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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】収容庫
(51)【国際特許分類】
   B65D 88/74 20060101AFI20240222BHJP
   F25D 11/00 20060101ALI20240222BHJP
   F25D 23/00 20060101ALI20240222BHJP
   F25D 23/06 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
B65D88/74
F25D11/00 101D
F25D23/00 302Z
F25D23/06 302C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019217860
(22)【出願日】2019-12-02
(65)【公開番号】P2021088369
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】509317531
【氏名又は名称】株式会社MARS Company
(74)【代理人】
【識別番号】100144886
【弁理士】
【氏名又は名称】大坪 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】大野 正樹
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/122070(WO,A1)
【文献】特開2004-224394(JP,A)
【文献】特開2014-159896(JP,A)
【文献】特許第6499366(JP,B1)
【文献】特開2008-273622(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108657666(CN,A)
【文献】国際公開第2020/115923(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 88/74
F25D 11/00
F25D 23/00
F25D 23/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を収容する収容空間を有する収容庫本体と、
前記収容空間内に電界を形成する電極と、を有し、
前記収容庫本体は、床部と、前記床部と対向配置された天井部と、前記床部と前記天井部とを接続する側壁部と、を有し、
前記天井部、前記床部および前記側壁部は、それぞれ、絶縁性の断熱材と、前記断熱材よりも外側に設けられた外壁と、を有し、
前記床部および前記側壁部については、さらに、前記断熱材よりも内側に設けられた内壁を有し、
前記天井部においては、前記断熱材が前記収容空間に臨んでおり、
前記外壁および前記内壁は、それぞれ、金属材料で構成され、使用時にグランドに接続され、
前記電極は、前記断熱材に埋設され、
前記電極と前記外壁との離間距離は、前記電極と前記収容空間との離間距離よりも大きいことを特徴とする収容庫。
【請求項2】
移動型コンテナである請求項に記載の収容庫。
【請求項3】
前記電極は、シート状または板状である請求項1または2に記載の収容庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収容庫に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、コンテナ内の収容空間に電界を形成し、この電界形成雰囲気内で生鮮食品を保存することにより、電界を形成しない場合と比べて生鮮食品の鮮度を長く保つことができることが知られている。特許文献1のコンテナでは、コンテナ内に電界を形成するための板状の電極がコンテナ内の床面、側面または天井面に設けられた構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-250773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、電極がコンテナの内壁から収容空間内に突出して設けられているため、収容空間の容積が減少し、その分、積載量が低下する。
【0005】
本発明の目的は、積載量の低下を抑制しつつ、収容空間に電界を形成することのできる収容庫を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
【0007】
(1) 対象物を収容する収容空間を有する収容庫本体と、
前記収容空間内に電界を形成する電極と、を有し、
