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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】養生用カプセル
(51)【国際特許分類】
   E04G 5/00 20060101AFI20240222BHJP
【FI】
E04G5/00 301J
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023127665
(22)【出願日】2023-08-04
【審査請求日】2023-08-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506197934
【氏名又は名称】シーズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503055554
【氏名又は名称】ヤマダインフラテクノス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】517406940
【氏名又は名称】一般社団法人日本鋼構造物循環式ブラスト技術協会
(74)【代理人】
【識別番号】100108958
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 英一
(72)【発明者】
【氏名】小坂 尚子
(72)【発明者】
【氏名】富田 晃吏
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-059893(JP,A)
【文献】特開2001-159235(JP,A)
【文献】特開2000-204755(JP,A)
【文献】特開2019-120056(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 5/00
E04G 3/30
E04G 23/02
E01D 22/00
E04G 21/32
B05D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略上下方向に張設されたチェーンの養生箇所の略全周を囲う略筒形に形成され、前記チェーンの養生箇所に外装される殻体と、
該殻体の内側を経由して粉粒体が下方に落下することを防止するように、該殻体内に配設された粉粒体落下防止材と
前記粉粒体に含まれる磁性体を吸着するための磁石と
を備え、
前記殻体は、その前記チェーンを囲う周壁における周方向において少なくとも2つに分割形成された複数の殻片により構成されるとともに、互いに隣接する少なくとも2つの殻片同士がヒンジ部により開閉可能に連結されている、
養生用カプセル。
【請求項2】
前記粉粒体落下防止材は、前記殻片のそれぞれの内面に配設されている、
請求項1記載の養生用カプセル。
【請求項3】
前記ヒンジ部により開閉される前記殻片を閉じた状態にロック可能かつ該ロックを解除可能なロック部を備えている、
請求項1記載の養生用カプセル。
【請求項4】
前記ヒンジ部により開閉される前記殻片を閉じた状態にロック可能かつ該ロックを解除可能なロック部を備えている、
請求項2記載の養生用カプセル。
【請求項5】
前記殻体は、その上下の端部における少なくとも下の端部に、前記殻体の外周方向へ突出する張出部位を備え、
略水平面に対して前記張出部位が接地することにより、前記殻体が前記チェーンの養生箇所に外装したときと略同様の姿勢が保持されるように構成されている、
請求項1記載の養生用カプセル。
【請求項6】
前記殻体は、その上下の端部における少なくとも下の端部に、前記殻体の外周方向へ突出する張出部位を備え、
略水平面に対して前記張出部位が接地することにより、前記殻体が前記チェーンの養生箇所に外装したときと略同様の姿勢が保持されるように構成されている、
請求項2記載の養生用カプセル。
【請求項7】
前記殻体は、その上下の端部における少なくとも下の端部に、前記殻体の外周方向へ突出する張出部位を備え、
略水平面に対して前記張出部位が接地することにより、前記殻体が前記チェーンの養生箇所に外装したときと略同様の姿勢が保持されるように構成されている、
