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特許7441471高分子分散型/せん断配向型位相変調器デバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】高分子分散型/せん断配向型位相変調器デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01Q 3/30 20060101AFI20240222BHJP
   H01Q 13/08 20060101ALI20240222BHJP
   H01Q 21/06 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
H01Q3/30
H01Q13/08
H01Q21/06
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020521907
(86)(22)【出願日】2018-10-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-07
(86)【国際出願番号】 US2018056793
(87)【国際公開番号】W WO2019079774
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-10-15
(31)【優先権主張番号】62/574,680
(32)【優先日】2017-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518321174
【氏名又は名称】ウェハー エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】WAFER LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(73)【特許権者】
【識別番号】520446470
【氏名又は名称】スデロテック, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SDEROTECH, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(72)【発明者】
【氏名】ハジザ,デディ ダビデ
(72)【発明者】
【氏名】ハリシュ,エリヤフ
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-531843(JP,A)
【文献】特開2016-201835(JP,A)
【文献】国際公開第2017/130489(WO,A1)
【文献】特開2001-083493(JP,A)
【文献】特開平10-078569(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/062266(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 3/30
H01Q 13/08
H01Q 21/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変誘電率(VDC)層と、
前記VDC層の上方に設けられた複数の放射パッチと、
前記放射パッチの1つの下においてそれぞれが位置合わせされて終端する複数の信号線と、
それぞれが前記信号線の1つと対応する複数の制御線と、
接地面と、
を備え、
前記VDC層が、高分子分散型液晶(PDLC)層を含み、前記PDLC層は、重合及びせん断状態であり、
前記複数の制御線は、電位を印加するコントローラに結合され、前記高分子分散型液晶(PDLC)層の液晶を印加された電位に応じた量回転させ、前記接地面と対応する信号線との間に形成されるコンデンサの特性を変化させるアンテナ。
【請求項2】
前記接地面は、複数の窓を備え、当該それぞれの窓は、前記放射パッチの1つと、前記信号線の対応する1つとの間において見通せる直線上に位置合わせされている請求項1に記載のアンテナ。
【請求項3】
前記VDC層が、上部誘電体膜と、底部誘電体膜と、前記上部誘電体膜と底部誘電体膜との間に分布されたスペーサとをさらに備え、前記PDLCは、前記スペーサの間に分散されている請求項1に記載のアンテナ。
【請求項4】
前記信号線が、前記上部誘電体膜の上方に設けられ、前記接地面が、前記底部誘電体の下に設けられている請求項3に記載のアンテナ。
【請求項5】
前記VDC層は、さらに、上部誘電体膜と、底部誘電体膜と、前記上部誘電体膜と前記底部誘電体膜との間に分布されたスペーサと、を備え、前記PDLCが、前記スペーサの間に分散され、
前記信号線が、前記上部誘電体膜の上方に設けられ、
前記制御線が、前記底部誘電体膜の下に設けられている請求項1に記載のアンテナ。
【請求項6】
前記VDC層は、さらに、上部誘電体膜と、底部誘電体膜と、前記上部誘電体膜と前記底部誘電体膜との間に分布されたスペーサとを備え、前記PDLCが、前記スペーサの間に分散され、
前記信号線が、前記底部誘電体膜の下に設けられ、
前記接地面が、前記上部誘電体膜の上方に設けられ、複数の窓であって、それぞれの窓が前記放射パッチと、前記信号線の対応する1つとの間に見通せる直線上に位置合わせされている複数の窓と、を備える請求項1に記載のアンテナ。
【請求項7】
さらに、複数の直交する信号線を備え、それぞれが前記放射パッチの1つの下に前記複数の信号線の1つと直交方向に位置合わせされて終端する請求項1に記載のアンテナ。
【請求項8】
第2の接地面をさらに備える請求項7に記載のアンテナ。
【請求項9】
