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  • 特許-グルテンフリー麺の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】グルテンフリー麺の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/109 20160101AFI20240222BHJP
【FI】
A23L7/109 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020016262
(22)【出願日】2020-02-03
(65)【公開番号】P2021122199
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】398001528
【氏名又は名称】石川製麺株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 晃一
(72)【発明者】
【氏名】石川 勝康
【審査官】吉森 晃
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-223097(JP,A)
【文献】特開2001-169740(JP,A)
【文献】特開昭51-079749(JP,A)
【文献】特開昭56-064738(JP,A)
【文献】特開2008-259470(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第113057280(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102429167(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/109
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルテニン及びグリアジンを含まない原料粉に加水して混合し、グルテンを含まない団粒状の麺生地を得る混合工程と、
前記団粒状の麺生地を圧延して帯状の麺帯を得る麺帯形成工程と、
前記麺帯を前記団粒状の麺生地と共に圧延して複合麺帯を得る複合工程と、
前記複合麺帯を所定厚さに圧延する圧延工程と、
圧延した前記複合麺帯を所定の麺線形状に切り出す切出工程と、を備えた、
グルテンフリー麺の製造方法。
【請求項2】
前記複合工程では、一対のローラ間に前記麺帯を供給しつつ、前記麺帯と一方の前記ローラとの間に前記団粒状の麺生地を供給することで、前記複合麺帯を得る、
請求項1に記載のグルテンフリー麺の製造方法。
【請求項3】
前記原料粉は、米粉を主原料とする、
請求項1または2に記載のグルテンフリー麺の製造方法。
【請求項4】
前記複合工程において圧延する前記麺帯と前記団粒状の麺生地との質量比が、40:60以上60:40以下である、
請求項1乃至3の何れか1項に記載のグルテンフリー麺の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グルテンフリー麺の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、小麦粉等のグルテンを形成する原料粉を用いないグルテンフリー麺が普及してきている。グルテンフリー麺としては、例えば、米粉を主原料としたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5021823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
麺類の製造では、厚さを均一としコシを出すために麺帯を複数重ねて圧延する複合工程が一般に行われている。しかし、米粉等を主原料とした場合、結着力が弱いために、複合工程の際に割れが発生しやすく、製造が困難であるという課題がある。
【0005】
そこで、本発明は、容易に製造可能なグルテンフリー麺の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、グルテニン及びグリアジンを含まない原料粉に加水して混合し、グルテンを含まない団粒状の麺生地を得る混合工程と、前記団粒状の麺生地を圧延して帯状の麺帯を得る麺帯形成工程と、前記麺帯を前記団粒状の麺生地と共に圧延して複合麺帯を得る複合工程と、前記複合麺帯を所定厚さに圧延する圧延工程と、圧延した前記複合麺帯を所定の麺線形状に切り出す切出工程と、を備えた、グルテンフリー麺の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、容易に製造可能なグルテンフリー麺の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施の形態に係るグルテンフリー麺の製造方法の手順を示すフロー図である。
図2】本発明の一実施の形態で用いた米粉の粒度分布を示すグラフ図である。
図3】(a)は麺帯形成工程、(b)は複合工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施の形態に係るグルテンフリー麺の製造方法の手順を示すフロー図である。
【0011】
図1に示すように、本実施の形態に係るグルテンフリー麺の製造方法では、まず、ステップS1にて、主原料の原料粉と、副原料の原料粉とを混合する粉体混合工程を行う。主原料及び副原料として用いる原料粉は、グルテンを形成する為に必要なグルテニン及びグリアジンを含まない。具体的には、主原料及び副原料として用いる原料粉には、小麦粉、ライ麦粉、大麦粉等は含まれない。本実施の形態では、主原料の原料粉として、米粉を用いた。副原料の原料粉については、特に限定するものではないが、例えば、増粘剤や、加工デンプン、着色料等である。なお、本明細書において、「グルテンフリー」とは、グルテン含有量が20ppm以下であることを意味している。
【0012】
食感を滑らかとするため、主原料として用いる米粉は、粒径10μm以下の微細なものを含んでいるとよい。図2は、本実施の形態で用いた米粉の粒度分布を示すグラフ図である。図2に示すように、本実施の形態で用いた米粉は、粒径が6μm以上120μm以下であり、粒径6μm以上10μm以下のもの1%以上含む。これにより、製造されるグルテンフリー麺の食感を滑らかとし食感を改善することができる。なお、ここでいう粒径とは、粒の最大径を表している。また、原料粉全体に対する主原料(米粉)の割合(質量比)は、80%以上である。本実施の形態では、原料粉全体に対する米粉の割合を88%とした。
【0013】
