(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】寝具セット
(51)【国際特許分類】
A47C 27/14 20060101AFI20240222BHJP
A47C 27/20 20060101ALI20240222BHJP
A47G 9/02 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
A47C27/14 C
A47C27/20
A47G9/02 Q
(21)【出願番号】P 2022098263
(22)【出願日】2022-06-17
【審査請求日】2023-06-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513243251
【氏名又は名称】株式会社大地コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100200333
【氏名又は名称】古賀 真二
(72)【発明者】
【氏名】林 暁明
(72)【発明者】
【氏名】西田 靖
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0273469(US,A1)
【文献】特開2003-339484(JP,A)
【文献】米国特許第02247667(US,A)
【文献】米国特許第01784294(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 27/14
A47C 27/20
A47G 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並置して使用可能な一対のマットレスと、
前記一対のマットレスの上面を被覆するマットレス用シートと、を含み、
前記マットレス用シートが、平行する側縁部の片方に、前記一対のマットレスの一方のマットレスに前記マットレス用シートを着脱可能に連結する一対構成の第1連結部材の片方が付設され、前記平行する側縁部の他方に、前記一対のマットレスの他方のマットレスに前記マットレス用シートを着脱可能に連結する一対構成の第2連結部材の片方が付設されており、
前記一方のマットレスにおいて長さ方向に延伸する外側の側面の上部に前記第1連結部材の他方が付設されており、
前記他方のマットレスにおいて長さ方向に延伸する外側の側面の上部に前記第2連結部材の他方が付設されており、
前記マットレス用シートが、外部からの荷重に応じて弾性変形する柱状部材を複数有する構造である
ことを特徴とする寝具セット。
【請求項2】
並置して使用可能な一対のマットレスと、
前記一対のマットレスの上面を被覆するマットレス用シートと、を含み、
前記マットレス用シートが、平行する側縁部の片方に、前記一対のマットレスの一方のマットレスに前記マットレス用シートを着脱可能に連結する一対構成の第1連結部材の片方が付設され、前記平行する側縁部の他方に、前記一対のマットレスの他方のマットレスに前記マットレス用シートを着脱可能に連結する一対構成の第2連結部材の片方が付設されており、
前記一方のマットレスにおいて長さ方向に延伸する外側の側面の上部に前記第1連結部材の他方が付設されており、
前記他方のマットレスにおいて長さ方向に延伸する外側の側面の上部に前記第2連結部材の他方が付設されており、
前記一方のマットレスでの前記他方のマットレスと密接する内側の側面に、前記一方のマットレスと前記他方のマットレスを連結する一対構成の追加連結部材の片方が付設されており、
前記他方のマットレスでの前記一方のマットレスと密接する内側の側面において、前記追加連結部材の片方が付設されている位置と対向する位置に前記追加連結部材の他方が付設されており、
前記マットレス用シートが、外部からの荷重に応じて弾性変形する柱状部材を複数有する構造である
ことを特徴とする寝具セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対のマットレスを含む寝具セット及びそれらのマットレスに使用されるマットレス用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
ベッドには、シングル、セミダブル、ダブル、キング等の種々のサイズのベッドがあり、それに合わせて、ベッドに使用されるマットレスにも、同種類のサイズのマットレスがある。
【0003】
