(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】ロドコッカス属細菌由来ナノ小胞およびその用途
(51)【国際特許分類】
C12N 1/20 20060101AFI20240222BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20240222BHJP
A61K 35/74 20150101ALI20240222BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20240222BHJP
A61K 8/9728 20170101ALI20240222BHJP
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A61P 17/06 20060101ALI20240222BHJP
C12N 15/31 20060101ALN20240222BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALN20240222BHJP
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C12Q 1/6883 20180101ALN20240222BHJP
C12Q 1/689 20180101ALN20240222BHJP
【FI】
C12N1/20 Z
A23L33/135 ZNA
A61K35/74 G
A61K9/72
A61K8/9728
A61Q19/00
A61Q7/02
A61P17/00
A61P17/14
A61P35/00
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A61P9/10
A61P9/00
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A61P17/10
A61P17/06
C12N15/31
C12Q1/6869 Z
C12Q1/686 Z
C12Q1/6883 Z
C12Q1/689 Z
(21)【出願番号】P 2021539973
(86)(22)【出願日】2020-01-08
(86)【国際出願番号】 KR2020000342
(87)【国際公開番号】W WO2020145663
(87)【国際公開日】2020-07-16
【審査請求日】2021-08-16
(31)【優先権主張番号】10-2019-0002609
(32)【優先日】2019-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0002274
(32)【優先日】2020-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516348577
【氏名又は名称】エムディー ヘルスケア インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MD HEALTHCARE INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ユン-クン
【審査官】松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-515147(JP,A)
【文献】特表2013-516396(JP,A)
【文献】特表2013-530216(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0082925(KR,A)
【文献】国際公開第2019/051380(WO,A1)
【文献】特表2017-510268(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0023983(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0236948(US,A1)
【文献】特開2007-312677(JP,A)
【文献】AIHARA, H. et al.,Characterization of production of cholesterol oxidases in three Rhodococcus strains,Journal of Applied Bacteriology,1986年,61(4),pp. 269-274
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00- 35/768
A01J 1/00- 99/00
A23C 1/00- 23/00
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00- 90/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロドコッカス・エクイ(Rhodococcus equi)由来小胞を有効成分として含む、抗炎症用または脳神経疾患の予防もしくは治療用薬学的組成物
(但し、ロドコッカス・エクイ生菌を含有する組成物を除く)。
【請求項2】
炎症性肺疾患又は脳神経疾患の予防又は治療用である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記炎症性肺疾患は、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、急性肺損傷(acute lung injury)、膿胸、肺膿瘍、肺炎、肺結核および気管支炎からなる群より選ばれる1つ以上である、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記脳神経疾患は、うつ病、強迫性障害、統合失調症、認知症、アルツハイマー病、てんかん、自閉症、およびパーキンソン病からなる群より選ばれる1つ以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記小胞は、平均直径が10~200nmである、請求項1~4のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記小胞は、ロドコッカス・エクイから自然的または人工的に分泌される、請求項1~5のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
ロドコッカス・エクイ(Rhodococcus equi)由来小胞を有効成分として含む、抗炎症用または脳神経疾患の予防もしくは改善用食品組成物
(但し、ロドコッカス・エクイ生菌を含有する組成物を除く)。
【請求項8】
前記小胞は、平均直径が10~200nmである、請求項7に記載の食品組成物。
【請求項9】
前記小胞は、ロドコッカス・エクイから自然的または人工的に分泌される、請求項7または8に記載の食品組成物。
【請求項10】
ロドコッカス・エクイ(Rhodococcus equi)由来小胞を有効成分として含む、抗炎症用または脳神経疾患の予防または治療用吸入剤組成物
(但し、ロドコッカス・エクイ生菌を含有する組成物を除く)。
【請求項11】
ロドコッカス・エクイ(Rhodococcus equi)由来小胞を有効成分として含む、抗炎症用化粧料組成物
(但し、ロドコッカス・エクイ生菌を含有する組成物を除く)。
【請求項12】
炎症性皮膚疾患の予防又は改善用である、請求項11に記載の化粧料組成物。
【請求項13】
ロドコッカス・エクイ(Rhodococcus equi)生菌から分離されたロドコッカス・エクイ(Rhodococcus equi)細菌由来小胞の、
抗炎症用もしくは脳神経疾患の予防もしくは治療用の薬剤、抗炎症用もしくは脳神経疾患の予防もしくは改善用の食品組成物、抗炎症用もしくは脳神経疾患の予防もしくは治療用の吸入剤組成物、または抗炎症用の化粧料組成物の生産のための、使用。
