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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】収容庫および電極構造
(51)【国際特許分類】
   B65D 88/74 20060101AFI20240222BHJP
   F25D 11/00 20060101ALI20240222BHJP
   F25D 23/00 20060101ALI20240222BHJP
   A23L 3/26 20060101ALN20240222BHJP
【FI】
B65D88/74
F25D11/00 101D
F25D23/00 302Z
A23L3/26
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019217861
(22)【出願日】2019-12-02
(65)【公開番号】P2021088370
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】509317531
【氏名又は名称】株式会社MARS Company
(74)【代理人】
【識別番号】100144886
【弁理士】
【氏名又は名称】大坪 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】大野 正樹
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-273622(JP,A)
【文献】特許第6499366(JP,B1)
【文献】中国特許出願公開第108657666(CN,A)
【文献】国際公開第2015/122070(WO,A1)
【文献】特開2007-212046(JP,A)
【文献】国際公開第98/041115(WO,A1)
【文献】特開2014-159896(JP,A)
【文献】国際公開第2020/115923(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 88/74
F25D 11/00
F25D 23/00
A23L 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を収容する収容室を有する収容庫本体と、
孔が形成されていない板状をなし、前記収容室内に電界を形成する電極と、
前記収容室内において前記収容庫本体に固定され、前記電極を支持する支持部と、を有し、
前記支持部は、前記収容庫本体の天井部に固定された固定部と、
前記固定部から前記収容室内に向けて突出し、前記天井部側に位置する上面に前記電極が載置された突出部と、を有し、
前記突出部と前記収容庫本体との離間距離は、前記固定部と前記収容庫本体との離間距離よりも大きく、
前記支持部は、前記収容室の天井部の全域にわたって配置され、
前記電極は、前記突出部の全域にわたって配置されていることを特徴とする収容庫。
【請求項2】
前記突出部は、前記天井部に沿って設けられた平板状の基部を有し、
前記電極は、前記基部の全域にわたって配置されている請求項1に記載の収容庫。
【請求項3】
前記基部は、前記電極を位置決めする位置決め部を有する請求項2に記載の収容庫。
【請求項4】
前記位置決め部は、前記電極が配置される凹部を有する請求項3に記載の収容庫。
【請求項5】
前記支持部との間に前記電極を挟み込むように設けられた被覆部を有する請求項1から4のいずれか1項に記載の収容庫。
【請求項6】
前記被覆部は、前記支持部と前記収容庫本体との間の空隙を埋めるように設けられている請求項5に記載の収容庫。
【請求項7】
前記支持部は、絶縁性を有する請求項1から6のいずれか1項に記載の収容庫。
【請求項8】
対象物を収容する収容室を有する収容庫本体に設置される電極構造であって、
孔が形成されていない板状をなし、前記収容室内に電界を形成する電極と、
前記収容室内において前記収容庫本体に固定され、前記電極を支持する支持部と、を有し、
前記支持部は、前記収容庫本体の天井部に固定される固定部と、
前記固定部が前記収容庫本体に固定された状態で、前記固定部から前記収容室内に向けて突出し、前記天井部側に位置する上面に前記電極が載置された突出部と、を有し、
前記突出部と前記収容庫本体との離間距離が、前記固定部と前記収容庫本体との離間距離よりも大きく、
前記支持部は、前記収容室の天井部の全域にわたって配置され、
前記電極は、前記突出部の全域にわたって配置されることを特徴とする電極構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収容庫および電極構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、コンテナ(収容庫)内に電界を形成し、この電界形成雰囲気内において生鮮食品を保存することにより、電界を形成しない場合と比べて生鮮食品の鮮度を長く保つことができることが知られている。特許文献1のコンテナでは、コンテナ内に電界を形成するための電極として、多数の小さな穴が規則的に形成された板状の電極が用いられ、この電極がコンテナ内の床面、側面または天井面に設けられた構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-250773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、電界を形成するための電極が平板状であるため、電極とコンテナの内面との離間距離が小さくなり易い。そのため、電極とコンテナの内面との間に電界が形成され易く、電界をコンテナ内の生鮮食品に効率的に作用させることが困難である。
【0005】
本発明の目的は、収容された対象物(特に、生鮮食品)に対して効率的に電界を作用させ、対象物の鮮度をより長く保つことができる収容庫および電極構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
【0007】