家庭用寝具としてベッドを使用する場合、家族構成やライフスタイル等に合わせて適切なサイズのベッドを購入するが、家族構成やライフスタイル等の変化により、適切なサイズが変わることがある。例えば、夫婦2人のときはシングルサイズのベッドを2台使用していたが、子供の誕生により、乳幼児を挟んで3人で就寝するためにキングサイズのベッドが必要となることがある。このような場合、新たなサイズのベッドを購入するのではなく、2台のシングルサイズのベッドを密接するように並置して、キングサイズのベッドのように使用することがある。寝室の広さやレイアウト等の変更により、2台のベッドを並置して使用することもある。
【0004】
2台のベッドを並置して使用する場合、マットレスを載置するベッドフレーム(通常、ヘッドボード、床板、フットボード及びサイドボードからなる枠体)の幅(短手方向の長さ)はマットレスの幅より若干大きいので、ベッドフレームのサイドボードを密接させても、マットレスの間に隙間が生じる。その隙間をなくすために、マットレスをずらして密接させても、マットレスが正規の位置に載置されないことにより、マットレスがずれ易くなり、ベッドを使用するにつれて、マットレスの間に隙間が生じることがある。
【0005】
2つのマットレスの間に隙間が生じた場合、2つのマットレスに跨って就寝するのは、寝心地が良くなく、2台のベッドを並置したことにより形成された広い就寝スペースを有効に利用することができない。マットレスの間に隙間があると、携帯電話等の物品を落としてしまう、埃等が溜まってしまう等の問題も生じる。そこで、このようなマットレスを並置した際に生じる隙間に対応する方法が提案されている。
【0006】
例えば、実開昭57-2848号公報(特許文献1)では、2つのマットレスの密接する側面部において、襠地の上下周縁に沿って各々一対のスライドファスナーを設け、スライドファスナーを組み合わせて、2つのマットレスを着脱可能に連結させる方法が提案されている。マットレスのマッチング工程でスライドファスナーを同時に縫合することができると共に、側面部でマットレスを連結することができるので、連結部を隠すことができるとなっている。
【0007】
登録実用新案第3237446号公報(特許文献2)では、マットレス間の隙間を被覆するためのマットレス用被覆パッドと、一対のマットレスの側面に沿って巻装される固定ベルト体を使用して、マットレス間の隙間を解消する方法が提案されている。マットレス用被覆パッドは、一対のマットレスの両側縁上面を所定幅だけ被覆する水平板部と、水平板部から垂直方向に所定の高さで突出し、マットレス間の隙間に挿抜可能な垂直板部と、水平板部の両端に設置され、固定ベルト体を支持する支持ベルト体を備える。このようなマットレス用被覆パッドと固定ベルト体を使用することにより、一対のマットレスを強固に固定することができると共に、水平板部がマットレス間の隙間を被覆するので、隙間により生じる不具合を防止することができるとなっている。
【0008】
特開2002-177094号公報(特許文献3)では、2つのマットレスを突き合わせ並べ配置した状態で一体的に包み込める袋シーツを使用する方法が提案されている。袋シーツは、突き合わせ並べ配置された2つのマットレス全体の上面及び側周面に被着し、更に底面部へ回り込むように被着して、開口部が絞り紐にて絞り縮められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】実開昭57-2848号公報
【文献】登録実用新案第3237446号公報
【文献】特開2002-177094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1で提案されている方法では、連結されたマットレスの境界部分はそのままの状態であり、平坦ではなく、連続性がない状態となっているので、マットレスに跨って就寝する場合等で違和感があり、寝心地に悪影響を与えるおそれがある。また、連結した状態でもスライドファスナーの幅の分だけマットレスは移動可能であるから、就寝中に就寝者の寝返り等によりマットレスがずれて境界部分が広がり、更に寝心地に悪影響を与えるおそれがある。
【0011】