前記電極は、前記収容庫本体に埋設されていることを特徴とする収容庫。
【0008】
(2) 前記電極は、シート状または板状である上記(1)に記載の収容庫。
【0009】
(3) 前記収容庫本体は、床部と、前記床部と対向配置された天井部と、前記床部と前記天井部とを接続する側壁部と、を有し、
前記電極は、前記天井部に埋設されている上記(1)または(2)に記載の収容庫。
【0010】
(4) 前記天井部は、絶縁性の断熱材と、前記断熱材よりも外側に設けられた外壁と、を有し、
前記電極は、前記断熱材に埋設されている上記(3)に記載の収容庫。
【0011】
(5) 前記電極と前記外壁との離間距離は、前記電極と前記収容空間との離間距離よりも大きい上記(4)に記載の収容庫。
【0012】
(6) 前記天井部は、前記断熱材よりも内側に設けられた内壁を有し、
前記内壁は、絶縁性を有する上記(4)または(5)に記載の収容庫。
【0013】
(7) 前記床部および前記側壁部は、内壁と、前記内壁よりも外側に設けられた外壁と、前記内壁と前記外壁との間に設けられた断熱材とを有する上記(1)から(6)のいずれかに記載の収容庫。
【発明の効果】
【0014】
このような本発明によれば、電極が収容庫本体に埋設されているため、積載量の低下を抑制しつつ、収容空間に電界を形成することのできる収容庫を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係るコンテナの全体を示す斜視図である。
図2】コンテナ本体の内部を示す断面図である。
図3】コンテナ本体の天井部を示す断面図である。
図4】電極の変形例を示す断面図である。
図5】電極の変形例を示す断面図である。
図6】第2実施形態に係るコンテナ本体の内部を示す断面図である。
図7】第3実施形態に係るコンテナの電極に印加する電圧を示す図である。
図8】第3実施形態に係るコンテナの電極に印加する電圧を示す図である。
図9】第3実施形態に係るコンテナの電極に印加する電圧を示す図である。
図10】第3実施形態に係るコンテナの電極に印加する電圧を示す図である。
図11】第4実施形態に係るコンテナ本体の内部を示す断面図である。
図12】第5実施形態に係るコンテナ本体の内部を示す断面図である。
図13】電極に印加する電圧を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
図1に示すコンテナ1(収容庫)は、トラック、船舶、飛行機等に搭載される移動型コンテナである。特に、本実施形態のコンテナ1は、冷却機能を備えたリーファーコンテナであり、対象物を収容する収容空間20を有するコンテナ本体2(収容庫本体)と、収容空間20内を冷却する冷却装置3と、収容空間20に電界を形成する電界形成装置4とを有する。コンテナ1は、例えば、国際規格(ISO規格)に準拠する構成であり、全長が20フィートの「20フィートコンテナ」または全長が40フィートの「40フィートコンテナ」である。このように、国際規格に準拠する構成とすることにより、利便性および汎用性に優れ、さらには十分な信頼性を有するコンテナ1となる。
【0017】
ただし、コンテナ1は、必ずしも国際規格(ISO規格)に準拠する必要はなく、コンテナ1の形状は、特に限定されない。また、コンテナ1は、移動型コンテナではなく、店舗、倉庫等に固定して用いられる固定型コンテナであってもよい。また、例えば、トラック等の荷台に据え付けられたものであってもよい。また、収容庫としては、コンテナ1に限定されず、例えば、冷却倉庫、冷蔵庫等にも適用可能である。
【0018】
また、対象物としては、特に限定されず、例えば、魚、エビ、カニ、イカ、タコ、貝等の魚介類およびこれらの加工食品、イチゴ、リンゴ、バナナ、みかん、ぶどう、梨等の果物およびこれらの加工食品、キャベツ、レタス、キュウリ、トマト等の野菜およびこれらの加工食品、牛肉、豚肉、鶏肉、馬肉等の食肉等の生鮮食品、牛乳、チーズ、ヨーグルト等の各種乳製品、各種臓器、特に移植用の臓器等が挙げられる。これらの中でも、対象物としては、特に、生鮮食品であることが好ましい。なお、これら対象物は、冷蔵状態、すなわち、非冷凍(非凍結)で冷却保存されることが好ましい。
【0019】
コンテナ本体2は、図2中の奥行き方向に延びた略直方体形状であり、その内部には対象物を収容する収容空間20が設けられている。また、図2に示すように、コンテナ本体2は、内壁21と、外壁22と、内壁21と外壁22との間に設けられた絶縁性の断熱材23とを有する。これにより、収容空間20が十分に断熱されて、外気温の影響を受け難い構成となる。そのため、冷却装置3によって、収容空間20内を効率的に冷却することができる。また、コンテナ1の使用時には、コンテナ本体2(内壁21および外壁22)は、グランドに接続される。なお、内壁21と断熱材23との間、外壁21と断熱材23との間、内壁21の内側または外壁21の外側に、図示しない部材が介在していてもよい。
