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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】薬液散布車両
(51)【国際特許分類】
   A01M 7/00 20060101AFI20240222BHJP
   B05B 17/00 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
A01M7/00 D
B05B17/00 101
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021071511
(22)【出願日】2021-04-21
(65)【公開番号】P2022166356
(43)【公開日】2022-11-02
【審査請求日】2022-12-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100200942
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 高史
(72)【発明者】
【氏名】松家 伸一
(72)【発明者】
【氏名】川上 修平
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-080537(JP,A)
【文献】特開2020-000045(JP,A)
【文献】特開2014-073096(JP,A)
【文献】特開2018-102180(JP,A)
【文献】特開2019-080538(JP,A)
【文献】実開昭53-012140(JP,U)
【文献】実開昭56-008503(JP,U)
【文献】特開2016-028611(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 7/00
B05B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場を走行するための走行装置を有する走行車体と、
前記走行車体の後部に設けられ、薬液を貯留する薬液タンクと、
前記薬液タンク内に貯留された薬液を圃場に散布する散布ブームと、
前記薬液タンクよりも後方において車体幅方向外側に向けて配置された作業ステップとを備えた薬液散布車両であって、
前記作業ステップは、上下方向の長さを変更可能に構成され、上下方向の長さが短く変更されると、前記薬液タンクの車体幅方向の幅内に収まるよう構成され、
前記薬液タンクの後方に、前記薬液タンクに貯留された薬液を前記散布ブームに供給する薬液ポンプを内装するポンプケースを備え、
前記作業ステップは、前記ポンプケースの車体幅方向外側の面に固定された固定部と、前記固定部に回動可能に連結された回動部を備え、前記回動部が上方に回動されると前記作業ステップの上下方向の長さが短くなり、前記作業ステップが前記薬液タンクの車体幅方向の幅内に収まるよう構成され、
前記走行車体は、その前部に、エンジンを覆うボンネットを有し、
前記走行装置が前輪および後輪によって構成され、
前記走行車体の運転席に搭乗する際に用いる搭乗用ステップに、前記前輪に付着した泥を取り除くスクレーパプレートが装着されており、前記スクレーパプレートが、前記前輪の上部に近接する位置まで前方に延びていることを特徴とする薬液散布車両。
【請求項2】
前記スクレーパプレートは、前記前輪よりも車体幅方向外側の位置まで延び、前記スクレーパプレートの上面は、下方からの泥抜けを防止するガードプレートによって覆われていることを特徴とする請求項1に記載の薬液散布車両
【請求項3】
前記固定部は、作業者が足を掛ける第一の踏桟と、前記第一の踏桟を支持する第一の支持部とを備え、前記第一の支持部の上端が、前記ポンプケースの側面上部に固定され、下端が、前記ポンプケースの下端と略同一の高さ位置となるように配設されており、
前記回動部は、作業者が足を掛ける第二の踏桟と、前記第二の踏桟を支持する第二の支持部と、前記第一の支持部の下部に前記第二の支持部の上部を回動可能に取り付ける回動支点とを備えて、作業者が、前記回動支点を中心に前記回動部を回動操作することで、前記作業ステップを、前記第一の支持部及び前記第二の支持部が直線状となる使用姿勢と、前記第二の支持部が前記第一の支持部の上方へと折り畳まれた収納姿勢とに切り換え可能に構成され、
前記第一の踏桟及び前記第二の踏桟は、それぞれ、上面が波状に形成され、互いの間に間隙を有する一対の帯鋼を備え、
前記第一の支持部の下部に、前記使用姿勢時及び前記収納姿勢時において、前記第二の支持部の上部と当接して姿勢を保持する姿勢保持部材が設けられたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の薬液散布車両。
【請求項4】
前記作業ステップの上下方向の長さを最も長くしたとき、前記作業ステップの下端部の車体幅方向外側の端部が、車体幅方向において、前記走行装置の車体幅方向外側の端部と同一の位置か、または前記走行装置の車体幅方向外側の端部よりも内側に位置していることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の薬液散布車両
【請求項5】
前記散布ブームの少なくとも一部が、前記走行車体の側面に沿うように収納可能で、かつ、上下方向に回動可能なサイドブームとして構成され、
前記サイドブームが収納され、かつ、前記サイドブームの仰角が第一の所定角度未満である場合に、前記走行装置を操舵する操舵装置の舵角が第二の所定角度以上となったときには、前記サイドブームを自動的に上方に回動させるように構成されたことを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の薬液散布車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液の散布を行う薬液散布車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、走行車体(以下、単に「車体」ともいう。)の後部に取り付けられた薬液タンク内に貯留された薬液を、走行車体の前部に取り付けられた散布ブームから散布しつつ、圃場上を走行する薬液散布車両が知られている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、薬液タンクよりも後方の位置に、階段状の作業ステップが車体幅方向外側(車体側方)に向けて配置された薬液散布車両が開示されている。