【請求項14】
前記炎症性皮膚疾患は、アトピー性皮膚炎、にきび、脱毛、および乾癬からなる群より選ばれる1つ以上である、請求項12に記載の化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロドコッカス属細菌由来ナノ小胞およびその用途に関し、より具体的には、ロドコッカス属細菌に由来するナノ小胞を用いた肺癌、すい臓癌、胆管癌、乳癌、膀胱癌、リンパ腫等の悪性疾患、糖尿病、脳卒中、心筋梗塞等の心血管疾患、喘息、慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease、以下COPDという)等の炎症性肺疾患、または認知症等の診断方法、および前記小胞を含む悪性疾患、糖尿病、脳卒中、心血管疾患、炎症性肺疾患、または脳神経疾患の予防、改善、または治療用組成物に関する。
【0002】
本出願は、2019年1月9日に出願された韓国特許出願第10-2019-0002609号および2020年1月7日に出願された韓国特許出願第10-2020-0002274号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書および図面に開示されたすべての内容は本出願に援用される。
【背景技術】
【0003】
21世紀に入ってから過去には伝染病と認識された急性感染性疾患の重要性が低下する一方で、ヒトとマイクロバイオームとの不調和によって発生する免疫機能の異常を伴った慢性疾患が生活の質とヒトの寿命を決定する主な疾患となり疾病パターンが変わった。21世紀の難治性慢性疾患として、癌、心血管疾患、慢性肺疾患、代謝疾患、および神経-精神疾患がヒトの寿命と生活の質を決定する主な疾患として国民保健に大きい問題になっている。
【0004】
人体に共生する微生物は、100兆に至り、ヒト細胞より10倍多く、微生物の遺伝子数は、ヒトの遺伝子数の100倍を超えることが知られている。微生物叢(microbiotaあるいはmicrobiome)は、与えられた生息地に存在する真正細菌(bacteria)、古細菌(archaea)、真核生物(eukarya)を含む微生物群集(microbial community)を言う。
【0005】
人体に共生する細菌および周辺環境に存在する細菌は、他の細胞への遺伝子、低分子化合物、タンパク質等の情報を交換するために、ナノメートルサイズの小胞(vesicle)を分泌する。粘膜は、200ナノメートル(nm)サイズ以上の粒子が通過できない物理的な防御膜を形成し、粘膜に共生する細菌である場合には、粘膜を通過しないが、細菌由来の小胞は、サイズが100ナノメートルサイズ以下であるので、比較的自由に粘膜を通じて上皮細胞を通過して人体に吸収される。局所的に分泌された細菌由来の小胞は、粘膜の上皮細胞を通じて吸収されて局所炎症反応を誘導すると共に、上皮細胞を通過した小胞は、リンパ管を通じて全身的に吸収されて各臓器に分布し、分布した臓器で免疫および炎症反応を調節する。例えば、大腸菌(Eshcherichia coli)のような病原性グラム陰性細菌に由来する小胞は、局所的に大腸炎を起こし、血管に吸収された場合に、血管内皮細胞の炎症反応を通じて全身的な炎症反応および血液凝固を促進させ、また、インスリンが作用する筋肉細胞等に吸収されて、インスリン抵抗性と糖尿病を誘発する。反面、有益な細菌に由来する小胞は、病原性小胞による免疫機能および代謝機能の異常を調節して病気を調節することができる。
【0006】
細菌に由来する小胞等の因子に対する免疫反応は、インターロイキン(Interleukin、以下、ILという)-17サイトカインの分泌を特徴とするTh17免疫反応が発生するが、これは、細菌由来の小胞に曝露時にIL-6が分泌され、これは、Th17免疫反応を誘導する。Th17免疫反応による炎症は、好中球の浸潤を特徴とし、炎症が発生する過程で好中球、マクロファージ等のような炎症細胞から分泌される腫瘍壊死因子-アルファ(tumor necrosis factor-alpha、以下、TNF-αという)が重要な役割を担当する。
【0007】
慢性炎症は、癌の発生と密接な関連がある。特に好中球のような炎症細胞から分泌されるIL-6、TNF-α等は、癌細胞の生成と周囲の組織への癌細胞の浸潤を助長して癌の発生を誘導する。
【0008】
脳由来神経栄養因子(Brain-derived neurotrophic factor,BDNF)は、BDNF遺伝子により生成される脳中にあるタンパク質であって、成長要素の一部である神経栄養因子集団中の1つである。この因子は、基本的な神経成長要因に関連しており、うつ病、認知症、アルツハイマー病、自閉症等で発現が減少していると知られている。
【0009】
一方、ロドコッカス(Rhodococcus)属細菌は、土壌、水のような環境に広く棲息する好気性グラム陽性細菌であって、有害な環境汚染物質を無害な物質に変える機能を有する細菌である。この中で、ロドコッカス・エクイ(Rhodococcus equi)は、吸入により免疫が欠乏した動物で肺疾患を起こし、ロドコッカス・ファシエンス(Rhodococcus faciens)は、タバコ葉のような植物に病気を起こす菌と知られている。しかし、まだロドコッカス属細菌が細胞外に小胞を分泌するという事実が報告されておらず、特に癌または心血管-脳疾患等のような難治性疾患の診断および治療に応用した事例は報告されたところがない。
【0010】
これより、本発明では、ロドコッカス属細菌由来小胞が正常ヒトに比べて肺癌、すい臓癌、胆管癌、乳癌、膀胱癌、リンパ腫、糖尿病、脳卒中、心筋梗塞、喘息、慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease、以下COPD)、および認知症患者の臨床サンプルで有意に減少していることを確認して、疾患を診断することができることを確認した。また、ロドコッカス属細菌に属するロドコッカス・エクイから小胞を分離し、特性を分析した結果、悪性疾患、糖尿病、脳卒中、心血管疾患、炎症性肺疾患、または脳神経疾患に対する予防、改善、または治療用組成物として用いることができることを確認した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは、上記のような従来の問題点を解決するために鋭意研究した結果、メタゲノム解析を通して正常ヒトに比べて肺癌、すい臓癌、胆管癌、乳癌、膀胱癌、リンパ腫等の悪性疾患、糖尿病、脳卒中、心筋梗塞等の心血管疾患、喘息、COPD等の炎症性肺疾患、および認知症患者由来サンプルでロドコッカス属細菌由来小胞の含量が有意に減少していることを確認した。また、ロドコッカス属細菌に属するロドコッカス・エクイ菌から小胞を分離してマクロファージに処理したとき、病原性小胞による炎症メディエーターであるIL-6およびTNF-alphaの分泌を顕著に抑制し、ストレスホルモンによる脳神経細胞の損傷を抑制するBDNFの発現を有意に増加させることを確認し、これに基づいて本発明を完成した。
【0012】
これより、本発明は、肺癌、すい臓癌、胆管癌、乳癌、膀胱癌、リンパ腫、糖尿病、脳卒中、心筋梗塞、喘息、COPD、または認知症の診断のための情報提供方法を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は、ロドコッカス属細菌由来小胞を有効成分として含む悪性疾患、糖尿病、脳卒中、心血管疾患、炎症性肺疾患、および脳神経疾患からなる群より選ばれる1つ以上の疾患の予防、改善、または治療用組成物を提供することを他の目的とする。
【0014】
しかしながら、本発明が解決しようとする技術的課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及されていない他の課題は、下記の記載から当業者に明確に理解され得る。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記のような本発明の目的を達成するために、本発明は、下記の段階を含む、肺癌、すい臓癌、胆管癌、乳癌、膀胱癌、リンパ腫、糖尿病、脳卒中、心筋梗塞、喘息、COPD、または認知症の診断のための情報提供方法を提供する。