前記第2の接地面は、複数の窓であって、それぞれが、前記放射パッチの1つと、前記直交する信号線の対応する1つとの間において見通せる直線上に位置合わせされている複数の窓を備える請求項8に記載のアンテナ。
【請求項10】
前記直交する信号線の1つとそれぞれが対応する複数の第2の制御線をさらに備える請求項7に記載のアンテナ。
【請求項11】
前記複数の信号線と、前記複数の直交する信号線との間に配置された第2のVDC層をさらに備える請求項7に記載のアンテナ。
【請求項12】
前記VDC層が、さらに、上部膜と、底部膜と、前記上部膜と底部膜との間の複数のスペーサとを備え、前記PDLCが前記スペーサの間に分散されている請求項1に記載のアンテナ。
【請求項13】
誘電体プレートと、
前記誘電体プレートに設けられた少なくとも1つ放射パッチと、
少なくとも1つの窓を有する接地面であって、それぞれの放射パッチが、1つの窓と位置合わせされた接地面と、
少なくとも1つの信号線であって、それぞれの信号線が、RF信号を1つの放射パッチに容量結合させるように構成された少なくとも1つの信号線と、
前記信号線と、前記接地面との間に設けられた液晶層であって、上部誘電体膜と、底部誘電体膜と、前記上部誘電体膜と前記底部誘電体膜との間に設けられた複数のスペーサと、前記上部誘電体膜と前記底部誘電体膜との間に設けられた高分子層と、前記高分子層内に分散された複数の液晶マイクロドメインと、を含む液晶層と、を備え、前記高分子層が、被せん断応力高分子層を含み、前記液晶マイクロドメインがせん断配向されたドメインを含むアンテナ。
【請求項14】
さらに、前記信号線の1つにそれぞれが対応する複数の制御線を備え、
前記複数の制御線は、電位を印加するコントローラに結合され、前記液晶マイクロドメインの液晶を印加された電位に応じた量回転させ、前記接地面と対応する信号線との間に形成されるコンデンサの特性を変化させる請求項13に記載のアンテナ。
【請求項15】
前記制御線は、前記信号線のうち任意の信号線と接触していない請求項14に記載のアンテナ。
【請求項16】
前記少なくとも1つ信号線の下に配置された複数の第2の信号線と、
第2の接地面と、
をさらに備える請求項13に記載のアンテナ。
【請求項17】
前記第2の接地面が、前記複数の第2の信号線の下に配置された請求項16に記載のアンテナ。
【請求項18】
前記複数の第2の信号線のそれぞれが、前記少なくとも1つの信号線の1つと直交するように配置された請求項16に記載のアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2017年10月19日出願の米国仮出願第62/574,680号の優先権を主張し、その開示のすべてが参照により本明細書に援用される。
【0002】
[技術分野]
本開示は、概ね、液晶位相変調器及びアンテナデバイスに関し、さらに詳細には、高分子分散型液晶、被せん断配向高分子分散型液晶、及び積層型液晶層を使用して、アンテナ等のRFデバイスの電気的特性を制御することに関する。
【背景技術】
【0003】
[関連技術]
近年、無線通信システム関連の応用が、種々の分野において増加しつつある。今後の応用には、多帯域及び広帯域に適応するアンテナを使用する必要がある。位相変調器、特にアンテナは、薄型、軽量、低コストで、マイクロ波デバイス等と一体化しやすいものとすべきである。機械式に回転する大型のパラボラアンテナを含む、現在のアンテナ設計とは異なって、アンテナを次世代通信ハードウェアに組み込むためには、全方向性放射パターンと、広帯域幅と、安定した利得とを有する小型アンテナが好ましい。可変誘電率材料、特に液晶(LC)を用いることが、これまでの研究において提案されてきた。このようなアンテナは、かけられた電場の力と方向とによって、走査用のRFビームを生成し、この電場の力と方向とは、ソフトウェアにより制御可能である。このように、焦点面走査アンテナ、すなわち一般に移相器によって、機械的に動く部品を使用することなく、薄型及び小型に維持することが可能である。例えば、米国特許第7,466,269号明細書、米国特許出願公開第2014/0266897号明細書、米国特許出願公開第2018/0062268号明細書、及び米国特許出願公開第2018/0062238号明細書を参照のこと。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作動デバイスの波長がマイクロ波の範囲内である応用については、所望のアクティブ層の厚さ、すなわち、(液晶等の)可変誘電性材料の厚さを、かなり厚く、50~200μm、200~500μm、1000μm、数ミリメートルにまでする必要がある。さらに、アンテナ/移相器デバイスの応答時間(τon、τoff)は、パケットベースのビーム形成をサポートするのに適切なものとする必要がある。迅速に移動する1つの標的を追跡する、又はいくつかの移動体qの静止標的を同時に監視するのに必要とされる走査式焦点面アレイアンテナ等の様々な応用では、応答時間を、さらに短く、例えば、1μs以下とすべきである。しかしながら、アクティブ層の厚さが増すと、システムの応答時間も長くなる。ネマチック液晶材料又は温度制御型強誘電体(ovenferroelectrics)ベースの移相器/アンテナデバイスは、応答時間が、一般式τon∝rにより、アクティブ層の厚さ(r)と相関し、この一般式は、非常に厚いアクティブ層でデバイスを作動させても、システム要件により、極めて早い応答時間に達することは不可能であるということを意味する。
【0005】
