(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】矯正的歯配列形状の生成方法及び装置
(51)【国際特許分類】
A61C 7/00 20060101AFI20240222BHJP
A61C 7/08 20060101ALI20240222BHJP
A61C 13/36 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
A61C7/00
A61C7/08
A61C13/36
(21)【出願番号】P 2022542378
(86)(22)【出願日】2020-11-09
(86)【国際出願番号】 KR2020015590
(87)【国際公開番号】W WO2021145544
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2022-07-11
(31)【優先権主張番号】10-2020-0006053
(32)【優先日】2020-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519401435
【氏名又は名称】ディーディーエイチ インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】DDH INC.
【住所又は居所原語表記】21Dong 105-1Ho,101,Daehak-ro,Jongno-gu Seoul 03080,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】ホ、ス ボク
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジュ ハン
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ソン ジュ
(72)【発明者】
【氏名】ムン、ジュン モ
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2005-0082526(KR,A)
【文献】特表2006-500999(JP,A)
【文献】特表2018-526035(JP,A)
【文献】特表2014-519392(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0175068(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0039028(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 7/00
A61C 7/08
A61C 13/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサーと、前記プロセッサーにより実行可能なコマンドを少なくとも格納するメモリと、を少なくとも備えた矯正的歯配列形状の生成装置において、
歯列矯正のための矯正的歯配列形状を生成する方法
であって、
前記プロセッサーに、ユーザーの歯形状情報
が入力される
入力ステップと、
前記プロセッサーによって、前記歯形状情報に基づいて、前記ユーザーの上顎及び下顎のうちの少なくとも一方において、既に設定された範囲内の各歯の特定のポイント
が抽出
される
抽出ステップと、
前記プロセッサーによって、前記特定のポイントを結んだユーザーアーチフォーム(arch form)とデータベースに格納された複数の標準アーチフォームと
が比較
される
比較ステップと、
前記プロセッサーによって、前記比較の結果に基づいて、前記格納された複数の標準アーチフォームのうち、前記ユーザーアーチフォームと最も類似する標準アーチフォーム
が選択
される
選択ステップと、
前記プロセッサーによって、前記選択された標準アーチフォームに基づいて、矯正的歯配列形状
が生成
される
生成ステップと、を含む
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記特定のポイントは、
各歯の顔面軸点(Facial Axis Point;FA point)であ
る
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プロセッサーによって、前記抽出された各歯の特定のポイント
が基準平面に投影
される
投影ステップをさらに含み、
前記比
較ステップは、
前記基準平面に投影された前記特定のポイントを結んだユーザーアーチフォーム(arch form)を前記複数の標準アーチフォームと比較することにより行われる
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記投
影ステップは、
既に設定された範囲内の各歯の顔面軸点を決定するステップと、
任意の基準点を基準として、前記決定された各顔面軸点の3次元上の座標を算出するステップと、
前記算出された座標を用いて、前記基準平面を生成するステップと、
前記生成された基準平面に前記各顔面軸点を投影し、前記基準平面の上に投影された各顔面軸点の2次元上の座標を算出するステップと、を含む
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記基準平面を生成するステップは、
前記各顔面軸点からの垂直距離の和が最小となる基準平面を生成するものである
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記基準平面を生成するステップは、
前記各顔面軸点からの垂直距離e
1~e
nにより表わされる、次のような公式:
【数1】
により算出されるE値が最小となる基準平面を生成するものである
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記複数の標準アーチフォームは、
複数の正常咬合標本を対象として統計学的分析を通して分類されたものであって、x軸及びy軸から構成される2次元平面上において3次関数で表わされる
請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記複数の標準アーチフォームは、
【数2】
のような3次関数で表わされ、各標準アーチフォームごとに互いに異なる係数β
1及びβ
2を有する
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記比
