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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】洋上エネルギー収集システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/20 20160101AFI20240222BHJP
   H02J 15/00 20060101ALI20240222BHJP
   H01Q 21/06 20060101ALI20240222BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
H02J50/20
H02J15/00 C
H01Q21/06
H02J3/38 160
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022193077
(22)【出願日】2022-12-01
【審査請求日】2022-12-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512205223
【氏名又は名称】石川 容平
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 容平
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-047341(JP,A)
【文献】特開2004-007932(JP,A)
【文献】特開2021-136827(JP,A)
【文献】松室 尭之,両側レトロディレクティブシステムによる自己収束ビーム形成の基礎検討,信学技報,WPT2017-38,日本,電子情報通信学会,2017年10月,第13-16ページ
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/00-50/90
H02J 3/00-5/00
H02J 15/00
H01Q 21/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の浮体式発電装置とこれら複数の浮体式発電装置とは分離されたプラットフォームとを含んで構成され、
前記複数の浮体式発電装置は洋上での浮遊状態で発電する発電部と、当該発電部による発電電力をマイクロ波で送電するマイクロ波送電部と、をそれぞれ備え、
前記プラットフォームは、前記複数の浮体式発電装置の前記マイクロ波送電部から送電されたマイクロ波をそれぞれ受電するマイクロ波受電部を備え、
前記マイクロ波送電部及び前記マイクロ波受電部は、それぞれ複数の素子アンテナが配列されたアレーアンテナを備え
前記マイクロ波受電部は、前記プラットフォームの面に対する鉛直線を軸とする逆円錐面を有するマイクロ波反射板と、当該マイクロ波反射板の下部に配置されたドーナツ状のマイクロ波アンテナと、を備え、
前記マイクロ波受電部は、パイロット信号を送信し、前記マイクロ波送電部から送電される電波を受電する受電部側素子アンテナ回路を備え、
前記マイクロ波送電部は、前記パイロット信号を受信し、当該パイロット信号の位相共役の関係にある位相共役信号を生成し、当該位相共役信号で前記マイクロ波送電部の素子アンテナを駆動することで、レトロディレクティブ動作で送電電力を前記マイクロ波受電部へ送電する、送電部側素子アンテナ回路を備え、
前記マイクロ波受電部は、前記複数の浮体式発電装置から周波数及び位相が揃ったコヒーレントなマイクロ波を受電する、
洋上エネルギー収集システム。
【請求項2】
複数の浮体式発電装置とこれら複数の浮体式発電装置とは分離されたプラットフォームとを含んで構成され、
前記複数の浮体式発電装置は洋上での浮遊状態で発電する発電部と、当該発電部による発電電力をマイクロ波で送電するマイクロ波送電部と、をそれぞれ備え、
前記プラットフォームは、前記複数の浮体式発電装置の前記マイクロ波送電部から送電されたマイクロ波をそれぞれ受電するマイクロ波受電部を備え、
前記マイクロ波送電部及び前記マイクロ波受電部は、それぞれ複数の素子アンテナが配列されたアレーアンテナを備え
前記マイクロ波受電部は、前記プラットフォームの面に対する鉛直線を軸とする逆円錐面を有するマイクロ波反射板と、当該マイクロ波反射板の下部に配置されたドーナツ状のマイクロ波アンテナと、を備え、
前記マイクロ波送電部は、前記マイクロ波受電部から送信された電波を受信することによる、前記マイクロ波送電部の素子アンテナの受信信号から、当該受信信号の位相共役の関係にある位相共役信号を生成し、当該位相共役信号で前記マイクロ波送電部の素子アンテナを駆動することで、前記マイクロ波受電部から送信された電波をパイロット信号とするレトロディレクティブ動作で送電電力を前記マイクロ波受電部へ送電する、送電部側素子アンテナ回路を備え、
前記マイクロ波受電部は、前記マイクロ波送電部から送信された電波を受信することによる、前記マイクロ波受電部の素子アンテナの受信信号から、当該受信信号の位相共役の関係にある位相共役信号を生成し、当該位相共役信号で前記マイクロ波受電部の素子アンテナを駆動することで、前記マイクロ波送電部から送電された電波をパイロット信号とするレトロディレクティブ動作で送信信号を前記マイクロ波送電部へ送信する、受電部側素子アンテナ回路を備え、
前記マイクロ波送電部でのレトロディレクティブ動作と前記マイクロ波受電部でのレトロディレクティブ動作とが繰り返されることで、前記マイクロ波送電部から送電される電波および前記マイクロ波受電部から送信される電波のいずれも、漏洩エネルギーを常に最少状態に保つビームである自己収束ビームで伝送される、
洋上エネルギー収集システム。
【請求項3】
複数の浮体式発電装置と、これら複数の浮体式発電装置とは分離されたプラットフォームと、陸地に設置された送電設備と、を含んで構成され、
前記複数の浮体式発電装置は洋上での浮遊状態で発電する発電部と、当該発電部による発電電力をマイクロ波で送電するマイクロ波送電部と、をそれぞれ備え、
前記プラットフォームは、前記複数の浮体式発電装置の前記マイクロ波送電部から送電されたマイクロ波をそれぞれ受電するマイクロ波受電部を備え、
前記マイクロ波送電部及び前記マイクロ波受電部は、それぞれ複数の素子アンテナが配列されたアレーアンテナを備え
前記プラットフォームは、前記マイクロ波受電部で受電した電力を送電するマイクロ波送電部を備え、
前記送電設備は、前記プラットフォームの前記マイクロ波受電部へマイクロ波電力を送電するマイクロ波送電装置を備え、
前記プラットフォームは、前記マイクロ波受電部が受電したマイクロ波電力を蓄電する蓄電装置を備え、
前記マイクロ波受電部は、パイロット信号を送信し、前記マイクロ波送電部から送電される電波を受電する受電部側素子アンテナ回路を備え、
前記マイクロ波送電部は、前記パイロット信号を受信し、当該パイロット信号の位相共役の関係にある位相共役信号を生成し、当該位相共役信号で前記マイクロ波送電部の素子アンテナを駆動することで、レトロディレクティブ動作で送電電力を前記マイクロ波受電部へ送電する、送電部側素子アンテナ回路を備え、
前記マイクロ波受電部は、前記複数の浮体式発電装置から周波数及び位相が揃ったコヒーレントなマイクロ波を受電する、
洋上エネルギー収集システム。
【請求項4】
複数の浮体式発電装置と、これら複数の浮体式発電装置とは分離されたプラットフォームと、陸地に設置された送電設備と、を含んで構成され、
前記複数の浮体式発電装置は洋上での浮遊状態で発電する発電部と、当該発電部による発電電力をマイクロ波で送電するマイクロ波送電部と、をそれぞれ備え、
前記プラットフォームは、前記複数の浮体式発電装置の前記マイクロ波送電部から送電されたマイクロ波をそれぞれ受電するマイクロ波受電部を備え、
前記マイクロ波送電部及び前記マイクロ波受電部は、それぞれ複数の素子アンテナが配列されたアレーアンテナを備え
前記プラットフォームは、前記マイクロ波受電部で受電した電力を送電するマイクロ波送電部を備え、
前記送電設備は、前記プラットフォームの前記マイクロ波受電部へマイクロ波電力を送電するマイクロ波送電装置を備え、
前記プラットフォームは、前記マイクロ波受電部が受電したマイクロ波電力を蓄電する蓄電装置を備え、
前記マイクロ波送電部は、前記マイクロ波受電部から送信された電波を受信することによる、前記マイクロ波送電部の素子アンテナの受信信号から、当該受信信号の位相共役の関係にある位相共役信号を生成し、当該位相共役信号で前記マイクロ波送電部の素子アンテナを駆動することで、前記マイクロ波受電部から送信された電波をパイロット信号とするレトロディレクティブ動作で送電電力を前記マイクロ波受電部へ送電する、送電部側素子アンテナ回路を備え、
前記マイクロ波受電部は、前記マイクロ波送電部から送信された電波を受信することによる、前記マイクロ波受電部の素子アンテナの受信信号から、当該受信信号の位相共役の関係にある位相共役信号を生成し、当該位相共役信号で前記マイクロ波受電部の素子アンテナを駆動することで、前記マイクロ波送電部から送電された電波をパイロット信号とするレトロディレクティブ動作で送信信号を前記マイクロ波送電部へ送信する、受電部側素子アンテナ回路を備え、
前記マイクロ波送電部でのレトロディレクティブ動作と前記マイクロ波受電部でのレトロディレクティブ動作とが繰り返されることで、前記マイクロ波送電部から送電される電波および前記マイクロ波受電部から送信される電波のいずれも、漏洩エネルギーを常に最少状態に保つビームである自己収束ビームで伝送される、
洋上エネルギー収集システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は海洋の再生可能エネルギーを高効率で利用できるようにする洋上エネルギー収集システムに関する。
【背景技術】
【0002】
海洋の再生可能エネルギーは太陽光、風力、波力等である。これら再生可能エネルギーの高効率的利用は温室効果ガスの削減とエネルギー安全保障の大幅な改善に繋がる。
【0003】
また、一般的に再生可能エネルギーは広く分布しているので、海洋の再生可能エネルギーを高効率で利用できるようにするために、多数の発電装置をケーブルで接続することとなる。
【0004】
特許文献1には、複数の風力発電装置同士を電力ケーブルで接続して全体として大電力の発電量を得るようにした風力発電システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2022-20208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、原子力発電所や火力発電所等の通常発電所は発熱部の冷却が必須である。その冷却のために海水が必要であり、これら発電所は海岸線に沿った土地に設けざるを得ない。また、電力需要家はマクロ的には海岸線に沿った位置で電力を使用する。これら電力需要家への電力伝送路が短くて済むので、電力伝送路による電力損失を抑制する意味でも発電所は海岸線に沿った土地に設けることが有効である。
【0007】
一方、現在構築されている太陽光、風力、波力等の再生可能エネルギーの利用については次に列挙するような基本的な限界要因がある。
【0008】
(1)太陽光による植物や植物プランクトンの光合成を除いて、殆どのエネルギーは一旦熱エネルギー変換され、3次元的な温度分布と非熱平衡状態とで利用可能なエネルギーを生み出す。太陽光は、地上、海中、大気中の動植物に光と温度を与えるが、太陽光を受ける受光域が我々の住居域に近いと、そのことで我々の住環境が劣化するので自ずと利用限界がある。
【0009】
(2)高効率で電力変換可能な再生可能エネルギーは薄く広く且つ偏在しているため、大きな空間利用が前提となる。すなわち、動植物空間密度、人口密度による利用限界がある。
【0010】
(3)自然風景や観光地に巨大ないわゆる再エネ構造物が出現することになりやすいので、景観劣化による限界がある。
【0011】
(4)山岳・河川・海岸等による物質循環路が変化(劣化)しやすいので、生態環境の劣化による限界がある。
【0012】
(5)大陸棚は海洋産業が発展する経済水域であるので、漁業などの他産業との協調可能性の面で利用限界がある。
【0013】
