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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】酸化染毛剤又は脱色剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/365 20060101AFI20240222BHJP
   A61Q 5/08 20060101ALI20240222BHJP
   A61Q 5/10 20060101ALI20240222BHJP
   A61K 8/22 20060101ALI20240222BHJP
   A61K 8/24 20060101ALI20240222BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20240222BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
A61K8/365
A61Q5/08
A61Q5/10
A61K8/22
A61K8/24
A61K8/19
A61K8/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019117210
(22)【出願日】2019-06-25
(65)【公開番号】P2021004181
(43)【公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000113274
【氏名又は名称】ホーユー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】唐渡 誠
(72)【発明者】
【氏名】波多野 浩太
(72)【発明者】
【氏名】岩佐 帆乃夏
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-081886(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ剤として少なくともアンモニアを含有する剤、使用時に2.5質量%を超える量となる過酸化水素を含有する剤を含む酸化染毛剤又は脱色剤組成物において、
前記アンモニアを含有する剤中に、(A)炭素数10以下且つ分子量250以下のオキソ酸、及び(B)酸と塩基の中和によって生じた無機酸のアンモニウム塩(炭酸塩又は炭酸水素塩を除く)を含有し、
前記アンモニアを含有する剤中において、前記(A)成分の含有量と(B)成分の含有量の合計に対するアルカリ剤の総含有量との質量比は、2.0~11.5であることを特徴とする酸化染毛剤又は脱色剤組成物。
【請求項2】
前記アンモニアを含有する剤中において、前記(B)成分の含有量に対する前記(A)成分の含有量の質量比(A/B)は、0.01~10である請求項1に記載の酸化染毛剤又は脱色剤組成物。
【請求項3】
前記(A)成分は、リン酸、クエン酸、及び乳酸から選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載の酸化染毛剤又は脱色剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ剤及び過酸化水素を含有する酸化染毛剤又は脱色剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばアルカリ剤としてアンモニア等を含有する第1剤と、酸化剤として過酸化水素等を含有する第2剤とから構成される酸化染毛剤又は脱色剤組成物が知られている。アルカリ剤は、第2剤に含有される酸化剤の作用を促進するとともに、毛髪を膨潤させて毛髪への染料の浸透性を向上させる。酸化剤は、毛髪中のメラニン色素を分解するとともに、酸化染料が存在する場合、毛髪内部で酸化染料重合体を形成させる。
【0003】
しかしながら、アルカリ剤として用いられるアンモニア、酸化剤として用いられる過酸化水素は、使用量の増加に伴って明度を向上させるが、高い明度、特にJHCAヘアカラーリング・レベルスケールで規定の9レベル相当以上の明度を得ようとすると頭皮等に刺激を与える場合があった。その一方で、アンモニア又は酸化剤の量を単に減少させた場合、所望の明度を得ることができなかった。従来より、皮膚の刺激を軽減した酸化染毛剤組成物が知られている。例えば特許文献1に開示される酸化染毛剤組成物は、アルカリ剤としてアンモニアとアンモニウム塩等を含有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平1-165514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、高い明度、特にJHCAヘアカラーリング・レベルスケールで規定の9レベル相当以上の明度を得ようとする場合、感覚刺激を低減させる作用との両立を図ることは依然として困難であった。
【0006】
本発明の目的は、明度を向上させながら、感覚刺激を低減できる酸化染毛剤又は脱色剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、所定のオキソ酸と塩とを併用することにより、明度を向上させながら、感覚刺激を低減できることを見出したことに基づくものである。
上記目的を達成するために、本発明の一態様は、アルカリ剤として少なくともアンモニアを含有する剤、使用時に2.5質量%を超える量となる過酸化水素を含有する剤を含む酸化染毛剤又は脱色剤組成物において、前記アンモニアを含有する剤中に、(A)炭素数10以下且つ分子量250以下のオキソ酸、及び(B)酸と塩基の中和によって生じた塩(炭酸塩又は炭酸水素塩を除く)を含有することを特徴とする。
【0008】
前記アンモニアを含有する剤中において、前記(B)成分の含有量に対する前記(A)成分の含有量の質量比(A/B)は、0.01~10であってもよい。
前記アンモニアを含有する剤中において、前記(A)成分の含有量と(B)成分の含有量の合計に対するアルカリ剤の総含有量との質量比は、2.0~11.5であってもよい。