請求項3記載の養生用カプセル。
【請求項8】
前記殻体は、その上下の端部における少なくとも下の端部に、前記殻体の外周方向へ突出する張出部位を備え、
略水平面に対して前記張出部位が接地することにより、前記殻体が前記チェーンの養生箇所に外装したときと略同様の姿勢が保持されるように構成されている、
請求項4記載の養生用カプセル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、略上下方向に張設されたチェーンを伝って粉粒体が下方に落下するのを防止するための養生用カプセルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
高架橋等の高架構造物の塗装の補修点検工事などには足場を吊りチェーンで吊した吊下足場が使用されることが多い。この吊下足場は、高架構造物の側方や下方に設置される。
【0003】
特許文献1及び2には、上下に連通する取付孔を有する足場板に対し、その下面から取付孔を通して上面側に吊り金具を突出させ、吊りチェーンの下端のフックと連結することで、足場板を高架構造物から吊り下げている吊下足場が記載されている。
【0004】
また、特許文献3には、図11に示すように上下に連通する取付孔101aを有する足場板101に対し、取付孔101aを通して吊りチェーン102を、足場板101の下面に配設された単管103に略U字状に巻き掛けることにより、足場板101を高架構造物から吊り下げている吊下足場100が記載されている。
【0005】
この種の吊下足場での塗装の補修点検作業などの高所作業では、ブラスト工法(直径0.3~1.2mm程度のブラスト研削材が利用される。)により既存の塗装が剥がされ、それによりブラスト研削材や剥がされた塗装片などの粉粒体が生じる。その粉粒体は、吊りチェーンの表面を伝って足場板の取付孔を通って吊下足場の下方に落下する。
【0006】
そのような粉粒体の落下を防止するため、養生作業においては、図12に示すように、足場板101の上に被せられる養生用シート105及びそれを固定する養生用テープ106と吊りチェーン102との隙間や、足場板101の取付孔101aと吊りチェーン102との隙間にシリコンやウレタン等の可撓性樹脂104を充填する方法が使用されることが多い。また、特許文献3に記載された防水構造にも可撓性樹脂を充填する方法が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-89522
【文献】特開2017-128876
【文献】特開2019-120056
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、高所作業の安全性の確保のため、吊下足場の足場板は、所定間隔をおいて設けられた多数の吊りチェーンにより支持されるため、各吊下チェーンの設置箇所に可撓性樹脂を充填しなければならず、養生作業が非常に煩雑で多大な手間がかかるという課題がある。
【0009】
また、吊下足場を構成する吊りチェーンや足場板などは再利用されるものであるため、利用後に可撓性樹脂が充填された多数の箇所のそれぞれにおいて、吊りチェーンや足場板などから可撓性樹脂を剥がさなければならず、非常に煩雑で多大な手間がかかるという課題もある。可撓性樹脂が容易に剥がせるようにするために、溶剤を使用することも考えられるが、強度の強い溶剤を使用すると吊りチェーンや足場板を損傷してそれらの強度を低下させる恐れがあるため、強度の弱い溶剤しか使用できないという課題もある。
【0010】
さらに、可撓性樹脂を充填する方法は、高所作業時の振動によって吊りチェーンや足場板の表面と可撓性樹脂の間に隙間が生じたり、可撓性樹脂にひび割れが生じたりし、その隙間やヒビ割れを伝って前記粉粒体が吊下足場の下方に落下するという課題もある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、第1の発明の養生用カプセルは、
略上下方向に張設されたチェーンの養生箇所の略全周を囲う略筒形に形成され、前記チェーンの養生箇所に外装される殻体と、
該殻体の内側を経由して粉粒体が下方に落下することを防止するように、該殻体内に配設された粉粒体落下防止材とを備え、