(6)陸地や沿岸に設けられた巨大風車は気象レーダーや防衛レーダーと干渉する重大な課題が生じるおそれがある。すなわち、気象レーダーと干渉すると自然災害予報の面で利用限界があり、防衛レーダーと干渉すると安全保障の面で利用限界がある。
【0014】
上述のとおり、狭小な国土内では地上での再生可能エネルギーの大量採取は、コスト・文化・安全保障の面で不利である。また、原子力発電所や火力発電所と同様の沿岸域に再生エネルギー発電所を設置しようとしても、国土固有の資源としてエネルギー自給率を高めるには限界がある。
【0015】
本発明の目的は、上述の基本的な限界要因を回避して、再生可能エネルギーの有効利用を可能とする洋上エネルギー収集システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
我が国の洋上産業の発展には、それに向けたプラットフォームを設けることが効果的である。本開示の一例としての洋上エネルギー収集システムは、
複数の浮体式発電装置とこれら複数の浮体式発電装置とは分離されたプラットフォームとを含んで構成され、
前記複数の浮体式発電装置は洋上での浮遊状態で発電する発電部と、当該発電部による発電電力をマイクロ波で送電するマイクロ波送電部と、をそれぞれ備え、
前記プラットフォームは、前記複数の浮体式発電装置の前記マイクロ波送電部から送電されたマイクロ波をそれぞれ受電するマイクロ波受電部を備え、
前記マイクロ波送電部及び前記マイクロ波受電部は、それぞれ複数の素子アンテナが配列されたアレーアンテナを有し、
前記マイクロ波受電部は、パイロット信号を送信し、前記マイクロ波送電部から送電される電波を受電する受電部側素子アンテナ回路を備え、
前記マイクロ波送電部は、前記パイロット信号を受信し、当該パイロット信号の位相共役の関係にある位相共役信号を生成し、当該位相共役信号で前記マイクロ波送電部の素子アンテナを駆動することで、レトロディレクティブ動作で送電電力を前記マイクロ波受電部へ送電する、送電部側素子アンテナ回路を備え、
前記マイクロ波受電部は、前記複数の浮体式発電装置から周波数及び位相が揃ったコヒーレントなマイクロ波を受電する、ことを特徴とする。
【0017】
また、本開示の一例としての洋上エネルギー収集システムは、
複数の浮体式発電装置とこれら複数の浮体式発電装置とは分離されたプラットフォームとを含んで構成され、
前記複数の浮体式発電装置は洋上での浮遊状態で発電する発電部と、当該発電部による発電電力をマイクロ波で送電するマイクロ波送電部と、をそれぞれ備え、
前記プラットフォームは、前記複数の浮体式発電装置の前記マイクロ波送電部から送電されたマイクロ波をそれぞれ受電するマイクロ波受電部を備え、
前記マイクロ波送電部及び前記マイクロ波受電部は、それぞれ複数の素子アンテナが配列されたアレーアンテナを有し、
前記マイクロ波送電部は、前記マイクロ波受電部から送信された電波を受信することによる、前記マイクロ波送電部の素子アンテナの受信信号から、当該受信信号の位相共役の関係にある位相共役信号を生成し、当該位相共役信号で前記マイクロ波送電部の素子アンテナを駆動することで、前記マイクロ波受電部から送信された電波をパイロット信号とするレトロディレクティブ動作で送電電力を前記マイクロ波受電部へ送電する、送電部側素子アンテナ回路を備え、
前記マイクロ波受電部は、前記マイクロ波送電部から送信された電波を受信することによる、前記マイクロ波受電部の素子アンテナの受信信号から、当該受信信号の位相共役の関係にある位相共役信号を生成し、当該位相共役信号で前記マイクロ波受電部の素子アンテナを駆動することで、前記マイクロ波送電部から送電された電波をパイロット信号とするレトロディレクティブ動作で送信信号を前記マイクロ波送電部へ送信する、受電部側素子アンテナ回路を備え、
前記マイクロ波送電部でのレトロディレクティブ動作と前記マイクロ波受電部でのレトロディレクティブ動作とが繰り返されることで、前記マイクロ波送電部から送電される電波および前記マイクロ波受電部から送信される電波のいずれも、漏洩エネルギーを常に最少状態に保つビームである自己収束ビームで伝送される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、海洋の海面に浮遊するプラットフォームが複数の浮体式発電装置から送電されたエネルギーを収集して大エネルギーを集中的に扱い得る。この洋上エネルギー収集システムは洋上に浮遊しているので、前述した、我々の住環境の劣化、動植物空間密度、人口密度による利用限界、生態環境の劣化による限界が回避され、再生可能エネルギーが有効利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は洋上での再生可能エネルギーを利用するシステムの主要部分を示す図である。
図2図2は、浮体式洋上風力発電装置300等から出射されたマイクロ波ビームMBが、マイクロ波ミラー510で反射し、受電アンテナ520に入射する様子を示す図である。
図3図3はプラットフォーム500に設けられている受電アンテナ520と多数の浮体式洋上風力発電装置300の送電アンテナ311との位置関係を示す図である。
図4図4は送電アンテナと受電アンテナとの直径が異なる(非対称)である場合のマイクロ波電力伝送効率について例示する図である。
図5図5はプラットフォーム500に設けられたマイクロ波ミラー510と受電アンテナ520の構造及びプラットフォーム500の下部に設けられているインバースダム600の構造等を示す図である。
図6図6は本実施形態の洋上エネルギー収集システムを日本の排他的経済水域(EEZ)内に設けた場合について例示する図である。
図7図7は浮体式洋上風力発電装置300の構造を示す図である。
図8図8は浮体式洋上風力発電装置300の構造を示す図である。
図9図9は浮体式洋上風力発電装置300のトルクバランスを示す図である。
図10図10は浮体式洋上風力発電装置300のトルクバランスを示す図である。
図11図11はプラットフォーム500、無給電中継所700及びマイクロ波電力の受電装置100等の関係を示す図である。
図12図12は送電装置200Aから3つの受電装置100A,100B,100Cにそれぞれマイクロ波電力ビームを送電する例を示す図である。
図13図13(A)、図13(B)は、送電装置200Aから3つの受電装置100A,100B,100Cにそれぞれマイクロ波電力ビームを送電する例を示す図である。
図14図14はプラットフォーム500に設けられている送電装置200Bから船舶800へマイクロ波ビームで電力を送電している様子を示す図である。
図15図15は一つのインバースダム600の構造を示す図である。
図16図16はプラットフォーム500の上部に設けられた各種タンクの配置構造の一例である。
図17図17は送電装置200A,200Bの共通構成を示すための送電装置200の構成図である。
図18図18(A)は本実施形態における電力伝送システムのビームパイロット信号と電力波との関係を示す図であり、図18(B)は比較例の電力伝送システムにおけるパイロット信号と電力波との関係を示す図である。
図19図19はビームパイロット信号と電力波との偏波の関係について示す図である。
図20図20(A)は、一つの素子アンテナの斜視図であり、図20(B)はその内部を透視した斜視図である。
図21図21は素子アンテナの各部の寸法を示す図である。
図22図22(A)は第1対の磁気結合プローブ(Px1,Px2)に接続される給電部の構成を示す図であり、図22(B)は第2対の磁気結合プローブ(Py1,Py2)に接続される給電部の構成を示す図である。
図23図23(A)は図22(A)に示した電流が流れるときに生じる磁束を示す図である。図23(B)は図22(A)に示した電流が流れるときに生じる磁界強度の分布を示す図である。
図24図24(A)は、一つの素子アンテナの誘電体内に設けられる磁気プローブの斜視図であり、図24(B)は一つの素子アンテナの平面図である。
図25図25は、図22(A)、図22(B)に示した2つの180°ハイブリッド回路のX偏波ポートとY偏波ポートに接続される回路を示す図である。
図26図26(A)、図26(B)、図26(C)は小規模のモデルとしてのアレーアンテナの構造を示す図である。
図27図27は従来のフェーズドアレイアンテナ方式と最小ビーム導波路方式との比較例を示す図である。
図28図28は、受電側アレーアンテナ111の一つの素子アンテナに接続される回路と、送電側アレーアンテナ221の一つの素子アンテナに接続される回路の構成について示す図である。
図29図29は双方向レトロディレクティブ動作によるマイクロ波ビームの収束の様子を示す図である。
図30図30は双方向レトロディレクティブ動作によるマイクロ波ビームの収束の様子を示す図である。
図31図31は繰り返し回数Nに対するビーム収束率η及びエネルギー漏れとの関係を示す図である。
図32図32は送電アンテナと受電アンテナとによるSマトリクスの一次元モデルを示す図である。
図33図33はマイクロ波の伝搬経路中にマイクロ波の吸収体が存在するときのマイクロ波の伝搬の様子を示す図である。
図34図34はマイクロ波の伝搬経路中にマイクロ波の吸収体が存在するときのマイクロ波の伝搬の様子を示す図である。
図35図35は無給電中継所700の構成を示す正面図である。
図36図36は無給電中継所700の構成を示す平面図である。
図37図37は、送電装置200と受電装置100との間に二つの無給電中継所700A,700Bを配置した例を示す図である。
図38図38は第1マイクロ波ミラー711と第2マイクロ波ミラー712とによる3軸の微小回転を吸収するマイクロ波中継器の原理を示す図である。
図39図39は第1マイクロ波ミラー711と第2マイクロ波ミラー712とによる3軸の微小回転を吸収するマイクロ波中継器の原理を示す図である。
図40図40はマイクロ波の入射方向に対して一定角度をもって出射する中継器の構成を示す図である。
図41図41はマイクロ波ミラーの構成を示す断面図である。
図42図42は誘電体共振器721と反射板722等によるマイクロ波ミラーの一単位の構造を示す図である。
図43図43はマイクロ波ミラーの他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態を、本発明が適用されるシステムについて説明する。また、そのシステムを構成する要素毎に順に説明する。
【0021】
《洋上エネルギー収集システム》
先ず洋上エネルギー収集システムの全体的な構成について例示する。
【0022】
図1は、洋上での再生可能エネルギーを利用するシステム(以降「洋上エネルギーシステム」という。)の主要部分を示す図である。この洋上エネルギーシステムは、洋上エネルギー収集システム、洋上エネルギー貯留装置及び浮体式洋上マイクロ波電力中継装置を備える。但し、上記浮体式洋上マイクロ波電力中継装置は図1外にあり、この浮体式洋上マイクロ波電力中継装置については後に図示する。
【0023】
図1に表れているように、洋上には多数の浮体式洋上風力発電装置300が浮遊状態で配置されている。また、洋上にはプラットフォーム500が浮遊状態で配置されている。このプラットフォーム500の下部には複数のインバースダム600が設けられている。プラットフォーム500は複数のインバースダム600の浮力を受けていて、プラットフォーム500の底面は複数のインバースダム600の浮力によって、海面より上部に位置している。すなわち、プラットフォーム500の下面は海面に浸ることなく空中に露出している。このことにより、プラットフォーム500は海流による応力を受けにくく、後に示すスクリューによる推力は小さなものであっても、プラットフォーム500を所定位置に維持できる。
【0024】
インバースダム600は入力された電気エネルギーを重力エネルギーに変換し、また重力エネルギーを電気エネルギーに変換する。その構造及び作用については後述する。
【0025】
浮体式洋上風力発電装置300は風力エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機と電気エネルギーをマイクロ波電力でプラットフォーム500へ送電する送電装置を備えている。浮体式洋上風力発電装置300はそれぞれ洋上に浮遊しているが、それぞれが所定位置関係となるように制御される。浮体式洋上風力発電装置300の構造及び作用については後述する。
