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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】レジスト用重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/039 20060101AFI20240222BHJP
   C08F 212/14 20060101ALI20240222BHJP
   C08F 220/36 20060101ALI20240222BHJP
   C08F 8/12 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
G03F7/039 601
C08F212/14
C08F220/36
C08F8/12
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020151103
(22)【出願日】2020-09-09
(65)【公開番号】P2022045488
(43)【公開日】2022-03-22
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 研
(72)【発明者】
【氏名】堀 雅史
(72)【発明者】
【氏名】河津 智晴
(72)【発明者】
【氏名】木下 奈津子
【審査官】川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-020501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/039
C08F 212/14
C08F 220/36
C08F 8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、フェノール性水酸基が保護基により保護された構造を有する単量体1´と、酸解離性基を有する単量体2とを重合させて重合体を得る第1工程、
上記重合体と上記重合体以外の成分とを分離する第2工程、
上記重合体を回収する第3工程、
上記重合体と溶媒とを混合する第4工程、及び
回収対象である上記重合体を回収する第5工程
を含み、
上記第5工程において、上記溶媒に溶解した上記重合体の溶液を回収し、
さらに、上記第1工程の後であってかつ上記第4工程の前に、上記重合体中の保護基を脱保護する工程を含み、
上記溶媒の溶解度パラメータSPS、上記単量体1´のフェノール性水酸基の保護基を脱保護した構造を有する単量体1の溶解度パラメータSPm1及び上記単量体2の溶解度パラメータSPm2が下記関係式(II)を満たすレジスト用重合体の製造方法。
|SP m1 -SP S |-|SP m2 -SP S |>2 (II)
【請求項2】
上記第5工程において回収した上記溶液を濃縮して上記重合体を回収する第6工程をさらに含む請求項に記載のレジスト用重合体の製造方法。
【請求項3】
上記溶媒が下記式(1)で表される請求項1又は2に記載のレジスト用重合体の製造方法。
【化1】
(上記式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立して、炭素数1~20の1価の炭化水素基であるか、又はR1及びR2は互いに合わせられそれらが結合する酸素原子とともに環員数3~20の複素環(ただし、ヘテロ原子としての酸素原子は1つに限る。)を表す。)
【請求項4】
上記式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立して、炭素数1~5の1価の鎖状又は環状炭化水素基である請求項に記載のレジスト用重合体の製造方法。
【請求項5】
上記単量体1´は、下記式(2)で表される請求項1~のいずれか1項に記載のレジスト用重合体の製造方法。
【化2】
(上記式(2)中、
Rαは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
Lは、単結合、-COO-*又は-O-*である。*は芳香環側の結合手である。
21は、炭素数2~20のアシル基又は炭素数2~20のアルコキシカルボニル基である。R21が複数存在する場合、複数のR21は互いに同一又は異なる。
22は、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、フッ素化アルキル基、アルコキシカルボニルオキシ基、アシル基又はアシロキシ基である。R22が複数存在する場合、複数のR22は互いに同一又は異なる。
1は0~2の整数であり、m1は1~8の整数であり、m2は0~8の整数である。ただし、1≦m1+m2≦2n1+5を満たす。)
【請求項6】
上記単量体2は、下記式(3)で表される請求項1~のいずれか1項に記載のレジスト用重合体の製造方法。
【化3】
(上記式(3)中、
7は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
8は、ハロゲン置換又は非置換の炭素数1~20の1価の炭化水素基である。
9及びR10は、それぞれ独立して、ハロゲン置換又は非置換の炭素数1~10の1価の鎖状炭化水素基若しくは炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基であるか、又はこれらの基が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される炭素数3~20の2価の脂環式基を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト用重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子における微細な回路形成にレジスト組成物を用いるフォトリソグラフィー技術が利用されている。代表的な手順として、例えば、レジスト組成物の被膜に対するマスクパターンを介した放射線照射による露光で酸を発生させ、その酸を触媒とする反応により露光部と未露光部とにおいて樹脂のアルカリ系や有機溶媒系の現像液に対する溶解度の差を生じさせることで、基板上にレジストパターンを形成する。
【0003】
上記フォトリソグラフィー技術ではArFエキシマレーザー等の短波長の放射線を用いたり、この放射線と液浸露光法(リキッドイマージョンリソグラフィー)とを組み合わせたりしてパターン微細化を推進している。また、ArFエキシマレーザーを用いる露光(以下、単に「ArF露光」ともいう。)に供するレジスト組成物用の脂環式基を有する重合体の製造方法も種々提案されている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第03/082933号
【文献】特許第5210507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
次世代技術として、電子線、X線及びEUV(極端紫外線)等のさらに短波長の放射線の利用が図られており、こうした放射線の吸収効率を高めたフェノール性水酸基を有する重合体を含むレジスト材料も検討されつつある。
【0006】
近年、レジストパターンの微細化が進行する中、残渣欠陥を抑制する欠陥抑制性能や感度、レジストパターンの線幅のバラつきを示すラインウィドゥスラフネス(LWR)性能等が要求され、レジスト諸性能のさらなる向上が求められている。電子線露光等の次世代露光技術でもArF露光技術と同等以上のレジスト諸性能が要求されている。
【0007】
本発明は、欠陥抑制性能や感度、LWR性能を十分なレベルで発揮可能な次世代露光技術に供されるレジスト用重合体の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記構成を採用することで上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明は、一実施形態において、
少なくとも、フェノール性水酸基が保護基により保護された構造を有する単量体1´と、酸解離性基を有する単量体2とを重合させて重合体を得る第1工程、
上記重合体と上記重合体以外の成分とを分離する第2工程、
上記重合体を回収する第3工程、
上記重合体と溶媒とを混合する第4工程、及び
回収対象である上記重合体を回収する第5工程
を含み、
さらに、上記第1工程の後であってかつ上記第4工程の前に、上記重合体中の保護基を脱保護する工程を含み、
上記溶媒の溶解度パラメータSP、上記単量体1´のフェノール性水酸基の保護基を脱保護した構造を有する単量体1の溶解度パラメータSPm1及び上記単量体2の溶解度パラメータSPm2が下記関係式(I)を満たすレジスト用重合体の製造方法に関する。
|SPm1-SP|>|SPm2-SP| (I)
【0010】
当該製造方法では、重合反応により得られた重合体と混合する溶媒として、上記関係式(I)を満たす特定の溶媒を用いるので、欠陥抑制性能を高いレベルで発揮することができるとともに、感度やLWR性能を十分なレベルで発揮可能なレジスト用重合体を効率良く製造することができる。この理由は定かではないものの、次のように推察される。
【0011】
重合体の製造ではフェノール性水酸基を与える上記単量体1´と酸解離性基を有する上記単量体2とを所定割合で反応させる。本願発明者らは、当初、重合反応により得られた重合体の溶解やそれに続く精製の段階において、溶媒として従来のArF露光用の重合体の製造に用いられている溶媒を採用していた。しかしながら、そのようにして得られた重合体を配合したレジスト組成物を用いてレジストパターンを形成したところ、残渣欠陥が発生することが判明した。さらに検討を進めた結果、残渣中の重合体には上記単量体1´に由来するフェノール性水酸基を有する構造単位が目的割合より多く含まれている(相対的に単量体2に由来する酸解離性基を有する構造単位の含有割合は低くなっている)ことを突き止めた。これは、得られる重合体における各単量体に由来する構造単位の比率は単一ではなく、重合鎖ごとに幅があり、例えば単量体1´に由来する構造単位が多く含まれる画分や反対に単量体1´に由来する構造単位が少ない画分も存在することに起因する。これらの知見に加え、ArF露光用の重合体の製造に用いられている溶媒が比較的極性の高い溶媒であることに着目することで、本願発明者らは、残渣欠陥にはフェノール性水酸基を有する構造単位の含有割合の高い重合体、すなわち極性の高い重合体が強く関与しており、極性の高い溶媒に残渣欠陥を引き起こす極性の高い重合体が多く取り込まれることで、結果的に残渣欠陥を惹起することを見出した。
【0012】
当該製造方法において、重合反応により得られた重合体と混合する溶媒が上記関係式(I)を満たす。この溶媒は、言い換えると、フェノール性水酸基を有する単量体1より酸解離性基を有する上記単量体2に対して強い親和性を有する。この対応関係は、重合体に構造単位として組み込まれた場合でも維持されるので、溶媒は、フェノール性水酸基を有する構造単位の含有割合の高い(極性の高い)重合体よりフェノール性水酸基を有する構造単位の含有割合の低い(極性の低い)重合体に対して親和性を強く発揮し、これにより残渣欠陥に関与する極性の高い重合体の溶媒への取り込み量を低減して残渣欠陥を抑制することができると推測される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0014】
《レジスト用重合体の製造方法》
本実施形態に係るレジスト用重合体の製造方法は、少なくとも、フェノール性水酸基が保護基により保護された構造を有する単量体1´と、酸解離性基を有する単量体2とを重合させて重合体を得る第1工程、上記重合体と上記重合体以外の成分とを分離する第2工程、上記重合体を回収する第3工程、上記重合体と溶媒とを混合する第4工程、及び回収対象である上記重合体を回収する第5工程を含む。さらに、上記第1工程の後であってかつ上記第4工程の前に、上記重合体中の保護基を脱保護する工程を含む。脱保護工程は、重合体の生成効率や予期しない反応の抑制の点から、第1工程の後であってかつ第2工程の前に行うことが好ましい。
