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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】調理装置
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/17 20060101AFI20240222BHJP
   A47J 27/00 20060101ALI20240222BHJP
   H05B 6/12 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
A47J27/17
A47J27/00 102
H05B6/12 314
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020098007
(22)【出願日】2020-06-04
(65)【公開番号】P2021186566
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】500148592
【氏名又は名称】株式会社カジワラ
(74)【代理人】
【識別番号】100110629
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100166615
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】梶原 秀浩
(72)【発明者】
【氏名】中川 歩
【審査官】川口 聖司
(56)【参考文献】
【文献】特許第3650718(JP,B2)
【文献】特開平11-009443(JP,A)
【文献】特開2002-336120(JP,A)
【文献】特開2000-253993(JP,A)
【文献】実開昭57-118012(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00-29/06
A47J 33/00-36/42
H05B 6/12
F24C 3/00- 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部の外周に立ち上がる胴部を含む調理容器と、前記調理容器の底部をガス加熱と電磁誘導加熱と電気加熱と蒸気加熱との何れか又はこれらの選択的な組み合わせで高温加熱するための底部加熱装置と、前記調理容器の底部及び胴部の間部の壁面又は胴部の壁面に対して閉断面部を形成し前記閉断面部の内部に供給される流動性熱媒体により前記壁面に対し熱交換を行わせるための熱交換ジャケットと、前記閉断面部内に前記流動性熱媒体を供給するための媒体供給装置とを備えた調理装置であって、
前記底部加熱装置は、断熱室内に配置されて前記調理容器の下方に備えられ、
前記断熱室は、前記調理容器の底部を前記断熱室内に臨ませる開口を上壁部に備え、
前記断熱室の上壁部に、前記開口の回りで周回状に形成した座部を備え、
前記熱交換ジャケットを前記座部に乗せることで前記調理容器を前記断熱室の上壁部に支持させると共に前記調理容器の底部を前記開口から前記断熱室内に臨ませ、
前記断熱室の上壁部と前記熱交換ジャケットとの間に、前記断熱室の外側となる空気層を備えた、
ことを特徴とする調理装置。
【請求項2】
請求項1記載の調理装置であって、
前記熱交換ジャケットの外周又は前記上壁部の外周に、前記空気層の外側で前記熱交換ジャケットと前記上壁部との間の周壁部を備えた、
ことを特徴とする調理装置。
【請求項3】
請求項2記載の調理装置であって、
前記周壁部は、前記熱交換ジャケットの外周部に備えられ前記断熱室の上壁部に指向する立下部である、
ことを特徴とする調理装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の調理装置であって、
前記上壁部は、上面に上面板を備え、
前記座部は、アングル材及び断熱材を備え、
前記アングル材は、前記開口の回りで周回状に配置され前記上面板に結合され、
前記断熱材は、内周面が前記開口を構成する
ことを特徴とする調理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理容器の底部を高温のガス等で加熱し、側部をカロリーの高い蒸気で加熱する等、いわゆるハイブリッド加熱を可能にした調理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の業務用の調理装置として、例えば、食材を投入して調理するための調理容器と、該調理容器の底部を加熱するためのガス加熱装置とを備えたものがある。かかる調理装置において、例えば野菜類の炒め調理を行うと、調理容器に投入された大量の野菜類は次のような過程を経ることになる。