(a)正常ヒトおよび被検者のサンプルから分離した小胞からDNAを抽出する段階;
(b)前記抽出したDNAに対して16S rDNAに存在する遺伝子配列に基づいて作製したプライマーペアを用いてPCR(Polymerase Chain Reaction)を行う段階;および
(c)前記PCR産物の定量分析を通じて正常ヒトに比べてロドコッカス属細菌由来小胞の含量が低い場合、肺癌、すい臓癌、胆管癌、乳癌、膀胱癌、リンパ腫、糖尿病、脳卒中、心筋梗塞、喘息、COPD、または認知症に分類する段階。
【0016】
また、本発明は、下記の段階を含む、肺癌、すい臓癌、胆管癌、乳癌、膀胱癌、リンパ腫、糖尿病、脳卒中、心筋梗塞、喘息、COPD、または認知症の診断方法を提供する。
(a)正常ヒトおよび被検者のサンプルから分離した小胞からDNAを抽出する段階;
(b)前記抽出したDNAに対して16S rDNAに存在する遺伝子配列に基づいて作製したプライマーペアを用いてPCRを行った後、それぞれのPCR産物を取得する段階;および
(c)前記PCR産物の定量分析を通じて正常ヒトに比べてロドコッカス属細菌由来小胞の含量が低い場合、肺癌、すい臓癌、胆管癌、乳癌、膀胱癌、リンパ腫、糖尿病、脳卒中、心筋梗塞、喘息、COPD、または認知症と判定する段階。
【0017】
本発明の一具現例において、前記(a)段階でのサンプルには、制限がないが、血液、尿、便、唾液または鼻粘膜であり得、好ましくは、血液または尿でありうる。
【0018】
本発明の他の具現例において、前記(b)段階でのプライマーペアは、配列番号1および配列番号2のプライマーでありうる。
【0019】
また、本発明は、ロドコッカス属細菌由来小胞を有効成分として含む、悪性疾患、糖尿病、脳卒中、心血管疾患、炎症性肺疾患、および脳神経疾患からなる群より選ばれる1つ以上の疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0020】
また、本発明は、ロドコッカス属細菌由来小胞を有効成分として含む、悪性疾患、糖尿病、脳卒中、心血管疾患、炎症性肺疾患、および脳神経疾患からなる群より選ばれる1つ以上の疾患の予防または改善用食品組成物を提供する。
【0021】
また、本発明は、ロドコッカス属細菌由来小胞を有効成分として含む、悪性疾患、糖尿病、脳卒中、心血管疾患、炎症性肺疾患、および脳神経疾患からなる群より選ばれる1つ以上の疾患の予防または治療用吸入剤組成物を提供する。
【0022】
また、本発明は、ロドコッカス属細菌由来小胞を有効成分として含む薬学的組成物を個体に投与する段階を含む、悪性疾患、糖尿病、脳卒中、心血管疾患、炎症性肺疾患、および脳神経疾患からなる群より選ばれる1つ以上の疾患の予防または治療方法を提供する。
【0023】
また、本発明は、ロドコッカス属細菌由来小胞を有効成分として含む薬学的組成物の悪性疾患、糖尿病、脳卒中、心血管疾患、炎症性肺疾患、および脳神経疾患からなる群より選ばれる1つ以上の疾患の予防または治療用途を提供する。
【0024】
また、本発明は、ロドコッカス属細菌由来小胞の、悪性疾患、糖尿病、脳卒中、心血管疾患、炎症性肺疾患、および脳神経疾患からなる群より選ばれる1つ以上の疾患の治療に用いられる薬剤を生産するための用途を提供する。
【0025】
本発明の一具現例において、前記悪性疾患は、肺癌、すい臓癌、胆管癌、乳癌、膀胱癌、およびリンパ腫からなる群より選ばれる1つ以上でありうる。
【0026】
本発明の他の具現例において、前記心血管疾患は、心筋梗塞、高血圧、虚血性心臓疾患、冠状動脈疾患、狭心症、粥状硬化症(動脈硬化症)、および不整脈からなる群より選ばれる1つ以上でありうる。
【0027】
本発明のさらに他の具現例において、前記炎症性肺疾患は、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、急性肺損傷(acute lung injury)、膿胸、肺膿瘍、肺炎、肺結核および気管支炎からなる群より選ばれる1つ以上でありうる。
【0028】
本発明のさらに他の具現例において、前記脳神経疾患は、うつ病、強迫性障害、統合失調症、認知症、アルツハイマー病、てんかん、自閉症、およびパーキンソン病からなる群より選ばれる1つ以上でありうる。
【0029】
また、本発明は、ロドコッカス属細菌由来小胞を有効成分として含む、炎症性皮膚疾患の予防または改善用化粧料組成物を提供する。
【0030】
本発明の一具現例において、前記炎症性皮膚疾患は、アトピー皮膚炎、にきび、脱毛、および乾癬からなる群より選ばれる1つ以上でありうる。
【0031】
本発明の一具現例において、前記小胞は、平均直径が10~200nmでありうる。
【0032】
本発明の他の具現例において、前記小胞は、ロドコッカス属細菌から自然的または人工的に分泌されるものでありうる。
【0033】
本発明の他の具現例において、前記ロドコッカス属細菌由来小胞は、ロドコッカス・エクイ(Rhodococcus equi)小胞から分泌されるものでありうる。
【発明の効果】
【0034】
本発明者らは、腸内細菌である場合には、体内に吸収されないが、細菌由来小胞である場合には、上皮細胞を通じて体内に吸収されて、全身的に分布し、腎臓、肝臓、肺を通じて体外に排泄されることを確認し、患者の血液に存在する細菌由来小胞メタゲノム解析を通して肺癌、すい臓癌、胆管癌、乳癌、膀胱癌、リンパ腫、糖尿病、脳卒中、心筋梗塞、喘息、COPD、および認知症患者の血液に存在するロドコッカス属細菌由来小胞が正常ヒトに比べて有意に減少していることを確認した。また、ロドコッカス属細菌の一種であるロドコッカス・エクイを体外で培養して小胞を分離して、体外で炎症細胞に投与したとき、炎症誘発因子による炎症メディエーターの分泌を有意に抑制することを観察した。また、ストレスホルモンにより抑制された神経細胞のBDNF発現が前記小胞により有意に回復されることを確認した。本発明によるロドコッカス属細菌由来小胞は、肺癌、すい臓癌、胆管癌、乳癌、膀胱癌、リンパ腫、糖尿病、脳卒中、心筋梗塞、喘息、COPD、または認知症に対する診断方法、および悪性疾患、糖尿病、脳卒中、心血管疾患、炎症性肺疾患、および脳神経疾患に対する食品、吸入剤、または薬物等の予防用あるいは治療用組成物に有用に用いられると期待される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】
図1aは、マウスに細菌と細菌由来小胞(EV)を口腔内投与した後、時間別に細菌と小胞の分布様相を撮影した写真であり、
図1bは、口腔内投与した後12時間目に、血液、腎臓、肝臓、および様々な臓器を摘出して、細菌と小胞の体内分布様相を評価した図である。
【
図2】
図2aおよび
図2bは、肺癌患者および正常ヒトに存在する細菌由来小胞メタゲノム解析を実施した後、ロドコッカス属細菌由来小胞の分布を比較した結果であって、
図2aは、血液を試料とした結果であり、
図2bは、尿を試料とした結果である。
【
図3】
図3は、すい臓癌患者および正常ヒトの血液に存在する細菌由来小胞メタゲノム解析を実施した後、ロドコッカス属細菌由来小胞の分布を比較した結果である。
【
図4】
図4は、胆管癌患者および正常ヒトの血液に存在する細菌由来小胞メタゲノム解析を実施した後、ロドコッカス属細菌由来小胞の分布を比較した結果である。
【
図5】
図5は、乳癌患者および正常ヒトの血液に存在する細菌由来小胞メタゲノム解析を実施した後、ロドコッカス属細菌由来小胞の分布を比較した結果である。
【
図6】
図6は、膀胱癌患者および正常ヒトの血液に存在する細菌由来小胞メタゲノム解析を実施した後、ロドコッカス属細菌由来小胞の分布を比較した結果である。
【
図7】