特許文献2で提案されている方法では、マットレス用被覆パッドがマットレス間の隙間を被覆するので、特許文献1の方法より、マットレスに跨って就寝する場合等での違和感が軽減されるが、マットレス用被覆パッドとマットレス上面との間に若干の段差が生じるので、違和感が残る可能性がある。また、一対のマットレスは、側面に固定ベルト体を巻装し、固定ベルト体をマットレス用被覆パッドの支持ベルト体で支持することにより、固定されるが、固定ベルト体が支持されるのは、一対のマットレスの境界部分の近辺のみであるから、就寝中に就寝者の寝返り等によりマットレスがずれるおそれがある。更に、固定ベルト体を一対のマットレスに巻装する作業は、マットレスのベッドフレームへの載置を考慮すると、手間がかかる作業であり、固定ベルト体は水平にマットレスに巻装しないとマットレスがずれやすくなるので、適切に巻装するには、更に手間がかかる作業となる。
【0012】
特許文献3で提案されている方法では、一対のマットレスを袋シーツで一体的に包み込むので、特許文献1及び2の方法より、一対のマットレスの境界部分での違和感が軽減される可能性があるが、絞り紐による袋シーツの絞り縮めではマットレスを十分に固定化することができず、特許文献1及び2の方法の場合と同様に、就寝中に就寝者の寝返り等によりマットレスがずれるおそれがある。マットレスがずれた場合、マットレスの間に隙間ができ、その部分に荷重がかかると窪んだ状態になるので、寝心地に悪影響を与えるおそれがある。また、一対のマットレスを袋シーツで包み込み、底面部において袋シーツを縛り紐にて縛り縮め、それらをベッドフレームに載置する作業は、かなり手間がかかる作業となる。広面積を有する袋シートは、洗濯も容易ではない。
【0013】
本発明は上述のような事情よりなされたものであり、本発明の目的は、一対のマットレスを並置して使用する場合において、容易に設置することができ、マットレスの間に生じる隙間に起因する問題を解消することができる寝具セット及びマットレス用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、寝具セットに関し、本発明の上記目的は、並置して使用可能な一対のマットレスと、前記一対のマットレスの上面を被覆するマットレス用シートと、を含み、前記マットレス用シートが、平行する側縁部の片方に、前記一対のマットレスの一方のマットレスに前記マットレス用シートを着脱可能に連結する一対構成の第1連結部材の片方が付設され、前記平行する側縁部の他方に、前記一対のマットレスの他方のマットレスに前記マットレス用シートを着脱可能に連結する一対構成の第2連結部材の片方が付設されており、前記一方のマットレスの側面上部に前記第1連結部材の他方が付設されており、前記他方のマットレスの側面上部に前記第2連結部材の他方が付設されていることにより達成される。
【0015】
本発明の上記目的は、前記第1連結部材及び前記第2連結部材のうちの少なくとも1つがファスナーであることにより、或いは、前記マットレス用シートが、外部からの荷重に応じて弾性変形する柱状部材を複数有する構造であることにより、より効果的に達成される。
【0016】
また、本発明は、並置される一対のマットレスの上面を被覆するマットレス用シートに関し、本発明の上記目的は、平行する側縁部の片方に、前記一対のマットレスの一方のマットレスに前記マットレス用シートを着脱可能に連結する一対構成の第1連結部材の片方が付設されており、前記平行する側縁部の他方に、前記一対のマットレスの他方のマットレスに前記マットレス用シートを着脱可能に連結する一対構成の第2連結部材の片方が付設されていることにより達成される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の寝具セット及びマットレス用シートによれば、マットレス用シートは一対のマットレスの両側面の上部にて連結部材によってマットレスと連結するので、マットレスへのマットレス用シートの設置が容易であり、かつ、マットレス用シートが一対のマットレスの間の隙間を含むマットレスの上面を被覆し、マットレスの間の隙間に起因する問題を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係るマットレス用シートを含む寝具セットの例を示す斜視図である。
【
図2】マットレスでのファスナーを付設する箇所の例を示す平面図である。
【
図3】本発明に係る寝具セットをベッドフレームに載置した例を示す斜視図である。
【
図4】ボタンとボタンループを使用してマットレス用シートとマットレスを連結する場合の例を示す拡大図である。
【
図5】3つのマットレスをマットレス用シートで連結する場合の例を示す斜視図である。
【
