(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】力覚提示装置
(51)【国際特許分類】
G06F 3/01 20060101AFI20240222BHJP
【FI】
G06F3/01 514
G06F3/01 560
G06F3/01 570
(21)【出願番号】P 2019191264
(22)【出願日】2019-10-18
【審査請求日】2022-09-06
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ロボティクス・メカトロニクス講演会2019の講演論文集(令和1年6月5日発行)1P2-T09にて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】599011687
【氏名又は名称】学校法人 中央大学
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】中村 太郎
(72)【発明者】
【氏名】奥井 学
【審査官】石川 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-098869(JP,A)
【文献】国際公開第2019/044111(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/174586(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人に対して力覚を提示する力覚提示装置であって、
一方向に流体を噴射可能なノズル
を有する力覚提示部と、
前記ノズルからの流体の噴射を制御する制御手段と、を備え、
前記力覚提示部は、
人、或いは、人と人の携帯物の複数箇所に設けられ、
前記ノズルは、前記力覚提示部が設けられた箇所において流体の噴射方向が人、或いは、人と人の携帯物に対して外向きとされ、
前記制御手段は、
前記各力覚提示部に設けられ、各力覚提示部の位置を検出するセンサと、
運動における正しい動作を記憶する記憶手段を有し、
前記各センサにより検出された位置と、記憶手段に記憶された正しい動作とを比較し、実際の人の動作とずれが検出されたときに、ずれが検出された部位に装着された力覚提示部のノズルから当該ずれを補正するように、流体の噴射を制御するコントローラと、を備え、運動における正しい動作に基づいた矯正力を提示することを
特徴とする力覚提示装置。
【請求項2】
人に対して力覚を提示する力覚提示装置であって、
一方向に流体を噴射可能なノズルを有する力覚提示部と、
前記ノズルからの流体の噴射を制御する制御手段と、を備え、
前記力覚提示部は、
人又は杖に設けられ、
前記ノズルは、前記力覚提示部が設けられた人又は杖において流体の噴射方向が人又は
杖に対して外向きとされ、
前記制御手段は、
前記力覚提示部に設けられ、該力覚提示部の位置を検出するセンサと、
人の移動するときの目的地の位置情報を記憶する記憶手段を有し、前記センサにより検出された位置情報に基づいて、人又は杖に進行方向を示す力が生じるように、ノズルからの流体の噴射を制御するコントローラと、を備えたことを特徴とする力覚提示装置。
【請求項3】
前記コントローラは
、前記ノズルから噴射する流体の流量を
可変とすることを特徴とする請求項1
又は請求項2に記載の力覚提示装置。
【請求項4】
前記ノズルから噴射される噴射物は、前記人の周囲の流体であることを特徴とする請求項1
乃至請求項3いずれかに記載の力覚提示装置。
【請求項5】
前記制御手段は、人又は人の携帯物に携帯されることを特徴とする請求項1乃至
請求項4いずれかに記載の力覚提示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、力覚提示装置に関し、特に、使用者の移動を可能にする力覚提示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バーチャルリアリティ(VR)や遠隔操作などへの応用を目指し、種々の力覚提示装置が研究されている。このような力覚提示装置は、地面や机などに固定される据え置き型と、例えば特許文献1のように人体に装着される外骨格装着型とに大別される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、力覚提示装置の多くは、前述の据え置き型であり、使用者の移動が制限されてしまう。また、使用者の移動を可能とする外骨格装着型の力覚提示装置も存在するが、提示した力覚の反力を身体の別部位で受けることによる違和感や、外骨格構造による装着者の関節駆動域の制限などの問題は避けられない。さらに外骨格装着型では、力覚を正確に伝達するために装置骨格の剛性を高める必要があり、それに伴う装置重量の増加も力覚提示時の違和感の一因となっている。