前記殻体は、その前記チェーンを囲う周壁における周方向において少なくとも2つに分割形成された複数の殻片により構成されるとともに、互いに隣接する少なくとも2つの殻片同士がヒンジ部により開閉可能に連結されている。
【0012】
前記粉粒体落下防止材としては、特に限定されないが、スポンジ、わた(繊維の柔らかなかたまり)、毛皮、羽毛、織布、不織布等を例示する。また、前記粉粒体落下防止材としてスポンジを採用する場合は、スポンジの上下方向の中間部に空間を設け、該空間に前記粉粒体落下防止材としてのジェルを充填するようにしてもよく、それにより前記粉粒体の落下防止効果を向上させることができる。
【0013】
前記ヒンジ部としては、特に限定されないが、回転軸を中心として上下または左右に部材が折れ曲がるヒンジ構造を有するものや、中実部分と中実部分を弾性的に連結する薄肉連結部による可撓ヒンジ構造を有するもの等を例示する。
【0014】
この構成によれば、前記チェーンの養生箇所には、前記粉粒体落下防止材が内部に配設された前記殻体が外装されるので、該チェーンの表面を伝って前記粉粒体が下方に落下することを防止できる。また、前記殻体は、少なくとも2つの前記殻片に分割形成されるとともに、少なくとも互いに隣接する2つの殻片同士がヒンジ部により開閉可能に連結されているので、前記チェーンの養生箇所に対して外装したり、取り外したりすることを簡単かつ迅速にできる。さらに、前記養生用カプセルによりチェーンの表面を伝って前記粉粒体が下方に落下することが防止されているので、養生用カプセルに対する養生は簡易的に行うことができ、それ故にその養生の解除も簡単に行うことができる。
【0015】
第2の発明の養生用カプセルとしては、前記第1の発明において、
前記粉粒体落下防止材は、前記殻片のそれぞれの内面に配設されている態様を例示する。
【0016】
この構成によれば、前記チェーンの周囲を囲むように前記殻片を配置すると、該各殻片の内面に配設されている前記粉粒体落下防止材により該チェーンの周囲を囲むように配設することができる。
【0017】
第3の発明の養生用カプセルとしては、前記第1又は2の発明において、
前記ヒンジ部により開閉される前記殻片を閉じた状態にロック可能かつ該ロックを解除可能なロック部を備えている態様を例示する。
【0018】
この構成によれば、前記ロック部により、前記チェーンの養生箇所に対して装着した状態を保持したり、該装着した状態を解除したりすることを容易に行うことができる。
【0019】
第4の発明の養生用カプセルとしては、前記第1~3のいずれかの発明において、
前記殻体は、その上下の端部における少なくとも下の端部に、前記殻体の外周方向へ突出する張出部位を備え、
略水平面に対して前記張出部位が接地することにより、前記殻体が前記チェーンの養生箇所に外装したときと略同様の姿勢が保持されるように構成されている。
【0020】
この構成によれば、前記張出部位により、略水平面に対して前記殻体が前記チェーンの養生箇所に外装したときと略同様の姿勢が保持されるので、前記チェーンの養生箇所が略水平面のすぐ上であるときに、前記殻体を容易に外装することができる。また、前記殻体に対して養生シートを養生テープで固定するときに、前記張出部位を係止部位として利用することができる。さらに、前記張出部位を備えることにより、前記殻体の剛性を向上させることができる。
【0021】
第5の発明の養生用カプセルとしては、前記第1~4の発明において、
前記粉粒体に含まれる磁性体を吸着するための磁石を備える態様を例示する。
【0022】
前記磁石としては、特に限定されないが、永久磁石、合金磁石、フェライト磁石(粉末状にしてゴムに練り込んだゴム磁石やプラスチックに練り込んだプラスチック磁石を含む。)、希土類磁石、電磁石等を例示する。前記磁石の配設箇所としては、特に限定されないが、前記殻体の上下方向の端部に配設する態様や、前記殻体の内部に配設する態様を例示する。
【0023】
この構成によれば、前記磁石により、特にブラスト研削材として磁性体を用いる場合に、前記粉粒体の落下防止効果を向上させることができる。
【0024】
第6の発明の養生用カプセルを用いた養生方法は、