【0020】
ここで、内壁21および外壁22の構成材料としては、特に限定されないが、それぞれ、ステンレス鋼、鉄、アルミニウム等の各種金属を用いることができる。これにより、堅牢で頑丈なコンテナ本体2が得られる。また、断熱材23としては、絶縁性を有していれば、特に限定されないが、例えば、グラスウール、セルロースファイバー、発泡体(発泡ポリウレタン、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン等)等を用いることができる。これにより、優れた断熱性を発揮することができる。
【0021】
また、コンテナ本体2は、鉛直方向下側に位置する床部24と、床部24の上側に位置し、床部24と対向する天井部25と、床部24から立設し、床部24と天井部25とを接続する側壁部26とを有し、これらに囲まれることにより収容空間20が形成されている。なお、床部24、天井部25および側壁部26は、例えば、骨組み27を介して互いに接続、固定されている。ただし、これらの接続、固定方法は、特に限定されず、例えば、互いの外壁同士、内壁同士を溶接することより固定してもよい。
【0022】
ここで、図2に示すように、床部24および側壁部26は、それぞれ、内壁21と、外壁22と、内壁21と外壁22との間に設けられた断熱材23とを有する。これに対して、天井部25は、外壁22と、外壁22の内側に設けられた断熱材23とを有する。つまり、天井部25は、床部24および側壁部26に対して内壁21が省略された構成となっており、断熱材23が収容空間20に臨んだ構成となっている。言い換えると、コンテナ本体2は、横断面視(長手方向に直交する断面視)で、鉛直方向上側に開口する「コ」の字状の内壁21と、内壁21の外側に位置し、内壁21を囲んで設けられた「ロ」の字状の外壁22と、内壁21と外壁22との間に設けられた「ロ」の字状の断熱材23とにより構成され、天井部25の断熱材23が収容空間20に露出している。このように、天井部25に内壁21を設けないことにより、後述するように、収容空間20内への電界形成が阻害され難くなる。
【0023】
また、コンテナ本体2の図1中手前側の端部には観音開き型の一対の扉28、29が設けられている。この扉28、29を介して、収容空間20への対象物の搬入または収容空間20からの対象物の搬出が可能となる。ただし、扉28、29の配置や構成は、特に限定されない。一方、コンテナ本体2の図1中奥側の端部には冷却装置3が設けられている。なお、本実施形態のコンテナ1では、コンテナ本体2の図1中奥側の端部に位置する壁が冷却装置3のパネルで構成されているが、これに限定されず、コンテナ本体2の側壁部26で構成されていてもよい。
【0024】
図2に示すように、冷却装置3は、収容空間20の扉28、29側から見て奥側の端部に設けられており、収容空間20内の空気を吸入する吸入部31と、吸入部31から吸入した空気を冷却する冷却装置32と、冷却装置32で冷却した空気すなわち冷気を収容空間20内に吹き出す吹出部33と、収容空間20内の温度を検出する温度センサー34と、を有する。
【0025】
吹出部33は、収容空間20の床部24付近に設けられ、床部24に向けて冷気を吹き出す。吹出部33から吹き出した冷気は、床部24にコンテナ本体2の長手方向に沿って形成された複数の溝241に沿って流れ、扉28、29にぶつかって、或いはその手前で上昇し、収容空間20の天井部25に達する。一方、吸入部31は、天井部25付近に設けられ、床部24から天井部25或いはその付近まで上昇してきた冷気を吸入する。また、温度センサー34で検出される収容空間20内の温度が目標温度となるように冷気の温度や風量が制御される。
【0026】
このような構成によれば、収容空間20の全域にわたって効率的に冷気を循環させることができ、かつ、収容空間20内の温度を目標温度に維持することができる。そのため、収容空間20に収容された対象物をむらなく適切に冷却することができる。収容空間20内の設定可能温度としては、特に限定されないが、例えば、-30℃~+30℃程度であることが好ましい。ただし、冷却装置3の構成や配置としては、収容空間20内を冷却することができれば、特に限定されない。
【0027】
電界形成装置4は、収容空間20内に電界を形成し、形成した電界を収容空間20に収容された対象物に作用させる機能を有する。このような電界形成装置4は、図2に示すように、コンテナ本体2の天井部25に埋設された電極5と、電極5に電界を形成するための駆動電圧(交番電圧Vac)を印加する電圧印加装置7と、を有する。
