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特許7441405走行経路生成システム及び車両運転支援システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】走行経路生成システム及び車両運転支援システム
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/095 20120101AFI20240222BHJP
   B60W 30/10 20060101ALI20240222BHJP
   B60W 30/09 20120101ALI20240222BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
B60W30/095
B60W30/10
B60W30/09
G08G1/16 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020022368
(22)【出願日】2020-02-13
(65)【公開番号】P2021126989
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100059959
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162824
【弁理士】
【氏名又は名称】石崎 亮
(72)【発明者】
【氏名】菅野 崇
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0086336(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行経路生成システムであって、
車両の走行路に関する走行路情報を取得する走行路情報取得装置と、
前記走行路上の障害物に関する障害物情報を取得する障害物情報取得装置と、
前記走行路情報及び前記障害物情報に基づいて、前記走行路において前記車両に走行させる目標走行経路を生成するよう構成された演算装置と、を有し、
前記演算装置は、
前記走行路情報に基づいて、前記走行路上において前記車両を誘導するための基準となる走行ラインである誘導ラインを生成し、
前記障害物情報に基づいて、前記障害物を前記車両に回避させるための走行ラインである回避ラインを生成し、
前記誘導ライン及び前記回避ラインに基づいて、前記目標走行経路を生成し、
前記誘導ラインを生成する第1演算周期を、前記回避ラインを生成する第2演算周期よりも長くするよう構成され、
前記演算装置は、
前記車両が、当該車両が走行する第1車線から当該第1車線の左側に位置する第2車線へと車線変更してから、交差点を左折するような状況において、
前記車両を前記第1車線から前記第2車線に車線変更させた後に、前記車両を前記交差点付近において前記第2車線内で左側に移動させてから、前記車両を前記交差点で左折させるように、前記車両を誘導するための前記誘導ラインを生成すると共に、
前記車両に、前記第1車線上に存在する車両及び前記第2車線上に存在する車両を少なくとも回避させるための前記回避ラインを生成し、
生成された前記誘導ラインにおいて、生成された前記回避ラインに対応する部分を、当該回避ラインによって修正することで、前記目標走行経路を生成する、
よう構成されている、
ことを特徴とする走行経路生成システム。
【請求項2】
前記演算装置は、前記第1演算周期において、当該第1演算周期の演算開始時から第1所定時間先の期間について前記誘導ラインを生成する一方で、前記第2演算周期において、当該第2演算周期の演算開始時から前記第1所定時間よりも短い第2所定時間先の期間について前記回避ラインを生成するよう構成されている、請求項1に記載の走行経路生成システム。
【請求項3】
前記演算装置は、前記第1演算周期において、当該第1演算周期の演算開始時における前記車両の位置から第1所定距離先の区間について、前記誘導ラインを生成する一方で、前記第2演算周期において、当該第2演算周期の演算開始時における前記車両の位置から前記第1所定距離よりも短い第2所定距離先の区間について、前記回避ラインを生成するよう構成されている、請求項1又は2に記載の走行経路生成システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の走行経路生成システムによって生成された目標走行経路に沿って車両が走行するように、前記車両を運転制御するよう構成された制御装置を有することを特徴とする車両運転支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行経路を生成する走行経路生成システム、及び走行経路に基づき車両の運転支援を行う車両運転支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自車両の周辺の状況や自車両の状態などに基づき、自車両に走行させるための目標走行経路を設定し、この目標走行経路に基づき車両の運転支援(具体的には運転アシスト制御や自動運転制御)を行う技術が開発されている。