図7は、リンパ腫患者および正常ヒトの血液に存在する細菌由来小胞メタゲノム解析を実施した後、ロドコッカス属細菌由来小胞の分布を比較した結果である。
【
図8】
図8は、糖尿病患者および正常ヒトの血液に存在する細菌由来小胞メタゲノム解析を実施した後、ロドコッカス属細菌由来小胞の分布を比較した結果である。
【
図9】
図9は、脳卒中患者および正常ヒトの血液に存在する細菌由来小胞メタゲノム解析を実施した後、ロドコッカス属細菌由来小胞の分布を比較した結果である。
【
図10】
図10は、心筋梗塞患者および正常ヒトの血液に存在する細菌由来小胞メタゲノム解析を実施した後、ロドコッカス属細菌由来小胞の分布を比較した結果である。
【
図11】
図11は、喘息患者および正常ヒトの血液に存在する細菌由来小胞メタゲノム解析を実施した後、ロドコッカス属細菌由来小胞の分布を比較した結果である。
【
図12】
図12は、COPD患者および正常ヒトの血液に存在する細菌由来小胞メタゲノム解析を実施した後、ロドコッカス属細菌由来小胞の分布を比較した結果である。
【
図13】
図13は、認知症患者および正常ヒトの血液に存在する細菌由来小胞メタゲノム解析を実施した後、ロドコッカス属細菌由来小胞の分布を比較した結果である。
【
図14】
図14aおよび14bは、ロドコッカス・エクイ由来小胞の抗炎症および免疫調節効果を評価するために、病原性小胞である大腸菌小胞(E.coli EV)の処理前にロドコッカス菌由来小胞を前処理して、大腸菌小胞による炎症メディエーターの分泌に及ぼす影響を評価した結果であって、
図14aは、IL-6の分泌程度を比較した図であり、
図14bは、TNF-αの分泌程度を比較した図である。
【
図15】
図15は、ロドコッカス・エクイ由来小胞の神経細胞保護効果を評価するために、神経細胞にストレスホルモンである副腎皮質ホルモン(GC)を処理するとき、ロドコッカス・エクイ由来小胞を同時に処理して、神経細胞によるbrain-derived neutotrphic factor(BDNF)の発現に及ぼす影響を評価した結果である(EV:Rhodococcus equi extracellular vesicle)。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は、ロドコッカス属細菌由来小胞およびその用途に関する。
【0037】
本発明者らは、メタゲノム解析を通して正常ヒトに比べて肺癌、すい臓癌、胆管癌、乳癌、膀胱癌、リンパ腫、糖尿病、脳卒中、心筋梗塞、喘息、COPD、および認知症患者由来サンプルでロドコッカス属細菌由来小胞の含量が顕著に減少していることを確認した。また、ロドコッカス属細菌に属するロドコッカス・エクイ菌から小胞を分離してマクロファージに処理したとき、病原性小胞による炎症メディエーターであるIL-6およびTNF-alphaの分泌を顕著に抑制し、ストレスホルモンにより抑制された神経細胞のBDNF発現が前記小胞により有意に回復されることを確認したところ、これに基づいて本発明を完成した。
【0038】
これより、本発明は、下記の段階を含む肺癌、すい臓癌、胆管癌、乳癌、膀胱癌、リンパ腫、糖尿病、脳卒中、心筋梗塞、喘息、COPD、または認知症の診断のための情報提供方法を提供する。
(a)正常ヒトおよび被検者のサンプルから分離した小胞からDNAを抽出する段階;
(b)前記抽出したDNAに対して16S rDNAに存在する遺伝子配列に基づいて作製したプライマーペアを用いてPCRを行った後、それぞれのPCR産物を取得する段階;および
(c)前記PCR産物の定量分析を通じて正常ヒトに比べてロドコッカス属細菌由来小胞の含量が低い場合、肺癌、すい臓癌、胆管癌、乳癌、膀胱癌、リンパ腫、糖尿病、脳卒中、心筋梗塞、喘息、COPD、または認知症に分類する段階。
【0039】
本発明において使用される用語「診断」とは、広い意味では、患者の疾患の実態をすべての面にわたって判断することを意味する。判断の内容は、病名、病因、病型、軽重、病状の詳細な容態、合併症の有無、および予後などである。本発明において診断は、肺癌、すい臓癌、胆管癌、乳癌、膀胱癌、リンパ腫、糖尿病、脳卒中、心筋梗塞、喘息、COPD、および/または認知症等の発病の有無および疾患のレベルなどを判断することである。
【0040】
本発明において使用される用語「ナノ小胞(Nanovesicle)」あるいは「小胞(Vesicle)」とは、多様な細菌から分泌されるナノサイズの膜からなる構造物を意味する。グラム陰性菌(gram-negative bacteria)由来小胞、または外膜小胞(outer membrane vesicles,OMVs)は、内毒素(lipopolysaccharide)または毒性タンパク質、および細菌DNAとRNAも有しており、グラム陽性菌(gram-positive bacteria)由来小胞は、タンパク質と核酸の他にも、細菌の細胞壁構成成分であるペプチドグリカン(peptidoglycan)とリポタイコ酸(lipoteichoic acid)も有している。本発明において、ナノ小胞あるいは小胞は、ロドコッカス属細菌から自然的に分泌されたりまたは人工的に生産するもので、球状の形態であり、10~200nmの平均直径を有している。
【0041】
本発明において使用される用語「メタゲノム」とは、「群遺伝子」とも言い、土壌、動物の腸など孤立した地域内のすべてのウイルス、細菌、かび等を含む遺伝子の総和を意味するもので、主に培養にならない微生物を分析するためにシーケンサーを使用して一度に多くの微生物を同定することを説明する遺伝子の概念として使用される。特に、メタゲノムは、一種のゲノム、遺伝子をいうものではなく、1つの環境単位のすべての種の遺伝子であって、一種の混合遺伝子をいう。これは、オミックス的に生物学が発展する過程で一種を定義するとき、機能的に従来の一種だけでなく、多様な種が互いに相互作用して完全な種を作るという観点から出た用語である。技術的には、迅速な配列分析法を利用して、種に関係なく、すべてのDNA、RNAを分析して、1つの環境内でのすべての種を同定し、相互作用、代謝作用を解明する技法の対象である。
【0042】
本発明において、前記患者由来サンプルには、制限がないが、血液、尿、便、唾液または鼻粘膜であり得、好ましくは、血液または尿である。
【0043】
本発明において、前記(b)段階でのプライマーペアは、配列番号1および配列番号2のプライマーでありうるが、これに制限されるものではない。
【0044】
本発明の他の様態として、本発明は、ロドコッカス属細菌由来小胞を有効成分として含む、悪性疾患、糖尿病、脳卒中、心血管疾患、炎症性肺疾患、および脳神経疾患からなる群より選ばれる1つ以上の疾患の予防または治療用組成物を提供する。
【0045】
前記組成物は、薬学的組成物および吸入剤組成物を含む。
【0046】
また、本発明は、ロドコッカス属細菌由来小胞を有効成分として含む薬学的組成物を個体に投与する段階を含む、悪性疾患、糖尿病、脳卒中、心血管疾患、炎症性肺疾患、および脳神経疾患からなる群より選ばれる1つ以上の疾患の予防または治療方法を提供する。
【0047】
また、本発明は、ロドコッカス属細菌由来小胞を有効成分として含む薬学的組成物の悪性疾患、糖尿病、脳卒中、心血管疾患、炎症性肺疾患、および脳神経疾患からなる群より選ばれる1つ以上の疾患の予防または治療用途を提供する。
【0048】
また、本発明は、ロドコッカス属細菌由来小胞の、悪性疾患、糖尿病、脳卒中、心血管疾患、炎症性肺疾患、および脳神経疾患からなる群より選ばれる1つ以上の疾患の治療に用いられる薬剤を生産するための用途を提供する。
【0049】
本発明において使用される用語「予防」とは、本発明による組成物の投与により悪性疾患、糖尿病、脳卒中、心血管疾患、炎症性肺疾患、または脳神経疾患等を抑制したり発病を遅延させるすべての行為を意味する。
【0050】
本発明において使用される用語「治療」とは、本発明による組成物の投与により悪性疾患、糖尿病、脳卒中、心血管疾患、炎症性肺疾患、または脳神経疾患等に対する症状が好転したり有利に変更されるすべての行為を意味する。