【0028】
電極5は、板状、特に平板状であり、天井部25のほぼ全域にわたって広く設けられている。これにより、収容空間20のより広い範囲に電界をむらなく分布させることができる。また、電極5は、天井部25の断熱材23に埋設されている。つまり、電極5は、断熱材23の内部に配置されている。このように、電極5を天井部25の断熱材23に埋設することにより、電極5が収容空間20内に突出することがないため、電極5に起因した収容空間20の容積(積載量)の減少を防ぐことができる。そのため、より多くの対象物を収容することのできるコンテナ1となる。また、電極5が断熱材23で絶縁され、電極5が収容空間20に露出しないため、例えば、電極5と対象物との接触を防ぐことができる。
【0029】
特に、電極5を板状とすることにより、電極5の厚さTが抑えられ、電極5を天井部25に埋設し易くなる。また、天井部25の断熱材23の厚肉化が抑制され、収容空間20の容量(積載量)の減少を効果的に抑制することができる。なお、電極5の厚さTとしては、特に限定されないが、例えば、2mm以下であることが好ましく、1mm以下であることがより好ましい。これにより、十分に薄い電極5となり、上述した効果がより顕著となる。このような電極5の構成材料としては、導電性を有していれば、特に限定されず、例えば、アルミニウム、銅等の各種金属材料を用いることができる。
【0030】
ただし、電極5の形状は、特に限定されない。例えば、電極5は、上述の板状よりもさらに薄いシート状(フィルム状)であってもよい。これにより、電極5の厚さTがさらに抑えられ、上述した効果がさらに顕著となる。この場合、例えば、電極5として、アルミニウム箔、銅箔等を用いることができる。なお、「板状」と「シート状(フィルム状)」との明確な区別はないが、例えば、ある程度硬質で、自重による変形(軽度な撓みは除く)が実質的に生じないものを「板状」とし、可撓性を有し、自重による変形が生じるものを「シート状(フィルム状)」として、区別することができる。
【0031】
また、図3に示すように、電極5と天井部25の外壁22との離間距離D1は、電極5と収容空間20(天井部25の内面251)との離間距離D2よりも大き。つまり、D1>D2である。これにより、電極5を断熱材23に埋設しつつ、離間距離D1をなるべく大きくすることができる。そのため、その分、電極5と天井部25の外壁22との間に形成される容量Cを小さくすることができる。その結果、電極5と天井部25の外壁22との間に分布する電界が形成され難くなると共に、収容空間20に分布する電界が形成され易くなる。そのため、収容空間20に収容された対象物に対して効率的かつ効果的に電界を作用させることができる。なお、特に限定されないが、離間距離D1、D2は、それぞれ、平均離間距離として求めることが好ましい。
【0032】
離間距離D1、D2の関係は、D1/D2≧2であることが好ましく、D1/D2≧4であることがより好ましく、D1/D2≧10であることがさらに好ましい。これにより、離間距離D1がより大きくなり、上述の効果がより顕著となる。つまり、電極5と天井部25の外壁22との間に分布する電界がより形成され難くなると共に、収容空間20に分布する電界がより形成され易くなる。そのため、収容空間20に収容された対象物に対してより効率的かつ効果的に電界を作用させることができる。ただし、離間距離D1、D2の関係は、これに限定されず、D1≦D2であってもよい。
【0033】
なお、電極5の構成としては、特に限定されない。例えば、図4に示すように、電極5は、波板状であってもよい。このように、電極5の表面に凹凸を形成することにより、例えば、平板状の電極5と比べて、電極5の表面積が大きくなる。そのため、収容空間20に分布する電界が形成され易くなる。また、例えば、図5に示すように、電極5に複数の貫通孔51が設けられていてもよい。貫通孔51は、電極5の全域に広がって規則的に設けられていてもよいし、不規則に設けられていてもよい。また、貫通孔51の形状は、特に限定されず、例えば、コンテナ1の幅方向または長さ方向に延びるスリット状であってもよい。
【0034】
また、電極5の設置数は、特に限定されず、例えば、後述する実施形態でも述べるように、2つ以上であってもよい。言い換えると、本実施形態の電極5を複数の電極に分割してもよい。また、電極5の設置場所は、特に限定されず、例えば、床部24であってもよいし、側壁部26であってもよい。電極5を床部24に埋設する場合には、床部24の断熱材23に電極5を埋設して、床部24から内壁21を取り除けばよいし、電極5を側壁部26に埋設する場合には、側壁部26の断熱材23に電極5を埋設して、側壁部26から内壁21を取り除けばよい。