例えば、特許文献1には、車線変更時において、自車両の情報や自車両周辺の他車両の情報などに基づき、車線変更の開始ポイント及び終了ポイントを設定し、これらポイントに応じた目標走行経路を生成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-100657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、目標走行経路に基づき車両の運転支援を行うときに、この運転支援において複雑な制御(操舵や加減速を複数回行う制御など)が必要となるような状況、例えば車両が車線変更を行った後に交差点を右折又は左折するような状況では、目標走行経路を生成するための演算の負荷が大きくなる傾向にある。他方で、車両の走行路上に障害物が存在する場合には、車両と障害物との衝突などを防止して安全性を確保すべく、障害物を回避するような目標走行経路を生成する必要がある。そうすると、上記のような運転支援にて複雑な制御が必要となるような経路が適用される状況において、その経路上に障害物が存在する場合には、例えば車両が周辺車両を避けつつ車線変更を行った後に交差点を右折又は左折するような場合には、目標走行経路を生成するための演算の負荷が非常に大きくなってしまう。
【0005】
なお、上述した特許文献1には、車線変更時における目標走行経路を生成することが記載されているに止まり、このような本願の発明者が着眼した課題については何ら開示されておらず、当然、これを解決可能な技術について開示も示唆もされていない。
【0006】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、目標走行経路に基づく運転支援時の安全性を確保しつつ、目標走行経路を生成するための演算負荷を適切に軽減することができる走行経路生成システム、及び、この目標走行経路に基づき車両の運転支援を行うことができる車両運転支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、走行経路生成システムであって、車両の走行路に関する走行路情報を取得する走行路情報取得装置と、走行路上の障害物に関する障害物情報を取得する障害物情報取得装置と、走行路情報及び障害物情報に基づいて、走行路において車両に走行させる目標走行経路を生成するよう構成された演算装置と、を有し、演算装置は、走行路情報に基づいて、走行路上において車両を誘導するための基準となる走行ラインである誘導ラインを生成し、障害物情報に基づいて、障害物を車両に回避させるための走行ラインである回避ラインを生成し、誘導ライン及び回避ラインに基づいて、目標走行経路を生成し、誘導ラインを生成する第1演算周期を、回避ラインを生成する第2演算周期よりも長くするよう構成され、演算装置は、車両が、当該車両が走行する第1車線から当該第1車線の左側に位置する第2車線へと車線変更してから、交差点を左折するような状況において、車両を第1車線から第2車線に車線変更させた後に、車両を交差点付近において第2車線内で左側に移動させてから、車両を交差点で左折させるように、車両を誘導するための誘導ラインを生成すると共に、車両に、第1車線上に存在する車両及び第2車線上に存在する車両を少なくとも回避させるための回避ラインを生成し、生成された誘導ラインにおいて、生成された回避ラインに対応する部分を、当該回避ラインによって修正することで、目標走行経路を生成する、よう構成されている、ことを特徴とする。
【0008】
このように構成された本発明では、演算装置は、走行路情報に基づいて誘導ラインを生成するための第1演算周期を、障害物情報に基づいて回避ラインを生成するための第2演算周期よりも長くする。具体的には、演算装置は、時々刻々変化し得る障害物情報(障害物が車両や歩行者などである場合、障害物が移動するからである)を用いた回避ラインの生成を、比較的短い第2演算周期にて行うことで、車両と障害物との衝突などを防止して、目標走行経路に基づく運転支援時の安全性を適切に確保するようにする。他方で、演算装置は、基本的には障害物情報のように変化することがない走行路情報を用いた誘導ラインの生成を、比較的長い第1演算周期にて行うことで、目標走行経路を生成するための演算負荷を適切に軽減するようにする。以上より、本発明によれば、目標走行経路に基づく運転支援時の安全性の確保と、目標走行経路を生成するための演算負荷の軽減の両方を適切に実現することができる。また、本発明によれば、車両が車線変更して交差点を左折するような状況において、目標走行経路に基づく運転支援時の安全性を効果的に確保することができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、演算装置は、第1演算周期において、当該第1演算周期の演算開始時から第1所定時間先の期間について誘導ラインを生成する一方で、第2演算周期において、当該第2演算周期の演算開始時から第1所定時間よりも短い第2所定時間先の期間について回避ラインを生成するよう構成されている。