較ステップは、
前記各歯の顔面軸点を結んだユーザーアーチフォームと最も類似するように前記3次関数で表わされる曲線を決定し、前記決定された曲線と前記複数の標準アーチフォームとを比較するものである
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記比
較ステップは、
複数の標準アーチフォームと前記ユーザーアーチフォームとが重なり合うことにより生成されるスペースの面積もしくは距離の最小値に基づいて、前記ユーザーアーチフォームと最も類似する曲線を決定するものである
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記選
択ステップは、
前記各標準アーチフォームの係数β
1及びβ
2と前記曲線の係数β
1及びβ
2との差に基づいて、前記決定された曲線と最も類似する曲率を有する標準アーチフォームを選択するものである
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記
入力ステップは、
前記ユーザーの複数の歯と歯茎を互いに区別するステップを含む
請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記複数の標準アーチフォームは、
上顎と下顎のそれぞれに対して、互いに異なる係数β
1及びβ
2値を有する3つの標準アーチフォームを備える
請求項8に記載の方法。
【請求項14】
プロセッサーと、
前記プロセッサーにより実行可能なコマンドを格納するメモリと、
を備え、
前記プロセッサーは、前記コマンドを実行することにより、ユーザーの歯形状情報を取得し、取得された歯形状情報に基づいて、前記ユーザーの上顎及び下顎のうちの少なくとも一方において、既に設定された範囲内の各歯の特定のポイントを抽出し、抽出された各歯の特定のポイントを基準平面に投影し、前記特定のポイントを結んだアーチフォーム(arch form)とデータベースに格納された複数の標準アーチフォームとを比較し、前記比較の結果に基づいて、前記格納された複数の標準アーチフォームのうち、前記アーチフォームと最も類似する標準アーチフォームを選択し、前記選択された標準アーチフォームに基づいて矯正的歯配列形状を生成する
ことを特徴とする矯正的歯配列形状の生成装置。
【請求項15】
前記特定のポイントは、
各歯の顔面軸点(Facial Axis Point;FA point)である
請求項14に記載の矯正的歯配列形状の生成装置。
【請求項16】
前記プロセッサーは、
前記抽出された各歯の特定のポイントを基準平面に投影し、前記基準平面に投影された前記特定のポイントを結んだユーザーアーチフォーム(arch form)を前記複数の標準アーチフォームと比較する
請求項15に記載の矯正的歯配列形状の生成装置。
【請求項17】
前記プロセッサーは、
既に設定された範囲内の各歯の顔面軸点を決定し、任意の基準点を基準として、前記決定された各顔面軸点の3次元上の座標を算出し、前記算出された座標を用いて、前記基準平面を生成し、前記生成された基準平面に前記各顔面軸点を投影し、前記基準平面の上に投影された各顔面軸点の2次元上の座標を算出する
請求項16に記載の矯正的歯配列形状の生成装置。
【請求項18】
前記プロセッサーは、
前記各顔面軸点からの垂直距離の和が最小となる基準平面を生成する
請求項17に記載の矯正的歯配列形状の生成装置。
【請求項19】
前記プロセッサーは、
前記各顔面軸点からの垂直距離e
1~e
nにより表わされる、次のような公式:
【数3】
により算出されるE値が最小となる基準平面を生成する
請求項18に記載の矯正的歯配列形状の生成装置。
【請求項20】
前記複数の標準アーチフォームは、
複数の正常咬合標本を対象として統計学的分析を通して分類されたものであって、x軸及びy軸から構成される2次元平面上において3次関数で表わされる
請求項15に記載の矯正的歯配列形状の生成装置。
【請求項21】
前記複数の標準アーチフォームは、
【数4】
のような3次関数で表わされ、各標準アーチフォームごとに互いに異なる係数β
1及びβ
2を有する
請求項20に記載の矯正的歯配列形状の生成装置。
【請求項22】
前記プロセッサーは、
前記各歯の顔面軸点を結んだユーザーアーチフォームと最も類似するように前記3次関数で表わされる曲線を決定し、前記決定された曲線と前記複数の標準アーチフォームとを比較する
請求項21に記載の矯正的歯配列形状の生成装置。
【請求項23】
前記プロセッサーは、
複数の標準アーチフォームと前記ユーザーアーチフォームとが重なり合うことにより生成されるスペースの面積もしくは距離の最小値に基づいて、前記ユーザーアーチフォームと最も類似する曲線を決定する
請求項22に記載の矯正的歯配列形状の生成装置。
【請求項24】
前記プロセッサーは、
前記各標準アーチフォームの係数β
1及びβ
2と前記曲線の係数β
1及びβ
2との差に基づいて、前記決定された曲線と最も類似する曲率を有する標準アーチフォームを選択する
請求項23に記載の矯正的歯配列形状の生成装置。
【請求項25】
前記プロセッサーは、
前記ユーザーの複数の歯と歯茎を互いに区別する
請求項14に記載の矯正的歯配列形状の生成装置。
【請求項26】
前記複数の標準アーチフォームは、
上顎と下顎のそれぞれに対して、互いに異なる係数β
1及びβ
2値を有する3つの標準アーチフォームを備える
請求項21に記載の矯正的歯配列形状の生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、ユーザーの歯並びを矯正するための矯正的歯配列形状を生成するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、医療もしくは美容の目的で歯の位置をきれいに整える歯牙矯正もしくは歯列矯正が行われている。歯列矯正は、単に歯並びを整えて位置のずれた歯をきれいに揃えるだけではなく、成長過程及び生活過程において生じ得る様々な骨格的不調和を改善して正常的な歯の機能を発揮できるようにして健やかな口腔組織を提供することを目的とする。骨格的不調和は、ユーザーの外貌だけではなく、顔面の骨格構造にまで影響を及ぼすため、重要な治療対象の一つである。
【0003】