【0015】
<第1工程>
第1工程では、少なくとも、フェノール性水酸基が保護基により保護された構造を有する単量体1´と、酸解離性基を有する単量体2とを重合させて重合体を得る。以下、単量体成分及び重合手順について逐次説明する。
【0016】
(単量体1´)
単量体1´としては、フェノール性水酸基が保護基により保護された構造を有する限り特に限定されない。単量体1´は単量体2との重合の後、後述する脱保護工程にて例えばアルカリの作用によりフェノール性水酸基の保護基が脱保護され、重合体にフェノール性水酸基を与える。
【0017】
単量体1´は、下記式(2)で表されることが好ましい。
【0018】
【化1】
(上記式(2)中、
αは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
Lは、単結合、-COO-又は-O-である。*は芳香環側の結合手である。
21は、炭素数2~20のアシル基又は炭素数2~20のアルコキシカルボニル基である。R21が複数存在する場合、複数のR21は互いに同一又は異なる。
22は、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、フッ素化アルキル基、アルコキシカルボニルオキシ基、アシル基又はアシロキシ基である。R22が複数存在する場合、複数のR22は互いに同一又は異なる。
は0~2の整数であり、mは1~8の整数であり、mは0~8の整数である。ただし、1≦m+m≦2n+5を満たす。)
【0019】
αとしては、単量体1´の共重合性の観点から、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0020】
Lとしては、単結合又は-COO-が好ましい。
【0021】
21で表される炭素数2~20のアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基及びアクリロイル基等の炭素数2~12の脂肪族又は芳香族のアシル基が挙げられる。中でも、アセチル基が好ましい。
【0022】
21で表される炭素数2~20のアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、i-プロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、i-ブトキシカルボニル基、t-ブトキシカルボニル基及びアダマンチルメチルオキシカルボニルオキシ基等の炭素数2~16の鎖状又は脂環のアルコキシカルボニルオキシ基が挙げられる。等が挙げられる。中でも、t-ブトキシカルボニル基が好ましい。
【0023】
22で表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1~8の直鎖又は分岐のアルキル基が挙げられる。フッ素化アルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等の炭素数1~8の直鎖又は分岐のフッ素化アルキル基が挙げられる。アルコキシカルボニルオキシ基としては、例えば、メトキシカルボニルオキシ基、ブトキシカルボニルオキシ基及びアダマンチルメチルオキシカルボニルオキシ基等の炭素数2~16の鎖状又は脂環のアルコキシカルボニルオキシ基が挙げられる。アシル基としては、R21で例示したアシル基が挙げられる。アシロキシ基としては、例えば、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基及びアクリロイルオキシ基等の炭素数2~12の脂肪族又は芳香族のアシロキシ基等が挙げられる。
【0024】
上記mとしては、1~3の整数が好ましく、1又は2がより好ましい。
【0025】
上記mとしては、0~3の整数が好ましく、0~2の整数がより好ましい。
【0026】
上記式(2)で表される単量体1´としては、例えば、下記式(2-1)~(2-12)で表される単量体等が挙げられる。
【0027】
【化2】
【0028】
【化3】
【0029】
上記式(2-1)~(2-12)中、Rαは上記式(2)と同義である。
【0030】
単量体1´の含有割合(単量体1´が複数種存在する場合は合計)としては、重合体を形成する全単量体中、10モル%以上が好ましく、15モル%以上がより好ましく、20モル%以上がさらに好ましく、25モル%以上が特に好ましい。一方、上記含有割合は、70モル%以下が好ましく、65モル%以下がより好ましく、60モル%以下がさらに好ましく、55モル%以下が特に好ましい。単量体1´の含有割合を上記範囲とすることで、重合体を含むレジスト組成物は、感度やLWR性能能のさらなる向上を図ることができる。
【0031】
(単量体2)
単量体2としては、酸解離性基を有する限り特に限定されないものの、レジスト性能やパターン形成性等の点から、酸解離性基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体でることが好ましい。なお、「酸解離性基」とは、カルボキシ基、フェノール性水酸基、スルホ基、スルホンアミド基等のアルカリ可溶性基が有する水素原子を置換する基であって、酸の作用により解離する基をいう。従って、酸解離性基は、これらの官能基中の上記水素原子と結合していた酸素原子と結合していることになる。
【0032】
上記単量体2は、下記式(3)で表されることが好ましい。
【0033】
【化4】
(上記式(3)中、
は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
は、ハロゲン置換又は非置換の炭素数1~20の1価の炭化水素基である。
及びR10は、それぞれ独立して、ハロゲン置換又は非置換の炭素数1~10の1価の鎖状炭化水素基若しくは炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基であるか、又はこれらの基が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される炭素数3~20の2価の脂環式基を表す。)
【0034】
としては、単量体2の共重合性の観点から、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0035】
で表される炭素数1~20の1価の炭化水素基としては、例えば、炭素数1~10の鎖状炭化水素基、炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基、炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基等が挙げられる。これらの基が有する水素原子の一部又は全部はハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)で置換されていてもよい。
【0036】
~R10で表される炭素数1~10の鎖状炭化水素基としては、炭素数1~10の直鎖若しくは分岐鎖飽和炭化水素基、又は炭素数1~10の直鎖若しくは分岐鎖不飽和炭化水素基が挙げられる。これらの基が有する水素原子の一部又は全部はハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)で置換されていてもよい。
【0037】
~R10で表される炭素数3~20の脂環式炭化水素基としては、単環若しくは多環の飽和炭化水素基、又は単環若しくは多環の不飽和炭化水素基が挙げられる。単環の飽和炭化水素基としてはシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基が好ましい。多環のシクロアルキル基としてはノルボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基等の有橋脂環式炭化水素基が好ましい。なお、有橋脂環式炭化水素基とは、脂環を構成する炭素原子のうち互いに隣接しない2つの炭素原子間が1つ以上の炭素原子を含む結合連鎖で結合された多環性の脂環式炭化水素基をいう。
【0038】
で表される炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等のアラルキル基などが挙げられる。
【0039】
としては、炭素数1~10の直鎖又は分岐鎖飽和炭化水素基、炭素数3~20の脂環式炭化水素基が好ましい。
【0040】
及びR10で表される鎖状炭化水素基又は脂環式炭化水素基が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される炭素数3~20の2価の脂環式基は、上記炭素数の単環又は多環の脂環式炭化水素の炭素環を構成する同一炭素原子から2個の水素原子を除いた基であれば特に限定されない。単環式炭化水素基及び多環式炭化水素基のいずれでもよく、多環式炭化水素基としては、有橋脂環式炭化水素基及び縮合脂環式炭化水素基のいずれでもよく、飽和炭化水素基及び不飽和炭化水素基のいずれでもよい。なお、縮合脂環式炭化水素基とは、複数の脂環が辺(隣接する2つの炭素原子間の結合)を共有する形で構成された多環性の脂環式炭化水素基をいう。
【0041】
単環の脂環式炭化水素基のうち飽和炭化水素基としては、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基、シクロヘプタンジイル基、シクロオクタンジイル基等が好ましく、不飽和炭化水素基としてはシクロペンテンジイル基、シクロヘキセンジイル基、シクロヘプテンジイル基、シクロオクテンジイル基、シクロデセンジイル基等が好ましい。多環の脂環式炭化水素基としては、有橋脂環式飽和炭化水素基が好ましく、例えばビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,2-ジイル基(ノルボルナン-2,2-ジイル基)、ビシクロ[2.2.2]オクタン-2,2-ジイル基、トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン-2,2-ジイル基(アダマンタン-2,2-ジイル基)等が好ましい。
【0042】
これらの中で、Rは炭素数1~4のアルキル基であり、R及びR10が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される脂環構造が多環又は単環のシクロアルカン構造であることが好ましい
【0043】
単量体2としては、例えば、下記式(3-1)~(3-6)で表される単量体等が挙げられる。
【0044】
【化5】
【0045】
上記式(3-1)~(3-6)中、R~R10は上記式(3)と同義である。i及びjは、それぞれ独立して、1~4の整数である。k及びlは0又は1である。
【0046】
i及びjとしては、1が好ましい。Rとしては、メチル基、エチル基、イソプロピル基又はフェニル基が好ましい。R及びR10としては、メチル基又はエチル基が好ましい。
【0047】
さらに、単量体2として、上記式(3-1)~(3-6)で表される単量体とともに、又はこれらに代えて、下記式(3-7)~(3-9)で表される単量体等を含んでいてもよい。
【0048】
【化6】
【0049】
上記式(3-7)~(3-9)中、Rは上記式(3)と同義である。Rβfは、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1~5の鎖状アルキル基である。複数のRβfは互いに同一又は異っていてもよい。hは、1~4の整数である。