このように構成された本発明では、演算装置は、誘導ラインよりも回避ラインのほうが生成に要する演算負荷が大きいので、回避ラインを生成する期間を、誘導ラインを生成する期間よりも短くする。これにより、目標走行経路を生成するための演算負荷を更に軽減することができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、演算装置は、第1演算周期において、当該第1演算周期の演算開始時における車両の位置から第1所定距離先の区間について、誘導ラインを生成する一方で、第2演算周期において、当該第2演算周期の演算開始時における車両の位置から第1所定距離よりも短い第2所定距離先の区間について、回避ラインを生成するよう構成されている。
このように構成された本発明では、演算装置は、誘導ラインよりも回避ラインのほうが生成に要する演算負荷が大きいので、回避ラインを生成する区間を、誘導ラインを生成する区間よりも短くする。これにより、目標走行経路を生成するための演算負荷を更に軽減することができる。
【0012】
他の観点では、本発明において、車両運転支援システムは、上述した走行経路生成システムによって生成された走行経路に沿って車両が走行するように、車両を運転制御するよう構成された制御装置を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の走行経路生成システムによれば、目標走行経路に基づく運転支援時の安全性を確保しつつ、目標走行経路を生成するための演算負荷を適切に軽減することができ、また、本発明の車両運転支援システムによれば、このような目標走行経路に基づき車両の運転支援を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態による走行経路生成システムが適用された車両運転支援システムの概略構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態による目標走行経路生成及び運転支援に係るフローチャートである。
図3】本発明の実施形態による誘導ラインの生成についての説明図である。
図4】本発明の実施形態による回避ラインの生成についての説明図である。
図5】本発明の実施形態による誘導ライン及び回避ラインに応じた目標走行経路の生成についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態による走行経路生成システム及び車両運転支援システムについて説明する。
【0016】
[システム構成]
まず、図1を参照して、本発明の実施形態による走行経路生成システムが適用された車両運転支援システムの構成について説明する。図1は、本発明の実施形態による走行経路生成システムが適用された車両運転支援システムの概略構成を示すブロック図である。
【0017】
車両運転支援システム100は、走行路において車両1に走行させるための目標走行経路を設定する走行経路生成システムとしての機能を有すると共に、車両1をこの目標走行経路に沿って走行させるように運転支援制御(運転アシスト制御や自動運転制御)を行うように構成されている。図1に示すように、車両運転支援システム100は、演算装置及び制御装置としてのECU(Electronic Control Unit)10と、複数のセンサ類と、複数の制御システムと、を有する。
【0018】
具体的には、複数のセンサ類には、カメラ21、レーダ22や、車両1の挙動や乗員による運転操作を検出するための車速センサ23、加速度センサ24、ヨーレートセンサ25、操舵角センサ26、アクセルセンサ27、ブレーキセンサ28が含まれている。さらに、複数のセンサ類には、車両1の位置を検出するための測位システム29、ナビゲーションシステム30が含まれている。複数の制御システムには、エンジン制御システム31、ブレーキ制御システム32、ステアリング制御システム33が含まれている。
【0019】
また、他のセンサ類として、車両1に対する周辺構造物の距離及び位置を測定する周辺ソナー、車両1の4箇所の角部における周辺構造物の接近を測定するコーナーレーダや、車両1の車室内を撮影するインナーカメラが含まれていてもよい。
【0020】
ECU10は、複数のセンサ類から受け取った信号に基づいて種々の演算を実行し、エンジン制御システム31、ブレーキ制御システム32、ステアリング制御システム33に対して、それぞれエンジンシステム、ブレーキシステム、ステアリングシステムを適宜に作動させるための制御信号を送信する。ECU10は、1つ以上のプロセッサ(典型的にはCPU)と、各種プログラムを記憶するメモリ(ROM、RAMなど)と、入出力装置などを備えたコンピュータにより構成される。なお、ECU10は、本発明における「演算装置」及び「制御装置」の一例に相当する。