【0003】
即ち、業務用の大型の調理容器に対し大量の野菜類が当初調理容器の上端にまで一杯に投入され、まずガス加熱装置によって調理容器の底部が高温で加熱される。炒め調理の進行と共に、当初調理容器の上端部にまで一杯に入っていた野菜類が調理容器の底部側へ容積を集束させ、最終的に底部での高温加熱によって炒め調理を完成する。
【0004】
しかしながら、底部のガス加熱装置による高温加熱のみで炒め調理する場合には、大量の野菜が調理容器底部に集束するまでに相当の時間を要し、加熱調理時間が著しく長くなるという問題があった。この時間を短縮するために加熱の温度を更に高めると、集束途中にある野菜類が調理容器の内側面等に焦げ付きやすくなるという問題がある。
【0005】
そこで出願人は、調理容器の底部を高温のガスで側部をカロリーの高い蒸気で加熱する、いわゆるハイブリッド加熱を可能にした調理装置を特許文献1、2として提案した。
【0006】
この調理装置は、食材を入れた調理容器を、蒸気による熱源と、ガスによる熱源又は電気による熱源とにより異なる位置で加熱するようにした。ガスによる熱源又は電気による熱源の底部加熱装置は、調理容器の底部を加熱し、蒸気による熱源は調理容器の側部の熱交換ジャケットに蒸気を供給して加熱するようにした。
【0007】
したがって、加熱初期に調理容器の上端部にまで一杯に入っていた野菜類をカロリーの高い蒸気で側面から加熱し調理容器の底部側へ素早く集束させることができる。最終的に底部での高温加熱によって炒め調理を短時間で完成させることができる。
【0008】
一方で、蒸気加熱停止後に継続する高温加熱が熱交換ジャケットに影響することを避け或は抑制することも肝要である。
【0009】
このため、調理容器の底部を高温で加熱する底部加熱装置は、断熱壁で形成された断熱室内に配置し、熱交換ジャケットを備えた調理容器を断熱室の上部に結合し、熱交換ジャケットの底部を断熱室内に臨ませる構造となっていた。この場合、熱交換ジャケットを備えた調理容器と断熱室との具体的な結合構造は、特許文献2のようになっていた。
【0010】
この結合構造では、断熱室の上部に開口を備え、開口の周囲を載置用の平坦な上面部としていた。この断熱室の内部に底部加熱装置を配置し、上部に調理容器を配置結合させている。熱交換ジャケットには、平坦な下面部を備え、この下面部を断熱室の上面部に載置結合させている。調理容器の底部は、断熱室の開口から断熱室内に臨ませている。
【0011】
従って、断熱室内で稼働する底部加熱装置により調理容器の底部を直接的に加熱することができ、且つ蒸気加熱停止後に継続する高温加熱が熱交換ジャケットに影響することを避け或は抑制することができ、いわゆるハイブリッド加熱を効果的に行わせることを可能にしていた。
【0012】
しかし、熱交換ジャケットの平坦な下面部を断熱室の平坦な上面部に載置結合させている構造であるため、底部加熱装置の排気熱が断熱室の上面部を介して熱交換ジャケットに伝熱し易い構造であった。
【0013】
このため、底部加熱装置による高温加熱の効率が低下し、底部加熱装置の高温加熱による素早い温度上昇が阻害されるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特許第3076321号
【文献】特許第3650718号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
解決しようとする問題点は、いわゆるハイブリッド加熱を可能にした調理装置において、高温加熱が熱交換ジャケットに影響する点である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本願発明は、いわゆるハイブリッド加熱を可能にした調理装置において、高温加熱が熱交換ジャケットに影響することを避け或は抑制することを可能にするために、底部の外周に立ち上がる胴部を含む調理容器と、前記調理容器の底部をガス加熱と電磁誘導加熱と電気加熱と蒸気加熱との何れか又はこれらの選択的な組み合わせで高温加熱するための底部加熱装置と、前記調理容器の底部及び胴部の間部の壁面又は胴部の壁面に対して閉断面部を形成し前記閉断面部の内部に供給される流動性熱媒体により前記壁面に対し熱交換を行わせるための熱交換ジャケットと、前記閉断面部内に前記流動性熱媒体を供給するための媒体供給装置とを備えた調理装置であって、前記底部加熱装置は、断熱室内に配