【0050】
上記Rβfとしては、水素原子、メチル基又はエチル基が好ましい。hとしては1又は2が好ましい。
【0051】
単量体2の含有割合(単量体2が複数種存在する場合は合計)としては、重合体を形成する全単量体中、20モル%以上が好ましく、25モル%以上がより好ましく、30モル%以上がさらに好ましく、35モル%以上が特に好ましい。一方、上記含有割合は、90モル%以下が好ましく、85モル%以下がより好ましく、80モル%以下がさらに好ましく、75モル%以下が特に好ましい。単量体2の含有割合を上記範囲とすることで、重合体を含むレジスト組成物のパターン形成性を向上させることができる。
【0052】
(他の単量体)
他の単量体として、極性基を有する単量体(以下、「単量体3」ともいう。)を適宜含んでいてもよい。極性基としては、例えば、フッ素原子、アルコール性水酸基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、スルホンアミド基等を挙げることができる。単量体3の中で、フッ素原子を有する単量体、アルコール性水酸基を有する単量体及びカルボキシ基を有する単量体が好ましく、フッ素原子を有する単量体及びアルコール性水酸基を有する単量体がより好ましい。
【0053】
単量体3としては、例えば、下記式で表される単量体等が挙げられる。
【0054】
【化7】
【0055】
上記式中、Rは水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0056】
単量体3を用いる場合、単量体3の含有割合(単量体3が複数種存在する場合は合計)としては、重合体を形成する全単量体中、2モル%以上が好ましく、3モル%以上がより好ましく、5モル%以上がさらに好ましく、8モル%以上が特に好ましい。一方、上記含有割合は、40モル%以下が好ましく、35モル%以下がより好ましく、30モル%以下がさらに好ましく、25モル%以下が特に好ましい。単量体2の含有割合を上記範囲とすることで、重合体の現像液への溶解性を適度に制御させることができる。
【0057】
(他の成分)
本工程において、重合体を含むレジスト組成物の保存安定性を妨げない範囲で連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤としては、例えば、1-ブタンチオール、2-ブタンチオール、1-オクタンチオール、1-デカンチオール、1-テトラデカンチオール、シクロヘキサンチオール、2-メチル-1-プロパンチオール、2-メルカプトエタノール、メルカプト酢酸、1-チオグリセロール等が挙げられる。
【0058】
(重合手順)
重合法としては、特に限定されず、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法等の公知の重合方法が挙げられ、中でも、溶液重合法が好ましい。溶液重合法のうち、平均分子量、分子量分布等のばらつきが小さく、再現性のある重合体が簡便に得られる点から、単量体成分を、所定の重合温度に加熱された重合容器中に滴下する滴下重合法と呼ばれる重合方法が好ましい。
【0059】
重合開始剤としては、熱により効率的にラジカルを発生するものが好ましい。このような重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビスイソブチレート等のアゾ系ラジカル開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の過酸化物系ラジカル開始剤等を挙げることができる。これらの中で、AIBN、ジメチル2,2’-アゾビスイソブチレートが好ましく、AIBNがより好ましい。これらのラジカル開始剤は1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0060】
上記重合反応に使用される溶媒としては、単量体、重合開始剤及び必要に応じて他の成分を溶解することができれば特に限定されない。上記溶媒として、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン等の芳香族炭化水素類;クロロブタン類、ブロモヘキサン類、ジクロロエタン類、ヘキサメチレンジブロミド、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸i-ブチル、プロピオン酸メチル等の飽和カルボン酸エステル類;アセトン、メチルエチルケトン、4-メチル-2-ペンタノン、2-ヘプタノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン類、ジエトキシエタン類等のエーテル類;4-メチル-2-ペンタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の炭素数4以上のアルコール類等を挙げることができる。これらの重合反応に使用される溶剤は、1種単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0061】
上記重合反応における反応温度としては、40℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましい。また、150℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましい。反応時間としては、1時間以上が好ましく、1.5時間以上がより好ましい。また、48時間以下が好ましく、24時間以下がより好ましい。
【0062】
以上により、フェノール性水酸基が保護基により保護された構造を有する重合体を溶液の状態で得ることができる。
【0063】
<脱保護工程>
本工程では、上記重合体中の保護基を脱保護する。これにより、重合体にフェノール性水酸基を与えることができる。脱保護は従来公知の方法に従い行うことができる。具体的には、重合体溶液から重合体を分取し、脱保護反応を行うために再度溶媒に溶解させて酸又はアルカリによる加水分解を経て脱保護反応を行った後、必要に応じて精製を行うことでフェノール性水酸基を有する重合体を得ることができる。
【0064】
重合体の分取は、重合体溶液をn-ヘキサン等の貧溶媒に投入して重合体を凝固ないし析出させ、フィルター等でろ過することで行うことができる。貧溶媒とは、重合体を溶解させる能力の小さい溶媒であり、重合体の組成に応じて貧溶媒を適宜選択することができる。
【0065】
脱保護反応を行うための溶媒としては、上記重合反応溶媒を好適に採用することができ、これにより重合体溶液を調製する。加水分解反応には、上記式(2)中のR21がアシル基である場合はアルカリを用い、R21がアルコキシカルボニル基である場合は酸を用いることが好ましい。例えば、上記式(2)中のR21がアシル基であり加水分解にアルカリを用いる場合、重合体溶液にさらにトリエチルアミン等のアルカリ及びメタノール等の脱保護反応を促進するための溶媒を投入し、アルカリによる加水分解反応を進行させて脱保護を行う。アルカリの配合量としては、脱保護反応を十分進行させる観点から、単量体1´の配合量に対し1モル当量超であることが好ましく、1.1モル当量以上であることがより好ましく、1.2モル当量以上であることがさらに好ましい。また、副反応を抑制する観点から、20モル当量以下が好ましく、10モル当量以下がより好ましく、5モル当量以下がさらに好ましい。
【0066】
加水分解は溶媒(混合物であれば混合溶媒)の沸点から(沸点+20)℃までの温度範囲で還流させながら3時間以上15時間以下の反応時間で行うことができる。
【0067】
これにより、保護基が脱保護されたフェノール性水酸基を有する重合体を溶液の状態で調製することができる。
【0068】
重合体の精製のために、溶媒及びアルカリを減圧留去し、再度アセトン等の溶媒に溶解させてもよい。
【0069】
<第2工程>
本工程では、上記重合体と上記重合体以外の成分とを分離する。分離方法は、第1工程の重合法により異なる。溶液重合法(滴下重合法)の場合、得られた重合体溶液を貧溶媒に注いで重合体を凝固ないし析出させることによって重合体を分離する。乳化重合法の場合、得られたラテックス中の重合体を酸析または塩析によって凝固させることによって重合体をスラリーとして分離する。懸濁重合法の場合、得られた重合体は懸濁液として分離しているので、そのまま用いる。塊状重合法の場合、得られた重合体をそのまま用いてもよく、あるいは粉砕した後、分散媒に分散させることによって重合体を分離してもよい。
【0070】
溶液重合法(滴下重合法)によって得られた重合体溶液を貧溶媒に注いで重合体を析出させて分離する場合は、例えば、以下のようにして行う。重合体溶液を、必要に応じて、良溶媒で適当な溶液粘度に希釈する。別の容器に貧溶媒を注入する。重合体溶液を撹拌しながら貧溶媒中に滴下し(必要に応じて貧溶媒も撹拌)、重合体を析出させ分離する。これにより重合体の分散液が得られる。
【0071】
重合体溶液の希釈用の良溶媒としては、第1工程にて用いた反応溶媒を好適に採用することができる。
【0072】
貧溶媒としては、例えば、メタノール、イソプロパノール、水、n-ヘキサン、n-ヘプタン等が挙げられる。フェノール性水酸基の保護基の脱保護の有無に応じて貧溶媒を適宜選択すればよい。貧溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、凝固効率の点から、n-ヘプタン、水が好ましい。
【0073】
貧溶媒の量は、重合体を十分に析出、凝固又は沈殿させる量であればよく、重合体溶液100質量部に対して、200質量部以上が好ましく、300質量部以上がより好ましく、500質量部以上がさらに好ましい。また、5000質量部以下が好ましく、4000質量部以下がより好ましく、2000質量部以下がさらに好ましい。
【0074】
<第3工程>
本工程では、上記重合体を回収する。具体的には、析出等した重合体が分散する分散液を、フィルターを用いてろ過して重合体を回収する。
【0075】
フィルターとしては、ろ布、ろ紙、ガラスフィルター、メンブレンフィルター、カートリッジフィルター、フェルト等が挙げられ、工業的にはろ布が好ましい。ろ布は、長繊維を織った布である。長繊維の材料としては、例えば、合成樹脂(ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン等。)、羊毛、木綿、セラミック、ガラス、セルロース、炭素、アスベスト、金属(ステンレス等。)が挙げられる。
【0076】
ろ過効率を高めるために真空式ろ過器、加圧式ろ過器、重力式ろ過、圧搾式ろ過器、遠心分離機等を用いてもよい。また、これらの2種以上を併用してもよい。
【0077】
<第4工程>
本工程では、上記重合体と溶媒とを混合する。このとき、混合する溶媒の溶解度パラメータSP、上記単量体1´のフェノール性水酸基の保護基を脱保護した構造(すなわち、フェノール性水酸基)を有する単量体1の溶解度パラメータSPm1及び上記単量体2の溶解度パラメータSPm2が下記関係式(I)を満たす。
|SPm1-SP|>|SPm2-SP| (I)
【0078】
さらに、上記溶媒の溶解度パラメータSP、上記単量体1´のフェノール性水酸基の保護基を脱保護した構造を有する単量体1の溶解度パラメータSPm1及び上記単量体2の溶解度パラメータSPm2が下記関係式(II)を満たすことが好ましい。
|SPm1-SP|-|SPm2-SP|>2 (II)
【0079】
本工程の溶媒が上記式(I)又は(II)を満たすことで、残渣欠陥に関与する極性の高い(フェノール性水酸基を有する構造単位の含有割合の高い)重合体の溶媒への取り込み量を低減して残渣欠陥を効率的に抑制することができる。
【0080】