【0026】
プラットフォーム500は、平面視で例えば500m×1kmの長方形板状である。このプラットフォーム500の上部には変電所540が設けられている。変電所540の屋上にはドーナツ状又はリング状の受電アンテナ520が配置されている。そして、この受電アンテナ520の上部に逆円錐形状のマイクロ波ミラー510が設けられている。このマイクロ波ミラー510と受電アンテナ520とは同軸関係にある。受電アンテナ520とマイクロ波ミラー510とで、マイクロ波受電部が構成されている。このマイクロ波受電部は例えば接地境界層(地球表面から数十メートルまでの気層をいい、地球表面の影響を全面的に受けている最も下層の大気、具体的には、運動量や熱の鉛直方向の流束が地表での値と等しいと見なせる気層)より高い位置に設けられている。また、この例ではマイクロ波ミラー510の上部に太陽光発電パネル530が設けられている。
【0027】
プラットフォーム500の上部には送電装置(または送受電装置)200A,200Bが設けられている。送電装置200Aはマイクロ波ミラー210Aを備え、例えば陸地に設置されている受電装置へマイクロ波電力を送電する。また、送電装置200Bはマイクロ波ミラー210Bを備え、洋上の船舶800に設けられている受電装置へマイクロ波電力を送電する。
【0028】
プラットフォーム500は船舶に対するコンテナの積み込み及び積み下ろしを行うクレーン並びに船舶の着岸設備を含む港湾設備を備える。また、プラットフォーム500の近傍には、海洋に浮遊して太陽光エネルギーで発電する太陽光発電装置、又は海洋に浮遊して海洋の波力で発電する波力発電装置を備えている。これら発電装置はプラットフォーム500の近傍に配置できるので、それらの発電電力をマイクロ波で伝送するのではなく、電力ケーブルを介してプラットフォームへ供給する電力供給手段をも備えることができる。
【0029】
なお、浮体式洋上風力発電装置300にマイクロ波で電力を受電する装置を設け、また、上記太陽光発電装置や波力発電装置にマイクロ波で電力を送電する装置を設けてもよい。そのことで、浮体式洋上風力発電装置300は自身の風力発電電力と、太陽光発電装置や波力発電装置の発電電力とを併せて、電力ケーブルを介することなく、マイクロ波でプラットフォームへ供給するように構成してもよい。つまり、給電点を浮体式洋上風力発電装置300側にしてもよい。このことにより、電力ケーブルが船舶の航行を阻害することがなくなるので、船舶の航路をプラットフォームの近くにまで構成できる。
【0030】
プラットフォーム500は、例えば、海水を真水(H2O)にする化学プラント、真水を基にしてグリーン水素を生成する化学プラント、水素と窒素からアンモニア(NH3)を生成する化学プラント、を備える。また、LNGやバイオディーゼル燃料(BDF(登録商標))等を一時貯留するタンクを備える。
【0031】
本実施形態によれば、プラットフォーム500、浮体式洋上風力発電装置300のいずれについても、ケーソン及びワイヤーケーブルを利用しない浮遊状態の構造物であるので、深海底の掘削作業及び係留作業が不要であり、構築が容易である。
【0032】
図2は、浮体式洋上風力発電装置300等から出射されたマイクロ波ビームMBが、マイクロ波ミラー510に反射し、受電アンテナ520に入射する様子を示す図である。図2の上部は斜視図であり、図2の下部は平面図である。この例では、逆円錐形状のマイクロ波ミラー510の主要部は金属板で構成されている。このマイクロ波ミラー510の上部の幅は300mであり、ドーナツ状の受電アンテナ520の受光部の円周に沿った幅は75mである。この受光部の円周に沿った幅は、マイクロ波ビームの幅である50mより大きく、マイクロ波ビームの反射波を漏れなく受電する。各マイクロ波ビームMBは断面円形であるが、逆円錐形状のマイクロ波ミラー510で反射することで、受電アンテナ520にはほぼ楕円形状のマイクロ波ビームが入射する。ここで、マイクロ波ミラー510は金属面であるので、マイクロ波ミラー510にマイクロ波が斜めに入射しても全反射する。そのため、仰角が浅くても、受電アンテナ520に対してはマイクロ波ビームが垂直に近い状態で入射する。そのことにより受電効率の低下が抑制される。
【0033】
図3はプラットフォーム500に設けられている受電アンテナ520と多数の浮体式洋上風力発電装置300の送電アンテナ311との位置関係を示す図である。多数の浮体式洋上風力発電装置300は10km四方に分散配置されている。但し、図3においては浮体式洋上風力発電装置300を図示せず、送電アンテナ311をドットで表現している。そして、この10km四方の中央にプラットフォーム500の受電アンテナ520が配置されている。浮体式洋上風力発電装置300の構成については後に示す。
【0034】
浮体式洋上風力発電装置300は1基あたり例えば12MWを発電し、108基で1.29GWを発電する。各浮体式洋上風力発電装置300の送電アンテナは直径17mのアレーアンテナである。プラットフォーム500側のドーナツ状の受電アンテナ520は直径250mのアレーアンテナである。後に示すインバースダム600の蓄積容量は200MWh×16基=3.2GWhである。これは例えば20万kW×16時間の定格に相当する。
【0035】
各浮体式洋上風力発電装置の送電アンテナ311から受電アンテナ520へは直線経路でマイクロ波電力が伝送される位置関係にある。基本的には、各浮体式洋上風力発電装置の送電アンテナ311は等間隔格子の交点に配置されるが、例外的に等間隔格子の交点に配置されない位置に浮体式洋上風力発電装置300が配置される。送電アンテナ311と受電アンテナ520との直線経路の途中に他の浮体式洋上風力発電装置300が存在する場合には、その浮体式洋上風力発電装置300が遮蔽物となる。そのため、この遮蔽物となる浮体式洋上風力発電装置300を格子に沿ってX方向又はY方向に所定距離ずれた位置に設定する。または、位置を定めるべき(着目している)浮体式洋上風力発電装置300と受電アンテナ520との直線経路の途中に他の浮体式洋上風力発電装置300が存在する場合に、前記着目している浮体式洋上風力発電装置300を格子に沿ってX方向又はY方向に所定距離ずれた位置に設定する。
【0036】
上述の例ではすべての浮体式洋上風力発電装置300が格子上に位置する例であるが、受電アンテナ520を中心とする同心円に沿った位置に配置してもよい。また、送電アンテナ311と受電アンテナ520との直線経路の途中に他の浮体式洋上風力発電装置300が存在する場合に、上記同心円に沿って所定距離ずれた位置に配置してもよい。また、各浮体式洋上風力発電装置300の位置は格子状、同心円状に限らずランダムに配置してもよい。ただし、いずれの場合でも、浮体式洋上風力発電装置300のプロペラの後方に生じる乱流による悪影響を受けないように各浮体式洋上風力発電装置300の間隔を定めることが重要である。
【0037】
また、図3に示した例では受電アンテナ520の周囲を囲むように浮体式洋上風力発電装置300を設けた例を示したが、多数の浮体式洋上風力発電装置300の配置領域より外洋とプラットフォーム500との間に、船舶が航行可能な航路を設けておいてもよい。これにより、プラットフォーム500に対する船舶の接近または離着岸が容易となる。
【0038】
図4は浮体式洋上風力発電装置300の送電アンテナと受電アンテナ(マイクロ波ミラー510と受電アンテナ520とによるアンテナ)との直径が異なる(非対称)である場合のマイクロ波電力伝送効率について例示する図である。この例では、直径25mの送電アンテナと直径50mの受電アンテナとが5km離れているときのマイクロ波電力の伝送効率は99.995%である。
【0039】
図5はプラットフォーム500に設けられたマイクロ波ミラー510と受電アンテナ520の構造及びプラットフォーム500の下部に設けられているインバースダム600の構造等を示す図である。マイクロ波ミラー510は円錐の側面が金属板(金属面)で構成された逆円錐形状のマイクロ波ミラーである。受電アンテナ520はアンテナ素子がドーナツ状に配置されたアレーアンテナである。
【0040】
マイクロ波ミラー510には、複数の方位にある浮体式洋上風力発電装置300から送電されたマイクロ波ビームが入射し、それぞれマイクロ波ミラー510で全反射し、受電アンテナ520に入射する。例えば1つのマイクロ波ビームは10MWである。図2に示したとおり、マイクロ波ミラー510に入射するマイクロ波ビームの断面が円形であっても、それが逆円錐面で反射するので、受電アンテナ520にはほぼ楕円形状のマイクロ波ビームが入射する。
【0041】
変電所540は受電アンテナ520で受電したマイクロ波電力を整流、変圧、及び直流化する。太陽光発電パネル530による発電電力は例えば変電所に対する電源の一部として用いられる。
【0042】
プラットフォーム500の下部に設けられているインバースダム600はエネルギー貯留装置である。一つのインバースダム600は例えば高さ(深さ)200mで200MWhの揚水発電を行うが、この一つのインバースダム600が発生する全体の浮力は約160万トンである。また、インバースダム600の自重は約78万トンであるので、インバースダム600がプラットフォーム500を持ち上げようとする浮力は差分の約82万トンもあって非常に大きい。これらの大きな浮力を発生させるインバースダム600をプラットフォーム500の下部に設けることにより、多数のインバースダム600をプラットフォーム500と共に安定的に設けることができる。すなわち、これらの大きな浮力を発生させる多数のインバースダム600をプラットフォーム500と共にバランス良く容易に設けることができる。
【0043】
上述のとおりインバースダム600は海洋中で浮力を発生させ、多数のインバースダム600の分布により、それらの浮力でプラットフォーム500を上下方向に安定させた状態で浮遊させる。すなわち、プラットフォーム500が海面に沿って傾きが抑制されるような復元力が生じるように複数のインバースダム600は分散配置されている。
【0044】
各インバースダム600の浮力は、第1水槽601と第2水槽602の水量に拘わらずに一定である。そのため、インバースダム600がプラットフォーム500に与える応力は一定であり、揚水発電の繰り返しによる繰り返し応力や振動は小さい。そのため機械的劣化が小さく長寿命化をはかることができる。また、喫水も変わらないため、プラットフォーム500の位置だけでなく、高さ方向についても安定するので、港湾での安定したオペレーションができ、港湾としての機能を保てる。
【0045】
プラットフォーム500の下面は海面に接していてもよいが、複数のインバースダム600の浮力により、プラットフォーム500の下面が海面より上方に持ち上げられ、プラットフォーム500の下面が空中に露出するよう、インバースダム600の浮力を定めてもよい。この構造によれば、プラットフォーム500ではなく、各インバースダム600に喫水線が生じることとなり、プラットフォームと各インバースダム600との全体が受ける波力や摩擦抵抗を抑制できる。また、プラットフォーム500全体が海流を受けないので海流による応力を抑制できる。そのため、プラットフォーム500を所定位置に保つ推力発生装置の最大推力は小さくてすむ。また、プラットフォーム500の水平精度及び位置精度を高めることもできる。
【0046】
なお、プラットフォーム500の底面の複数箇所に泡又はマイクロバブルの噴出口を均一に分布させ、超音波等を利用したマイクロバブル発生装置を設けることも有効である。つまり、プラットフォーム500の底面から吹き出すマイクロバブルによって、プラットフォーム500の底面と海水との間に空気層を形成することで、プラットフォーム500と海水との間の摩擦を低減できる。マイクロバブル自体又は空気層の空気をプラットフォーム500の側方へ漏れ出にくいように、プラットフォーム500の底面の周囲に空気漏れ防止用の囲みを設けてもよい。マイクロバブルや空気はそれ自体がプラットフォーム500の側面に沿ってそのまま海面まで浮き上がるので、プラットフォーム500と海水との摩擦低減効果は殆ど無い。そのため、プラットフォーム500の喫水線はプラットフォーム500の下面に近い方が好ましい。船舶の場合とは異なり、プラットフォーム500は海水に対する相対速度が小さいので、海流にバブルを持っていかれることは殆どない。このように構成すれば、プラットフォーム500の底面を海面上に浮かせない方法でもプラットフォーム500の復元力を安定化することができる。