置されて前記調理容器の下方に備えられ、前記断熱室は、前記調理容器の底部を前記断熱室内に臨ませる開口を上壁部に備え、前記断熱室の上壁部に、前記開口の回りで周回状に形成した座部を備え、前記熱交換ジャケットを前記座部に乗せることで前記調理容器を前記断熱室の上壁部に支持させると共に前記調理容器の底部を前記開口から前記断熱室内に臨ませ、前記断熱室の上壁部と前記熱交換ジャケットとの間に、前記断熱室の外側となる空気層を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本願発明は、上記構成であるから、底部加熱装置による調理容器の底部の高温加熱と熱交換ジャケットへの媒体供給装置による熱交換ジャケットへの流動性熱媒体の供給とを制御することで、いわゆるハイブリッド加熱を可能にすることができる。断熱室の上壁部と熱交換ジャケットとの間に、断熱室の外側となる空気層を備えたため、断熱室の上壁部から熱交換ジャケットへ伝熱することが抑制され、底部加熱装置による高温加熱が熱交換ジャケットに影響することを避け或は抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】ハイブリッド加熱が可能な調理装置の全体構成図である。
図2】熱交換ジャケットの断面を含めた要部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本願発明は、いわゆるハイブリッド加熱を可能にした調理装置において、底部加熱装置による高温加熱が熱交換ジャケットに影響することを避け或は抑制することを可能にするという目的を以下のように実現した。
【0020】
本実施形態は、底部の外周に立ち上がる胴部を含む調理容器と、前記調理容器の底部をガス加熱と電磁誘導加熱と電気加熱と蒸気加熱との何れか又はこれらの選択的な組み合わせで高温加熱するための底部加熱装置と、前記調理容器の底部及び胴部の間部の壁面又は胴部の壁面に対して閉断面部を形成し前記閉断面部の内部に供給される流動性熱媒体により前記壁面に対し熱交換を行わせるための熱交換ジャケットと、前記閉断面部内に前記流動性熱媒体を供給するための媒体供給装置とを備えた調理装置であって、前記底部加熱装置は、断熱室内に配置されて前記調理容器の下方に備えられ、前記断熱室は、前記調理容器の底部を前記断熱室内に臨ませる開口を上壁部に備え、前記断熱室の上壁部に、前記開口の回りで周回状に形成した座部を備え、前記熱交換ジャケットを前記座部に乗せることで前記調理容器を前記断熱室の上壁部に支持させると共に前記調理容器の底部を前記開口から前記断熱室内に臨ませ、前記断熱室の上壁部と前記熱交換ジャケットとの間に、前記断熱室の外側となる空気層を備えた。
【0021】
前記調理容器の底部は、食材の撹拌を考慮して曲率半径の大きな球面状に形成されるが、底部を構成する限り平面状等、その形状は自由である。胴部は、底部の外周で断面が直交状に立ち上げられている。但し、底部から断面が湾曲するように胴部が立ち上がる形態、或は底部から直状に傾斜する胴部が斜め外側に広がるように立ち上がる形態、底部及び胴部をホッパー状に形成する形態等にすることもできる。
【0022】
前記調理容器の底部と胴部との間は、湾曲して連続する形態となっている。但し、底部と胴部との間がテーパー状に連続する形態、底部と胴部との間が直交する形態、底部と胴部との間が連続する湾曲で連続する形態等にすることもできる。
【0023】
前記底部加熱装置による高温加熱は、投入する食材による調理目的により温度設定を行なうことができる。底部加熱装置による高温加熱は、熱交換ジャケットによる加熱温度よりも高い温度での加熱であることを意味する。底部加熱装置による高温加熱は、調理容器の底部を全体的に加熱する形態、調理目的により底部外周部と中心部との間で加熱温度を変化させる形態、これらを組み合わせる形態にすることができる。
【0024】
前記熱交換ジャケットは、胴部の壁面に対して上下の途中まで形成する形態、或は胴部の上縁まで形成する形態にすることができる。熱交換ジャケットは、調理容器の全周で連続する形態、調理容器の全周で連続する形態に対し内部を区画壁で複数に区画する形態、調理容器の周方向で複数個所に連続的、或は間隔を明けて配置形成する形態、胴部の立ち上げ方向で複数連続的、或は胴部の立ち上げ方向で複数間隔を明けて配置形成する形態、周方向で複数形成する形態及び胴部の立ち上げ方向で複数形成する形態の組み合わせの形態等にすることができる。熱交換ジャケットを複数形成する形態では、全てに同一条件の流動性熱媒体を供給する形態、所定の箇所ごとに異なる条件の流動性熱媒体を供給する形態、所定の箇所ごとに異なる条件の流動性熱媒体を異なる時間設定で供給する形態等にすることができる。熱交換ジャケットは、調理容器の食材に対して流動性熱媒体との熱交換ができる限り、調理容器と一体に形成する形態の他、着脱可能な形態にすることもできる。調理容器の胴部を内外パネルの二重構造とし、内外パネル間を空間とし、この空間に流動性熱媒体を給排する形態とすることもできる。この場合、熱交換ジャケットは、胴部の二重構造パネルが構成することになる。