図6】柱状部材を有する構造のマットレス用シートの例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、単体としても使用可能な一対のマットレスを並置し、広い上面を有する大型のマットレスとして使用可能とするものである。本発明では、並置された一対のマットレスの上面を被覆するマットレス用シートを使用する。マットレス用シートは、マットレスの境界部分を含むマットレスの上面全体を被覆するので、マットレス用シートを被覆されたマットレスは境界部分でも連続性を有する形状となり、マットレスに跨って就寝する場合等での違和感を抑制し、快適な寝心地を実現することができる。
【0020】
また、本発明では、一対構成の連結部材を使用して、マットレスとマットレス用シートを連結する。一対構成とは、対となる2つの部位からなる構成で、一対構成の連結部材として、例えばファスナー等が挙げられる。一対のマットレスを密接して並置した状態において、左右両側に位置する側面、即ち各マットレスにおいて長さ方向(長手方向)に延伸し、他のマットレスと密接していない側面の上部において、マットレス用シートとマットレスを、連結部材によって連結する。つまり、並置して一体化したマットレスの両端側面の2箇所で、2つの連結部材(第1連結部材、第2連結部材)により、マットレス用シートは一対のマットレスに連結される。このような位置に連結部材を配設するので、マットレスをベッドフレームに載置した状態においても、連結部材がマットレスとベッドフレームの間等に位置して埋没することがなく、マットレス用シートをマットレスに容易に着脱することができる。更に、就寝者の寝返り等によりマットレスがずれてマットレスの間に隙間が生じるような力が働いても、その力に反発する力がマットレス用シートにより作用するので、マットレス間の隙間の発生を抑制することができる。
【0021】
以下に、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、各図において、同一構成要素には同一符号を付し、説明を省略することがある。また、以下の説明における形状等は例示であり、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0022】
図1は、本発明に係るマットレス用シートを含む寝具セットの例(第1実施形態)を示す斜視図で、
図1(A)は、寝具セット1に含まれる一対のマットレス11及び12を密接して並置し、その上面にマットレス用シート20を被覆することを示す図であり、
図1(B)は、並置したマットレス11及び12にマットレス用シート20を被覆した状態を示す図である。なお、
図1において、矢印で示すように、図の上側及び下側がそれぞれマットレス11及び12並びにマットレス用シート20の上方及び下方で、奥側及び手前側がそれぞれマットレス11及び12並びにマットレス用シート20の前方及び後方で、後方から見た右側及び左側(図の右側及び左側)がそれぞれマットレス11及び12並びにマットレス用シート20の右方及び左方である。通常、就寝する際は、マットレス11及び12の前方に頭部が、後方に脚部が載置されるように、就寝者は仰臥する。
図1では、マットレス11の左側の側面(左側面)とマットレス12の右側の側面(右側面)が密接するように、マットレス11及び12は並置されている。マットレス用シート20は、並置されたマットレス11及び12の上面全体を被覆し、マットレス用シート20とマットレス11及び12は連結部材によりそれぞれ連結される。
【0023】
マットレス11及び12は、単体でも使用可能で、サイズ、構造、材質等が同じマットレスとなっている。よって、以下では、マットレス11及び12を区別する必要がない場合は、マットレス10と表現する。なお、マットレス11及び12として、サイズ、構造、材質等が異なるマットレスを使用しても良いが、マットレス11及び12を並置した際に段差ができないように、少なくとも厚さ(
図1において上下方向の長さ)が同じマットレスを使用するのが好ましい。
【0024】
マットレス10はシングルサイズのマットレスとなっており、幅(短手方向の長さ、
図1において左右方向の長さ)が970mm、長さ(長手方向の長さ、
図1において前後方向の長さ)が1970mm、厚さが175mmとなっている。なお、マットレス10は、セミシングル、セミダブル等の任意のサイズのマットレスでも良い。また、
図1及び以降の図におけるマットレス等の大きさの比率は、わかりやすく示すために、実際とは異なるところがある。
【0025】