【0009】
前記(A)成分は、リン酸、クエン酸、及び乳酸から選ばれる少なくとも1種であり、(B)成分は、アンモニウム塩であってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、明度を向上させながら、感覚刺激を低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の酸化染毛剤又は脱色剤組成物を具体化した一実施形態を説明する。酸化染毛剤又は脱色剤組成物の具体例としては、多剤式の組成物、例えば2剤式の酸化染毛剤又は脱色剤組成物等が挙げられる。以下、2剤式の酸化染毛剤又は脱色剤組成物の成分について例示する。
【0012】
<2剤式の脱色剤組成物>
2剤式の脱色剤組成物は、例えば、少なくともアルカリ剤としてアンモニアを含有する第1剤と、少なくとも酸化剤として過酸化水素を含有する第2剤とから構成される。
【0013】
(2剤式の脱色剤組成物の第1剤)
脱色剤組成物の第1剤は、アルカリ剤としてアンモニア、(A)炭素数10以下且つ分子量250以下のオキソ酸、及び(B)酸と塩基の中和によって生じた塩(炭酸塩又は炭酸水素塩を除く)等を含有する。
【0014】
(A)成分は、後述する(B)成分と併用することにより、感覚刺激を低減させる。オキソ酸とは、ある原子にヒドロキシ基(-OH)とオキソ基(=O)が結合しており、かつ、ヒドロキシ基が酸性プロトンを与える化合物を示す。(A)成分としては、炭素数10以下且つ分子量250以下のオキソ酸が適用される。かかる数値範囲に規定することにより、感覚刺激を低減させる。(A)成分は、有機酸、無機酸のいずれでもよく、その具体例としては、例えばクエン酸、乳酸、グリコール酸、リンゴ酸、酒石酸、シュウ酸、コハク酸、レブリン酸、マレイン酸、フマル酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、カプリル酸等のカルボン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸、安息香酸、サリチル酸、マンデル酸等の芳香族カルボン酸、リン酸、硝酸、硫酸等の無機酸等が挙げられる。これらは、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。これらの中でも感覚刺激を低減できる効果に優れる観点からリン酸、クエン酸、乳酸が好ましく適用される。
【0015】
第1剤中における(A)成分の含有量の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.5質量%以上である。かかる含有量が0.01質量%以上であると、感覚刺激をより低減させる。第1剤中における(A)成分の含有量の上限は、適宜設定されるが、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。かかる含有量が5質量%以下であると、感覚刺激をより低減させ、また、明度をより向上させる。
【0016】
(B)成分としては、酸と塩基の中和によって生じた塩(炭酸塩又は炭酸水素塩を除く)が適用される。したがって、2,4-ジアミノフェノキシエタノール塩酸塩等の酸化染料の塩態、水中で遊離酸の単離ができない亜硫酸等の塩態は含まないものとする。なお、炭酸塩又は炭酸水素塩は、眼刺激を与えるおそれがあるため、本実施形態の脱色剤組成物は、実質的に炭酸塩又は炭酸水素塩を含有しない。本実施形態における「実質的に炭酸塩又は炭酸水素塩を含有しない」とは、「別途、炭酸塩又は炭酸水素塩を含有させることはしない」という意味であり、本発明の効果を奏する限りにおいて、各配合成分に含まれる少量の炭酸塩又は炭酸水素塩まで除外するものではない。より具体的には、使用時における脱色剤組成物中、すなわち第1剤及び第2剤の混合物中における炭酸塩又は炭酸水素塩の含有量の下限は、好ましくは0.2質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、さらに好ましくは0.05質量%以下であり、含有しないことが特に好ましい。尚、後述する酸化染毛剤組成物においても、同様の定義において実質的に炭酸塩又は炭酸水素塩を含有しない。酸としては、無機酸、有機酸のいずれでも適用できるが、感覚刺激を低減させる効果に優れる観点から無機酸の塩が好ましい。無機酸としては、炭酸塩又は炭酸水素塩以外の無機酸が適用され、具体的には塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸、ケイ酸、メタケイ酸等が挙げられる。
【0017】
有機酸としては、アミノカルボン酸系キレート剤、ホスホン酸系キレート剤、アスコルビン酸の塩、エリソルビン酸の塩等の酸化防止剤以外の有機酸が挙げられ、具体的には(A)成分欄において列挙した具体例を挙げることができる。
【0018】
塩の種類としては、例えばアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等が挙げられる。これらの中で、感覚刺激を低減させる効果及び明度を向上させる効果に優れる観点からアンモニウム塩が好ましく適用される。(B)成分の具体例としては、例えば塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム等が挙げられる。これらは、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0019】
第1剤中における(B)成分の含有量の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上である。かかる含有量が0.01質量%以上であると、感覚刺激をより低減させ、また、明度をより向上させる。第1剤中における(B)成分の含有量の上限は、適宜設定されるが、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である。かかる含有量が5質量%以下であると、感覚刺激をより低減させる。
【0020】
