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特許7441556架橋ヒアルロン酸を利用した薬物送達組成物およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】架橋ヒアルロン酸を利用した薬物送達組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/36 20060101AFI20240222BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20240222BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240222BHJP
   A61K 31/445 20060101ALI20240222BHJP
   A61K 31/245 20060101ALI20240222BHJP
   A61K 31/167 20060101ALI20240222BHJP
   A61K 31/381 20060101ALI20240222BHJP
   A61P 23/02 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
A61K47/36
A61K9/06
A61K45/00
A61K31/445
A61K31/245
A61K31/167
A61K31/381
A61P23/02
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022551561
(86)(22)【出願日】2020-10-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-12
(86)【国際出願番号】 KR2020014829
(87)【国際公開番号】W WO2021172694
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-08-24
(31)【優先権主張番号】10-2020-0023763
(32)【優先日】2020-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】522337381
【氏名又は名称】株式会社 ジェーピー ケアズ
【氏名又は名称原語表記】JP CARES
【住所又は居所原語表記】#708, 52, Sagimakgol-ro, Jungwon-gu, Seongnam-si, Gyeonggi-do, Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ ユンギ
(72)【発明者】
【氏名】チェ ミンヨン
(72)【発明者】
【氏名】ハン ソンイ
(72)【発明者】
【氏名】イ ミョン ヒ
【審査官】高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-510041(JP,A)
【文献】特表2016-524016(JP,A)
【文献】特表2020-512061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる膨潤度を有する2種の架橋ヒアルロン酸ゲルを含む薬物送達組成物であって、
前記異なる膨潤度を有するヒアルロン酸ゲルは、膨潤度差が100%~500%範囲であり、低膨潤度の第1架橋ヒアルロン酸ゲルと高膨潤度の第2架橋ヒアルロン酸ゲルを含み、
前記架橋ヒアルロン酸ゲルは、0.1~5モル%の架橋度を有し、
前記第1架橋ヒアルロン酸ゲルと前記第2架橋ヒアルロン酸ゲルは、3:1~1:3の混合重量比で含まれ、
前記第1架橋ヒアルロン酸ゲルは、膨潤度が50~175%であり、前記第2架橋ヒアルロン酸ゲルは、膨潤度が150~675%であり、
前記薬物送達組成物は、固形分含有量が2重量%の薬物送達組成物試料を0.02Hzで測定した複合粘度が500,000~1,500,000cpであり、弾性係数が150~250pa(1Hz)である、薬物送達組成物。
【請求項2】
薬物は、局所麻酔剤であり、前記薬物送達組成物は、前記薬物の累積放出量が、24時間に55~75重量%、48時間に70~90重量%および72時間に90重量%以上の放出パターンを有するものであり、前記48時間の薬物の累積放出量は前記24時間の薬物の累積放出量より5重量%以上高い放出パターンを有するものである、請求項1に記載の薬物送達組成物。
【請求項3】
前記薬物送達組成物は、膨潤度が100~250%である、請求項1に記載の薬物送達組成物。
【請求項4】
異なる膨潤度を有する2種の架橋ヒアルロン酸ゲルを含む請求項1~3のいずれか一項に記載の薬物送達組成物と、薬物とを含み、前記薬物は、局所麻酔剤である、薬学的組成物。
【請求項5】
前記薬物は、ロピバカイン、ブピバカイン、クロロプロカイン、リドカイン、メピバカイン、プロカイン、テトラカイン、レボブピバカイン、およびアチカインからなる群より選択された1種以上の局所麻酔剤である、請求項4に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記架橋ヒアルロン酸と薬物の合計固形分含有量100重量%を基準として、架橋ヒアルロン酸の固形分含有量は40~90重量%であり、薬物の含有量は10~60重量%である、請求項4に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