光学デバイスが高分子分散型液晶(PDLC)材料を通過する光を変調させるように、PDLC材料が開発されてきた。例えば、米国特許第8,054,413号明細書を参照。PDLCは、液晶ドメインを含む高分子マトリックス封入体からなり、標準的な液晶技術を超える利点をいくつか有する。特に、PDLCは、2枚の基板上に配向層を使用する必要がなく、これは、液晶ダイレクタの配向が、液晶ドメインを囲むマトリックス材料において達成されるからである。そのため、文字通り記載のように、アクティブ層を厚くすることができる。PDLCの改良において、SLC(被応力液晶)材料が提案されており、これにより、実際に、PDLCが、製作され、楕円形の液晶ドメインを生成するようにせん断変形される。高分子をせん断変形させることによって、液晶ドメインは、せん断方向に伸長され、引っ張られると配向する。このように、SLCにおける液晶ダイレクタは、実質的に全て配向する。この方法では、厚いアクティブ層を達成することができ、この場合、全ての液晶ドメインが、配向層を必要とせずに配向する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の以下の発明の概要は、本発明のいくつかの態様及び特徴の基本を理解してもらうためにある。この発明の概要は、本発明の広範囲の概略ではなく、それ自体特に本発明の主要な又は重要な要素を特定すること、又は本発明の範囲を詳述することを意図しない。その唯一の目的は、以下に記載されるより詳細な説明の前置きとして簡易な形態で本発明のいくつかの概念を提示することにある。
【0007】
開示の本発明の態様は、PDLC又はSLC層を含むRFデバイス、例えばアンテナ又は移相器と、このようなデバイスの製造方法とを提供する。その結果、液晶が最も高い誘電率異方性Δε(Δε=ε||-ε⊥)を達成することができる。また、対応のLCデバイスにおける立ち上がり時間及び立ち下がり時間は、大幅に改善される。特定の実施形態において、SLCは、PDLC/SLC材料内の液晶ダイレクタの一様配向(homogenous alignment)を引き起こす。
【0008】
別の態様によれば、重合マトリックスにせん断力を引き起こすことにより、PDLCマトリックス内において液晶ドメインに配向を生じさせる方法が提供される。温度と、LC及び高分子の相対的な濃度と、重合プロセスと、重合中又は重合後のせん断速度、長さ及び期間とを制御することによって、LCドメインの大きさ及び分布が影響を受け、LCの配向が表面配向層を使用することなく達成される。
【0009】
別の態様は、RFデバイス内又はRFデバイスの外側において、PDLC又はSLC層を作製する方法であって、予備重合溶液混合物と、高分子(硬化)と液晶相(非硬化)との間に相分離を引き起こすのに適切な重合プロセスと、SLC層を生成するためにせん断力をPDLC層にかける方法と、を含み、液晶ドメインが、せん断方向に伸長され、液晶ダイレクタが、同じせん断方向に配向するPDLC又はSLC層の作製方法を提供するものである。
【0010】
包括的な態様では、可変誘電率(VDC)層と、VDC層の上方に設けられた複数の放射パッチと、複数の信号線であって、それぞれが、放射パッチの1つの下において位置合わせされて終端する複数の信号線と、信号線の1つとそれぞれが対応している複数の制御線と、接地面とを備え、VDC層が高分子分散型液晶(PDLC)層を含むアンテナが提供される。別の実施形態では、PDLC層が、重合及びせん断状態にある。
【0011】
本発明の他の態様及び特徴は、以下の図面に関して記載される詳細な説明から明らかになる。詳細な説明及び図面は、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の種々の実施形態の種々の非限定的例をなすものであることを理解すべきである。
【0012】
本明細書に含まれるとともに本明細書の一部をなす添付の図面は、本発明の実施形態を例示するものであり、詳細な説明とともに本発明の原理を説明し図示する役割を担う。図面は、概略的に、例示の実施形態の主な特徴を示すことを意図している。図面は、実際の実施形態のすべての特徴や示される要素の相対的寸法を示すことを意図するものではなく、正確な縮尺で描いていない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1(グラフ1)は、LC層と対応のPDLC層の立ち上がり速度と立ち下がり速度とを示したものである。
図2図2は、PDLC層を使用したアンテナの一実施形態の断面概略図である。
図2A図2Aは、SLC層を使用したアンテナの一実施形態の断面概略図である。
図2B図2Bは、それぞれの放射パッチに結合された2つの信号線を有する一実施形態の断面図であって、それぞれの放射パッチは、PDLC又はSLCとして実施可能である。
図2C図2Cは、それぞれの放射パッチに結合された2つの信号線を有する一実施形態の上面図であって、それぞれの放射パッチは、PDLC又はSLCとして実施可能である。
図2D図2Dは、2つのPDLC/SLC層と、2つの接地面とを有する一実施形態の断面図であって、当該2つの接地面は、PDLC又はSLCとして実施可能である。
図2E図2Eは、2つのPDLC/SLC層と、2つの接地面とを有する一実施形態の上面図であって、当該2つの接地面は、PDLC又はSLCとして実施可能である。
図2F図2Fは、層の順番を変更した一実施形態の断面図である。
図2G図2Gは、誘電性キャリヤ膜はなく複数の放射パッチを有するPDLC層の一実施形態を図示したものである。
図2H図2Hは、さらに別の実施形態を図示したものであって、PDLC又はSLCを使用して実施可能である。
図2I図2Iは、図2Hの構造を用いた2x2アレイアンテナ(2x2 array antenna)一実施形態の上面図を示す。