本工程における溶媒としては、上記式(I)又は(II)の関係式を満たす限り特に限定されない。上記溶媒は下記式(1)で表されることが好ましい。
【0081】
【化8】
(上記式(1)中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1~20の1価の炭化水素基であるか、又はR及びRは互いに合わせられそれらが結合する酸素原子とともに環員数3~20の複素環(ただし、ヘテロ原子としての酸素原子は1つに限る。)を表す。)
【0082】
及びRで表される炭素数1~20の1価の炭化水素基としては、上記式(3)におけるRで表される炭素数1~20の1価の炭化水素基を好適に採用することができる。
【0083】
及びRが互いに合わせられそれらが結合する酸素原子とともに形成される環員数3~20の複素環(ただし、ヘテロ原子としての酸素原子は1つに限る。)としては、例えば、オキセタン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のヘテロ原子としての酸素原子は1つ有する環状エーテルが挙げられる。
【0084】
上記式(1)中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1~5の1価の鎖状又は環状炭化水素基であることが好ましく、R及びRの炭素原子の合計が6以上であることがより好ましい。中でも、R及びRとしては、それぞれ独立して、メチル基、エチル基、i-プロピル基、i-ブチル基、t-ブチル基、シクロペンチル基が好ましく、これらの組み合わせの炭素原子数の合計が6以上となる組み合わせがより好ましい。
【0085】
その他の溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒;メチルイソブチルカルビノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒;ヘキサン等の鎖状炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0086】
溶媒の混合割合としては、重合体を溶解ないし分散し得る限り特に限定されないものの、重合体100質量部に対し100質量部以上が好ましく、200質量部以上がより好ましく、300質量部以上がさらに好ましい。上記混合割合は、2000質量部以下が好ましく、1000質量部以下がより好ましく、600質量部以下がさらに好ましい。
【0087】
<第5工程>
本工程において、回収対象である上記重合体を回収する。第4工程を経た重合体が溶媒に溶解している場合は重要体溶液を回収し、重合体が溶媒に分散している場合はこの重合体を回収する。第5工程において、上記溶媒に溶解した上記重合体の溶液を回収することが好ましい。回収と同時に精密フィルター等で溶液から不純物を除去することができ、重合体の製造効率及びレジスト組成物の欠陥抑制性をともに向上させることができる。
【0088】
精密フィルターとしては、メンブランフィルター、カートリッジフィルター等が挙げられる。
【0089】
<第6工程>
当該製造方法は、上記第5工程において回収した上記溶液を濃縮して上記重合体を回収する第6工程をさらに含んでいてもよい。濃縮方法としては、従来公知の方法を採用することができる。例えば、重合体溶液を撹拌しながら加熱し、重合体溶液から残存溶媒を必要に応じて減圧下で除去し、さらに重合体溶液を所定の重合体濃度になるまで又は実質的に全ての溶媒が除去されるまで濃縮する。
【0090】
<後工程>
第5工程又は第6工程を経た重合体又は重合体溶液をレジスト組成物に配合する際の作業性を考慮し、予めレジスト組成物を組成する溶媒に重合体を溶解させたり、重合体溶液の溶媒をレジスト組成物用溶媒に置換したりしてもよい。
【0091】
(重合体の性状)
重合体の分子量は特に限定されないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)としては、1,000以上が好ましく、2,000以上がより好ましく、3,000以上がさらに好ましく、4,000以上が特に好ましい。一方、上記重量平均分子量としては、50,000以下が好ましく、30,000以下がより好ましく、15,000以下がさらに好ましく、12,000以下が特に好ましい。重合体のMwが上記下限未満だと、レジスト組成物より得られるレジスト膜の耐熱性が低下する場合がある。重合体のMwが上記上限を超えると、レジスト膜の現像性が低下する場合がある。
【0092】
重合体のGPCによるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)に対するMwの比(Mw/Mn)は、通常、1以上5以下であり、1以上3以下が好ましく、1以上2以下がさらに好ましい。
【0093】
本明細書における樹脂のMw及びMnは、以下の条件によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定される値である。
GPCカラム:G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本(以上、東ソー製)
カラム温度:40℃
溶出溶媒:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/分
試料濃度:1.0質量%
試料注入量:100μL
検出器:示差屈折計
標準物質:単分散ポリスチレン
【0094】
《レジスト組成物》
レジスト組成物は、重合体、感放射線性酸発生剤及び溶媒を含む。レジスト組成物は、本発明の効果を損なわない限り、他の任意成分を含んでいてもよい。
【0095】
<重合体>
重合体としては、上記レジスト用重合体の製造方法により得られる重合体を好適に採用することができる。
【0096】
重合体の含有量としては、上記レジスト組成物の全固形分に対して、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、85質量%以上がさらに好ましい。
【0097】
<他の重合体>
レジスト組成物は、他の重合体として、上記重合体よりもフッ素原子の質量含有率が大きい重合体(以下、「高フッ素含有量重合体」ともいう。)を含んでいてもよい。上記レジスト組成物が高フッ素含有量重合体を含有する場合、上記重合体に対してレジスト膜の表層に偏在化させることができ、その結果、レジスト膜表面の状態やレジスト膜中の成分分布を所望の状態に制御することができる。
【0098】
高フッ素含有量重合体としては、例えば、必要に応じて上記重合体における単量体2に由来する構造単位を有するとともに、下記式(6)で表される構造単位(以下、「構造単位G」ともいう。)を有することが好ましい。
【化9】
【0099】
上記式(6)中、R13は、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Gは、単結合、酸素原子、硫黄原子、-COO-、-SOONH-、-CONH-又は-OCONH-である。R14は、炭素数1~20の1価のフッ素化鎖状炭化水素基又は炭素数3~20の1価のフッ素化脂環式炭化水素基である。
【0100】
上記R13としては、構造単位Gを与える単量体の共重合性の観点から、水素原子及びメチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0101】
上記Gとしては、構造単位Gを与える単量体の共重合性の観点から、単結合及び-COO-が好ましく、-COO-がより好ましい。
【0102】
上記R14で表される炭素数1~20の1価のフッ素化鎖状炭化水素基としては、炭素数1~20の直鎖又は分岐鎖アルキル基が有する水素原子の一部又は全部がフッ素原子により置換されたものをあげることができる。
【0103】
上記R14で表される炭素数3~20の1価のフッ素化脂環式炭化水素基としては、炭素数3~20の単環又は多環式炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部がフッ素原子により置換されたものをあげることができる。
【0104】
上記R14としては、フッ素化鎖状炭化水素基が好ましく、フッ素化アルキル基がより好ましく、2,2,2-トリフルオロエチル基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロピル基及び5,5,5-トリフルオロ-1,1-ジエチルペンチル基がさらに好ましい。
【0105】
高フッ素含有量重合体が構造単位Gを有する場合、構造単位Gの含有割合としては、高フッ素含有量重合体を構成する全構造単位に対して、10モル%以上が好ましく、15モル%以上がより好ましく、20モル%以上がさらに好ましく、25モル%以上が特に好ましい。上記含有割合としては、60モル%以下が好ましく、50モル%以下がより好ましく、40モル%以下がさらに好ましい。構造単位Gの含有割合を上記範囲とすることで、高フッ素含有量重合体のフッ素原子の質量含有率をより適度に調整してレジスト膜の表層への偏在化をさらに促進することができる。
【0106】
高フッ素含有量重合体は、構造単位G以外に、下記式(f-1)で表されるフッ素原子含有構造単位(以下、構造単位Hともいう。)を有していてもよい。高フッ素含有量重合体は構造単位Hを有することで、アルカリ現像液への溶解性が向上し、現像欠陥の発生を抑制することができる。
【化10】
【0107】
構造単位Hは、(x)アルカリ可溶性基を有する場合と、(y)アルカリの作用により解離してアルカリ現像液への溶解性が増大する基(以下、単に「アルカリ解離性基」とも言う。)を有する場合の2つに大別される。(x)、(y)双方に共通して、上記式(f-1)中、Rは水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Rは単結合、炭素数1~20の(s+1)価の炭化水素基、この炭化水素基のR側の末端に酸素原子、硫黄原子、-NRdd-、カルボニル基、-COO-若しくは-CONH-が結合された構造、又はこの炭化水素基が有する水素原子の一部がヘテロ原子を有する有機基により置換された構造である。Rddは、水素原子又は炭素数1~10の1価の炭化水素基である。sは、1~3の整数である。
【0108】
構造単位Hが(x)アルカリ可溶性基を有する場合、Rは水素原子であり、Aは酸素原子、-COO-*又は-SOO-*である。*はRに結合する部位を示す。Wは単結合、炭素数1~20の炭化水素基又は2価のフッ素化炭化水素基である。Aが酸素原子である場合、WはAが結合する炭素原子にフッ素原子又はフルオロアルキル基を有するフッ素化炭化水素基である。Rは単結合又は炭素数1~20の2価の有機基である。sが2又は3の場合、複数のR、W、A及びRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。構造単位Hが(x)アルカリ可溶性基を有することで、アルカリ現像液に対する親和性を高め、現像欠陥を抑制することができる。(x)アルカリ可溶性基を有する構造単位Hとしては、Aが酸素原子でありWが1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-メタンジイル基である場合が特に好ましい。
【0109】