感覚刺激をより低減させる観点から第1剤中における(B)成分の含有量に対する(A)成分の含有量の質量比(A/B)を所定の範囲に規定することが好ましい。質量比(A/B)の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.35以上、特に好ましくは0.5以上である。質量比(A/B)の上限は、適宜設定されるが、好ましくは10以下、より好ましくは9.5以下、さらに好ましくは9以下である。
【0021】
第1剤に含有されるアンモニアは、第2剤に含有される過酸化水素の作用を促進させることにより、毛髪の脱色効果を向上する働きをする。第1剤は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、必要によりアンモニア、上述した(B)成分のアンモニウム塩以外のアルカリ剤を配合してもよい。アンモニア及び(B)成分以外のアルカリ剤としては、例えばアルカノールアミン、有機アミン、塩基性アミノ酸、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物等が挙げられる。これらの中で感覚刺激を低減させる効果を有する観点から、モノエタノールアミン及びアンモニアを併用する構成を適用することが好ましい。アルカノールアミンの具体例としては、例えばモノエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。有機アミンの具体例としては、例えば2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、グアニジン等が挙げられる。塩基性アミノ酸の具体例としては、例えばアルギニン、リジン等が挙げられる。アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物の具体例としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。これらは、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0022】
感覚刺激をより低減させる観点から、第1剤中における(A)成分の含有量と(B)成分の含有量の合計に対するアルカリ剤の総含有量との質量比(アルカリ剤/A+B)を所定の範囲に規定することが好ましい。なお、アルカリ剤の含有量は、(B)成分又はアルカリ剤として、アンモニウム塩が用いられる場合には、溶液中で全て解離した場合に生ずるアンモニアの含有量として計算するものとする。
【0023】
つまり、アルカリ剤の総含有量=溶液中で解離してアンモニアを発生する成分(下記式1)+前記溶液中で解離してアンモニアを発生する成分以外のアルカリ剤の配合量で示される。
式1:(アンモニア分子量(17)×溶液中で解離してアンモニアを発生する成分の配合量/溶液中で解離してアンモニアを発生する成分の分子量)の合計
質量比(アルカリ剤/A+B)の下限は、適宜設定されるが、好ましくは2.0以上、より好ましくは2.5以上、さらに好ましくは3.0以上である。質量比(アルカリ剤/A+B)の上限は、適宜設定されるが、好ましくは11.5以下、より好ましくは11.0以下、さらに好ましくは10.5以下である。
【0024】
脱色剤組成物は、必要に応じて、前述した成分以外の成分、例えば可溶化剤、水溶性ポリマー、油性成分、多価アルコール、界面活性剤、防腐剤、安定剤、植物抽出物、生薬抽出物、ビタミン、香料、酸化防止剤、キレート化剤、紫外線吸収剤、保湿剤、アミノ酸誘導体、糖類等をさらに含有してもよい。
【0025】
可溶化剤は、例えば、剤型を液状等にする場合に配合される。使用される可溶化剤の例としては、例えば水及び有機溶媒(溶剤)が挙げられる。有機溶媒の具体例としては、例えばエタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、γ-フェニルプロピルアルコール、ケイ皮アルコール、アニスアルコール、p-メチルベンジルアルコール、α-ジメチルフェネチルアルコール、α-フェニルエタノール、エチレングリコールフェニルエーテル(フェノキシエタノール)、フェノキシイソプロパノール、2-ベンジルオキシエタノール、N-アルキルピロリドン、炭酸アルキレン、アルキルエーテル等が挙げられる。これらの可溶化剤のうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。これらの中で、第1剤中のその他の成分を溶解する能力に優れることから水が好ましく適用される。溶媒として水が用いられる場合、混合物中における水の含有量(使用時の含有量)は、好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上である。
【0026】
水溶性ポリマーは、脱色剤組成物に適度な粘度を与える。そのため、脱色剤組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲内において水溶性ポリマーを含有してもよい。水溶性ポリマーとしては、例えば天然高分子、半合成高分子、合成高分子、及び無機物型高分子が挙げられる。天然高分子の具体例としては、例えばグアーガム、ローカストビーンガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、トラガカントガム、ペクチン、マンナン、キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、カードラン、ヒアルロン酸、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、コラーゲン、デキストリン、トリグルコ多糖(プルラン)等が挙げられる。
【0027】
半合成高分子の具体例としては、例えばメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリド、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カチオン化セルロース、カチオン化グアーガム、デンプンリン酸エステル、アルギン酸プロピレングリコールエステル、アルギン酸塩等が挙げられる。