【0021】
カメラ21は、車両1の周囲を撮影し、画像データを出力する。ECU10は、カメラ21から受信した画像データに基づいて、対象物(例えば、先行車両(前方車両)、後続車両(後方車両)、駐車車両、歩行者、走行路、区画線(車線境界線、白線、黄線)、交通信号、交通標識、停止線、交差点、障害物等)を特定する。なお、ECU10は、交通インフラや車々間通信等により、外部から対象物の情報を取得してもよい。これにより、対象物の種類、相対位置、移動方向等が特定される。
【0022】
レーダ22は、対象物(特に、先行車両、後続車両、駐車車両、歩行者、走行路上の落下物等)の位置及び速度を測定する。レーダ22として、例えばミリ波レーダを用いることができる。レーダ22は、車両1の進行方向に電波を送信し、対象物により送信波が反射されて生じた反射波を受信する。そして、レーダ22は、送信波と受信波に基づいて、車両1と対象物との間の距離(例えば、車間距離)や、車両1に対する対象物の相対速度を測定する。なお、本実施形態において、レーダ22に代えて、レーザレーダや超音波センサ等を用いて対象物との距離や相対速度を測定してもよい。また、複数のセンサ類を用いて、位置及び速度測定装置を構成してもよい。
【0023】
なお、カメラ21及びレーダ22は、本発明における「走行路情報取得装置」及び「障害物情報取得装置」の一例に相当する。また、「走行路情報」は、例えば、走行路の形状(直線、カーブ、カーブ曲率)、走行路幅、車線数、車線幅、標識などに規定された走行路の規制情報(制限速度など)、交差点、横断歩道等に関する情報を含んでいる。また、「障害物情報」は、車両1の走行路上の障害物(例えば先行車両や後続車両や駐車車両や歩行者などの車両1の走行において障害となり得る対象物)の有無や、障害物の移動方向、障害物の移動速度等に関する情報を含んでいる。
【0024】
車速センサ23は、車両1の絶対速度を検出する。加速度センサ24は、車両1の加速度を検出する。この加速度は、前後方向の加速度と、横方向の加速度(つまり横加速度)とを含む。なお、加速度には、速度が増加する方向の速度の変化率だけでなく、速度が減少する方向の速度の変化率(つまり減速度)も含むものとする。
【0025】
ヨーレートセンサ25は、車両1のヨーレートを検出する。操舵角センサ26は、車両1のステアリングホイールの回転角度(操舵角)を検出する。ECU10は、車速センサ23が検出した絶対速度、及び、操舵角センサ26が検出した操舵角に基づいて所定の演算を実行することにより、車両1のヨー角を取得することができる。アクセルセンサ27は、アクセルペダルの踏み込み量を検出する。ブレーキセンサ28は、ブレーキペダルの踏み込み量を検出する。
【0026】
測位システム29は、GPSシステム及び/又はジャイロシステムであり、車両1の位置(現在車両位置情報)を検出する。ナビゲーションシステム30は、内部に地図情報を格納しており、ECU10に地図情報を提供することができる。ECU10は、地図情報及び現在車両位置情報に基づいて、車両1の周囲(特に、進行方向)に存在する道路、交差点、交通信号、建造物等を特定する。地図情報は、ECU10内に格納されていてもよい。なお、ナビゲーションシステム30も、本発明における「走行路情報取得装置」の一例に相当する。
【0027】
エンジン制御システム31は、車両1のエンジンを制御する。エンジン制御システム31は、エンジン出力(駆動力)を調整可能な構成部であり、例えば、点火プラグや、燃料噴射弁や、スロットルバルブや、吸排気弁の開閉時期を変化させる可変動弁機構などを含む。ECU10は、車両1を加速又は減速させる必要がある場合に、エンジン制御システム31に対して、エンジン出力を変更するために制御信号を送信する。
【0028】
ブレーキ制御システム32は、車両1のブレーキ装置を制御する。ブレーキ制御システム32は、ブレーキ装置の制動力を調整可能な構成部であり、例えば液圧ポンプやバルブユニットなどを含む。ECU10は、車両1を減速させる必要がある場合に、ブレーキ制御システム32に対して、制動力を発生させるために制御信号を送信する。
【0029】
ステアリング制御システム33は、車両1のステアリング装置を制御する。ステアリング制御システム33は、車両1の操舵角を調整可能な構成部であり、例えば電動パワーステアリングシステムの電動モータなどを含む。ECU10は、車両1の進行方向を変更する必要がある場合に、ステアリング制御システム33に対して、操舵方向を変更するために制御信号を送信する。
【0030】
[目標走行経路の生成]
次に、本発明の実施形態において上述したECU10によって実行される目標走行経路の生成について説明する。まず、その概要について説明する。
【0031】