(1) 対象物を収容する収容室を有する収容庫本体と、
前記収容室内に電界を形成する電極と、
前記収容室内において前記収容庫本体に固定され、前記電極を支持する支持部と、を有し、
前記支持部は、前記収容庫本体に固定された固定部と、
前記固定部から前記収容室内に向けて突出し、前記電極が配置された突出部と、を有し、
前記突出部と前記収容庫本体との離間距離は、前記固定部と前記収容庫本体との離間距離よりも大きいことを特徴とする収容庫。
【0008】
(2) 前記支持部は、前記収容室の天井部に固定されている上記(1)に記載の収容庫。
【0009】
(3) 前記突出部は、前記天井部に沿って設けられた平板状の基部を有し、
前記電極は、前記基部に配置されている上記(2)に記載の収容庫。
【0010】
(4) 前記基部は、前記電極を位置決めする位置決め部を有する上記(3)に記載の収容庫。
【0011】
(5) 前記位置決め部は、前記電極が配置される凹部を有する上記(4)に記載の収容庫。
【0012】
(6) 前記支持部との間に前記電極を挟み込むように設けられた被覆部を有する上記(1)から(5)のいずれかに記載の収容庫。
【0013】
(7) 前記被覆部は、前記支持部と前記収容庫本体との間の空隙を埋めるように設けられている上記(6)に記載の収容庫。
【0014】
(8) 前記支持部は、絶縁性を有する上記(1)から(7)のいずれかに記載の収容庫。
【0015】
(9) 対象物を収容する収容室を有する収容庫本体に設置される電極構造であって、
前記収容室内に電界を形成する電極と、
前記収容室内において前記収容庫本体に固定され、前記電極を支持する支持部と、を有し、
前記支持部は、前記収容庫本体に固定される固定部と、
前記固定部が前記収容庫本体に固定された状態で、前記固定部から前記収容室内に向けて突出し、前記電極が配置された突出部と、を有し、
前記突出部と前記収容庫本体の離間距離が、前記固定部と前記収容庫本体との離間距離よりも大きくなるように設置されることを特徴とする電極構造。
【発明の効果】
【0016】
このような本発明によれば、収容庫本体と電極との離間距離を大きくすることができるため、収容室内に効果的に電界を形成することができる。そのため、収容室に収容された対象物(特に、生鮮食品)に対して効率的に電界を作用させることができ、対象物の鮮度をより長く保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態に係るコンテナの全体を示す斜視図である。
図2】コンテナ本体の内部を示す断面図である。
図3】電極構造を示す断面図である。
図4図3に示す電極構造の変形例を示す断面図である。
図5図3に示す電極構造の変形例を示す断面図である。
図6図3に示す電極構造の変形例を示す断面図である。
図7図3に示す電極構造の変形例を示す断面図である。
図8図3に示す電極構造の変形例を示す断面図である。
図9】電極構造の効果を説明するための断面図である。
図10】第2実施形態に係るコンテナが有する電極構造を示す断面図である。
図11図10に示す電極構造の変形例を示す断面図である。
図12】第3実施形態に係るコンテナが有する電極構造を示す断面図である。
図13】第4実施形態に係るコンテナの電極に印加する電圧を示す図である。
図14】第4実施形態に係るコンテナの電極に印加する電圧を示す図である。
図15】第4実施形態に係るコンテナの電極に印加する電圧を示す図である。
図16】第4実施形態に係るコンテナの電極に印加する電圧を示す図である。
図17】第5実施形態に係るコンテナ本体の内部を示す断面図である。
図18図17に示す電極構造の変形例を示す断面図である。
図19】第6実施形態に係るコンテナ本体の内部を示す断面図である。
図20】電極に印加する電圧を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
図1に示すコンテナ1(収容庫)は、トラック、船舶、飛行機等に搭載される移動型コンテナである。特に、本実施形態のコンテナ1は、冷却機能を備えたリーファーコンテナであり、対象物Xを収容する収容室20を有するコンテナ本体2(収容庫本体)と、収容室20内を冷却する冷却装置3と、収容室20に電界を形成する電界形成装置4とを有する。コンテナ1は、例えば、国際規格(ISO規格)に準拠する構成であり、全長が20フィートの「20フィートコンテナ」または全長が40フィートの「40フィートコンテナ」である。このように、国際規格に準拠する構成とすることにより、利便性および汎用性に優れ、さらには十分な信頼性を有するコンテナ1となる。
【0019】
ただし、コンテナ1は、必ずしも国際規格(ISO規格)に準拠する必要はなく、コンテナ1の形状は、特に限定されない。また、コンテナ1は、移動型コンテナではなく、店舗、倉庫等に固定して用いられる固定型コンテナであってもよい。また、例えば、トラック等の荷台に据え付けられたものであってもよい。また、収容庫としては、コンテナ1に限定されず、例えば、冷却倉庫、冷蔵庫等にも適用可能である。
【0020】
また、対象物Xとしては、特に限定されず、例えば、魚、エビ、カニ、イカ、タコ、貝等の魚介類およびこれらの加工食品、イチゴ、リンゴ、バナナ、みかん、ぶどう、梨等の果物およびこれらの加工食品、キャベツ、レタス、キュウリ、トマト等の野菜およびこれらの加工食品、牛肉、豚肉、鶏肉、馬肉等の食肉等の生鮮食品、牛乳、チーズ、ヨーグルト等の各種乳製品、各種臓器、特に移植用の臓器等が挙げられる。これらの中でも、対象物Xとしては、特に、生鮮食品であることが好ましい。なお、これら対象物Xは、冷蔵状態、すなわち、非冷凍(非凍結)で冷却保存されることが好ましい。
【0021】
コンテナ本体2は、図2中の奥行き方向に延びた略直方体形状であり、その内部には対象物Xを収容する収容室20が設けられている。また、図2に示すように、コンテナ本体2は、内壁21と、外壁22と、内壁21と外壁22との間に設けられた絶縁性の断熱材23とを有する。これにより、収容室20が十分に断熱されて、外気温の影響を受け難い構成となる。そのため、冷却装置3によって収容室20内を効率的に冷却することができる。また、コンテナ1の使用時には、コンテナ本体2は、グランド(定電位)に接続される。なお、内壁21と断熱材23との間、外壁22と断熱材23との間、内壁21の内側または外壁22の外側に、図示しない部材が介在していてもよい。また、この部材の機能も特に限定されない。