構造単位Hが(y)アルカリ解離性基を有する場合、Rは炭素数1~30の1価の有機基であり、Aは酸素原子、-NRaa-、-COO-*又は-SOO-*である。Raaは水素原子又は炭素数1~10の1価の炭化水素基である。*はRに結合する部位を示す。Wは単結合又は炭素数1~20の2価のフッ素化炭化水素基である。Rは、単結合又は炭素数1~20の2価の有機基である。Aが-COO-*又は-SOO-*である場合、W又はRはAと結合する炭素原子又はこれに隣接する炭素原子上にフッ素原子を有する。Aが酸素原子である場合、W、Rは単結合であり、Rは炭素数1~20の炭化水素基のR側の末端にカルボニル基が結合された構造であり、Rはフッ素原子を有する有機基である。sが2又は3の場合、複数のR、W、A及びRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。構造単位Hが(y)アルカリ解離性基を有することにより、アルカリ現像工程においてレジスト膜表面が疎水性から親水性へと変化する。この結果、現像液に対する親和性を大幅に高め、より効率的に現像欠陥を抑制することができる。(y)アルカリ解離性基を有する構造単位Hとしては、Aが-COO-*であり、R若しくはW又はこれら両方がフッ素原子を有するものが特に好ましい。
【0110】
としては、構造単位Hを与える単量体の共重合性等の観点から、水素原子及びメチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0111】
が2価の有機基である場合、ラクトン構造を有する基が好ましく、多環のラクトン構造を有する基がより好ましく、ノルボルナンラクトン構造を有する基がより好ましい。
【0112】
高フッ素含有量重合体が構造単位Hを有する場合、構造単位Hの含有割合としては、高フッ素含有量重合体を構成する全構造単位に対して、10モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましく、30モル%以上がさらに好ましく、35モル%以上が特に好ましい。上記含有割合としては、90モル%以下が好ましく、75モル%以下がより好ましく、60モル%以下がさらに好ましい。構造単位Hの含有割合を上記範囲とすることで、液浸露光時のレジスト膜の撥水性をより向上させることができる。
【0113】
高フッ素含有量重合体のMwとしては、1,000以上が好ましく、2,000以上がより好ましく、3,000以上がさらに好ましく、5,000以上が特に好ましい。上記Mwとしては、50,000以下が好ましく、30,000以下がより好ましく、20,000以下がさらに好ましく、15,000以下が特に好ましい。
【0114】
高フッ素含有量重合体のMw/Mnとしては、通常1以上であり、1.1以上がより好ましい。上記Mw/Mnとしては、通常5以下であり、3以下が好ましく、2以下がより好ましく、1.7以下がさらに好ましい。
【0115】
高フッ素含有量重合体の含有量としては、上記重合体100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.3質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上がさらに好ましく、1質量部以上が特に好ましい。上記含有量としては、15質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、8質量部以下がさらに好ましく、5質量部以下が特に好ましい。
【0116】
高フッ素含有量重合体の含有量を上記範囲とすることで、高フッ素含有量重合体をレジスト膜の表層へより効果的に偏在化させることができ、その結果、液浸露光時におけるレジスト膜の表面の撥水性をより高めることができる。上記レジスト組成物は、高フッ素含有量重合体を1種又は2種以上含有していてもよい。
【0117】
(高フッ素含有量重合体の合成方法)
高フッ素含有量重合体は、上述の重合体の合成方法と同様の方法により合成することができる。
【0118】
<感放射線性酸発生剤>
感放射線性酸発生剤は、露光により酸を発生する成分である。感放射線性酸発生剤は、下記式(p-1)で表されることが好ましい。
【化11】
(上記式(p-1)中、Rp1は、環員数6以上の環構造を含む1価の基である。
p2は、2価の連結基である。
p3及びRp4は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、炭素数1~20の1価の炭化水素基又は炭素数1~20の1価のフッ素化炭化水素基である。
p5及びRp6は、それぞれ独立して、フッ素原子又は炭素数1~20の1価のフッ素化炭化水素基である。
p1は、0~10の整数である。np2は、0~10の整数である。np3は、0~10の整数である。ただし、np1+np2+np3は、1以上30以下の整数である。
p1が2以上の場合、複数のRp2は互いに同一又は異なる。
p2が2以上の場合、複数のRp3は互いに同一又は異なり、複数のRp4は互いに同一又は異なる。
p3が2以上の場合、複数のRp5は同一又は異なり、複数のRp6は同一又は異なる。
は、1価のオニウムカチオンである。)
【0119】
p1で表される環構造を含む1価の基としては、例えば、環員数5以上の脂環構造を含む1価の基、環員数5以上の脂肪族複素環構造を含む1価の基、環員数6以上の芳香環構造を含む1価の基、環員数6以上の芳香族複素環構造を含む1価の基等をあげることができる。
【0120】
上記環員数5以上の脂環構造としては、例えば、
シクロペンタン構造、シクロヘキサン構造、シクロヘプタン構造、シクロオクタン構造、シクロノナン構造、シクロデカン構造、シクロドデカン構造等の単環のシクロアルカン構造;
シクロペンテン構造、シクロヘキセン構造、シクロヘプテン構造、シクロオクテン構造、シクロデセン構造等の単環のシクロアルケン構造;
ノルボルナン構造、アダマンタン構造、トリシクロデカン構造、テトラシクロドデカン構造等の多環のシクロアルカン構造;
ノルボルネン構造、トリシクロデセン構造等の多環のシクロアルケン構造などをあげることができる。
【0121】
上記環員数5以上の脂肪族複素環構造としては、例えば、
ペンタノラクトン構造、ヘキサノラクトン構造、ノルボルナンラクトン構造等のラクトン構造;
ペンタノスルトン構造、ヘキサノスルトン構造、ノルボルナンスルトン構造等のスルトン構造;
オキサシクロペンタン構造、オキサシクロヘプタン構造、オキサノルボルナン構造等の酸素原子含有複素環構造;
アザシクロペンタン構造、アザシクロヘキサン構造、ジアザビシクロオクタン構造等の窒素原子含有複素環構造;
チアシクロペンタン構造、チアシクロヘキサン構造、チアノルボルナン構造のイオウ原子含有複素環構造などをあげることができる。
【0122】
上記環員数6以上の芳香環構造としては、例えば、ベンゼン構造、ナフタレン構造、フェナントレン構造、アントラセン構造等をあげることができる。
【0123】
上記環員数6以上の芳香族複素環構造としては、例えば、フラン構造、ピラン構造、ベンゾピラン構造等の酸素原子含有複素環構造、ピリジン構造、ピリミジン構造、インドール構造等の窒素原子含有複素環構造などをあげることができる。
【0124】
p1の環構造の環員数の下限としては、6であってもよく、7が好ましく、8がより好ましく、9がさらに好ましく、10が特に好ましい。一方、上記環員数の上限としては、15が好ましく、14がより好ましく、13がさらに好ましく、12が特に好ましい。上記環員数を上記範囲とすることで、上述の酸の拡散長をさらに適度に短くすることができ、その結果、上記化学増幅型レジスト材料の各種性能をより向上させることができる。
【0125】
p1の環構造が有する水素原子の一部又は全部は、置換基で置換されていてもよい。上記置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基、アシル基、アシロキシ基などをあげることができる。これらの中でヒドロキシ基が好ましい。
【0126】
p1としては、これらの中で、環員数5以上の脂環構造を含む1価の基及び環員数5以上の脂肪族複素環構造を含む1価の基が好ましく、環員数6以上の脂環構造を含む1価の基及び環員数6以上の脂肪族複素環構造を含む1価の基がより好ましく、環員数9以上の脂環構造を含む1価の基及び環員数9以上の脂肪族複素環構造を含む1価の基がさらに好ましく、アダマンチル基、ヒドロキシアダマンチル基、ノルボルナンラクトン-イル基、ノルボルナンスルトン-イル基及び5-オキソ-4-オキサトリシクロ[4.3.1.13,8]ウンデカン-イル基がさらに好ましく、アダマンチル基が特に好ましい。
【0127】
p2で表される2価の連結基としては、例えば、カルボニル基、エーテル基、カルボニルオキシ基、スルフィド基、チオカルボニル基、スルホニル基、2価の炭化水素基等をあげることができる。Rp2で表される2価の連結基としては、カルボニルオキシ基、スルホニル基、アルカンジイル基及びシクロアルカンジイル基が好ましく、カルボニルオキシ基及びシクロアルカンジイル基がより好ましく、カルボニルオキシ基及びノルボルナンジイル基がさらに好ましく、カルボニルオキシ基が特に好ましい。
【0128】
p3及びRp4で表される炭素数1~20の1価の炭化水素基としては、例えば、炭素数1~20のアルキル基等をあげることができる。Rp3及びRp4で表される炭素数1~20の1価のフッ素化炭化水素基としては、例えば、炭素数1~20のフッ素化アルキル基等をあげることができる。Rp3及びRp4としては、水素原子、フッ素原子及びフッ素化アルキル基が好ましく、フッ素原子及びパーフルオロアルキル基がより好ましく、フッ素原子及びトリフルオロメチル基がさらに好ましい。
【0129】
p5及びRp6で表される炭素数1~20の1価のフッ素化炭化水素基としては、例えば、炭素数1~20のフッ素化アルキル基等をあげることができる。Rp5及びRp6としては、フッ素原子及びフッ素化アルキル基が好ましく、フッ素原子及びパーフルオロアルキル基がより好ましく、フッ素原子及びトリフルオロメチル基がさらに好ましく、フッ素原子が特に好ましい。
【0130】
p1としては、0~5の整数が好ましく、0~3の整数がより好ましく、0~2の整数がさらに好ましく、0及び1が特に好ましい。
【0131】
p2としては、0~2の整数がより好ましく、0及び1がさらに好ましく、0が特に好ましい。
【0132】
p3としては、0~5の整数が好ましく、1~4の整数がより好ましく、1~3の整数がさらに好ましく、1及び2が特に好ましい。np3を1以上とすることで、上記式(p-1)の化合物から生じる酸の強さを高めることができ、その結果、当該レジスト組成物のLWR性能等をより向上させることができる。np3の上限としては、4が好ましく、3がより好ましく、2がさらに好ましい。
【0133】
なお、上記式(p-1)において、np1+np2+np3は、1以上30以下の整数である。np1+np2+np3の下限としては、2が好ましく、4がより好ましい。np1+np2+np3の上限としては、20が好ましく、10がより好ましい。
【0134】
上記Zで表される1価のオニウムカチオンとしては、例えば、S、I、O、N、P、Cl、Br、F、As、Se、Sn、Sb、Te、Bi等の元素を含む放射線分解性オニウムカチオンが挙げられ、例えばスルホニウムカチオン、テトラヒドロチオフェニウムカチオン、ヨードニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、ジアゾニウムカチオン、ピリジニウムカチオン等が挙げられる。中でも、スルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンが好ましい。スルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンは、好ましくは下記式(X-1)~(X-6)で表される。
【0135】
【化12】
【0136】
【化13】
【0137】
【化14】
【0138】
【化15】
【0139】
【化16】
【0140】
【化17】
【0141】