【0028】
合成高分子の具体例としては、例えばポリビニルカプロラクタム、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ビニルピロリドン-酢酸ビニル(VP/VA)コポリマー、ポリビニルブチラール、ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニル重合体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、エチレンオキシド・プロピレンオキシドブロック共重合体、アクリル酸/アクリル酸アルキル共重合体、ポリ塩化ジメチルジメチレンピロリジニウム(ポリクオタニウム-6)(マーコート100:メルク社製)、イタコン酸とポリオキシエチレン(以下、「POE」という)アルキルエーテルとの半エステル、又はメタクリル酸とPOEアルキルエーテルとのエステルと、アクリル酸、メタクリル酸及びそれらのアルキルエステルから選ばれる少なくとも一つの単量体と、からなる共重合体が挙げられる。これらの水溶性ポリマーのうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0029】
油性成分は、毛髪にうるおい感を付与する。そのため、脱色剤組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲内において油性成分を含有してもよい。油性成分としては、例えば油脂、ロウ、高級アルコール、炭化水素、高級脂肪酸、アルキルグリセリルエーテル、エステル、シリコーン等が挙げられる。
【0030】
油脂の具体例としては、例えばアルガニアスピノサ核油、ラノリン、オリーブ油(オリブ油)、ツバキ油、シア脂、アーモンド油、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、綿実油、ゴマ油、トウモロコシ油、ナタネ油、コメヌカ油、コメ胚芽油、ブドウ種子油、アボカド油、マカダミアナッツ油、ヒマシ油、ヤシ油、月見草油等が挙げられる。ロウの具体例としては、例えばミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、ホホバ油、ラノリンロウ等が挙げられる。高級アルコールの具体例としては、例えばセチルアルコール(セタノール)、2-ヘキシルデカノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、オレイルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、2-オクチルドデカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、デシルテトラデカノール、ラノリンアルコール等が挙げられる。
【0031】
炭化水素の具体例としては、例えばパラフィン、オレフィンオリゴマー、ポリイソブテン、水添ポリイソブテン、ミネラルオイル、スクワラン、ポリブテン、ポリエチレン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン等が挙げられる。高級脂肪酸の具体例としては、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、ラノリン脂肪酸等が挙げられる。アルキルグリセリルエーテルの具体例としては、例えばバチルアルコール、キミルアルコール、セラキルアルコール、イソステアリルグリセリルエーテル等が挙げられる。
【0032】
エステルの具体例としては、例えばアジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ステアリル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸イソトリデシル、パルミチン酸2-エチルへキシル、リシノール酸オクチルドデシル、10~30の炭素数を有する脂肪酸コレステリル/ラノステリル、乳酸セチル、酢酸ラノリン、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、カプリン酸セチル、トリカプリル酸グリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、コハク酸ジオクチル、2-エチルヘキサン酸セチル等が挙げられる。
【0033】
シリコーンの具体例としては、例えばジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、末端水酸基変性ジメチルポリシロキサン、高重合シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン(例えば、(PEG/PPG/ブチレン/ジメチコン)コポリマー)、アミノ変性シリコーン、ベタイン変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン等が挙げられる。これらの油性成分のうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0034】
多価アルコールとしては、例えばグリコール、グリセリン等が挙げられる。グリコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、高重合ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、イソプレングリコール、1,3-ブチレングリコール等が挙げられる。グリセリンとしては、例えばグリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等が挙げられる。これらの多価アルコールのうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0035】