【0004】
特許文献1に記載されたこの作業ステップは、薬液散布車両が圃場上を走行する間に作物に接触することのないように、前後方向に延びる回動軸を中心に上下に回動可能に構成されている。そのため、作業者は、作業ステップを下方に回動させた後に、薬液散布車両の後部側方から作業ステップを登り、薬液タンクの上部に設けられた投入口から薬剤や水を内部に補給することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-102180
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された作業ステップは、薬液散布車両の後部側方から薬液タンクに近付くことができるように、車体幅方向外側に向けて配置されているため、回動の前後を通じて車体幅方向外側に嵩張り、走行している間に作業ステップが周囲に接触することがあった(図6参照)。
【0007】
したがって、本発明は、走行している間に、薬液タンクよりも後方に設けられた作業ステップが周囲に接触することを防止することができる薬液散布車両を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のかかる目的は、
圃場を走行するための走行装置を有する走行車体と、
前記走行車体の後部に設けられ、薬液を貯留する薬液タンクと、
前記薬液タンク内に貯留された薬液を圃場に散布する散布ブームと、
前記薬液タンクよりも後方において車体幅方向外側に向けて配置された作業ステップとを備えた薬液散布車両であって、
前記作業ステップは、上下方向の長さを変更可能に構成され、上下方向の長さが短く変更されると、前記薬液タンクの車体幅方向の幅内に収まることを特徴とする薬液散布車両によって達成される。
【0009】
本発明によれば、薬液タンクよりも後方に配置された作業ステップの上下方向の長さが短く変更された場合には、薬液タンクの車体幅方向の幅内に収まるように構成されているから、薬液散布車両が走行している間に作業ステップが周囲に接触することを防止することができる。
【0010】
本発明の好ましい実施態様においては、
前記作業ステップの上下方向の長さを最も長くしたとき、前記作業ステップの下端部の車体幅方向外側の端部が、車体幅方向において、前記走行装置の車体幅方向外側の端部と同一の位置か、または前記走行装置の車体幅方向外側の端部よりも内側に位置している。
【0011】
本発明のこの好ましい実施態様によれば、作業ステップの上下方向の長さを最も長くした場合であっても、作業ステップの下端部の車体幅方向外側の端部が、車体幅方向において、走行車体の走行装置の外側の端部と同じ位置か、またはそれよりも内側に位置するように構成されているから、作業者が作業ステップを使用した後に、上下方向の長さを縮め忘れた際に、作業ステップが、走行装置の車体幅方向外側に位置する圃場上の作物に接触することを防止することができる。
【0012】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、
前記薬液タンクの後方に、前記薬液タンクに貯留された薬液を前記散布ブームに供給する薬液ポンプを内装するポンプケースを備え、
前記作業ステップは、前記ポンプケースの車体幅方向外側の面に固定された固定部と、前記固定部に回動可能に連結された回動部を備え、前記回動部が上方に回動されると前記作業ステップの上下方向の長さが短くなり、前記作業ステップが前記薬液タンクの車体幅方向の幅内に収まる。
【0013】
本発明のこの好ましい実施態様によれば、作業ステップが、薬液ポンプを内装するポンプケースに固定されているから、荷重が加わった作業ステップをポンプケースによって確実に支持することができ、作業ステップの脱落を防止することができるとともに、作業ステップを走行車体に固定するためのステーなどを別途設ける必要がないから、部品点数を削減することができる。
【0014】
さらに、本発明のこの好ましい実施態様によれば、ポンプケースに固定された作業ステップの下部が回動可能に構成されているから、作業ステップの全体が回動される場合に比して、回動される際の車体幅方向外側への突出量を少なくすることができ、嵩張らない。
【0015】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、
前記走行車体は、その前部に、エンジンを覆うボンネットを有し、
前記走行装置が前輪および後輪によって構成され、
前記走行車体の運転席に搭乗する際に用いる搭乗用ステップに、前記前輪に付着した泥を取り除くスクレーパプレートが装着されており、前記スクレーパプレートが、前記前輪の上部に近接する位置まで前方に延びている。
【0016】
本発明のこの好ましい実施態様によれば、スクレーパプレートによって、前輪に付着した泥を取り除きながら走行することができるから、過度に付着した泥によって、走行車体の姿勢が不安定になったり、走行不能になる事態を防止することができる。
【0017】
さらに、本発明のこの好ましい実施態様によれば、スクレーパプレートが、前輪の上部に近接する位置まで延びているから、別途足場を設けることなく、スクレーバプレートの上に乗ってボンネットの周囲のメンテナンスを行うことができ、利便性が良い。
【0018】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、
前記スクレーパプレートは、前記前輪よりも車体幅方向外側の位置まで延び、前記スクレーパプレートの上面は、下方からの泥抜けを防止するガードプレートによって覆われている。
【0019】
本発明のこの好ましい実施態様によれば、スクレーパプレートが前輪よりも車体幅方向外側の位置まで延びているから、作業者が安定してその上に乗ることができるとともに、前輪から取り除かれた泥を、車体幅方向外側へ移動させることができ、したがって、取り除かれた泥が後ろ側の走行装置に付着する事態を効果的に抑制することができる。
【0020】