本実施形態では、ECU10は、走行路情報に基づいて、走行路上において車両1を誘導するための基準となる走行ラインである誘導ラインを生成すると共に、障害物情報に基づいて、障害物を車両1に回避させるための走行ラインである回避ラインを生成し、これら誘導ライン及び回避ラインに基づいて、車両1に最終的に走行させる目標走行経路を生成する。特に、本実施形態では、ECU10は、誘導ラインを生成するための第1演算周期を、回避ラインを生成するための第2演算周期よりも長くする。
【0032】
ここで、車両1の走行路上の障害物は移動し得るものなので(例えば障害物が車両や歩行者である場合)、回避ラインを生成するために用いる障害物情報は時々刻々変化する傾向にある。そのため、ECU10は、このような障害物情報を用いた回避ラインの生成を、比較的短い第2演算周期(例えば30ms)にて行うようにする。これにより、車両1と障害物との衝突などを防止して、目標走行経路(回避ラインが適用されたもの)に基づく運転支援時の安全性を適切に確保することができる。他方で、誘導ラインを生成するために用いる走行路情報は基本的には変化するものではないので、ECU10は、誘導ラインの生成を比較的長い第1演算周期(例えば100ms)にて行うようにする。これにより、目標走行経路を生成するための演算負荷を適切に軽減することができる。
【0033】
また、本実施形態の1つの例では、ECU10は、1回の第1演算周期において、当該周期の演算開始時から第1所定時間(例えば7~10秒)先の期間について、誘導ラインを生成する一方で、1回の第2演算周期において、当該周期の演算開始時から第1所定時間よりも短い第2所定時間(例えば6~7秒)先の期間について、回避ラインを生成する。つまり、誘導ラインよりも回避ラインのほうが生成に要する演算負荷が大きいので、ECU10は、回避ラインを生成する期間を、誘導ラインを生成する期間よりも短くする。これによっても、目標走行経路を生成するための演算負荷を適切に軽減することができる。
【0034】
また、本実施形態の他の例では、ECU10は、1回の第1演算周期において、当該周期の演算開始時における車両1の位置から第1所定距離(例えば100m)先の区間について、誘導ラインを生成する一方で、1回の第2演算周期において、当該周期の演算開始時における車両1の位置から第1所定距離よりも短い第2所定距離(例えば60m)先の区間について、回避ラインを生成する。つまり、誘導ラインよりも回避ラインのほうが生成に要する演算負荷が大きいので、ECU10は、回避ラインを生成する区間を、誘導ラインを生成する区間よりも短くする。これによっても、目標走行経路を生成するための演算負荷を適切に軽減することができる。
【0035】
なお、上記した2つの例を組み合わせて実施してもよい。つまり、本実施形態における更に他の例では、ECU10は、回避ラインを生成する期間を、誘導ラインを生成する期間よりも短くすると共に、回避ラインを生成する区間を、誘導ラインを生成する区間よりも短くしてもよい。
【0036】
次に、図2乃至図5を参照して、本発明の実施形態による目標走行経路の生成について具体的に説明する。図2は、本発明の実施形態による目標走行経路生成及び運転支援に係るフローチャートである。図3は、本発明の実施形態による誘導ラインの生成についての説明図である。図4は、本発明の実施形態による回避ラインの生成についての説明図である。図5は、本発明の実施形態による誘導ライン及び回避ラインに応じた目標走行経路の生成についての説明図である。
【0037】
図2のフローチャートに係る処理は、ECU10によって所定の周期(例えば、0.05~0.2秒毎)で繰り返し実行される。このフローチャートに係る処理が開始されると、ECU10は、まず、図1に示した複数のセンサ類(特にカメラ21、レーダ22、車速センサ23、及びナビゲーションシステム30など)から各種種の情報を取得する(ステップS11)。この場合、ECU10は、上述した走行路情報及び障害物情報を少なくとも取得する。
【0038】
次いで、ECU10は、第1演算周期にて、走行路情報に基づき誘導ラインを生成すると共に(ステップS12)、第2演算周期(<第1演算周期)にて、障害物情報に基づき回避ラインを生成する(ステップS13)。ECU10は、これらの誘導ラインを生成する処理と回避ラインを生成する処理とを並行して行う。1つの例では、ECU10は、第1演算周期において、当該周期の演算開始時(つまり現在時刻)から第1所定時間先の期間について、誘導ラインを生成する一方で、第2演算周期において、当該周期の演算開始時(つまり現在時刻)から第2所定時間(<第1所定時間)先の期間について、回避ラインを生成する。他の例では、ECU10は、第1演算周期において、当該周期の演算開始時における車両1の位置(つまり現在位置)から第1所定距離先の区間について、誘導ラインを生成する一方で、第2演算周期において、当該周期の演算開始時における車両1の位置(つまり現在位置)から第2所定距離(<第1所定距離)先の区間について、回避ラインを生成する。
