(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】給気システム
(51)【国際特許分類】
F24F 7/007 20060101AFI20240222BHJP
F24F 7/02 20060101ALI20240222BHJP
F24F 11/77 20180101ALI20240222BHJP
F24F 11/88 20180101ALI20240222BHJP
H02K 7/14 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
F24F7/007 B
F24F7/02 L
F24F11/77
F24F11/88
H02K7/14 A
(21)【出願番号】P 2020005879
(22)【出願日】2020-01-17
【審査請求日】2022-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】502340996
【氏名又は名称】学校法人法政大学
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】小林 一行
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 嘉二郎
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-180030(JP,A)
【文献】特開2015-098950(JP,A)
【文献】特開2019-002628(JP,A)
【文献】特開2011-133221(JP,A)
【文献】特開平01-123933(JP,A)
【文献】特開2006-097959(JP,A)
【文献】特開昭60-000244(JP,A)
【文献】特開平05-196268(JP,A)
【文献】特開2001-221474(JP,A)
【文献】特開平08-327110(JP,A)
【文献】登録実用新案第3168444(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2005/0156053(US,A1)
【文献】特開昭58-045410(JP,A)
【文献】特開2012-223150(JP,A)
【文献】特開平08-014610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/007
F24F 7/02
F24F 11/77
F24F 11/88
H02K 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給気システムであって、
外気を室内に給気可能な給気扇と、
室内外の区画部に配置され、室内外の差圧を検知する差圧センサとしてのファンと、
前記給気扇の動作を制御する制御部と、
前記ファンのモーターに接続された電圧検出部と、
前記室内に設置される室内燃焼機器と、
前記室内燃焼機器に接続されて室外に導出される煙突と、
を具備し、
前記モーターはかご型インダクションモーターであり、
前記電圧検出部は、室内外の差圧によって室内へ流れる流体の力を受けて前記ファンが受動的に回転した際に、前記かご型インダクションモーターにより生じる電圧を検出することが可能であり、
前記制御部は、前記電圧検出部で検出された電圧が所定値を超えると前記給気扇を動作させ
、
前記煙突は、中心の排気層の外周に他の層が形成された複数層構造であり、前記排気層及び前記他の層は、上端が室外に解放され、
前記給気扇は、前記他の層に設けられる給気口に配置されることを特徴とする給気システム。
【請求項2】
前記ファンは無線通信部を有し、前記電圧検出部で検知された電圧情報が、前記制御部に無線で送信されることを特徴とする請求項1記載の給気システム。
【請求項3】
前記煙突の前記排気層の温度を測定する第1の温度センサが配置され、
前記制御部は、前記室内燃焼機器の稼働を検知し、かつ、前記第1の温度センサにより測定された温度が所定温度以下の際には、前記給気扇の動作を停止することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の給気システム。
【請求項4】
前記室内燃焼機器は薪ストーブであり、
前記室内燃焼機器又は前記室内燃焼機器近傍の前記煙突の前記排気層の温度を測定する第2の温度センサが配置され、
前記制御部は、前記第2の温度センサにより測温される温度が所定温度以上となると、前記室内燃焼機器が稼働したと検知し、前記第2の温度センサにより測温される温度が所定温度以下となると、前記室内燃焼機器の稼働が停止したと検知することを特徴とする請求項
3記載の給気システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記電圧検出部で検出された電圧が所定値を超え、且つ、前記第1の温度センサにより測定された温度が所定温度以下であり、前記給気扇の動作を停止した際に、あらかじめ設定された所定時間、前記ファンを動作させて、前記ファンによって給気を行うことを特徴とする請求項
3又は請求項
4に記載の給気システム。
【請求項6】
前記給気扇は、室内における前記煙突の上方に配置され、前記給気扇の前方に、流体の流れを制御するブレードが配置されることを特徴とする請求項
3から請求項
5のいずれかに記載の給気システム。
【請求項7】
前記煙突は、前記排気層及び前記他の層の2層構造であり、少なくとも前記給気口よりも室外側において、前記他の層の内部の外周側には、内周側と比較して高密度に断熱材が配置され、前記他の層の内部の内周側には空気の流路が形成されることを特徴とする請求項
