(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】両開き式シャッタ
(51)【国際特許分類】
E06B 9/02 20060101AFI20240222BHJP
E05F 17/00 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
E06B9/02 E
E05F17/00 D
(21)【出願番号】P 2020182508
(22)【出願日】2020-10-30
【審査請求日】2023-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000100838
【氏名又は名称】アイセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111257
【氏名又は名称】宮崎 栄二
(74)【代理人】
【識別番号】100110504
【氏名又は名称】原田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】望月 健児
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-319781(JP,A)
【文献】登録実用新案第3131724(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2004/0011478(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 9/00-9/92
E05F 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前部の両端から各側部が後方に平行して延びるコ字形のガイドレールが一対配設され、
この一対のガイドレール間に折れ曲がり可能なシャッタ扉が走行自在に2枚配設され、
2枚のシャッタ扉の前端部をガイドレール前部で突き合せた扉閉鎖状態では2枚の各々のシャッタ扉の後端部がガイドレール側部に位置するように構成され、
2枚のシャッタ扉の後端部を連結バーで連結することにより、一方のシャッタ扉を動かすと他方のシャッタ扉が連動して動くように構成した両開き式シャッタ。
【請求項2】
請求項1に記載の両開き式シャッタにおいて、
連結バーがシャッタ扉を動かしたときに適度にしなる剛性を有し、及び/又は、各シャッタ扉の後端部が可撓性を有し、
各シャッタ扉の後端部には、一方のシャッタ扉を動かして各シャッタ扉が扉閉鎖位置に達したときに他方のシャッタ扉が閉まる方向に進む慣性を生じさせるオモリが設けられている両開き式シャッタ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の両開き式シャッタにおいて、
2枚のシャッタ扉は、左右方向に開閉されるように構成され、
連結バーは、2枚のシャッタ扉の後端部における上部位置に連結されている両開き式シャッタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2枚のシャッタ扉をスライドさせて前面開口部を開閉する両開き式シャッタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ホームドア装置として、戸袋に進退自在に支持される扉体と、サーボモータを備えて前記扉体を前記戸袋に対して進退させる駆動部と、前記サーボモータを制御して前記サーボモータを事前に設定された全開角度と全閉角度との間で回転させる制御装置とを備え、2台のホームドア装置を間口部に配置して両開き戸を構成することが知られている(特許文献1)。また、従来のシャッタとして、折れ曲がり可能なシャッタ扉を、湾曲したコーナ部を有する一対のガイドレール間に走行自在に取り付け、前面開口部を開閉するように構成したものが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-11644号公報
【文献】特開2013-96162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来のホームドア装置は、サーボモータや制御装置等を備えるため、構造が複雑であり、メンテナンスに手間がかかり、且つ高価であり経済性に乏しいものであった。しかも、戸袋が扉体と直線状に配置されるため、間口が狭くなってしまう。
【0005】
一方、前記従来のシャッタのシャッタ扉を2枚配設して両開き扉を構成しようとした場合、2枚のシャッタ扉の各々に対して開閉操作を行う必要があり、操作性に劣ることとなる。
【0006】