本発明は、上記問題点を解決すべく、移動範囲の制限や人に違和感を感じさせることなく、力覚を提示可能な力覚提示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための力覚提示装置の構成として、人に対して力覚を提示する力覚提示装置であって、一方向に流体を噴射可能なノズルを有する力覚提示部と、前記ノズルからの流体の噴射を制御する制御手段と、を備え、前記力覚提示部は、人、或いは、人と人の携帯物の複数箇所に設けられ、前記ノズルは、前記力覚提示部が設けられた箇所において流体の噴射方向が人、或いは、人と人の携帯物に対して外向きとされ、前記制御手段は、前記各力覚提示部に設けられ、各力覚提示部の位置を検出するセンサと、運動における正しい動作を記憶する記憶手段を有し、前記各センサにより検出された位置と、記憶手段に記憶された正しい動作とを比較し、実際の人の動作とずれが検出されたときに、ずれが検出された部位に装着された力覚提示部のノズルから当該ずれを補正するように、流体の噴射を制御するコントローラと、を備え、運動における正しい動作に基づいた矯正力を提示する構成としたり、人に対して力覚を提示する力覚提示装置であって、一方向に流体を噴射可能なノズルを有する力覚提示部と、前記ノズルからの流体の噴射を制御する制御手段と、を備え、前記力覚提示部は、人又は杖に設けられ、前記ノズルは、前記力覚提示部が設けられた人又は杖において流体の噴射方向が人又は杖に対して外向きとされ、前記制御手段は、前記力覚提示部に設けられ、該力覚提示部の位置を検出するセンサと、人の移動するときの目的地の位置情報を記憶する記憶手段を有し、前記センサにより検出された位置情報に基づいて、人又は杖に進行方向を示す力が生じるように、ノズルからの流体の噴射を制御するコントローラと、を備えた構成としたりしても良い。ここでいう、外向きとは、ノズルの取り付け対象に向けて直接的に噴射しないことを意味し、ノズルから噴射された流体の一部が人や人の携帯物に吹き付けられてもよいことを許容する。即ち、必ずしも取り付け対象から放射方向や取り付け対象と平行等に限定されない。
本構成によれば、移動範囲の制限や人に違和感を感じさせることなく、力覚を提示ことができる。
また、上記課題を解決するための力覚提示装置の他の構成として、コントローラは、前記ノズルから噴射する流体の流量を可変とするようにしたりしても良い。また、ノズルから噴射される噴射物を、人の周囲の流体としたり、制御手段を、人又は人の携帯物に携帯可能としたりすることが好ましい。
また、上記課題を解決するための力覚提示方法の態様として、人に対して力覚を提示する力覚提示方法であって、一方向に流体を噴射可能なノズルを、流体の噴射方向が、該ノズルの取り付け対象である人又は人の携帯物から外向きとなるように取り付け、提示する力覚に応じて、制御手段が前記ノズルからの流体の噴射を制御するようにした。
本態様によれば、移動範囲の制限や人に違和感を感じさせることなく、力覚を提示ことができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図4】力覚提示部の他の取り付け例を示す図である。
【
図5】評価試験装置のシステム図及び測定結果を示すグラフである。
【0007】
以下、発明の実施形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明される特徴の組み合わせのすべてが発明の解決手段に必須であるとは限らず、選択的に採用される構成を含むものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、力覚提示装置の一実施形態を示す図であり、指先に力覚を提示するための装置を示している。
図2は、ノズル及び指装着具で構成される力覚提示部の断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係る力覚提示装置1は、概略、空気を噴射するノズル2と、力覚の提示対象にノズル2を取り付けるための取付手段4と、ノズル2から噴射する空気を制御する制御手段6とで構成される。ノズル2及び取付手段4は、力覚を提示する対象に対して力を生じさせる力覚提示部7を構成する。
【0009】
本実施形態では、
図1,2に示すように、ノズル2は、取付手段4を構成する指装着具8とともにゴムなどにより一体に形成され、指先の先端よりも先に設けられる。
ノズル2は、一端側が流入口12、他端側が噴射口14となる略筒状の空気通路16を備え、エアタンク10から供給される空気を一方向に噴射可能に構成される。
【0010】
ノズル2は、指装着具8を介して指先に装着したときに、一本の指が関節により曲がる平面内において、噴射口14を手のひら側に向け、指先の延長する方向と直交する方向に空気通路16が延長するとともに、この方向に噴射口14から空気が噴射されるように向きが設定される。