1から請求項
6のいずれかに記載の給気システム。
【請求項8】
前記煙突は3層以上の構造であり、前記排気層の外周側に前記給気口が形成される給気層が形成され、前記給気層の外周側に断熱材が充填される断熱層が形成されることを特徴とする請求項
1から請求項
7のいずれかに記載の給気システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内へ給気を行う給気システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建材や家具から発生するガスや、暖房や調理などにおいて使用される燃料の燃焼により生じるガスなどによる身体への悪影響が知られている。例えば、厨房や室内燃焼器から発生する一酸化炭素が室内に滞留することによる事故がある。このため、室内の換気が行われている。
【0003】
通常、室内の換気は、換気扇によって室内の空気を室外に排出することで行われる。換気扇によって室内の空気が排気されると、部屋の隙間などから外気が給気されることで、室内が負圧になることがない。
【0004】
近年、遮音や断熱を目的とした高気密住宅が増えつつある。高気密住宅は、隙間からの給気が行われにくいため、給気口が設置される。このようにすることで、換気扇で室内ガスが排気されるとともに、給気口から新鮮な空気が給気され、室内外のバランスが確保される。
【0005】
しかし、使用者が、室内の温度を保つために給気口を塞いでしまう場合や、給気口前に荷物などを置いたままとなり、十分に給気が行われないケースがある。このように給気が十分に行われないと、室内が負圧となる。
【0006】
このように室内が負圧となると、ドアなどが開きにくくなるという問題がある。また、隙間から室内への空気の流入による騒音の発生や、使用していない換気扇が、逆回転し、これによる騒音の発生の恐れもある。
【0007】
また、室内が負圧であるため、換気扇による排気が十分に行われなくなる恐れがある。したがって、前述したような有害なガスや水蒸気が十分に排気されなくなる恐れがある。例えば、ストーブなどの排煙を行う煙突から、不完全燃焼した一酸化炭素が逆流して室内に充満するような事故も報告されている。このように、室内が負圧であると、室内で発生した有害ガスが十分に排気されずに中毒の原因となる恐れもある。
【0008】
このように、室内が負圧となることを対策するため、例えば、換気扇とは別に給気扇を設ける方法がある。この際、感度よく給気扇を動作させるために、かご型インダクションモーターを用いた給気扇を差圧センサとして利用する方法がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1の方法において、差圧センサとして感度を高めるためには、小型の給気扇を用いる必要がある。このため、必ずしも十分な給気能力を確保することができるわけではない。したがって、差圧が大きくなると、特許文献1の方法では、室内の負圧を解消することができない場合がある。
【0011】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、効率よく室内外の差圧を解消することが可能な給気システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した目的を達するために本発明は、給気システムであって、外気を室内に給気可能な給気扇と、室内外の区画部に配置され、室内外の差圧を検知する差圧センサとしてのファンと、前記給気扇の動作を制御する制御部と、前記ファンのモーターに接続された電圧検出部と、前記室内に設置される室内燃焼機器と、前記室内燃焼機器に接続されて室外に導出される煙突と、を具備し、前記モーターはかご型インダクションモーターであり、前記電圧検出部は、室内外の差圧によって室内へ流れる流体の力を受けて前記ファンが受動的に回転した際に、前記かご型インダクションモーターにより生じる電圧を検出することが可能であり、
前記制御部は、前記電圧検出部で検出された電圧が所定値を超えると前記給気扇を動作させ、前記煙突は、中心の排気層の外周に他の層が形成された複数層構造であり、前記排気層及び前記他の層は、上端が室外に解放され、前記給気扇は、前記他の層に設けられる給気口に配置されることを特徴とする給気システムである。
【0013】
前記ファンは無線通信部を有し、前記電圧検出部で検知された電圧情報が、前記制御部に無線で送信されてもよい。
【0015】
前記煙突の前記排気層の温度を測定する第1の温度センサが配置され、前記制御部は、前記室内燃焼機器の稼働を検知し、かつ、前記第1の温度センサにより測定された温度が所定温度以下の際には、前記給気扇の動作を停止してもよい。
【0016】
前記室内燃焼機器は薪ストーブであり、前記室内燃焼機器又は前記室内燃焼機器近傍の前記煙突の前記排気層の温度を測定する第2の温度センサが配置され、前記制御部は、前記第2の温度センサにより測温される温度が所定温度以上となると、前記室内燃焼機器が稼働したと検知し、前記第2の温度センサにより測温される温度が所定温度以下となると、前記室内燃焼機器の稼働が停止したと検知してもよい。
【0017】
前記制御部は、前記電圧検出部で検出された電圧が所定値を超え、且つ、前記第1の温度センサにより測定された温度が所定温度以下であり、前記給気扇の動作を停止した際に、あらかじめ設定された所定時間、前記ファンを動作させて、前記ファンによって給気を行ってもよい。
【0018】
前記給気扇は、室内における前記煙突の上方に配置され、前記給気扇の前方に、流体の流れを制御するブレードが配置されてもよい。
【0019】