【0035】
ただし、電極5は、本実施形態のように天井部25に埋設するのが好ましい。この第1の理由として、強度低下を抑えられる点がある。電極5を埋設する箇所からは内壁21を取り除く必要があり、コンテナ1の構成によっては、これがコンテナ本体2の強度低下に繋がるおそれがある。天井部25から内壁21を取り除いた場合は、床部24や側壁部26から内壁21を取り除いた場合と比較して、コンテナ本体2の強度低下が起こり難いと考えられる。さらに、第2の理由として、コンテナ1の損傷を抑えられる点がある。天井部25は、床部24や側壁部26と比べて圧倒的に、対象物、対象物を積載するコンテナパレット、コンテナパレットを収容空間20内に搬送するフォークリフト等との接触頻度が少ない。電極5を埋設した箇所では内壁21を取り除くため、断熱材23が収容空間20に剥き出しとなるため、上述の接触によって断熱材23や電極5の損傷が生じ得る。そのため、接触頻度が少ない天井部25に電極5を埋設することにより、コンテナ1の損傷をより効果的に抑制することができる。
【0036】
電圧印加装置7は、例えば、高圧トランスを備え、図3に示すように、電極5に電界形成用の駆動電圧である交番電圧Vacを印加する。電圧印加装置7が電極5に交番電圧Vacを印加すると、電極5とグランドに接続されたコンテナ本体2との間の電位差に基づいて収容空間20内に電界が形成される。この電界を収容空間20に収容された対象物に作用させることにより、対象物の鮮度を保つことができる。そのため、電界を形成しない場合と比べて対象物をより長期間保存することができる。特に、本実施形態では、電極5が天井部25のほぼ全域にわたって広く設けられているため、収容空間20の全域に効果的に電界を形成することができる。
【0037】
なお、交番電圧Vacの振幅としては、特に限定されないが、例えば、0.1kV~20kV程度とすることが好ましい。このような振幅の交番電圧Vacを電極5に印加することにより、収容空間20内に十分な強度の電界を形成することができ、上述した効果をより確実に発揮することができる。また、交番電圧Vacの周波数としては、特に限定されないが、例えば、5Hz~50kHz程度であることが好ましい。なお、交番電圧Vacの波形は、例えば、正弦波、矩形波、のこぎり波等どのような波形であってもよい。
【0038】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態のコンテナ1について、主に、前述した第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0039】
図6に示すように、本実施形態のコンテナ1では、天井部25も、床部24および側壁部26と同様に、内壁21と、外壁22と、内壁21と外壁22との間に設けられた断熱材23と、を有する。このように、天井部25にも内壁21を設けることにより、例えば、第1実施形態のような内壁21が存在しない構成と比べて、コンテナ1の強度を高めることができる。また、断熱材23が収容空間20に剥き出しになるのを防ぐことができ、断熱材23や電極5を保護することもできる。
【0040】
天井部25の内壁21は、絶縁性を有する。これにより、天井部25の内壁21がシールド層のように機能して、天井部25の内壁21によって収容空間20への電界形成が阻害されてしまうのを防ぐことができる。なお、天井部25の内壁21の構成材料としては、絶縁性を有していれば、特に限定されず、例えば、各種樹脂材料、各種ガラス材料、各種セラミックス等を用いることができる。この中でも、機械的強度の観点から各種セラミックスを用いることが好ましい。
【0041】
このような第2実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0042】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態のコンテナ1について、主に、前述した第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0043】
第3実施形態では、電圧印加装置7は、収容空間20内に形成された電界の状態を経時的に変化させる。収容空間20内の電界の状態を経時的に変化させることにより、例えば、収容空間20内の電界の状態を一定に保った場合と比較して、食品中に含まれる微生物の増殖(分裂)を抑制することができる。そのため、収容空間20内に収容された対象物の鮮度をより長く保つことができる。