【0025】
前記流動性熱媒体は、蒸気、加熱液体を用いることができる。熱交換ジャケットには、水、空気を選択的に供給することもできる。
【0026】
前記媒体供給装置は、調理中の食材の温度検出、重量検出に基づき自動で制御する形態、手動により操作する形態にすることができる。
【0027】
前記断熱室は、側壁部及び開口を有する上壁部により構成されている。断熱室は底壁部を有する構成にすることもできる。
【0028】
前記座部は、周回状に形成され、この周回状は、連続的な形態、周方向で間隔を設けて連設する形態の何れでもよい。間隔を明けて連節する形態では、座部間を断熱材で埋めるのがよい。
【0029】
前記調理容器は、直径方向の一側おいて回転軸により回転自在に支持され、調理容器が回転軸を中心に直径方向の他方側上方へ移動するように反転駆動可能となっている。この調理容器の反転を戻すことで熱交換ジャケットを上壁部の座部に載せることになる。但し、調理容器の反転駆動の構成を省略し、熱交換ジャケットを上壁部の座部に単に載せる形態、載せた状態で熔接により固定する形態、同ボルトナットにより締結固定する形態等を選択することもできる。
【0030】
前記調理容器の底部を前記開口から前記断熱室内に臨ませる場合、底部を開口内に位置させる形態、底部の底面を上壁部の上面の位置に一致させる形態、底部の底面を開口の上方に位置させる形態の何れでもよい。
【0031】
前記断熱室の外側となる空気層は、前記熱交換ジャケットの底面の全体に形成する形態、周方向に部分的に形成する形態の何れでもよい。この場合、空気層を部分的に形成する形態の場合、周回状の空気層を周方向に断熱材で仕切る形態にすることができる。
【0032】
前記熱交換ジャケットの外周又は前記上壁部の外周に、前記空気層の外側で前記熱交換ジャケットと前記上壁部との間の周壁部を備えている。
【0033】
前記周壁部は、前記熱交換ジャケットの外周部に備えられ前記断熱室の上壁部に指向する立下部である。但し、周壁部を断熱室の上壁部から熱交換ジャケットの下面に指向する立上部とすることもできる。立下部と上壁部との間、或は立上部と熱交換ジャケットとの間に断熱材等でシール構造を適用することもできる。
【0034】
前記上壁部の上面に上面板を備え、前記座部は、アングル材及び断熱材を備え、前記アングル材は、内法を前記開口に向けて配置されて前記上面板に結合され、前記断熱材は、前記アングル材の内法に備えている。
【実施例
【0035】
[ハイブリッド加熱の調理装置]
図1は、調理装置の全体概略図である。
【0036】
図1のように、ハイブリッド加熱が可能な調理装置は、調理容器1と、底部加熱装置3と、熱交換ジャケット5とを備えている。
【0037】
前記調理容器1は、食材、例えば野菜などを投入して炒め調理し、あるいは練りあん、ソース、スープ、その他食品を煮詰め調理する大型の調理容器で構成されている。調理容器1は、皿状、又は球面状に形成された底部13と、該底部13の外周側に立ち上がった胴部15とを含んでいる。底部1513は、大きな曲率半径の球面で構成された調理容器1の下部である。胴部15は、調理容器1の側壁部を構成し、断面が直状に立ち上がった部分である。底部13と胴部15との間は、湾曲したコーナー部14となっている。底部13は、コーナー部14に結合され、胴部15は、コーナー部14から立ち上がって全体が一体に形成されている。但し、調理容器1の形状は、底部13及び胴部15を含み加熱を区分けできる限り特に限定されるものではない。調理容器1は、鉄、ステンレス、あるいは鉄とステンレスを多層にしたもの、さらには銅のいずれか、あるいはこれらの組み合わせによって形成されている。調理容器1の底部13には、外周側に温度センサが取り付けられている。この温度センサは底部13の壁面温度を検出するもので、その出力は制御盤11に入力されるようになっている。
【0038】