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、簡単な構造であり、安価でメンテナンスが容易であり、間口を広くとることができ、且つ開閉操作性が良い両開き式シャッタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る両開き式シャッタは、
前部の両端から各側部が後方に平行して延びるコ字形のガイドレールが一対配設され、
この一対のガイドレール間に折れ曲がり可能なシャッタ扉が走行自在に2枚配設され、
2枚のシャッタ扉の前端部をガイドレール前部で突き合せた扉閉鎖状態では2枚の各々のシャッタ扉の後端部がガイドレール側部に位置するように構成され、
2枚のシャッタ扉の後端部を連結バーで連結することにより、一方のシャッタ扉を動かすと他方のシャッタ扉が連動して動くように構成したものである。
【0008】
前記構成より、一方のシャッタ扉に対して開閉操作を行うことより、他方のシャッタ扉は、連結バーを介して一方のシャッタ扉と連動して開閉操作される。ガイドレール前部の両端から後方に延びる各ガイドレール側部は、平行に形成されているので、2枚のシャッタ扉の後端部を連結バーで連結しても、連結バーがつかえることなく、2枚のシャッタ扉をスムーズに動かすことができる。従って、シャッタ扉を開閉する際は、2枚のシャッタ扉の各々に対して開閉操作を行う必要がなく、一方のシャッタ扉を動かすことで2枚のシャッタ扉の開閉操作を行うことができ、開閉操作性が良い両開き式シャッタが得られる。
【0009】
また、2枚のシャッタ扉の後端部を連結バーで連結する構成であるから、簡単な構造であり、安価でメンテナンスが容易である。また、一対のガイドレールは、前部及び側部で構成するコ字形を有し、ガイドレール前部の全体を間口とすることができ、間口を広くとることができる。
【0010】
連結バーがシャッタ扉を動かしたときに適度にしなる剛性を有し、及び/又は、各シャッタ扉の後端部が可撓性を有し、
各シャッタ扉の後端部には、一方のシャッタ扉を動かして各シャッタ扉が扉閉鎖位置に達したときに他方のシャッタ扉が閉まる方向に進む慣性を生じさせるオモリが設けられているものとすることができる。
【0011】
この場合、連結バーが適度にしなる剛性を有したり、シャッタ扉の後端部が可撓性を有したりすることで、一方のシャッタ扉によって各シャッタ扉を閉動作させると、連結バーを介して従動する他方のシャッタ扉は、閉操作した側の一方のシャッタ扉より少し遅れ気味に閉動作される。そして、各シャッタ扉が扉閉鎖位置に達して突き合わされたとき、遅れて閉動作した従動側の他方のシャッタ扉は、オモリによって慣性が生じ、連結バーのしなりやシャッタ扉の後端部の撓み等と相まってさらに進んで押し込まれる。従って、各シャッタ扉を閉鎖したとき各シャッタ扉間にすき間ができず、ぴったり閉じることができる。
【0012】
2枚のシャッタ扉は、左右方向に開閉されるように構成され、
連結バーは、2枚のシャッタ扉の後端部における上部位置に連結されているものとすることができる。
【0013】
この場合、連結バーは、本シャッタの天井側に配置されるので、シャッタ扉を開閉する際、連結バーは本シャッタの天井側で移動することとなる。従って、本シャッタの内側空間に物が置かれていても連結バーが物と接触することがない。よって、本シャッタの内側空間は、物を置く空間として有効活用できる。
【発明の効果】
【0014】
以上より、本発明に係る両開き式シャッタによれば、簡単な構造であり、安価でメンテナンスが容易であり、間口を広くとることができ、且つ開閉操作性が良いという効果が発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態の両開き式シャッタを示す斜視図である。
【
図2】ヒンジとスラットとの連結部分の構成例を示す断面模式図である。
【
図3】シャッタ扉の閉動作を開始するときと終了するときの状態を示す断面模式図である。
【
図4】シャッタ扉の後端部に連結バーを取り付けた状態を示す斜視図である。
【
図5】オモリを兼用する連結バーの固定部材(別体タイプ)を示す斜視図である。
【
図6】シャッタ扉を閉じるときに生じ得る若干の不都合を説明するための本シャッタの断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、実施形態の両開き式シャッタ1は、一対のコ字形のガイドレール2と、この一対のガイドレール2間にガイドレール2に沿って走行自在に配設される2枚のシャッタ扉3とを備え、前面開口部を2枚のシャッタ扉3によって開閉するように構成したものである。この両開き式シャッタ1は、2枚のシャッタ扉3を左右にそれぞれ配設して、両シャッタ扉3の前端部31を前面開口部の略中央部で突き合せた扉閉鎖位置に移動させることで前面開口部が閉じられ、両シャッタ扉3の前端部31を前面開口部の左右端まで引き離した扉開放位置に移動させることで前面開口部が開けられる。