【0022】
ここで、内壁21および外壁22の構成材料としては、特に限定されないが、それぞれ、ステンレス鋼、鉄、アルミニウム等の各種金属を用いることができる。これにより、堅牢で頑丈なコンテナ本体2が得られる。また、断熱材23としては、特に限定されないが、例えば、グラスウール、セルロースファイバー、発泡体(発泡ポリウレタン、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン等)等を用いることができる。これにより、優れた断熱性を発揮することができる。
【0023】
また、コンテナ本体2は、鉛直方向下側に位置する床部24と、床部24の上側に位置し、床部24と対向する天井部25と、床部24から立設し、床部24と天井部25とを接続する側壁部26とを有し、これらに囲まれることにより収容室20が形成されている。なお、床部24、天井部25および側壁部26は、骨組み27を介して互いに接続、固定されている。ただし、これらの接続、固定方法は、特に限定されず、例えば、互いの外壁同士、内壁同士を溶接することより固定してもよい。
【0024】
また、コンテナ本体2の図1中手前側の端部には観音開き型の一対の扉28、29が設けられている。この扉28、29を介して、収容室20への対象物Xの搬入または収容室20からの対象物Xの搬出が可能となる。ただし、扉28、29の配置や構成は、特に限定されない。一方、コンテナ本体2の図1中奥側の端部には冷却装置3が設けられている。なお、本実施形態のコンテナ1では、コンテナ本体2の図1中奥側の端部に位置する壁が冷却装置3のパネルで構成されているが、これに限定されず、例えば、コンテナ本体2の側壁部26で構成されていてもよい。
【0025】
図2に示すように、冷却装置3は、収容室20の扉28、29側から見て奥側の端部に設けられており、収容室20内の空気を吸入する吸入部31と、吸入部31から吸入した空気を冷却する冷却装置32と、冷却装置32で冷却した空気(冷気)を収容室20内に吹き出す吹出部33と、収容室20内の温度を検出する温度センサー34と、を有する。
【0026】
吹出部33は、収容室20の床部24付近に設けられ、床部24に向けて冷気を吹き出す。吹出部33から吹き出した冷気は、床部24にコンテナ本体2の長手方向に沿って形成された複数の溝241に沿って流れ、扉28、29にぶつかって、或いはその手前で上昇し、収容室20の天井部25に達する。一方、吸入部31は、天井部25付近に設けられ、床部24から天井部25或いはその付近まで上昇してきた冷気を吸入する。また、温度センサー34で検出される収容室20内の温度が目標温度となるように冷気の温度や風量が制御される。
【0027】
このような構成によれば、収容室20の全域にわたって効率的に冷気を循環させることができ、かつ、収容室20内の温度を目標温度に維持することができる。そのため、収容室20に収容された対象物Xをむらなく適切に冷却することができる。収容室20内の設定可能温度としては、特に限定されないが、例えば、-30℃~+30℃程度であることが好ましい。ただし、冷却装置3の構成や配置としては、収容室20内を冷却することができれば、特に限定されない。
【0028】
電界形成装置4は、収容室20内に電界を形成し、形成した電界を収容室20に収容された対象物Xに作用させる機能を有する。このような電界形成装置4は、図2に示すように、コンテナ本体2の天井部25に設置された支持部6と、支持部6に支持された電極5と、電極5に電界を形成するための駆動電圧(交番電圧Vac)を印加する電圧印加装置7と、を有する。なお、本実施形態では、これらのうち、支持部6と電極5とで本発明の電極構造10が構成されている。
【0029】
支持部6は、天井部25のほぼ全域にわたって広く設けられている。また、支持部6は、天井部25から下側に窪んだ略「Ω」状の形状となっている。支持部6は、例えば、板状の部材を変形させて形成することができる。また、支持部6は、射出成型によって形成することもできる。このような支持部6は、図2および図3に示すように、コンテナ1の幅方向に離間して配置された一対の固定部61、62と、固定部61、62の間に設けられ、固定部61、62から下方すなわち収容室20内に向けて突出した突出部63とを有する。そして、支持部6は、固定部61、62において天井部25に固定されている。天井部25への固定方法は、特に限定されず、例えば、ネジ止め、溶着、接着剤等で固定することができる。
【0030】
図3に示すように、突出部63は、幅方向両端部が上側に向けて屈曲した凹形状をなし、幅方向中央部に位置する基部631と、基部631と固定部61との間に位置し、これらを接続する接続部632と、基部631と固定部62との間に位置し、これらを接続する接続部633とを有する。基部631は、平板状をなし、天井部25の内面である天井面251と略平行に設けられている。そして、この基部631に電極5が支持されている。また、基部631は、固定部61、62よりも下方側に位置し、基部631と天井面251との間には空隙Gが設けられている。また、突出部63とコンテナ本体2との離間距離D1は、固定部61、62とコンテナ本体2との離間距離D2よりも大きい。つまり、D1>D2の関係となっている。なお、離間距離D1は、具体的には、突出部63の基部631と支持部6が固定されている天井部25の内面である天井面251との離間距離であり、離間距離D2は、具体的には、固定部61、62と支持部6が固定されている天井部25の内面である天井面251との離間距離である。また、図示の構成では、固定部61、62と天井面251とが接触しているため、離間距離D2は、0(ゼロ)である。
【0031】
