例である。
LLMは現在急速に開発が進んでおり、ChatGPT(OpenAI 社の登録商標)をはじめ、BardやLaMDA(Google社の登録商標)、LLaMA(メタ社の登録商標)はじめ多数のモデルが開発されている。
当然ユーザーインターフェイスは異なっているが、標準的には
図2に示すように、LLMに指示、問い合わせを行うプロンプトを入力する枠、当該プロンプトに対する回答を表示する枠があり、同時に、プロンプトと回答の履歴を使用ログとして表示する枠で構成される。
【0030】
図3は、電子カルテの各種文書カテゴリーの例を示す。
電子カルテには、多職種のスタッフにより作成された、患者毎の様々な観察記録、検査や処置などのオーダー文書が時系列で記録されている。
【0031】
図4は、大規模言語モデルの専用LLM、Function Callingによる拡張例である。
LLMでは大量のデータを学習し汎用の言語モデル(基板学習モデル)を構成するが、特定分野の知識は必ずしも深くない。
このため、特定分野に関しての知識を集中的に追加学習させて専用モデルが構築される(図で薬剤専用LLM以下)。
また汎用の基板学習モデルのLLMでは、数値計算や論理演算に弱いことが知られている。
この弱点を補うため、ウォルフラム アルファ(Wolfram Alpha 非特許文献1)といった専用モジュールがあり(図で数値論理処理システム)、いずれもLLMからのプロンプト問い合わせに反応して回答を返す。
【0032】
また、最近の事象については知識の取り込みに時間遅れを生じがちである。
そのため、例えば本日の天気に関してはWEBの検索エンジンに問い合わせて、その回答を取り込むなどが考えられる。
このような課題を解決する手法の一つとして、ファンクションコーリング(Function Calling)が提案されている。
これは、LLMから、API(Application Programming Interface)を介して、他の検索エンジン、データベースあるいは特定目的に特化したLLMの機能を利用するものである。
本発明を例にとれば、薬剤の効能効果の記述は安定しているが、薬価は毎年変動する。
現時点での薬価情報は、基板ないし専用LLMに学習させてもよいが、専用のデータベースに記録し、検索するほうが反応も早く、またLLM学習更新の頻度も少なくてよいので費用も少なくて済む。
また、専用LLMなどを並列して使用できれば、回答時間の軽減も期待できる。
さらに、後述するように、電子カルテシステムからの情報参照、電子カルテシステムへの書き込みもできるようにしておけば、Function Callingを用いて、LLMから直接電子カルテシステムを制御することができる。
【0033】
図5は、本発明で大規模言語モデルに追加学習させるデータの例である。
薬剤ごとのインタビューフォームには、それぞれ薬剤名、用法容量、適応症など等、数十ページに上る記述がなされている。
これらの記述は、厚労省の認可に使われたデータに基づいている。
疾病データは、医学教科書、各学会で作成している疾患ごとの診療指針などがある。
検査は、血液検査、心電図などの生理学的検査、レントゲンやCT、MRIなどの解説本などがある。いずれも医師や看護師などの専門職による厳格な監修が行われており、信頼性は極めて高い。
基板LLMにおいては、大量の学習データの一部に悪意や差別を含む文書が紛れ込んでおり、このため悪意や差別的な反応を返して問題となっている。
また、また虚偽の内容をまことしやかに反応してくる「幻覚」が回答の信頼性を低下させている。
これらの問題は、回答として参照する学習データの範囲を、本図に示すような信頼性の高い学習データに限定することにより回避できる(参照データ限定手段)。
【0034】
図6は、電子カルテの薬剤処方オーダーを大規模言語モデルで修正する例である。
電子カルテの薬剤処方文書に、薬剤処方が記載されている。
当該処方内容を、図に示すように、LLMのプロンプトに転記する(電子カルテ内容のプロンプトへの転記手段)。
LLMはインタビューフォームなどの記載内容を参照しながら、回答してくる。
当該修正内容を医師が妥当と判断したら、当該内容を電子カルテの薬剤処方文書に転記する(回答内容の電子カルテへの転記手段)。
なお、「電子カルテへの転記」は、当該文書への回答内容の転記はもちろんであるが、必要に応じて追加文書を新規作成し、当該新規作成文書への回答内容の転記も含んでいる。
【0035】
図7は、電子カルテの薬剤処方オーダーに対応する病名の検証例である。
電子カルテの薬剤処方の内容と、病名のリストをそれぞれ抽出し(電子カルテ項目抽出手段)、プロンプトに転記する(電子カルテ内容のプロンプトへの転記手段:再掲)。
回答では、薬剤の適応症データと疾患ごとの適応薬剤を照合し、追加病名は不要であるとしている。
【0036】
図8では、不足している病名を検証し、電子カルテに病名の追加登録を行う例である。
図7同様のプロンプトで問い合わせている。
本図では、オパルモンに対する適応病名が無いことを指摘している。
さらに、オパルモンの適応病名のリストを挙げ、医師に病名を選択させ、当該病名を電子カルテに転記し(回答内容の電子カルテへの転記手段:再掲)、病名登録を行う。
これにより、時に月間数百万円を超える病名漏れによる薬剤や検査の査定(保険者による診療報酬の支払い拒絶)を減少させることができる。
【0037】
図9は、電子カルテから血液検査、放射線検査の履歴を参照し、検査オーダーの推奨を行う説明図である。
関節リウマチに対する薬剤処方を例にとる。