アルカリ水溶液下で分子量1,000KDa~2,000KDa範囲のヒアルロン酸またはその塩と、架橋剤とを混合して、少なくとも2の異なる容量で架橋反応を行って、架橋反応物を製造する段階、および
得られた前記架橋反応物を精製および粉砕して、異なる膨潤度を有する少なくとも2種の架橋ヒアルロン酸ゲルを得る段階
を含み、
前記精製および粉砕を異なる容量の架橋反応で得られた各架橋反応物に対して別々に行って異なる膨潤度を有する少なくとも2種の架橋ヒアルロン酸ゲルを得て、前記異なる膨潤度を有する少なくとも2種の架橋ヒアルロン酸ゲルを混合する段階を含む、異なる膨潤度を有する少なくとも2種の架橋ヒアルロン酸ゲルを含む薬物送達組成物の製造方法であって、
前記架橋ヒアルロン酸ゲルは、0.1~5モル%の架橋度を有し、
前記異なる膨潤度を有するヒアルロン酸ゲルは、膨潤度差が100%~500%の範囲であり、低膨潤度を有する第1架橋ヒアルロン酸ゲルと高膨潤度を有する第2架橋ヒアルロン酸ゲルを含むものであり、
前記第1架橋ヒアルロン酸ゲルと前記第2架橋ヒアルロン酸ゲルは、3:1~1:3の混合重量比で含まれ、
前記第1架橋ヒアルロン酸ゲルは、膨潤度が50~175%であり、前記第2架橋ヒアルロン酸ゲルは、膨潤度が150~675%であり、
前記薬物送達組成物は、固形分含有量2重量%の薬物送達組成物試料を0.02Hzで測定した複合粘度が500,000~1,500,000cpであるものであり、弾性係数が150~250pa(1Hz)であり、
異なる膨潤度を有する少なくとも2種の架橋ヒアルロン酸ゲルを含む薬物送達組成物の製造方法。
【請求項8】
前記薬物送達組成物は、膨潤度が100~250%である、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記薬物送達組成物は、薬物の累積放出量が、24時間に55~75重量%、48時間に70~90重量%および72時間に90重量%以上の放出パターンを有するものであり、前記48時間の薬物の累積放出量は前記24時間の薬物の累積放出量より5重量%以上高い放出パターンを有するようにし、前記薬物は、局所麻酔剤である、請求項7に記載の製造方法。
【請求項10】
前記第1架橋ヒアルロン酸ゲルは、架橋反応容量が100~800mLであり、前記第2架橋ヒアルロン酸ゲルは、3~50mLの容量で架橋反応を行ったものである、請求項7に記載の製造方法。
【請求項11】
前記第1架橋ヒアルロン酸ゲルは、前記架橋反応物を篩で1次粉砕、精製および篩で2次粉砕する工程で製造されるものである、請求項7に記載の製造方法。
【請求項12】
前記第2架橋ヒアルロン酸ゲルは、前記架橋反応物を精製および篩で粉砕する工程で製造されるものである、請求項7に記載の製造方法。
【請求項13】
前記架橋反応物を製造する段階は、分子量が1,000KDa~2,000KDaの範囲のヒアルロン酸と架橋剤0.3~1.3モル%との架橋反応を行うものである、請求項7に記載の製造方法。
【請求項14】
前記架橋剤は、ブタンジオールジグリシジルエーテル(1,4-butandiol diglycidyl ether:BDDE)、エチレングリコールジグリシジルエーテル(ethylene glycol diglycidyl ether:EGDGE)、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(1,6-hexanediol diglycidyl ether)、プロピレングリコールジグリシジルエーテル(propylene glycol diglycidyl ether)、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(polypropylene glycol diglycidyl ether)、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル(polytetramethylene glycol diglycidyl ether)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(neopentyl glycol diglycidyl ether)、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(polyglycerol polyglycidyl ether)、ジグリセロールポリグリシジルエーテル(diglycerol polyglycidyl ether)、グリセロールポリグリシジルエーテル(glycerol polyglycidyl ether)、トリメチルプロパンポリグリシジルエーテル(tri-methylpropane polyglycidyl ether)、ビスエポキシプロポキシエチレン(1,2-(bis(2,3-epoxypropoxy)ethylene)、ペンタエリトリトールポリグリシジルエーテル(pentaerythritol polyglycidyl ether)およびソルビトールポリグリシジルエーテル(sorbitol polyglycidyl ether)からなる群より選択される1種以上である、請求項7に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋ヒアルロン酸を利用した薬物送達組成物およびその製造方法に関し、前記薬物送達組成物と薬物とを含む。