【0047】
プラットフォーム500は海底等に係留されているわけではないので、プラットフォーム500の下面が海中にある場合(すなわち喫水線がプラットフォーム500にある場合)も、喫水線がインバースダム600の所定位置にある場合も、地震や津波に対応できる。つまり、プラットフォーム500は係留されていないので、地震や津波の発生時に生じる長波長で変化する波面にプラットフォーム500及びインバースダム600が全体的に従う。そのことで、地震や津波による応力に対しても耐性が高い。
【0048】
プラットフォーム500は複数の太陽光発電パネルからエネルギーを収集してもよい。その場合、洋上に浮遊する複数の浮体式洋上風力発電装置300と、洋上に浮遊する複数の太陽電池パネルとを備え、複数の浮体式洋上風力発電装置300は、互いに隣接する浮体式洋上風力発電装置300が干渉しない所定間隔を空けて配置し、この所定間隔の位置(例えば図3に示した格子の間隔内)に太陽電池パネルを配置してもよい。これら太陽電池パネルは海面上に露出させずに水没する位置に設けてもよい。そして、太陽光発電装置は、洋上(海洋面近傍)で太陽光を受けて発電する太陽電池パネルと、太陽電池パネルの位置を検知し、太陽電池パネルの洋上における位置を固定する推進部と、太陽電池パネルによる発電電力を、プラットフォームへマイクロ波で送電する送電部と、を備えればよい。
【0049】
なお、太陽電池パネルを浅く水没させれば、太陽電池パネルの発電効率を高いまま維持できる。つまり、太陽電池パネルが高温になるほど、その発電効率は低下するが、太陽電池パネルを海中へ水没させれば、その温度は30度を超えない。そのため、太陽電池パネルの発電効率を高く維持できる。また、太陽電池パネルを浅く水没させれば、太陽電池パネル表面の塵埃が絶えず洗い流されてその清浄性が保たれる。ただ、EEZのような綺麗な海洋の海中でも海洋付着物が全く無いわけではないので、ロボットによる定期的な簡単な清掃を自動的に行うことは好ましい。また、太陽電池パネルを浅く水没させることにより、波の叩きつける衝撃から太陽電池パネルが機械的に守られる。海水は太陽光線を吸収するので、太陽電池パネルを深く沈めすぎると発電効率が低下する。したがって、例えば3mから5mぐらいの範囲に太陽電池パネルを沈めることが効果的である。また、この深さを天候によって変化せることも耐久性向上と発電効率向上の点で有効な方策である。
【0050】
インバースダム600は、海中に設置され、淡水を貯留する所定容積の第1水槽601と、海中に設置され、第1水槽601より下部に配置され、淡水を貯留する所定容積の第2水槽602と、第1水槽601と第2水槽602とを連通する単一又は複数の連通路604と、第2水槽602から第1水槽601へ連通路604を通って揚水する電動揚水機603と、第1水槽601から第2水槽602へ連通路604を通って流れる落水によって発電する発電機606と、を有する。すなわち揚水発電を行う。
【0051】
電動揚水機603に入力される電力エネルギーで、電動揚水機603が第2水槽602内の水を第1水槽601へ揚水することで、電力エネルギーを重力エネルギーに変換する(蓄積する)。また、第1水槽601から第2水槽602への落水により発電機606が重力エネルギーを電力エネルギーに変換する(放出する)。
【0052】
なお、第1水槽601と第2水槽602とを連通する単一又は複数の連通路604は、重力方向に隣接する第1水槽601と第2水槽602とを連通させる非常に短い経路であるので、この連通路を水が流れる際に生じる損失は非常に小さく抑えられる。そのため、揚水発電の総合的な損失を低減できる。
【0053】
この例では、第1水槽601と第2水槽602との間に、浮力を調整するとともに、プラットフォーム500の重心を下方へずらせる錘607が設けられている。
【0054】
インバースダム600の淡水の総質量は一定であるので、インバースダム600の浮力は一定であり、インバースダム600の喫水線は一定である。なお、図5中の機械室610は電動揚水機603及び発電機606の制御等を行う。
【0055】
図6は本実施形態の洋上エネルギー収集システムを日本の排他的経済水域(EEZ)内に設けた場合について例示する図である。この海域の風速が12m/sであれば、1km四方あたり10MWの電力を風力発電可能であるので、四方300kmで900GWの電力を発電できる。ちなみに、このようなEEZにおいては飛行する鳥が非常に少ないので、浮体式洋上風力発電装置300の風車に対するバードストライクの問題は殆ど生じない。
【0056】
図7図8は浮体式洋上風力発電装置300の構造を示す図である。この浮体式洋上風力発電装置300は、風力を受けて回転する風車301、海中で推力を発生させるスクリュー302X、302Y、複数本の鉄柱303、水槽304、錘305及び送電アンテナ311を備える。スクリュー302X,302Yは海洋での位置を所定位置に保つ推力発生装置である。
【0057】
水槽304には淡水304Wが入れられていて、その上部は空洞304Cが形成されている。
【0058】
風車301は例えば直径は150m、風車301の中心から海水面までは125mである。また、海水面から錘305の底面までは200mである。鉄柱303は高さ6mであり、平均海水面が鉄柱303の中央高さとなるように高さ方向のバランスが調整されている。
【0059】
この浮体式洋上風力発電装置300はEEZ内で黒潮経路の外側の海流の弱い大深度海域で利用することが有効である。
【0060】
発電機306は風車301の回転により発電し、電動機307Xはスクリュー302Xを回転駆動し、電動機307Yはスクリュー302Yを回転駆動する。スクリュー302X,302Yは大面積であり、これを低回転数で駆動することで風車の抗力を相殺すると共に、浮体式洋上風力発電装置300の位置を所定位置に保つ。これにより定点保持制御(DPS)が実現できる。
【0061】
ここで、風車301で発電しつつ洋上に静止するために要する電力と推力の概算の一例を示す。
【0062】
【数1】
【0063】
上記式において、VAは風速、VWは水流の流速、PAは風車の発生電力、PWはスクリューに必要な電力、Nはスクリューの数である。構造パラメータを決めると風速に比例した水流をスクリューが作り出す必要がある。比例定数はスクリューに対する風車の面積比の平方根であり、スクリューの面積が大きい程、静止電力は少なくて済む。この物理的意味は、大量の水をゆっくり吐き出すことで運動量(力)を一定に保ち、速度の2乗に比例する水の運動エネルギーを小さくすることである。
【0064】
上記式中の定点停止電力の例では、風速VAを10m/s、風車の直径を150m、スクリューを16個、その直径を12mとしている。空気の質量密度は1.225kg/m3、水と空気の質量密度比は816、エネルギー効率Cpは0.593としている。
【0065】
このようにスクリューの直径を風車の直径の約1/10以上大きくすることで定点停止電力は風車の発生する電力の1割程度に抑えることができる。
【0066】
図9図10は浮体式洋上風力発電装置300のトルクバランスを示す図である。例えば風車301が受ける風圧が100トンであれば、風圧とは逆方向にスクリュー302Xを100トンで推進させる。計算例として図8図9に示した構造を考えると、傾斜角3.41度でトルクがバランスする。
【0067】
《洋上マイクロ波電力伝送システム》
図11はプラットフォーム500、無給電中継所700及びマイクロ波電力の受電装置100等の関係を示す図である。
【0068】
プラットフォーム500は海洋における位置を検知するGPS衛星や準天頂衛星等の測位衛星により極めて高精度な位置情報を得る位置検知装置を備える。また、プラットフォーム500は海洋での位置を所定位置に保つ推力発生装置を備える。
【0069】
プラットフォーム500の下部には上記推力発生装置としてのスクリュー608が設けられている。スクリュー608は少なくとも経度方向と緯度方向に移動させる向きの複数のスクリューで構成されている。これによりプラットフォーム500の定点保持制御(DPS)が実現できる。
【0070】
陸地の沿岸に設けられている受電装置100とプラットフォーム500に設けられている送電装置200Aとの構成は同様である。送電装置200Aは無給電中継所700を向いていて、受電装置100も無給電中継所700を向いている。
【0071】
無給電中継所700は、マイクロ波ミラー装置701、浮体706、スクリュー702、鉄柱703及び錘705を備える。鉄柱703は浮体706から所定高さにマイクロ波ミラー装置701を支持する。錘705は、その重力と浮体706等による浮力とをバランスさせ、マイクロ波ミラー装置701の高さを一定に保つ。
【0072】
例えば、プラットフォーム500の総排水量は160万トン、無給電中継所700の総排水量は4000トンである。また、送電装置200Aから無給電中継所700までの距離は20km、受電装置100から無給電中継所700までの距離は20kmである。送電装置200Aの高さは120m、海面からマイクロ波ビームの下端までは60mであり、マイクロ波ビームの下端は接地境界層より高い。
【0073】
図12図13(A)、図13(B)は、送電装置200Aから3つの受電装置100A,100B,100Cにそれぞれマイクロ波電力ビームを送電する例を示す図である。送電装置200Aは単一の受電装置へマイクロ波電力ビームを送電することに限らない。送電装置200Aは、パイロット信号の送受信に応じて、そのパイロット信号の方向へマイクロ波電力ビームを送電する。
【0074】
図12に示す例では、送電装置200Aは直径50mの送電アンテナを備え、送電装置200Aから受電装置100A,100B,100Cまで10km離れている。また、受電装置100Aと受電装置100Bとの間隔は70m、受電装置100Aと受電装置100Cとの間隔は90mである。送電装置200Aから受電装置100Aへ1000kWのマイクロ波電力が伝送され、送電装置200Aから受電装置100Bへ360kWのマイクロ波電力が伝送され、送電装置200Aから受電装置100Cへ90kWのマイクロ波電力が伝送される。
【0075】
図12においてはエネルギー密度をdBの濃淡で表している。図13(A)は受電装置100A,100B,100Cにおけるエネルギー密度をリニアの濃淡で表していて、図13(B)は受電装置100A,100B,100Cにおけるエネルギー密度をグラフで表している。
【0076】
図14はプラットフォーム500に設けられている送電装置200Bから船舶800へマイクロ波ビームで電力を送電している様子を示す図である。送電装置200Bは送電側アレーアンテナ221Bとマイクロ波ミラー210Bとを備える。送電装置200Bと送電装置200Aとの構成は同様である。この例では送電側アレーアンテナ221Bの直径は50mであり、船舶800の受電アンテナ810は一辺15mのアレーアンテナで構成されている。送電装置200Bから船舶800までの距離は30m~100mであり、100~300MWのマイクロ波を送電する。
【0077】
《洋上エネルギー貯留装置》
図15は一つのインバースダム600の構造を示す図である。図5に表れていたインバースダム600とは構造が異なる。図15に示すインバースダム600は、海中に設置され、淡水を貯留する所定容積の第1水槽601と、海中に設置され、第1水槽601より下部に配置され、淡水を貯留する所定容積の第2水槽602と、第1水槽601と第2水槽602とを連通する連通路604,605と、第2水槽602から第1水槽601へ連通路604を通って揚水する電動揚水機603と、第1水槽601から第2水槽602へ連通路605を通って流れる落水によって発電する発電機606と、を有する。第2水槽602の下部には、浮力を調整するとともに、プラットフォーム500の重心を下方へずらせる錘607が設けられている。
【0078】