【0011】
空気通路16は、例えば、流入口12から噴射口14に至る中途部に、流入口12及び噴射口14の直径よりも小径となる絞り部18が設けられる。絞り部18は、空気通路16の広さが、流入口12から漸次狭くなったのちに噴射口14に向けて漸次広くなるように形成される。なお、ノズル2の形態は、これに限定されず適宜変更すればよい。
【0012】
指装着具8は、指先が挿入される指挿入部20を備える。指挿入部20は、例えば、指先の形状にフィットするように形成され、先端側に形成されたノズル2の噴射口14が掌側、流入口12が甲側となり、常に同一方向を向くように形成される。即ち、指挿入部20に指を挿入することにより、一義的にノズル2の向きが決定される。
【0013】
ノズル2の流入口12には、空気通路16に空気を供給するためのチューブ22の一端が接続される。チューブ22の他端には、空気の供給を制御するバルブ24が接続される。
【0014】
グローブ26は、指装着具8の装着性を高めるために手に装着されるとともに、力覚の提示対象である指の曲がり状態を検出する曲げセンサ28を備える。例えば、グローブ26の素材としては、指先の自然な動作を妨げない素材のものが好ましい。
【0015】
制御手段6は、概略、前述の曲げセンサ28と、バルブ24と、エアタンク10と、コントローラ30とを備える。
曲げセンサ28は、一方長尺の帯状に形成され、グローブ26の甲側の指の延長方向に沿って設けられる。曲げセンサ28は、延長方向に撓みや曲げを許容し、その撓みや曲げの状態を電気的な信号として出力する。つまり、曲げセンサ28は、指の姿勢(折れ曲がり状態)を検出する状態検出手段として機能し、本実施形態では、指角度検出量を検出する。曲げセンサ28は、後述の制御ユニットと電気的に接続され、検出した指の姿勢をコントローラ30に出力する。
【0016】
バルブ24は、例えば、手首等にバンド等の固定手段を介して携帯可能に設けられる。バルブ24は、例えば、電気的な信号に基づいて、空気の供給、停止を制御可能な2ポートバルブが適用される。バルブ24は、コントローラ30と電気的に接続され、コントローラ30から出力される信号に基づいて、ノズル2に空気を供給又は停止するための動作をする。バルブ24の入力ポートには、エアタンク10から延長するチューブの一端が接続され、出力ポートには、前述のノズル2と接続するチューブ22の一端が接続される。
【0017】
エアタンク10は、所定圧力の圧縮空気を貯留する蓄圧器であって、バルブ24から延長するチューブ32が接続され、ノズル2から噴射する空気の供給手段(流体供給手段)として機能する。エアタンク10は、例えば、人が携帯可能な可搬性を有するものを用いることにより、使用者の移動範囲の制限をなくすことができる。なお、使用者の移動範囲が限定的である場合には、エアタンク10に変えて、エアコンプレッサーを直接用いても良く、この場合移動範囲に応じた長さのチューブを用いるにより、バルブ24とコンプレッサーとを接続すればよい。
【0018】
コントローラ30は、いわゆるコンピュータであって、ハードウェア資源として設けられた演算手段としてのCPU、記憶手段としてのROM,RAM、通信手段としての入出力インターフェイスを備える。CPUが、曲げセンサ28から入力される信号に基づいて、記憶手段に格納されたプログラムに従って処理を実行することにより、バルブ24を開閉させるための信号を出力する。記憶手段には、提示する力覚の内容が記憶される。例えば、コントローラ30には、ヘッドアップディスプレイ等の人に対して仮想現実の世界を提供可能な装置と接続され、当該装置から人に提供される仮想現実の世界とリンクするように曲げセンサ28から入力される信号に基づいてバルブ24を制御する。即ち、コントローラ30は、状態検出手段である曲げセンサ28により検出された状態と記憶手段に記憶された前述の仮想現実の世界に対応するように設定された提示する力覚の内容とに基づいてノズル2からの流体の噴射を制御する。
【0019】
例えば、コントローラ30は、状態検出手段からの出力が、事前に設定した閾値を超えた際に、ノズル2から空気を噴射するようにバルブ24を動作させる。これにより、その動作において閾値付近に物体があるような感覚を提示することができる。ここでいう閾値とは、本実施形態でいうところの指が、所定の角度を超えて曲げられたときをいう。また、閾値は、例えば、仮想現実の世界に対応する使用者の動作、或いは、仮想現実の一つとみなせる遠隔操作における使用者の動作に応じて適宜設定すればよい。また、コントローラ30は、バルブ24と一体のケースに収容したりすることにより、人に携帯可能に構成するとよい。
【0020】
図3は、
図1に示す力覚提示装置1の動作を示す図である。なお、以下の説明では、次の仮定の下、力覚提示装置1の動作するものとして説明する。