前記煙突は、前記排気層及び前記他の層の2層構造であり、少なくとも前記給気口よりも室外側において、前記他の層の内部の外周側には、内周側と比較して高密度に断熱材が配置され、前記他の層の内部の内周側には空気の流路が形成されてもよい。
【0020】
前記煙突は3層以上の構造であり、前記排気層の外周側に前記給気口が形成される給気層が形成され、前記給気層の外周側に断熱材が充填される断熱層が形成されてもよい。
【0021】
本発明によれば、ファンによって室内外の差圧を検出して、室内外の差圧が所定以上大きくなった場合に別の給気扇を動作することで、効率よく室内外の差圧を解消し、換気を促進することができる。この際、室内外の差圧に応じて区画部を流れる流体によって、ファンを受動的に回転させ、この際に生じる起電力によって差圧を検出するため、小さな差圧も感度よく検出することができる。また、高価な圧力センサなどを用いる必要もない。また、このような構成とすることで、瞬間的な差圧による誤動作も防止することができる。また、ファンを小型化して、感度を上げても、差圧センサとしてのファンとは別の給気扇を稼働させるため、十分な給気能力を得ることができる。
【0022】
また、ファンによって検出される差圧を無線通信によって送信することで、ファンと給気扇とが離れている場合でも、給気扇の動作を容易に制御することができる。
【0023】
また、煙突に配置された給気口に給気扇を配置し、給気される気体を、室内燃焼機器の煙突の排気層の外側に流すことで、給気される気体と高温の排気ガスとの熱交換を行うことができる。このため、室内に冷気が流入することを抑制することができる。
【0024】
また、煙突の排気層の温度を測定し、測定された温度が所定温度以下の際には、給気扇の動作を停止するようにすることで、排気層の温度が過剰に下がることを抑制することができる。このため、煙突から上昇気流(ドラフト)が低下して煙突からの排気能力の低下を抑制することができる。
【0025】
この際、室内燃焼機器が薪ストーブである場合には、室内燃焼機器又はその近傍の煙突の排気層の温度を測定し、測温される温度が所定温度以上となると、室内燃焼機器が稼働したと検知することで、夏場などの室内燃焼機器が稼働していないときには、前述した排ガス温度によらず、給気扇を稼働し、室内の負圧を解消することができる。このため、室内が負圧となり、ドアなどが開きにくくなることや、隙間から室内への空気の流入による騒音の発生等を抑制することができる。
【0026】
また、室内燃焼機器が稼働時に排気層の温度が所定以下となった場合に、差圧が所定以上である場合には、ファンを所定時間稼働させることで、ファンによる給気能力の限界はあるものの、差圧を低減することができる。
【0027】
また、給気装置が室内における煙突の上方に配置され、給気扇の前方に、流体の流れを制御するブレードを配置することで、給気扇を室内の空気の循環のためのサーキュレータとして利用することができる。
【0028】
また、煙突が2層構造の場合には、他の層の内部の外周側に断熱材が配置され、内周側に空気の流路を形成することで、煙突の断熱性と熱交換とを両立させることができる。
【0029】
また、煙突が3層以上の構造の場合には、排気層の外周側に給気層を形成することで、給気と熱交換を行うことができ、給気層の外周側に断熱材が充填される断熱層を形成することで、煙突の断熱性を確保することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、効率よく室内外の差圧を解消することが可能な給気システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図4】(a)、(b)は、煙突5及び給気口15の構造を示す水平方向概略断面図。
【
図5】(a)、(b)は、給気装置6aの動作を示す鉛直方向概略断面図。
【
図10】熱交換時に奪われる熱エネルギーを評価するための装置を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、給気システム1を示す概略図である。室内2aと室外2bとを区切る区画部(例えば壁)には、給気口39a、39bが設けられ、給気口39a、39bには、それぞれ、差圧検知装置4と、給気装置6が別々に配置される。
【0033】
差圧検知装置4は、室内2aと室外2bとの差圧を検出するものであり、主に、ファン37、電圧検出部29、通信部35b等から構成される。
図2は、差圧検知装置4の構成を示す概略図である。差圧検知装置4のファン37は、給気口39aに配置される、差圧センサとして機能する。ファン37は、モーター38と羽からなる。
【0034】
モーター38に接続された電圧検出部29によって室内外の差圧を検出し、通信部35bによって、給気装置6へ差圧情報が送信される。
図1に示すように、給気装置6は、主に、給気扇7、制御部31、通信部35a等から構成される。差圧検知装置4の通信部35bから送信された電圧情報(電圧から算出される差圧情報)は、通信部35aで受信される。制御部31は、差圧検知装置4からの情報に基づいて、給気扇7の動作を制御する。
【0035】
なお、通信部35a、35bは、例えばBluetooth(登録商標)や、wifi(登録商標)などの無線通信を利用できるが、有線による通信であってもよい。
【0036】
ここで、一般的な換気扇用などのインダクションモーターは、かご型でコンデンサ型モーターが多い。かご型インダクションモーターは、コイルと導体とからなるかごにより構成される。コイルで発生する回転磁界によって、かごの導体に渦電流が誘発され、回転力を得るものである。このように、かご型インダクションモーターでは、永久磁石は使用されない。
【0037】