関節リウマチの治療指針では、最低数か月に一回の血液検査でリウマトレックスの副作用である骨髄抑制による貧血、肝機能障害、腎機能障害の有無をチェックすることとされている。
また、半年に一回程度は胸部XPを撮影し、副作用である間質性肺炎が生じていないかを確認することが推奨されている。
電子カルテ項目抽出手段で、最近の血液検査、胸部Xp検査に実施日を抽出し、間隔があいていれば当該検査を推奨し、当該オーダーを作成する(電子カルテ追加文書作成手段)。
ここで副作用の出現、悪化傾向が認められれば、当該薬剤の中止が推奨される。
【0038】
図10は、
図6から
図9に示したような、大規模言語モデルを用いて電子カルテ項目の参照を行い、必要な追加オーダーを行い、結果に基づいて内容修正を行い電子カルテに転記する流れを示す図である。
対象となる文書(例では薬剤処方)を選択する。
当該文書のLLM処理に必要な電子カルテ項目を、電子カルテから抽出しプロンプトへ転記する。
文書カテゴリーごとにLLM処理に必要な電子カルテ項目は異なっている。
その都度手作業でプロンプトの転記を行ってもよいが、
図11に示すように、文書カテゴリー別に、電子カルテ抽出項目を登録(文書カテゴリーごと電子カルテ抽出項目管理手段)しておけば、簡便で漏れなく電子カルテ抽出項目が得られ、必要部分をプロンプトへ転記する(電子カルテ内容のプロンプトへの転記手段)。
LLMからの回答が得られたら、当該文書の内容を修正(回答内容の電子カルテへの転記手段)するか、必要に応じて、血液検査オーダーや放射線検査オーダーなどの追加文書を作成する(電子カルテ追加文書作成手段)。
【0039】
図11は、文書カテゴリーごと電子カルテ抽出項目管理手段の説明図である。
プロンプトに転記すべき項目が、当該項目が記載されている文書カテゴリー別に管理されている。
図6から
図9に示したように、抽出された内容を、必要に応じてプロンプトに転記すればよい。
MRIオーダーでは、図に示す項目内容が記載されているかを確認し、未記載であれば本人や家族に問い合わせて確認する。頭蓋内の動脈瘤クリップ、ペースメーカー設置、体内挿入金属が目的部位の近くにあるなどがあれば検査を中止する。
【0040】
図12は、一括処理のプロンプトの一例である。
今までの例では、プロンプト、回答を一段ずつ行っていたが、処理ルーチンが決まっている場合、プロンプトに各段の処理依頼を一括して行ってもよい。
途中で、人間の介入が必要な際は、判断を求めたり、追加文書作成したりして、その後の処理を継続すればよい。
【0041】
図13は症状、所見、検査所見、病名をプロンプト入力し、LLMに薬剤の推奨処方例を回答させている例である。
今までは、電子カルテの記載内容をプロンプトに転記し、LLMに問い合わせる例であったが、LLMは生成AIとして、推奨する内容を生成することもできる。
図13では、患者の年齢、性別などの属性、症状や所見、検査結果データ、病名から、推奨される薬剤処方の回答を求めている。
医師が妥当と判断すれば、電子カルテへ転記すればよい。
必要であれば、点滴、リハビリ、生活指導、食事箋など複数処方の時系列文書(いわゆるクリニカルパス)の推奨を求め、電子カルテに転記してもよい。
【0042】
図14は、LLM側が主体となって、電子カルテに抽出項目参照、検査及び処置のオーダー文書作成を行う概念図である。
図6から
図12の例では、電子カルテの文書カテゴリーの文書を起点にしてプロンプトを作成しLLMを呼ぶ形であった。
すなわち、電子カルテのカテゴリー文書側が主体であり、プロンプトを介して、適宜LLMを活用する形であった。
これに対して本図では、主としてLLM側から電子カルテの各モジュールのAPIを呼び出し、症状所見など参照すべき項目のデータ取得、必要性が認められる検査オーダーの作成、得られた検査結果も総合しての病名推定と病名登録、推定された病名に基づく処置や検査のオーダー文書作成を一連のものとして行うものである。
この仕組みを用いれば、電子カルテモジュールの自由な組合せが可能となり、種々の病態に対して容易に対応が可能となる。
なお、前記電子カルテの各モジュールは、APIを介してLLMなどの外部システムから利用可能であることが必須である。
各電子カルテモジュールAPIにおいて、利用資格の確認が必須であることは当然である。
【0043】
以上、実施例を説明したが、本発明の具体的な構成は前記実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
例えば、医療を例にとって説明したが、介護において同様のシステムが利用可能である。LLMとしてChatGPTなどを例に挙げたが、他のシステムでも同様であり、今後新規に開発されるシステムを用いても本発明に含まれる。
【要約】 (修正有)
【課題】大量かつ最新の医療知識を学習させた大規模言語モデル(LLM:Large Language Models)を用いて、電子カルテにおける医療者のオーダー文書や記録文書作成を支援し、効率的な医療活動を支援するシステムを提供する。
【解決手段】医師、看護師などのスタッフが、LANに接続された端末を介して利用する大規模言語モデルを併用した電子カルテシステムにおけるフローは、任意に指定された文書カテゴリーの文書の処理に必要な項目の情報を電子カルテから抽出する、電子カルテ項目抽出手段と、抽出された電子カルテ内容を、大規模言語モデルのプロンプトとして提供する、電子カルテ内容のプロンプトへの転記手段と、を含む。
【選択図】
図10