界面活性剤は、乳化剤又は各成分を可溶化させるための成分として脱色剤組成物を使用時に乳化又は可溶化させ、粘度を調整したり粘度安定性を向上させたりする。そのため、脱色剤組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲内において界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及び非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0036】
アニオン性界面活性剤の具体例としては、例えばアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、飽和又は不飽和脂肪酸塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、α-スルホン脂肪酸塩、N-アシルアミノ酸型界面活性剤、リン酸モノ又はジエステル型界面活性剤、スルホコハク酸エステル、N-アルキロイルメチルタウリン塩、それらの誘導体等が挙げられる。これらの界面活性剤のアニオン基の対イオンの具体例としては、例えばナトリウムイオン、カリウムイオン、トリエタノールアミン等が挙げられる。より具体的には、アルキルエーテル硫酸エステル塩としては、例えばPOEラウリルエーテル硫酸ナトリウムが挙げられる。アルキル硫酸塩の具体例として、例えばラウリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム等が挙げられる。アルキル硫酸塩の誘導体の具体例として、例えばPOEラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。リン酸エステル型界面活性剤の具体例としては、POEオレイルエーテルリン酸等が挙げられる。
【0037】
カチオン性界面活性剤の具体例としては、例えば塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウムサッカリン、セチルトリメチルアンモニウムサッカリン、塩化メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム、メチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウム、ベヘニルジメチルアミン、ベヘニン酸ジエチルアミノエチルアミド、ベヘニン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ベヘニン酸ジメチルアミノエチルアミド、ステアリルジメチルアミン、パルミトキシプロピルジメチルアミン、ステアロキシプロピルジメチルアミン、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド等が挙げられる。塩化アルキルトリメチルアンモニウムの具体例としては、例えば塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化アラキルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。
【0038】
両性界面活性剤の具体例としては、例えばココベタイン、ラウラミドプロピルベタイン、コカミドプロピルベタイン、ラウロアンホ酢酸ナトリウム、ココアンホ酢酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリルベタイン(ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン)、ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0039】
非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えばエーテル型非イオン性界面活性剤、エステル型非イオン性界面活性剤、アルキルグルコシド等が挙げられる。エーテル型非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えばPOEセチルエーテル(セテス)、POEステアリルエーテル(ステアレス)、POEベヘニルエーテル、POEオレイルエーテル(オレス)、POEラウリルエーテル(ラウレス)、POEオクチルドデシルエーテル、POEヘキシルデシルエーテル、POEイソステアリルエーテル、POEノニルフェニルエーテル、POEオクチルフェニルエーテル、POEポリオキシプロピレン(以下、「POP」という)セチルエーテル、POE/POPデシルテトラデシルエーテル等が挙げられる。
【0040】
エステル型非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えばモノオレイン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEソルビタン、モノパルミチン酸POEソルビタン、モノラウリン酸POEソルビタン、トリオレイン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEグリセリン、モノミリスチン酸POEグリセリン、テトラオレイン酸POEソルビット、ヘキサステアリン酸POEソルビット、モノラウリン酸POEソルビット、POEソルビットミツロウ、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、親油型モノオレイン酸グリセリン、親油型モノステアリン酸グリセリン、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、ショ糖脂肪酸エステル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル等が挙げられる。
【0041】
アルキルグルコシドの具体例として、例えばアルキル(8~16)グルコシド、POEメチルグルコシド、POEジオレイン酸メチルグルコシド等が挙げられる。アルキル(8~16)グルコシドの具体例としては、例えばカプリルグルコシド、カプリリルグルコシド、デシルグルコシド等が挙げられる。これらの界面活性剤の具体例の内、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0042】