マットレス10は、単体でも使用可能なマットレスであるから、一般的なマットレスの構造及び材質からなる。例えば、就寝者の肌に直接接触し、柔軟性及び通気性を有するキルト層と、保温性や吸湿性のある素材で構成されるクッション層と、スプリングコイルで構成され、弾力性を担うスプリング層を有するマットレスである。クッション層では、ポリウレタンフォームや綿等が素材として使用される。スプリング層は、渦巻き状のコイルを縦方向及び横方向に連結させたボンネルコイルの構造や、コイルを1つずつ円筒形の不織布の袋に格納したポケットコイルを隙間なく並置した構造の他、スプリングコイルを使用しない構造等となっている。
【0026】
マットレス10において長さ方向に延伸する側面の片方の上部には、一対構造の連結部材の片方の部位が付設されている。本実施形態では、一対構造の連結部材としてファスナーを使用する。ファスナーには、正確には点ファスナー、線ファスナー(スライドファスナー)及び面ファスナーの種類があるが、通常、ファスナーという名称は線ファスナーのことを指しており、本実施形態でも線ファスナーのことをファスナーと呼ぶ。なお、連結部材として点ファスナーや面ファスナーを使用しても良い。
【0027】
ファスナーはテープ状の開閉式留め具で、対になったテープの内側に務歯(エレメント)を並設し、スライダーを移動して務歯を噛合したり分離したりすることにより、開閉できる構造となっている。マットレス10の側面の上部には、務歯が並設されたテープの片方が付設されている。具体的には、
図1(A)に示されるように、マットレス12の側面と密接していない、マットレス11の右側面の上部にファスナー31の片方のテープ31aが付設され、マットレス11の側面と密接していない、マットレス12の左側面の上部にファスナー32の片方のテープ32aが付設されている。
【0028】
マットレス用シート20は、密接して並置されたマットレス11及び12の上面全体を被覆する。マットレス用シート20の平行する右側の側縁部(右側縁部)と左側の側縁部(左側縁部)には、
図1(A)に示されるように、ファスナー31のもう片方のテープ31bとファスナー32のもう片方のテープ32bがそれぞれ付設されている。マットレス用シート20に付設されたファスナー31のテープ31bに並設された務歯とマットレス11に付設されたファスナー31のテープ31aに並設された務歯とを噛合し、マットレス用シート20に付設されたファスナー32のテープ32bに並設された務歯とマットレス12に付設されたファスナー32のテープ32aに並設された務歯とを噛合し、ファスナー31及び32を閉状態にすることにより、
図1(B)に示されるように、マットレス用シート20はマットレス11及び12に連結される。よって、マットレス用シート20の幅(
図1において左右方向の長さ)及び長さ(
図1において前後方向の長さ)は、被覆するマットレス11及び12の大きさに応じた大きさとなっている。例えば、マットレス11及び12が幅970mm、長さ1970mmのシングルサイズの場合、マットレス用シート20の幅は略1940mm、長さは略1970mmとする。なお、ファスナー31及び32が開状態におけるファスナー31及び32のスライダーは、マットレス用シート20に付設のテープ31b及び32bに配設されていても、マットレス11及び12に付設のテープ31a及び32aに配設されていても良い。
【0029】
マットレス用シート20に、ピロートップやベッドパット等の機能を付与することができる。ピロートップは、マットレスの最上部に重合され、マットレスの表面をソフトな肌触りにし、適切な体圧分散を実現するアイテムである。ベッドパットは、マットレスの上面に敷設され、マットレスの汚れや就寝者の汗のマットレスへの浸透を防止するアイテムであり、ピロートップと同様な機能を有することもある。このような機能をマットレス用シート20に付与することにより、マットレスを並置して使用する際の隙間の問題を解消すると共に、寝心地の向上等を図ることができる。マットレス用シート20の厚さ(
図1において上下方向の長さ)は、付与する機能に応じて設定し、例えば20~30mm、厚くする場合で150mm位とする。
【0030】