図3図3は、本発明の実施形態に係るPDLC/SLC層のロールtoロール方式の製造方法を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に図面を参照して本発明のRFデバイスの実施形態を説明する。様々な用途のために又は様々な利点を得るために、種々の実施形態又はそれらの組合せを用いることができる。本明細書に開示する種々の特徴は、得ようとする結果次第で、利点を要件や制約と両立させて、部分的に又はそのすべてを単独で又は他の特徴と組み合わせて使用することができる。ゆえに、特定の利点は種々の実施形態において強調されるが、開示の実施形態に限定されるわけではない。すなわち、本明細書に開示する特徴は、これらの特徴を記載した実施形態に限定されるものではなく、他の特徴と混合及び適合させたり、他の実施形態に組み込むことができる。
【0015】
上述のように、液晶(LC)層は、RFデバイスにおける使用のためにすでに提案されている。しかしながら、本発明者は、LC層が光学デバイスに十分な性能を提供する一方、その応答時間が、RF又はマイクロ波デバイスにはかなり遅いことに気づいた。従って、本発明者は、LCの代替物を探し、PDLC層で、対応のLC層よりも早い応答時間を得られることを期せずして発見した。グラフ1(図1)において、発明者は、PDLC層及び対応のLC層の、(かけられた電界に応答したドメイン配向の)立ち上がりデータと、(電界除去に応答したドメイン緩和の)立ち下がりデータとを曲線表示した。y軸は、位相シフトの量を角度で示し、x軸は、時間を秒で示している。LC層のデータは実線で示し、PDLCのデータは点線で示している。グラフ1(図1)に示すように、PDLCの立ち上がり時間及び立ち下がり時間は、対応のLC層のものよりも早い。
【0016】
本発明者は、PDLCの液晶層を十分に厚くした場合、このような構造を可変誘電体として使用して、RF又はマイクロ波デバイスの作動特性を制御し、なお迅速で適切な応答時間を維持可能であることを、発見した。用いる実際の厚さは、RFデバイスで用いる波長に左右されるが、一般に50~500ミクロンの間とし得る。適切なセルの厚さを選択することはまた、セルの厚さが増すとデバイス全体の損失が増すことから、セル内のLCのtanδの関数である。
【0017】
図2は、RF/マイクロ波デバイス、この例ではアンテナ100内におけるPDLCの第1の使用例を図示する。アンテナ100は、一般に誘電体110に形成又は接着された銅パッチの形態である放射パッチ105を有する。誘電体110は、例えば、ロジャーズ回路基板材料、ガラス、PET、テフロン等とし得る。接地面115を、誘電体110の底部と、PDLC層120との間に設けている。結合窓125を接地面に形成し、RFエネルギーを放射パッチ105と信号線140との間において結合することに使用する。信号線は、出力ポート、例えば、同軸Fコネクタに結合される。よって、RF信号は、信号線140と放射パッチ105との間において容量結合され、これは、PDLC層120により形成され介在する誘電体層によるものである。接地面115、PDLC層120、及び信号線140は、コンデンサを形成し、その特性は、PDLC層120の誘電率の値に左右されることにも留意する。
【0018】
PDLC層120は、上部誘電体層/膜122、底部誘電体層/膜124、スペーサ126、及びPDLCを形成する高分子129内に分散された液晶マイクロドメイン128により形成される。この実施形態では、高分子に対するLCの比率を高くしており、LC/高分子は、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%のLC重量を含む。その上、配向膜は設けておらず、その結果、マイクロドメイン128内の液晶(ダイレクタ)が、吹き出しAの中に図示するように、ランダム配向する。驚くべきことに、このような構造では、配向層を有するLC膜よりも応答時間が速い。
【0019】
電極135が、制御線137を介してコントローラ150に結合され、コントローラ150は、AC、DC又は矩形波DC電位を電極135に印加する。コントローラが、電位を電極135に印加すると、電界(破線矢印で示す)が形成され、これにより、電極135近傍のマイクロドメイン128のそれぞれの中の液晶が、吹き出しBの中に図示するように、印加された電位に応じた量回転する。その結果、接地面115と信号線140との間に形成されたコンデンサの特性が、変化する。これを利用して、信号線140を通過するRF信号を制御して、例えば、その信号に遅延又は位相シフトを生じさせることができる。当然のことだが、緩和(電界がかかっていない)状態では、ドメインがランダム配向するので、変化量は、配向層を有するLCの場合よりも少ない。すなわち、誘電率異方性Δε(Δε=ε||-ε⊥)は、開始、すなわち「off」状態では、純粋に垂直方向にε⊥配向される場合に到達し得るよりも小さい。しかしながら、その量は、PDLCデバイスの速い反応速度により補償され、特にマイクロ波デバイスについては十分である。
【0020】
図2Aは、RF/マイクロ波デバイス、この例ではアンテナ100内におけるSLCの第1の使用例を図示する。アンテナ100は、一般に誘電体110に形成又は接着された銅パッチの形態である放射パッチ105を有する。誘電体110は、例えば、ロジャーズ回路基板材料、ガラス、PET、テフロン等とし得る。接地面115を、誘電体110の底部とPDLC層120との間に設けている。結合窓125を接地面に形成し、RFエネルギーを放射パッチ105と信号線140との間において結合することに使用する。信号線は、出力ポート、例えば、同軸Fコネクタに結合される。よって、RF信号は、信号線140と放射パッチ105との間において容量結合され、これは、SLC層120により形成され介在する誘電体層によるものである。接地面115、SLC層120、及び信号線140は、コンデンサを形成し、その特性は、SLC層120の誘電率の値に左右される。