歯列矯正過程において、歯が正しい位置に、もしくは、正常の角度にて位置決められるようにするために、一般に、歯に所定の力を加えて歯を歯槽骨内において所望の位置に移動させる治療が提供される。歯列矯正治療は、多種多様な方法により行われることができ、その一例として、メタル製やセラミック製のブラケットとワイヤーを用いた歯列矯正装置が用いられることが挙げられる。歯列矯正装置を用いる場合、矯正の対象となる各歯の表面にブラケットを固定し、矯正用のワイヤーを多数のブラケットにつないで、ワイヤーの弾性もしくは復元力を用いて歯に矯正力を与えてずれた歯を次第に矯正することができる。
【0004】
様々な形態の歯列矯正装置が提供される歯列矯正過程において、ユーザーの歯並びを矯正するための目標となる標準の歯配列形状及びそれに基づいて歯列矯正装置を製造するための矯正的歯配列形状の生成が求められることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
開示された実施形態は、ユーザーの歯並びを矯正するための矯正的歯配列形状を生成するための方法及び装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係る歯列矯正のための矯正的歯配列形状を生成する方法は、ユーザーの歯形状情報を取得するステップと、前記取得された歯形状情報に基づいて、前記ユーザーの上顎及び下顎のうちの少なくとも一方において、既に設定された範囲内の各歯の特定のポイントを抽出するステップと、前記抽出された各歯の特定のポイントを基準平面に投影するステップと、前記特定のポイントを結んだユーザーアーチフォーム(arch form)とデータベースに格納された複数の標準アーチフォームとを比較するステップと、前記比較の結果に基づいて、格納された複数の標準アーチフォームのうち、ユーザーアーチフォームと最も類似する標準アーチフォームを選択するステップと、前記選択された標準アーチフォームに基づいて、矯正的歯配列形状を生成するステップと、を含む。
好ましくは、前記特定のポイントは、各歯の顔面軸点(Facial Axis Point;FA point)であってもよい。
【0007】
また、好ましくは、前記抽出された各歯の特定のポイントを基準平面に投影するステップをさらに含み、前記比較するステップは、前記基準平面に投影された前記特定のポイントを結んだユーザーアーチフォーム(arch form)を前記複数の標準アーチフォームと比較することにより行われてもよい。
【0008】
さらに、好ましくは、前記投影するステップは、既に設定された範囲内の各歯の顔面軸点を決定するステップと、任意の基準点を基準として、前記決定された各顔面軸点の3次元上の座標を算出するステップと、前記算出された座標を用いて、前記基準平面を生成するステップと、前記生成された基準平面に前記各顔面軸点を投影し、前記基準平面の上に投影された各顔面軸点の2次元上の座標を算出するステップと、を含んでいてもよい。
さらにまた、好ましくは、前記基準平面を生成するステップは、前記各顔面軸点からの垂直距離の和が最小となる基準平面を生成するものであってもよい。
【0009】
さらにまた、好ましくは、前記基準平面を生成するステップは、前記各顔面軸点からの垂直距離e1~enにより表わされる、次のような公式により算出されるE値が最小となる基準平面を生成するものであってもよい。
【0010】
【0011】
さらにまた、好ましくは、前記複数の標準アーチフォームは、複数の正常咬合標本を対象として統計学的分析を通して分類されたものであって、x軸及びy軸から構成される2次元平面上において3次関数で表わされてもよい。
【0012】
さらにまた、好ましくは、前記複数の標準アーチフォームは、
【0013】
【0014】
のような3次関数で表わされ、各標準アーチフォームごとに互いに異なる係数β1及びβ2を有していてもよい。
【0015】
さらにまた、好ましくは、前記比較するステップは、前記各歯の顔面軸点を結んだユーザーアーチフォームと最も類似するように前記3次関数で表わされる曲線を決定し、前記決定された曲線と前記複数の標準アーチフォームとを比較するものであってもよい。
【0016】
さらにまた、好ましくは、前記比較するステップは、複数の標準アーチフォームと前記ユーザーアーチフォームとが重なり合うことにより生成されるスペースの面積もしくは距離の最小値に基づいて、前記ユーザーアーチフォームと最も類似する曲線を決定するものであってもよい。
【0017】
さらにまた、好ましくは、前記選択するステップは、前記各標準アーチフォームの係数β1及びβ2と前記曲線の係数β1及びβ2との差に基づいて、前記決定された曲線と最も類似する曲率を有する標準アーチフォームを選択するものであってもよい。
【0018】
さらにまた、好ましくは、前記ユーザーの歯形状情報を取得するステップにおいては、前記ユーザーの複数の歯と歯茎を互いに区別する作業をさらに行ってもよい。
【0019】
さらにまた、好ましくは、前記複数の標準アーチフォームは、上顎と下顎のそれぞれに対して、互いに異なる係数β1及びβ2値を有する3つの標準アーチフォームを備えていてもよい。
【0020】
本発明の一実施形態に係る矯正的歯配列形状の生成装置は、プロセッサーと、前記プロセッサーにより実行可能なコマンドを格納するメモリと、を備え、前記プロセッサーは、前記コマンドを実行することにより、ユーザーの歯形状情報を取得し、前記取得された歯形状情報に基づいて、前記ユーザーの上顎及び下顎のうちの少なくとも一方において、既に設定された範囲内の各歯の特定のポイントを抽出し、前記抽出された各歯の特定のポイントを基準平面に投影し、前記特定のポイントを結んだアーチフォーム(arch form)とデータベースに格納された複数の標準アーチフォームとを比較し、前記比較の結果に基づいて、前記格納された複数の標準アーチフォームのうち、前記アーチフォームと最も類似する標準アーチフォームを選択し、前記選択された標準アーチフォームに基づいて矯正的歯配列形状を生成する。
【0021】
好ましくは、前記特定のポイントは、各歯の顔面軸点(Facial Axis Point;FA point)であってもよい。
【0022】
また、好ましくは、前記プロセッサーは、前記抽出された各歯の特定のポイントを基準平面に投影し、前記基準平面に投影された前記特定のポイントを結んだユーザーアーチフォーム(arch form)を前記複数の標準アーチフォームと比較してもよい。
【0023】