【0051】
本発明において使用される用語「改善」とは、治療される状態と関連したパラメーター、例えば症状の程度を少なくとも減少させるすべての行為を意味する。
【0052】
本発明において使用される用語「個体」とは、悪性疾患、糖尿病、脳卒中、心血管疾患、炎症性肺疾患、および脳神経疾患からなる群より選ばれる1つ以上の疾患の治療を必要とする対象を意味し、より具体的には、ヒトまたは非ヒトである霊長類、マウス(mouse)、犬、猫、馬、および牛等の哺乳類を含む。
【0053】
本発明において使用される用語「投与」とは、任意の適切な方法で個体に所定の本発明の組成物を提供することを意味する。
【0054】
本発明において使用する用語「悪性疾患」とは、癌、肉腫などきわめて予後が不良な疾患、または治療が困難であり、進行性が強い疾患を全部含む意味であり、本発明において前記悪性疾患は、肺癌、すい臓癌、胆管癌、乳癌、膀胱癌、およびリンパ腫からなる群より選ばれる1つ以上でありうるが、これに制限されない。
【0055】
本発明において使用する用語「心血管疾患」とは、心臓と主要動脈に発生する疾患を総称し、本発明において前記心血管疾患は、心筋梗塞、高血圧、虚血性心臓疾患、冠状動脈疾患、狭心症、粥状硬化症(動脈硬化症)、および不整脈からなる群より選ばれる1つ以上でありうるが、これに制限されない。
【0056】
本発明において使用する用語「炎症性肺疾患」とは、肺と関連して炎症反応で引き起こされる疾患を意味し、本発明において前記炎症性肺疾患は、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、急性肺損傷(acute lung injury)、膿胸、肺膿瘍、肺炎、肺結核および気管支炎からなる群より選ばれる1つ以上でありうるが、これに制限されない。
【0057】
本発明において使用する用語「脳神経疾患」とは、脳神経細胞の問題によって発生する疾患を総称し、本発明において前記脳神経疾患は、うつ病、強迫性障害、統合失調症、認知症、アルツハイマー病、てんかん、自閉症、およびパーキンソン病からなる群より選ばれる1つ以上でありうるが、これに制限されるものではない。
【0058】
前記小胞は、ロドコッカス属細菌を含む培養液を遠心分離、超高速遠心分離、高圧処理、押出、超音波分解、細胞溶解、均質化、冷凍-解凍、電気穿孔、機械的分解、化学物質処理、フィルターによる濾過、ゲル濾過クロマトグラフィー、フリーフロー電気泳動、およびキャピラリー電気泳動からなる群より選ばれる1つ以上の方法を使用して分離することができる。また、不純物の除去のための洗浄、取得された小胞の濃縮等の過程を追加で含むことができる。
【0059】
本発明による薬学的組成物は、薬学的に許容可能な担体を含むことができる。前記薬学的に許容可能な担体は、製剤時に通常用いられるものであって、食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、シクロデキストリン、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール、リポソーム等を含むが、これに限定されず、必要に応じて抗酸化剤、緩衝液など他の通常の添加剤をさらに含むことができる。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤、潤滑剤等を付加的に添加して水溶液、懸濁液、乳濁液等のような注射用剤形、丸薬、カプセル、顆粒、または錠剤に製剤化することができる。適合した薬学的に許容される担体および製剤化に関しては、レミントンの文献に開示されている方法を利用して各成分によって好適に製剤化することができる。本発明の薬学的組成物は、剤形に特別な制限はないが、注射剤、吸入剤、皮膚外用剤、または経口摂取剤等に製剤化することができる。
【0060】
本発明の薬学的組成物は、目的する方法によって経口投与したり非経口投与(例えば、静脈内、皮下、皮膚に適用)することができ、投与量は、患者の状態および体重、病気の程度、薬物形態、投与経路および時間によって異なるが、当業者により適切に選択され得る。
【0061】
本発明による薬学的組成物は、薬学的に有効な量で投与する。本発明において、薬学的に有効な量は、医学的治療に適用可能な合理的なベネフィット/リスクの割合で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効用量レベルは、患者の疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する感受性、投与時間、投与経路および排出比率、治療期間、同時使用される薬物を含む要素およびその他医学分野によく知られた要素によって決定され得る。本発明による組成物は、個別治療剤で投与したり他の治療剤と併用して投与されることができて従来の治療剤とは、順次的または同時に投与し、単一または多重投与することができる。上記した要素を全部考慮して副作用なしに最小限の量で最大効果を得ることができる量を投与することが重要であり、これは、当業者により容易に決定されることができる。
【0062】
具体的に、本発明による薬学的組成物の有効量は、患者の年齢、性別、体重によって変わることができ、投与経路、肥満の重症度、性別、体重、年齢等によって増減することができる。
【0063】
本発明の他の様態として、本発明は、ロドコッカス属細菌由来小胞を有効成分として含む、悪性疾患、糖尿病、脳卒中、心血管疾患、炎症性肺疾患、および脳神経疾患からなる群より選ばれる1つ以上の疾患の予防または改善用食品組成物を提供する。
【0064】
本発明の食品組成物は、健康機能食品組成物を含む。本発明による食品組成物は、有効成分を食品にそのまま添加したり他の食品または食品成分と共に使用され得、通常の方法によって適切に使用され得る。有効成分の混合量は、その使用目的(予防または改善用)によって適宜決定され得る。一般的に、食品または飲料の製造時に、本発明の組成物は、原料に対して15重量%以下、好ましくは、10重量%以下の量で添加される。しかし、健康および衛生を目的としたり、または健康調節を目的とする長期間の摂取の場合には、前記量は、前記範囲以下でありうる。
【0065】
本発明の食品組成物は、指示された割合で必須成分として前記有効成分を含有すること以外に、他の成分には特別な制限がなく、通常の飲料のように様々な香味剤または天然炭水化物等を追加成分として含有することができる。上述した天然炭水化物の例は、モノサッカライド、例えば、ブドウ糖、果糖等;二糖類、例えばマルトース、スクロース等;およびポリサッカライド、例えばデキストリン、シクロデキストリン等のような通常の糖、およびキシリトール、ソルビトール、エリトリトール等の糖アルコールである。上述したもの以外の香味剤として、天然香味剤(ソーマチン、ステビア抽出物、例えばレバウディオサイドA、グリチルリチン等)および合成香味剤(サッカリン、アスパルテーム等)を有利に使用することができる。前記天然炭水化物の割合は、当業者の選択によって適切に決定され得る。
【0066】
上記のほか、本発明の食品組成物は、様々な栄養剤、ビタミン、ミネラル(電解質)、合成風味剤および天然風味剤等の風味剤、着色剤および増進剤(チーズ、チョコレート等)、ペクチン酸およびその塩、アルギン酸およびその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤等を含有することができる。このような成分は、独立して、または、組み合わせて使用することができる。このような添加剤の割合も、当業者により適切に選択され得る。
【0067】
本発明の前記吸入剤組成物は、ロドコッカス属細菌由来小胞だけでなく、吸入剤組成物に通常用いられる成分を含むことができ、例えば抗酸化剤、安定化剤、溶解化剤、ビタミン、および香料のような通常の補助剤、そして担体を含むことができる。