【0021】
SLC層120は、上部誘電体層/膜122と、底部誘電体層/膜124と、スペーサ126と、PDLCを形成する高分子129内に分散された液晶マイクロドメイン128とにより形成される。この実施形態では、高分子に対するLCの比率を高くしており、LC/高分子には、重量で、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%のLCが含まれる。その上、配向膜は設けていないが、液晶マイクロドメイン128内の液晶は、せん断を用いることにより配向する。特に、上部膜122と底部膜124との間にせん断力をかけることによって、マイクロドメイン128が、図2Aに図示するように、引き伸びる。その上、せん断力により、液晶マイクロドメイン128内のLCドメインは、吹き出しCの中に図示するように、せん断力の方向に全て配向する。
【0022】
電極135が、制御線137を介してコントローラ150に結合され、コントローラ150は、AC、DC又は矩形波DC電位を電極135に印加する。コントローラが、電位を電極135に印加すると、電界(破線矢印で示す)が形成され、これにより、電極135近傍のマイクロドメイン128のそれぞれの中の液晶が、吹き出しCの中に図示するように、印加された電位に応じた量回転する。図2Aでは、マイクロドメインは、回転したものとして図示しているが、これは、それぞれの液晶マイクロドメイン128内のLCドメインは回転するものの、実際には、マイクロドメインは回転せず、マイクロドメイン128内のLCのみが回転するという構想を示唆するためである。その結果、接地面115と信号線140との間に形成されたコンデンサの特性が、変化する。これを利用して、信号線140を通過するRF信号を制御して、例えば、その信号に遅延又は位相シフトを生じさせることができる。当然のことだが、この実施形態では、緩和(電界がかかっていない)状態では、ドメインが垂直方向に配向するので、変化量は、ランダム配向したPDLCの場合よりも多い。すなわち、誘電率異方性Δε(Δε=ε||-ε⊥)は、開始、すなわち「off」状態では、ドメインが純粋に垂直方向にε⊥配向するので、大きい。
【0023】
図2では、液晶マイクロドメイン128は、球形として概ね図示しており、この球形内のドメインは、ランダム配向している。図2Aでは、液晶マイクロドメイン128は、楕円形として図示しており、それは、せん断力による延伸を示すためである。せん断配向された液晶マイクロドメイン128におけるLCドメインの回転を図示するために、楕円形を回転させて図示している。以下に開示の実施形態は、PDLC又はSLCを使用して実施可能である。従って、簡略化のため、層をPDLC/SLCと呼び、楕円形の図を使用する。よって、実質的に、それぞれの図は、2つの実施形態を、1つはPDLCを使用した実施形態、もう1つはSLCを使用した実施形態を図示する。
【0024】
図2及び図2Aの例では、放射パッチを1つのみと、信号線を1本図示しているが、この構成を、二次元アレイにおいて繰り返すことにより、電子的に操作可能なアンテナを形成し得る。このような構成では、複数の制御線を、信号線のそれぞれに1つずつ、設けることができる。また、接地面は、複数の結合窓を有し、1つの結合窓は、それぞれの信号線とそれに対応する放射パッチとに対応する。
【0025】
よって、一実施形態によれば、アンテナであって、誘電体プレートと、当該誘電体プレート上に設けられた少なくとも1つの放射パッチと、少なくとも1つの窓を有する接地面であって、それぞれの放射パッチが1つの窓と位置合わせされた接地面と、少なくとも1本の信号線であって、それぞれの信号線がRF信号を1つの放射パッチに容量結合させるように構成された少なくとも1本の信号線と、信号線と接地面との間に設けられた高分子分散型液晶(PDLC)層であって、上部誘電体膜と、底部誘電体膜と、上部誘電体膜と底部誘電体膜との間に設けられた複数のスペーサと、上部誘電体膜と底部誘電体膜との間に設けられた高分子層と、高分子層内に分散された複数の液晶マイクロドメインとを含む高分子分散型液晶(PDLC)層と、を備えるアンテナが提供される。スペーサは、例えば、ガラス、PS(ポリスチレン)、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PMMA、シリカ、酢酸セルロース、ジルコニア、アクリル樹脂又はエポキシ樹脂等から作製可能である。また、高分子層は、せん断応力を受けて、SLC層を形成し得る。
【0026】
図2及び図2Aは、それぞれのパッチが、結合される信号線を1本有する例を図示する。他方で、図2B及び図2Cは、それぞれの放射パッチが結合される2本の信号線を具え、2本の信号線は相互に直交する一実施形態を図示する。図2B及び図2Cの実施形態の要素は、別の誘電体層132が第1の信号線140の下に設けられ、直交する第2の信号線142が第2の誘電体層132の下に設けられていることを除いて、図2又は図2Aの実施形態における要素と同じである。この実施形態では、1つの信号線を送信用に、他方の信号線を受信用に使用可能である。別の実施において、両方の信号線は、制御信号の電極135への印加を、信号線のうち一方の信号線における信号を他方に対して遅延させる方法で行うことにより、円偏波信号を生成するのに使用可能である。当然のことだが、図2及び図2Aの実施形態について、図2B及び図2Cの実施形態を、複数の放射パッチと、対応する信号線及び制御線とを使用して、実施可能である。