請求項1~5のいずれか一項に記載の養生用カプセルを用いた養生方法であって、
前記チェーンの養生箇所に前記養生用カプセルを装着する段階と、
該養生用カプセルの前記殻体に対して養生を行うことにより、該養生用カプセルを介して該養生箇所の養生を行う段階とを含んでいる。
【0025】
この方法によれば、前記養生用カプセルと同様の作用効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る養生用カプセル及びそれを用いた養生方法によれば、略上下方向に張設されたチェーンに対する粉粒体対策の養生を簡単かつ迅速に行うことができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明を具体化した第一実施形態に係る養生用カプセルの斜視図である。
図2】同養生用カプセルの殻体に対して粉粒体落下防止材を装着する様子を示す斜視図である。
図3】同養生用カプセルの殻体を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図をそれぞれ示している。
図4】同養生用カプセルの殻体を2つの殻片に分解する様子を示す平面図である。
図5】同養生用カプセルを太めのチェーンの養生箇所に装着した状態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図をそれぞれ示している。
図6】同養生用カプセルを二重の細めのチェーンの養生箇所に装着した状態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図をそれぞれ示している。
図7】同養生用カプセルを用いた養生方法の流れを示すフローチャートである。
図8】本発明を具体化した第二実施形態に係る養生用カプセルを開いた状態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。
図9】本発明の変更例に係る養生用カプセルを開いた状態を示す正面図である。
図10】本発明の別の変更例に係る養生用カプセルを示す図であり、(a)は正面図、(b)は右側面図である。
図11】本発明のさらに別の変更例に係る養生用カプセルを示す平面図であり、(a)は殻体を平断面略円形の筒状に形成した態様、(b)は殻体を平断面略角丸正方形の筒状に形成した態様を示している。
図12】従来の吊足場の防水構造を概略的に示す図である。
図13】従来の粉粒体対策の養生の様子を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を具体化した第一実施形態の養生用カプセル1について、それを用いた養生方法とともに、図1図7を参照して説明する。図5及び図6に示すように、本発明の養生用カプセル1は、略上下方向に張設されたチェーン10の養生箇所に装着されるものであり、殻体2及び粉粒体落下防止材3とを備えている。
【0029】
殻体2は、図1図6に示すように、チェーン10の養生箇所に外装されるものであり、該養生箇所の略全周を囲うように、上下方向に延びる略筒形に形成されており、2つの殻片4、5により構成されている。本例の殻体2は、上下に関係なく使用できるように上下対称に構成されており、平断面形状が略角丸長方形の略筒形に形成された周壁部2aを備えるとともに、該周壁部2aの上下の端部のそれぞれに対して該筒形の内方に延びる略環状の端壁部2bが一体的に形成されている。また、殻体2は、周壁部2aの上下の端部のそれぞれにおいて、略角丸長方形の長辺側から、殻体2の外周方向へ突出する張出部位2cを備え、略水平面に対して前記張出部位2cが接地することにより、前記殻体2が前記チェーン10の養生箇所に外装したときと略同様の姿勢が保持されるように構成されている。
【0030】