前記底部加熱装置3は、前記調理容器1の底部13下面に配置され、該底部13を加熱するためのもので、本実施例ではガス加熱装置で構成されている。前記底部加熱装置3は、複数のガスバーナ17,19,21を備えている。ガスバーナ17,19,21は、平面から見て円環状にそれぞれ複数配置されているもので、ガスバーナ17、19が内輪側、ガスバーナ21が外輪側の配置となって、内外輪各別に制御できる。
【0039】
前記ガスバーナ17,19,21は、ガス配管によって燃料ガスの供給源に接続されている。ガス配管には、ソレノイドバルブが備えられ、制御盤11によって駆動制御可能となっている。
【0040】
前記熱交換ジャケット5は、前記調理容器1の底部13よりも外周側の壁面に対し閉断面部を形成する。閉断面部内部に流動性熱媒体を供給して前記壁面に対し熱交換可能にする。すなわち、熱交換ジャケット5は、本実施例において底部13外周側のコーナー部14を覆っている。この熱交換ジャケット5は、コーナー部14の一側の底部13から同他側の胴部15にかけてその外面に閉断面部を形成する。この熱交換ジャケット5は、調理容器1の全周に連続して形成されている。従って、熱交換ジャケット5に供給された流動性熱媒体によって調理容器1の全周において熱交換することができる。但し、熱交換ジャケット5を調理容器1の全周方向で所定長さごとに区画して設けることもできる。この場合、各区画された熱交換ジャケットのそれぞれに各別の制御によって流動性熱媒体を給排することもできる。
【0041】
前記熱交換ジャケット5には、図示しない媒体給排装置により流動性熱媒体として蒸気と水と空気とを選択して給排するようになっている。尚、熱交換ジャケット5によって加熱のみを目的とする場合には、媒体給排装置により流動性熱媒体として蒸気のみを給排する。
【0042】
前記媒体給排装置は、図示しない上部配管と、下部配管とを備え、上部配管は熱交換ジャケット5の一側においてその上部側に接続され、下部配管は同他方側において下部側に接続されている。上部配管は、3つの配管に分岐され、それぞれソレノイドバルブが備えられている。これら各ソレノイドバルブは前記制御盤11によって開閉制御されるようになっている。そして、前記配管の一つは、図示しない蒸気の供給源に接続されている。この配管には、圧力センサが設けられ、その検出値は制御盤11に入力されるようになっている。また、図示しない他の配管の一つは、冷却水の排出部に接続され、同残りの配管は冷却空気の排出部に接続されている。
【0043】
前記下部配管は、図示しない3つの配管に分岐され、それぞれソレノイドバルブが備えられている。各ソレノイドバルブは、前記制御盤11によって開閉制御されるようになっている。前記配管の一つは、図示しない蒸気の排出側に接続され、同他の配管の一つは冷却空気の供給源に接続され、同残りの配管は冷却水の供給源に接続されている。
【0044】
前記底部加熱装置3は、断熱室23内に配置されて前記調理容器1の下方に備えられている。断熱室23及び底部加熱装置3は、支持台25上に取り付けられている。断熱室23については、熱交換ジャケット5との関係においてさらに後述する。
【0045】
前記支持台25には、接地用の複数の足部27が設けられている。各足部27には、前記重量検出器9として、例えばロードセルが取り付けられている。各足部27のロードセルの検出信号は、前記制御盤11に入力されるようになっている。これら各足部27に取り付けられたロードセルの検出荷重を平均化することによって、調理容器1及び熱交換ジャケット5側の全重量を正確に検出することができる。特に調理中に調理容器1内において食材が片寄ったり、攪拌によって動いたりしても、その時々の荷重を各足部27に取り付けたロードセルによって検出し、その平均を算出することによって逐次正確な重量検出を行うことができる。尚、本実施例においては、前記断熱室23側を含めて調理容器1及び熱交換ジャケット5側の全重量を検出するようになっている。
【0046】
前記制御盤11は、重量変化記憶装置として前記調理容器1に投入された食材の調理目的を達成するための加熱時含水率変化に応じた重量変化を予め基準値として記憶している。食材の調理目的としては、次のようなものがある。例えば加熱調理の途中や終了時において、含水率変化を適正に保つことによって、食材の糖度などを適正に管理し、加熱調理後の食材の風味等を的確に目的の状態とする。あるいは加熱調理中に焦げを起こさないように含水率変化を正しく行わせる。さらには食材によっては多少の焦げを意図的に起こさせ、焦げによる風味あるいは着色を加える。
【0047】