【0027】
図2D及び図2Eは、それぞれの信号線135、142の伝送特性を個別に制御可能な一実施形態を図示する。特に、本実施形態は、複数の接地面を用いており、それぞれの接地面は、放射パッチと、対応の信号線との間においてRF信号を結合するように位置合わせされた窓を有している。本構成は、ちょうどその他の実施形態の場合のように、複数の放射パッチとともに実施可能である。二次元アレイとして実施する場合、制御信号を複数の制御線に印加することにより半球の空間内において任意の方向にビームを操作して、それぞれの信号線に与えられる遅延を個別に制御することができる。
【0028】
図2Dに図示したように、信号線140の中を伝搬する信号は、制御信号を電極135に印加することにより制御し、よって、PDLC/SLC層120中のLCマイクロドメインを回転させ、また、信号線142中を伝搬する信号は、制御信号を電極138に印加することにより制御し、よって、PDLC/SLC層121中のLCマイクロドメインを回転させる。よって、一例では、信号を相互に90°遅延させて、円偏光を生成する。
【0029】
よって、図2D及び図2Eの実施形態は、複数のPDLC/SLC層と、複数の接地面とを有するアンテナであって、上部誘電体層と、上部誘電体層の上方に設けられた複数の放射パッチと、上部誘電体層の下に配置された第1の液晶層と、複数の窓を有しそれぞれの窓が放射パッチの1つと位置合わせされた第1の接地面と、複数の第1の信号線であって、それぞれの第1の信号線が放射パッチの1つと位置合わせされて終端する第1の信号線と、複数の第1の制御線であって、それぞれの第1の制御線が第1の信号線の1つと位置合わせされた複数の第1の制御線と、第2の液晶層と、複数の窓を有しそれぞれの窓が放射パッチの1つと位置合わせされた第2の接地面と、複数の第2の信号線であって、それぞれの第2の信号線が、放射パッチの1つと位置合わせされて終端する複数の第2の信号線と、複数の第2の制御線であって、それぞれの第2の制御線が、第1の信号線の1つと位置合わせされた複数の第2の制御線とを備え、第1の液晶層及び第2の液晶層のそれぞれは、上部誘電体と、底部誘電体と、上部誘電体と底部誘電体との間に設けられた複数のスペーサと、誘電体と底部誘電体との間に設けられた高分子層と、高分子層内に分散された複数の液晶マイクロドメインとを備える、アンテナを提供する。高分子層は、被せん断応力高分子層とすることができる。
【0030】
図示した実施形態では、層を、頂部から底部へ順番に、放射パッチ、上部誘電体層、第1の接地面、第1の(任意で被応力)液晶層、第1の制御線、第1の信号線、第2の接地面、第2の(任意で被応力)液晶層、第2の制御線、第2の信号線の順番に配列している。また、図示したように、種々の中間誘電体層が、種々の信号線と制御線と接地面との間に、設けられる。しかしながら、図示した層の順番は、必須ではなく、他の順番も可能であることに留意すべきである。例えば、図2Fに、複数のPDLC/SLC層と複数の接地面とを有するものの図2Dとは順番が異なる、一実施形態を図示する。
【0031】
図2Fは、図2Dと、層の順番が異なる点を除いて同様の一実施形態を図示する。図2Fでは、第1の信号線140を、放射パッチ105の下だが、接地面115の上方かつ第1のPDLC/SLC層120の上方に、設けている。第1の制御線135は、第1のPDLC/SLC層120の上方又は下に設けてもよい。第1の接地面115は、第1のPDLC/SLC層120の下に設けている。本実施形態では、第1の接地面115は、窓125を有し、窓125は、信号を第2の信号線142に結合するためのものであって、従って、第1の信号線140ではなく、第2の信号線142に対して位置合わせしている。第1の信号線140用の信号は、上部誘電体110を通して直接放射パッチ105に結合される。
【0032】
示したように、第1の接地面の窓125の位置は、RF信号を第2の信号線142から結合するように位置合わせし、これは、第2の信号線142が第1の接地面より下だが第2のPDLC/SLC層121よりも上にあるからである。第2の接地面117は、第2の信号線142より下に設けており、従って、窓は不要である。第2の制御線138は、第2のPDLC/SLC層121の上方又は下に設けてもよい。
【0033】
従って、複数の接地面と複数の可変誘電体層とを有するRFアンテナが、提供され、当該RFアンテナは、上部誘電体層と、上部誘電体の上方に設けられた複数の放射パッチと、第1の可変誘電率(VDC)層と、放射パッチの1つとそれぞれが位置合わせされた複数の窓を有する第1の接地面と、第1の接地面の窓の1つの下でそれぞれが終端する複数の第1の信号線と、第1の信号線の1つの近傍の第1のVDC層の液晶ドメインを制御するようにそれぞれが構成された複数の第1の制御線と、第1のVDC層の下に設けられた第2のVDC層と、放射パッチの1つとそれぞれが位置合わせされた複数の窓を有する第2の接地面と、第2の接地面の窓の1つの下でそれぞれが終端する複数の第2の信号線と、第2の信号線の1つの近傍の第2のVDC層の液晶ドメインを制御するようにそれぞれが構成された複数の第2の制御線と、を備える。
【0034】