かご型インダクションモーターの回転子は、渦電流を流すかご状の導体とそれを支える鉄心からなる。鉄心は、複数の鋼板からなる。この鋼板は回転磁界中で常に同じ方向からの磁界にあるため、一度インダクションモーターを使用すると、鉄心が磁化され永久磁石となる。この結果、一度でも回転をさせたかご型インダクションモーターの回転子の鉄心には、無給電状態でもわずかな磁束(いわゆる残留磁気)が存在し、これがごく弱い永久磁石として働き、無給電で外力により回転子を回転させた場合に、磁界がコイルを切ることで小さな起電力を生じさせることができる。
【0038】
なお、DCモーターは固定子に永久磁石が用いられているために、この永久磁石がつくる強い磁気によって静止時には回転子の鉄心の動きを制限する力が働くので、この力を超える外力が与えられなければ、弱い力では、受動的な回転を開始することはできない。したがって、DCモーター駆動のファンは、数Pa(1Pa=約0.1mmAq)程度の圧力差では受動的に回転を開始できず、数十Pa以上の差圧でないと機能しない。同様に、現存する従来のベローズやダイアフラム型または半導体型圧力センサ等の検出能力も数十Pa以上であり、本実施形態のような、数Pa程度の圧力を検知できるものではない。
【0039】
このように、モーター38はファン37の回転速度に応じた電圧が発生する。ファン37の受動的な回転速度は、給気口39aを流れる流体の流速(流量)に依存する。また、給気口39aを流れる流体の流速(流量)は、室内外の差圧に依存する。したがって、モーター38から発生する電圧を電圧検出部29で検出することで、室内外の差圧を知ることができる。また、ファン37が回転しない圧力(すなわち不感帯)があるため、微小な圧力変化や瞬間的な圧力変化によって、誤動作することもない。
【0040】
なお、ファン37が大型になると、ファン37の受動的な回転に対する不感帯が大きくなる。このため、差圧を検知するためのファン37を大型化するのは望ましくない。しかし、ファン37のみによって給気を行うと、ファン37による給気能力が小さいため、十分な差圧解消を行うことが困難となる。これに対し、本発明では、ファン37の受動的な回転によって差圧(電圧)を検知し、その差圧(電圧)が所定以上であると判断されると、制御部31によって他の給気扇7を動作させる。このため、給気扇7はファン37と比較して大型のもの(給気能力の大きなファン)を適用することができ、十分な給気能力を得ることができる。
【0041】
以上、本実施の形態によれば、高価な圧力センサを用いることなく、簡易な構造で給気扇7の動作を制御することができ、差圧が大きい時には、給気扇7によって短時間で給気を行うことができる。
【0042】
また、差圧検知装置4では、数Paの極めて小さな差圧に対しても安定して検出することができる。このため、従来のベローズやダイアフラム型または半導体型圧力センサと比較しても、微小な差圧を安定して検出することができる。
【0043】
また、差圧検知装置4と給気装置6が別々であるため、感度のよい差圧検知と、十分な給気能力とを両立することができる。
【0044】
なお、給気扇7を動作した後も、引き続き差圧検知装置4による差圧検知は続けることができる。このため、給気扇7の動作後においても差圧の解消が十分ではないと判断されると、制御部31は、給気扇7の回転数を上げてもよい。同様に、給気扇7の動作後において、差圧が十分に解消できた場合には、制御部31は、給気扇7の回転数を下げ、回転数が所定以下となる場合には、給気扇7の動作を停止してもよい。
【0045】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
図3は、第2の実施形態にかかる給気システム1aを示す概略図である。なお、以下の説明において、給気システム1と同様の構成については、
図1~
図2と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0046】
給気システム1aは、給気システム1とほぼ同様の構成であるが、給気装置6aが煙突5に配置される点で異なる。給気装置6aは、室内2aにおける煙突5の上方に配置される。室内2aには、室内燃焼機器3が設置される。室内燃焼機器3は、例えばガスを用いた厨房燃焼機器や薪ストーブであるが、以下、薪ストーブを例にして説明する。
【0047】
室内燃焼機器3には煙突5が接続される。煙突5の端部は建屋の上方の室外2bに導出される。なお、煙突5は、鉛直方向にまっすぐに配置されるのではなく、途中に屈曲部を設けてもよい。
【0048】
図4(a)は、煙突5の水平方向断面図である。煙突5は、複数層構造であり、図に示す例では、中心の排気層9の外周に他の層である給気層11が形成された2層構造である。排気層9及び給気層11は、上端が室外2bに開放される。なお、煙突5の上部であって、排気層9及び給気層11のそれぞれの開放部には屋根が設けられ雨等の浸入が抑制される。また、開放部には網やフィルターが設けられ、ごみや虫などの侵入が抑制される。
【0049】
排気層9は、室内燃焼機器3と連通し、室内燃焼機器3からの排気が上方に流れて室外2bに排出される流路である(
図3の矢印A方向)。また、給気層11は、給気装置6aから室内2aに給気するための外気が流れる流路である(
図3の矢印B方向)。
【0050】
給気層11は、少なくとも給気装置6aが配置される給気口15よりも室外側(上方)に形成される。給気層11の内部の外周側(煙突5の最外周部の内面)には、内周側(排気層9の外面側)と比較して高密度に断熱材19が配置される。例えば、給気層11の外周側にのみ断熱材19が配置され、内周側には断熱材19が配置されない。このため、給気層11の内部の内周側が空気の流路となる。