さらに、好ましくは、前記プロセッサーは、既に設定された範囲内の各歯の顔面軸点を決定し、任意の基準点を基準として、前記決定された各顔面軸点の3次元上の座標を算出し、前記算出された座標を用いて、前記基準平面を生成し、前記生成された基準平面に前記各顔面軸点を投影し、前記基準平面の上に投影された各顔面軸点の2次元上の座標を算出してもよい。
さらにまた、好ましくは、前記プロセッサーは、前記各顔面軸点からの垂直距離の和が最小となる基準平面を生成してもよい。
【0024】
さらにまた、好ましくは、前記プロセッサーは、前記各顔面軸点からの垂直距離e1~enにより表わされる、次のような公式により算出されるE値が最小となる基準平面を生成してもよい。
【0025】
【0026】
さらにまた、好ましくは、前記複数の標準アーチフォームは、複数の正常咬合標本を対象として統計学的分析を通して分類されたものであって、x軸及びy軸から構成される2次元平面上において3次関数で表わされてもよい。
【0027】
さらにまた、好ましくは、前記複数の標準アーチフォームは、
【0028】
【0029】
のような3次関数で表わされ、各標準アーチフォームごとに互いに異なる係数β1及びβ2を有していてもよい。
【0030】
さらにまた、好ましくは、前記プロセッサーは、前記各歯の顔面軸点を結んだユーザーアーチフォームと最も類似するように前記3次関数で表わされる曲線を決定し、前記決定された曲線と前記複数の標準アーチフォームとを比較してもよい。
【0031】
さらにまた、好ましくは、前記プロセッサーは、複数の標準アーチフォームと前記ユーザーアーチフォームとが重なり合うことにより生成されるスペースの面積もしくは距離の最小値に基づいて、前記ユーザーアーチフォームと最も類似する曲線を決定してもよい。
【0032】
さらにまた、好ましくは、前記プロセッサーは、前記各標準アーチフォームの係数β1及びβ2と前記曲線の係数β1及びβ2との差に基づいて、前記決定された曲線と最も類似する曲率を有する標準アーチフォームを選択してもよい。
【0033】
さらにまた、好ましくは、前記プロセッサーは、前記ユーザーの複数の歯と歯茎を互いに区別してもよい。
【0034】
さらにまた、好ましくは、前記複数の標準アーチフォームは、上顎と下顎のそれぞれに対して、互いに異なる係数β1及びβ2値を有する3つの標準アーチフォームを備えていてもよい。
【発明の効果】
【0035】
上述した本発明の様々な実施形態によれば、ユーザーの歯並びを矯正するための矯正的歯配列形状をユーザーの歯並びにより速やかに、しかも、便利かつ正確に生成して適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
この開示は、次の詳細な説明とそれに伴われる図面との結び付けにより容易に理解することができ、参照番号(reference numerals)は、構造的な構成要素(structural elements)を意味する。
【0037】
【
図1】一実施形態による矯正的歯配列形状の生成装置を示すブロック図である。
【
図2】一実施形態による矯正的歯配列形状の生成方法を説明するための手順図である。
【
図3】一実施形態によるアーチフォームを説明するための図である。
【
図4】一実施形態による顔面軸点(Facial Axis Point)の決定方法を説明するための図である。
【
図5】一実施形態による複数の歯に対する顔面軸点の設定方法を説明するための図である。
【
図6b】は、一実施形態による複数の歯に対する顔面軸点の3次元座標を決定する方法を説明するための図である。
【
図7】一実施形態による基準平面を設定する方法を説明するための図である。
【
図8b】は、一実施形態による標準アーチフォームを説明するための図である。
【
図9】一実施形態による基準平面の上に新たに設定される顔面軸点の2次元座標を説明するための図である。
【
図10】一実施形態による顔面軸点の2次元座標に応じた3次関数曲線を決定する方法を説明するための図である。
【
図11】一実施形態による顔面軸点の3次関数曲線と標準アーチフォームとを比較する方法を説明するための図である。
【
図12】一実施形態による矯正的歯配列形状の生成システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、添付図面に基づいて、本発明の好適な実施形態について詳しく説明する。このとき、添付図面において、同一の構成要素は、できる限り同一の符号にて示しているということに留意すべきである。なお、本発明の要旨を曖昧にする虞がある公知の機能及び構成についての詳しい説明は省略する。
【0039】
この開示の一部の実施形態は、機能的なブロック構成及び様々な処理段階により表わされ得る。これらの機能ブロックの一部もしくは全部は、特定の機能を実行する様々な数のハードウェア及び/又はソフトウェアの構成により実現可能である。例えば、この開示の機能ブロックは、一つ以上のマイクロプロセッサーにより実現されてもよく、所定の機能のための回路構成により実現されてもよい。また、例えば、この開示の機能ブロックは、様々なプログラミングもしくはスクリプト言語により実現可能である。機能ブロックは、一つ以上のプロセッサーにおいて起動されるアルゴリズムにより実現可能である。なお、この開示は、電子的な環境設定、信号処理、及び/又はデータ処理などのために従来の技術を採用することができる。
【0040】
また、この明細書に記載されている「部」、「モジュール」などの用語とは、少なくとも一つの機能や動作を処理する単位のことをいい、これは、ハードウェアもしくはソフトウェアにより実現されてもよく、ハードウェアとソフトウェアとの結合により実現されてもよい。「部」、「モジュール」は、アドレッシング可能な記憶媒体に記憶され、プロセッサーにより起動可能なプログラムにより実現されてもよい。
【0041】
例えば、「部」、「モジュール」は、ソフトウェア構成要素、オブジェクト指向ソフトウェア構成要素、クラス構成要素及びタスク構成要素などの構成要素と、プロセス、関数、属性、プロシージャ、サブルーチン、プログラムコードのセグメント、ドライバー、ファームウェア、マイクロコード、回路、データ、データベース、データ構造、テーブル、アレイ及び変数により実現可能である。
【0042】