【背景技術】
【0002】
ヒアルロン酸は、自己質量に対して最大1,000倍の水分吸着力を有しているが、架橋されていないヒアルロン酸単独では生体内で数日内に分解され、薬物送達効果が微々である点などから薬物送達体の役割を大きく期待することは難しかった。
【0003】
このようなヒアルロン酸自体の短い半減期を補完するために既存のヒアルロン酸に相対的に高い比率の架橋剤(BDDE)を使用して架橋ヒアルロン酸ゲルを形成したが、これは体内使用時に副作用の発生確率が高い。体内副作用の発生確率を減少させるために、架橋剤比率を下げるとヒアルロン酸の持続性と物性を維持し難くなるが、架橋剤比率を低めても持続性および物性を維持するのに主要な事項はヒアルロン酸の精製にある。
【0004】
従来はヒアルロン酸を精製する前に1次粉砕を通じて精製時間を短縮させたが、精製時に架橋ヒアルロン酸ゲルが膨潤されて物性を低下させる短所があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一例は、目的とする放出特性挙動を有し、異なる膨潤度を有する2種の架橋ヒアルロン酸を含む薬物送達組成物およびその製造方法を提供することにその目的がある。
【0006】
本発明の追加一例は、異なる膨潤度を有する2種の架橋ヒアルロン酸を含む薬物送達組成物と薬物を含む薬学的組成物を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、2以上の架橋ヒアルロン酸を利用した薬物送達組成物およびその製造方法と、前記薬物送達組成物と薬物を含んで目的とする放出特性挙動を有する薬学的組成物に関する。
【0008】
本発明は、ヒアルロン酸の粉砕を最小化させながら物性を増加させる架橋および精製技術を適用した架橋ヒアルロン酸を薬物送達体で開発して、生体内の分解期間および薬物の放出速度を調節し、1回の投与でも十分な薬効を引き出して施術便宜性の確保および患者により効果的かつ安全な痛症管理を引き出すことができる。また架橋ヒアルロン酸ゲルとは膨潤度(Swelling Ratio)が異なるゲルを混合してヒアルロン酸ゲルの分解速度を段階的に調節して薬物の放出速度を一定に維持することができる技術を実現することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、ヒアルロン酸の粉砕を最小化させながら、物性を増加させる架橋および精製技術を適用した架橋ヒアルロン酸を薬物送達体で開発して、生体内の分解期間および薬物の放出速度を調節し、1回投与でも十分な薬効を引き出して施術便宜性の確保および患者により効果的かつ安全な痛症管理を引き出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一例により製造された架橋ヒアルロン酸に対する膨潤度を確認した結果である。
図2】実施例1で製造された架橋ヒアルロン酸に対する弾性係数(G’)を確認した結果である。
図3】実施例1で製造された架橋ヒアルロン酸に対する複合粘度(cp)を確認した結果である。
図4】実施例2で製造された架橋ヒアルロン酸に対する膨潤度を確認した結果である。
図5】実施例2で製造された架橋ヒアルロン酸に対する弾性係数(G’)を確認した結果である。
図6】実施例2で製造された架橋ヒアルロン酸に対する複合粘度(cp)を確認した結果である。
図7】実施例1で製造された架橋ヒアルロン酸に対するブピバカインの薬物放出挙動を示すグラフである。
図8】実施例2で製造された架橋ヒアルロン酸に対するロピバカインの薬物放出挙動を示すグラフである。
図9】実施例2で製造された架橋ヒアルロン酸(Voferon-L60)とロピバカインを含む薬物製剤を実験動物に投与後、機械的異痛程度(閾値)を測定した結果を示すグラフである。
図10】実施例2で製造された架橋ヒアルロン酸(Voferon-L60)とロピバカインを含む薬物製剤を実験動物に投与後、投与部位周辺の筋肉および座骨神経を観察した結果である。
図11】実施例2で製造された架橋ヒアルロン酸(Voferon-L60)とロピバカインを含む薬物製剤を投与した後に、経過時間による試験群Ge、GfおよびGgの血中ロピバカインの濃度を測定した結果を示すグラフであり、SCは0.9%塩化ナトリウム、VoはVoferon-L60、Roはロピバカインを意味する。
図12】実施例2で製造された架橋ヒアルロン酸(Voferon-L60)とロピバカインを含む薬物製剤を投与した後に、薬物投与後の試験群Ge、GfおよびGgのAUC(血中濃度-時間曲線下の面積)平均を測定した結果を示すグラフであり、AUC0-48hrは48時間の面積平均を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一例は、異なる膨潤度を有する2種の架橋ヒアルロン酸を含む薬物送達組成物であって、前記異なる膨潤度を有するヒアルロン酸は、膨潤度差が100%~500%範囲を有し、低膨潤度を有する第1架橋ヒアルロン酸と高膨潤度を有する第2架橋ヒアルロン酸を含むものである。