【0051】
なお、煙突5は3層以上であってもよい。
図4(b)は、煙突5が3層構造である例を示す。煙突5が3層構造の場合には、中心の排気層9の外周側に給気口15が形成される給気層11が形成され、給気層11の外周側に断熱材19が充填される断熱層13が形成される。すなわち、この場合には、給気層11内部に断熱材を配置する必要はなく、給気層11の全体が流路となる。
【0052】
なお、煙突5が何層構造であっても、給気口15よりも下方(室内燃焼機器3側)には、給気層11の流路は不要である。このため、煙突5が全長にわたって複数層構造で形成されたとしても、給気口15よりも下方の排気層9以外の空間は断熱材19で埋めてもよい。また、排気層9以外の層は、煙突5の下端部において塞いでもよい。以下、煙突5が2層構造の例を説明し、給気口15よりも下方においては、排気層9のみを図示する。
【0053】
前述したように、煙突5の所定の位置には給気装置6aが配置される。本実施形態では、
図3に示すように、給気装置6aは、室内2aにおける煙突5の上方に配置される。
【0054】
図4(a)、
図4(b)に示すように、給気層11には、室内2aと連通する給気口15が形成され、給気装置6aは、給気口15に配置される。給気装置6aは、主に、開閉体17、給気扇7、制御部31、通信部35a等から構成される。制御部31は、給気扇7の動作を制御するものであり、給気装置6aの給気扇7は、給気口15に配置される開閉体17よりも室内2a側に配置される。給気扇7は、給気層11(室外2b)から室内2aへ送風することができる。なお、給気扇7の送風側には、図示を省略したブレードが配置されて、室内2aに対する風向を制御することができる。
【0055】
次に、給気システム1aの機能について説明する。前述したように、室内燃焼機器3が稼働すると、上昇気流(ドラフト)によって、煙突5の排気層を排ガスが流れ(
図3の矢印A)、室外2bに排出される。このため、燃焼時に生じる一酸化炭素などの有毒なガスを室外2bに排出し、室内2a内に漏れることを抑制することができる。
【0056】
なお、煙突5は、断熱されているため。排ガスの熱が煙突5の外部に放熱されることが抑制される。このため、排ガスの上昇気流が促進されて効率よく排ガスを外部に排出することができる。
【0057】
一方、室内2aにおいて換気扇などを使用すると、室内2aが負圧となる。このため、室内燃焼機器3内部から、ガスが室内2aに漏れ出す恐れがある。しかし、室内2aの圧力が所定以下に下がると、前述した差圧検知装置4によって差圧が所定以上であることを検知することができる。このため、給気装置6aの給気扇7が稼働し、外気が煙突5の給気層11に流入して下降し(
図3の矢印B)、給気口15から室内2aに流入する。
【0058】
この際、外気が給気層11内を流れる間に、外気は排気層9内の排ガスと熱交換が行われる。このため、給気口15まで流下して室内2aへ給気される際には、外気温に対して、ある程度の温度に昇温している。このため、薪ストーブを利用している際に、冷気が室内2aに給気されることを抑制することができる。
【0059】
図5(a)、
図5(b)は、給気装置6aの動作を示す図である。
図5(a)に示すように、開閉体17は、自重や磁石、ばね(図示省略)などによって、室内2aと室外2b(給気層11)との差圧が所定以下では閉じた状態で保持される。一方、給気扇7が動作すると、
図5(b)に示すように、開閉体17が、ばねや重力に対抗して押し開かれる(図中矢印C)。なお。開閉体17は、中心の回転軸に対して、上下が折り畳まれて流路を確保する例を示すが、給気扇7による給気によって開閉可能な構造であれば、その構造は特に限定されない。また、開閉体17は、室内側にのみ開き、ストッパ等によって逆方向には開くことがない。
【0060】
なお、開閉体17は必ずしも必須ではないが、開閉体17と給気扇7とを前述した順に直列に配置する利点は以下の通りである。室内外の差圧が小さいと、給気口15には流体は流れない。しかし、室内燃焼機器3が稼働すると、前述したように、排気層9には高温の排ガスが流れるため、排気層9の外周面は高温となる。
【0061】
この際、開閉体17が配置されないと、排気層9の外周面からの輻射熱等により、給気扇7が高温にさらされる。流体が流れている際には、給気扇7は、流体温度(例えば数十℃程度)程度までは上昇しても、それ以上の温度になると流体による冷却により、過剰な温度上昇は抑制されるが、流体による冷却のない状態で長時間高温の輻射熱を受け続けると、モーター等の故障の要因となる。このため、開閉体17を、流体が流れていない時における、熱からの給気扇7の保護機構として機能させることができる。
【0062】
また、給気扇7のみでは、通常時に給気口15を塞ぐことはできず、給気扇7の羽の間から常に外気が流入する恐れがある。しかし、開閉体17によって通常時は給気口15を塞ぐことができるため、室内の気密性を確保することができる。
【0063】
また、開閉体17のみを用いたのでは、広い範囲の差圧に応じた給気を制御することは困難である。例えば、開閉体17の開閉力を大きくすると(例えば閉じるためのばね力を強くすると)、大きな差圧が生じないと開閉体17が開かないため、給気が行われない圧力差が大きくなり、いわゆる不感帯が大きくなる。このため、小さな差圧が生じた際に、十分な給気を行うことはできない。
【0064】
一方、あまりにも軽く開閉体17が開くと、誤動作の要因となるだけでなく、それほど大きな差圧でない場合でも開閉体17の開度が大きくなり、より大きな差圧が生じた際の開閉体17のそれ以上の開き代を確保することができない。このため、ある程度の差圧以上では、給気能力が十分発揮されなくなる。なお、給気口15を大きくすればこの問題は解消できるが、装置の大型化となる。