また、本発明のこの好ましい実施態様によれば、スクレーパプレートの上面が、ガードプレートによって覆われ、下方からの泥抜けが防止されているから、スクレーパプレートによって前輪から取り除かれた泥が、スクレーパプレートの上面またはその近傍に飛散するという事態を防止することができるとともに、作業資材をガードプレートの上に安心して載置することができる。
【0021】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、
前記散布ブームの少なくとも一部が、前記走行車体の側面に沿うように収納可能で、かつ、上下方向に回動可能なサイドブームとして構成され、
前記サイドブームが収納され、かつ、前記サイドブームの仰角が第一の所定角度未満である場合に、前記走行装置を操舵する操舵装置の舵角が第二の所定角度以上となったときには、前記サイドブームを自動的に上方に回動させるように構成されている。
【0022】
本発明のこの好ましい実施態様によれば、サイドブームが走行車体の側面に沿うように収納され、かつ、その仰角が第一の所定角度未満である場合に、操舵装置の舵角が第二の所定角度以上となったときには、サイドブームが自動的に上方に回動されるから、操舵装置により向きが変更された走行装置がサイドブームに接触し、サイドブームが破損してしまう事態を防止することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、走行している間に、薬液タンクよりも後方に設けられた作業ステップが周囲に接触することを防止することができる薬液散布車両を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の好ましい実施態様にかかる薬液散布車両の略左側面図である。
図2図2は、図1に示された薬液散布車両の要部平面図である。
図3図3は、図1に示された薬液散布車両の制御系、検出系、入力系および駆動系のブロックダイアグラムである。
図4図4は、図1に示された薬液散布車両のサイドブームが車体幅方向に回動される様子を示す部分拡大平面図である。
図5図5は、左右一対のサイドブームがいずれも車体幅方向外側に回動された状態を示す薬液散布車両の前部の部分拡大平面図である。
図6図6は、図1に示される薬液散布車両の左側のサイドブームの自由端が上方に回動された状態を示す要部正面図である。
図7図7は、図1に示された実施態様にかかる薬液タンクの後方に設けられたポンプケースの近傍の略斜視図である。
図8図8は、作業ステップの下部が上下に回動される様子を示す略背面図である。
図9図9は、図1に示された実施態様にかかる搭乗用ステップおよび左側の前輪の近傍の模式的斜視図である。
図10図10は、図1に示された実施態様にかかる左右一対のサイドブームが上下方向に自動的に回動される制御手順を示すフローチャートである。
図11図11(a)は、図1に示されたHSTレバーの近傍の略平面図であり、図11(b)は、レバーパネルの内部の状態を示す略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面に基づいて、本発明の好ましい実施態様につき、詳細に説明を加える。
【0026】
図1は、本発明の好ましい実施態様にかかる薬液散布車両1の略左側面図であり、図2は、図1に示された薬液散布車両1の要部平面図である。
【0027】
本明細書においては、図1および図2に矢印で示されるように、薬液散布車両1の進行方向となる側を「前」とし、特に断りがない限り、薬液散布車両1の進行方向に向かって左側を「左」といい、その反対側を「右」という(図2参照)。
【0028】
薬液散布車両1は、図1または図2に示されるように、走行車体2(図1参照)と、走行車体2の後部に取り付けられた薬液タンク30と、走行車体2の前部に設けられたセンターブーム50と、センターブーム50の左右に設けられた左右一対のサイドブーム51,52と、薬液タンク30内に貯留された薬液をセンターブーム50およびサイドブーム51,52に供給する薬液ポンプ(図示せず)を備えている。センターブーム50およびサイドブーム51,52は、薬液タンク30内に貯留された薬液を圃場に散布するための散布ブームである。
【0029】
薬液ポンプは、薬液タンク30の後方に設けられたポンプケース64(図1参照)の内部に設けられている。
【0030】
図1に示されるように、走行車体2は、その骨格を構成するメインフレーム8と、本発明にかかる「走行装置」に相当する前輪6および後輪7と、内部にエンジン3が設けられたボンネット12と、メインフレーム8の上部に取付けられ、作業者(操縦者)が搭乗するキャビン20を備えている。
【0031】
エンジン3から出力された動力は、静油圧式無段変速機(HSTともいう)内で変速された後に、前輪6および後輪7に伝達される。その結果、走行車体2が前進し、または後進する。
【0032】
キャビン20内には、前輪6または後輪7を操舵するステアリングハンドル5(本発明の「操舵装置」に相当、図1参照)と、走行車体2の前後進およびその速度を操作するHSTレバー10と、運転席4(図1参照)と、薬液散布車両1を制御するコントローラ60(図2参照)と、種々の操作スイッチを有する操作部9(図2参照)が設けられている。
【0033】
ステアリングハンドル5は、前輪6を操舵する状態と、後輪7を操舵する状態との間で切換え可能に構成されており、特に、走行車体2が後進する際に、後輪7を操舵する状態に切り換えられる。
【0034】
薬液タンク30は、薬剤が溶解した液体を貯留する容器として機能し、運転席4を囲うような形状をなしている。
【0035】
図1および図2に示されるように、センターブーム50および左右一対のサイドブーム51,52はそれぞれ、薬液タンク30から供給される薬剤を散布するための多数のノズル42を備え、昇降リンク装置13を介して、走行車体2の前部に連結されている。
【0036】
左右一対のサイドブーム51,52は、薬液の散布作業を行うときには、車体幅方向に延びる(図5参照)が、非作業時には、それぞれ回動されて、図2に示されるように、走行車体2の側面に沿うように収納される。
【0037】
昇降リンク装置13は、互いに平行に配置された上部リンクアーム14および下部リンクアーム15(図1参照)と、それらの前部に取り付けられたヒッチブラケット16(図2参照)と、左右一対のリフトシリンダ17(図2参照)を備え、上部リンクアーム14および下部リンクアーム15の後端部は走行車体2の前部に設けられた支柱40(図1参照)に連結されている。