端壁部2bには、殻体2の内外を連通する貫通穴6が設けられており、該貫通穴6は、前記略角丸長方形の長辺方向に延びる長穴状に形成されるとともに、該長穴の長手方向の両端部のそれぞれには、該長穴の幅よりも大径に形成された円形の拡径部6a、6bが設けられている。一方の拡径部6aは他方の拡径部よりも相対的に大径に形成されている。一本の太目のチェーン10を養生するときは、図5に示すように、大径の拡径部6a内にチェーン10を配置するように構成されている。また、二重又は四重の細めのチェーン10をまとめて養生するときは、図6に示すように、その多重のチェーン10のすべてを貫通穴6内に配置するように構成されている。太めのチェーン10としては、それを構成する各コマ10a(金属製リング)が太さ1.0cm、幅3.0cm、高さ5.0cmに形成されている態様を例示する。また、細めのチェーン10としては、それを構成する各コマ10a(金属製リング)が太さ0.5cm、幅2.0cm、高さ5.0cmに形成されている態様を例示する。
【0031】
2つの殻片4,5は、平面視で、殻体2における角丸長方形の両短辺側の略中央で分割形成されたものとなっている。2つの殻片4,5の接合部は、一方を凹形、もう一方を凸形にした入れ子構造を採用しており、互いに嵌合する凹凸により前記接合部に隙間が生じることを防止するようになっている。殻体2の周壁部2aにおける殻片4,5同士の2箇所の接合部位のうちの一方は、上下方向に列設された3つのヒンジ部7により回動可能に連結されており、同他方は、上下方向に列設された2つのロック部8により同他方の接合部位がロック又はロック解除可能になっている。
【0032】
ヒンジ部7は、図4に示すように、一方の殻片側に設けられた、上下方向に延びる支軸7aと、他方の殻片に設けられ、該支軸7aに対して相対回動可能に係合される回動部7bとを備えている。本例では、3つのヒンジ部7における支軸7aと回動部7bが互いに係脱可能に構成されており、殻体2を2つの殻片4,5に分解・組立可能になっている。
【0033】
ロック部8は、同他方における接合部位に対して互いに係脱可能に形成された係合部8a及び被係合部8bが相対的に設けられている。
【0034】
殻体2の材料は、本発明の養生用カプセル1が使用される環境において付着する可能性がある溶剤等の化学物質に対する耐性を有するものが好ましく、特に限定されないが、ポリカーボネイト(PC)、アクリロニトリル-スチレン-アクリル酸エステル(ASA)、ポリプロピレン(PP)等を例示する。また、寒冷地で使用する場合、殻体2の材料を、弾性のあるゴム系の樹脂としてもよい。
【0035】
粉粒体落下防止材3は、該殻体2の内側を経由して粉粒体が下方に落下することを防止するように、該殻体2内に配設されている。本例では、前記粉粒体落下防止材3は、スポンジからなっており、図2に二点鎖線で示すように前記殻片4,5のそれぞれの内面に配設されている。
【0036】
本例のスポンジは、図2に示すように直方体形に形成されており、殻体2を閉じたときのチェーン10の表面とスポンジの表面との密着性を向上させるべく、殻体2の内部の容積よりも、大きい容積に形成されており、特に限定されないが、殻片4,5の内側に配設するスポンジの厚さを、該殻片4,5の内側の深さよりもそれぞれ1.0cm以上厚く形成することを例示する。スポンジとしては、特に限定されないが、ポリウレタンフォーム製のものとすることを例示する。スポンジの硬さとしては、特に限定されないが、高反発又は低反発のような極端な反発力のものではなく、それらの中間の柔らかいタイプのものとすることを例示するが、高反発又は低反発のものを用いることもできる。本例では、各殻体2に配設するスポンジは直方体形に一体形成されているが、例えば、上下方向に分割形成された複数のスポンジを用いることもできる。そのような複数のスポンジを用いる場合、各スポンジ間に隙間を設けるようにすることもできるが、そうすると各スポンジが隙間側に撓んでチェーン10の表面に対する密着性が低下する可能性があるので、該隙間は狭くすることが好ましい。また、そのような複数のスポンジを用いる場合、各スポンジの上下方向の厚さは、養生対象のチェーン10を構成するコマ10aの上下方向の長さを基準にすると、チェーン10の表面に対する密着性を向上させることができる。殻体2の内面に対するスポンジの配設態様としては、特に限定されないが、両面テープ、コーキング剤、接着剤等を用いて固定的に配設する態様や、両面テープ、面ファスナー等を用いて着脱可能に配設する態様や、殻体2の内面形状よりも一回り大きめの形状に形成したものを殻体2内に圧入することにより着脱可能に配設する態様等を例示する。