RFデバイス用のPDLC/SLCの製造において、液晶セル(PDLC又はSLC)を封入する2枚の対向する誘電体基板は、光学上の考慮すべき点がないので、透明か不透明かを問わず、所望の任意の非導通材料から作製可能である。制御電極は、例えば、蒸着、電気めっき、無電解めっき等の堆積法により作製可能であり、インク又はペースト等を用いて印刷してもよい。本明細書に開示の実施形態に図示したように、制御電極は、RFデバイスを機能させるために要求される電界を生成するように、液晶セルの両側に配置可能である。制御電極及び信号線の材料は、導電性材料の一種、特に、金(Au)、銀(Ag)、チタン(Ti)、銅(Cu)、白金(Pt)等の金属若しくは他の金属、及び/又は金属積層若しくは金属合金とし得る。2枚の基板同士の間に、絶縁材料からなるスペーサを、所望のセル間隙を確定し維持するように配置する。
【0035】
セルの組み立てに続いて、液晶と高分子前駆物質とを、LCに重量比で70%を超えて割り当てて混合し、セルを液体混合物で満たす。液晶の、非硬化型(液相)液晶ドメインと硬化型(固相)高分子への相分離が、重合誘起相分離法(PIPS)、溶媒相分離法(SIPS)、非溶媒相分離法(NIPS)、熱誘起相分離法(TIPS)、エマルジョンベースのPDLC法等の複数の方法、及び当該技術において既知のその他の方法により達成される。結果として得られる構造が、PDLC層である。PDLCにおいて、液晶ドメインは、通常、球形又は非晶質形状であり、この液晶ドメインでは、液晶ダイレクタ自体が、自由にかつ任意の全体的な方向は取らずに、配向される。このようなPDLC膜は、開示の実施形態において使用可能である。
【0036】
SLC膜を得るために、せん断作用をPDLCの上部基板又は底部基板に及ぼす(上面及び下面が対向移動することで、このようなせん断作用がPDLCに生じる)。せん断は、相分離プロセスの最中又はその後で起こり得る。せん断後、SLCは、せん断方向に伸長された液晶ドメインを含む。その膜を被応力液晶(SLC)と呼び、液晶伸長ドメイン自体において、液晶ダイレクタは、同じ方向、すなわち、せん断方向を向いている。それが続くと、それにより、液晶は、SLCの厚さ及び長さに拘わらず、SLCの大部分にわたって配向する。液晶セルとは異なり、LCDスクリーンにおけるのと同様に、このSLC媒体では、基板に配向層が不要である。さらに、セルの間隙又は高さは、LCD液晶セルよりもずっと高いが、LCドメイン配向は維持されたままである。電界が(通常2つの対向した電極の間に)かけられると、液晶ダイレクタが、電界の方向と平行に回転し、そうすることにより、誘電率が変化する。
【0037】
相分離の段階は、デバイスの最終的な性能に影響を与える重要なパラメータである。最初に、高分子中に溶ける液晶をできる限り少量とし、相分離時に、相分離を最も多く達成可能となるように、適切な高分子/プレポリマーと液晶(又は液晶混合物)とを選択する必要がある。
【0038】
まず、プレポリマーとLC混合物とを、LC固有の温度より高い温度まで加熱して、LCが液状の時に、相分離が起こるようにする。相分離の段階に続いて、セルの温度をTnまで下降させ、相分離を、プレポリマー全体が重合されるまで、かつ高分子マトリックス中に溶けるLCをできる限り少なくした状態で、継続させる。LCドメインにおけるLCダイレクタの配向を高水準にするために、LCドメインを、LC分子がなお動き回転し得る状態のまま、できる限り小さくすることが好ましい。後に、高分子がせん断される(又は一方向又は二方向に延伸される)と、LCダイレクタでは、せん断方向に強く配向され、このせん断方向は、セルの上部基板と底部基板(又はキャリア膜)に平行である。
【0039】
PDLC及び/又はSLC層は、ロールtoロール方式により、又は予め切り分けられた薄い高分子シートを用いることにより製作可能である。2枚の封入用キャリヤ膜の間に間隙を維持し、3層膜を重合させることによって、上述のように、PDLCを同じ相分離法で形成する。PDLCは、さらに、開示の実施形態のいずれかにおいて用いることができる。使用される高分子が、完全に重合されていない場合、又は性質上熱可塑性物質である場合、せん断又は(一方向又は二方向への)延伸の第2の段階で、SLC層が、2枚の高分子膜の間に保持された状態で生成される。それに続いて、3層の高分子(2枚の封入用高分子膜とその間にあるSLC)を、RFデバイス内に配置することができ、RFデバイス内で化学的処理及び機械的処理全般を実施する必要はない。このように、製作が、大いに簡略化されることになる。別の選択肢として、ロールtoロール技術を用いることがあり、製造システムは、基板の1枚が他方の基板よりも早く移動するように調整可能であって、これにより、せん断が起こり、最終的に重合された3層膜が、出来上がる、すなわち、せん断され配向される。
【0040】
図3は、本発明の実施形態に係るPDLC/SLC層のロールtoロール方式の製造方法を図示する。図3では、供給ロール201が、可撓性のある絶縁材料202、例えば、高分子ナノ複合材料、PET、Pyralux(登録商標 デュポン社から入手可能)、ECCOSTOCK低損失誘電体(イギリス国 ロンドン レアード PLCのエマーソン&カミング社より入手可能)等からなる連続したストリップを提供する。一方で、供給ロール211は、ストリップ202と同様の又は類似の材料から作製された、絶縁材料112からなる連続したストリップを提供する。絶縁ストリップ212は、スペーサステーション205を通過し、スペーサは、絶縁ストリップ212の上面に形成又は堆積される。
【0041】