上記式(X-1)中、Ra1、Ra2及びRa3は、それぞれ独立して、置換若しくは非置換の炭素数1~12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、アルコキシ基若しくはアルコキシカルボニルオキシ基、置換若しくは非置換の炭素数3~12の単環若しくは多環のシクロアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数6~12の芳香族炭化水素基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、-OSO-R、-SO-R若しくは-S-Rであるか、又はこれらの基のうちの2つ以上が互いに合わせられ構成される環構造を表す。当該環構造は骨格を形成する炭素-炭素結合間にOやS等のヘテロ原子を含んでいてもよい。R、R及びRは、それぞれ独立して、置換若しくは非置換の炭素数1~12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数5~25の脂環式炭化水素基又は置換若しくは非置換の炭素数6~12の芳香族炭化水素基である。k1、k2及びk3は、それぞれ独立して0~5の整数である。Ra1~Ra3並びにR、R及びRがそれぞれ複数の場合、複数のRa1~Ra3並びにR、R及びRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0142】
上記式(X-2)中、Rb1は、置換若しくは非置換の炭素数1~20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基若しくはアルコキシ基、置換若しくは非置換の炭素数2~8のアシル基、又は置換若しくは非置換の炭素数6~8の芳香族炭化水素基、又はヒドロキシ基である。nは0又は1である。nが0のとき、k4は0~4の整数であり、nが1のとき、k4は0~7の整数である。Rb1が複数の場合、複数のRb1は同一でも異なっていてもよく、また、複数のRb1は、互いに合わせられ構成される環構造を表してもよい。Rb2は、置換若しくは非置換の炭素数1~7の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は置換若しくは非置換の炭素数6若しくは7の芳香族炭化水素基である。Lは単結合又は2価の連結基である。k5は、0~4の整数である。Rb2が複数の場合、複数のRb2は同一でも異なっていてもよく、また、複数のRb2は互いに合わせられ構成される環構造を表してもよい。qは、0~3の整数である。式中、Sを含む環構造は骨格を形成する炭素-炭素結合間にOやS等のヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0143】
上記式(X-3)中、Rc1、Rc2及びRc3は、それぞれ独立して、置換若しくは非置換の炭素数1~12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は置換若しくは非置換の炭素数6~12の芳香族炭化水素基である。
【0144】
上記式(X-4)中、Rg1は、置換若しくは非置換の炭素数1~20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基若しくはアルコキシ基、置換若しくは非置換の炭素数2~8のアシル基、又は置換若しくは非置換の炭素数6~8の芳香族炭化水素基、又はヒドロキシ基である。nは0又は1である。nk2が0のとき、k10は0~4の整数であり、nk2が1のとき、k10は0~7の整数である。Rg1が複数の場合、複数のRg1は同一でも異なっていてもよく、また、複数のRg1は、互いに合わせられ構成される環構造を表してもよい。Rg2は及びRg3は、それぞれ独立して、置換若しくは非置換の炭素数1~12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、アルコキシ基若しくはアルコキシカルボニルオキシ基、置換若しくは非置換の炭素数3~12の単環若しくは多環のシクロアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数6~12の芳香族炭化水素基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であるか、又はこれらの基が互いに合わせられ構成される環構造を表す。k11及びk12は、それぞれ独立して0~4の整数である。Rg2は及びRg3がそれぞれ複数の場合、複数のRg2は及びRg3はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0145】
上記式(X-5)中、Rd1及びRd2は、それぞれ独立して、置換若しくは非置換の炭素数1~12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、アルコキシ基若しくはアルコキシカルボニル基、置換若しくは非置換の炭素数6~12の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、炭素数1~4のハロゲン化アルキル基、ニトロ基であるか、又はこれらの基のうちの2つ以上が互いに合わせられ構成される環構造を表す。k6及びk7は、それぞれ独立して0~5の整数である。Rd1及びRd2がそれぞれ複数の場合、複数のRd1及びRd2はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0146】
上記式(X-6)中、Re1及びRe2は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、置換若しくは非置換の炭素数1~12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は置換若しくは非置換の炭素数6~12の芳香族炭化水素基である。k8及びk9は、それぞれ独立して0~4の整数である。
【0147】
上記式(p-1)で表される感放射線性酸発生剤としては、例えば、下記式(p-1-1)~(p-1-35)で表される感放射線性酸発生剤(以下、「感放射線性酸発生剤(p-1-1)~感放射線性酸発生剤(p-1-35)」ともいう。)等が挙げられる。
【0148】
【化18】
【0149】
【化19】
【0150】
【化20】
【0151】
上記式(p-1-1)~(p-1-35)中、Zは、1価のオニウムカチオンである。
【0152】
これらの中でも、上記式(p-1-1)、(p-1-9)、(p-1-11)、(p-1-13)、(p-1-17)、(p-1-23)、(p-1-25)及び(p-1-35)で表される感放射線性酸発生剤が好ましい。
【0153】
これらの感放射線性酸発生剤は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。感放射線性酸発生剤の含有量の下限は、樹脂100質量部に対して0.1質量部が好ましく、1質量部がより好ましく、5質量部がさらに好ましい。上記含有量の上限は、50質量部が好ましく、40質量部がより好ましく、30質量部がさらに好ましい。これによりレジストパターン形成の際に優れた感度やLWR性能を発揮することができる。
【0154】
<酸拡散制御剤>
当該レジスト組成物は、必要に応じて、酸拡散制御剤を含有してもよい。酸拡散制御剤は、露光により感放射線性酸発生剤から生じる酸のレジスト膜中における拡散現象を制御し、非露光領域における好ましくない化学反応を抑制する効果を奏する。また、得られるレジスト組成物の貯蔵安定性が向上する。さらに、レジストパターンの解像度がさらに向上すると共に、露光から現像処理までの引き置き時間の変動によるレジストパターンの線幅変化を抑えることができ、プロセス安定性に優れたレジスト組成物が得られる。
【0155】
酸拡散制御剤としては、例えば下記式(7)で表される化合物(以下、「含窒素化合物(I)」ともいう)、同一分子内に窒素原子を2個有する化合物(以下、「含窒素化合物(II)」ともいう)、窒素原子を3個有する化合物(以下、「含窒素化合物(III)」ともいう)、アミド基含有化合物、ウレア化合物、含窒素複素環化合物等が挙げられる。
【0156】
【化21】
【0157】
上記式(7)中、R22、R23及びR24は、それぞれ独立して、水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のシクロアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基又は置換若しくは非置換のアラルキル基である。
【0158】
含窒素化合物(I)としては、例えばn-ヘキシルアミン等のモノアルキルアミン類;ジ-n-ブチルアミン等のジアルキルアミン類;トリエチルアミン等のトリアルキルアミン類;アニリン等の芳香族アミン類等が挙げられる。
【0159】
含窒素化合物(II)としては、例えばエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン等が挙げられる。
【0160】
含窒素化合物(III)としては、例えばポリエチレンイミン、ポリアリルアミン等のポリアミン化合物;ジメチルアミノエチルアクリルアミド等の重合体等が挙げられる。
【0161】
アミド基含有化合物としては、例えばホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド、ピロリドン、N-メチルピロリドン等が挙げられる。
【0162】
ウレア化合物としては、例えば尿素、メチルウレア、1,1-ジメチルウレア、1,3-ジメチルウレア、1,1,3,3-テトラメチルウレア、1,3-ジフェニルウレア、トリブチルチオウレア等が挙げられる。
【0163】
含窒素複素環化合物としては、例えばピリジン、2-メチルピリジン等のピリジン類;N-プロピルモルホリン、N-(ウンデシルカルボニルオキシエチル)モルホリン等のモルホリン類;ピラジン類、ピラゾール類等が挙げられる。
【0164】
また上記含窒素有機化合物として、酸解離性基を有する化合物を用いることもできる。このような酸解離性基を有する含窒素有機化合物としては、例えばN-t-ブトキシカルボニルピペリジン、N-t-ブトキシカルボニルイミダゾール、N-t-ブトキシカルボニルベンズイミダゾール、N-t-ブトキシカルボニル-2-フェニルベンズイミダゾール、N-(t-ブトキシカルボニル)ジ-n-オクチルアミン、N-(t-ブトキシカルボニル)ジエタノールアミン、N-(t-ブトキシカルボニル)ジシクロヘキシルアミン、N-(t-ブトキシカルボニル)ジフェニルアミン、N-t-ブトキシカルボニル-4-ヒドロキシピペリジン、N-t-アミルオキシカルボニル-4-ヒドロキシピペリジン等が挙げられる。
【0165】
また、酸拡散制御剤として、放射線の照射により、上記感放射線性酸発生剤から発生する酸よりpKaが高い酸を発生するオニウム塩化合物(以下、便宜上「感放射線性弱酸発生剤」ともいう。)を好適に用いることもできる。上記感放射線性弱酸発生剤より発生する酸は、上記樹脂中の酸解離性基を解離させる条件では上記酸解離性基の解離を誘発しない弱酸である。なお、本明細書において、酸解離性基の「解離」とは、110℃で60秒間ポストエクスポージャーベークした際に解離することをいう。
【0166】
感放射線性弱酸発生剤としては、例えば下記式(8-1)で表されるスルホニウム塩化合物、下記式(8-2)で表されるヨードニウム塩化合物等が挙げられる。
【0167】
【化22】
【0168】