【0068】
本発明のさらに他の様態として、本発明は、ロドコッカス属細菌由来小胞を有効成分として含む、炎症性皮膚疾患の予防または改善用化粧料組成物を提供する。
【0069】
本発明において、前記炎症性皮膚疾患は、アトピー皮膚炎、にきび、脱毛、および乾癬からなる群より選ばれる1つ以上でありうるが、これに制限されない。
【0070】
本発明の前記化粧料組成物は、ロドコッカス属細菌由来小胞だけでなく、化粧料組成物に通常用いられる成分を含むことができ、例えば抗酸化剤、安定化剤、溶解化剤、ビタミン、顔料、および香料のような通常の補助剤、そして担体を含むことができる。
【0071】
また、本発明の組成物は、ロドコッカス属細菌由来小胞以外に、ロドコッカス属細菌由来小胞と反応して皮膚保護効果を損傷させない限度で従来から使用されてきた有機紫外線遮断剤を混合して使用することもできる。前記有機紫外線遮断剤としては、グリセリルPABA、ドロメトリゾールトリシロキサン、ドロメトリゾール、ジガロイルトリオレエート、ジソジウムフェニルジベンズイミダゾールテトラスルホネート、ジエチルヘキシルブタミドトリアゾン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエート、DEA-メトキシシンナメート、ローソンとジヒドロキシアセトンの混合物、メチレンビス-ベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、4-メチルベンジリデンカンファ、メンチルアントラニレート、ベンゾフェノン-3(オキシベンゾン)、ベンゾフェノン-4、ベンゾフェノン-8(ジオキシフェニルベンゾン)、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、シノキサート、エチルジヒドロキシプロピルPABA、オクトクリレン、エチルヘキシルジメチルPABA、エチルヘキシルメトキシシンナメート、エチルヘキシルサリシレート、エチルヘキシルトリアゾン、イソアミル-p-メトキシシンナメート、ポリシリコーン-15(マロン酸ジメチコジエチルベンザル)、テレフタリリデンジカンフルスルホン酸およびその塩類、TEA-サリシレートおよびアミノ安息香酸(PABA)からなる群より選ばれる1種以上を使用することができる。
【0072】
本発明の化粧料組成物を添加できる製品としては、例えば、収斂化粧水、柔軟化粧水、栄養化粧水、各種クリーム、エッセンス、パック、ファンデーション等のような化粧品類とクレンジング、洗顔剤、石鹸、トリートメント、美容液等がある。本発明の化粧料組成物の具体的な剤形としては、スキンローション、スキンソフトナー、スキントナー、アストリンゼント、ローション、ミルクローション、モイスチャーローション、栄養ローション、マッサージクリーム、栄養クリーム、モイスチャークリーム、ハンドクリーム、エッセンス、栄養エッセンス、パック、石鹸、シャンプー、クレンジングフォーム、クレンジングローション、クレンジングクリーム、ボディローション、ボディクレンザー、乳液、リップスティック、メイクアップベース、ファンデーション、プレスパウダー、ルースパウダー、アイシャドウ等の剤形を含む。
【0073】
本発明の一実施例では、細菌および細菌由来小胞をマウスに経口投与して細菌および小胞の体内吸収、分布、および排泄様相を評価して、細菌である場合には、腸粘膜を通じて吸収されないのに対し、小胞は、投与5分以内に吸収されて全身的に分布し、腎臓、肝臓等を通じて排泄されることを確認した(実施例1参照)。
【0074】
本発明の他の実施例では、肺癌、すい臓癌、胆管癌、乳癌、膀胱癌、リンパ腫、糖尿病、脳卒中、心筋梗塞、喘息、COPD、および認知症患者と年齢と性別をマッチングした正常ヒトの血液または尿から分離した小胞を用いて細菌メタゲノム解析を実施した。その結果、正常ヒトのサンプルに比べて、肺癌、すい臓癌、胆管癌、乳癌、膀胱癌、リンパ腫、糖尿病、脳卒中、心筋梗塞、喘息、COPD、および認知症患者の臨床サンプルでロドコッカス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(実施例3~14参照)。
【0075】
本発明のさらに他の実施例では、ロドコッカス・エクイ菌株を培養してこれから分泌された小胞が免疫調節および抗炎症効果を示すかを評価したが、多様な濃度のロドコッカス・エクイ由来小胞をマクロファージに処理した後、炎症疾患の原因因子である大腸菌由来小胞を処理して炎症メディエーターの分泌を評価した結果、大腸菌由来小胞によるIL-6およびTNF-αの分泌をロドコッカス・エクイ由来小胞が効率的に抑制することを確認した(実施例16参照)。
【0076】
本発明のさらに他の実施例では、ロドコッカス・エクイ菌株由来小胞の神経細胞保護効果を評価したが、神経細胞にストレスを与える副腎皮質ホルモンを処理するとき、ロドコッカス・エクイ由来小胞を神経細胞に同時に処理してbrain-derived neurotrphic factor(BDNF)の発現を評価した結果、神経細胞の損傷を保護する媒介体であるBDNFの発現をロドコッカス・エクイ由来小胞が効率的に増加させることを確認した(実施例17参照)。
【0077】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。しかしながら、下記の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、下記実施例によって本発明の内容が限定されるものではない。
【実施例】
【0078】
[実施例1.腸内細菌および細菌由来小胞の体内吸収、分布、および排泄様相の分析]
細菌と細菌由来小胞が粘膜を通じて全身的に吸収されるかを評価するために、下記のような方法で実験を行った。蛍光で標識した腸内細菌と腸内細菌由来小胞をそれぞれ50μgの用量でマウスの胃腸に投与し、0分、5分、3時間、6時間、12時間後に蛍光を測定した。マウス全体イメージを観察した結果、
図1aに示されたように、細菌である場合には、全身的に吸収されなかったが、細菌由来小胞である場合には、投与後5分に全身的に吸収され、投与3時間後には、膀胱に蛍光が濃く観察されて、小胞が泌尿器系に排泄されることが分かった。また、小胞は、投与12時間まで体内に存在することが分かった(
図1a参照)。
【0079】
腸内細菌と腸内細菌由来小胞が全身的に吸収された後、様々な臓器に浸潤された様相を評価するために、蛍光で標識した50μgの細菌と細菌由来小胞を上記の方法のように投与した後、投与12時間後に血液、心臓、肺、肝臓、腎臓、脾臓、脂肪、筋肉を採取した。採取した組織で蛍光を観察した結果、
図1bに示されたように、細菌由来小胞が血液、心臓、肺、肝臓、腎臓、脾臓、脂肪、筋肉に分布したが、細菌は吸収されないことが分かった(
図1b参照)。
【0080】
[実施例2.臨床サンプルで細菌由来小胞メタゲノム解析]
血液または尿をまず10mlチューブに入れ、遠心分離法(3,500×g、10min、4℃)で浮遊物を沈殿させ、上澄み液のみを新しい10mlチューブに移した。0.22μmフィルターを使用して細菌および異物を除去した後、セントリプレップチューブ(centrifugal filters 50kD)に移して1500×g、4℃で15分間遠心分離して、50kDより小さい物質は捨て、10mlまで濃縮させた。さらに、0.22μmフィルター(filter)を使用してバクテリアおよび異物を除去した後、Type 90tiローターで150,000×g、4℃で3時間超高速遠心分離方法を使用して上澄み液を捨て、固まったペレット(pellet)を生理食塩水(PBS)で溶かした。
【0081】
前記方法で分離した小胞100μlを100℃でボイルして、内部のDNAを脂質外に出るようにし、その後、氷に5分間冷まし、残った浮遊物を除去するために、10,000×g、4℃で30分間遠心分離し、上澄み液のみを集めた。次に、Nanodropを用いてDNA量を定量した。