【0065】
これに対し、開閉体17と給気扇7と組み合わせることで、小さな差圧で開閉体17を開くようにしても、差圧がより大きくなると給気扇7によって強制的に給気を行うことができるため、効率よく差圧を解消することができる。なお、給気扇7が稼働を開始する差圧に対して、開閉体17が開き始める差圧が小さければ、わずかな差圧の場合には、給気扇7の稼働ではなく、開閉体17の受動的な開閉によって差圧が低減することができる。
【0066】
給気扇7の稼働により、室内の圧力が戻り、室内外の差圧が小さくなると、給気扇7が停止し、室内2aへの給気が遮断される。
【0067】
以上、第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、煙突5に給気装置6aを配置することで、薪ストーブを焚いているような状態において、室内に冷気が流入することを抑制することができる。
【0068】
また、煙突5の給気層11の外周側は断熱されているため、排ガス温度が過剰に下がることを抑制することができる。このため、排ガスの上昇気流の低下を抑制することができる。また、煙突5自体を熱交換器として使用するため、別途の熱交換器や熱交換用のスペースが不要である。
【0069】
また、開閉体17と給気扇7とを組み合わせることで、給気扇7を煙突5の熱から保護することができるとともに、広範囲な差圧に対して適切に給気能力を発揮することができる。
【0070】
また、給気装置6aは、室内2aにおいて、煙突5の上方に配置される。また、給気扇7の前方には、風向を制御することが可能なブレードが配置される。このため、給気扇7は、室内2aの天井付近に滞留する暖気を循環させるサーキュレータとして機能させることができる。
【0071】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。
図6は、第3の実施形態にかかる給気システム1bを示す概略図である。給気システム1bは、給気システム1aとほぼ同様の構成であるが、給気装置6aに温度センサ21a、21bが接続される点で異なる。
【0072】
前述した第2の実施形態では、制御部31は、差圧検知装置4の電圧検出部29により検出された電力情報によってのみ給気扇7の動作を制御したが、本実施形態では、さらに、前述した温度センサ21a、21bの温度情報が用いられる。
【0073】
煙突5又は室内燃焼機器3には、温度センサ21a、21bが配置される。第1の温度センサである温度センサ21aは、煙突5の上方(少なくとも給気装置6aよりも室外2b側)に設置され、当該部位において、排気層9の温度を測定する。また、第2の温度センサである温度センサ21bは、室内燃焼機器3又は室内燃焼機器3近傍の煙突5に設置され、室内燃焼機器3又は当該部位の排気層9の温度を測定する。
【0074】
図7は、給気装置6aを示す図である。給気装置6aは、主に、開閉体17、給気扇7、制御部31、通信部35a等から構成され、制御部31には、温度センサ21a、21bが接続される。なお、前述したように、給気扇7の送風側には、ブレード25が配置されて、室内2aに対する風向を制御することができる。
【0075】
前述したように、室内燃焼機器3からの排ガスは、上昇気流(ドラフト)によって煙突5の上方に移動し、室外2bへ排出される。この上昇気流は排ガスの温度に依存するため、排ガス温度が低いと、十分な上昇気流を得ることができず、排ガスの排出能力が低下する。このため、室内燃焼機器3の燃焼が悪化し、一酸化炭素等の発生が促進される恐れがある。また、排気がスムーズに行われないことで、排気層9内への煤などの付着物が堆積する。
【0076】
そこで、温度センサ21aによって、排気層9の温度を測定することで、排ガス温度を把握し、排ガス温度が所定よりも低い場合には、制御部31は給気扇7の作動を停止する。このようにすることで、給気量を少なくして、排ガスとの熱交換を抑制し、排ガス温度の更なる低下を抑制することができる。このため、排ガスの上昇気流の低下を抑制することができる。
【0077】
なお、室内燃焼機器3が稼働していないときには、排気層9の温度による給気扇7の運転制御は不要である。このため、温度センサ21bによって、室内燃焼機器3又は室内燃焼機器3近傍の排気層9の温度を測定することで、室内燃焼機器3の稼働を把握することができる。例えば、制御部31は、温度センサ21bにより測温される温度が所定温度以上となると、室内燃焼機器3が稼働したと検知し、温度センサ21bにより測温される温度が所定温度以下となると、室内燃焼機器3の稼働が停止したと検知する。すなわち、制御部31は、室内燃焼機器3の稼働を検知し、かつ、温度センサ21aにより測定された温度が所定温度以下の際には、差圧が多くても給気扇7の動作を停止する。
【0078】
なお、室内燃焼機器3が薪ストーブなどではなく、厨房のガス機器などの場合には、ガスの燃焼を検知するフレームアイなどによって、室内燃焼機器3の稼働を検知してもよい。
【0079】
なお、温度センサ21aにより測定された温度が所定温度以下であり、差圧が多くても給気扇7の動作を停止した場合には、給気が行われない。前述した開閉体17の受動的な開閉によって、多少の給気を行うことはできるが、十分な差圧解消を行うことは困難である。
【0080】
この場合には、差圧検知装置4に代えて、差圧検知装置4aを用いてもよい。