明細書の全般に亘って、ある部分が他の部分と「連結もしくは接続」されているとしたとき、これは、「直接的に連結もしくは接続」されている場合のみならず、これらの間に装置を挟んで「間接的に連結もしくは接続」されている場合をも含む。なお、明細書の全般に亘って、ある部分がある構成要素を「備える」としたとき、これは、特に断りのない限り、他の構成要素を除外するわけではなく、他の構成要素をさらに備えていてもよいということを意味する。
【0043】
また、図面に示されている構成要素同士の接続線もしくは接続部材は、機能的な接続及び/又は物理的もしくは回路的な接続を例示的に示したものに過ぎない。実際の装置においては、置き換え可能であるか、あるいは、追加された様々な機能的な接続、物理的な接続、または回路接続により構成要素同士の接続が表わされ得る。
【0044】
本明細書において用いた用語は、単に特定の実施形態を説明するために用いられたものであり、本発明を限定しようとする意図はない。単数の表現は、文脈からみて明らかに他の意味を有さない限り、複数の言い回しを含む。本明細書において、「備える」または「有する」などの用語は、明細書に記載の特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在するということを指定するものに過ぎず、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加の可能性を予め排除しないものと理解すべきである。すなわち、本発明において、特定の構成要素を「備える」と述べる内容は、当該構成要素以外の構成要素を排除するわけではなく、追加的な構成要素が本発明の実施もしくは本発明の技術的思想の範囲に含まれ得るということを意味する。
【0045】
本発明の一部の構成要素は、本発明において本質的な機能を行う必須的な構成要素ではなく、単に性能を向上させるための選択的な構成要素であってもよい。本発明は、単に性能の向上のために用いられる構成要素を除いた本発明の本質を実現する上で欠かせない必須的な構成部のみを備えて実現されてもよく、単に性能の向上のために用いられる選択的な構成要素を除いた必須的な構成要素のみを備えている構造もまた本発明の権利範囲に含まれる。
図1は、一実施形態による矯正的歯配列形状の生成装置を示すブロック図である。
【0046】
図1を参照すると、矯正的歯配列形状の生成装置100は、プロセッサー110と、送受信部120と、メモリ130及びディスプレイ140を備えていてもよい。しかしながら、
図1に示す構成要素がいずれも矯正的歯配列形状の生成装置100の必須的な構成要素であるとは限らない。
図1に示す構成要素よりも多い数の構成要素により矯正的歯配列形状の生成装置100が実現されてもよく、
図1に示す構成要素よりも少ない数の構成要素により矯正的歯配列形状の生成装置100が実現されてもよい。
【0047】
矯正的歯配列形状の生成装置100は、ユーザーの歯形状情報を取得することができる。歯列矯正のためには、矯正の対象となるユーザーの口腔の測定を行うことが必要である。ユーザーの歯形状情報は、ユーザーの口腔内に形成された複数の歯の形状、形成位置及び方向などを含んでいてもよい。歯形状情報は、歯肉ラインの下の歯肉縁下部位を含んでいてもよい。矯正的歯配列形状の生成装置100は、歯形状情報取得部を備えて自らユーザーの歯形状情報を取得してもよく、外部から予め生成されたユーザーの歯形状情報を提供されてもよい。
【0048】
実施形態において、ユーザーの歯形状情報は、スキャン方式により取得可能である。スキャン方式は、光学式3Dスキャナー(Optical 3D Scanner)、治療用のCTなどの情報取得装置を用いてユーザーの口腔内情報を取得し、取得された情報を処理して全体の歯形状情報を取得する方式である。光学式3DスキャナーもしくはCTなどを用いるスキャン方式は、ユーザーの歯もしくは歯茎などに物理的に接触せずとも歯形状情報を取得することができるので、役に立つ方式であるといえる。
【0049】
実施形態において、歯形状情報は、石膏方式により取得されてもよい。石膏方式は、ユーザーの口腔内に硬化される石膏材質の部材を投入し、硬化された形状を通してユーザーの口腔内の歯の歯型模型を作製して歯形状情報を取得する方式である。石膏方式は、患者に不便さを与えてしまう虞があり、スキャン方式に比べて相対的に長い時間が求められる虞がある。
【0050】
スキャン方式もしくは石膏方式により取得された情報は、デジタル処理を通じた3Dモデリングの形態に変換可能である。ユーザーは、ディスプレイ140を用いて、3Dモデリングの形態に変換されて出力された歯形状情報を確認することができる。
【0051】
実施形態において、歯形状情報は、複数の歯及び歯茎の形状をいずれも含んでいてもよい。矯正的歯配列形状の生成装置100は、歯形状情報に含まれている複数の歯及び歯茎を判別して互いに区別することができる。例示的に、矯正的歯配列形状の生成装置100は、歯と歯茎との色調差、明度差、既に設定された境界線などの情報に基づいて、複数の歯及び歯茎を区別することができる。しかしながら、矯正的歯配列形状の生成装置100が区別動作に用いる情報は、上述した例に何ら限定されない。
【0052】
矯正的歯配列形状の生成装置100は、取得された歯形状情報に基づいて、ユーザーの上顎及び下顎のうちの少なくとも一方において、既に設定された範囲内の各歯の特定のポイントを抽出することができる。ここで、特定のポイントは、各歯の顔面軸点(Facial Axis Point;FA point)になり得るが、これについての具体的な内容は、
図4及び
図5と結び付けて後述する。
【0053】
矯正的歯配列形状の生成装置100は、抽出された特定のポイントを基準平面に投影し、基準平面に投影された特定のポイントを結んだユーザーアーチフォームとデータベースに格納された複数の標準アーチフォームとを比較することができる。ここで、基準平面は、各歯の顔面軸点からの垂直距離の和が最小となる平面であってもよい。このとき、矯正的歯配列形状の生成装置100は、各歯の顔面軸点の3次元上の座標を算出し、算出された座標を用いて、各顔面軸点からの垂直距離の和が最小となる基準平面を生成することができる。
【0054】
矯正的歯配列形状の生成装置100は、比較の結果に基づいて、データベースに格納された複数の標準アーチフォームのうち、ユーザーアーチフォームと最も類似する標準アーチフォームを選択することができる。ここで、複数の標準アーチフォームは、正常咬合標本を対象として研究されたアーチフォームに対して統計的なクラスター分析を行って分類されたものであってもよい。複数の標準アーチフォームは、不正咬合者ではなく、通常の正常咬合者の数百人を調べた結果、群集分析を通して非対称などの歪みなしに上手く形成されたアーチフォームから構成された限定的な複数のグループに分類されたものであってもよい。