防腐剤の具体例としては、例えばパラベン、メチルパラベン、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。安定剤の具体例としては、例えばフェナセチン、8-ヒドロキシキノリン、アセトアニリド、ピロリン酸ナトリウム、バルビツール酸、尿酸、タンニン酸等が挙げられる。酸化防止剤の具体例としては、例えばアスコルビン酸類、亜硫酸塩等が挙げられる。キレート化剤の具体例としては、例えばエデト酸(エチレンジアミン四酢酸(EDTA))、エデト酸二ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸及びその塩類、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸及びその塩類、ヒドロキシエタンジホスホン酸(HEDP)及びその塩類等が挙げられる。保湿剤の具体例として、例えばPOPジグリセリルエーテル等が挙げられる。アミノ酸誘導体の具体例としては、例えばタウリン、L-テアニン等が挙げられる。糖類の具体例としては、例えばグルコース等の単糖類、ショ糖等の二糖類、ハチミツ等が挙げられる。
【0043】
第1剤の剤型は特に限定されず、具体例として、25℃における剤型が、例えば水溶液や乳液等の液状、ゲル状、フォーム状、クリーム状等が挙げられる。また、エアゾール、ノンエアゾール等とすることもでき、ノンエアゾールの場合、更にスクイズフォーマー式及びポンプフォーマー式等の種々の形態をとることができる。また、エアゾールの場合、公知の噴射剤及び発泡剤を適用できる。噴射剤又は発泡剤の具体例としては、例えば液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル(DME)、窒素ガス、炭酸ガス等が挙げられる。
【0044】
(2剤式の脱色剤組成物の第2剤)
第2剤は、酸化剤として過酸化水素の他、上述した可溶化剤等を配合することもできる。過酸化水素は、毛髪に含まれるメラニンの脱色性を向上させる。
【0045】
混合物中における過酸化水素の含有量の下限は、2.5質量%を超える量であり、好ましくは3質量%を超える量であり、さらに好ましくは3.5質量%を超える量である。かかる含有量が2.5質量%を超える場合、メラニンの脱色性を向上させ、明度を向上できる。また、混合物中における過酸化水素の含有量の上限は、好ましくは7.5質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、さらに好ましくは4質量%以下である。かかる含有量が7.5質量%以下の場合、毛髪の損傷等をより抑制できる。
【0046】
第2剤中には、必要により過酸化水素以外の酸化剤を配合してもよい。過酸化水素以外の酸化剤は、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0047】
過酸化水素の安定性を向上させるために、好ましくは、第2剤は、安定化剤、例えばスズ酸ナトリウム、エチレングリコールフェニルエーテル(フェノキシエタノール)、ヒドロキシエタンジホスホン酸及びその塩を含有する。ヒドロキシエタンジホスホン酸塩としては、例えばヒドロキシエタンジホスホン酸四ナトリウム、ヒドロキシエタンジホスホン酸二ナトリウム等が挙げられる。第2剤は、脱色剤組成物に一般的に含有され、且つ前述した各成分の作用を阻害しない各成分を含有してもよい。例えば、前述した第1剤に含有される成分を本発明の効果を阻害しない範囲内において適宜含有してもよい。
【0048】
第2剤の剤型は特に限定されず、具体例として、25℃における剤型が、例えば水溶液や乳液等の液状、ゲル状、フォーム状、クリーム状等が挙げられる。また、エアゾール、ノンエアゾール等とすることもでき、ノンエアゾールの場合、更にスクイズフォーマー式及びポンプフォーマー式等の種々の形態をとることができる。また、エアゾールの場合、公知の噴射剤及び発泡剤を適用できる。
【0049】
2剤式の脱色剤組成物の第1剤と第2剤の混合比は、混合物中の各成分の濃度、混合性、適用方法等を考慮して適宜設定されるが、好ましくは1:0.2~5で、より好ましくは1:0.5~2である。混合物の剤型は、毛髪に適用できる剤型であれば特に限定されず、具体例として25℃における剤型が、例えば水溶液や乳液等の液状、ゲル状、フォーム状、クリーム状等が挙げられる。
【0050】
<2剤式の酸化染毛剤組成物>
2剤式の酸化染毛剤組成物は、例えば、少なくともアルカリ剤としてアンモニア及び酸化染料を含有する第1剤と、少なくとも酸化剤として過酸化水素を含有する第2剤とから構成される。以下、上述した脱色剤組成物との相違点を中心に説明する。
【0051】
(2剤式の酸化染毛剤組成物の第2剤)
酸化染毛剤組成物の第2剤は、例えば、上述した脱色剤組成物の第2剤と同じ組成を有する。
【0052】
(2剤式の酸化染毛剤組成物の第1剤)
酸化染毛剤組成物の第1剤は、アルカリ剤としてアンモニア、酸化染料、(A)炭素数10以下且つ分子量250以下のオキソ酸、及び(B)酸と塩基の中和によって生じた塩(炭酸塩又は炭酸水素塩を除く)等を含有する。
【0053】
酸化染料は、過酸化水素による酸化重合に起因して発色可能な化合物であり、染料中間体及びカプラーに分類され、酸化染料は好ましくは染料中間体及びカプラーを含んでいる。
【0054】
染料中間体としては、例えばp-フェニレンジアミン、トルエン-2,5-ジアミン(パラトルイレンジアミン)、N-フェニル-p-フェニレンジアミン、4,4'-ジアミノジフェニルアミン、p-アミノフェノール、o-アミノフェノール、p-メチルアミノフェノール、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-フェニレンジアミン、2-ヒドロキシエチル-p-フェニレンジアミン、o-クロル-p-フェニレンジアミン、4-アミノ-m-クレゾール、2-アミノ-4-ヒドロキシエチルアミノアニソール、2,4-ジアミノフェノール、1-ヒドロキシエチル-4,5-ジアミノピラゾール、それらの塩等が挙げられる。塩の具体例としては、例えば塩酸塩、硫酸塩等が挙げられる。これらの染料中間体の具体例の内、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0055】