PDLCステーション208では、高分子前駆物質と液晶マイクロドメインとの混合物が、ストリップ202に堆積される。次に、上部膜と底部膜とが、合わさって、相分離及び硬化用の重合ステーション218に入る。重合ステーション218は、PIPS、SIPS、NIPS等の既述の原理のうち任意の原理に従って作動し得る。重合ステーション218の後、いくつかの選択肢を選ぶことができる。例えば、膜は、本明細書に開示のように、切り分けて、それぞれの断片を、RF又はマイクロ波デバイスを形成するように使用可能である。SLCが望まれる場合、断片を、せん断ステーションに転送して、それぞれの断片にせん断力を個別に与えることができる。
【0042】
代わりに、せん断力は、せん断ステーション220により膜を切り分ける前に、与えることができる。例えば、膜の供給は、例えばクランプ又は万力222を使用して、例えばローラ24により上部膜又は底部膜の一方を引っ張ったまま、止めることができ、それによって、上部膜と底部膜との間に相互にせん断する動きが生じる。
【0043】
せん断ステーション220の後、膜を切り分け可能である。代わりに、図3に示すように、剥離ステーション225を使用して、上部又は底部膜、若しくは両方の膜を剥離させて、せん断及び重合されたPDLC/SLC層を引き抜き、切り分けることができる。層は、結果として、十分重合された膜のみを含み、この膜は、LCと、周りの高分子マトリックスのみからなる。これを達成することによって、アクティブ層の総誘電率は、LCの誘電率に近づき、誘電率のデルタは、高く維持され、RFデバイスの電子特性が高くなる。同じプロセスを、PDLC膜に対して実行可能である。
【0044】
図2Gに、硬化及びせん断後、上部キャリヤ膜及び底部キャリヤ膜をPDLCから取り除いた一実施形態を示す。全体に、図2Gの実施形態は、キャリヤ誘電体膜122及び124を使用していない点以外は、図2の実施形態と類似している。この実施形態では、PDLC/SLC層の準備が完了した後、キャリヤ誘電体膜を取り除くと、隣接する金属層が、被重合材料129と直接接する。この特定の実施形態では、金属層接地面115と制御線135とは、被重合材料129と直接物理的に接触している。例えば、接地面115及び/又は制御線135は、直接被重合材料129上に形成するか、又は被重合材料129に接着させ得る。本明細書に開示のその他の実施形態のうち任意の実施形態において、同様に実施可能である。
【0045】
本明細書に開示のその他の実施形態のうち任意の実施形態を用いて実施可能な図2Gに示した別の特徴は、図2Gには105、105aの2つしか示していないものの、複数の放射パッチを有することである。この実施形態では、それぞれの放射パッチの信号が、信号線140及び140aを用いて、対応の窓125及び125aを介して、個別に送信される。さらに、それぞれの信号線のための誘電率は、対応の制御線135及び135aにより個別に制御される。よって、複数の放射パッチをアレイに設けると、それぞれの信号線のための誘電体を別々に制御することができ、それにより、異なる遅延がそれぞれの線に導入されて、ビームが操作又は走査される。
【0046】
図2Hに、さらに別の実施形態を図示し、当該実施形態は、PDLC又はSLCのいずれかを使用して実施可能である。図2Hの構成は、蛇行する遅延線136がコンタクトビア137を使用して放射パッチ105と接続されている点で、図2の実施形態と異なる。遅延線は、RF/マイクロ波信号を、コンタクトビア137を通して放射パッチに抵抗結合する。次いで、信号は、接地面115の窓125を通して信号線に容量結合される。PDLC又はSLC層を、蛇行した遅延線と接地面との間に設けている。図2Iは、図2Hの構造を用いた2x2アレイアンテナ(2×2array antenna)の上面図を示し、図2Hは、蛇行する遅延線136と、接地面の窓125の場所とをよりよく示している。
【0047】
図2Hでは、制御信号を、蛇行する遅延線に送って、遅延線の下の液晶の配向を制御する。逆に、破線で示すように、制御信号は、放射パッチ105に送ってもよい。この場合、放射パッチがコンタクトビアを通して遅延線に抵抗接続されているので、制御信号は、同様に遅延線に送られる。
【0048】
よって、上部誘電体プレートと、誘電体プレートの上方に設けられた複数の放射パッチと、誘電体プレートの下に設けられた複数の蛇行する遅延線と、複数のコンタクトビアであって、それぞれが、蛇行する遅延線の1つを放射パッチの1つに接続するコンタクトビアと、複数の蛇行する遅延線の下に設けられたVDC層と、VDC層の下に設けられるとともに、遅延線の1つの下にそれぞれが位置合わせされた複数の窓を有する接地面と、複数の信号線であって、それぞれが、窓の1つの下に位置合わせされた複数の信号線と、を備えるアンテナが提供され、VDCプレートは、PDLC又はSLCの一方を含む。
【0049】
本明細書に説明したプロセス及び技術が、任意の特定の装置に本質的に関連するものではなく、構成要素を任意の適切な組み合わせとすることにより実施可能であることを理解すべきである。さらに、本明細書に説明した教示に従って、種々のタイプの汎用デバイスを使用することができる。本発明を特定の例に関して説明してきたが、これらは、あらゆる点で限定というよりは例示を目的としたものである。本発明の実施に多様な組合せが適するということを当業者は理解するだろう。
【0050】
さらに、本発明の他の態様は、本明細書に開示の本発明の明細及び実施を検討することにより、当業者に明らかになるだろう。記載の実施形態の種々の態様及び/又は構成要素は単独で又は任意の組合せで使用することができる。明細書及び例は、例示としてのみみなすべきものであり、本発明の真の範囲及び趣旨は、以下の特許請求の範囲によって示されるものであることを意図している。

図1
図2
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図2I
図3