【0039】
図3を参照して、誘導ラインの生成について具体的に説明する。ここでは、車両1が車線変更して交差点を左折する状況を例に挙げる。基本的には、ECU10は、走行路において車両1に走行させるべき理想的な走行ラインを誘導ラインL1として設定する。また、ECU10は、このような誘導ラインL1において車両1に適用すべき理想的な車速(車速の変化のさせ方など)も設定する。例えば、ECU10は、車速の情報を誘導ラインL1に含めて設定してもよい。
【0040】
図3に示す例では、ECU10は、まず、車両1を自車線の中央線L21に沿って走行させるために、中央線L21に沿った誘導ラインL11を設定する。次いで、ECU10は、車両1を自車線から隣接車線に車線変更させるために、自車線の中央線L21と車線変更先の隣接車線の中央線L22とに基づき誘導ラインL12を設定する。次いで、ECU10は、車両1を隣接車線の中央線L22に沿って走行させるために、中央線L22に沿った誘導ラインL13を設定する。次いで、ECU10は、車両1を交差点付近において隣接車線内で左側に移動させるために、中央線L22と当該中央線L22よりも左側に規定された基準線L23とに基づき誘導ラインL14を設定する。ECU10は、これら誘導ラインL11~L14では車両1を制限速度にて走行させるように、制限速度に対応する車速の情報を誘導ラインL11~L14に対して設定する。なお、上記した中央線L21、L22、基準線L23(後述する基準線L24も同様)及び制限速度などに関する情報は、走行路情報に含まれている。
【0041】
次いで、ECU10は、車両1を上記の基準線L23に沿って走行させるために、基準線L23に沿った誘導ラインL15を設定する。この場合、ECU10は、車両1を交差点付近で減速させるために、減速させた車速の情報を誘導ラインL15に対して設定する。例えば、ECU10は、乗り心地を考慮した減速度が生じるように、誘導ラインL15に適用する車速を設定する。次いで、ECU10は、車両1を交差点で左折させるための誘導ラインL16を設定する。この場合、ECU10は、交差点で左折させるための基準線L24(基準線L23の端部と左折先の車線の中央線の端部とを繋ぐ一定の曲率の円弧)から、乗り心地を考慮した緩和曲線(例えばクロソイド曲線)を求めて、この緩和曲線に沿った誘導ラインL16を設定する。ECU10は、このような誘導ラインL11~L16の全てを第1演算周期にて求め、これら誘導ラインL11~L16を繋げた走行ラインを、適用する誘導ラインL1として用いる。
【0042】
次に、図4を参照して、回避ラインの生成について具体的に説明する。ここでは、車両1が車線変更して交差点で左折する状況において、車線変更先の隣接車線上に先行車両3が存在し、自車線上に先行車両4が存在する場合を例に挙げる。
【0043】
図4(A)に示すように、ECU10は、まず、障害物情報などに基づき、所定時間経過後の車両1や先行車両3、4の位置(例えば、先行車両3に対応する符号3’で示した位置や、先行車両4に対応する符号4’で示した位置など)を予測する。次いで、ECU10は、こうして予測された位置などに基づき、回避ラインを規定するために用いる複数の走行経由点P20~P26を設定する。走行経由点P20は、現在の車両1の前部の位置に対応し、走行経由点P21は、現在の先行車両3の後部の位置に対応し、走行経由点P22、P23、P24は、予測された所定時間後の先行車両3の後部の位置に対応し、走行経由点P25、P26は、予測された所定時間後の車両1の前部の位置に対応する。走行経由点P20、P21、P22、P25は、自車線のほぼ中央線L21上に設定され、走行経由点P24、P26は、隣接車線のほぼ中央線L22上に設定され、走行経由点P23は、自車線と隣接車線とのほぼ境界線上に設定される。なお、図4(A)に示す例では、自車線上の先行車両4は回避すべき障害物とならないため、先行車両4が考慮されずに走行経由点が設定される。
【0044】
次いで、図4(B)に示すように、ECU10は、複数の走行経由点P20~P26に基づき、最終的に適用すべき回避ラインの候補を生成する。例えば、ECU10は、回避ラインL31~L35を生成する。回避ラインL31は、走行経由点P20、P21、P24、P26を繋いだものであり、車線変更により先行車両3の後方に移動するような回避ラインの候補であり、また、回避ラインL32は、走行経由点P20、P21、P23、P26を繋いだものであり、車線変更により先行車両3の前方に移動するような回避ラインの候補である(なお、これらの回避ラインL31、L32は図4(A)にも示してある)。他方で、回避ラインL34、L35は、車線変更を行わないこととなった回避ラインの候補である。
【0045】