【0038】
ヒッチブラケット16の前部には、センターブーム50が固定された支持フレーム41(図2参照)が取り付けられており、図1に示される左右一対のリフトシリンダ17によって、上部リンクアーム14および下部リンクアーム15の前部が上下に回動されると、ヒッチブラケット16、支持フレーム41、センターブーム50および左右一対のサイドブーム51,52が一体的に上下に昇降(回動)される。
【0039】
図3は、図1に示された薬液散布車両1の制御系、検出系、入力系および駆動系のブロックダイアグラムである。
【0040】
図3に示されるように、苗移植機1の制御系は、薬液散布車両1全体の動作を制御するコントローラ60を備えている。
【0041】
コントローラ60は、CPU(Central Processing Unit)を有する処理部89と、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)を有する記憶部62を備え、記憶部62には、苗移植機1を制御する種々のプログラムおよびデータが格納されている。
【0042】
図3に示されるように、薬液散布車両1の検出系は、ステアリングハンドル56の舵角を検出するエンコーダ58と、回動支点19(図4参照)の近傍に設けられ、回動支点19(図4参照)を中心とした各サイドブーム51,52の回動角度を検出する開閉角度センサ53と、左右の上下動シリンダ44,45(図2参照)によって変更される左右の各サイドブーム51,52の仰角θ(図1参照)を検知する仰角センサ54を備えている。
【0043】
図3に示されるように、薬液散布車両1は入力系として機能する操作部9(図2参照)を備えている。
【0044】
操作部9は、リフトシリンダ17(図1参照)の伸縮操作を行う上下スイッチ90と、開閉シリンダ18(図2および図4参照)を伸縮させ、左右一対の各サイドブーム51,52を展開姿勢と収納姿勢との間で切換えるための左開閉スイッチ91および右開閉スイッチ92と、各上下動シリンダ44,45(図2参照)を伸縮させ、左右一対の各サイドブーム51,52の自由端(図2における後側の端部)を上下方向に回動させるための左昇降スイッチ93および右昇降スイッチ94を備えている。
【0045】
図3に示されるように、薬液散布車両1の駆動系は、図1に示された各リフトシリンダ17を伸縮させるモータ96と、図1に示された左右一対の各サイドブーム51,52を展開姿勢と収納姿勢との間で切換える左右の各開閉シリンダ18(図2参照)を伸縮させる左右のギヤードモータ27(図2および図4参照)と、左右の上下動シリンダ44,45(図2参照)を伸縮させる左右の電磁弁46を備えている。
【0046】
図4は、図1に示された薬液散布車両1のサイドブーム51,52が車体幅方向に回動される様子を示す部分拡大平面図であり、図5は、左右一対のサイドブーム51,52がいずれも車体幅方向外側に回動された状態を示す薬液散布車両1の前部の部分拡大平面図である。
【0047】
左右一対のサイドブーム51,52はそれぞれ、以下のようにして、走行車体2の側面に沿って後方に延びる収納姿勢(図2参照)と、走行車体2から車体幅方向外側に延びる展開姿勢(図5参照)との間で、左右独立して回動させ、切り換えることができる。
【0048】
図4に示されるように、支持フレーム41の左右上面にはそれぞれ、ギヤードモータ27を有する開閉シリンダ18が取り付けられている。
【0049】
各開閉シリンダ18の先端部は、支持フレーム41の左右両端部に設けられた取付アーム23または24に連結されており、各開閉シリンダ18が伸縮すると、取付アーム23,24が略上下方向に延びる回動軸19を中心に回動されるように構成されている。
【0050】
ここに、左側の取付アーム23の後部は、左側のサイドブーム51の一方の端部が取り付けられた左側の支柱43に固定されており、右側の取付アーム24の後部は、右側のサイドブーム52の一方の端部が取り付けられた右側の支柱43に固定されている。しかして、各開閉シリンダ18が、図4に矢印Xとして示される方向と平行な方向に伸長した場合には、取付アーム23,24が回動されるのに伴って、各サイドブーム51,52が、回動軸19を中心に、支柱43と一体的に左右方向外側に回動される。
【0051】
その結果、図5に示されるように、各サイドブーム51,52が左右方向外側に展開された展開姿勢をなすため、圃場上を走行しつつ、センターブーム50および左右一対のサイドブーム51,52を用いて、車体幅方向に広く薬剤を散布することができる。
【0052】
これに対して、左右の各開閉シリンダ18が収縮すると、取付アーム23,24が回動されるのに伴って、各サイドブーム51,52が回動軸19を中心に、左右方向内側に回動される。
【0053】
その結果、図2に示されるように、各サイドブーム51,52が走行車体2の側面に沿って後方に延びる収納姿勢をなすため、薬剤を散布しないときに、左右一対のサイドブーム51,52が車体幅方向外側に嵩張ることを防止することができる。
【0054】
さらに、収納姿勢をとる場合と展開姿勢をとる場合のいずれにおいても、以下のようにして、各サイドブーム51,52の自由端(取付アーム23,24に取り付けられた端部とは反対側の端部であり、図2に示される収納姿勢における後ろ側の端部)を独立して上下に回動させることができる。
【0055】
図6は、図1に示される薬液散布車両1の左側のサイドブーム51の自由端が上方に回動された状態を示す要部正面図である。なお、図6においては、キャビン20などが省略されている。
【0056】
図1および図6に示されるように、左右一対の上下動シリンダ44,45が、左右の各支柱43の上部と各サイドブーム51,52とを結ぶように設けられている。しかして、各上下動シリンダ44,45が伸縮すると、各サイドブーム51,52の自由端(図2に示される収納姿勢における後ろ側の端部)が下方または上方に回動される。
【0057】
図7は、図1に示された実施態様にかかる薬液タンク30の後方に設けられたポンプケース64の近傍の略斜視図であり、図8は、作業ステップ67の下部が上下に回動される様子を示す略背面図である。
【0058】
本実施態様においては、ポンプケース64は、走行車体2の後端部に取り付けられており、ポンプケース64の上面には薬液や工具などを一時的に載置するキャリア65が設けられている。
【0059】