【0044】
なお、収容空間20内の電界の状態を経時的に変化させることにより微生物の増殖が抑えられるのは、微生物がある程度その環境に慣れてから分裂を開始するという性質を有するためである。電界の状態を経時的に変化させることにより、微生物が現在の環境に慣れる前に異なる環境に切り替えることができ、これにより、微生物が環境に慣れるのを抑制でき、その結果として、微生物の増殖が抑えられる。なお、対象物中に含まれる微生物としては、例えば、食中毒の原因として考えられるサルモネラ、腸管出血性大腸菌(O157、O111等)、腸炎ビブリオ、ウェルシュ菌、黄色ブドウ球菌、ボツリヌス菌、セレウス菌、ノロウイルス等が挙げられる。
【0045】
ここで、「電界の状態を経時的に変化させる」とは、例えば、電極5に印加する交番電圧Vacの振幅および周波数の少なくとも一方を経時的に変化させることを言う。電界の状態を経時的に変化させる方法としては、特に限定されないが、例えば、以下に示す幾つかの方法が挙げられる。
【0046】
第1の方法として、図7に示すように、基準が0Vで、振幅および周波数が一定の交番電圧Vacを電極5に間欠的に印加する方法が挙げられる。図7では、電圧印加装置7は、交番電圧Vacを電極5に印加する第1状態と、交番電圧Vacを各電極5に印加しない第2状態とを交互に繰り返す。すなわち、収容空間20内に電界が形成されている第1状態と、電界が形成されていない第2状態とを交互に繰り返す。このように、第1状態と第2状態とを交互に繰り返すことにより、比較的簡単な制御で電界の状態を経時的に変化させることができる。
【0047】
第2の方法として、図8に示すように、電極5に印加する交番電圧Vacの振幅を経時的に変化させる方法が挙げられる。なお、交番電圧Vacの振幅を経時的に変化させるとは、交番電圧Vacの振幅を周期的に変化させてもよいし、不規則に変化させてもよいことを意味する。図8では、電圧印加装置7は、基準が0Vで、振幅がE1の交番電圧Vacを電極5に印加する第1状態と、基準が0Vで、振幅がE2(≠E1)の交番電圧Vacを電極5に印加する第2状態とを交互に繰り返す。第1状態と第2状態とを交互に繰り返すことにより、比較的簡単な制御で、電界の状態を経時的に変化させることができる。
【0048】
振幅E1は、振幅E2の2倍以上であることが好ましく、3倍以上であることがより好ましく、4倍以上であることがさらに好ましい。これにより、第1状態と第2状態とで収容空間20内の電界の状態を十分に異ならせることができ、微生物の環境への慣れを効果的に抑制することができる。
【0049】
第3の方法として、図9に示すように、電極5に印加する交番電圧Vacの周波数を経時的に変化させる方法が挙げられる。なお、交番電圧Vacの周波数を経時的に変化させるとは、交番電圧Vacの周波数を周期的に変化させてもよいし、不規則に変化させてもよいことを意味する。図9では、電圧印加装置7は、周波数がf1の交番電圧Vacを電極5に印加する第1状態と、周波数がf2(≠f1)の交番電圧Vacを電極5に印加する第2状態とを交互に繰り返す。第1状態と第2状態とを交互に繰り返すことにより、比較的簡単な制御で、電界の状態を経時的に変化させることができる。
【0050】
周波数f1は、周波数f2の10倍以上であることが好ましく、50倍以上であることがより好ましく、100倍以上であることがさらに好ましい。これにより、第1状態と第2状態とで収容空間20内の電界の状態を十分に異ならせることができ、微生物が環境に慣れてしまうことを効果的に抑制することができる。
【0051】
第4の方法として、図10に示すように、電極5に対して、基準が0Vで振幅および周波数が一定である交番電圧Vacを印加しつつ、定電圧であるバイアス電圧Vbを間欠的に印加する方法が挙げられる。図10では、電圧印加装置7は、交番電圧Vacとバイアス電圧Vbとの重畳電圧Vdを電極5に印加する第1状態と、交番電圧Vacを電極5に印加する第2状態とを交互に繰り返す。第1状態と第2状態とを交互に切り替えることにより、比較的簡単な制御で、電界の状態を経時的に変化させることができる。特に、この方法では、交番電圧Vacを一定に保つことができるため、交番電圧Vacの振幅や周波数を変更する第2、第3の方法と比べて、より簡単な制御となる。
【0052】