カプラーは、染料中間体と結合することにより発色する。カプラーとしては、例えばレゾルシン、5-アミノ-o-クレゾール、m-アミノフェノール、α-ナフトール、5-(2-ヒドロキシエチルアミノ)-2-メチルフェノール、m-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノフェノキシエタノール、トルエン-3,4-ジアミン、2,6-ジアミノピリジン、ジフェニルアミン、N,N-ジエチル-m-アミノフェノール、フェニルメチルピラゾロン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、それらの塩等が挙げられる。塩の具体例としては、例えば塩酸塩、硫酸塩等が挙げられる。これらのカプラーの具体例の内、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。酸化染料は、毛髪の色調を様々に変化させることができることから、好ましくは、染料中間体の前記具体例の中から選ばれる少なくとも一種と、カプラーの前記具体例の中から選ばれる少なくとも一種とから構成される。第1剤は、前記酸化染料以外の染料として、例えば「医薬部外品原料規格」(2006年6月発行、薬事日報社)に収載された酸化染料を適宜含有してもよい。
【0056】
混合物中における酸化染料の含有量の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上である。酸化染料の含有量が0.01質量%以上であると、特に色味をより向上できる。
【0057】
混合物中における酸化染料の含有量の上限は、適宜設定されるが、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。酸化染料の含有量が2質量%以下であると、明度をより向上させる。また、特に可溶化剤を使用する場合、可溶化剤に対する溶解性を向上できる。
【0058】
また、第1剤は必要に応じて前述した成分以外の成分、例えば上述した脱色剤組成物の第1,2剤に含まれる成分をさらに含有してもよい。
本実施形態の酸化染毛剤又は脱色剤組成物によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0059】
(1)本実施形態では、アンモニアを含有する第1剤中に、(A)炭素数10以下且つ分子量250以下のオキソ酸、及び(B)酸と塩基の中和によって生じた塩(炭酸塩又は炭酸水素塩を除く)を配合した。したがって、明度を向上させながら、感覚刺激を低減できる。特にJHCAヘアカラーリング・レベルスケールで規定の9レベル相当以上の高い明度を得ようとする場合であっても感覚刺激を低減できる。
【0060】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態において、成分の含有量を示す質量%の数値は、水等の可溶化剤も含めた剤型中における数値を示すものとする。
【0061】
・上記酸化染毛剤組成物において、上述した酸化染料以外の染料として、本発明の効果を阻害しない範囲内において、例えば「医薬部外品原料規格」(2006年6月発行、薬事日報社)に収載された直接染料を適宜含有してもよい。染毛色調の調整のために付加的に用いられることがある直接染料としては、各種の酸性染料、塩基性染料、ニトロ染料、天然染料、分散染料、HC染料等が例示される。
【0062】
・上記実施形態において、アルカリ剤等を含有する第1剤、酸化剤等を含有する第2剤の多剤式の酸化染毛剤又は脱色剤組成物として構成した。
しかしながら、酸化染毛剤又は脱色剤組成物は、2剤式に限定されず、第1剤及び第2剤に含有される各成分の一部を別剤として構成し、3剤式以上に構成してもよい。例えば、2剤式の第1剤について、その他成分として例えば水溶性ポリマーを含有する剤と、水溶性ポリマー以外の組成を有する剤の2つに分け、3剤式の酸化染毛剤又は脱色剤組成物として構成してもよい。
【0063】
酸化染毛剤又は脱色剤組成物を3剤式以上の組成物の構成を採用した場合であっても、本発明の効果を奏する限りにおいて依然として本発明に含まれるものとする。
・混合物の粘度は、適宜設定されるが、好ましくは1~1000mPa・s、より好ましくは1~750mPa・s、さらに好ましくは1~350mPa・sである。一般的に混合物の粘度が低くなると感覚刺激が増す傾向にあるが、本実施形態の構成により混合物の粘度が1000mPa・s以下の場合であっても感覚刺激を低減できる。なお、粘度の測定方法はB型粘度計(東機産業社製TV-10型)を用いて行った。測定条件は25℃、1分間とし、2号ローターで回転速度30rpmで測定した。
【実施例
【0064】
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態を更に具体的に説明する。尚、本発明は、実施例欄記載の構成に限定されるものではない。
<試験例1>
表1~5に示す各成分を含有する、酸化染毛剤組成物の第1剤、第2剤、及び第3剤をそれぞれ調製した。なお、各表における各成分を示す欄中の数値は当該欄の成分の含有量を示し、その単位は質量%である。表中「(A)」,「(B)」の表記は、本願請求項記載の各(A),(B)成分に対応する化合物を示す。一方、表中「(a)」の表記は、本願請求項記載の成分(A)の対比化合物を示す。化合物名POE又はPOPの括弧中の数値はエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドの付加モル数を示す。
【0065】