なお、突出部63の形状としては、特に限定されず、例えば、図4に示すように、接続部632、633がアーチ状に湾曲していてもよいし、図5に示すように、突出部63全体が略「V」字状に湾曲していてもよい。
【0032】
また、図3に示すように、基部631は、電極5の位置決めを行うための位置決め部64を有する。位置決め部64は、基部631の上面に開口し、電極5の平面視形状に対応する平面視形状を有する凹部641で構成され、この凹部641に電極5が設けられている。これにより、電極5を支持部6の正しい位置に、簡単に設置することができる。また、位置決め部64の構成が簡単なものとなり、例えば、支持部6の製造コストを削減することができる。ただし、位置決め部64の構成としては、その機能を発揮することができれば、特に限定されず、例えば、図6に示すように、基部631から上側に突出し、電極5を囲む枠状の突起642で構成されていてもよい。この場合、突起642は、一部が欠損していてもよい。また、位置決め部64は、省略してもよい。
【0033】
また、支持部6は、絶縁性を有する。これにより、支持部6を介した電極5とコンテナ本体2との電気的な接続を防ぐことができる。支持部6の構成材料としては、絶縁性を有していれば、特に限定されないが、例えば、各種樹脂材料、各種ガラス材料、各種セラミックス等を用いることができる。この中でも、機械的強度が比較的高いこと、ある程度の弾性を有すること、比較的安価であることら、各種樹脂材料を用いることが好ましい。なお、支持部6は、電極5とコンテナ本体2との電気的な接続を防ぐことができれば、例えば、その一部のみが絶縁性を有する構成であってもよい。また、例えば、支持部6とコンテナ本体2との間に碍子等の絶縁体を介在させる場合には、支持部6を導電性材料で構成してもよい。この場合は、支持部6は、電極5と共に電極としての機能を発揮する。ただし、碍子等の絶縁体を介在させれば、その分、支持部6が収容室20内に突出してしまうため、収容室20の容積(積載量)が減少する。そのため、収容室20の容積をより大きく確保するためにも、本実施形態のように、支持部6を天井面251と接触させて設置することが好ましい。
【0034】
基部631に配置された電極5は、板状、特に平板状であり、基部631のほぼ全域にわたって広く設けられている。これにより、収容室20のより広い範囲に電界をむらなく分布させることができる。また、基部631が下方から支えるようにして電極5を支持するため、電極5と対象物Xとの間に基部631が介在する。そのため、支持部6によって、電極5と対象物Xとの接触を防ぐこともできる。
【0035】
特に、電極5を板状とすることにより、電極5の厚さTが抑えられ、離間距離D1を大きくしつつ、支持部6の収容室20内への突出の程度を小さく抑えることができる。そのため、収容室20の容積(積載量)の減少を効果的に抑制することができると共に、後述するように、収容室20内に分布する電界が形成され易くなる。電極5の厚さTとしては、特に限定されないが、例えば、2mm以下であることが好ましく、1mm以下であることがより好ましい。これにより、十分に薄い電極5となり、上述した効果が顕著となる。なお、電極5の構成材料としては、導電性を有していれば、特に限定されず、例えば、アルミニウム、銅等の各種金属材料を用いることができる。
【0036】
ただし、電極5の形状は、特に限定されない。例えば、電極5は、上述の板状よりもさらに薄いシート状(フィルム状)であってもよい。これにより、電極5の厚さTがさらに抑えられ、上述した効果がさらに顕著となる。シート状の電極5としては、例えば、アルミニウム箔、銅箔等の各種金属箔を用いることができる。なお、「板状」と「シート状」との明確な区別はないが、例えば、ある程度硬質で、自重による変形(軽度な撓みは除く)が実質的に生じないものを「板状」とし、可撓性を有し、自重による変形が生じるものを「シート状」として、区別することができる。
【0037】
また、例えば、図7に示すように、電極5が基部631のみならず、接続部632、633にまで広がって設けられていてもよい。これにより、電極5の面積をより大きくすることができる。
【0038】
また、例えば、図8に示すように、電極5は、波板状であってもよい。このように、電極5の表面に凹凸を形成することにより、例えば、平板状の電極5と比べて、電極5の表面積が大きくなる。そのため、収容室20に分布する電界が形成され易くなる。また、例えば、電極5に、電極5を厚さ方向に貫通する複数の貫通孔が設けられていてもよい。この場合、貫通孔は、電極5の全域に広がって規則的に設けられていてもよいし、不規則に設けられていてもよい。また、貫通孔の形状は、特に限定されず、例えば、円形、四角形、三角形であってもよいし、コンテナ1の幅方向または長さ方向に延びるスリット状であってもよい。
【0039】
また、電極5の設置数は、特に限定されず、例えば、後述する実施形態でも述べるように、2つ以上であってもよい。言い換えると、本実施形態の電極5を複数の電極に分割してもよい。この場合、複数の電極5は、例えば、コンテナ1の幅方向に並んで配置されていてもよいし、コンテナ1の長手方向に並んで配置されていてもよいし、長手方向および幅方向に行列状に並んで配置されていてもよい。また、電極5の設置場所、すなわち、支持部6を固定する場所は、特に限定されず、例えば、床部24であってもよいし、側壁部26であってもよい。ただし、電極5は、本実施形態のように天井部25に設置するのが好ましい。この理由として、電極5や支持部6の損傷を抑えられる点がある。天井部25は、床部24や側壁部26と比べて、対象物X、対象物Xを積載するコンテナパレット、コンテナパレットを収容室20内に搬送するフォークリフト等との接触頻度が少ない。そのため、天井部25に電極5を設置することにより、電極5や支持部6の損傷を効果的に抑制することができる。
【0040】