【0017】
一対のガイドレール2は、直線状の前部21と、この前部21の両端から後方に向けて直線状に延びる左右の側部22とを有するコ字形に形成されている。左右の側部22は、互いに平行に形成されている。前部21と各側部22とが連続するコーナ部は、R状に形成されている。一対のガイドレール2は、上下に配設され、後部には縦横にフレーム4が取り付けられている。一対のガイドレール2は、互いに対向する面側に凹溝23が形成されている。この上下の凹溝23にシャッタ扉3を嵌め込んでシャッタ扉3が取り付けられている。
【0018】
図2(a)に示すように、シャッタ扉3は、複数の長方形平板状のスラット5と、各スラット5の長辺側を連結させるヒンジ6とにより構成されている。ヒンジ6は、外筒部61と内筒部62とを回動可能に組付けたものである。ヒンジ6の外筒部61と内筒部62とが周方向に回動してスラット5が揺動することで、シャッタ扉3は、ヒンジ6の位置で折れ曲がり可能に構成される。ヒンジ6の長手側両端部には、ローラ(図示せず)が取り付けられており、このローラをガイドレール2の凹溝23に配設することで、シャッタ扉3は、一対のガイドレール2の凹溝23に沿って走行自在とされる。
【0019】
なお、シャッタ扉3は、前記構成のものに限らない。例えば、他の構成のシャッタ扉3として、
図2(b)に示すように、前後の側面に側溝63を設けたヒンジ6Aを用い、このヒンジ6Aの各側溝63にスラット5の長辺側を連結させたものでもよい。このシャッタ扉3は、ヒンジ6Aの側溝63には凸部64が形成され、スラット5には長辺近傍に凹部51が形成され、これら凸部64と凹部51とを係合させてヒンジ6Aの側溝63にスラット5が揺動するように取り付けられることで、シャッタ扉3は、ヒンジ6Aの位置で折れ曲がり可能に構成される。また、このヒンジ6Aに設ける貫通孔65の両端部にローラが取り付けられる。
【0020】
次に、本実施形態の両開き式シャッタ1の特徴的な構成を説明する。
図3に示すように、2枚のシャッタ扉3は、各々の前端部31をガイドレール前部21で突き合せた扉閉鎖状態では2枚の各々のシャッタ扉3の後端部32がガイドレール側部22に位置するように構成されている(
図3(b)参照)。そして、2枚のシャッタ扉3の後端部32を連結バー7で連結することにより、一方のシャッタ扉3を動かすと他方のシャッタ扉3が連動して動くように構成されている。連結バー7の取り付けは、
図4に示すように、シャッタ扉3の後端部32にブロック状の固定部材8をネジ止め等で取り付け、この固定部材8に設けた取付孔83(
図5参照)に連結バー7の端部を嵌入させて取り付けられる。
【0021】
前記の構成により、一方のシャッタ扉3に対して開閉操作を行うことより、他方のシャッタ扉3は、連結バー7を介して一方のシャッタ扉3と連動して開閉操作される。ガイドレール前部21の両端から後方に延びる各ガイドレール側部22は、平行に形成されているので、2枚のシャッタ扉3の後端部32を連結バー7で連結しても、連結バー7がつかえることなく、2枚のシャッタ扉3をスムーズに動かすことができる。従って、シャッタ扉3を開閉する際は、2枚のシャッタ扉3の各々に対して開閉操作を行う必要がなく、一方のシャッタ扉3を動かすことで2枚のシャッタ扉3の開閉操作を行うことができ、開閉操作性が良い両開き式シャッタ1が得られる。
【0022】
また、2枚のシャッタ扉3の後端部32を連結バー7で連結する構成であるから、簡単な構造であり、安価でメンテナンスが容易である。一対のガイドレール2は、前部21及び側部22を有するコ字形を有し、ガイドレール前部21の全体を間口とすることができるので、間口を広くとることができる。
【0023】
また、連結バー7は、2枚のシャッタ扉3の後端部32における上端部位置に連結され、本シャッタ1の天井側に配置されている(
図1参照)。これにより、シャッタ扉3を開閉する際、連結バー7は本シャッタ1の天井側で移動することとなるので、本シャッタ1の内側空間に物が置かれていても連結バー7が物と接触することがない。従って、本シャッタ1の内側空間は、物を置く空間として有効活用できる。
【0024】
以上のように、本実施形態の両開き式シャッタ1によれば、簡単な構造であり、安価でメンテナンスが容易であり、間口を広くとることができ、且つ開閉操作性が良いという効果が発揮される。
【0025】
ところで、左右のシャッタ扉3の後端部32を連結バー7で連結する構成とした場合、シャッタ扉3を閉じるとき、左右のシャッタ扉3を突き合せた前端部31間にわずかなすき間が生じるおそれがある。すなわち、シャッタ扉3は、スラット5を連結するヒンジ6の部分で寸法がわずかに伸び縮みする。