図7に示されるように、ポンプケース64の左側の側面には、階段のような形状をなす作業ステップ67が固定されており、作業者は、作業ステップ67を登り、薬液タンク30の上面に設けられた蓋31を開けて、薬液タンク30の内部に薬剤および水を補給することができる。また、図1に示されるように、走行車体2の左側部であって、キャビン20の下方の位置には、キャビン20に搭乗する際に用いる搭乗用ステップ81が設けられており、作業者は、走行車体2の左側から乗り降りするため、作業ステップ67にアクセスし易いように構成されている。
【0060】
作業ステップ67は、ポンプケース64に固定された固定部68と、固定部68に回動可能に連結された回動部69を備えている。
【0061】
固定部68は、作業者が足を掛ける第一の踏桟70と、第一の踏桟70を支持する支持部72を備え、支持部72には2つのロック孔(図示せず)が形成されている。支持部72の下端部の高さは、安全基準上の最低地上高さと略同一に構成されている。
【0062】
一方、回動部69は、作業者が足を掛ける第二の踏桟71と、第二の踏桟71を支持する支持部73と、前後方向にスライド可能に支持部73に取り付けられたスプリングピン74を備えている。
【0063】
第一の踏桟70および第二の踏桟71はそれぞれ、2つの帯鋼78が互いの間に間隙を有した状態で連結されて形成されており、帯鋼78同士の間の間隙から泥が圃場上に落下するため、第一の踏桟70および第二の踏桟71の上面に泥が溜まらない。各帯鋼78の上端部は、図7に示されるように、波状の形状を有しており、作業者が各踏桟70,71上で足を滑らせることの防止が図られている。また、第一の踏桟70と第二の踏桟71との間は、左右方向(車体幅方向)に筒抜け(開放状態)になっており、作業者のつま先が作業ステップ67に触れることがない。
【0064】
なお、本実施態様においては、第二の踏桟71の下端部の高さは地上から550mmの高さに設定されており、背の高い作業者であれば、第二の踏桟71の上に立った状態で、薬液タンク30の蓋31を開けることができる。
【0065】
スプリングピン74は、前方にスライドされて、固定部68に形成された2つのロック孔のいずれかに挿入されることによって回動部69の回動を規制するように構成されている。スプリングピン74が後方にスライドされ、ロック孔から引き抜かれると、回動部69は、作業者によって、回動支点75を中心に回動されて、図8に実線で示された使用姿勢と、破線で示された収納姿勢との間で切り換えられる。回動部69が収納姿勢に切り換えられたときには、回動部69の支持部73が略上方(略鉛直)に延びるため、図8に示されるように、回動部69が使用姿勢にあるときに比して、作業ステップ67全体の上下方向の長さが、短くなる。
【0066】
収納姿勢にある回動部69が使用される際には、まず、作業者によって、スプリングピン74が後方にスライドされて一方のロック孔から引き抜かれ、回動部69の回動規制が解除される。
【0067】
次いで、作業者によって、回動部69が下方に回動され、回動部69が図8に実線で示された使用姿勢に切り換えられる。
【0068】
ここに、図7に示されるように、固定部68の前面には押しプレート76が取り付けられており、回動部69が下方に回動されると、押しプレート76の裏面(車体幅方向内側の面)に回動部69の支持部73の上部が当接し、回動部69が使用姿勢をなす状態で保持される。
【0069】
このとき、他方のロック孔が、スプリングピン74と前後方向に並ぶように設計されているため、スプリングの付勢力によって、スプリングピン74が前方にスライドされて他方のロック孔に挿入され、回動部69が使用姿勢をなす状態でその回動が規制される。なお、押しプレート76の表面にはゴム板が取り付けられており、作業ステップ67のガタ付きの防止と、回動部69が強い勢いで回動された際の衝撃の吸収が図られている。
【0070】
以上のようにして回動部69が使用姿勢に切り換えられた作業ステップ67の下端部の車体幅方向外側の端部は、図8に示されるように、左側の後輪7の車体幅方向外側の端部よりも内側に位置するため、作業者が作業ステップ67の回動部69を収納姿勢に変更し忘れた際に、作業ステップ67が、左側の後輪7の車体幅方向外側(左方)に位置する圃場上の作物に接触することを防止することができる。
【0071】
これに対し、使用姿勢にある回動部69が収納される際には、まず、作業者によって、スプリングピン74が後方にスライドされて他方のロック孔から引き抜かれ、回動部69の回動規制が解除される。
【0072】
次いで、作業者によって、回動部69が上方に回動され、回動部69が図8に破線で示された収納姿勢に切り換えられる。
【0073】
ここに、回動部69が上方に回動されると、回動部69の支持部73が押しプレート76(図7参照)の車体幅方向外側(左側)の面に当接し、回動部69が収納姿勢をなす状態(図8の破線参照)で保持される。
【0074】
このとき、固定部68の支持部72に形成された一方のロック孔が、スプリングピン74と前後方向に並ぶように設計されているため、スプリングの付勢力によって、スプリングピン74が前方にスライドされて一方のロック孔に挿入され、回動部69が収納姿勢をなす状態でその回動が規制される。なお、本実施態様においては、押しプレート76は、走行車体2のフレームに当接しており、作業ステップ67に強い負荷がかかった場合に、押しプレート76が破損する事態を防止することができる。
【0075】
以上のようにして回動部69が収納姿勢に切り換えられた作業ステップ67は、図8に示されるように、車体幅方向(左右方向)において、薬液タンク30の幅内に収まるため、薬液散布車両1が走行している間に、作業ステップ67が周囲に接触することを防止することができる。さらに、作業者が薬液散布車両1の側方を移動する際に、作業ステップ67が邪魔になることがない。
【0076】
また、固定部68の支持部72の下端部の高さが安全基準上の最低地上高さと略同一に構成されているため、回動部69が収納姿勢に切り換えられた場合には、走行中に、固定部68の下部が圃場上の作物に接触することが防止される。
【0077】
なお、薬液タンク30の後面には、薬液タンク30を引き出すための左右一対のフック77が設けられており、作業者が作業ステップ67を乗り降りする際のグリップ(手摺り)を兼ねている。