1.コントローラ30には、例えば、ヘッドアップディスプレイ等の機器が接続され、使用者に視覚等を通して所定の映像が写し出される。
2.映し出される映像には、
図3(a)に示すように、親指と人差し指で仮想物体として弾力のあるボールを挟んだ(つかんだ)状態が映し出されている。
3.使用者は、親指と人差し指で挟んだボールMを人差し指を動かして握る動作をする。
4.コントローラ30には、使用者が親指と人差し指を動かしてボールMを握る動作に対応してノズル2から空気を噴射させるためのプログラム、即ち、バルブ24を制御するためのプログラムが記憶されている。
【0021】
図3(b)に示すように、使用者が、人差し指を曲げてボールMを握る動作をすると、曲げセンサ28が、人差し指の曲がり状態を検出し、曲がり状態に応じた信号をコントローラ30に出力する。曲げセンサ28からコントローラ30に入力される信号が、コントローラ30にあらかじめ設定された閾値を超えると、つまり、閾値に対応する角度を超えて指が曲げられると、コントローラ30は、バルブ24に対してノズル2から空気を図中矢印Sで示すように噴射するための信号を出力する。
【0022】
このように、曲げセンサ28により検出した人差し指の曲がり状態に応じて、コントローラ30がバルブ24を制御し、ノズル2から空気を噴射することにより、ノズル2の装着部位を介し、使用者に対してボールMを握るときにボールMから受ける反発力或いは弾性力等の反力を提示することができる。即ち、指先に装着されたノズル2から指の曲がる方向に空気を噴射することによりノズル2に生じる反力が、あたかもボールMの弾性力のように使用者に提示される。
【0023】
なお、上記実施形態では、人差し指の指先(第1関節よりも先の部分)に力覚提示部7を設け、人差し指と親指との間でボールを握る動作を提示するものとして説明したが、親指にも人差し指と同様に力覚提示部7を設けてボールを握る動作を提示するようにしても良い。
【0024】
提示する力覚は、前述の弾性を有するボールに限定されない。例えば、
図4(a)に示すように、手の各指の先端(第1関節よりも先の部分)及び手のひらに、ノズル2の噴射口14から吹き出した空気が、手のひら側から外向きに向けて吹き出すように力覚提示部7を取り付けても良い。そして、コントローラ30に接続されたヘッドアップディスプレイに仮想現実の世界において壁Wを表示させ、
図4(b)に示すように、使用者(人H)が壁Wを押す動作をしたときに、各力覚提示部7のノズル2から空気を噴射することにより、壁Wを押したときに壁Wから受ける反力Rを提示することができる。
【0025】
図5は、本実施形態に係る力覚提示装置1の有効性を調べるために行った評価試験装置70のシステム図、及び、評価試験装置70による評価試験においてノズルから噴射される空気の流量と、提示力の関係を測定した測定結果を示している。
図5(a)に示すように、評価試験装置70は、試作したノズル71をデジタル式のフォースゲージ72に固定し、流量計73でコンプレッサ74から供給される空気の流量を測定しながらフォースゲージ72により噴射反力を測定した。なお、測定値には、一定流量下での定常的な空気噴射反力を用いた。
図5(b)に示すように、ノズル2から噴射される流量が増大するにつれて力も増大することが確認され、その有効性が確認された。
即ち、例えば、ノズル2に空気が供給される経路上にコントローラ30からの信号に基づいて流量を変化させる可変流量弁を設けたり、前述のバルブ24を周期的に断続させたりして流量を変化させることにより、人に付与する力覚の大きさを自在に変化させることができる。
【0026】
前述の実施形態では、VR等の視覚に応じて力覚を提示する場合について説明したが、本実施形態に係る力覚提示装置1の適用はこれに限定されない。
図6は、力覚提示装置1の他の適用例を示す図である。
図6では、運動の一つであるバッティング動作を示し、
図6(a)は、理想的なフォームの状態、
図6(b)は、理想的なフォームを提示する使用者に、力覚提示装置1の力覚提示部7を装着した状態を示している。
【0027】
図6(a)に示す理想的なフォームをあらかじめコントローラ30に記憶させておき、
図6(b)に示すように、人HやバットBの要所に力覚提示部7を複数箇所に設けるとともに、この装着部位に当該装着部位の状態、ここでは当該装着部位の位置を検出する図外のセンサを状態検出手段として取り付ける。この場合、各力覚提示部7には、複数のノズル2が取り付けられ、各取付部位において2次元の力覚を提示可能に構成される。2次元の力覚とは、例えば、バットBの延長方向と直交する平面に沿ってバットBを移動可能とする力覚をいう。このような力覚の提示は、一つの力覚提示部7において、噴射口がバットBに対して外向きとなるように、少なくとも3つのノズル2を設けることで実現され、ノズル2毎にバルブを設けて個別にノズル2からの空気の噴射を制御すればよい。
【0028】