以上のような構成の電極構造10は、支持部6に電極5を設置した状態で、天井部25に固定される。つまり、まず、電極5を支持部6に設置し、次いで、支持部6を天井部25に固定する。このような方法によれば、簡単に、電極5を天井部25に設置することができる。そのため、コンテナ1の製造コストの削減を図ることができる。ただし、これに限定されず、例えば、支持部6を天井部25に固定した後に、支持部6に電極5を設置してもよい。
【0041】
電圧印加装置7は、例えば、高圧トランスを備え、図3に示すように、電極5に電界形成用の交番電圧Vacを印加する。電極5に交番電圧Vacを印加することにより、電極5とグランドに接続されたコンテナ本体2との間の電位差に基づいて収容室20内に電界が形成される。この電界を収容室20に収容された対象物Xに作用させることにより、対象物Xの鮮度を保つことができる。そのため、電界を形成しない場合と比べて対象物Xをより長期間保存することができる。特に、本実施形態では、電極5が天井面251のほぼ全域に広がって設けられているため、収容室20の全域に効果的に電界を形成することができる。
【0042】
交番電圧Vacの振幅としては、特に限定されないが、例えば、0.1kV~20kV程度とすることが好ましい。このような振幅の交番電圧Vacを電極5に印加することにより、収容室20内に十分な強度の電界を形成することができ、上述した効果をより確実に発揮することができる。また、交番電圧Vacの周波数としては、特に限定されないが、例えば、5Hz~50kHz程度とすることが好ましい。なお、交番電圧Vacの波形は、例えば、正弦波、矩形波、のこぎり波等どのような波形であってもよい。
【0043】
ここで、前述した電極5の構成によれば、固定部61、62に対して突出部63の基部631が下側に位置し、離間距離D1、D2の関係がD1>D2となっているため、例えば、図9中の鎖線L1で示すような固定部61、62の高さに合わせた従来型の平板電極50Aと比べて、基部631と天井面251との間に絶縁性の高い空気層(空隙G)を十分な厚さで形成することができる。そのため、従来と比べて、電極5と天井面251との間に形成される容量Cが小さくなる。その結果、基部631と天井部25との間に分布する電界が形成され難くなる一方、基部631と床部24や側壁部26との間に分布する電界が形成され易くなる。そのため、収容室20に収容された対象物Xに対して効率的かつ効果的に電界を作用させることができる。また、D1>D2となっているため、例えば、図9中の鎖線L2で示すような基部631の高さに合わせた従来型の平板電極50Bと比べて、収容室20の容積が大きくなり、その分、対象物Xの積載量が増加する。そのため、1つのコンテナ1でより多くの対象物Xを搬送でき、搬送コストを抑えることができる。
【0044】
なお、離間距離D1としては、特に限定されないが、例えば、3cm~10cm程度であることが好ましく、4cm~8cmであることがより好ましい。このような下限値によれば、離間距離D1を十分に大きくすることができ、上述した効果がより顕著となる。反対に、このような上限値によれば、離間距離D1が過度に大きくなることによる収容室20の容積の減少、すなわち、対象物Xの最大積載量の減少を抑制することができる。一方、離間距離D2としては、D1>D2の関係を満足していれば特に限定されないが、例えば、1cm以下であることが好ましく、0.5cm以下であることがより好ましく、本実施形態のように0(ゼロ)であることがさらに好ましい。これにより、離間距離D2を十分に小さくすることができ、上述した効果をより顕著に発揮することができる。
【0045】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態のコンテナ1について、主に、前述した第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0046】
図10に示すように、本実施形態のコンテナ1は、支持部6との間に電極5を挟み込むようにして設けられた被覆部8を有する。そして、支持部6と電極5と被覆部8とで電極構造10が構成されている。
【0047】
電極5は、支持部6と被覆部8とによって、その全域が覆われている。このような構成によれば、電極5が収容室20内に剥き出しにならず、電極5と対象物Xとの接触を効果的に防ぐことができる。そのため、コンテナ1の安全性が向上する。なお、被覆部8は、ネジ止め等によって支持部6に固定されている。ただし、これに限定されず、被覆部8は、ネジ止め等によって天井部25に固定されており、支持部6とは当接しているだけであってもよい。
【0048】
被覆部8は、支持部6と天井面251との間に位置している。言い換えると、被覆部8は、空隙G内に設けられている。この領域は、その大きさや位置の問題から、もともと対象物Xを収容する空間として用いることが困難な領域である。そのため、この領域に被覆部8を配置しても収容室20の容積(積載量)の低下にはつながらない。したがって、収容室20の容積を減らすことなく、コンテナ1の安全性を高めることができる。また、被覆部8を設けることにより、支持部6を補強することができる。そのため、支持部6の損傷、破損等を抑制することができる。
【0049】
特に、本実施形態では、被覆部8は、支持部6と天井面251との間、すなわち、空隙Gの全域を埋めるように設けられている。これにより、支持部6をさらに効果的に補強することができる。また、空隙Gを被覆部8で埋めることにより、冷気が空隙G内に侵入できなくなる。空隙G内を流れる冷気は、対象物Xとの間に支持部6が介在するため、支持部6よりも下方を流れる冷気と比べて対象物Xの冷却に寄与し難い。そこで、空隙Gを被覆部8で埋めて、冷気を空隙G内に侵入できなくすることにより、より多くの冷気を支持部6の下方へ導いて対象物Xの冷却に用いることができる。したがって、対象物Xの冷却効率が高まる。また、冷却効率が向上する分、冷却ムラを低減することができ、さらには、コンテナ1の省電力駆動を図ることもできる。
【0050】
ただし、これに限定されず、被覆部8は、例えば、図11に示すように、空隙Gを埋めなくてもよい。このような構成によれば、本実施形態と比べて、被覆部8の重量を抑えることができる。
【0051】