図8は、差圧検知装置4aの構成を示す概略図である。差圧検知装置4aは、電圧検出部29、制御部31a、通信部35b等で構成され、電源と接続される。前述したように、モーター38に接続された電圧検出部29によって室内外の差圧を検出する。制御部31aは、ファン37の動作を制御することができる。
【0081】
前述したように、室内外の差圧が小さい時には、ファン37が回転せず、電圧検出部29では電圧は検出されない。このため、制御部31aは、モーター38へ電力を供給する電源との回路を遮断する。
【0082】
室内外の差圧が所定以上となり、ある程度の流速以上の流体が流れると、ファン37が回転を開始する。ファン37から発生する電力を電圧検出部29で検出し、電力が所定値以上となると、通信部35bによって、給気装置6aに情報を送信する。一方、前述したように、給気装置6aにおいて、室内燃焼機器3が稼働しているが、温度センサ21aにより測定された温度が所定温度以下と判断されると、給気装置6aの制御部31は、給気扇7の動作を停止し、通信部35aによって、かかる情報を差圧検知装置4aに送信する。
【0083】
差圧検知装置4aは、給気扇7の動作停止の情報を受信すると、制御部31aによって、スイッチ41を切り替え、ファン37に電源からの電力を供給してファン37を動作させる。ファン37が回転することで、流体を室内2aに流すことができる。
【0084】
制御部31aは、スイッチ41を切り替えて所定時間だけファン37を動作させた後、再度スイッチ41を切り替えて、ファン37の運転を停止する。ここで、ファン37の動作時間tは、以下の式で与えられる。
t=r・V/(R・T・K)
(r:室内の空気のもれ流量抵抗、V:換気空間の容積、R:気体定数、T:室内の絶対温度、K:空気のモル・体積変換係数)
【0085】
ファン37を所定時間動作させることで、室内外の差圧を低減することができる。なお、ファン37の動作中に扉や窓などが開かれなければ、ファン37の動作停止後、再度差圧が上昇する。この場合には、差圧が所定値を超えた際に、制御部31aは、再度ファン37を動作させる。以上により、室内が負圧となることを抑制することができる。なお、制御部31aは、電圧検出部29で検出された電圧によって、スイッチ41を動作させることができ、スイッチ41を動作させる時間を設定可能なタイマー機能を有すれば、公知の機器を使用することができる。
【0086】
なお、給気口39aから給気される外気は低温であるため、室温を下げる要因となるが、室内燃焼機器3が稼働しており、かつ、排ガス温度が低い状態であって、さらに差圧が所定以上である場合には、緊急避難的にファン37を用いることで、室内燃焼機器3からの排ガスの逆流を抑制することができる。
【0087】
なお、室内燃焼機器3が稼働している状態で排ガス温度が低い状態は、長時間続くことはない。また、差圧検知装置4aによって所定時間ごとに差圧検出を行うことができるため、差圧検知装置4aで検出した差圧が所定以下となれば、ファン37の運転は停止する。また、ファン37の運転中に、温度センサ21aによって測定される排気層9の温度が所定以上となった場合には、給気装置6aの制御部31は、給気扇7を動作させるとともに、通信部35aによって、かかる情報を差圧検知装置4aに送信し、制御部31aによってファン37の運転が停止する。
【0088】
第3の実施形態によれば、第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、排ガス温度が低い場合には、給気扇7の動作を停止することで、排ガスの上昇気流の低下を抑制することができる。なお、温度センサ21aを、ペルチェ素子などを用いた温度差起電力発生装置として使用し、この電力を給気装置6aの動作に利用してもよい。
【0089】
また、この間の差圧低減のために、ファン37を稼働させることで、排ガス温度が上昇するまでの時間における室内の給気を行うことができる。この際、制御部31aは、所定以上の差圧を検出すると、タイマーによって、所定時間だけファン37を動作させる。このため、短時間でファン37のONとOFFとを繰り返すことによる騒音等を抑制することができる。
【0090】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0091】
たとえば、各実施形態の構成は互いに組み合わせることができることは言うまでもない。また、別途の一酸化炭素センサなどを用いて、室内のガス濃度を測定し、一酸化炭素センサによって、室内の一酸化炭素濃度が高いと判断された際には、強制的に給気装置6、6aを稼働するようにしてもよい。また、例えば、差圧が大きいと判断された際に、警報を発してもよい。
【0092】
また、ファン37及び給気扇7の動作を制御する制御部は、一体であってもよく、別個に配置されていてもよい。また、給気扇7の稼働時には、ファン37も一定時間同時に稼働するようにしてもよい。
【実施例】
【0093】
(室内負圧試験)
大型の換気扇を駆動した場合、建物の気密度が高ければ室内ゲージ圧は大気圧から大幅に下がる。これを解消するため、特開2015-98950号公報では、給気扇(例えば、100mmφのパイプファン)を、OFF状態では差圧センサとして使用し、排気が必要と判断された場合には電源をONとし給気扇として用いている。
【0094】
しかしレンジフードの換気扇などのように、例えば800W近い大型のファンで排気を行った際には、このような小型のパイプファンでは給気は不十分である。そこで、本発明の給気システムを設置した室内において、上記差圧センサで給気が必要と判断されたとき、差圧センサとして用いる給気扇とともに、その信号を受けて付加的に大型給気扇を駆動することで内外差圧を0にすることの可能性を実証した。
【0095】