【0012】
前記薬物送達組成物は、(1)固形分含有量2重量%の薬物送達組成物の試料を0.02Hzで測定した複合粘度が500,000~1,500,000cp、(2)弾性係数が150~250pa(1Hz)および(3)膨潤度100~250%からなる群より選択された1以上の物性を有するものであり得る。
【0013】
前記異なる膨潤度を有する2種の架橋ヒアルロン酸は、膨潤度差が100%~500%の範囲であり、低膨潤度の第1架橋ヒアルロン酸と高膨潤度の第2架橋ヒアルロン酸を含むことができ、具体的に前記第1架橋ヒアルロン酸は、膨潤度50~175%を有し、第2架橋ヒアルロン酸は、膨潤度150~675%を有するものであり得る。本発明で架橋ヒアルロン酸の膨潤度は、下記数式1で表すことができ、より詳しくは、架橋反応物の精製および粉砕で得られた架橋ヒアルロン酸2gを25mLのリン酸緩衝溶液に添加し、2,000rpmで5分間遠心分離し、上澄液を除去した後、膨潤されたヒアルロン酸ゲル重量を測定し、下記数式1で得られる。下記数式1で初期測定された架橋ヒアルロン酸のゲルの重量は、リン酸緩衝溶液を投入する前の重量であり、例えば架橋反応物の精製および粉砕を経た産物として、固形分含有量が0.5~5.0重量%または1.0~5.0重量%であり、水の含有量が95.0~99.0重量%または95.0~99.5重量%であるものであり得る。
[数式1]
膨潤度(%)=(膨潤された架橋ヒアルロン酸ゲルの重量/初期測定された架橋ヒアルロン酸のゲルの重量)×100
【0014】
本発明による薬物送達組成物の弾性係数(G’)は、レオメーター(rheometer)を使用して0.02Hz~1Hzの振動数範囲で測定することができ、複合粘度はレオメーター(rheometer)を使用して0.02Hz~1Hzの振動数範囲で測定することができる。
【0015】
前記低膨潤度の第1架橋ヒアルロン酸と高膨潤度の第2架橋ヒアルロン酸は、分子量が1,000KDa~2,000KDaの範囲のヒアルロン酸と架橋剤0.3~1.3モル%を利用した架橋反応、精製および粉砕工程を含む方法で製造され得る。具体的に、異なる膨潤度を有する2種の架橋ヒアルロン酸は、架橋反応を行う段階で、異なる反応容量で架橋反応を行って精製および粉砕工程を経て製造され得る。
【0016】
例えば、第1架橋ヒアルロン酸は、架橋反応の容量が100~800mL、好ましくは150~800mL、150~700mL、150~600mL、150~550mL、200~800mL、200~700mL、200~600mL、200~550mL、250~800mL、250~700mL、250~600mL、または250~550mLであり得る。前記第1架橋ヒアルロン酸は、低膨潤度を有し、例えば前記膨潤度が50~175%のものであり得る。前記第2架橋ヒアルロン酸は、架橋反応の容量が3~50mL、好ましくは5~30mLであり得、前記第2架橋ヒアルロン酸は、高膨潤度を有し、例えば前記膨潤度が150~675%のものであり得る。好ましくは、低膨潤度を有する第1架橋ヒアルロン酸と高膨潤度を有する第2架橋ヒアルロン酸との膨潤度差は100%~500%であり得る。
【0017】
本発明による薬物送達組成物は、異なる膨潤度を有する2種の架橋ヒアルロン酸を含み、前記異なる膨潤度を有するヒアルロン酸は、膨潤度差が100%~500%範囲であり、低膨潤度の第1架橋ヒアルロン酸と高膨潤度の第2架橋ヒアルロン酸を含むものである。具体的な一例において、前記薬物送達組成物に含まれる低膨潤度の第1架橋ヒアルロン酸と高膨潤度の第2架橋ヒアルロン酸との混合重量比(第1架橋ヒアルロン酸:第2架橋ヒアルロン酸)は、5:1~1:5、4:1~4:1、3:1~1:3、2:1~1:2、1:1~5、1:1~4、1:1~3、1:1~2、または1:1であり得る。
【0018】
本発明による薬物送達組成物は、薬物を含んで特定の薬物放出挙動を示す薬学的組成物の製造に使用することができる。したがって、本発明のまた他の一例は、本発明による異なる膨潤度を有する2種の架橋ヒアルロン酸を含む薬物送達組成物と薬物を含む薬学的組成物を提供する。
【0019】
本発明による薬物送達組成物と薬物、例えば局所痲酔剤を含む薬学的組成物の累積薬物放出量が24時間に55~75重量%、48時間に70~90重量%および72時間に90重量%以上であり、ただし、前記48時間の薬物累積放出量は24時間の薬物累積放出量との差が5重量%以上である薬物放出パターンを有する。例えば、好ましくは、24時間の間累積薬物放出量は、57~75重量%、59~75重量%、または60~75重量%であり得、前記48時間の累積薬物放出量は、75~90重量%、77~90重量%、80~90重量%、80重量%以上~90重量%未満、75~87重量%、77~87重量%、または80~87重量%であり得、ただし、前記48時間の薬物累積放出量は24時間の薬物累積放出量と差が5重量%以上である薬物放出パターンを有する。
【0020】