これら食材の調理目的を達成するために、予め実験により調理目的に応じて加熱時含水率変化に応じた食材の重量変化を足部27に設けた重量検出器9で検出し、予め制御盤11に記憶させた基準値と比較して制御を行わせる。特に、野菜の炒め、練りあん、ソース、スープの製造、その他食品を煮詰め、さらには食品の煮込みなどによって投入する食材及び水、調味材の種類及び投入量が個々異なっているため、これらの投入状況と加熱調理中の最適な含水率変化に応じた重量変化との関係、加熱終了に伴う最適な含水率と重量との関係を全て予め実験により求め、これを基準値として制御盤11に記憶させている。
【0048】
また、制御盤11は、駆動制御装置として重量検出器9で検出された全重量の変化から、調理容器1に投入された食材の重量変化を演算し、食材の重量変化を前記基準値に一致させるように底部加熱装置3及び媒体給排装置を駆動制御する。
【0049】
前記調理容器1には、上部から攪拌装置の攪拌羽根が挿入されて、加熱撹拌可能となっている。また、調理容器1は、その直径方向の一側おいて回転軸29により回転自在に支持されている。回転軸29は、支持台25に設けられた軸支持部に回転自在に支持されている。調理容器1には、ブラケット等を介してピストンシリンダ装置が結合されており、該ピストンシリンダ装置の駆動によって、調理容器1が回転軸29を中心に直径方向の他方側上方へ移動するように反転駆動可能となっている。この駆動によって、調理容器1内の加熱調理後の食材を排出できるようになっている。
【0050】
図2は、熱交換ジャケットの断面を含めた要部の拡大断面図である。
【0051】
図2のように、前記熱交換ジャケット5は、ジャケット側壁5a及びジャケット底壁5bを備えている。ジャケット側壁5a及びジャケット底壁5bは溶接等により一体に接合されている。
【0052】
前記ジャケット側壁5aは、上下に沿って重力方向で垂直に胴部15に平行に形成されている。ジャケット側壁5aの上端は、内側へ湾曲形成され、端縁が胴部15の外面に突き合わされて溶接等により接合されている。前記ジャケット底壁5bは、水平な平坦に形成されている。ジャケット底壁5bの内端は、上方へ湾曲形成され、端縁が底部13の外面に突き合わされて溶接等により接合されている。ジャケット底壁5bの外端は、端縁が前記ジャケット側壁5aに内側から突き合わされて溶接等により接合されている。この場合、ジャケット側壁5aの下端縁5aaは、ジャケット底壁5bよりも下方へ突出し、立下部5abが熱交換ジャケット5の外周部に備えられている。
【0053】
前記断熱室23は、前記調理容器1の底部13を前記断熱室23内に臨ませる開口31を上壁部33の内周側に備えている。断熱室23は、内外周の断熱壁35、37を備えている。内外周の断熱壁35、37の上端に上壁部33が固定されている。断熱壁35、37間には、周回状の空洞部39が形成されている。
【0054】
前記上壁部33は、周回形状の断熱壁45及び上面板47を備えている。断熱壁45は、薄板45a上にセラミックなどによる断熱材45bを備え、内周にアングル材45cを一体に備えている。上面板47は、変形防止、割れ防止を考慮した厚みで形成され、アングル材45c上から断熱材45b上に渡って接合されている。上面板47の内縁は、アングル材45cの内周面よりも外周へ若干オフセットされ、上面板47の外縁は、断熱材45bの外周面よりも外周へ若干オフセットされている。
【0055】
前記内周の断熱壁35は、円筒状の薄板35aにセラミックなどによる断熱材35bを支持させたものである。薄板35aの上部は、断熱材35bよりも上方へ延設され、上壁部33の内周に至り、アングル材45cの内周に熔接等により接合されている。薄板35aには、断熱材35bと上壁部33との間で通気用の図示しない孔が複数形成されている。
【0056】
前記外周の断熱壁37は、円筒状の内外の薄板37a、37bによりセラミックなどによる断熱材37cを挟み込んで支持している。内周の薄板37a及び断熱材37cの上縁は同高さに形成され、内周の薄板37a及び断熱材37cの上縁に上壁部33の下面が接合支持されている。外周の薄板37bは、内周の薄板37a及び断熱材37cの上縁よりも上方へ突出している。薄板37bの上部は、上壁部33の断熱材45bの外周を隙間を持って囲んでいる。薄板37bの上縁は、上壁部33の上面板47の下面に突き当てられている。
【0057】
前記外周の断熱壁37は、上壁部33との間に排気筒(図示せず。)の接続口43(図1)を備えている。接続口43に排気筒が接続され、この排気筒から断熱室23内での底部加熱装置3の燃焼による排気を行わせる。
【0058】
前記上壁部33に、座部48が備えられている。座部48は、前記開口31の回りで周回状に形成されている。つまり、座部48の内法が開口31の内法を構成している。但し、座部48の内法を開口31の内法よりも大きく設定することもできる。上壁部33の内周により開口31を直接構成することもできる。