マットレス用シート20は、マットレスのクッション層と同様に、クッション性を有する素材、例えばポリウレタンフォームを使用して平板形状に生成された部材を、ポリエステルや綿等からなる生地を袋状にしたカバーを被覆して作製される。ポリウレタンフォームは、軟質ポリウレタンフォームと硬質ポリウレタンフォームに大別され、マットレス用シート20の素材として、軽くてクッション性・耐久性に優れ、硬さのバリエーションが豊富で、主としてクッション性を活かした分野に使用される軟質ポリウレタンフォーム、又は軟質及び硬質の中間的な素材である半硬質ポリウレタンフォームを使用する。マットレス用シート20の内部の部材の上面は平面状に形成されているが、プロファイル加工を施しても良い。プロファイル加工は表面を凸凹状(波形状)に形成する加工であり、プロファイル加工を施すことにより、平面状の場合に比べて、就寝者からの荷重による厚さ方向での変形量が大きくなるので、就寝者からの荷重をマットレス11及び12に適切に伝達することができる。なお、マットレス用シート20の素材として、ポリエチレンフォーム、ゴムスポンジ等の他の素材を使用しても良い。また、マットレス用シート20を、素材が異なる層を複数有する多層構造としても良い。
【0031】
上述のように、マットレス用シート20とマットレス11及び12は、ファスナー31及び32により連結される。
【0032】
ファスナー31は、マットレス用シート20の右側縁部とマットレス11の右側面を連結する。連結を強固とするために、ファスナー31の長さ(
図1において前後方向の長さ)は、マットレス用シート20及びマットレス11の長さと同様にするのが好ましい。しかし、マットレス用シート20の四角及びマットレス11の四角が、
図1に示されるように円弧状となっているために、ファスナー31の務歯を噛合させるためのスライダーが移動しづらい等の場合、その箇所を除いた長さとして、ファスナー31を付設しても良い。例えば、
図2はマットレス11を上方から見た平面図で、
図2(A)に示されるように、ファスナー31のテープ31aはマットレス11の右側面の上部に付設されているが、マットレス11の円弧状となっている四角を外して付設されている。マットレス用シート20では、
図2(A)でのテープ31aと対向する箇所に、ファスナー31のテープ31bが付設される。スライダーが移動しづらい等がない場合、連結を更に強固とするために、ファスナー31を付設する箇所を長くしても良い。例えば
図2(B)に示されるように、四角を越え、更に幅方向に延伸する箇所までファスナー31のテープ31aを付設しても良い。マットレス用シート20では、
図2(B)でのテープ31aと対向する箇所に、ファスナー31のテープ31bが付設される。また、ファスナー31を複数箇所に付設しても良い。例えば
図2(C)に示されるように、マットレス11の右側面の上部の2箇所にファスナー31のテープ31aを付設し、マットレス用シート20での対向する箇所にファスナー31のテープ31bを付設するようにしても良い。
【0033】
ファスナー32は、マットレス用シート20の左側縁部とマットレス12の左側面を連結する。ファスナー31の場合と同様な基準により、ファスナー32のテープ32a及び32bを、マットレス12及びマットレス用シート20にそれぞれ付設する。
【0034】
ファスナー31及び32の幅は、マットレス用シート20をマットレス11及び12に被覆し、ファスナー31及び32を閉状態にしたときに、可能な限りでファスナー31及び32に弛みが生じないように、マットレス用シート20並びにマットレス11及び12の厚さ方向でのファスナー31及び32の付設位置に基づいて、設定する。ファスナー31及び32に弛みが生じると、弛みの分だけマットレス用シート20並びにマットレス11及び12がずれる余地ができてしまうからである。
【0035】
このように、マットレス11の左側面とマットレス12の右側面を密接してマットレス11及び12を並置し、その上面にマットレス用シート20を被覆し、ファスナー31及び32によりマットレス用シート20とマットレス11及び12を連結することにより、マットレス11と12の境界部分はマットレス用シート20で被覆され、かつマットレス11及び12のずれは抑制されるので、マットレス11及び12に跨って就寝する場合等での違和感を抑制して快適な寝心地を実現することができ、就寝者の寝返り等によるマットレス11と12間の隙間の発生を抑制することができる。また、例えば、
図3はマットレス用シート20により連結されたマットレス11及び12をベッドフレーム41及び42それぞれに載置した例を示す斜視図であるが、
図3に示されるように、ファスナー31及び32はベッドフレーム41及び42により埋没することなく顕出するので、マットレス11及び12へのマットレス用シート20の着脱を容易に行うことができる。
【0036】