比較例9以外の酸化染毛剤組成物は、第1剤及び第2剤を所定の密閉容器に1:2の質量比で投入し、振り幅30cmとして密閉容器を上下に30回振とう混合して、泡状の酸化染毛剤組成物を調製した。比較例9の酸化染毛剤組成物は、第1剤、第2剤、及び第3剤を1:2:0.1の質量比で密閉容器に投入した以外、実施例1と同様の方法にて泡状の酸化染毛剤組成物を調製した。なお、所定の容器としては、本実施例においては、以下の形状の容器を使用した。底部よりも開口部が拡径した形状を有する有底筒状の容器本体(開口部の内径は8.5cm、底部の内径は7cm、高さ14cm)と、当該容器本体の開口部を液密に閉塞する半球状の蓋体とを備える容器を使用した。容器本体の容量は600mLであり、開口部を蓋体で閉塞した状態の容器全体の容量は770mLである。また、当該容器は透明であり、容器の外から容器の中を視認できるものを使用した。なお、この容器の形状は、国際公開第2011/151880号の図1,2に開示の容器と同様である。
【0066】
得られた酸化染毛剤組成物を、黒毛の毛束(10cmのビューラックス社製)(以下、単に毛束という。)に、毛束1gに対して酸化染毛剤組成物2gの比率で刷毛を用いて塗布し、30℃にて40分間放置した。次に、毛束に付着した酸化染毛剤組成物を水ですすいだ後、毛束にシャンプー(シャンプー用組成物としてホーユー社製のビゲントリートメントシャンプー)を2回、及びリンス(リンス用組成物としてホーユー社製のビゲントリートメントリンス)を1回施した。なお、シャンプー用組成物及びリンス用組成物は、それぞれ処理毎に水で洗い流している。続いて、毛束を温風で乾燥した後、一日間放置した。染毛処理された毛束について、下記に示す方法により明度を評価した。また、第1剤及び第2剤が混合された酸化染毛剤組成物について感覚刺激について評価した。
【0067】
(感覚刺激)
第1剤及び第2剤が1:2で混合された酸化染毛剤組成物0.2gをパネラー10名の上腕に塗布し、20分間の間に感じた刺激を以下の基準で評価することにより、感覚刺激について判断した。刺激なし~僅かに感じる(5点)、若干感じる(4点)、弱く感じる(3点)、やや強く感じる(2点)、及び強く感じる(1点)の5段階で採点し、各パネラーの採点結果について平均値を算出し、平均値が4.6点以上を「優れる:5」、3.6点以上4.6点未満を「良好:4」、2.6点以上3.6点未満を「可:3」、1.6点以上2.6点未満を「やや不良:2」、及び1.6点未満を「不良:1」とし、評価結果とした。
【0068】
(毛髪の明度)
上記各例の染毛処理後の毛束の明度について、パネラー10名が標準光源下で目視にて、以下の基準で評価することにより、明度が優れるか否かについて判断した。JHCAヘアカラーリング・レベルスケールで規定の9レベル相当(4点)、8レベル相当(3点)、7レベル相当(2点)、6レベル相当以下(1点)の4段階で採点し、各パネラーの採点結果について平均値を算出し、平均値が3.6点以上を「優れる:4」、2.6点以上3.6点未満を「良好:3」、1.6点以上2.6点未満を「やや不良:2」、及び1.6点未満を「不良:1」とし、評価結果とした。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
【表3】
【0072】
【表4】
【0073】
【表5】
表1,2に示されるように、各実施例は、各評価項目について良好以上の結果であることが確認された。
【0074】
表3に示されるように、(A)成分及び(B)成分を含有しない比較例1は、各実施例に対して、感覚刺激の評価が劣ることが確認された。(B)成分を含有させず、アンモニアの含有量を実施例1よりも増加させた比較例2は、各実施例に対して、特に感覚刺激の評価が劣ることが確認された。(B)成分を含有しない比較例3は、各実施例に対して、特に明度の評価が劣ることが確認された。(A)成分を含有しない比較例4は、各実施例に対して、感覚刺激の評価が劣ることが確認された。(A)成分の代わりにラウリン酸を含有する比較例5は、各実施例に対して、特に感覚刺激の評価が劣ることが確認された。(A)成分の代わりにアスコルビン酸を含有する比較例6は、各実施例に対して、感覚刺激及び明度の評価が劣ることが確認された。アンモニアを含有しない比較例7は、各実施例に対して、明度の評価が劣ることが確認された。(A)成分を第2剤に含有する比較例8は、各実施例に対して、感覚刺激及び明度の評価が劣ることが確認された。(A)成分及び(B)成分を第3剤に配合する比較例9は、各実施例に対して、感覚刺激及び明度の評価が劣ることが確認された。
【0075】
<試験例2>
酸化染毛剤組成物として、表6に示す各成分を含有する第1剤及び第2剤をそれぞれ調製した。
【0076】
酸化染毛剤組成物として上記実施例1の構成において、(A)成分及び(B)成分を配合せず、pHを実施例1とほぼ同様にした比較例10を調製した。また、(A)成分の代わりにアスコルビン酸を配合し、pHを実施例1と同様にした比較例11を調製した。なお、pHは、混合物を水で10倍希釈し、10質量%の濃度で溶解した際の25℃におけるpHを測定した。そして、試験例1と同様の試験方法にて、染毛処理を施した。染毛処理が施された各例の毛束について、試験例1と同様の方法にて、明度について評価を行った。また、試験例1と同様の方法にて、感覚刺激の評価を行った。
【0077】
【表6】
表6に示されるように、(A)成分及び(B)成分を含有せず、実施例1とほぼ同様のpHを有する比較例10又は(A)成分の代わりにアスコルビン酸を配合し、実施例1とほぼ同様のpHを有する比較例11は、実施例1に対して、感覚刺激の評価が劣ることが確認された。実施例1は、比較例10よりもアルカリ剤の含有量が多いにもかかわらず、感覚刺激に優れることが確認された。
【0078】
本発明における感覚刺激の低減は、pHの低減によるものではなく、pH非依存的にもたらされるものであることが確認された。つまり、明度を向上させながら、感覚刺激を低減するためには、(A)成分と(B)成分を併用することが必要であることが確認された。
【0079】
その他、(B)成分を使用する実施例は、眼刺激が低減されていた(データ不添付)。