【0037】
本例の養生用カプセル1のサイズとしては、特に限定されないが、次のサイズに形成する態様を例示する。
殻体2の肉厚(素材の厚さ):2mm
殻体2の内側のサイズ:平面視での長辺方向(Ia)107mm×同短辺方向(Ib)42mm×高さ(Ic)142mm
殻体2の貫通穴6のサイズ:短辺方向の最狭部(Ha)23mm×長辺方向(Hb)90mm
殻体2の貫通穴6の拡径部6a(大きい方)の直径(Da):35mm
殻体2の貫通穴6の拡径部6b(小さい方)の直径(Db):25mm
張出部位2cの外方への張出長(Lj):7.5mm
スポンジのサイズ:幅(Wa)93mm×厚さ(Wb)32mm×高さ(Wc)145mm
【0038】
次に、本発明の養生用カプセル1を用いた養生方法について説明すると、図7に示すように本方法は、前記チェーン10の養生箇所に前記養生用カプセル1を装着する段階(ステップS51)と、該養生用カプセル1の前記殻体2に対して養生を行うことにより、該養生用カプセル1を介して該養生箇所の養生を行う段階(ステップS52)とを含んでいる。
【0039】
前記装着する段階(ステップS51)では、養生用カプセル1のロック部8のロックを解除することにより、ヒンジ部7を中心に2つの殻片4,5を開き、2つの殻片4,5の内側にそれぞれ配設された粉粒体落下防止材3としてのスポンジの間にチェーン10の養生箇所が位置するようにする。そして、ヒンジ部7を中心に2つの殻片4,5を閉じ、養生用カプセル1のロック部8をロックすることにより、その閉じた状態を保持させる。なお、チェーン10の養生箇所の長さに応じて、複数の養生用カプセル1を上下に連設するようにしてもよい。
【0040】
前記養生を行う段階(ステップS52)では、チェーン10の養生箇所の周囲を養生用シートで覆うとともに、養生シートと養生用カプセル1とを養生用テープで接着すると、養生が完了する。
【0041】
なお、養生を解除するときは、以上の作業を逆に行えばよい。
【0042】
以上のように構成された本例の養生用カプセル1及びそれを用いた養生方法によれば、前記チェーン10の養生箇所には、前記粉粒体落下防止材3が内部に配設された前記殻体2が外装されるので、該チェーン10の表面を伝って前記粉粒体が下方に落下することを防止できる。また、前記殻体2は、2つの前記殻片4,5に分割形成されるとともに、互いに隣接する2つの殻片4,5同士がヒンジ部7により開閉可能に連結されているので、前記チェーン10の養生箇所に対して外装したり、取り外したりすることを簡単かつ迅速にできる。さらに、前記養生用カプセル1によりチェーン10の表面を伝って前記粉粒体が下方に落下することが防止されているので、養生用カプセル1に対する養生は簡易的に行うことができ、それ故にその養生の解除も簡単に行うことができる。
【0043】
また、前記粉粒体落下防止材3は、前記殻片4,5のそれぞれの内面に配設されている。この構成によれば、前記チェーン10の周囲を囲むように前記殻片4,5を配置すると、該各殻片4,5の内面に配設されている前記粉粒体落下防止材3により該チェーン10の周囲を囲むように配設することができる。
【0044】
また、ヒンジ部7により開閉される殻片4,5を閉じた状態にロック可能かつ該ロックを解除可能なロック部8を備えている。この構成によれば、ロック部8により、前記チェーン10の養生箇所に対して装着した状態を保持したり、該装着した状態の解除をしたりすることを容易に行うことができる。
【0045】
また、前記殻体2は、その上下の端部のそれぞれに、前記殻体2の外周方向へ突出する張出部位2cを備え、略水平面20に対して前記張出部位2cが接地することにより、前記殻体2が前記チェーン10の養生箇所に外装したときと略同様の姿勢が保持されるように構成されている。この構成によれば、前記張出部位2cにより、略水平面20に対して前記殻体2が前記チェーン10の養生箇所に外装したときと略同様の姿勢が保持されるので、前記チェーン10の養生箇所が略水平面のすぐ上であるときに、前記殻体2を容易に外装することができる。また、前記殻体2に対して養生シートを養生テープで固定するときに、前記張出部位2cを係止部位として利用することができる。さらに、前記張出部位2cを備えることにより、前記殻体2の剛性を向上させることができる。