本発明による異なる膨潤度を有する2種以上の架橋ヒアルロン酸を含む薬物送達組成物と薬物を含む薬学的組成物において、架橋ヒアルロン酸と薬物の合計固形分含有量100重量%を基準として、架橋ヒアルロン酸の固形分含有量は40~90重量%であり、前記薬物の含有量は、10~60重量%であり得る。具体的に、薬学的組成物において架橋ヒアルロン酸と薬物の合計固形分含有量100重量%を基準として、架橋ヒアルロン酸の固形分含有量は45~90重量%、50~90重量%、55~90重量%、60~90重量%、65~90重量%、70~90重量%、45~87重量%、50~87重量%、55~87重量%、60~87重量%、65~87重量%、70~87重量%、45~85重量%、50~85重量%、55~85重量%、60~85重量%、65~85重量%、または70~85重量%であり得、薬物の固形分含有量は10~55重量%、10~50重量%、10~45重量%、10~40重量%、10~35重量%、10~30重量%、1355重量%、13~50重量%、13~45重量%、13~40重量%、13~35重量%、13~30重量%、15~55重量%、15~50重量%、15~45重量%、15~40重量%、15~35重量%、または15~30重量%であり得る。
【0021】
前記薬物は目的とする放出挙動を達成すれば特に制限なしに使用することができ、例えばロピバカイン、ブピバカイン、クロロプロカイン、リドカイン、メピバカイン、プロカイン、テトラカイン、レボブピバカイン、およびアチカインからなる群より選択された1種以上の局所麻酔剤であり得る。前記薬学的組成物が局所痲酔剤を含む場合、局所痲酔剤の含有量は、添加剤(塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム、注射用水、塩酸)を含む1mLを基準として、0.01~3重量%、0.05~3重量%、0.075~3重量%、0.1~3重量%、0.01~1重量%、0.05~1重量%、0.075~1重量%、0.1~1重量%、0.01~0.5重量%、0.05~0.5重量%、0.075~0.5重量%、または0.1~0.5重量%であり得る。
【0022】
本発明において、ヒアルロン酸は、N-アセチル-D-グルコサミンとD-グルクロン酸からなる繰り返し単位が線形で連結されている生体高分子物質であり、本発明でヒアルロン酸は、ヒアルロン酸自体、その塩またはこれらの組み合わせを全て含む意味で使用される。前記ヒアルロン酸の塩は、例えばヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸カリウム、ヒアルロン酸カルシウム、ヒアルロン酸マグネシウム、ヒアルロン酸亜鉛、ヒアルロン酸コバルトなどの無機塩と、ヒアルロン酸テトラブチルアンモニウムなどの有機塩が全て含まれるものであるが、これに限定されるのではない。本発明では、ヒアルロン酸自体、またはその塩を単独で、またはヒアルロン酸自体、またはその塩を2種以上組み合わせて使用することができる。本発明において、前記ヒアルロン酸の分子量は、分子量1,000KDa~2,000KDa範囲であり得る。
【0023】
架橋ヒアルロン酸重合体または架橋ヒアルルロン酸誘導体は、前記のようなヒアルロン酸自体またはその塩を架橋剤を使用して架橋させて製造することができる。架橋のためには、アルカリ水溶液下で架橋剤を使用する方法を使用することができる。前記アルカリ水溶液としては、NaOH、KOH、好ましくはNaOH水溶液を使用することができ、これに制限されるのではない。この時、NaOH水溶液の場合、0.25N~5Nの濃度で使用することができる。
【0024】
また前記架橋されたヒアルロン酸誘導体は、固形分含有量2重量%の薬物送達組成物の試料を0.02Hzで測定した複合粘度が500,000~1,500,000cpであるものであり得る。
【0025】
前記架橋剤は、二つまたはそれ以上のエポキシ作用基を含む化合物であって、多様であり、好ましい例としてブタンジオールジグリシジルエーテル(1,4-butandiol diglycidyl ether:BDDE)、エチレングリコールジグリシジルエーテル(ethylene glycol diglycidyl ether:EGDGE)、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(1,6-hexanediol diglycidyl ether)、プロピレングリコールジグリシジルエーテル(propylene glycol diglycidyl ether)、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(polypropylene glycol diglycidyl ether)、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル(polytetramethylene glycol diglycidyl ether)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(neopentyl glycol diglycidyl ether)、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(polyglycerol polyglycidyl ether)、ジグリセロールポリグリシジルエーテル(diglycerol polyglycidyl ether)、グリセロールポリグリシジルエーテル(glycerol polyglycidyl ether)、トリメチルプロパンポリグリシジルエーテル(tri-methylpropane polyglycidyl ether)、ビスエポキシプロポキシエチレン(1,2-(bis(2,3-epoxypropoxy)ethylene)、ペンタエリトリトールポリグリシジルエーテル(pentaerythritol polyglycidyl ether)およびソルビトールポリグリシジルエーテル(sorbitol polyglycidyl ether)などが挙げられ、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルが特に好ましい。