この例では、第1水槽601及び第2水槽602の内径は100m、第1水槽601と第2水槽602とを併せた全体の高さは200mである。淡水の重量とインバースダム600本体の重量と発電機606及び電動揚水機603の重量は82.8万トンであり、浮力(インバースダム本体の外容積とほぼ同じ水の排水量)は157万トンである。錘607の重量は上記157万トンと82.8万トンとの差に等しい74.2万トンである。
【0079】
なお、図15に示した例では、第1水槽601と第2水槽602とを連通する複数の連通路604,605と、第2水槽602から第1水槽601へ連通路を通って揚水する電動揚水機603と、第1水槽601から第2水槽602へ連通路を通って流れる落水によって発電する発電機606を備える例を示したが、第2水槽602から第1水槽601へ連通路を通って揚水する電動揚水機と、第1水槽601から第2水槽602へ連通路を通って流れる落水によって発電する発電機とは兼用させてもよい。また、第1水槽601と第2水槽602とを連通する連通路は単一であってもよい。
【0080】
図16はプラットフォーム500の上部に設けられた各種タンクの配置構造の一例である。このプラットフォーム500は港湾設備を備え、物流、水、燃料(電気・水素・LNG・バイオディーゼル燃料(BDF(登録商標))・アンモニア(NH3))、食料等を提供できる「海の駅」的性格を有する。
【0081】
プラットフォーム500のエネルギー貯蔵量は200MWh×4=80万kWh、発電能力は定格200MW(20万kW)、最大400MWである。一次エネルギーは浮体式洋上風力発電装置及び洋上太陽光発電であり、水素の製造・貯蔵能力及び淡水の製造・貯蔵能力を有する。タンク501には水素、淡水、LNG、バイオガス等が貯蔵される。これらタンク501はインバースダム600の上方に配置されている。そのことにより、インバースダム600の浮力が作用点とタンク501の重心とが鉛直線上で一致することとなり、プラットフォーム500およびタンク501に掛かる応力を低減できる。
【0082】
《洋上マイクロ波電力伝送システム》
図1に示した送電装置200A,200Bは同様の構成である。図17は送電装置200A,200Bの共通構成を示すための送電装置200の構成図である。送電装置200は複数の素子アンテナが配列された送電側アレーアンテナ221とマイクロ波ミラー210とを備える。送電側アレーアンテナ221は鉛直方向に電力波を送出し、マイクロ波ミラー210はその電力波を90°反射して水平方向(海面に平行な方向)に導く。
【0083】
図17に表れているように、送電側アレーアンテナ221は配列された複数の素子アンテナ21を備えている。
【0084】
後に詳述するように、受電装置は、受電側アレーアンテナの複数の素子アンテナの受信信号の振幅および位相を制御することでビーム形成されたパイロット信号(ビームパイロット信号)を受電側アレーアンテナから送信する手段と、送電側アレーアンテナ221から送電された電力波を受電する回路と、を備える。また、送電装置200は、送電側アレーアンテナ221の複数の素子アンテナが上記ビームパイロット信号を受信することによる受信信号から、その位相共役関係にある位相共役信号を生成し、この位相共役信号を増幅し、素子アンテナを駆動することで、電力波を送電する送電側素子アンテナ回路を備える。
【0085】
なお、後述するように、定常状態ではビームパイロット信号は専用の信号ではなく、受電装置側アレーアンテナから送信された信号である。順次説明する都合上、先ずは、受電装置側アレーアンテナからビームパイロット信号が送信され、このビームパイロット信号を基にして、送電側アレーアンテナ221から電力波が送電されるものとする。
【0086】
図18(A)は本実施形態における電力伝送システムのビームパイロット信号と電力波との関係を示す図であり、図18(B)は比較例の電力伝送システムにおけるパイロット信号と電力波との関係を示す図である。
【0087】
図18(B)に示す比較例の電力伝送システムでは、受電アンテナの中央部の極一部にパイロット信号送信用のアレーアンテナ111Cが設けられ、その周囲の大部分に電力波受電用のアレーアンテナ111Pが設けられている。また、送電アンテナの中央部の極一部にパイロット信号受信用アレーアンテナ221Cが設けられ、その周囲の大部分に電力波送電用のアレーアンテナ221Pが設けられている。受電局は受電アンテナのパイロット信号送信用のアレーアンテナ111Cを用いてパイロット信号を送信し、送電局では、送電アンテナのパイロット信号受信用のアレーアンテナ221Cを用いてパイロット信号を受信することで、そのパイロット信号の到来方向を検知し、その方向に、電力波送電用のアレーアンテナ221Pを用いてビーム形成された電力波を送電する。
【0088】
このように、比較例の受電アンテナは、アレーアンテナの大部分(大面積)を電力伝送に利用するために、アレーアンテナの残りの一部の領域をパイロット信号の送受用に用いるので、受電局は言わば拡散パイロット信号を送信することになる。そのため、この比較例の電力伝送システムでは、海面や散乱体でパイロット信号が反射して、送電局のパイロット信号受信用アレーアンテナ221Cに対するマルチパスが生じる。その結果、レトロディレクティブが不正確となって、電力伝送効率は大きく低下する。
【0089】
これに対し、図18(A)に示す、本実施形態の電力伝送システムでは、先ず、受電側アレーアンテナ111の全面の素子アンテナを用いて、ビームパイロット信号を受電側アレーアンテナ111から送電側アレーアンテナ221へ送信する。送電側アレーアンテナ221の各素子アンテナは上記ビームパイロット信号の受信による受信信号から、この受信信号の位相共役の関係にある位相共役信号を生成し、この位相共役信号で素子アンテナを駆動することで、結果的にビーム形成された電力波を送電する。すなわち、受電側アレーアンテナの全部または大部分の素子アンテナを用いてビームパイロット信号が送信され、送電側アレーアンテナの全部または大部分の素子アンテナを用いてビームパイロット信号の受信および電力波の送電が行われる。上記「大部分」とは、必ずしも全部の素子アンテナを用いてビームパイロット信号を生成することに限らないことを表すものであり、例えば90%以上の素子アンテナを用いてビームパイロット信号を生成してもよい。
【0090】
本実施形態によれば、パイロット信号を、送電側アレーアンテナ221に鋭く指向するビーム(後述の自己収束ビーム)で送信するので、海面などでの反射が少なく、マルチパスの殆ど無い状態でビームパイロット信号が送電側アレーアンテナ221へ送信される。そのため、パイロット信号のマルチパスによる問題が解消される。
【0091】
図19は上記ビームパイロット信号と電力波との偏波の関係について示す図である。受電側アレーアンテナ111の各素子アンテナは水平偏波用の素子と、垂直偏波用の素子とを備え、同様に、送電側アレーアンテナ221の各素子アンテナも水平偏波用の素子と、垂直偏波用の素子とを備える。この例では、受電側アレーアンテナ111は、ビームパイロット信号を垂直偏波で送信し、送電側アレーアンテナ221は電力波を水平偏波で送電する。
【0092】
このようにビームパイロット信号と電力波とは偏波面が直交していて互いに独立しているので、受電側アレーアンテナ111の各素子アンテナに接続されているパイロット信号給電用の回路が電力波に影響を受けることはない。また、送電側アレーアンテナ221の各素子アンテナに接続されるパイロット信号受信用の回路が、自身の素子アンテナが送電する電力波の影響を受けることもない。
【0093】
図20(A)は、一つの素子アンテナの斜視図であり、図20(B)はその内部を透視した斜視図である。素子アンテナ11,21は、導体平面GPから突出する誘電体DHと、この誘電体DH内に設けられた2対の磁気結合プローブ(Px1,Px2)(Py1,Py2)とを備える。
【0094】
誘電体DHは、全体の概形は半球状であり、導体平面GPの平面視では十字型である。つまり、図20(A)に表れているように、半球状の誘電体の4箇所に切り欠きCOが形成されたような形状、または半月切り形状の2つの誘電体片が十字型に組み合わされたような形状である。図20(B)に示すように、誘電体DHの中心(導体平面GPに接する誘電体DHの面の中心)を直交x,y,z座標の原点とすると、上記2つの誘電体片の一方はx-z面に拡がり、他方はy-z面に拡がる。
【0095】
第1対の磁気結合プローブ(Px1,Px2)は、それらのループ面がx-z面内にあり、第2対の磁気結合プローブ(Py1,Py2)は、それらのループ面がy-z面内にある。
【0096】
図21は上記素子アンテナの各部の寸法を示す図である。この例では、誘電体DHの比誘電率εrは12.6であり、誘電体DHの直径dは16mm、磁気結合プローブPx1,Px2の半径rは1.75mm、磁気結合プローブPx1,Px2の半円状ループの中心高さhは1.35mm、中心から磁気結合プローブの給電点までのピッチPは6mmである。磁界結合プローブの高さhを調整することにより、入出力ポートとアンテナとの整合を調整することができる。磁気結合プローブPy1,Py2についても、各部の寸法は磁気結合プローブPx1,Px2と同様である。なお、素子アンテナ毎の導体平面GPは直径30mmの金属円板であり、例えば直径50mの金属板に所定間隔で二次元上に配列される。
【0097】
図22(A)は第1対の磁気結合プローブ(Px1,Px2)に接続される給電部の構成を示す図であり、図22(B)は第2対の磁気結合プローブ(Py1,Py2)に接続される給電部の構成を示す図である。第1対の磁気結合プローブ(Px1,Px2)にはそれぞれ中心に近い端部が導体平面(グランド)に接続され、中心から離れた端部から給電される。磁気結合プローブPx1,Px2には、180°ハイブリッド回路から位相が180°異なる信号が給電されることにより、磁気結合プローブPx1,Px2は差動給電(平衡給電)され、矢印方向の電流が流れる。このことは第2対の磁気結合プローブ(Py1,Py2)についても同様である。
【0098】
図23(A)は図22(A)に示した電流が流れるときに生じる磁束を示す図である。また、図23(B)は図22(A)に示した電流が流れるときに生じる磁界強度の分布を示す図である。このように、磁気結合プローブPx1,Px2を差動給電することによって、誘電体DHが磁気結合プローブPx1,Px2で励振されて、誘電体DHは(磁気ダイポールと等価な放射電磁界を持つ)TE11 Xモードの誘電体共振器として作用する。このTE11 Xモードの誘電体共振器がX偏波用の素子アンテナである。同様に、磁気結合プローブPy1,Py2を差動給電することによって、誘電体DHが磁気結合プローブ(Py1,Py2)で励振されて、誘電体DHは(磁気ダイポールと等価な放射電磁界を持つ)TE11 Yモードの誘電体共振器として作用する。このTE11 Yモードの誘電体共振器がY偏波用の素子アンテナである。TE11 XモードとTE11 Yモードとは互いに独立しているので、各素子アンテナはTE11 二重モード誘電体共振器として作用する。この例では、共振器の放射Q係数(Qrad)は約20である。このTE11 二重モード誘電体共振器は、直交二重モード誘電体共振器アンテナの一例である。
【0099】
次に、素子アンテナの別の構成について示す。図24(A)は、一つの素子アンテナの誘電体内に設けられる磁気プローブの斜視図であり、図24(B)は一つの素子アンテナの平面図である。この素子アンテナは、導体平面GPから突出する誘電体DHと、この誘電体DH内に設けられた2つの磁気結合プローブPx,Pyとを備える。
【0100】
誘電体DHの形状は図20(A)、図20(B)に示したものと同じである。磁気結合プローブPxは、そのループ面がx-z面内にあり、磁気結合プローブPyは、そのループ面がy-z面内にある。
【0101】
磁気結合プローブPx,Pyそれぞれの中点は導体平面(グランド導体)GPに接続されている。磁気結合プローブPx、Pyそれぞれは両端から差動給電(平衡給電)される。
【0102】
このようにクロスループ構造であっても、図23(A)、図23(B)に示したと同様の磁束が生じ、磁気結合プローブPxはY軸に磁気ダイポールモーメントを持つTE11 X モードに結合し、磁気結合プローブPyはX軸に磁気ダイポールモーメントを持つTE11 Yモードに結合する。
【0103】