上述の実施形態では、連結部材としてファスナーを使用し、点ファスナーや面ファスナーを使用しても良いとしているが、これら以外の一対構成の部材を連結部材として使用しても良い。例えば、ボタンとボタンループを連結部材として使用しても良い。ボタンループとは、ボタンを留めるために紐や帯状の布等で作製された環状の部材である。例えば、
図4に、連結部材としてボタンとボタンループを使用した場合のマットレス用シートとマットレスの連結箇所の拡大図を示しており、
図4(A)は連結前、
図4(B)は連結後の状態を示す。
図4(A)に示されるように、マットレス50の側面に複数のボタン71を固設し、マットレス用シート60の側縁部において、マットレス用シート60をマットレス50に被覆した際にボタン71と対向する位置にボタンループ72を固設する。そして、
図4(B)に示されるように、ボタンループ72をボタン71に掛止することにより、マットレス用シート60とマットレス50を連結する。なお、ボタンループ72をマットレス50に、ボタン71をマットレス用シート60に固設しても良い。また、ボタン71の代わりに2本の紐又は帯状の部材を使用し、ボタンループ72を固設していないマットレス50又はマットレス用シート60に、片方の端部を自由端にしてこの2本の部材を固設し、自由端の端部を、ボタンループ72の輪に、互いに反対向きから貫通させて、結着することにより、マットレス用シートとマットレスを連結するようにしても良い。
【0037】
上述の実施形態において、マットレス11と12が密接する側面、即ちマットレス11の左側面とマットレス12の右側面に、面ファスナー等の連結部材(以下、「追加連結部材」とする)を、互いに対向する位置に付設し、連結部材31及び32に加えて、追加連結部材も使用して、マットレス11と12を連結するようにしても良い。これにより、より強固にマットレス11と12を連結することができる。但し、寝心地や作業の手間等を考慮して、追加連結部材として、面ファスナーのように、マットレス11と12を連結した状態においてそれらの上面等に露出せず、圧着可能な一対構成の部材を使用するのが好ましい。
【0038】
上述の実施形態では、マットレス用シート20は2つのマットレス11及び12を連結しているが、3つ以上のマットレスを連結するようにしても良い。例えば、
図5は、3つのマットレスをマットレス用シートで連結する場合の例を示す斜視図で、密接して並置されたマットレス81、82及び83は、その上面にマットレス用シート90を被覆することにより連結される。この場合、マットレス81及び83が一対のマットレスに相当し、マットレス81の右側面の上部とマットレス83の左側面の上部において、テープ101a及び101bを有するファスナー101並びにテープ102a及び102bを有するファスナー102により、マットレス用シート90とマットレス81及び83がそれぞれ連結される。
【0039】
また、上述の実施形態でのマットレス用シート20は、単体でも、寝具として使用可能である。つまり、マットレス用シート20を敷布団のように使用する。この場合、寝心地に悪影響を与えない、適度のクッション性を有する厚みのマットレス用シートを使用するのが好ましい。密接して並置した敷布団の上にマットレス用シート20を被覆して、使用するようにしても良い。この場合、マットレス用シート20と敷布団を連結部材で連結するようにしても良い。
【0040】
なお、マットレス用シートが連結する一対のマットレスに対して、同じ種類の連結部材ではなく、違う種類の連結部材を使用しても良い。例えば、一方のマットレスの連結にはファスナーを使用し、他方のマットレスの連結にはボタンとボタンループを使用するとしても良い。
【0041】
本発明の他の実施の形態について説明する。
【0042】
第1実施形態でのマットレス用シート20は、ポリウレタンフォーム等のクッション性を有する素材を使用して平板形状に生成された部材を内部に包含した構造となっているが、例えば、特開2003-339484号公報(参考文献)に記載されている柱状部材を複数有する構造等、他の構造とすることも可能である。参考文献に記載の柱状部材は、就寝者からの荷重等の外部からの荷重に応じて弾性変形するものである。
【0043】
上述の柱状部材を有する構造のマットレス用シートの例を
図6に示す。
図6は、本構造のマットレス用シート110を長さ方向及び厚さ方向に延伸する面で切断した場合の断面図である。
図6において矢印で示される向き(上方、下方、前方、後方)は、
図1で示される向きと対応している。
【0044】