【0059】
前記座部48は、アングル材49及びセラミックなどによる断熱材51を備えている。アングル材49は、内法を前記開口31に向けて配置され前記上面板47の内縁で上面に溶接などにより結合されている。断熱材51は、アングル材49の内法に備えられている。断熱材51の下部は、上壁部33のアングル材45cの内周側で薄板35aの上部内周面を覆うように形成されている。本実施例では、断熱材51の内周面が開口31の内周を構成する。
【0060】
前記調理容器1は、前記断熱室23上に配置され、前記熱交換ジャケット5のジャケット底壁5bを前記座部48のアングル材49上に載せている。このことにより前記調理容器1を前記断熱室23の上壁部33に搭載させている。前記のように調理容器1が回転軸29を中心に直径方向の他方側上方へ移動するように反転駆動され、調理容器1内の加熱調理後の食材を排出させた後、反転を戻した時に蒸気ジャケット5のジャケット底壁5bがアングル材59上に受けられる。このとき、ジャケット底壁5bの平坦な面がアングル材59上の平坦な面に周回状に密接し、上面板55上での断熱室23内外の気密性が保たれる。アングル材59は、断熱材61により断熱室23内側から熱が伝わり難くなっている。この結果、断熱室23内からアングル材59を介した熱交換ジャケット底壁5bへの伝熱が抑制される。調理容器1の底部13は、開口31から断熱室23内に臨ませている。
【0061】
前記断熱室23の上壁部33の上面板47と熱交換ジャケット5のジャケット底壁5bとの間に、断熱室23の外側となる空気層53を備えている。上面板47及びジャケット底壁5bは共に平坦であり、空気層53は、ほぼ均等な上下寸法でドーナツ状に形成されている。この空気層53は、上壁部33と共に熱交換ジャケット5と底部加熱装置3とを熱的に区画している。
【0062】
前記熱交換ジャケット5の立下部5abは、断熱室23の上壁部33に指向し、下縁が上面板47の外縁に近接又は当接している。立下部5abは、空気層53の外周で周壁部となっている。したがって、前記熱交換ジャケット5の外周に、空気層53の外側で熱交換ジャケット5と上壁部33との間に周壁部を備えた構成となっている。
【0063】
加熱調理に際してまず、調理容器1内に野菜等の食材、必要に応じて水、さらには調味材等が投入される。これら投入量は予め決めた基準値に応じて行う。水、調味材等の投入時期は調理目的に応じて加熱開始からずれることもあり、また投入量は調理目的に応じて変更されるものである。これらは、適正な含水率を得るために予め実験により決められている。前記投入時期が予め実験的に決められていることにより、調理目的に応じて食材の投入量、水、調味料等の投入量を極めて容易に把握することができ、作業性が著しく向上する。
【0064】
そして、制御盤11の駆動制御によってシステムがスタートする。制御盤11の制御により予め設定されたプログラムに応じて底部加熱装置3及び媒体給排装置が駆動制御される。この駆動制御により底部加熱装置3の各ガスバーナ17,19,21から燃料ガスが噴き出され、制御盤11のコントロールによる自動着火によって点火が行われる。これによって、調理容器1の底部がガス加熱により高温で加熱される。
【0065】
同時に制御盤11の駆動制御によって、媒体給排装置により蒸気の供給源から熱交換ジャケット5内に蒸気が供給される。この供給される蒸気は、加熱目的に応じて飽和蒸気、過熱蒸気など種々選択されるものである。この熱交換ジャケット5内に供給された蒸気が調理容器1の底部13よりも外周側の壁面に対して熱交換を行ない、該部分において調理容器1が加熱されることになる。
【0066】
調理過程において、調理容器1内の含水率の変化は、食材の糖度、塩度、旨み等の濃度あるいは焦げつきに関係する極めて重要な要素である。従って、各足部27に取り付けた重量検出器9の各ロードセルによって全重量を検出し、食材の重量として製品重量を演算する。つまり、検出した全重量に基づき制御盤11によって調理容器1内の食材の重量変化を逐次演算する。かかる演算結果は、基準値と比較され、これと一致するように底部加熱装置3、媒体給排装置が制御されることになる。なお、基準値を加熱調理中の含水率に応じた調理容器1等を含む全重量変化とし、かかる基準値と検出した全重量とを直接比較して制御する構成にすることもできる。
【0067】
製品重量が設定値を上回っていれば、含水率が設定値よりも高いと判断し、製品重量が設定値を下回っていれば、含水率が設定値と同等か低いと判断する。