【0026】
本発明による架橋ヒアルロン酸と架橋剤を利用した架橋方法において、架橋剤0.3~1.3モル%、好ましくは0.35~1.0モル%を使用することができる。
【0027】
本発明で用語「架橋度(degree of crosslinking)」は、ヒアルロン酸基質組成物の架橋結合された部分内のヒアルロン酸単量体単位に対する架橋結合剤の%重量比と定義される。これはヒアルロン酸単量体の重量比に対する架橋結合剤の重量比で測定される。本発明では特に、このようなヒアルロン酸の架橋度(MOD、Degree of Modification、mol%)が前記のような架橋剤による架橋を通じて0.1モル%~5モル%、0.2~5モル%、0.25~5モル%、0.3~5モル%、0.35~5モル%、0.4~5モル%、0.1モル%~3モル%、0.2~3モル%、0.25~3モル%、0.3~3モル%、0.35~3モル%、0.4~3モル%、0.1モル%~2モル%、0.2~2モル%、0.25~2モル%、0.3~2モル%、0.35~2モル%、0.4~2モル%、0.1モル%~1モル%、0.2~1モル%、0.25~1モル%、0.3~1モル%、0.35~1モル%、0.4~1モル%、具体的に0.1モル%~5モル%、0.2~4モル%、0.3~3モル%、0.4~2モル%または0.4~1モル%であり得る。
【0028】
本発明の一例による異なる膨潤度を有する少なくとも2種の架橋ヒアルロン酸を含む薬物送達組成物の製造方法は、
(a)アルカリ水溶液下で分子量1,000KDa~2,000KDa範囲のヒアルロン酸またはその塩と、架橋剤0.3~1.3モル%とを混合して、少なくとも2以上の異なる容量で架橋反応を行って架橋反応物を製造する段階、および
(b)前記得られた架橋反応物を精製および粉砕して、異なる膨潤度を有する少なくとも2種以上の架橋ヒアルロン酸を得る段階
を含むことができる。
【0029】
本発明による方法で製造された前記架橋ヒアルロン酸誘導体は、固形分含有量が0.5~5.0重量%または1.0~5.0重量%であり、水の含有量が95.0~99.0重量%または95.0~99.5重量%であるものであり得る。
【0030】
前記(a)架構反応物を製造する段階は、具体的に0.25~2.5Nの塩基性水溶液、例えばNaOH水溶液に対して1~30重量%の濃度でヒアルロン酸またはその塩を入れ、前記ヒアルロン酸に対して0.3~1.3モル%、好ましくは0.35~1.0モル%の架橋剤を添加してヒアルロン酸またはその塩と均質な状態で混合して、少なくとも2以上の異なる容量で架橋反応を行って架橋反応物を製造することができる。具体的な一様態として、前記段階でヒアルロン酸と架橋剤の架橋反応は、10~60℃、より好ましくは20~50℃、最も好ましくは25~40℃で行うことができる。
【0031】
前記製造方法の段階(a)の架橋反応は、異なる容量で架橋反応を行う。例えば第1架橋ヒアルロン酸は、架橋反応の容量が100~800mL、好ましくは150~800mL、150~700mL、150~600mL、150~550mL、200~800mL、200~700mL、200~600mL、200~550mL、250~800mL、250~700mL、250~600mL、または250~550mLであり得る。前記第1架橋ヒアルロン酸は、低膨潤度を有し、例えば前記膨潤度50~175%を有するものであり得る。前記第2架橋ヒアルロン酸は、架橋反応の容量が3~50mL、好ましくは5~30mLであり得、前記第2架橋ヒアルロン酸は、高膨潤度を有し、例えば前記膨潤度150~675%を有するものであり得る。好ましくは低膨潤度を有する第1架橋ヒアルロン酸と高膨潤度を有する第2架橋ヒアルロン酸との膨潤度差は、100%~500%であり得る。
【0032】
前記(b)異なる膨潤度を有する少なくとも2種以上の架橋ヒアルロン酸を得る段階は、前記段階(a)で得られた架橋反応物を精製および/または粉砕する段階を行って異なる膨潤度を有する少なくとも2以上の架橋ヒアルロン酸を得る。前記精製および粉砕を異なる容量の架橋反応で得られた各架橋反応物に対して別途に行い、異なる膨潤度を有する少なくとも2種以上の架橋ヒアルロン酸を得ることができる。
【0033】
前記段階(b)で低膨潤度を有する第1架橋ヒアルロン酸は、架橋反応の容量が100~800mLであり得、前記得られた比較的大きい反応容量の架橋反応物を孔径500~2,000μm、例えば孔径1000μmの篩を利用して予備粉砕して予備粉砕物を得る。前記予備粉砕物を精製して未反応架橋剤を除去し、pHを6.5~7.5水準で安定化することができる。架橋剤などを除去するために洗浄水を利用して架橋ヒアルロン酸を洗浄することができ、洗浄水は食塩水またはリン酸緩衝溶液などを使用することができるが、特に制限されない。