ステップS1と並行して、ステップS2にて、原料粉に混合する液体の調合を行う加水調合工程を行う。加水調合工程は、例えば、水に、酢、アルコール、かん水等を混ぜ合わせて調合する。
【0014】
その後、ステップS3にて、ステップS1で得た原料粉に、ステップS2で得た液体を混ぜ合わせて(加水して)混合し、グルテンを含まない団粒状(あるいはそぼろ状)の麺生地を得る混合工程を行う。混合工程は、原料粉がアルファ化しないように低温を維持して行われる。例えば、原料粉に液体を加え、ミキサーにて低速で5分~20分程度混合することで、団粒状の麺生地が得られる。麺生地の粒サイズ(粒径)は、例えば1mm以上15mm以下であり、平均で7mm程度である。
【0015】
その後、ステップS4にて、ステップS3で得られた団粒状の麺生地を圧延して帯状の麺帯を得る麺帯形成工程を行う。麺帯形成工程では、図3(a)に示すように、製麺機10のホッパ11に団粒状の麺生地21を投入し、当該麺生地21を一対のローラ12の間へと送り込み圧延することにより、麺帯22を形成する。ここでは、厚さ2.1mm、幅205mmの麺帯22を形成した。形成された麺帯22は、円柱状の棒状体13へと巻き取られる。ステップS4では、ステップS3で得た麺生地の半分程度(約50%)を使用して、麺帯22を形成する。
【0016】
その後、ステップS5にて、複合工程を行う。複合工程では、図3(b)に示すように、ステップS4で得られた麺帯22をホッパ11の上部へとセットし、当該麺帯22を一対のローラ12間へ供給しつつ、麺帯22と一方のローラ12との間に、ステップS3で得られた団粒状の麺生地21を供給し、麺帯22を団粒状の麺生地21と共に圧延し、複合麺帯23を得る。複合麺帯23の厚さは、例えば2.8mmである。麺帯22と団粒状の麺生地21との割合(質量比)は、50:50とした。
【0017】
従来の製法では、複数の麺帯22を重ねて圧延していたが、本実施の形態では主原料として米粉を用いており結着力が弱いために、この方法では麺帯に割れ、裂け、欠け、あるいは穴(以下、割れ等という)が生じてしまい易い。そこで、本発明者らが検討を重ねたところ、麺帯22を団粒状の麺生地21と共に圧延すると、得られた複合麺帯23に割れや裂けが生じにくくなり、容易に製造可能となることが見出された。
【0018】
割れ等が生じにくくなるメカニズムについては明らかではないが、麺生地21が麺帯22を補強する役割を果たし、麺帯22に不均一に麺生地21が埋め込まれることで、割れやすい箇所と割れにくい箇所がランダムに生じることによって、複合麺帯23に割れ等が生じにくくなっているものと推測される。
【0019】
本実施の形態で主原料として用いている米粉は、小麦粉に比べて温度変化及び水分量の変化に敏感であり、割れや裂けを抑制するために加水等の調整を非常に厳密に行う必要があった。より具体的には、混合工程における混合時間、加水量、室温及び各原材料の温度等の調整等を厳密に行う必要があり、非常に高度な技術や経験が必要となっていた。これに対して、本実施の形態によれば、複合麺帯23に割れ等が生じにくくなることから、製造時の加水の調整等における許容範囲が広がり、均一な品質の製品をより容易に製造することが可能になる。
【0020】
上述のような効果を得るために、複合工程において圧延する麺帯22と団粒状の麺生地21との割合(質量比)は、40:60以上60:40以下であることが望ましく、50:50とすることがより望ましい。
【0021】
複合工程の後、ステップS5にて、複合麺帯23を所定さに圧延する圧延工程が行われる。この際、複合麺帯23の表面に打粉を散布しながら圧延を行う。圧延後の複合麺帯23の厚さは1.7mmとした。
【0022】
その後、ステップS6にて、圧延した複合麺帯23を所定の麺線形状に切り出す切出工程が行われる。以上により、本実施の形態に係るグルテンフリー麺が得られる。なお、本実施の形態で得られるグルテンフリー麺は、所謂生タイプの麺である。
【0023】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係るグルテンフリー麺に製造方法では、麺帯22を団粒状の麺生地21と共に圧延して複合麺帯23を形成し、複合麺帯23を所定厚さに圧延した後、所定の麺線形状に切り出すことで、グルテンフリー麺を形成している。
【0024】
麺帯22を団粒状の麺生地21と共に圧延することで、複合麺帯23に割れ等が生じにくくなり、製造が容易になる。また、複合麺帯23に割れ等が生じにくくなることで、製造時の加水の調整等における許容範囲が広がり、均一な品質の製品をより容易に製造することが可能になる。
【0025】
さらに、麺帯22を団粒状の麺生地21と共に圧延することで、製造されるグルテンフリー麺の食感も改善される。具体的には、従来製法で製造したものと比べてサクサクとした歯切れのよい食感となる。これは、従来製法で製造したものと比較して生地の結着が弱いためであると推測される。
【0026】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0027】
[1]グルテニン及びグリアジンを含まない原料粉に加水して混合し、グルテンを含まない団粒状の麺生地(21)を得る混合工程と、前記団粒状の麺生地(21)を圧延して帯状の麺帯(22)を得る麺帯形成工程と、前記麺帯(22)を前記団粒状の麺生地(21)と共に圧延して複合麺帯(23)を得る複合工程と、前記複合麺帯(23)を所定厚さに圧延する圧延工程と、圧延した前記複合麺帯(23)を所定の麺線形状に切り出す切出工程と、を備えた、グルテンフリー麺の製造方法。
【0028】
[2]前記複合工程では、一対のローラ(12)間に前記麺帯(22)を供給しつつ、前記麺帯(22)と一方の前記ローラ(12)との間に前記団粒状の麺生地(21)を供給することで、前記複合麺帯(23)を得る、[1]に記載のグルテンフリー麺の製造方法。
【0029】
[3]前記原料粉は、米粉を主原料する、[1]または[2]に記載のグルテンフリー麺の製造方法。
【0030】
[4]前記複合工程において用いる前記麺帯(22)と前記団粒状の麺生地(21)との質量比が、40:60以上60:40以下である、[1]乃至[3]の何れか1項に記載のグルテンフリー麺の製造方法。
【0031】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0032】
また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態では、主原料が米粉である場合を説明したが、主原料が米粉以外のもの、例えば大豆粉であってもよい。
【符号の説明】
【0033】
10…製麺機
11…ホッパ
12…ローラ
13…棒状体
21…麺生地
22…麺帯
23…複合麺帯
図1
図2
図3