【0055】
一方、矯正的歯配列形状の生成装置100は、選択された標準の歯配列形状情報に基づいて、矯正的歯配列形状を生成することができる。矯正的歯配列形状は、ユーザーの歯を選択された標準の歯配列形状に変換するための矯正装置をモデリングするための形状である。実施形態において、矯正的歯配列形状は、ユーザーの歯を一括して標準の歯配列形状に変換するように提供されてもよいが、ユーザーの歯に加えられる負担を軽減するために、漸進的に変化するようにし、その全体の変化の狙いが標準の歯配列形状になるように複数回提供されてもよい。
【0056】
プロセッサー110は、矯正的歯配列形状の生成装置100の全般的な動作を制御する。プロセッサー110は、歯配列形状情報を取得しかつ処理するための基本的な算術、ロジック及び入出力演算を行うことにより、少なくとも一つのインストラクションを処理するように構成されてもよい。上述したインストラクションは、メモリ130からプロセッサー110へと提供されてもよい。すなわち、プロセッサー110は、メモリ130などの記録装置に記憶されたプログラムコードに従ってインストラクションを実行するように構成されてもよい。あるいは、インストラクションは、送受信部120を介して矯正的歯配列形状の生成装置100に受信されてプロセッサー110に提供されてもよい。
【0057】
送受信部120は、矯正的歯配列形状の生成装置100とサーバーもしくは外部装置との間の通信を行わせる一つ以上の構成要素を備えていてもよい。
【0058】
メモリ130は、プロセッサー110の処理及び制御のためのプログラムを格納することもでき、矯正的歯配列形状の生成装置100に入力されたり、矯正的歯配列形状の生成装置100から出力されたりするデータを格納することもできる。なお、メモリ130は、複数の標準歯形状情報を含むデータベースを格納することもできる。
【0059】
メモリ130は、フラッシュメモリタイプ(flash memory type)、ハードディスクタイプ(hard disk type)、マルチメディアカードマイクロタイプ(multimedia card micro type)、カードタイプのメモリ(例えば、SDもしくはXDメモリなど)、ランダムアクセスメモリ (RAM:Random Access Memory)、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM:Static Random Access Memory)、読み取り専用のメモリ(ROM:Read-Only Memory)、電気的に消去/プログラムが可能な読み取り専用のメモリ(EEPROM:Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、プログラムが可能な読み取り専用のメモリ(PROM:Programmable Read-Only Memory)、磁気メモリ、磁気ディスク、光ディスクのうちの少なくとも一つのタイプの記憶媒体を含んでいてもよい。
【0060】
ディスプレイ140は、矯正的歯配列形状の生成装置100において処理される情報を表示・出力する。例えば、ディスプレイ140は、ユーザーにユーザーの歯配列形状情報、矯正の狙いとなる標準の歯配列形状情報もしくは歯列矯正装置を生成するための矯正的歯配列形状を提供するためのユーザーインタフェースをディスプレイすることができる。
【0061】
ディスプレイ140は、出力装置の他に、入力装置としても利用可能である。ディスプレイ140は、液晶ディスプレイ(liquid crystal display)、薄膜トランジスター液晶ディスプレイ(thin film transistor-liquid crystal display)、有機発光ダイオード(organic light-emitting diode)、フレキシブルディスプレイ(flexible display)、3次元ディスプレイ(3D display)、電気泳動ディスプレイ(electrophoretic display)のうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0062】
図2は、一実施形態による矯正的歯配列形状の生成方法を説明するための手順図である。
まず、ユーザーの歯形状情報を取得する(S210)。
【0063】
次いで、取得された歯形状情報に基づいて、ユーザーの上顎及び下顎のうちの少なくとも一方において、既に設定された範囲内の各歯の特定のポイントを抽出する(S220)。このとき、特定のポイントは、各歯の顔面軸点になり得る。
次いで、抽出された各歯の特定のポイントを基準平面に投影する(S230)。
【0064】
また、実施形態において、既に設定された範囲内の各歯の顔面軸点を決定し、任意の基準点を基準として、決定された顔面軸点の3次元上の座標を算出してもよい。算出された座標を用いて、各顔面軸点からの垂直距離の和が最小となる基準平面を生成してもよく、生成された基準平面に各顔面軸点を投影し、基準平面の上に投影された各顔面軸点の2次元上の座標を算出してもよい。
【0065】
次いで、特定のポイントを結んだユーザーアーチフォーム(arch form)とデータベースに格納された複数の標準アーチフォームとを比較する(S240)。このとき、各歯の顔面軸点を結んだユーザーアーチフォームと最も類似するように3次関数で表わされる曲線を決定し、決定された曲線と複数の標準アーチフォームとを比較してもよい。
ここで、アーチフォームとは、
図3に示すように、咬合平面(Occlusal plane)上において見られる歯を曲線状に取り囲む弧線のことをいう。
【0066】
次いで、比較の結果に基づいて、格納された複数の標準アーチフォームのうち、ユーザーアーチフォームと最も類似する標準アーチフォームを選択する(S250)。このとき、各標準アーチフォームの係数とユーザーアーチフォームと最も類似するように決定された曲線の係数との差に基づいて、決定された曲線と最も類似する曲率を有する標準アーチフォームを選択してもよい。
【0067】
次いで、選択された標準アーチフォームに基づいて、矯正的歯配列形状を生成する(S260)。
【0068】