バイアス電圧Vbは、交番電圧Vacの振幅(最大値)よりも小さい。これにより、重畳電圧Vdを交流電圧とすることができる。そのため、第1状態において、より確実に収容空間20内に電界を形成することができる。また、バイアス電圧Vbは、交番電圧Vacの振幅の0.1倍~0.6倍であることが好ましく、0.2倍~0.5倍であることがより好ましく、0.3倍~0.4倍であることがさらに好ましい。これにより、重畳電圧Vdがプラス側にある時間とマイナス側にある時間とのバランスを取ることができ、すなわち、一方が他方に比べて過度に長くなることを防止でき、第1状態においてより効率的に収容空間20内に電界を形成することができる。また、第1状態と第2状態とで収容空間20内の電界の状態を十分に異ならせることができ、微生物が環境に慣れてしまうことを効果的に抑制することができる。
【0053】
以上、電界の状態を経時的に変化させる方法として、第1~第4の方法について説明した。第1~第4の方法のいずれにおいても、収容空間20内の温度や収容空間20内に収容された対象物の種類(食品に含まれる微生物の種類)によっても異なるが、電界の状態を1分以上60分以内の間隔で変化させることが好ましく、2分以上40分以内の間隔で変化させることが好ましく、3分以上30分以下の間隔で変化させることが好ましい。言い換えると、第1状態および第2状態の時間は、それぞれ、1分以上60分以下であることが好ましく、2分以上40分以下であることがより好ましく、3分以上30分以下であることがさらに好ましい。これにより、第1状態の時間および第2状態の時間がそれぞれ十分に短くなり、より確実に、微生物が現在の環境に慣れる前に別の環境に切り替えることができる。また、第1状態の時間および第2状態の時間がそれぞれ過度に短くなることを防止でき、微生物が新たな環境への対応を始める前に元の環境に戻ってしまうことを効果的に防止することができる。つまり、微生物の分裂速度よりも僅かに短い時間間隔で電界の状態を変化させることができる。これにより、微生物の分裂をより効果的に抑制することができる。なお、第1状態の時間と第2状態の時間とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0054】
ここで、微生物は、(1)10℃~40℃程度の温度帯において概ね10分~40分程度の分裂速度を有すること、(2)温度が低い程、分裂速度が低下すること、(3)10℃以下では一部の微生物を除いてほとんど増殖できないこと、(4)0℃以下ではほぼ全ての微生物が増殖できないこと、が知られている。そのため、上述したように、電界の状態を60分以内、好ましくは40分以内、より好ましくは30分以内の間隔で変化させることにより、微生物が環境に慣れるまでの時間(例えば10分程度)を加味すれば、微生物の分裂速度よりも十分に短い時間間隔で、電界の状態を変化させることができる。そのため、微生物の増殖をより確実に抑制することができる。
【0055】
また、第1~第4の方法のいずれにおいても、電界を周期的に変化させてもよいし、不規則に変化させてもよい。言い換えると、第1状態の時間および第2状態の時間がそれぞれ毎回ほぼ同じであってもよいし、第1状態の時間および第2状態の時間が各回でそれぞれ不規則に変化してもよい。電界を周期的に変化させることにより、電界を不規則に変化させる場合と比べて、電圧印加装置7の駆動制御が簡単となる。一方、電界を不規則に変化させることにより、電界を周期的に変化させる場合と比べて、微生物の増殖をより効果的に抑制できる可能性がある。推測ではあるが、電界を周期的に変化させた場合、微生物がその周期的な環境変化自体に慣れてしまうおそれが考えられる。このように、微生物が周期的な環境変化自体に慣れてしまうことがあったとしても、電界を不規則に変化させていれば、微生物の増殖をより効果的に抑制できる。
【0056】
なお、電界の状態を経時的に変化させる方法として、上記第1~第4の方法を適宜組み合わせてもよい。また、上述した第1~第4の方法では、いずれも、第1状態および第2状態を交互に繰り返しているが、これに限定されず、例えば、第1状態および第2状態と電界の状態が異なる少なくとも1つの状態(第3状態、第4状態、第5状態…)を有し、これら複数の状態を順番またはランダムに繰り返すようになっていてもよい。
【0057】
<第4実施形態>
次に、第4実施形態のコンテナ1について、主に、前述した第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0058】
図11に示すように、本実施形態のコンテナ1では、3つの電極5が天井部25の断熱材23に埋設されている。以下では、説明の便宜上、これら3つの電極5を電極5A、5B、5Cとも言う。
【0059】
3つの電極5A、5B、5Cは、コンテナ1の幅方向に並んで、互いに離間して配置されている。また、電極5A、5B、5Cは、それぞれ、コンテナ1の長手方向に延びる長手形状となっている。そして、これら電極5A、5B、5Cは、それぞれ独立して電圧印加装置7に接続されている。これにより、3つの電界形成系統を設けることができ、1つの電界形成系統が故障しても、他の2つの電界形成系統によって電界を形成することができる。これにより、故障によって電界を形成できなくなるリスクが低減され、高い信頼性を発揮することができる。