【0082】
以後、前記抽出されたDNAに細菌由来DNAが存在するかを確認するために、下記表1に示した16s rDNAプライマー(primer)でPCRを行って、前記抽出された遺伝子に細菌由来遺伝子が存在することを確認した。
【0083】
【0084】
前記方法で抽出したDNAを前記の16S rDNAプライマーを使用して増幅した後、シーケンシングを行い(Illumina MiSeq sequencer)、結果をStandard Flowgram Format(SFF)ファイルで出力し、GS FLX software(v2.9)を用いてSFFファイルをsequenceファイル(.fasta)とnucleotide quality scoreファイルに変換した後、リードの信用度評価を確認し、window(20bps)平均base call accuracyが99%未満(Phred score<20)である部分を除去した。Operational Taxonomy Unit(OTU)分析のためには、UCLUSTとUSEARCHを用いてシーケンス類似度によってクラスタリングを行い、属(genus)は94%、科(family)は90%、目(order)は85%、綱(class)は80%、門(phylum)は75%シーケンス類似度を基準としてクラスタリングを行い、各OTUの門(phylum)、綱(class)、目(order)、科(family)、属(genus)レベルの分類を行い、BLASTNとGreenGenesの16S RNAシーケンスデータベース(108,453シーケンス)を用いて属レベルで97%以上のシーケンス類似度を有する細菌をプロファイリングした(QIIME)。
【0085】
[実施例3.肺癌患者の血液および尿内細菌由来小胞メタゲノム解析]
実施例2の方法で肺癌患者126人と年齢と性別をマッチングした正常ヒト198人の血液を対象として、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム解析を行った後、ロドコッカス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの血液に比べて肺癌患者の血液においてロドコッカス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(表2および
図2a参照)。
【0086】
【0087】
実施例2の方法で肺癌患者66人と年齢と性別をマッチングした正常ヒト78の尿を対象に、尿内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム解析を行った後、ロドコッカス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒト尿に比べて肺癌患者の尿においてロドコッカス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(表3および
図2b参照)。
【0088】
【0089】
[実施例4.すい臓癌患者の血液内細菌由来小胞メタゲノム解析]
実施例2の方法ですい臓癌患者176人と年齢と性別をマッチングした正常ヒト271人の血液を対象として、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム解析を行った後、ロドコッカス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの血液に比べてすい臓癌患者の血液においてロドコッカス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(表4および
図3参照)。
【0090】
【0091】
[実施例5.胆管癌患者の血液細菌由来小胞メタゲノム解析]
実施例2の方法で胆管癌患者79人と年齢と性別をマッチングした正常ヒト159人の血液を対象として、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム解析を行った後、ロドコッカス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの血液に比べて胆管癌患者の血液においてロドコッカス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(表5および
図4参照)。
【0092】
【0093】
実施例6.乳癌患者の血液細菌由来小胞メタゲノム解析
実施例2の方法で乳癌患者107人と年齢と性別をマッチングした正常ヒト129人の血液を対象として、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム解析を行った後、ロドコッカス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの血液に比べて乳癌患者の血液においてロドコッカス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(表6および
図5参照)。
【0094】
【0095】
[実施例7.膀胱癌患者の血液細菌由来小胞メタゲノム解析]
実施例2の方法で膀胱癌患者91人と年齢と性別をマッチングした正常ヒト176人の血液を対象として、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム解析を行った後、ロドコッカス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの血液に比べて膀胱癌患者の血液においてロドコッカス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(表7および
図6参照)。
【0096】
【0097】
[実施例8.リンパ腫患者の血液細菌由来小胞メタゲノム解析]
実施例2の方法でリンパ腫患者81人と年齢と性別をマッチングした正常ヒト86人の血液を対象として、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム解析を行った後、ロドコッカス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの血液に比べてリンパ腫患者の血液においてロドコッカス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(表8および
図7参照)。
【0098】
【0099】
[実施例9.糖尿病患者の血液細菌由来小胞メタゲノム解析]
実施例2の方法で糖尿病患者114人と年齢と性別をマッチングした正常ヒト132人の血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム解析を行った後、ロドコッカス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの血液に比べて糖尿病患者の血液においてロドコッカス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(表9および
図8参照)。
【0100】
【0101】
[実施例10.脳卒中患者の血液細菌由来小胞メタゲノム解析]
実施例2の方法で脳卒中患者124人と年齢と性別をマッチングした正常ヒト142人の血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム解析を行った後、ロドコッカス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの血液に比べて脳卒中患者の血液においてロドコッカス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(表10および
図9参照)。
【0102】
【0103】
[実施例11.心筋梗塞患者の血液細菌由来小胞メタゲノム解析]