図4は、一実施形態による顔面軸点(Facial Axis Point)の決定方法を説明するための図である。
図4は、歯冠(Crown)及び歯根(Root)を有する歯の一例を示す。
【0069】
図4を参照すると、各歯の臨床歯冠(Clinical Crown)の歯肉(Gingiva)と咬合を分離する二等分点、すなわち、図示の軸の交差点に相当する個所が当該歯の顔面軸点となる。矯正的歯配列形状の生成装置100は、各歯の形状に基づいて歯の長軸を判別し、これに基づいて、各歯に対する顔面軸点をユーザーの入力無しにも決定することができる。
図5は、一実施形態による複数の歯に対する顔面軸点の設定方法を説明するための図である。
【0070】
図5を参照すると、各歯に対して顔面軸点が点(point)状に示されているということを確認することができる。上述したように、各歯の顔面軸点を結んだ線は、アーチフォーム(arch form)を意味することもある。
【0071】
また、
図5を参照すると、複数の歯のそれぞれに対する顔面軸点は、互いに独立して選択される。したがって、各歯に対して、予め設定された重み付け値に基づいて各顔面軸点の移動量がそれぞれ計算されることが可能になる。
図6a及び
図6bは、一実施形態による複数の歯に対する顔面軸点の3次元座標を決定する方法を説明するための図である。
【0072】
複数の歯に対してそれぞれ決定された顔面軸点は、3次元スペース上において座標で表わされることもできるが、
図6aに示すように、任意の基準点を基準として各顔面軸点の3次元座標を算出することができる。任意の基準点は、顔面軸点が互いに結ばれて生成されるユーザーアーチフォームの内部に存在するように設定されることが好ましい。
【0073】
図6bを参照すると、任意の基準点からx、y及びz軸を延ばして各顔面軸点の3次元座標を算出することができる。このとき、基準点の3次元座標は、(0,0,0)となる。
図6bは、説明のしやすさのために、上顎に限定して各歯の顔面軸点の3次元座標を示したものである。
図7は、一実施形態による基準平面を設定する方法を説明するための図である。
【0074】
一実施形態において、複数の歯の各顔面軸点の2次元座標を再生成するための基準平面を設定してもよい。ここで、既に設定された範囲内のすべての歯の顔面軸点からの垂直距離の和が最小となる平面が基準平面として設定可能である。
【0075】
具体的に、各顔面軸点f
1~f
nから任意の仮想の平面までの垂直距離をe
1~e
nとすることができる。
図7は、14番の歯~17番の歯の任意の仮想の平面までの垂直距離を示したものである。
このとき、既に設定された範囲内のすべての歯の顔面軸点からの垂直距離の和Eは、次のような公式で表わされ得る。
【0076】
【0077】
このとき、E値が最小となる仮想の平面を基準平面と設定してもよい。
図8a及び
図8bは、一実施形態による標準アーチフォームを説明するための図である。
【0078】
図8aに示すように、複数の標準アーチフォームは、正常咬合標本を対象として研究されたアーチフォームに対して統計的なクラスター分析を行って分類されたものであってもよい。aは上顎に対して、bは下顎に対して分析された標本を示したものである。
【0079】
複数の標準アーチフォームは、不正咬合者ではなく、通常の正常咬合者の数百人を調べた結果、群集分析を通して非対称などの歪みなしに上手く形成されたアーチフォームから構成された限定的な複数のグループに分類されたものであってもよい。
【0080】
図8bを参照すると、標準アーチフォームは、(a)に示すように、上顎に対して3つの標準アーチフォームを備えていてもよく、(b)に示すように、下顎に対しても同様に、3つの標準アーチフォームを備えていてもよい。3つの標準アーチフォームは、少なくとも一つの領域において互いに異なる曲率を有していてもよい。
【0081】
但し、これは単なる例示的なものに過ぎず、実施形態に応じて、上顎及び下顎に対する標準アーチフォームは、3つ以上であってもよい。なお、実施形態に応じて、群集分析の対象となる正常咬合者の人種、性別、年齢分布などに基づいてそれぞれ異なる数及び形状の標準アーチフォームが設定されてもよい。
一方、標準アーチフォームは、x軸及びy軸から構成された2次元平面上において次のような関数で表わされ得る。
【0082】
【0083】
このとき、各標準アーチフォームごとに互いに異なる係数β1及びβ2を有していてもよい。
【0084】
図9は、一実施形態による基準平面の上に新たに設定される顔面軸点の2次元座標を説明するための図である。
【0085】
図9は、既に設定された範囲内の14本の歯(11番~17番、21番~27番)の顔面軸点が2次元の基準平面の上に投影されたことを示したものである。基準平面の上に投影された各顔面軸点は、基準平面上において再設定された2次元の座標(x,y)を有することになる。
【0086】
図10は、一実施形態による顔面軸点の2次元座標に応じた3次関数曲線を決定する方法を説明するための図である。
【0087】
図10に示すように、基準平面の上に投影された各顔面軸点を互いに結んでユーザーアーチフォームを生成してもよい。ユーザーアーチフォームが生成されれば、生成されたユーザーアーチフォームと複数の標準アーチフォームとを比較して、ユーザーアーチフォームと最も類似する標準アーチフォームを選択することができる。
【0088】
具体的に、ユーザーアーチフォームと最も類似するように3次関数で表わされる曲線を決定し、決定された曲線と複数の標準アーチフォームとを比較するような方式で、ユーザーアーチフォームと最も類似する標準アーチフォームを選択することができるが、ユーザーアーチフォームと最も類似するように3次関数で表わされる曲線もまた、上記の数式2による3次関数で表わされ得る。すなわち、ユーザーアーチフォームと最も類似する曲線を有する3次関数の係数β1及びβ2を見出すことができる。
【0089】
一実施形態において、ユーザーアーチフォームと3次関数で表わされる曲線との類似度を判別するために、
図10に示すように、ユーザーアーチフォームと曲線とが重なり合うことにより生成されるスペースn1の面積を用いることができる。係数β
1及びβ
2に応じたn1の面積を計算して、n1の面積が最小となる係数β
1及びβ
2が反映された3次関数に応じた曲線が決定されることが可能になる。
【0090】
図11は、一実施形態による顔面軸点の3次関数曲線と標準アーチフォームとを比較する方法を説明するための図である。