上記式(8-1)及び式(8-2)中、Jはスルホニウムカチオンであり、Uはヨードニウムカチオンである。Jで表されるスルホニウムカチオンとしては、上記式(X-1)~(X-4)で表されるスルホニウムカチオンが挙げられ、Uで表されるヨードニウムカチオンとしては、上記式(X-5)~(X-6)で表されるヨードニウムカチオンが挙げられる。E及びQは、それぞれ独立して、OH、Rα-COO、Rα-SO で表されるアニオンである。Rαは、アルキル基、アリール基又はアラルキル基である。Rαで表されるアルキル基の水素原子、又はアリール基若しくはアラルキル基の芳香環の水素原子は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、ハロゲン原子置換若しくは非置換の炭素数1~12のアルキル基又は炭素数1~12のアルコキシ基で置換されていてもよい。
【0169】
上記感放射線性弱酸発生剤としては、例えば下記式で表される化合物等が挙げられる。
【0170】
【化23】
【0171】
【化24】
【0172】
酸拡散制御剤の含有量としては、感放射線性酸発生剤の合計モル数に対して、5モル%以上が好ましく、10モル%以上がより好ましく、15モル%以上がさらに好ましい。上記含有量としては、200モル%以下が好ましく、100モル%以下がより好ましく、50モル%以下がさらに好ましい。酸拡散制御剤の含有量を上記範囲とすることで、当該レジスト組成物のリソグラフィー性能をより向上させることができる。当該レジスト組成物は、酸拡散制御剤を1種又は2種以上を含有していてもよい。
【0173】
<溶媒>
本実施形態に係るレジスト組成物は、溶媒を含有する。溶媒は、少なくとも重合体及び感放射線性酸発生剤、並びに所望により含有される添加剤等を溶解又は分散可能な溶媒であれば特に限定されない。
【0174】
溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エステル系溶媒、炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0175】
アルコール系溶媒としては、例えば、
iso-プロパノール、4-メチル-2-ペンタノール、3-メトキシブタノール、n-ヘキサノール、2-エチルヘキサノール、フルフリルアルコール、シクロヘキサノール、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール、ジアセトンアルコール等の炭素数1~18のモノアルコール系溶媒;
エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等の炭素数2~18の多価アルコール系溶媒;
上記多価アルコール系溶媒が有するヒドロキシ基の一部をエーテル化した多価アルコール部分エーテル系溶媒等が挙げられる。
【0176】
エーテル系溶媒としては、例えば、
ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のジアルキルエーテル系溶媒;
テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテル系溶媒;
ジフェニルエーテル、アニソール(メチルフェニルエーテル)等の芳香環含有エーテル系溶媒;
上記多価アルコール系溶媒が有するヒドロキシ基をエーテル化した多価アルコールエーテル系溶媒等が挙げられる。
【0177】
ケトン系溶媒としては、例えばアセトン、ブタノン、メチル-iso-ブチルケトン等の鎖状ケトン系溶媒:
シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等の環状ケトン系溶媒:
2,4-ペンタンジオン、アセトニルアセトン、アセトフェノン等が挙げられる。
【0178】
アミド系溶媒としては、例えばN,N’-ジメチルイミダゾリジノン、N-メチルピロリドン等の環状アミド系溶媒;
N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルプロピオンアミド等の鎖状アミド系溶媒等が挙げられる。
【0179】
エステル系溶媒としては、例えば、
酢酸n-ブチル、乳酸エチル等のモノカルボン酸エステル系溶媒;
ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の多価アルコール部分エーテルアセテート系溶媒;
γ-ブチロラクトン、バレロラクトン等のラクトン系溶媒;
ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒;
ジ酢酸プロピレングリコール、酢酸メトキシトリグリコール、シュウ酸ジエチル、アセト酢酸エチル、乳酸エチル、フタル酸ジエチル等の多価カルボン酸ジエステル系溶媒が挙げられる。
【0180】
炭化水素系溶媒としては、例えば
n-ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;
ベンゼン、トルエン、ジ-iso-プロピルベンセン、n-アミルナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0181】
これらの中で、エステル系溶媒、ケトン系溶媒が好ましく、多価アルコール部分エーテルアセテート系溶媒、環状ケトン系溶媒、ラクトン系溶媒がより好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、γ-ブチロラクトンがさらに好ましい。当該レジスト組成物は、溶媒を1種又は2種以上含有していてもよい。
【0182】
<その他の任意成分>
上記レジスト組成物は、上記成分以外にも、その他の任意成分を含有していてもよい。上記その他の任意成分としては、例えば、架橋剤、偏在化促進剤、界面活性剤、脂環式骨格含有化合物、増感剤等をあげることができる。これらのその他の任意成分は、それぞれ1種又は2種以上を併用してもよい。
【0183】
<レジスト組成物の調製方法>
上記レジスト組成物は、例えば、重合体、感放射線性酸発生剤、必要に応じて高フッ素含有量重合体等、及び溶媒を所定の割合で混合することにより調製できる。上記レジスト組成物は、混合後に、例えば、孔径0.05μm程度のフィルター等でろ過することが好ましい。上記レジスト組成物の固形分濃度としては、通常0.1質量%~50質量%であり、0.5質量%~30質量%が好ましく、1質量%~20質量%がより好ましい。
【0184】
《レジストパターン形成方法》
レジストパターン形成方法は、
上記レジスト組成物によりレジスト膜を形成する工程(1)(以下、「レジスト膜形成工程」ともいう)、
上記レジスト膜を露光する工程(2)(以下、「露光工程」ともいう)、及び、
露光された上記レジスト膜を現像する工程(3)(以下、「現像工程」ともいう)を含む。
【0185】
上記レジストパターン形成方法によれば、欠陥抑制性、露光工程における感度やLWR性能に優れた上記レジスト組成物を用いているため、高品位のレジストパターンを形成することができる。以下、各工程について説明する。
【0186】
[レジスト膜形成工程]
本工程(上記工程(1))では、上記レジスト組成物でレジスト膜を形成する。このレジスト膜を形成する基板としては、例えば、シリコンウェハ、二酸化シリコン、アルミニウムで被覆されたウェハ等の従来公知のもの等をあげることができる。また、例えば、特公平6-12452号公報や特開昭59-93448号公報等に開示されている有機系又は無機系の反射防止膜を基板上に形成してもよい。塗布方法としては、例えば、回転塗布(スピンコーティング)、流延塗布、ロール塗布等をあげることができる。塗布した後に、必要に応じて、塗膜中の溶媒を揮発させるため、プレベーク(PB)を行ってもよい。PB温度としては、通常60℃~140℃であり、80℃~120℃が好ましい。PB時間としては、通常5秒~600秒であり、10秒~300秒が好ましい。形成されるレジスト膜の膜厚としては、10nm~1,000nmが好ましく、10nm~500nmがより好ましい。
【0187】
液浸露光を行う場合、上記レジスト組成物における上記高フッ素含有量重合体等の撥水性重合体添加剤の有無にかかわらず、上記形成したレジスト膜上に、液浸液とレジスト膜との直接の接触を避ける目的で、液浸液に不溶性の液浸用保護膜を設けてもよい。液浸用保護膜としては、現像工程の前に溶媒により剥離する溶媒剥離型保護膜(例えば、特開2006-227632号公報参照)、現像工程の現像と同時に剥離する現像液剥離型保護膜(例えば、WO2005-069076号公報、WO2006-035790号公報参照)のいずれを用いてもよい。ただし、スループットの観点からは、現像液剥離型液浸用保護膜を用いることが好ましい。
【0188】
[露光工程]
本工程(上記工程(2))では、上記工程(1)であるレジスト膜形成工程で形成されたレジスト膜に、フォトマスクを介して(場合によっては、水等の液浸媒体を介して)、放射線を照射し、露光する。露光に用いる放射線としては、目的とするパターンの線幅に応じて、例えば、可視光線、紫外線、遠紫外線、EUV(極端紫外線)、X線、γ線等の電磁波;電子線、α線等の荷電粒子線などをあげることができる。これらの中でも、遠紫外線、電子線、EUVが好ましく、ArFエキシマレーザー光(波長193nm)、KrFエキシマレーザー光(波長248nm)、電子線、EUVがより好ましく、次世代露光技術として位置付けされる波長50nm以下の電子線、EUVがさらに好ましい。
【0189】
露光を液浸露光により行う場合、用いる液浸液としては、例えば、水、フッ素系不活性液体等をあげることができる。液浸液は、露光波長に対して透明であり、かつ膜上に投影される光学像の歪みを最小限に留めるよう屈折率の温度係数ができる限り小さい液体が好ましいが、特に露光光源がArFエキシマレーザー光(波長193nm)である場合、上述の観点に加えて、入手の容易さ、取り扱いのし易さといった点から水を用いるのが好ましい。水を用いる場合、水の表面張力を減少させるとともに、界面活性力を増大させる添加剤をわずかな割合で添加しても良い。この添加剤は、ウェハ上のレジスト膜を溶解させず、かつレンズの下面の光学コートに対する影響が無視できるものが好ましい。使用する水としては蒸留水が好ましい。
【0190】
上記露光の後、ポストエクスポージャーベーク(PEB)を行い、レジスト膜の露光された部分において、露光により感放射線性酸発生剤から発生した酸による樹脂等が有する酸解離性基の解離を促進させることが好ましい。このPEBによって、露光部と未露光部とで現像液に対する溶解性に差が生じる。PEB温度としては、通常50℃~180℃であり、80℃~130℃が好ましい。PEB時間としては、通常5秒~600秒であり、10秒~300秒が好ましい。
【0191】
[現像工程]
本工程(上記工程(3))では、上記工程(2)である上記露光工程で露光されたレジスト膜を現像する。これにより、所定のレジストパターンを形成することができる。現像後は、水又はアルコール等のリンス液で洗浄し、乾燥することが一般的である。
【0192】
上記現像に用いる現像液としては、アルカリ現像の場合、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、けい酸ナトリウム、メタけい酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n-プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ-[4.3.0]-5-ノネン等のアルカリ性化合物の少なくとも1種を溶解したアルカリ水溶液等をあげることができる。これらの中でも、TMAH水溶液が好ましく、2.38質量%TMAH水溶液がより好ましい。
【0193】