【0034】
前記精製された粉砕物を孔径が20μm~500μm、50μm~500μm、100μm~500μm、150μm~500μm、200μm~500μm、20μm~450μm、50μm~450μm、100μm~450μm、150μm~450μm、または200μm~450μm、例えば孔径350μmの篩を通過させて行うことができる。
【0035】
前記段階(b)で高膨潤度を有する第2架橋ヒアルロン酸は、3~50mLの容量で架橋反応を行った架橋反応物を得て、粉砕工程なしに精製工程を行って未反応架橋剤を除去してpHを6.5~7.5水準で安定化した。前記段階(b)で架橋剤などを除去するために洗浄水を利用して架橋ヒアルロン酸を洗浄することができ、洗浄水は食塩水またはリン酸緩衝溶液などを使用することができるが、特に制限されない。高膨潤度を有する第2架橋ヒアルロン酸が架橋反応物は、精製を完了した後に、粉砕工程を行い、前記粉砕は孔径が20μm~500μm、50μm~500μm、100μm~500μm、150μm~500μm、200μm~500μm、20μm~450μm、50μm~450μm、100μm~450μm、150μm~450μm、または200μm~450μm、例えば孔径350μmの篩を通過させて行うことができる。
【0036】
前記予備粉砕、精製および粉砕工程を行った後に得られる第1架橋ヒアルロン酸の固形分含有量は、2.0重量%以下、または1.5重量%以下、例えば0.5~2.0重量%、0.5~1.5重量%、1.0~1.5重量%、または1.1~1.4重量%であり、残りは水の含有量であり得る。前記精製および粉砕工程を行った後に得られる第2架橋ヒアルロン酸の固形分含有量は、1.5重量%以上、2.0重量%以上、または2.5重量%以上、例えば1.5~5.0重量%、2.0~5.0重量%、2.5~5.0重量%、または3.0~5.0重量%であり得、総100重量%中で前記固形分含有量を除いた残りは水の含有量であり得る。
【0037】
前記異なる膨潤度を有するヒアルロン酸は、膨潤度差が100%~500%範囲を有し、低膨潤度を有する第1架橋ヒアルロン酸と高膨潤度を有する第2架橋ヒアルロン酸を含むものであり得、または前記第1架橋ヒアルロン酸は、膨潤度50~175%を有し、第2架橋ヒアルロン酸は、膨潤度150~675%を有するものであり得る。
【0038】
前記製造方法の前記段階(b)は、精製および粉砕を異なる容量の架橋反応で得られた架橋反応物に対して別途に行い、異なる膨潤度を有する少なくとも2種以上の架橋ヒアルロン酸を得て、追加的に前記異なる膨潤度を有する少なくとも2種以上の架橋ヒアルロン酸を混合する段階を含むものであり得る。前記第1架橋ヒアルロン酸は、前記架橋反応物を篩で1次粉砕、精製および篩で2次粉砕する工程で製造され得る。また、前記第2架橋ヒアルロン酸は、前記架橋反応物を精製しおよび篩で粉砕する工程で製造されるものであり得る。
【0039】
前記方法で製造された薬物送達組成物は、製品の固形分含有量で調整し、容器充填、滅菌および包装工程を追加的に含めて製造され得る。
【実施例
【0040】
下記の実施例を挙げて本発明をより詳しく説明するが、本発明の範囲が下記の実施例に限定される意図ではない。
【0041】
実施例1:架橋ヒアルロン酸の製造および物性評価
1-1:架橋ヒアルロン酸の製造
1,500,000Daの分子量を有する非架構ヒアルロン酸(繰り返し単位の分子量401.3)100重量部を0.25N NaOH溶液400重量部に溶解して20重量%のヒアルロン酸溶液を製造した。前記ヒアルロン酸溶液に架橋剤である1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(1,4-butanediol diglycidyl ether、BDDE)を0.7モル%の比率で添加して、それぞれ4個の異なる容量で反応を行い、具体的にJPD001は400mL、JPD002は5mL、JPD003は15mL、およびJPD004は25mLの容量体積で分注して室温で24時間架橋反応を行い、異なる容量を有する架橋反応物を得た。
【0042】
前記架橋反応の完了後、JPD001は孔径1,000μmの篩で通過させて粉砕することによって、各粉砕物の直径が約1,000μmになるように1次粉砕物を得た。以降、前記JPD001の1次粉砕物をリン酸緩衝溶液で数回洗浄して未反応BDDEを除去し、pHを6.5~7.5水準で安定化し、精製にかかった時間は24時間であった。
【0043】
また、前記架橋反応が完了したJPD002、JPD003およびJPD004反応物は、粉砕過程なしにそのままリン酸緩衝溶液で数回洗浄して未反応BDDEを除去し、pHを6.5~7.5水準で安定化した。前記精製工程にかかった時間はJPD002およびJPD003反応物は約36時間であり、JPD004反応物は約72時間であった。
【0044】
前記得られた4種類の反応物(JPD001、JPD002、JPD003、JPD004)に対して孔径(pore size)300μmの篩を通過させて粉砕し、固形分の含有量を大韓薬典の乾燥減量試験方法で測定した。前記粉砕後に得られた反応物の固形分含有量は、JPD001は1.4wt/wt%、JPD002は2.2wt/wt%、JPD003は2.5wt/wt%、JPD004は3.9wt/wt%であった。