図6に示すように、シャッタ扉3を閉める際、閉操作した一方のシャッタ扉3(
図6では左側のシャッタ扉3)は、前端部31が引っ張られるため、この引っ張り力によって各ヒンジ6の部分の寸法が少しずつ伸びる。一方、連結バー7を介して従動する他方のシャッタ扉3(
図6では右側のシャッタ扉3)は、後端部32が連結バー7で押し出されるため、この押出力によって各ヒンジ6の部分の寸法が少しずつ縮む。このような左右のシャッタ扉3の寸法の伸び縮みによって左右のシャッタ扉3の進み位置にわずかな差が生じ、この進み位置の差に起因して、左右のシャッタ扉3が扉閉鎖位置に達したときに突き合わされた前端部31間にわずかなすき間(例えば、1mm以下)を生じさせてしまうおそれがある。
【0026】
そこで、本実施形態では、連結バー7は、シャッタ扉3を動かしたときに適度にしなる剛性を有するものとする。この連結バー7は、金属製(例えば、アルミ、ステンレス等)であり、連結バー7の剛性として、例えば、一方のシャッタ扉3を閉操作したとき、連結バー7は、他方のシャッタ扉3の取り付け端部に対して、操作側の一方のシャッタ扉3の取り付け端部が数ミリ程度先行して動くように連結バー7が傾く(しなる)ような剛性とする。
【0027】
また、各シャッタ扉3の後端部32には、シャッタ扉3を動かして各シャッタ扉3が扉閉鎖位置に達したときにシャッタ扉3が閉まる方向に慣性を生じさせるオモリ(重り)を設ける。このオモリとしては、連結バー7を取り付けるためにシャッタ扉3に取り付けた固定部材8を金属製とすることで、この固定部材8がオモリの役目を兼ねることができる。なお、固定部材8とは別にオモリを設けるようにしてもよい。
【0028】
固定部材8は、連結バー7を嵌入させるような一体物で構成してもよいが、複数の部材で連結バー7を挟持する構成とすることができ、例えば、
図5に示すように、シャッタ扉3の固定部81と、固定部81との間で取付孔83内に連結バー7を挟み込むようにして固定部81に取り付ける取付部82とで構成することができる。固定部材8を複数の部材で構成すれば、シャッタ扉3への連結バー7の組み付けを容易に行うことができる。
【0029】
以上より、一方のシャッタ扉3によって各シャッタ扉3を閉動作させると、閉操作した側の一方のシャッタ扉3に固定した連結バー7の端部が先行して動いて連結バー7がしなって傾くことで、連結バー7を介して従動する他方のシャッタ扉3は、閉操作した側の一方のシャッタ扉3より少し遅れ気味に閉動作される(
図3(a)参照)。そして、各シャッタ扉3が扉閉鎖位置に達して突き合わされたとき、遅れて閉動作した従動側の他方のシャッタ扉3は、オモリによって慣性が生じ、連結バー7の傾き(しなり)が復帰することと相まってさらに進んで押し込まれる(
図3(b)参照)。従って、各シャッタ扉3を閉じたとき各シャッタ扉3間にすき間ができず、ぴったり閉じることができる。
【0030】
なお、各シャッタ扉3において、連結バー7を取り付ける後端部32が可撓性を有するものとすれば、上述したような慣性によってシャッタ扉3がさらに進むという作用効果の発揮を際立たせることができ、各シャッタ扉3を閉鎖したとき、より確実に各シャッタ扉3間にすき間ができずにぴったり閉じられるようにすることができる。シャッタ扉3の後端部32に可撓性を持たせる構成としては、例えば、シャッタ扉3の後端部32を軟質樹脂板又は金属製の薄板等で形成すればよく、又は、シャッタ扉3の後端部32のヒンジ6(6A)を軟質樹脂又は金属製薄板等で形成して可撓性を持たせてもよい。なお、シャッタ扉3の後端部32が可撓性を有する構成とする場合、連結バー7は、適度にしなる剛性を有しない剛直なものであってもよい。
【0031】
各シャッタ扉3の前端部31の対向端面に磁石と磁石の吸着部を配設するようにしてもよい。この場合、各シャッタ扉3の前端部31同士が突き合わされたときの反動で各シャッタ扉3間にすき間ができてしまうことがなく、磁石の吸着力によってぴったり閉じられるようにすることができる。
【0032】
なお、本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で様々な変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 両開き式シャッタ
2 ガイドレール
3 シャッタ扉
4 フレーム
5 スラット
6,6A ヒンジ
7 連結バー
8 固定部材(オモリ)
21 前部
22 側部
23 凹溝
31 前端部
32 後端部
51 凹部
61 外筒部
62 内筒部
63 側溝
64 凸部
65 貫通孔