【0078】
一方、図9は、図1に示された実施態様にかかる搭乗用ステップ81および左側の前輪6の近傍の模式的斜視図である。
【0079】
図1および図9に示されるように、走行車体2の左側面で、かつ、キャビン20の下方に設けられた搭乗用ステップ81は、第三の踏桟82および第四の踏桟83を備えている。
【0080】
第三の踏桟82の前部には、左側の前輪6の上部に近接する位置(前輪6の上部後方の位置)まで前方に延びるスクレーパプレート84が装着されており、作業者が、スクレーパプレート84の上(正確には、後に説明を加えるガードプレート85の上)に乗った状態で、エンジン3またはボンネット12の近傍をメンテナンスすることができるから、別途、脚立などを用意する手間を省くことができる。加えて、薬液散布車両1が走行している間に、左側の前輪6の外周部に付着した泥を、スクレーパプレート84によって取り除く(削ぎ落とす)ことができる。
【0081】
ここに、スクレーパプレート84は、左側の前輪6よりも車体幅方向(左右方向)外側の位置まで延びており、作業者が安定してスクレーパプレート84の上に乗ることができるとともに、図9に矢印付きの一点鎖線で示されるように、スクレーパプレート84によって左側の前輪6から取り除かれた泥が、スクレーパプレート84の下方において、車体幅方向外側に移動されるように構成されている。
【0082】
このように構成することによって、左側の前輪6から取り除かれた泥が、圃場上に落下した後に、左側の後輪7に踏まれ、付着することを効果的に抑制することができ、走行車体2の姿勢が泥によって傾くような事態を防止することができる。
【0083】
なお、本実施態様においては、スクレーパプレート84は軽量化を目的として、網目状に構成されているが、スクレーパプレート84の上面がガードプレート85によって覆われているため、スクレーパプレート84の上方または第三の踏桟82の上方への泥抜けを防止することができるとともに、給油口に近いガードプレート85の上に、燃料タンクなどの作業資材を安定的に載置することができ、利便性が高い。
【0084】
一方、図10は、図1に示された実施態様にかかる左右一対のサイドブーム51,52が上下方向に自動的に回動される制御手順を示すフローチャートである。
【0085】
左右一対のサイドブーム51,52は、使用されない際には、通常、収納姿勢に切り換えられた後に、図1図2および図8に示されるブーム受け80に、上方から収容される。しかしながら、各サイドブーム51,52が過度に下降された場合には、旋回時など、ステアリングハンドル5が大きく操舵された際に、ステアリングハンドル5が操舵された方のサイドブーム51または52に、前輪6または後輪7が接触し、ノズル42が破損してしまうことがあった。
【0086】
このような状況に照らして、本実施態様においては、ステアリングハンドル5が所定角度以上に操舵された際に、コントローラ60が、以下のようにして、自動的にサイドブーム51または52を上昇させるように構成されている。
【0087】
コントローラ60は、まず、開閉角度センサ53の検出信号に基づき、各サイドブーム51,52が収納姿勢にあるか否かを判定する(ステップS1)。
【0088】
判定の結果、各サイドブーム51,52が収納姿勢にない場合には、各サイドブーム51,52が収納姿勢に切り換えられるまで、開閉角度センサ53に基づく姿勢の判定が繰り返される。
【0089】
これに対して、判定の結果、各サイドブーム51,52が収納姿勢にある(車体の側面に沿うように収納されている)場合には、コントローラ60は、仰角センサ54の検出信号に基づき、各サイドブーム51,52の仰角が第一の所定角度未満であるか否か(水平もしくは水平に近い角度であるか否か)を判定する(ステップS2)。
【0090】
判定の結果、各サイドブーム51,52の仰角が第一の所定角度以上である場合には、コントローラ60は、各サイドブーム51,52が収納姿勢にあるか否かの判定の段階に戻る(ステップS1)。
【0091】
これに対して、判定の結果、各サイドブーム51,52の仰角が第一の所定角度未満である場合には、コントローラ60は、エンコーダ58の検出信号に基づき、ステアリングハンドル5の舵角が第二の所定角度以上であるか否かを判定する(ステップS3)。
【0092】
判定の結果、ステアリングハンドル5の舵角が第二の所定角度未満である場合(直進方向に操舵された状態を0度とした場合の舵角が第二の所定角度未満である場合)には、コントローラ60は、各サイドブーム51,52が収納姿勢にあるか否かの判定の段階に戻る(ステップS1)。
【0093】
これに対して、判定の結果、ステアリングハンドル5の舵角が第二の所定角度以上である場合には、コントローラ60は、ステアリングハンドル5が切られた側のサイドブーム51または52を、最上げ位置(最大限に上方に回動させた位置)まで上方に回動させる(ステップS4)。
【0094】
たとえば、ステアリングハンドル5が左に(大きく)切られた場合には、コントローラ60は、左側の上下動シリンダ44を収縮させ、左側のサイドブーム51を最上げ位置まで上方に回動させる。
【0095】
こうして、一方のサイドブーム51または52を上方に回動させた後に、コントローラ60は、エンコーダ58の検出信号に基づき、ステアリングハンドル5の舵角が、直進する方向に戻されたか否かを判定する(ステップS5)。
【0096】
判定の結果、ステアリングハンドル5の舵角が直進する方向に戻されている場合には、コントローラ60は、ステップS5において上方に回動された一方のサイドブーム51または52を、回動させる前の状態(仰角度)となるまで下方に回動させる(ステップS6)。このように、本実施態様においては、コントローラ60は、ステアリングハンドル5の舵角が直進方向に戻された時点で、サイドブーム51または52を元の高さに戻すように構成されている。
【0097】
一方、判定の結果、ステアリングハンドル5の舵角が直進する方向に戻されていない場合には、直進する方向に戻されるまで、エンコーダ58の検出信号に基づく判定が繰り返される。
【0098】
上記の制御構成により、ステアリングハンドル5を操作して前輪6または後輪7が操舵された際、自動的にサイドブーム51,52のノズル42が前輪6または後輪7に接触しない高さまで自動で上方回動するので、ノズル42の破損が防止される。