実施例2の方法で心筋梗塞患者57人と年齢と性別をマッチングした正常ヒト113人の血液を対象として、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム解析を行った後、ロドコッカス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの血液に比べて心筋梗塞患者の血液においてロドコッカス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(表11および
図10参照)。
【0104】
【0105】
[実施例12.喘息患者の血液細菌由来小胞メタゲノム解析]
実施例2の方法で心筋梗塞患者135人と年齢と性別をマッチングした正常ヒト164人の血液を対象として、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム解析を行った後、ロドコッカス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの血液に比べて喘息患者の血液においてロドコッカス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(表12および
図11参照)。
【0106】
【0107】
[実施例13.COPD患者の血液細菌由来小胞メタゲノム解析]
実施例2の方法でCOPD患者205人と年齢と性別をマッチングした正常ヒト231人の血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム解析を行った後、ロドコッカス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの血液に比べてCOPD患者の血液においてロドコッカス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(表13および
図12参照)。
【0108】
【0109】
[実施例14.認知症患者の血液細菌由来小胞メタゲノム解析]
実施例2の方法で認知症患者72人と年齢と性別をマッチングした正常ヒト93人の血液を対象として、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム解析を行った後、ロドコッカス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの血液に比べて認知症患者の血液においてロドコッカス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(表14および
図13参照)。
【0110】
【0111】
[実施例15.ロドコッカス・エクイ由来小胞分離]
前記実施例の結果を基に、ロドコッカス属細菌に属するロドコッカス・エクイ菌株を培養した後、その小胞を分離した。ロドコッカス・エクイ菌株を37℃嫌気性チャンバーで吸光度(OD600)が1.0~1.5になるまでBHI(brain heart infusion)培地で培養した後、継代培養した。以後、菌株が含まれていない培地の上澄み液を回収して10,000g、4℃で15分間遠心分離し、0.45μmフィルターに濾過した後、濾過した上澄み液を100kDa hollowフィルターメンブレンでQuixStand benchtop system(GE Healthcare,UK)を用いて限外濾過(ultrafiltration)を通じて200ml体積で濃縮した。以後、濃縮させた上澄み液をさらに0.22μmフィルターでフィルタリングし、濾過された上澄み液を150,000g、4℃で3時間超遠心分離した後、ペレットをDPBS(Dulbecco’s Phosphate Buffered Saline)で懸濁した。次に、10%、40%、and 50%オプティプレップ溶液(Axis-Shield PoC AS,Norway)を用いて密度勾配遠心分離を行い、低密度溶液の製造のためにオプティプレップ溶液をHEPES-buffered saline(20mM HEPES、150mM NaCl,pH7.4)に希釈して利用した。200,000g、4℃条件で2時間の間遠心分離を行った後、上層から1mlの同じボリュームで分画された各溶液を150,000g、4℃条件で3時間追加で超遠心分離を実施した。以後、BCA(Bicinchoninic acid)assayを用いてタンパク質を定量し、得られた小胞に対して実験を実施した。
【0112】
[実施例16.ロドコッカス・エクイ由来小胞の抗炎症効果]
ロドコッカス・エクイ由来小胞が炎症細胞で炎症メディエーターの分泌に対する影響を調べるために、マウスマクロファージ細胞株であるRaw 264.7細胞にロドコッカス・エクイ由来小胞を多様な濃度(0.1、1、10μg/ml)で処理した後、炎症疾患病原性小胞である大腸菌由来小胞(E.coli EV)を処理して炎症メディエーター(IL-6、TNF-α)の分泌量を測定した。より具体的に、Raw 264.7細胞を1×10
5個ずつ24-well細胞培養プレートに分注した後、24時間DMEM(Dulbeco’s Modified Eagle’s Medium)完全培地で培養させた。以後、培養の上澄み液を1.5mlチューブに集めて、3000gで5分間遠心分離して、上澄み液を集めて4℃に保管しておいて、ELISA分析を進めた。その結果、ロドコッカス・エクイ由来小胞を前処理した場合、大腸菌由来小胞によるIL-6およびTNF-αの分泌が顕著に抑制されることを確認した(
図14aおよび14b参照)。これは、大腸菌由来小胞のような病原性小胞により誘導される炎症反応をロドコッカス・エクイ由来小胞が効率的に抑制することができることを意味する。
【0113】
[実施例17.ロドコッカス・エクイ由来小胞の神経細胞保護効果]
脳由来神経栄養因子(Brain-derived neurotrphic factor,BDNF)は、神経細胞の損傷時に神経細胞を保護する主な媒介体であって、認知症、うつ病、アルツハイマー病、および自閉症等の脳神経疾患で発現が減少している。本実施例では、ロドコッカス・エクイ由来小胞の脳神経疾患に対する治療効果を評価するために、神経細胞にストレスホルモンを処理して神経細胞保護効果を評価した。すなわち、神経細胞(hippocampal neuronal cell line,HT22 cells)を副腎皮質ホルモン(GC:corticosterone 400ng/ml)またはロドコッカス・エクイ由来小胞(EV、20μg/ml)とともに24時間体外で培養した後、BDNFの発現をPCR方法で評価した。
【0114】
その結果、副腎皮質ホルモン処理により抑制されたBDNFの発現がロドコッカス・エクイ由来小胞の治療により有意に回復されることを確認した(
図15参照)。これは、ストレスのような脳神経細胞の損傷誘発因子により発生する脳神経疾患をロドコッカス・エクイ由来小胞が効率的に抑制することができることを意味する。
【0115】
上述した本発明の説明は、例示のためのものであって、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須的な特徴を変更することなく、他の具体的な形態に容易に変形が可能であることが理解することができる。したがって、以上で記述した実施例は、全ての面において例示的なものであり、限定的でないものと理解すべきである。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明によるロドコッカス属細菌由来小胞は、肺癌、すい臓癌、胆管癌、乳癌、膀胱癌、リンパ腫、糖尿病、脳卒中、心筋梗塞、喘息、COPD、または認知症に対する診断方法;および悪性疾患、糖尿病、脳卒中、心血管疾患、炎症性肺疾患、または脳神経疾患に対する予防、改善、または治療用食品、吸入剤、化粧料、または薬学的組成物として有用に利用できると期待される。
【配列表】