このような被覆部8は、絶縁性を有する。これにより、被覆部8を介した電極5とコンテナ本体2との電気的な接続を防ぐことができる。被覆部8の構成材料としては、絶縁性を有していれば、特に限定されないが、例えば、各種樹脂材料、各種ガラス材料、各種セラミックス等を用いることができる。この中でも、機械的強度が比較的高いこと、軽量であること、比較的安価であることから、各種樹脂材料を用いることが好ましい。なお、被覆部8は、電極5とコンテナ本体2との電気的な接続を防ぐことができれば、例えば、その一部のみが絶縁性を有する構成であってもよい。
【0052】
このような第2実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0053】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態のコンテナ1について、主に、前述した第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0054】
図12に示すように、本実施形態のコンテナ1は、支持部6と天井部25との間の空隙G内への冷気の流入を防ぐ防風部9を有する。防風部9は、支持部6の扉28、29側の端部に設けられた第1壁部91と、冷却装置3側の端部に設けられた第2壁部92とを有し、これら第1、第2壁部91、92によって、空隙Gへの冷気の流入を防いでいる。このような構成によっても、前述した第2実施形態と同様に、冷気が空隙G内に侵入できなくなる。そのため、より多くの冷気を支持部6の下方へ導いて対象物Xの冷却に用いることができる。したがって、対象物Xの冷却効率が高まる。また、冷却効率が向上する分、冷却ムラを低減することができ、さらには、コンテナ1の省電力駆動を図ることもできる。また、このような構成によれば、支持部6と、天井部25と、第1、第2壁部91、92とによって電極5が覆われるため、電極5と対象物Xとの接触を防ぐこともできる。
【0055】
このような第3実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0056】
<第4実施形態>
次に、第4実施形態のコンテナ1について、主に、前述した第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0057】
第4実施形態では、電圧印加装置7は、収容室20内に形成された電界の状態を経時的に変化させる。収容室20内の電界の状態を経時的に変化させることにより、例えば、収容室20内の電界の状態を一定に保った場合と比較して、食品中に含まれる微生物の増殖(分裂)を抑制することができる。そのため、収容室20内に収容された対象物Xの鮮度をより長く保つことができる。
【0058】
なお、収容室20内の電界の状態を経時的に変化させることにより微生物の増殖が抑えられるのは、微生物がある程度その環境に慣れてから分裂を開始するという性質を有するためである。電界の状態を経時的に変化させることにより、微生物が現在の環境に慣れる前に異なる環境に切り替えることができ、これにより、微生物が環境に慣れるのを抑制でき、その結果として、微生物の増殖が抑えられる。なお、対象物X中に含まれる微生物としては、例えば、食中毒の原因として考えられるサルモネラ、腸管出血性大腸菌(O157、O111等)、腸炎ビブリオ、ウェルシュ菌、黄色ブドウ球菌、ボツリヌス菌、セレウス菌、ノロウイルス等が挙げられる。
【0059】
ここで、「電界の状態を経時的に変化させる」とは、例えば、電極5に印加する交番電圧Vacの振幅および周波数の少なくとも一方を経時的に変化させることを言う。電界の状態を経時的に変化させる方法としては、特に限定されないが、例えば、以下に示す幾つかの方法が挙げられる。
【0060】
第1の方法として、図13に示すように、基準が0Vで、振幅および周波数が一定の交番電圧Vacを電極5に間欠的に印加する方法が挙げられる。図13では、電圧印加装置7は、交番電圧Vacを電極5に印加する第1状態と、交番電圧Vacを各電極5に印加しない第2状態とを交互に繰り返す。すなわち、収容室20内に電界が形成されている第1状態と、電界が形成されていない第2状態とを交互に繰り返す。このように、第1状態と第2状態とを交互に繰り返すことにより、比較的簡単な制御で電界の状態を経時的に変化させることができる。
【0061】
第2の方法として、図14に示すように、電極5に印加する交番電圧Vacの振幅を経時的に変化させる方法が挙げられる。なお、交番電圧Vacの振幅を経時的に変化させるとは、交番電圧Vacの振幅を周期的に変化させてもよいし、不規則に変化させてもよいことを意味する。図14では、電圧印加装置7は、基準が0Vで、振幅がE1の交番電圧Vacを電極5に印加する第1状態と、基準が0Vで、振幅がE2(≠E1)の交番電圧Vacを電極5に印加する第2状態とを交互に繰り返す。第1状態と第2状態とを交互に繰り返すことにより、比較的簡単な制御で、電界の状態を経時的に変化させることができる。
【0062】
振幅E1は、振幅E2の2倍以上であることが好ましく、3倍以上であることがより好ましく、4倍以上であることがさらに好ましい。これにより、第1状態と第2状態とで収容室20内の電界の状態を十分に異ならせることができ、微生物の環境への慣れを効果的に抑制することができる。
【0063】
第3の方法として、図15に示すように、電極5に印加する交番電圧Vacの周波数を経時的に変化させる方法が挙げられる。なお、交番電圧Vacの周波数を経時的に変化させるとは、交番電圧Vacの周波数を周期的に変化させてもよいし、不規則に変化させてもよいことを意味する。図15では、電圧印加装置7は、周波数がf1の交番電圧Vacを電極5に印加する第1状態と、周波数がf2(≠f1)の交番電圧Vacを電極5に印加する第2状態とを交互に繰り返す。第1状態と第2状態とを交互に繰り返すことにより、比較的簡単な制御で、電界の状態を経時的に変化させることができる。
【0064】