以上に示した、直交二重モード誘電体共振器アンテナを用いることにより、パイロット信号と電力波とは充分に高い偏波アイソレーションが得られ、同一周波数を用いながらも、パイロット信号と電力波との干渉の無いシステムが構成できる。
【0104】
次に、各素子アンテナが円偏波でパイロット信号の送受信および電力波の送受電を行う例を示す。
【0105】
図25は、図22(A)、図22(B)に示した2つの180°ハイブリッド回路のX偏波ポートとY偏波ポートに接続される回路を示す図である。図25に示す90°ハイブリッド回路のInput-portは右旋円偏波の入出力ポートであり、90°ハイブリッド回路のIsolated-portは左旋円偏波の入出力ポートである。90°ハイブリッド回路の0°-portと90°-portとの位相差は90°であるので、図22(A)、図22(B)に示した2対の磁気結合プローブには90°位相差で給電される。この構成により、右旋円偏波でパイロット信号の送信または電力波の送電がなされ、左旋円偏波のパイロット信号の受信または電力波の受電がなされる。
【0106】
このようにして、パイロット信号と電力波とで旋回方向を異ならせることによっても、受信信号と送信信号とは偏波が直交関係にあるので、同一周波数を用いながらも、パイロット信号と電力波とが干渉しない電力伝送システムが構成できる。
【0107】
図26(A)、図26(B)、図26(C)は小規模のモデルとしてのアレーアンテナの構造を示す図である。図26(A)はアレーアンテナの平面図、図26(B)はアレーアンテナの正面図、図26(C)はアレーアンテナの下面図である。このアレーアンテナは送電側アレーアンテナまたは受電側アレーアンテナとして用いられる。
【0108】
複数の素子アンテナ11(21)は導体平面GPに配列されている。この例では、合計177個の素子アンテナが0.7λ(36mm)ピッチで縦横に配列されている。
【0109】
図26(B)に表れているように、基準信号グリッド基板GBと導体平面GPとの間に多数のRFユニットRFUが配置されている。これらRFユニットRFUは素子アンテナ11(21)毎に設けられている。基準信号グリッド基板GBには配線パターンLPが形成されていて、この配線パターンLPを介して各RFユニットRFUに等振幅等位相の基準信号を供給する。
【0110】
図27は従来のフェーズドアレイアンテナ方式と最小ビーム導波路方式との比較例を示す図である。従来のフェーズドアレイアンテナ方式では各アンテナ素子の電界強度がフラットに分布するので、電波の伝搬に伴いガウス基本モードが近軸に選択される。これに対して、最小ビーム導波路方式では中央ほど電界強度の強い分布で伝搬する。
【0111】
アレイアンテナの直径が50m、伝搬距離が10kmで、5.8GHzのマイクロ波を用いたとき、フェーズドアレイアンテナ方式では伝搬効率(補足率)が91.25%であるのに対し、最小ビーム導波路方式では伝搬効率(補足率)が99.996%である。
【0112】
図28は、受電側アレーアンテナ111に接続される回路と、送電側アレーアンテナ221に接続される回路の構成について示す図である。受電側アレーアンテナ111は複数の素子アンテナ11を備え、送電側アレーアンテナ221は複数の素子アンテナ21を備える。各素子アンテナ11は垂直偏波用素子11Vと水平偏波用素子11Hとで構成され、各素子アンテナ21は垂直偏波用素子21Vと水平偏波用素子21Hとで構成される。
【0113】
受電側アレーアンテナの素子アンテナ11には受電側素子アンテナ回路10が接続されている。定常状態において、受電局の位相共役回路14から出力される信号は電力増幅器17で増幅され、垂直偏波用素子11Vへ供給される。
【0114】
各素子アンテナ11の垂直偏波用素子11Vに対して、このように信号が供給されることによって、受電側アレーアンテナ111からビームパイロット信号が送信される。ビームパイロット信号の送信電力は例えば1kWである。
【0115】
送電側アレーアンテナ221の素子アンテナ21には送電側素子アンテナ回路20が接続されている。素子アンテナ21のうち垂直偏波用素子21Vは上記パイロット信号を受信することで受信パイロット信号を出力する。位相共役回路24は受信パイロット信号に対して位相共役関係の信号を出力する。そのため、電力波の周波数はパイロット信号の周波数と同一周波数である。
【0116】
なお、位相共役回路14、位相共役回路24は、基本波発生回路及び二倍波発生回路を備えるが、この基本波発生回路及び二倍波発生回路の源振は共通のGPS衛星等の測位衛星からの電波を基に生成することが有効である。これにより、各送信回路と受信回路において実質的に同一周波数及び位相相関の揃った信号で相関をもった位相共役をとることができる。また、そのことで、マイクロ波受電装置は多数のマイクロ波送電装置からコヒーレントなマイクロ波電力を受電できる。
【0117】
なお、本実施形態において、「同一周波数」とは周波数が完全に同一であることを意味するのではなく、実質的に同一周波数であればよい。つまり、マイクロ波が非常に長い距離を伝搬してもコヒーレント性を失わない波で安定した発振状態が生じる周波数であればよい。
【0118】
上記位相共役回路24の出力信号は電力増幅器27で増幅され、水平偏波用素子21Hへ供給される。
【0119】
送電側アレーアンテナ221の各素子アンテナ21が上記動作を行うことにより、ビーム形成された電力波が送電側アレーアンテナ221から送電される。この電力波の送電電力は例えば1MWである。
【0120】
素子アンテナ11のうち素子11Hは送電側アレーアンテナ221から送信された信号を受信する。この信号は分配器12で分配され、大部分の電力は整流器13で整流されて電力として取り出される。分配された残りの信号は位相共役回路14へ与えられる。位相共役回路14は送電側アレーアンテナ221から受けた信号に対して位相共役関係の信号を出力する。
【0121】
ここで、ビームパイロット信号のアンプ増幅率を30dBとし、ノイズレベルとして30dBのマージンを仮定すれば、アイソレーションレベルとして-60dB以下を達成することが重要である。したがって、送電側アレーアンテナ221の各素子アンテナ21の垂直偏波用素子21Vと水平偏波用素子21Hとの入出力間は-60dB以下のアイソレーションを確保する。受電側アレーアンテナ111の各素子アンテナ11の垂直偏波用素子11Vと水平偏波用素子11Hとの入出力間についても同様に、-60dB以下のアイソレーションを確保する。
【0122】
以上に示したように、受電側アレーアンテナ111から送電側アレーアンテナ221へ送信された信号は送電装置200に対するビームパイロット信号として用いられ、送電側アレーアンテナ221から受電側アレーアンテナ111へ送信された電力波は受電装置100に対するビームパイロット信号として用いられる。このようにして、双方向レトロディレクティブシステムが構成される。
【0123】
そして、上記電力波からビームパイロット信号を生成することで、受電側アレーアンテナ111の垂直偏波用素子11V→伝搬路→送電側アレーアンテナ221の垂直偏波用素子21V→送電側素子アンテナ回路20→送電局の素子アンテナ21の水平偏波用素子21H→伝搬路→受電局の素子アンテナ11の素子11H→受電側素子アンテナ回路10→受電側アレーアンテナ111の垂直偏波用素子11V、の経路による閉ループが構成される。この閉ループが一つの発振回路系を構成する。したがって、パイロット信号を生成するための専用の複雑な回路が不要であるので、装置の構成が簡素化され、低コスト化される。
【0124】
受電側アレーアンテナ111および送電側アレーアンテナ221には、それら自体に、定常動作のためのビームフォーミング制御回路を備えていない。しかし、後に説明するように、送電側アレーアンテナ221の各素子アンテナ21および送電側素子アンテナ回路20の動作によって、送電側アレーアンテナ221は結果的にフェーズドアレーアンテナとして作用する。同様に、受電側アレーアンテナ111の各素子アンテナ11および受電側素子アンテナ回路10の動作によって、受電側アレーアンテナ111は結果的にフェーズドアレーアンテナとして作用する。
【0125】
送電側アレーアンテナ221の各素子アンテナ21の垂直偏波用素子21Vがパイロット信号を受信することにより、その受信信号から、この受信信号の位相共役の関係にある位相共役信号が生成され、この位相共役信号が増幅され、当該素子アンテナの水平偏波用素子21Hが駆動される。このことにより、送電側アレーアンテナ221の各素子アンテナはパイロット信号と位相共役の関係にある電力波を送信する。したがって、相反定理によって、電力波はビームパイロット信号の伝搬経路を逆戻りするように伝搬する。すなわち、ビームパイロット信号と同じ経路で、電力波が受電側アレーアンテナ111へ伝搬する。
【0126】
同様に、受電側アレーアンテナ111の各素子アンテナ11の水平偏波用素子11Hが電力波を受電(受信)することにより、その受信信号から、この受信信号の位相共役の関係にある位相共役信号が生成され、この位相共役信号が増幅され、当該素子アンテナの垂直偏波用素子11Vが駆動される。このことにより、受電側アレーアンテナ111の各素子アンテナは電力波の位相共役の関係にあるパイロット信号を送信する。したがって、相反定理によって、ビームパイロット信号は電力波の伝搬経路を逆戻りするように伝搬する。すなわち、電力波と同じ経路で、ビームパイロット信号が送電側アレーアンテナ221へ伝搬する。
【0127】
ビームパイロット信号と電力波は同じ周波数であるので、伝搬路が周波数依存性を有する場合でも、正確な相反性を期待できる。
【0128】
図29図30は双方向レトロディレクティブ動作によるマイクロ波ビームの収束の様子を示す図である。これらの図中Nはパイロット信号ビームの伝搬及び電力ビームの伝搬の回数を示す。時刻t=0.000msのときN=1であり、時刻t=0.034msのときN=2である。図29図30に表れているように、このパイロット信号の送受及び電力ビームの送受を繰り返す毎にパイロット信号ビーム及び電力ビームは自己収束する。
【0129】
図31は上記繰り返し回数Nに対するビーム収束率η及びエネルギー漏れとの関係を示す図である。このように、パイロット信号ビームの伝搬及び電力ビームの伝搬の回数Nが6を超えるとビーム収束率ηは99%を超え、回数Nが6を超えるとエネルギー漏れは1%を下回る。
【0130】
図32は送電アンテナと受電アンテナとによるSマトリクスの一次元モデルを示す図である。Si,j のiは受電側の素子アンテナの番号であり、jは送電側の素子アンテナの番号である。白丸はアレーアンテナの素子アンテナ、黒丸はアレーアンテナの範囲外に無限に広がる領域に仮想的に配置された素子アンテナである。
【0131】
受電アンテナを入力端、送電アンテナを出力端としたときのSマトリクスをSj,i で表す。各端子は負荷と完全に整合しているものと仮定する。送電側で受けた第N波のパイロット信号は、次式のように、ゲインGjTx で増幅され、基準信号で位相共役操作を受ける。
【0132】
【数2】
【0133】
そして、送電アンテナから再放射された電力を受電アンテナが受け取り、位相共役をとり、更に、増幅することにより、次式で示す第N+1波のパイロット信号となる。
【0134】
【数3】
【0135】
ここで、もしGjTx が一定値GconstTx とすると、第N波のパイロット信号の振幅の平均値と第N+1波のパイロット信号の振幅の平均値は次式で表される。ここでδm,i はクロネッカーのデルタ(単位行列)である。
【0136】
【数4】
【0137】
送電側と受電側の増幅器で電磁界強度が維持されるなら、発振が持続することになる。したがって、発振条件は次式で表される。
【0138】
【数5】
【0139】
このように、送電局、受電局のアレーアンテナと、その間の伝送路とで、構成される空間結合型の発振器を単一の発振器として扱って、一つのループゲインで発振条件が定まるものと見なせる。
【0140】
送電局のアレーアンテナと受電局のアレーアンテナが有限である場合に、この有限のアンテナからの放射波を、無限大のアンテナからの時間反転界の放射と仮想アンテナ領域からの逆相時間反転界とを組み合わせることで表現することができる。これは次式の関係で表される。
【0141】
【数6】
【0142】