【0046】
また、本例の養生用カプセル1は、上下対称に構成されている。この構成によれば、上下どちらの方向に向けても使用することができるので、装着時の作業性を向上させることができる。
【0047】
さらに、本例の養生用カプセル1を用いた養生方法は、前記チェーン10の養生箇所に前記養生用カプセル1を装着する段階(ステップS51)と、該養生用カプセル1の前記殻体2に対して養生を行うことにより、該養生用カプセル1を介して該養生箇所の養生を行う段階(ステップS52)とを含んでいる。この方法によれば、前記養生用カプセル1と同様の作用効果を得ることができる。
【0048】
次に、図8は本発明を具体化した第二実施形態を示している。この養生用カプセル1及びそれを用いた養生方法は、以下に示す点において、主に第一実施形態と相違している。従って、同実施形態と共通する部分については、同一符号を付することにより重複説明を省く。
【0049】
本例の養生用カプセル1は、前記粉粒体に含まれる磁性体を吸着するための磁石30を備えている。磁石30としては、本例では、フェライト磁石を粉末状にしてゴムに練り込んだゴム磁石又はプラスチックに練り込んだプラスチック磁石を、可撓性があるシート状に形成したシート状磁石を用いている。シート状磁石には、貫通穴6の拡径部6a、6b内に位置する部位には、チェーン10の配置を容易にするための切れ目30aがそれぞれ設けられている。張出部位2cの内側には凹溝2eが形成されており、磁石30としてのシート状磁石は該凹溝2eに着脱可能になっている。
【0050】
本例の養生用カプセル1及びそれを用いた養生方法によれば、第一実施形態と同様の効果に加え、次の効果を得ることができる。即ち、本例では、前記粉粒体に含まれる磁性体を吸着するための磁石30を備えている。この構成によれば、前記磁石30により、ブラスト研削材として磁性体を用いる場合に、前記粉粒体の落下防止効果を向上させることができる。
【0051】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)図9に示すように、前記粉粒体落下防止材3としてのスポンジの上下方向の中間部に空間35を設け、該空間35に粉粒体を捕獲するためのジェル36を充填するようにしてもよく、それにより前記粉粒体の落下防止効果を向上させることができる。空間35のサイズとしては、特に限定されないが、幅(Sa)87mm、高さ(Sb)18mmの矩形状に粉粒体防止材3としてのスポンジをくり抜くことを例示する。ジェル36としては、特に限定されないが、ホウ砂と液体のりと水を混合してなるものを例示する。
(2)養生用カプセル1の形状を適宜変更(例えば、図10に示すように張出部位2cを省いた形状にする。)したり、養生用カプセル1を単一のチェーン10専用に形成(例えば、図11に示す形状にする。)したりすること。
【符号の説明】
【0052】
1 養生用カプセル
2 殻体
2a 周壁部
2b 端壁部
2c 張出部位
2e 凹溝
3 粉粒体落下防止材
4 殻片
5 殻片
6 貫通穴
6a 拡径部
6b 拡径部
7 ヒンジ部
7a 支軸
7b 回動部
8 ロック部
8a 係合部
8b 被係合部
10 チェーン
10a コマ
20 略水平面
30 磁石
35 空間
36 ジェル
【要約】
【課題】 チェーンに対する粉粒体対策の養生を簡単かつ迅速に行えるようにする。
【解決手段】 本発明の養生用カプセル1は、略上下方向に張設されたチェーン10の養生箇所の略全周を囲う略筒形に形成され、前記チェーン10の養生箇所に外装される殻体2と、該殻体2の内側を経由して前記粉粒体が下方に落下することを防止するように、該殻体2内に配設された粉粒体落下防止材3と、前記粉粒体に含まれる磁性体を吸着するための磁石とを備え、前記殻体2は、その前記チェーン10を囲う周壁における周方向において少なくとも2つに分割形成された2つの殻片4,5により構成されるとともに、2つの殻片4,5同士の接合部がヒンジ部により回動可能に連結されている。
【選択図】 図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13