試験を行った部屋は、約2.9m×約6.6m×天井高さ約2.4mの比較的気密性の高い部屋を用いた。一部の窓に、換気扇として、210m3/hの排気扇と、排気風量調整型大型DCファンを固定した。また、給気用のファンとして、100mmφのファンA(ファン37に相当し、85m3/hの給気能力)と、150mmφのファンB(給気扇7に相当し、150m3/hの給気能力)とを配置した。その他の窓を密閉し、給気用のファンA及び給気扇Bを稼働せず、排気扇を稼働するとともに、DCファンの電圧を調整することで、室内を-10Paに調整した。
【0096】
この状態で、ファンAは受動的に回転し、負圧を検知することができた。本実施例では、この状態から、まず、ファンAのみを駆動させたところ、室内負圧は-7Pa程度まで回復したが不十分であった。そこで、付加的にファンBを稼働させると、内外差圧はなくなった。この際の圧力変化を
図9に示す。
【0097】
このように、差圧センサを兼ねる小型のファンAのみでは、完全に解消することができない負圧であっても、ファンAから発信される判断信号により付加的なファンBを稼働することで、負圧が解消されることが分かる。すなわち、センサとしてのファンAを小型とすることで感度を上げることができるとともに、ファンAからの信号で稼働するより大型のファンBによって、負圧を確実に解消することができる。なお、本実試験では、ファンAも給気扇として利用したが、ファンAは差圧センサとしてのみ用い、差圧センサで検知された差圧に応じて、ファンBのみを給気扇として用い、その電圧を調整することで、給気能力を最適化してもよい。
【0098】
(熱交換試験)
前述したように、暖炉やストーブなどの燃焼器が配置された室内で、燃焼器の燃焼中に台所レンジフードの換気扇を動作させ、室内が負圧になるときに、燃焼器の煙突を通して、外気が逆流して燃焼器内のガスが室内に流れ込むことがある。このガスにはCOなどの有毒ガスが含まれる。このような負圧を下げるため、特開2015-98950号公報では、ファンを負圧センサとして使用するとともに給気扇として使う方法である。しかし、ストーブなどの暖房燃焼器が必要な時期に、外部の空気をそのまま給気すると、室内に冷気が浸入するため望ましくない。
【0099】
これに対し、燃焼器の煙突を排煙煙突とそれを取り巻く空間の複数層構造とし、排煙煙突を流れる暖気と、それを取り囲む空間を流れる外気とを熱交換をして、外気を温めて室内に給気する方法がある。このとき、排煙煙突から熱エネルギーを取り込みすぎると、排煙煙突内の上昇気流(ドラフト)が弱まり、燃焼器本来の機能を妨げる。そこでこの本来機能を妨げない範囲での熱交換の最適化が求められる。ここでは、熱交換における外気吸い込み「流速」および「排煙煙突内温度と給気温度の差」により単位面積(1m2)あたり、どの程度のエネルギーが排煙煙突から奪われるかを評価した。
【0100】
図10は、熱交換時に奪われる熱エネルギーを評価するための装置を示す概略図である。煙突を模した外部筒体43の内部に、金網47を固定し、金網上に熱伝導の良いアルミニウム容器45を配置した。アルミニウム容器45の放熱面積は、0.025m
2とした。アルミニウム容器45内には、83℃以上92℃以下の温水53(比熱=4.2J/g・K)を200g入れた。外部筒体43の下方からファン49によって、所定の風速で外気を外部筒体43の内部に導入し(図中矢印D)、その際の、アルミニウム容器45(温水53)との熱交換(図中E)による温水53の温度変化を所定時間ごとに非接触温度件51で1分ごとに60分間測定した。
【0101】
ここで、時定数τを、((初期温水温度)-(外気温度))/e(=2.718)となる時間と定義する。温度降下のモデルは、温度差ΔT(t)、温水の初期温度をT0、外気温度をTe、このシステムの保温の時定数をτとすると、
ΔT(t)=(T0-Te)exp(t/τ)+Te (1式)
であらわされる。
【0102】
これをファン49の電圧を制御して、流速0m/s(自然放熱)、0.295m/s、0.518m/s、0.725m/sについてそれぞれ求めた。結果を
図11に示す。
【0103】
時定数の逆数は減温速度に対応し、
図11より時定数の逆数(減温速度)は流速にほぼ線形に比例することが分かる。すなわち流速に比例して減温速度が増える。早く冷めやすくなる。このことから、流速がわかれば、(1)式に初期温度と外気温度を与えることで、温度減少特性を得ることができる。
【0104】
このように、給気ファンの電圧と流速との関係を予め測定しておくことで、排気層温度と外気温度の測定結果から、排気層温度がどの程度減少するかを予測することができる。このため、上昇気流(ドラフト)に必要な温度差以下とならない程度に、熱交換(すなわち排気層内の空気の熱を給気層内部の空気へ放出)するように、給気扇の運転を制御すればよい。この際、給気扇の運転を制御することで、負圧が解消されない場合には、排気層温度が上昇するまでの間、負圧センサであるファン37を給気扇として使用してもよい。
【符号の説明】
【0105】
1、1a、1b………給気システム
2a………室内
2b………室外
3………室内燃焼機器
4、4a………差圧検知装置
5………煙突
6、6a………給気装置
7………給気扇
9………排気層
11………給気層
13………断熱層
15、39a、39b………給気口
17………開閉体
19………断熱材
21a、21b………温度センサ
25………ブレード
29………電圧検出部
31、31a………制御部
35a、35b………通信部
37………ファン
38………モーター
41………スイッチ
43………外部筒体
45………アルミニウム容器
47………金網
49………ファン
51………非接触温度計
53………温水