周波数f1は、周波数f2の10倍以上であることが好ましく、50倍以上であることがより好ましく、100倍以上であることがさらに好ましい。これにより、第1状態と第2状態とで収容室20内の電界の状態を十分に異ならせることができ、微生物が環境に慣れてしまうことを効果的に抑制することができる。
【0065】
第4の方法として、図16に示すように、電極5に対して、基準が0Vで振幅および周波数が一定である交番電圧Vacを印加しつつ、定電圧であるバイアス電圧Vbを間欠的に印加する方法が挙げられる。図16では、電圧印加装置7は、交番電圧Vacとバイアス電圧Vbとの重畳電圧Vdを電極5に印加する第1状態と、交番電圧Vacを電極5に印加する第2状態とを交互に繰り返す。第1状態と第2状態とを交互に切り替えることにより、比較的簡単な制御で、電界の状態を経時的に変化させることができる。特に、この方法では、交番電圧Vacを一定に保つことができるため、交番電圧Vacの振幅や周波数を変更する第2、第3の方法と比べて、より簡単な制御となる。
【0066】
バイアス電圧Vbは、交番電圧Vacの振幅(最大値)よりも小さい。これにより、重畳電圧Vdを交流電圧とすることができる。そのため、第1状態において、より確実に収容室20内に電界を形成することができる。また、バイアス電圧Vbは、交番電圧Vacの振幅の0.1倍~0.6倍であることが好ましく、0.2倍~0.5倍であることがより好ましく、0.3倍~0.4倍であることがさらに好ましい。これにより、重畳電圧Vdがプラス側にある時間とマイナス側にある時間とのバランスを取ることができ、すなわち、一方が他方に比べて過度に長くなることを防止でき、第1状態においてより効率的に収容室20内に電界を形成することができる。また、第1状態と第2状態とで収容室20内の電界の状態を十分に異ならせることができ、微生物が環境に慣れてしまうことを効果的に抑制することができる。
【0067】
以上、電界の状態を経時的に変化させる方法として、第1~第4の方法について説明した。第1~第4の方法のいずれにおいても、収容室20内の温度や収容室20内に収容された対象物Xの種類(食品に含まれる微生物の種類)によっても異なるが、電界の状態を1分以上60分以内の間隔で変化させることが好ましく、2分以上40分以内の間隔で変化させることが好ましく、3分以上30分以下の間隔で変化させることが好ましい。言い換えると、第1状態および第2状態の時間は、それぞれ、1分以上60分以下であることが好ましく、2分以上40分以下であることがより好ましく、3分以上30分以下であることがさらに好ましい。これにより、第1状態の時間および第2状態の時間がそれぞれ十分に短くなり、より確実に、微生物が現在の環境に慣れる前に別の環境に切り替えることができる。また、第1状態の時間および第2状態の時間がそれぞれ過度に短くなることを防止でき、微生物が新たな環境への対応を始める前に元の環境に戻ってしまうことを効果的に防止することができる。つまり、微生物の分裂速度よりも僅かに短い時間間隔で電界の状態を変化させることができる。これにより、微生物の分裂をより効果的に抑制することができる。なお、第1状態の時間と第2状態の時間とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0068】
ここで、微生物は、(1)10℃~40℃程度の温度帯において概ね10分~40分程度の分裂速度を有すること、(2)温度が低い程、分裂速度が低下すること、(3)10℃以下では一部の微生物を除いてほとんど増殖できないこと、(4)0℃以下ではほぼ全ての微生物が増殖できないこと、が知られている。そのため、上述したように、電界の状態を60分以内、好ましくは40分以内、より好ましくは30分以内の間隔で変化させることにより、微生物が環境に慣れるまでの時間(例えば10分程度)を加味すれば、微生物の分裂速度よりも十分に短い時間間隔で、電界の状態を変化させることができる。そのため、微生物の増殖をより確実に抑制することができる。
【0069】
また、第1~第4の方法のいずれにおいても、電界を周期的に変化させてもよいし、不規則に変化させてもよい。言い換えると、第1状態の時間および第2状態の時間がそれぞれ毎回ほぼ同じであってもよいし、第1状態の時間および第2状態の時間が各回でそれぞれ不規則に変化してもよい。電界を周期的に変化させることにより、電界を不規則に変化させる場合と比べて、電圧印加装置7の駆動制御が簡単となる。一方、電界を不規則に変化させることにより、電界を周期的に変化させる場合と比べて、微生物の増殖をより効果的に抑制できる可能性がある。推測ではあるが、電界を周期的に変化させた場合、微生物がその周期的な環境変化自体に慣れてしまうおそれが考えられる。このように、微生物が周期的な環境変化自体に慣れてしまうことがあったとしても、電界を不規則に変化させていれば、微生物の増殖をより効果的に抑制できる。
【0070】
なお、電界の状態を経時的に変化させる方法として、上記第1~第4の方法を適宜組み合わせてもよい。また、上述した第1~第4の方法では、いずれも、第1状態および第2状態を交互に繰り返しているが、これに限定されず、例えば、第1状態および第2状態と電界の状態が異なる少なくとも1つの状態(第3状態、第4状態、第5状態…)を有し、これら複数の状態を順番に繰り返すようになっていてもよい。
【0071】
<第5実施形態>
次に、第5実施形態のコンテナ1について、主に、前述した第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0072】
図17に示すように、本実施形態のコンテナ1では、3つの支持部6が天井部25に固定されている。以下では、説明の便宜上、これら3つの支持部6を支持部6A、6B、6Cとも言う。
【0073】
3つの支持部6A、6B、6Cは、コンテナ1の幅方向に並んで、互いに離間して配置されている。また、支持部6A、6B、6Cは、それぞれ、コンテナ1の長手方向に延びる長手形状となっており、扉28、29側から冷却装置3側までのほぼ全域に延在している。また、これら3つの支持部6A、6B、6Cには、それぞれ、電極5が支持されている。以下では、説明の便宜上、支持部6Aに支持された電極5を電極5Aとも言い、支持部6Bに支持された電極5を電極5Bとも言い、支持部6Cに支持された電極5を電極5Cとも言う。