そして、コントローラ30は、各センサにより検出された位置と、あらかじめ記憶手段に記憶された正しい動作の位置と比較し、実際の動作とずれが検出されたときには、ずれが検出された部位に装着された力覚提示部7のノズル2から当該ずれを補正するように、各バルブを制御してノズル2から空気を噴射することにより、運動において正しい動作に基づいた矯正力を提示することができる。
【0029】
前述の各形態では、あらかじめ決められた動作に対して力覚を提示するものとして説明したが、これに限定されない。
図7は、力覚提示装置1をナビゲーションとして利用したときの形態を示している。
図7に示すように、本実施形態に係る力覚提示部7は、例えば、複数のノズル2と、複数のノズル2を腕に装着可能とする取付手段4により構成される。複数のノズル2は、力覚提示部7として腕に装着されたときに、前述の2次元の力覚を提示を可能とするように、腕Uの延長方向と直交する平面に沿い、それぞれ腕Uから外向きに空気を噴射するものと、腕Uの延長方向に沿ってそれぞれ逆向きに空気を噴射するものとで構成される。また、力覚提示部7には、人Hの位置を検出する状態検出手段としてのGPS等のセンサを取付手段4に取り付けることが好ましい。なお、本例における状態検出手段の位置は、力覚提示部7に限定さえる人Hの他の部位に携帯するようにしても良い。
また、コントローラ30には、人Hの目的地の(例えば、前述のGPSに対応した)位置情報を記憶させておく。
そして、コントローラ30は、人Hが移動したときに、センサから入力される位置情報に基づいて、腕Uに進行方向を示す力が生じるように、ノズル2のいずれかから空気を噴射させることでナビゲーションとして機能させることができる。
なお、空気を噴射するノズル2の数量及び取り付けられる向きは、適宜変更可能であり、腕Uに進行方向を示す力が生じさせれば良い。
また、このような力覚の提示は、力覚提示部7を腕Uに装着することに限定されず、例えば、
図8に示すように、力覚提示部7を人の携帯物である杖Tに装着し、杖Tを介して人Hに提示するようにしてもよい。また、力覚提示部7は、足等の人に対して直接、或いは人の携帯物であり、この人に携帯物を介して人に対して力覚を提示可能な部位であれば、いずれに取り付けられていても良い。
【0030】
前述の実施形態では、力覚を提示するための手段としてのノズル2から空気を噴射するものとして限定したが、空気に限定されない。
例えば、前述の運動における力覚の提示では、バッティングにおける正しいスイングのフォームに矯正するものとして説明したが、例えば、水泳における正しいフォームを教示することもできる。この場合、例えば、使用者の体の関節の自由度に対応して力覚を提示するように、力覚提示部7を体全体に設け、ノズル2から水を噴射することで力覚を提示すれば良い。
このとき、ノズル2から噴射する水は、使用者が泳ぐプールの水、即ち、使用者の周囲にある流体である水をポンプ等で汲み上げ、加圧して噴射量を制御するバルブに供給するようにすれば良い。つまり、ポンプは、ノズル2から噴射する流体を供給する流体供給手段として機能する。
【0031】
つまり、力覚を提示するために、ノズル2から噴射するものは、使用者の周囲の物質に応じて、空気等の気体や、水等の液体、或いは粉体等の流体を利用することができる。
また、ノズル2から噴射するものは、気体や液体などの単体からなるものに限定されず、例えば、所謂スプレーなどのように、気体と液体の混合物であっても良い。このように、気体と液体を混合し、ノズル2から噴射することにより、噴出物の質量が大きくなり、提示できる反力を増大させることができる。このような混合物は、例えば、ジメチルエーテルやフロン系気体のように、常温で気体の物質を液体の状態で混合し、これをノズル2から噴射することにより、噴霧後に蒸発してなくなるため、使用者を囲む周囲の物質に依存せず利用することができる。なお、噴射されたものが、必ずしも蒸発することは必須ではない。
【0032】
また、力覚提示装置1の適用は、前述の仮想現実における力覚の提示、運動時の正しい動作の教示等に限定されず、リハビリ等にも適用することができる。
【0033】
以上説明したように、力覚を提示する力覚提示部7を、人に対して直接携帯、或いは、人の携帯物である杖Tに装着し、人に対して間接的に携帯させて、ノズル2から空気等の流体を噴射させたときの噴射反力を力覚提示部7に作用させることにより、力覚を提示することにより、外骨格型のような反力支持部を設けることなく、力覚提示部7を装着した箇所に力覚を提示することが可能となる。
【符号の説明】
【0034】
1 力覚提示装置、2 ノズル、4 取付手段、6 制御手段、7 力覚提示部、
8 指装着具、10 エアタンク、12 流入口、14 噴射口、16 空気通路、
18 絞り部、20 指挿入部、22 チューブ、24 バルブ、
26 グローブ、28 センサ、30 コントローラ、32 チューブ。