【0068】
例えば底部加熱装置3側において、外輪側のガスバーナ21、内輪側のガスバーナ17,19を選択的に停止させる。
【0069】
上記のような加熱制御により、調理容器1の上部にまで大量に投入された野菜等であっても、底部加熱装置3による加熱と、熱交換ジャケット5での熱交換による加熱とにより、高速加熱を行うことができる。
【0070】
そして、調理容器1内に投入された食材が、例えば野菜であり、これを炒め調理する場合に、調理容器1の上部にまで一杯に投入された野菜は、底部13側へ短時間で集束し、底部13側におけるガス加熱によって高温調理を行うことができる。
【0071】
ここで、上記のように底部13のガス加熱のみで高温調理を行なう場合、当初加熱釜1の上部にまで一杯に投入された野菜をいち早く底部13側へ集束させようとしてガスによる高温加熱を強烈に行うと、投入された野菜が容易に焦げてしまうものとなる。また、このような焦げを避けようとして、ガス加熱の度合いを弱めると、投入された野菜が底部13側へ集束するのに時間がかかりすぎてしまうものとなる。
【0072】
これに対し、上記のようなガスによる底部13の加熱と、蒸気による胴部15側での熱交換による加熱とにより、大量に投入された野菜等を底部13側へいち早く短時間で集束させ、ガス加熱による高温加熱をいち早く行わせることができる。すなわち、いわゆるハイブリッド加熱によって、短時間高温調理を行うことができる。
【0073】
ところで、底部加熱装置3のガスによる高温加熱が、熱交換ジャケット5に影響することを避け或は抑制する点については以下の通りである。
【0074】
つまり、蒸気加熱とガス加熱が同時に行われる場合、熱交換ジャケット5の温度が燃焼ガス温度より低いため底部加熱装置3によるガス加熱の熱は熱交換ジャケット5のジャケット底壁5bに移動すると熱損失となる。これを避けるために背景技術の項で記載した従来の構造(符号は実施例のものを用いる。)では、調理容器1の底部13を加熱するガス温度を低下させ、底部13への伝熱を減少させていた。一方、熱交換ジャケット5では、ジャケット底壁5bに伝わるガス加熱の熱量が内部凝縮ドレンの再蒸発に使用される。このため、再蒸発に応じた分だけ蒸気の使用量を減少させるが、調理容器1のコーナー部14等の蒸気加熱面からの伝熱の増減はない。従って全体で見ると、ガス加熱面からの伝熱が減少することになる。
【0075】
また、熱交換ジャケット5への蒸気の供給停止により加熱が停止された場合、残存したドレンがあれば、再蒸発を継続する。ドレンが無くなれば蒸発は起こらなくなりジャケット底壁5bの金属温度が上昇し、その分ガス加熱側からの熱移動は若干低下する。ジャケット底壁5bの金属温度は周囲への熱損失(増加)とガス加熱側よりの熱移動(減少)がバランスする温度となる。
【0076】
熱交換ジャケット5への蒸気の供給停止後の工程は、底部加熱装置3のガス加熱のみで製品を高温に加熱するので熱交換ジャケット5での蒸気加熱使用中より損失量は下がるが、結局熱損失は続き、熱損失の影響は大きいものがある。
【0077】
つまり、ガス加熱による熱がジャケット底壁5bに伝わることが熱損失に関わっている。
【0078】
この点、本実施例では、断熱室23内の高温の熱が断熱壁45及び上面板47で遮られる。重ねて空気層53により熱交換ジャケット5のジャケット底壁5bに熱が直接的に伝熱されることが防止される。
【0079】
これらにより、ガス加熱による底部13の高温加熱時に熱がジャケット底壁5bに伝わることが空気層53によって抑制されるため、短時間高温調理をより高度に行うことができる。
【0080】
前記立下部5abは、空気層53の外周を覆うから、熱交換ジャケット5の外面を流下する液が空気層53を介して断熱室23内へ浸入することを防止或は抑制することができる。立下部5abは、液切れを向上することができ、かかる点においても液が空気層53内へ浸入し難くなっている。万が一空気層53内に液が浸入しても、周回状のアングル材59が障壁となり、断熱室23内への浸入を阻止し、又は抑制することができる。
【0081】
かかる調理において、攪拌装置の稼働によって、調理容器1内の食材を攪拌調理することができ、全体として高温高速攪拌調理を行うことができる。
【符号の説明】
【0082】
1 調理容器
3 ガス加熱装置(底部加熱装置)
5 熱交換ジャケット
7 媒体給排装置(媒体供給装置)
13 底部
15 胴部
23 断熱室
31 開口
33 上壁部
35,37,45 断熱壁
48 座部
53 空気層
図1
図2