【0099】
また、ステアリングハンドル5の操舵位置が直進位置に戻ったときには、自動的にサイドブーム51,52が上昇前の位置まで下方回動するので、作業者が戻し操作をする必要がなく、操作が煩雑になることが防止される。
【0100】
さらに、ステアリングハンドル5が操舵操作された側のサイドブーム51または52のみを上昇させることにより、送油量を抑えることができるので、他の油圧操作箇所の油圧不足による作動不良の発生が防止される。
【0101】
図11(a)は、図1に示されたHSTレバー10の近傍の略平面図であり、図11(b)は、レバーパネル11の内部の状態を示す略斜視図である。
【0102】
HSTレバー10は、図11(a)に示されるレバーパネル11に形成された開口21に沿って操作される。
【0103】
開口21は、前進領域28、後進領域29、中立領域22および前進領域28の前端部から右方に延びるロック領域26によって構成され、HSTレバー10が前進領域28に操作されると走行車体2が前進し、後進領域29に操作されると、走行車体2が後進し、中立領域22に操作されると、走行車体2が停止する。また同じ前進領域28内においては、HSTレバー10が、より前方に操作されるほど、走行車体2の前進速度が高くなる。
【0104】
ここに、走行車体2が急停止または急発進した際には、静油圧式無段変速機内の圧力によって、HSTレバー10が中立方向(中立領域22に移動される方向)に付勢される特性が知られており、本実施態様においては、この特性を活かし、走行車体2の加速を抑える安全装置として利用されている。
【0105】
しかしながら、走行車体2が急停止または急発進する度にHSTレバー10の位置が中立側に付勢されると、煩わしく感じる作業者(運転者)もいるため、本実施態様においては、前進領域28から右方に延びるロック領域26にHSTレバー10が操作されると、HSTレバー10の基部側のピン56(図11(b)参照)が、ロック孔57に入り、HSTレバー10がロック領域26内に保持(最高車速の状態に保持)されるように構成されている。走行車体2を停止または発進させたい場合には、作業者は、クラッチペダルおよびブレーキペダル(図示せず)を用いて停止と発進を行うことができる。
【0106】
本実施態様によれば、薬液タンク30よりも後方に配置された作業ステップ67の回動部69が上方に回動されることによって、作業ステップ67全体の上下方向の長さが短く変更された場合には、図8に破線で示されるように、作業ステップ67が薬液タンク30の車体幅方向の幅内に収まるように構成されているから、薬液散布車両1が走行している間に作業ステップ67が周囲に接触することを防止することができる。
【0107】
また、本実施態様によれば、作業ステップ67の上下方向の長さを最も長くした場合、すなわち、回動部69を下方に回動した場合(図7および図8に実線で示された状態を参照)であっても、作業ステップ67の下端部の車体幅方向外側の端部が、車体幅方向において、左側の後輪7の外側の端部よりも内側に位置するように構成されているから、作業者が作業ステップ67を使用した後に、上下方向の長さを縮め忘れた場合(具体的には、回動部69を上方に回動させ忘れた場合)であっても、作業ステップ67が、走行装置の一例である左側の後輪7の車体幅方向外側(左側)に位置する圃場上の作物に接触することを防止することができる。
【0108】
さらに、本実施態様によれば、作業ステップ67が、薬液ポンプを内装するポンプケース64に固定されているから、荷重が加わった作業ステップ67を、ポンプケース64によって確実に支持することができ、作業ステップ67の脱落を防止することができるとともに、作業ステップ67を走行車体2に固定するためのステーなどを別途設ける必要がないから、部品点数を削減することができる。
【0109】
加えて、本実施態様によれば、ポンプケース64に固定された作業ステップ67の下部が回動可能に構成されているから、作業ステップ67の全体が回動される場合に比して、回動される際の車体幅方向外側への突出量を少なくすることができ、場所を選ばない。
【0110】
また、本実施態様によれば、スクレーパプレート84によって、左側の前輪6に付着した泥を取り除きながら(削ぎ落としながら)走行することができるから、左側の前輪6に過度に付着した泥によって、走行車体2の姿勢が不安定になったり、走行不能になる事態を防止することができる。
【0111】
さらに、本実施態様によれば、スクレーパプレート84が、左側の前輪6の上部に近接する位置まで延びているから、別途足場を設けることなく、スクレーバプレート84の上に乗ってボンネット12(図1参照)の周囲のメンテナンスを行うことができ、利便性が良い。
【0112】
また、本実施態様によれば、スクレーパプレート84が左側の前輪6よりも車体幅方向外側の位置まで車体幅方向に延びているから、作業者が安定してその上に乗ることができるとともに、左側の前輪6から取り除かれた泥を、車体幅方向外側へ移動させることができ、したがって、取り除かれた泥が左側の後輪7に付着する事態を効果的に抑制することができる。
【0113】
さらに、本実施態様によれば、スクレーパプレート84の上面が、ガードプレート85によって覆われ、スクレーパプレート84の下方から上方への泥抜けが防止されているから、スクレーパプレート84によって左側の前輪6から取り除かれた泥が、スクレーパプレート84の上面またはその近傍に飛散するという事態を防止することができるとともに、作業資材をガードプレート85の上に安心して載置することができる。
【0114】
加えて、本実施態様によれば、サイドブーム51,52が走行車体2の側面に沿うように収納され(本実施態様においては、図2に示されるように、走行車体2に沿うように収納姿勢に切り換えられることを指す)、かつ、その仰角θ(図1参照)が第一の所定角度未満である場合に、操舵装置として機能するステアリングハンドル5の舵角が第二の所定角度以上となったときには、コントローラ60の制御に基づき、上下動シリンダ44,45によってサイドブーム51,52が自動的に上方に回動されるから、ステアリングハンドル5の操舵により向きが変更された走行装置、すなわち、前輪6または後輪7が、サイドブーム51または52に接触し、サイドブーム51または52の特にノズル42が破損してしまう事態を防止することができる。
【0115】