また、有機溶媒現像の場合、炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒等の有機溶媒、又は有機溶媒を含有する溶媒をあげることができる。上記有機溶媒としては、例えば、上述のレジスト組成物の溶媒として列挙した溶媒の1種又は2種以上等をあげることができる。これらの中でも、エステル系溶媒、ケトン系溶媒が好ましい。エステル系溶媒としては、酢酸エステル系溶媒が好ましく、酢酸n-ブチル、酢酸アミルがより好ましい。ケトン系溶媒としては、鎖状ケトンが好ましく、2-ヘプタノンがより好ましい。現像液中の有機溶媒の含有量としては、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、99質量%以上が特に好ましい。現像液中の有機溶媒以外の成分としては、例えば、水、シリコンオイル等をあげることができる。
【0194】
現像方法としては、例えば、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液塗出ノズルをスキャンしながら現像液を塗出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)等をあげることができる。
【実施例
【0195】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例における物性値は下記のようにして測定した。
【0196】
[重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)]
東ソー製GPCカラム(G2000HXL:2本、G3000HXL:1本、G4000HXL:1本)を用い、流量:1.0mL/分、溶出溶媒:テトラヒドロフラン、試料濃度:1.0質量%、試料注入量:100μL、カラム温度:40℃、検出器:示差屈折計の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した。また、分散度(Mw/Mn)は、Mw及びMnの測定結果より算出した。
【0197】
<[A]重合体の合成>
各実施例及び比較例における各重合体の合成で用いた単量体を以下に示す。脱保護によりフェノール系水酸基を与える単量体1´として下記式(M-1)~(M-3)で表される化合物、酸解離性基を有する単量体2として下記式(M-4)~(M-6)で表される化合物、極性基を有する単量体3として下記式(M-7)、(M-8)で表される化合物を用いた。なお、下記式(M-1)~(M-3)と併記されているのは単量体1´のフェノール性水酸基の保護基を脱保護した構造(Ph-OAcがそれぞれPh-OHとなった構造)を有する単量体1の溶解度パラメータSPm1であり、下記式(M-4)~(M-6)と併記されているのは単量体2の溶解度パラメータSPm2である。
【0198】
【化25】
【0199】
第4工程に使用する溶剤として(S-1)~(S-8)及び(CS-1)~(CS-4)を用いた。
(S-1):シクロヘキサノン(SP=20.29)
(S-2):メチルイソブチルカルビノール(SP=19.06)
(S-3):トルエン(SP=18.50)
(S-4):酢酸ブチル(SP=17.73)
(S-5):メチルエチルケトン(SP=18.32)
(S-6):シクロペンチルメチルエーテル(SP=17.11)
(S-7):ジイソプロピルエーテル(SP=15.30)
(S-8):テトラヒドロフラン(SP=18.35)
(CS-1):プロピレングリコールモノメチルエーテル(SP=21.87)
(CS-2):アセトニトリル(SP=24.29)
(CS-3):イソブチルアルコール(SP=20.78)
(CS-4):1,4-ジオキサン(SP=20.47)
【0200】
溶媒の溶解度パラメータSP、単量体1´のフェノール性水酸基の保護基を脱保護した構造を有する単量体1の溶解度パラメータSPm1及び単量体2の溶解度パラメータSPm2は、HSPiP 5th Editionのバージョン5.0.06.1を使用して計算した。
【0201】
なお以下の合成例においては特に断りのない限り、質量部は使用した単量体の合計質量を100質量部とした場合の値を意味し、モル%は使用した単量体の合計モル数を100モル%とした場合の値を意味する。
【0202】
[合成例1:重合体(A-1)の合成]
単量体としての化合物(M-1)50モル%、及び単量体としての化合物(M-6)50モル%をプロピレングリコールモノメチルエーテル(200質量部)に溶解した。ここに開始剤として2,2’-アゾビス(イソ酪酸メチル)(10モル%)を加えて単量体溶液を調製した。一方、空の反応容器にプロピレングリコールモノメチルエーテル(全モノマー量に対して100質量部)を加え、攪拌しながら85℃に加熱した。次に、上記で調製した単量体溶液を3時間かけて滴下し、その後さらに3時間85℃で加熱し、重合反応を合計6時間実施した。重合反応終了後、重合溶液を室温に冷却した。重合溶液をn-ヘキサン(1,000質量部)中に滴下して、重合体を凝固精製した。上記重合体に、再度プロピレングリコールモノメチルエーテル(150質量部)を加えた。更に、メタノール(150質量部)、トリエチルアミン(化合物(M-1)の使用量に対し1.5モル当量)及び水(化合物(M-1)の使用量に対し1.5モル当量)を加えて、沸点にて還流させながら、8時間加水分解反応を行った。反応終了後、溶媒及びトリエチルアミンを減圧留去し、得られた重合体をアセトン(150質量部)に溶解した。これを水(2,000質量部)中に滴下して凝固させ、生成した白色粉末をろ別した。得られた重合体を溶剤(S-1)700質量部と混合し、精密フィルター(日本ポール(株)製、NYLON6,6 FILTER)を通した。溶液を回収し、溶媒をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに置換することで、重合体(A-1)を含むプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を得た。
【0203】
[合成例2~16:重合体(A-2)~(A-12)、(CA-1)~(CA-4)の合成]
モノマー及び溶剤を適宜選択し、合成例1と同様の操作を行うことによって、重合体(A-2)~(A-12)、(CA-1)~(CA-4)を合成した。なおトリエチルアミン及び水の使用量は化合物(M-1)、(M-3)の使用量に対し1.5モル当量、化合物(M-2)の使用量に対し3.0モル等量とした。
【0204】
各単量体の使用量、溶剤、|SPm1-SP|>|SPm2-SP|、Mw及びMw/Mnの値を表1に合わせて示す。
【0205】
【表1】
【0206】
[合成例17:高フッ素含有量重合体(B-1)の合成]
単量体としての化合物(M-6)、化合物(M-9)をモル比率が70/30となるように2-ブタノン(100質量部)に溶解した。ここに開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(5モル%)を添加し、単量体溶液を調製した。一方、空の反応容器に2-ブタノン(50質量部)を入れ、30分窒素パージした。反応容器内を80℃とし、攪拌しながら、上記単量体溶液を3時間かけて滴下した。滴下開始を重合反応の開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合反応終了後、重合溶液を水冷して30℃以下に冷却した。反応溶液を分液漏斗に移液した後、ヘキサン(150質量部)で上記反応溶液を均一に希釈したのち、メタノール(600質量部)、および水(30質量部)を投入して混合した。30分静置後、下層を回収し、溶媒をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに置換することで、高フッ素含有量重合体(B-1)を含むプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を得た。
【0207】
<レジスト組成物の調製>
下記実施例及び比較例のレジスト組成物の調製に用いた[C]酸発生剤、[D]酸拡散制御剤、及び[E]溶媒を以下に示す。
【0208】
[C]酸発生剤
酸発生剤として下記式(C-1)及び(C-2)で表される化合物を用いた。
【0209】
【化26】
【0210】
[D]酸拡散制御剤
酸拡散制御剤として下記式(D-1)で表される化合物を用いた。
【0211】
【化27】
【0212】
[E]溶剤
E-1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
E-2:プロピレングリコールモノメチルエーテル
【0213】
[実施例1]
[A]重合体(A-1)100質量部、[B]高フッ素含有量重合体(B-1)1質量部、[C]酸発生剤としての(C-1)20質量部、[D]酸拡散抑制剤としての(D-1)を(C-1)に対して45モル%、[E]溶媒としての(E-1)及び(E-2)を配合してレジスト組成物(R-1)を調製した。
【0214】
[実施例2~12及び比較例1~4]
下記表2に示す種類及び配合量の各成分を用いた以外は、実施例1と同様に操作して、レジスト組成物(R-2)~(R-12)及び(CR-1)~(CR-4)を調製した。
【0215】
【表2】
【0216】
<レジストパターンの形成>
膜厚20nmの下層膜(AL412(Brewer Science社製))が形成された12インチのシリコンウェハ表面に、スピンコーター(CLEAN TRACK ACT12、東京エレクトロン製)を使用して、上記調製した各レジスト組成物を塗布した。100℃で60秒間SB(ソフトベーク)を行った後、23℃で30秒間冷却し、膜厚30nmのレジスト膜を形成した。次に、このレジスト膜に、EUV露光機(型式「NXE3300」、ASML製、NA=0.33、照明条件:Conventional s=0.89)を用いてEUV光を照射した。上記レジスト膜に100℃で60秒間PEB(ポストエクスポージャーベーク)を行った。次いで、2.38wt%のTMAH水溶液を用いて23℃で30秒間現像し、ラインアンドスペースパターン(線幅20nm、50nmピッチ)を形成した。
【0217】
<評価>
形成したラインアンドスペースパターンについて、KLA2925(KLA製)で欠陥検査した。また、感度、LWR性能をCG5000(日立ハイテクノロジーズ製)で測定した。
【0218】
[欠陥抑制性]
欠陥検査の結果、残渣欠陥の密度が1cmあたり50個以下の場合は「良好」と、50個を超える場合は「不良」と評価した。
【0219】
[感度]
上記レジストパターンの形成において、20nmラインアンドスペースパターンを形成する露光量を最適露光量Eopとし、この最適露光量を感度(mJ/cm)とした。
【0220】
[LWR性能]
上記感度の評価で求めた最適露光量Eopを照射して20nmラインアンドスペースのパターンを形成するようにマスクサイズを調整して、レジストパターンを形成した。形成したレジストパターンを、上記走査型電子顕微鏡を用い、パターン上部から観察した。線幅のばらつきを計500点測定し、その測定値の分布から3シグマ値を求め、この3シグマ値をLWR(nm)とした。LWRは、その値が小さいほど、ラインのがたつきが小さく良好であることを示す。
【0221】
上記欠陥抑制性、感度、LWR性能の評価結果を下記表6に示す。
【0222】
【表3】
【0223】
表3の結果から明らかなように、実施例のレジスト組成物では欠陥密度、感度及びLWR性能が良好であった。比較例のレジスト組成物ではいずれも欠陥密度が高くなっており、また感度及びLWR性能についても実施例と同等以下であった。
【産業上の利用可能性】
【0224】
本発明のレジスト用重合体の製造方法によれば、従来よりも欠陥抑制性、感度及びLWR性能が良好なレジスト組成物用の重合体を製造することができる。従って、これらは半導体デバイス、液晶デバイス等の各種電子デバイスのリソグラフィー工程における微細なレジストパターン形成に好適に用いることができる。