【0074】
これら電極5A、5B、5Cは、互いに絶縁されており、それぞれ独立して電圧印加装置7に接続されている。これにより、3つの電界形成系統を設けることができ、1つの電界形成系統が故障しても、他の2つの電界形成系統によって電界を形成することができる。これにより、故障によって電界を形成できなくなるリスクが低減され、高い信頼性を発揮することができる。
【0075】
また、電圧印加装置7は、電極5A、5B、5Cに互いに異なる電圧を印加することもできる。電極5A、5B、5Cに互いに異なる電圧を印加することにより、前述した第2実施形態と同様に、電界を周期的または不規則に変化させることができる。
【0076】
電極5A、5B、5Cに印加する電圧としては、特に限定されない。例えば、電極5Aに印加する電圧である第1交番電圧Vac1と、電極5Bに印加する電圧である第2交番電圧Vac2と、電極5Cに印加する電圧である第3交番電圧Vac3とで互いに周波数を異ならせてもよい。また、例えば、第1交番電圧Vac1と、第2交番電圧Vac2と、第3交番電圧Vac3とで周波数および振幅を異ならせてもよい。また、例えば、第1交番電圧Vac1と、第2交番電圧Vac2と、第3交番電圧Vac3とで互いに同じ波形を用い、これらの位相を互いにずらしてもよい。
【0077】
なお、本実施形態では互いに異なる電圧が印加される複数の電極として電極5A、5B、5Cを有するが、少なくとも2つの電極5を有し、これら電極に同一或いは互いに異なる電圧が印加される構成となっていれば、これに限定されない。例えば、電極5A、5B、5Cのいずれか1つを省略してもよいし、反対に、これらとは別に独立して電圧を印加することのできる少なくとも1つの電極を追加してもよい。
【0078】
また、本実施形態では支持部6A、6B、6C(電極5A、5B、5C)がコンテナ1の幅方向に並んで配置されているが、これらの配置としては、特に限定されない。例えば、支持部6A、6B、6C(電極5A、5B、5C)がコンテナ1の長手方向に並んで配置されていてもよい。また、支持部6A(電極5A)と支持部6B(電極5B)とがコンテナ1の幅方向に並んで配置され、支持部6A、6B(電極5A、5B)と支持部6C(電極5C)とがコンテナ1の長手方向に並んで配置されていてもよい。
【0079】
また、本実施形態では、電極5A、5B、5Cをそれぞれ独立して支持するために3つの支持部6A、6B、6Cが設けられているが、これに限定されず、例えば、図18に示すように、1つの支持部6が3つの電極5A、5B、5Cを支持する構成であってもよい。
【0080】
<第6実施形態>
次に、第6実施形態のコンテナ1について、主に、前述した第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0081】
図19に示すように、本実施形態のコンテナ1では、2つの支持部6が天井部25に固定されている。以下では、説明の便宜上、これら3つの支持部6を支持部6A、6Bとも言う。また、これら2つの支持部6A、6Bは、それぞれ、電極5が支持されている。以下では、説明の便宜上、支持部6Aに支持された電極5を電極5Aとも言い、支持部6Bに支持された電極5を電極5Bとも言う。そして、電圧印加装置7は、図20に示すように、電極5Aに第1交番電圧Vac1を印加し、電極5Bに第1交番電圧Vac1と逆位相の第2交番電圧Vac2を印加する。第1交番電圧Vac1と第2交番電圧Vac2とは、同じ波形であり、互いに周波数および振幅が同じである。
【0082】
コンテナ本体2は、グランドに接続されるため、第1交番電圧Vac1と第2交番電圧Vac2とを逆位相すなわち位相を180°ずらすことにより、電極5Aと電極5Bとの電位差ΔV1が、電極5Aとコンテナ本体2との電位差ΔV2および電極5Bとコンテナ本体2との電位差ΔV3よりも大きくなる。すなわち、ΔV1>ΔV2、ΔV1>ΔV3の関係となる。そのため、電極5Aとコンテナ本体2との間や、電極5Bとコンテナ本体2との間よりも、電極5Aと電極5Bとの間に電界が形成され易くなる。
【0083】
したがって、電界を収容室20のより広範囲にわたって形成することができ、収容室20内のどの位置に載置された対象物Xにも効率的に電界を作用させることができる。なお、前記「逆位相」とは、第1交番電圧Vac1と第2交番電圧Vac2との位相差が180°と一致している場合の他、技術上生じ得るわずかな誤差(例えば±10%)を有する場合も含む意味である。
【0084】
以上、本発明の収容庫および電極構造について、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、各部の構成は、同様の機能を発揮する任意の構成のものに置換することができ、また、任意の構成を付加することもできる。また、前述した各実施形態を適宜組み合わせることもできる。
【符号の説明】
【0085】
1 コンテナ
10 電極構造
2 コンテナ本体
20 収容室
21 内壁
22 外壁
23 断熱材
24 床部
241 溝
25 天井部
251 天井面
26 側壁部
27 骨組み
28 扉
29 扉
3 冷却装置
31 吸入部
32 冷却装置
33 吹出部
34 温度センサー
4 電界形成装置
5 電極
5A 電極
5B 電極
5C 電極
50A 平板電極
50B 平板電極
6 支持部
6A 支持部
6B 支持部
6C 支持部
61 固定部
62 固定部
63 突出部
631 基部
632 接続部
633 接続部
64 位置決め部
641 凹部
642 突起
7 電圧印加装置
8 被覆部
9 防風部
91 第1壁部
92 第2壁部
C 容量
D1 離間距離
D2 離間距離
G 空隙
T 厚さ
X 対象物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20