上記のように誘導ライン及び回避ラインが生成されると、ECU10は、車両1に最終的に走行させる目標走行経路を生成する(図2のステップS14)。例えば、ECU10は、複数の回避ラインの中で障害物に衝突することがない回避ラインにおいて、終点が誘導ラインに最も近い回避ラインを選択する。この場合、ECU10は、各回避ラインについて、将来の障害物の位置及び速度を予測して、車両1が障害物に衝突するか否かを判定する。そして、ECU10は、選択された回避ラインに対応する誘導ラインの部分を、当該回避ラインによって修正することで、目標走行経路を生成する。典型的には、ECU10は、選択された回避ラインに対応する誘導ラインの部分を、当該回避ラインによって置き換える。
【0046】
ここで、図5を参照して、図3及び図4に示した誘導ラインL1及び回避ラインL31~L35により生成される目標走行経路L4について説明する。この例では、ECU10は、複数の回避ラインL31~L35の中で、障害物に衝突せず且つ終点が誘導ラインL1に最も近い回避ラインとして、回避ラインL31を選択する。そして、ECU10は、選択された回避ラインL31に対応する誘導ラインの部分A11(元の誘導ラインL12の部分)を、当該回避ラインL31によって置き換えることで、目標走行経路L4を生成する。
【0047】
次いで、ECU10は、上記のように生成された目標走行経路に沿って車両1が走行するように、エンジン制御システム31、ブレーキ制御システム32及びステアリング制御システム33のうちの少なくとも1以上に対して制御信号を送信して、運転制御として、エンジン制御、制動制御及び操舵制御の少なくとも1つ以上を実行する(図2のステップS15)。
【0048】
[作用及び効果]
次に、本発明の実施形態による作用及び効果について説明する。
【0049】
本実施形態では、ECU10は、走行路情報に基づいた誘導ラインを生成するための第1演算周期を、障害物情報に基づいた回避ラインを生成するための第2演算周期よりも長くする。具体的には、ECU10は、時々刻々変化し得る障害物情報を用いた回避ラインの生成を、比較的短い第2演算周期にて行うことで、車両1と障害物との衝突などを防止して、目標走行経路に基づく運転支援時の安全性を確保するようにする。他方で、ECU10は、障害物情報のように基本的には変化することがない走行路情報を用いた誘導ラインの生成を、比較的長い第1演算周期にて行うことで、目標走行経路を生成するための演算負荷を軽減するようにする。以上より、本実施形態によれば、目標走行経路に基づく運転支援時の安全性を確保しつつ、目標走行経路を生成するための演算負荷を適切に軽減することができる。
【0050】
また、本実施形態の1つの例では、ECU10は、第1演算周期において、当該周期の演算開始時から第1所定時間先の期間について、誘導ラインを生成する一方で、第2演算周期において、当該周期の演算開始時から第1所定時間よりも短い第2所定時間先の期間について、回避ラインを生成する。つまり、ECU10は、誘導ラインよりも回避ラインのほうが生成に要する演算負荷が大きいので、回避ラインを生成する期間を、誘導ラインを生成する期間よりも短くする。これにより、目標走行経路を生成するための演算負荷を更に軽減することができる。
【0051】
また、本実施形態の他の例では、ECU10は、第1演算周期において、当該周期の演算開始時における車両1の位置から第1所定距離先の区間について、誘導ラインを生成する一方で、第2演算周期において、当該周期の演算開始時における車両1の位置から第1所定距離よりも短い第2所定距離先の区間について、回避ラインを生成する。つまり、ECU10は、誘導ラインよりも回避ラインのほうが生成に要する演算負荷が大きいので、ECU10は、回避ラインを生成する区間を、誘導ラインを生成する区間よりも短くする。これにより、目標走行経路を生成するための演算負荷を更に軽減することができる。
【0052】
また、本実施形態では、ECU10は、回避ラインが生成された場合に、誘導ラインにおいて回避ラインに対応する部分を当該回避ラインによって修正(例えば置換)することで、目標走行経路を生成する。これにより、目標走行経路に基づく運転支援時の安全性を効果的に確保することができる。
【0053】
[変形例]
上記した実施形態では、エンジンを駆動源とする車両1に本発明を適用する例を示したが(図1参照)、本発明は、電気モータを駆動源とする車両(電気自動車やハイブリッド車)にも適用可能である。加えて、上述した実施形態では、ブレーキ装置(ブレーキ制御システム32)により制動力を車両1に付与していたが、他の例では、電気モータの回生により制動力を車両に付与してもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 車両
10 ECU
21 カメラ
22 レーダ
30 ナビゲーションシステム
31 エンジン制御システム
32 ブレーキ制御システム
33 ステアリング制御システム
100 車両運転支援システム
図1
図2
図3
図4
図5