上式のうち結論の式中の第2項は仮想アンテナ領域からの逆相戻り波成分であり、スピルオーバー損失に対応する。ビーム形成が速く、スピルオーバー損失が0と見なせる場合は、上記第2項は0であるので、[数6]は上記[数4]と同じ扱いができる。
【0143】
アンテナが小さく、最適状態でもスピルオーバー損失が発生する場合は、まず上記第2項でパイロット信号の分布が最適化される。このことで、漏洩損失があっても、増幅器の増幅率の設定によって発振条件を満たすことができる。
【0144】
このようにして、仮想アンテナ領域からの戻り波成分を消すように自己修復作用がはたらく。
【0145】
図33図34はマイクロ波の伝搬経路中に何らかの理由でマイクロ波の吸収体が存在するときのマイクロ波の伝搬の様子を示す図である。いずれの例でも直径50mの送電アンテナと直径25mの受電アンテナとが5km離れている。図33の例では伝送経路の途中に直径5mのマイクロ波吸収体が存在する。この状態でパイロット信号とマイクロ波電力との98往復時間(2.5ms)後、前述の双方向レトロディレクティブシステムの作用により、送電アンテナでは不均一な電力分布でマイクロ波が送電され、吸収体が存在する部分の場はマイクロ波エネルギーが相殺され、受電アンテナの位置では99.3%の伝送効率でマイクロ波電力を受ける。
【0146】
図34の例では、伝送経路の途中に直径10mのマイクロ波吸収体が存在する。この状態でパイロット信号とマイクロ波電力との148往復時間(3.8ms)後、前述の双方向レトロディレクティブシステムの作用により、送電アンテナでは障害物を避けるようにマイクロ波が放射され、吸収体が存在する箇所ではマイクロ波の散乱と吸収を避けるように吸収体を包み込む場が形成され、受電アンテナの位置では98.2%の伝送効率でマイクロ波電力を受ける。受電アンテナの直径がもう少し大きければ100%に近い伝送効率が得られる。
【0147】
《浮体式洋上マイクロ波電力中継装置》
図35は無給電中継所700の構成を示す正面図である。この無給電中継所700は、マイクロ波ミラー装置701、浮体706、スクリュー702、鉄柱703及び錘705を備える。鉄柱703は浮体706から所定高さにマイクロ波ミラー装置701を支持する。錘705は、その重力と浮体706による浮力とをバランスさせ、マイクロ波ミラー装置701の高さを一定に保つ。基本的な構成は図11に示した無給電中継所700と同様である。
【0148】
図36は無給電中継所700の構成を示す平面図である。マイクロ波ミラー装置701は第1マイクロ波ミラー711,第2マイクロ波ミラー712及びそれらを支持する円柱状の支持体を備える。マイクロ波ミラー装置701のマイクロ波入射部にはレドーム707、出射部にはレドーム708が設けられている。
【0149】
ちなみに、通信に用いられる数m程度のパラボラアンテナであれば円錐状(傘状)の樹脂板でレドームを構成できるが、低漏洩性が要求され且つ非常に大型の電力伝送用のレドームでは、そのような構成をとることは現実的に不可能である。すなわち、レドームの寸法が非常に大きいので、補強用の支持体が必要となるが、その補強用支持体でマイクロ波が反射・吸収してしまって大きな電力損失が生じるので、現実的には補強用支持体を入れることができない。また、従来構造のレドームの厚みを増して強度を高めようとすると、レドームでのマイクロ波の吸収が大きくなってしまう。
【0150】
図36で示すレドーム707,708は厚み寸法が半波長の整数倍の発泡スチロール(登録商標)等の発泡樹脂で構成されている。発泡スチロール等の発泡樹脂は誘電損失や誘電率そのものが小さく反射損失透過損失が小さい。
【0151】
ちなみに、通信に用いられる数m程度のパラボラアンテナのレドームのように、レドームの中央の柱など入れると、強度は保てるが、散乱波が発生してエネルギーが失われる。直径50mのレドームを柱なしで覆うのは困難である。そこで、ここでは発泡スチロール(登録商標)の長さを利用して低損失特性を維持したまま強度を出すようにしている。
【0152】
また、この発泡スチロール(登録商標)はハニカム構造とし、発泡スチロール(登録商標)を完全充填する構造に比べて、より低損失化している。すなわち、誘電率が空気に近いことを利用して空洞を作りながら厚みを稼いでいる。強度はハネカム構造で維持できる。レドーム707,708は直径50mの円形であるので、厚みは例えば5mから10m位とする。
【0153】
レドーム707,708は波風や暴風雨を防ぐ非常に重要な役割を要するので、先頭部分に薄い半波長の樹脂板を設けることによって海水の浸入防止や防塵を行ってもよい。この樹脂板は長い発泡スチロール(登録商標)の表面に貼り付ければよい。この樹脂板の厚さは半波長の整数倍の厚みにすれば完全整合する。マイクロ波電力伝送の場合、周波数帯に広がりがないので、マイクロ波通信でいういわゆる周波数帯域特性を考える必要がなく、正確な設計ができる。先頭の樹脂板は薄くてよく、例えば半波長であればよい。
【0154】
浮体式洋上マイクロ波電力中継装置は送電装置と受電装置との間に一つの無給電中継所700を設けることに限らない。図37は、送電装置200と受電装置100との間に二つの無給電中継所700A,700Bを配置した例を示す図である。無給電中継所700Aは、送電装置200から送電されるマイクロ波エネルギーを最大効率で受けるように配置し、無給電中継所700Bは無給電中継所700Aから送電されるマイクロ波エネルギーを最大効率で受けるように配置する。そして、受電装置100は無給電中継所700Bから最大効率でマイクロ波電力を受電する。このようにして、複数の無給電中継所700の数に比例してマイクロ波電力の伝送距離を延ばすことができる。
【0155】
ここで、入射波に対する反射波の損失は、一般に次の式で表される。
【0156】
Pout/Pin=1 - 2√{(2εo ω)/σ}
Pin:入射波の電力
Pout:反射波の電力
εo:真空誘電率
ω:マイクロ波の周波数
σ:反射板の導電率
反射板が銅である場合、反射板での反射損失は0.03%である。1つの無給電中継所700で2枚の反射板があるので、1つの無給電中継所700での損失は0.06%である。例えば20回の中継で400kmを伝送させても、無給電中継所700を経由することによる電力損失はたかだか1.2%に過ぎない。反射損失以外に誘電体損失もあるが、20回の中継で、受電電力は1.2%~2%程度しか低下しない。このように無給電中継所700ではエネルギー変換していないので、非常に低損失で中継できる。
【0157】
また、無給電中継所700の数に拘わらず、双方向レトロディレクティブ動作により最適な伝送経路が選ばれるので、無給電中継所700を設けることによる伝送効率の低下は抑えられる。
【0158】
図38図39は第1マイクロ波ミラー711と第2マイクロ波ミラー712とにより3軸についての微小回転を相殺するマイクロ波中継器の原理を示す図である。図38は斜視図、図39は平面図である。ここで、反射の基礎方程式から求めた、入射光ベクトルと反射光ベクトルとの関係は次のとおりである。
【0159】
【数7】
【0160】
このように、平行平板であれば、面の法線ベクトルによらず、反射光ベクトルは入射光と同一である。すなわち、任意の傾斜角をもつ平行反射板でビーム方向は保存される。したがって、3軸についてのねじれ回転に強い中継装置が無給電で構成できる。
【0161】
図40はマイクロ波の入射方向に対して一定角度をもって出射する中継器の構成を示す図である。図39等に示した例では、第1マイクロ波ミラー711と第2マイクロ波ミラー712とが平行関係にあって、入射光と出射光とが同方向であったが、第1マイクロ波ミラー711と第2マイクロ波ミラー712とが非平行であってもよい(図40においては、回転ベクトルは2つのミラーに平行である)。そのことにより、無給電中継所700の、水平面に対する垂直軸回りの微小回転に対して方向性を維持できる。
【0162】
図41はマイクロ波ミラーの構成を示す断面図である。マイクロ波ミラーは図41の下部に示す誘電体共振器721及び反射板722を備える。このマイクロ波ミラーは光集フレネルレンズの原理をマイクロ波ビームに適用したものと言える。
【0163】
図41において、上部に誘電体凸レンズとそのフレネルレンズを表している。光学用フレネルレンズでは、レンズセグメントをフラットに配置するが、光の波長では加工精度の限界で、波長単位での精度をもって加工することは不可能である。一方、マイクロ波ミラーでは光に比べて波長が長い。例えば直径51.7mmの光学用誘電体レンズは5.8GHzのマイクロ波では直径50mに相当する。そのため、グレーティングローブをほぼ完全に消すため、1波長毎に連続的に位相を合わせることが可能である。この例では、誘電体共振器の間隔を1波長未満である0.7波長で配置している。このようにして、マイクロ波ではより正確なフレネルレンズ効果を実現できる。このようなマイクロ波ミラーの2枚の反射によって、例えば直径50mのマイクロ波ミラーで10km先にビームウエストが生じるように設計する。
【0164】
図42は誘電体共振器721と反射板722等によるマイクロ波ミラーの一単位の構造を示す図である。球形の誘電体共振器721は、そのTE11モードでの共振を利用する。誘電体共振器の共振周波数ではない周波数の入射波は全反射し、共振周波数の入射波は誘電体共振器と反射板722との間の伝搬導波管を伝搬して1/2波長(1/4波長の往復)遅れて出射する。
【0165】
このような誘電体共振器アンテナの位相制御の設計及び作用は次のとおりである。
【0166】
(1)誘電体共振器の共振周波数でマイクロ波は後方の伝搬導波管と整合する。
【0167】
(2)誘電体共振器の共振周波数でのマイクロ波の通過位相を0°とする。
【0168】
(3)誘電体共振器の共振周波数での反射波は基準面でπとする。すなわち、共振周波数での反射は金属面反射と等価である。
【0169】
(4)誘電体共振器の共振周波数よりずっと低い周波数の電波は基準面で全反射し、その反射位相は+180°である。
【0170】
(5)誘電体共振器の共振周波数よりずっと高い周波数の電波は基準面で全反射し、その反射位相は-180°である。
【0171】
(6)動作周波数ωooは固定であり、各誘電体共振器の共振周波数ωojを定めることで反射波の位相を定める。
【0172】
誘電体共振器をアンテナ基板上にアレー状に配置し、誘電体共振器のアンテナの中心周波数を、径方向で変化させる。このことにより、図41に示した360度の位相差をもつフレネルレンズ型マイクロ波ミラーを構成する。
【0173】
図43はマイクロ波ミラーの他の例を示す図である。図41図42に示した例では、誘電体共振器の後方に伝搬導波管を備えたものであったが、図43に示すマイクロ波ミラーは、この伝搬導波管を備えない。
【0174】
図43は誘電体共振器721と反射板722等によるマイクロ波ミラーの一単位の構造を示す図である。図43に示す例では、誘電体共振器721は半球形であり、その後方(球の切断面相当面)に金属の反射板722が配置されている。誘電体共振器721はTE011モードで共振する。
【0175】
図43に示した構造の誘電体共振器アンテナの場合、マイクロ波の周波数が誘電体共振器721の共振周波数でも非共振周波数でも金属面反射する。非共振周波数ではそのまま金属面反射し、共振周波数に近づくほど位相がずれた状態で金属面反射する。つまり、誘電体共振器721の共振周波数の設定により、マイクロ波の反射波の位相を定めることができる。
【0176】
マイクロ波ミラーにおいて中央に近い誘電体共振器721ほど、その共振周波数がマイクロ波の周波数からずれていて、マイクロ波ミラーにおいて周辺部に近い誘電体共振器721ほど、その共振周波数がマイクロ波の周波数に近い(共振する)ほうがよい。
【0177】
マイクロ波ビームの断面でのエネルギー分布はガウス状分布であることが好ましいが、上述のとおり、エネルギー密度の高い、マイクロ波ミラーの中央ほど、その共振周波数がマイクロ波の周波数からずれていることにより、誘電体共振器721による誘電体損が低損失になるので、上述の誘電体共振器721の共振周波数の設定により、マイクロ波ミラー全体で効果的に低損失化できる。
【0178】
図42図43に示した誘電体共振器の共振周波数は、内部に空洞を形成する、表面の一部を削る、直径を変える、といった方法で調整することができる。