【0060】
また、電圧印加装置7は、電極5A、5B、5Cに互いに異なる電圧を印加することもできる。電極5A、5B、5Cに互いに異なる電圧を印加することにより、前述した第2実施形態と同様に、電界を周期的または不規則に変化させることができる。
【0061】
電極5A、5B、5Cに印加する電圧としては、特に限定されない。例えば、電極5Aに印加する電圧である第1交番電圧Vac1と、電極5Bに印加する電圧である第2交番電圧Vac2と、電極5Cに印加する電圧である第3交番電圧Vac3とで互いに周波数を異ならせてもよい。また、例えば、第1交番電圧Vac1と、第2交番電圧Vac2と、第3交番電圧Vac3とで周波数および振幅を異ならせてもよい。また、例えば、第1交番電圧Vac1と、第2交番電圧Vac2と、第3交番電圧Vac3とで互いに同じ波形を用い、これらの位相を互いにずらしてもよい。
【0062】
なお、本実施形態では互いに異なる電圧が印加される複数の電極として電極5A、5B、5Cを有するが、少なくとも2つの電極5を有し、これら電極に同一或いは互いに異なる電圧が印加される構成となっていれば、これに限定されない。例えば、電極5A、5B、5Cのいずれか1つを省略してもよいし、反対に、これらとは別に独立して電圧を印加することのできる少なくとも1つの電極を追加してもよい。
【0063】
また、本実施形態では電極5A、5B、5Cがコンテナ1の幅方向に並んで配置されているが、これらの配置としては、特に限定されない。例えば、電極5A、5B、5Cがコンテナ1の長手方向に並んで配置されていてもよい。また、電極5Aと電極5Bとがコンテナ1の幅方向に並んで配置され、電極5A、5Bと電極5Cとがコンテナ1の長手方向に並んで配置されていてもよい。
【0064】
<第5実施形態>
次に、第5実施形態のコンテナ1について、主に、前述した第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0065】
図12に示すように、本実施形態のコンテナ1では、2つの電極5が天井部25の断熱材23に埋設されている。以下では、説明の便宜上、これら2つの電極5を電極5A、5Bとも言う。そして、電圧印加装置7は、電極5Aに第1交番電圧Vac1を印加し、電極5Bに第1交番電圧Vac1と逆位相の第2交番電圧Vac2を印加する。図13に示すように、第1交番電圧Vac1と第2交番電圧Vac2とは、同じ波形であり、互いに周波数および振幅が同じである。
【0066】
コンテナ本体2は、グランドに接続されるため、第1交番電圧Vac1と第2交番電圧Vac2とを逆位相すなわち位相を180°ずらすことにより、電極5Aと電極5Bとの電位差ΔV1が、電極5Aとコンテナ本体2との電位差ΔV2および電極5Bとコンテナ本体2との電位差ΔV3よりも大きくなる。すなわち、ΔV1>ΔV2、ΔV1>ΔV3の関係となる。そのため、電極5Aとコンテナ本体2との間や、電極5Bとコンテナ本体2との間よりも、電極5Aと電極5Bとの間に電界が形成され易くなる。
【0067】
したがって、電界を収容室20のより広範囲にわたって形成することができ、収容室20内のどの位置に載置された対象物にも効率的に電界を作用させることができる。なお、前記「逆位相」とは、第1交番電圧Vac1と第2交番電圧Vac2との位相差が180°と一致している場合の他、技術上生じ得るわずかな誤差(例えば±10%)を有する場合も含む意味である。
【0068】
以上、本発明の収容庫について、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、各部の構成は、同様の機能を発揮する任意の構成のものに置換することができ、また、任意の構成を付加することもできる。また、前述した各実施形態を適宜組み合わせることもできる。
【符号の説明】
【0069】
1 コンテナ
2 コンテナ本体
20 収容空間
21 内壁
22 外壁
23 断熱材
24 床部
241 溝
25 天井部
251 内面
26 側壁部
27 骨組み
28 扉
29 扉
3 冷却装置
31 吸入部
32 冷却装置
33 吹出部
34 温度センサー
4 電界形成装置
5 電極
5A 電極
5B 電極
5C 電極
7 電圧印加装置
51 貫通孔
C 容量
D1 離間距離
D2 離間距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13