本発明は、以上の実施態様に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0116】
例えば、図1ないし図11に示された前記実施態様においては、作業ステップ67の下端部の車体幅方向外側の端部が、左側の後輪7の車体幅方向外側の端部よりも車体幅方向内側に収まるように構成されているが、車体幅方向において、左側の後輪7の車体幅方向外側の端部と同一の位置となるように構成してもよい。また、作業ステップ67の下端部の車体幅方向外側の端部が、左側の後輪7の右方(車体幅方向内側)に位置するように構成してもよく、この場合には、作業ステップを、より一層前方に配置し、薬液散布車両の前後長を短く構成することができるから、薬液散布車両の旋回性能を向上させることが可能になる。
【0117】
また、前記実施態様においては、作業ステップ67は、第一の踏桟70および第二の踏桟71を備えているが、作業ステップ67が備える踏桟の数は2未満(すなわち1)でも、3以上でもよい。
【0118】
さらに、前記実施態様においては、作業ステップ67は、その下部である回動部69が回動されることによって、上下方向の長さ(図8参照)を変更可能に構成されているが、上下方向の長さを変更(伸縮)する方法はこれに限られず、たとえば、作業ステップの上部に長孔を形成し、作業ステップの下部を、長孔に沿ってスライドさせることによって、作業ステップの上下方向の長さを変更可能に構成してもよい。
【0119】
加えて、前記実施態様においては、図7に示されるように、作業ステップ67が、ポンプケース64の左側の側面に取り付けられているが、作業ステップ67をポンプケース64の左側の側面に取り付けることは必ずしも必要でなく、右側の側面に取り付けてもよい。この場合には、走行車体2の右側に向けて(換言すれば右側から登るように)配置されているから、回動部69が下方に回動された場合には、作業ステップ67の車体幅方向外側の端部が、右側の後輪7の車体幅方向外側の端部と同じ位置か、それよりも内側に位置し、回動部69が上方に回動された場合には、薬液タンク30の車体幅方向の幅内に収まるように構成することが必要である。また、作業ステップを、ポンプケースの左右それぞれに設けてもよい。
【0120】
また、前記実施態様においては、サイドブーム51,52の仰角が所定角度未満である場合であって、かつ、収納姿勢にある場合に、ステアリングハンドル5の舵角が所定角度以上となった際に、左右の上下動シリンダ44,45により、ステアリングハンドル5が切られた方のサイドブーム51または52が上昇されるように構成されているが、図2に示されたリフトシリンダ17によって、各サイドブーム51,52を上昇させるように構成してもよく、また、ステアリングハンドル5が切られた方に限らず、左右両方のサイドブーム51,52の自由端を上方に回動させてもよい。加えて、ステアリングハンドル5のその時点での絶対的な舵角ではなく、ステアリングハンドル5の操舵量が所定値以上となった際に、サイドブーム51または/および52を上昇させるように構成してもよい。
【0121】
さらに、前記実施態様においては、サイドブーム51,52の仰角が所定角度未満である場合であって、かつ、収納姿勢にある場合に、ステアリングハンドル5の舵角が所定角度以上となった際に、左右の上下動シリンダ44,45により、ステアリングハンドル5が切られた方のサイドブーム51または52を最上げ位置まで上昇させるように構成されているが、サイドブーム51,52を、常に、最上げ位置まで上昇させることは必ずしも必要でなく、ステアリングハンドル5の切れ角(舵角)に応じて、必要な分だけ上方に回動させるように構成してもよい。このように、ステアリングハンドル5の舵角に合わせて、サイドブーム51,52の上方回動量を変化させることによって、前輪6または後輪7の操舵角度が大きくなっても、サイドブーム51,52のノズル42との接触を確実に防止することができる。
【0122】
加えて、前記実施態様においては、サイドブーム51,52が収納姿勢をなし、かつ、その仰角が所定角度未満である場合に、ステアリングハンドル5の舵角が所定角度以上となったタイミングで、コントローラ60がサイドブーム51,52を上昇させる制御を、常時、行うように構成されているが、この制御を行うか否かを切り換えるデジタルスイッチを別途設けてもよく、この場合には、設定を不揮発に保存するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0123】
1 薬液散布車両
2 走行車体
3 エンジン
4 運転席
5 ステアリングハンドル
6 前輪
7 後輪
8 メインフレーム
9 操作部
10 HSTレバー
11 レバーパネル
12 ボンネット
13 昇降リンク装置
14 上部リンクアーム
15 下部リンクアーム
16 ヒッチブラケット
17 リフトシリンダ
18 開閉シリンダ
19 回動支点
20 キャビン
21 開口
22 中立領域
23 取付アーム
24 取付アーム
25 開閉扉
26 ロック領域
27 ギヤードモータ
28 前進領域
29 後進領域
30 薬液タンク
31 蓋
32 作業灯
33 リヤガラス
34 ホイルカバー
35 ハブ
36 開口部
37 プレート
38 ナット
39 サイドガラス
40 支柱
41 支持フレーム
42 ノズル
43 支柱
44 左側の上下動シリンダ
45 右側の上下動シリンダ
46 電磁弁
47 電磁弁
48 薬液ポンプ
50 センターブーム
51 左側のサイドブーム
52 右側のサイドブーム
53 開閉角度センサ
54 仰角センサ
56 ピン
57 ロック孔
58 エンコーダ
60 コントローラ
61 処理部
62 記憶部
64 ポンプケース
65 キャリア
67 作業ステップ
68 固定部
69 回動部
70 第一の踏桟
71 第二の踏桟
72 支持部
73 支持部
74 スプリングピン
75 回動支点
76 押しプレート
77 フック
78 帯鋼
80 ブーム受け
81 搭乗用ステップ
82 第三の踏桟
83 第四の踏桟
84 スクレーパプレート
85 ガードプレート
90 上下スイッチ
91 左開閉スイッチ
92 右開閉スイッチ
93 左昇降スイッチ
94 右昇降スイッチ
96 モータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11