【0179】
以上に述べたとおり、高精度な機械加工で凹面反射板を形成するのではなく、フラットな金属反射板に誘電体共振器721を配列して、誘電体共振器721による経路差によって反射位相を設定するので、高い機械加工精度が不要である。また、機械加工によって大口径の凹面反射板を作成できたとしても、そのような大口径の反射板は温度によって歪みが生じやすい。それに対しフラットな金属板は高精度に作成できる。さらに、一般に大型部材の幾何学的寸法を高精度に測定することは非常に困難であるが、本実施形態では、機械加工及び幾何学的寸法の測定によってレンズを形成するのではなく、各誘電体共振器721の共振周波数は電気的計測によって極めて高精度に測定できる。そのため、所定共振周波数の誘電体共振器アンテナを容易に形成でき、高精度なフレネルレンズ型マイクロ波ミラーが容易に得られる。
【0180】
最後に、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形および変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0181】
例えば、洋上エネルギー収集システムは、複数の浮体式発電装置とこれら複数の浮体式発電装置とは分離されたプラットフォームとを含んで構成され、浮体式発電装置は洋上での浮遊状態で発電する発電部と、当該発電部による発電電力をマイクロ波で送電するマイクロ波送電部と、をそれぞれ備え、プラットフォームは、浮体式発電装置のマイクロ波送電部から送電されたマイクロ波をそれぞれ受電するマイクロ波受電部を備え、マイクロ波送電部及びマイクロ波受電部は、それぞれ複数の素子アンテナが配列されたアレーアンテナを有し、マイクロ波受電部は、パイロット信号を送信し、マイクロ波送電部から送電される電波を受電する受電部側素子アンテナ回路を備え、マイクロ波送電部は、パイロット信号を受信し、当該パイロット信号の位相共役の関係にある位相共役信号を生成し、当該位相共役信号でマイクロ波送電部の素子アンテナを駆動することで、レトロディレクティブ動作で送電電力をマイクロ波受電部へ送電する、送電部側素子アンテナ回路を備えることにより、マイクロ波受電部が、各浮体式発電装置から周波数及び位相が揃ったコヒーレントなマイクロ波を受電する、という片方向レトロディレクティブ動作によりマイクロ波電力を送電するようにしてもよい。
【0182】
また、風力発電、太陽光エネルギー以外に、またはそれらと共に波力を再生可能エネルギーとして用いてもよい。
【0183】
また、図1図5、に示した例では、逆円錐形状のマイクロ波ミラー510とドーナツ状の受電アンテナ520を設けたが、マイクロ波ミラーを用いずに円筒状の受電アンテナを設けてもよい。但し、受電アンテナ520が円筒状であると、その端部に近づく程マイクロ波が斜めに入射するので受電効率は低下する。逆円錐形状のマイクロ波ミラー510とドーナツ状の受電アンテナ520の組み合わせであれば、逆円錐形状のマイクロ波ミラー510にはマイクロ波が斜めに入射しても全反射するので、マイクロ波ミラー510による効率低下は無く、受電アンテナの利得低下を抑制できる。また、そのことにより、受電アンテナのアンテナ素子数が少なくて済む。
【0184】
また、図1に示した受電アンテナ520は「マイクロ波電力の受電」に限らず「マイクロ波電力の送電」のために用いてもよい。例えば、浮体式洋上風力発電装置300が風力以外のエネルギーを要する場合に、プラットフォーム500から浮体式洋上風力発電装置300へマイクロ波で電力を伝送してもよい。
【0185】
また、図1では送電装置200Aがプラットフォーム500から陸地の受電装置へマイクロ波で電力を送電する例について示したが、送電装置200Aを受電装置として用いてもよい。
【0186】
また、図1等に示した例では、インバースダム600は浮体式洋上風力発電装置300から集めたエネルギーを蓄積するように説明したが、プラットフォーム500に設けた受電装置が陸地からマイクロ波電力を受電し、そのエネルギーをインバースダム600に蓄積してもよい。
【0187】
本発明の洋上エネルギー収集システムは次に記載の各態様で提供されてもよい。
【0188】
<1>
複数の浮体式発電装置とこれら複数の浮体式発電装置とは分離されたプラットフォームとを含んで構成され、
前記複数の浮体式発電装置は洋上での浮遊状態で発電する発電部と、当該発電部による発電電力をマイクロ波で送電するマイクロ波送電部と、をそれぞれ備え、
前記プラットフォームは、前記複数の浮体式発電装置の前記マイクロ波送電部から送電されたマイクロ波をそれぞれ受電するマイクロ波受電部を備え、
前記マイクロ波送電部及び前記マイクロ波受電部は、それぞれ複数の素子アンテナが配列されたアレーアンテナを有し、
前記マイクロ波受電部は、パイロット信号を送信し、前記マイクロ波送電部から送電される電波を受電する受電部側素子アンテナ回路を備え、
前記マイクロ波送電部は、前記パイロット信号を受信し、当該パイロット信号の位相共役の関係にある位相共役信号を生成し、当該位相共役信号で前記マイクロ波送電部の素子アンテナを駆動することで、レトロディレクティブ動作で送電電力を前記マイクロ波受電部へ送電する、送電部側素子アンテナ回路を備え、
前記マイクロ波受電部は、前記複数の浮体式発電装置から周波数及び位相が揃ったコヒーレントなマイクロ波を受電する、
洋上エネルギー収集システム。
【0189】
<2>
複数の浮体式発電装置とこれら複数の浮体式発電装置とは分離されたプラットフォームとを含んで構成され、
前記複数の浮体式発電装置は洋上での浮遊状態で発電する発電部と、当該発電部による発電電力をマイクロ波で送電するマイクロ波送電部と、をそれぞれ備え、
前記プラットフォームは、前記複数の浮体式発電装置の前記マイクロ波送電部から送電されたマイクロ波をそれぞれ受電するマイクロ波受電部を備え、
前記マイクロ波送電部及び前記マイクロ波受電部は、それぞれ複数の素子アンテナが配列されたアレーアンテナを有し、
前記マイクロ波送電部は、前記マイクロ波受電部から送信された電波を受信することによる、前記マイクロ波送電部の素子アンテナの受信信号から、当該受信信号の位相共役の関係にある位相共役信号を生成し、当該位相共役信号で前記マイクロ波送電部の素子アンテナを駆動することで、前記マイクロ波受電部から送信された電波をパイロット信号とするレトロディレクティブ動作で送電電力を前記マイクロ波受電部へ送電する、送電部側素子アンテナ回路を備え、
前記マイクロ波受電部は、前記マイクロ波送電部から送信された電波を受信することによる、前記マイクロ波受電部の素子アンテナの受信信号から、当該受信信号の位相共役の関係にある位相共役信号を生成し、当該位相共役信号で前記マイクロ波受電部の素子アンテナを駆動することで、前記マイクロ波送電部から送電された電波をパイロット信号とするレトロディレクティブ動作で送信信号を前記マイクロ波送電部へ送信する、受電部側素子アンテナ回路を備え、
前記マイクロ波送電部でのレトロディレクティブ動作と前記マイクロ波受電部でのレトロディレクティブ動作とが繰り返されることで、前記マイクロ波送電部から送電される電波および前記マイクロ波受電部から送信される電波のいずれも、漏洩エネルギーを常に最少状態に保つビームである自己収束ビームで伝送される、
洋上エネルギー収集システム。
【0190】
<3>
前記マイクロ波受電部及び前記マイクロ波送電部は、前記プラットフォームの面に対する鉛直線を軸とする逆円錐面を有するマイクロ波反射板と、当該マイクロ波反射板の下部に配置されたドーナツ状のマイクロ波アンテナと、を備える、
<1>又は<2>に記載の洋上エネルギー収集システム。
【0191】
<4>
前記複数の浮体式発電装置と、前記プラットフォームと、前記複数の浮体式発電装置及び前記プラットフォームの海域に存在する船舶と、を含んで構成され、
前記プラットフォームは前記マイクロ波受電部で受電した電力を送電するマイクロ波送電部を備え、
前記船舶は、前記プラットフォームに設けられた前記マイクロ波送電部からマイクロ波を受電するマイクロ波受電装置と、当該マイクロ波受電装置で受電した電力を蓄電する蓄積装置と、を備える、
<1>から<3>のいずれかに記載の洋上エネルギー収集システム。
【0192】
<5>
前記複数の浮体式発電装置と、前記プラットフォームと、陸地に設置された受電設備と、を含んで構成され、
前記プラットフォームは、マイクロ波電力を蓄電する蓄電装置と、当該蓄電装置に蓄電された電力をマイクロ波で送電するマイクロ波送電部と、を備え、
前記受電設備は、前記マイクロ波送電部から送電されたマイクロ波を受電し、受電したマイクロ波エネルギーを前記受電設備が接続された電力網に供給する電力供給装置を備える、
<1>から<3>のいずれかに記載の洋上エネルギー収集システム。
【0193】
<6>
前記複数の浮体式発電装置と、前記プラットフォームと、陸地に設置された送電設備と、を含んで構成され、
前記プラットフォームは前記マイクロ波受電部で受電した電力を送電するマイクロ波送電部を備え、
前記送電設備は、前記プラットフォームの前記マイクロ波受電部へマイクロ波電力を送電するマイクロ波送電装置を備え、
前記プラットフォームは、前記マイクロ波受電部が受電したマイクロ波電力を蓄電する蓄電装置を備える、
<1>から<3>のいずれかに記載の洋上エネルギー収集システム。
【符号の説明】
【0194】
CO…切り欠き
DH…誘電体
GB…基準信号グリッド基板
LP…配線パターン
MB…マイクロ波ビーム
Px1,Px2…磁気結合プローブ
Py1,Py2…磁気結合プローブ
RFU…RFユニット
11,21…素子アンテナ
11H…水平偏波用素子
11V…垂直偏波用素子
12…分配器
13…整流器
14…位相共役回路
17…電力増幅器
20…送電側素子アンテナ回路
21H…水平偏波用素子
21V…垂直偏波用素子
24…位相共役回路
27…電力増幅器
100…受電装置
100A,100B,100C…受電装置
111…受電側アレーアンテナ
111C…アレーアンテナ
111P…アレーアンテナ
200…送電装置
200A,200B…送電装置
210…マイクロ波ミラー
210A,210B…マイクロ波ミラー
221…送電側アレーアンテナ
221B…送電側アレーアンテナ
221C…パイロット信号受信用アレーアンテナ
221P…アレーアンテナ
300…浮体式洋上風力発電装置
301…風車
302X,302Y…スクリュー
303…鉄柱
304…水槽
304C…空洞
304W…淡水
305…錘
306…発電機
307X,307Y…電動機
311…送電アンテナ
500…プラットフォーム
501…タンク
510…マイクロ波ミラー
520…受電アンテナ
530…太陽光発電パネル
540…変電所
600…インバースダム
601…第1水槽
602…第2水槽
603…電動揚水機
604,605…連通路
606…発電機
607…錘
608…スクリュー
610…機械室
700…無給電中継所
700A,700B…無給電中継所
701…マイクロ波ミラー装置
702…スクリュー
703…鉄柱
705…錘
706…浮体
707,708…レドーム
711…第1マイクロ波ミラー
712…第2マイクロ波ミラー
721…誘電体共振器
722…反射板
800…船舶
810…受電アンテナ
【要約】
【課題】再生可能エネルギーの有効利用を可能とする洋上エネルギー収集システムを提供する。
【解決手段】洋上エネルギー収集システムは複数の浮体式発電装置とこれら複数の浮体式発電装置とは分離されたプラットフォームとを含んで構成される。浮体式発電装置は洋上での浮遊状態で発電する発電部と、当該発電部による発電電力をマイクロ波で送電するマイクロ波送電部と、をそれぞれ備える。プラットフォームは浮体式発電装置のマイクロ波送電部から送電されたマイクロ波をそれぞれ受電するマイクロ波受電部を備える。マイクロ波送電部及びマイクロ波受電部には複数の素子アンテナが配列されたアレーアンテナを有する。マイクロ波送電部は、レトロディレクティブ動作で送電電力をマイクロ波受電部へ送電し、マイクロ波受電部は複数の浮体式発電装置から周波数及び位相が揃ったコヒーレントなマイクロ波を受電する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43