【0091】
図11に示すように、各標準アーチフォームの係数β
1及びβ
2と
図10に基づく過程により算出された曲線の係数β
1及びβ
2との差に基づいて、当該曲線と最も類似する曲率を有する標準アーチフォームを選択することができる。
【0092】
例えば、第1の標準アーチフォームcluster 1のβ
1及びβ
2値はそれぞれa1及びb1であり、第2の標準アーチフォームcluster 2のβ
1及びβ
2値はそれぞれa2及びb2であり、第3の標準アーチフォームcluster 3のβ
1及びβ
2値はそれぞれa3及びb3であってもよい。ここで、β
1及びβ
2値は、正数及び/又は負数であってもよい。
図10に基づく過程により算出された曲線の係数β
1及びβ
2値と標準アーチフォームの係数β
1及びβ
2値とを互いに比較して、係数が最も小さな差を有する標準アーチフォームを選択することができる。
【0093】
図11を参照すると、ユーザーアーチフォームから算出された3次関数曲線と最も類似する標準アーチフォームは、第2の標準アーチフォームまたは第3の標準アーチフォームとなる。この場合、ユーザーアーチフォームから算出された3次関数曲線と最も密接な第2の標準アーチフォームが歯配列形状を生成するための標準アーチフォームとして選択可能である。
【0094】
しかしながら、実施形態に応じて、歯配列形状があまりにもタイトになり過ぎないように余裕空間を持たせるために、当該3次関数曲線を内部に含む曲率を有する第3の標準アーチフォームが選択されることもある。
【0095】
図12は、一実施形態による矯正的歯配列形状の生成システムを示すブロックである。
図12を参照すると、矯正的歯配列形状の生成システム1000は、矯正的歯配列形状の生成装置1100及びサーバー1200を備える。
【0096】
矯正的歯配列形状の生成装置1100は、ユーザーの歯形状情報を取得することができる。矯正的歯配列形状の生成装置1100は、歯形状情報取得部を備えて自らユーザーの歯形状情報を取得することもできれば、外部から予め生成されたユーザーの歯形状情報を提供されることもできる。
実施形態において、ユーザーの歯形状情報は、スキャン方式により取得されてもよく、歯形状情報は、石膏方式により取得されてもよい。
【0097】
矯正的歯配列形状の生成装置1100は、取得された歯形状情報に基づいて、ユーザーの上顎及び下顎のうちの少なくとも一方において、既に設定された範囲内の各歯の特定のポイントを抽出することができる。ここで、特定のポイントは、各歯の顔面軸点(Facial Axis Point;FA point)になり得る。
【0098】
矯正的歯配列形状の生成装置1100は、抽出された特定のポイントを基準平面に投影し、基準平面に投影された特定のポイントを結んだユーザーアーチフォームとデータベースに格納された複数の標準アーチフォームとを比較することができる。ここで、基準平面は、各歯の顔面軸点からの垂直距離の和が最小となる平面であってもよい。
【0099】
矯正的歯配列形状の生成装置1100は、比較の結果に基づいて、データベースに格納された複数の標準アーチフォームのうち、ユーザーアーチフォームと最も類似する標準アーチフォームを選択することができる。ここで、複数の標準アーチフォームは、正常咬合標本を対象として研究されたアーチフォームに対して統計学的なクラスター分析を行って分類されたものであってもよい。
【0100】
一方、矯正的歯配列形状の生成装置1100は、選択された標準の歯配列形状情報に基づいて、矯正的歯配列形状を生成することができる。実施形態において、矯正的歯配列形状は、ユーザーの歯を一括して標準の歯配列形状に変換するように提供されてもよいが、ユーザーの歯に加えられる負担を軽減するために、漸進的に変化するようにし、その全体の変化の狙いが標準の歯配列形状になるように複数回提供されてもよい。
【0101】
サーバー1200は、矯正的歯配列形状の生成装置1100と通信しながら、矯正的歯配列の形成動作に必要とされる情報を矯正的歯配列形状の生成装置1100に提供することができる。また、サーバー1200は、矯正的歯配列形状の生成装置1100から提供される矯正装置のモデリングを格納し、実際に矯正装置として実現するための矯正装置の生成装置にモデリングを提供することができる。
【0102】
一方、上述した実施形態は、コンピューターにて起動可能なプログラムにより作成可能であり、コンピューターにより読み取り可能な媒体を用いて上記のプログラムを動作させる汎用デジタルコンピューターにおいて実現可能である。また、上述した実施形態において用いられたデータの構造は、コンピューターにて読み取り可能な媒体に色々な手段を通じて記録されることが可能である。さらに、上述した実施形態は、コンピューターにより起動されるプログラムモジュールなどのコンピューターにより実行可能なコマンドを含む記録媒体の形態として実現されることが可能である。例えば、ソフトウェアモジュールもしくはアルゴリズムにより実現される方法は、コンピューターにて読み取り可能な、かつ、実行可能なコードもしくはプログラム指令としてコンピューターにて読み取り可能な記録媒体に記憶されることが可能である。
【0103】
コンピューターにて読み取り可能な媒体は、コンピューターによりアクセスできる任意の記録媒体であってもよく、揮発性及び不揮発性の媒体、取り外し型及び非取り外し型の媒体を網羅する。コンピューターにて読み取り可能な媒体は、マグネティック記憶媒体、例えば、読み取り専用のメモリ、フロッピーディスク、ハードディスクなどを含み、光学的な読み取り媒体、例えば、CD―ROM、DVDなどの記憶媒体を含んでいてもよいが、これに何ら制限されない。なお、コンピューターにて読み取り可能な媒体は、コンピューター記憶媒体及び通信媒体を含んでいてもよい。
【0104】
また、コンピューターにて読み取り可能な複数の記録媒体がネットワークにより結ばれたコンピューターシステムに分散されていてもよく、分散された記録媒体に記憶されたデータ、例えば、プログラムコマンド及びコードが少なくとも一台のコンピューターにより実行されてもよい。
【0105】
この開示において説明された特定の実行は、単なる一実施形態に過ぎないものであり、いかなる方法でもこの開示の範囲を限定するものではない。明細書の簡潔さのために、従来の電子的な構成、制御システム、ソフトウェア、及び前記システムの他の機能的な側面の記載は省略されることが可能である。