マットレス用シート110は、土台部111、弾性体ユニット112、上層部113及び外装カバー114を備える。
【0045】
土台部111は、発泡ウレタン等の弾性体により形成されており、上面の中央に矩形状に開口している有底の凹部が設けられている。この凹部に弾性体ユニット112が挿嵌されている。
【0046】
弾性体ユニット112は、台座部112a、複数の柱状部材112b及び内装カバー112cを備える。
【0047】
台座部112aは、土台部111の凹部の底面に底面が相対するように配設されている。台座部112aは、直方体の形状にて、発泡ウレタン等の弾性体により形成されている。
【0048】
台座部112aの上面には、複数の柱状部材112bが一定の間隔をあけて配設されている。柱状部材112bは、円柱状に、例えば外径50mm、高さ25mmの円柱の形状にて、円形の底面が台座部112aの上面に相対するように配設されている。なお、
図6において、配設されている柱状部材112bの数は、わかりやすく示すために、実際とは異なる。
【0049】
柱状部材112bは、熱可塑性エラストマー、具体的にはスチレン系エラストマーで、スチレン系ベースポリマーにオイルを含有させた成形品(例えば押出成形品)をカットして形成されている。これにより、柱状部材112bは硬度が低い弾性体となっている。台座部112a及び土台部111の硬度は柱状部材112bの硬度より高く設定されている。このように台座部112aの硬度を柱状部材112bの硬度より高く設定することにより、マットレス用シート110に仰臥した就寝者からの荷重による変形が、柱状部材112bに、より強く働くことになる。よって、柱状部材112bは、就寝者からの荷重に応じて弾性変形することにより、就寝者からの荷重を分散し、就寝者に作用する圧力値を低減するものであるから、この効果を的確に発揮させることができる。また、土台部111の硬度を柱状部材112bの硬度と台座部112aの硬度の中間とすることにより、マットレス用シート110に腰かけた場合等、マットレス用シート110に大きな荷重がかかった場合に、柱状部材112bの弾性変形による効果を確保しつつ、土台部111が沈み込むので、全体のクッション性を向上させ、より快適な使用感を実現することができる。
【0050】
弾性体ユニット112が備える内装カバー112cは、台座部112a及び台座部112aの上面に配設された複数の柱状部材112bの全体を覆っている。内装カバー112cは、例えば伸縮性を有するウレタン等の弾性体により形成されている。内装カバー112cにより、柱状部材112b及び台座部112aの汚れ防止等を図ることができる。
【0051】
上層部113は、弾性体ユニット112及び土台部111の上面に配設され、例えば柱状部材112bの破損等を防止して、弾性体ユニット112を保護するものである。上層部113は、例えば発泡ウレタン等の弾性体によってシート状に形成されており、弾性体ユニット112の保護のため、弾性体ユニット112の硬度より高い硬度の弾性体で形成されている。
【0052】
弾性体ユニット112を挿嵌し、上層部113を配設された土台部111は、外装カバー114によって被覆されている。外装カバー114は、例えば化繊維物で形成されている。
【0053】
このような構造のマットレス用シート110を使用することにより、就寝者に快適な使用感を提供することができる。
【0054】
なお、マットレス用シート110は1つの弾性体ユニット112を備えているが、参考文献に記載されているマットレスのように3つ等、複数の弾性体ユニットを備えるようにしても良い。また、柱状部材を有する構造として、上述以外の構造を使用しても良い。
【0055】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。また、上記形態において明示的に開示されていない事項、例えばマットレスの重量等は、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 寝具セット
10、11、12、50、81、82、83 マットレス
20、60、90、110 マットレス用シート
31、32、101、102 ファスナー
31a、31b、32a、32b、101a、101b、102a、102b テープ
41、42 ベッドフレーム
71 ボタン
72 ボタンループ
111 土台部
112 弾性体ユニット
112a 台座部
112b 柱状部材
112c 内装カバー
113 上層部
114 外装カバー