【0045】
固形分含有量2.0重量%の試料製品を製造するために、JPD001反応物は前記架橋反応の原料として使用した非架構ヒアルロン酸を添加して2.0重量%に合わせ、JPD002、JPD003、JPD004反応物は、固形分含有量が2.0重量%を超えるため、PBSを添加して2.0重量%に希釈して固形分含有量が2.0重量%になるようにした。前記得られた4種類の試料は121℃で20分間滅菌して架橋ヒアルロン酸ゲルを製造した。
【0046】
前記精製および粉砕されたJPD002~JPD004反応物を含む試料は、架橋反応物の精製工程で水分吸収が少ないため、薬物が含まれている水溶液と混合する場合、架橋ヒアルロン酸が膨潤されながら薬物を架橋ヒアルロン酸の内部にさらに多く混入することができる。反面、架橋反応の容量が400mLであるJPD001は、通常の製品に含まれている固形分含有量2%よりさらに低い固形分含有量を有してより多くの水分を吸収した状態であり、そのため、薬物と混合する場合、混入可能な薬物量が多少低い。
【0047】
1-2:架橋ヒアルロン酸の物性評価
前記製造された架橋ヒアルロン酸ゲルJPD001、JPD002、JPD003、JPD004、および(JPD001とJPD004の重量比1:1で含む混合物)に対し、膨潤度比率、弾性係数および複合粘度を測定してその結果を表1と図1図3に示した。
【0048】
(1)膨潤度
各サンプル2gを正確に称量して50mLのコニカルチューブに投入し、25mLのリン酸緩衝溶液を投入した後、15分間100rpmで振とう(shaking)し、5分間2,000rpmで遠心分離し、そしてコニカルチューブの上澄液を除去した後、膨潤されたヒアルロン酸ゲルの重量を測定し、下記数式1のように膨潤度を得た。下記数式1において、初期測定された架橋ヒアルロン酸のゲルの重量とは、リン酸緩衝溶液を投入する前の重量であり、実質的に実施例1で得られた固形分含有量が2.0重量%を含む試料の重量である。
[数式1]
膨潤度(%)=(膨潤された架橋ヒアルロン酸ゲルの重量/初期測定された架橋ヒアルロン酸のゲルの重量)×100
【0049】
(2)弾性係数
レオロジー特性を比較するためにレオメーター(rheometer)を使用して0.02Hz~1Hzの振動数範囲で弾性係数(G’)を測定した。
【0050】
(3)複合粘度
レオロジー特性を比較するためにレオメーター(rheometer)を使用して0.02Hz~1Hzの振動数範囲で複合粘度(complex viscosity)を測定した。
【0051】
[回転型レオメーター(Rotational Rheometer)の分析条件]
(a)試験装備:回転型レオメーター(KINEXUS pro+)
(b)周波数:0.01~1Hz
(c)温度:25
(d)ひずみ:4%
(e)測定形状:40mmのプレート
(f)測定ギャップ:0.145mm
【0052】
【表1】
【0053】
膨潤度が低いほど、局所麻酔剤溶液と混合して体内適用時、薬物放出が急速に行われ、反対に膨潤度が高いほど、薬物放出速度が遅く作用する。具体的に、図7のように膨潤度が最も低いJPD001の場合、薬物が最も速く放出され、膨潤度が最も高いJPD004の場合には薬物放出速度が最も遅く示された。架橋ヒアルロン酸の弾性係数が低いほど、体内適用時、組織内拡散程度が高く、つまり、広い部位に局所麻酔剤の痛み減少効果を提供することができる。複合粘度は、低いほど体内適用時、注射針を使用した時に注入力が低くて使用を容易にする。薬物放出速度に関連して膨潤度が最も重要な要因で作用し、弾性係数および複合粘度の場合には実際臨床適用時に局所麻酔剤の作用を補助する要因で作用する。前記表1に示した架橋ヒアルロン酸の膨潤度は、100~600範囲で示され、痛みが最も激しい3日間、JPD001とJPD004を混合した条件で薬物が安定的に放出されることを確認できた。
【0054】
実施例2:架橋ヒアルロン酸の製造および物性評価
2-1:架橋ヒアルロン酸の製造
1,500kDaの分子量を有する非架構ヒアルロン酸(繰り返し単位の分子量401.3)100重量部を0.25N NaOH溶液400重量部に溶解して20重量%のヒアルロン酸溶液を製造した。前記ヒアルロン酸溶液に架橋剤である1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(1,4-butanediol diglycidyl ether、BDDE)を0.4モル%の比率で添加して、それぞれ3個の異なる容量で反応を行い、具体的にJD005は400mL、JD006は5mL、およびJD007は25mLの容量体積で分注して室温で24時間架橋反応を行い、異なる容量を有する架橋反応物を得た。
【0055】
1,500KDaの分子量を有する非架構ヒアルロン酸を0.25N NaOH溶液に溶解して20重量%のヒアルロン酸溶液を製造した。前記ヒアルロン酸溶液に架橋剤である1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(1,4-butanediol diglycidyl ether、BDDE)を0.4モル%の比率で添加して、それぞれ4個の異なる容量で反応を行い、具体的にJD005は400mL、JD006は5mL、およびJD007は25mLの容量体積で分注して室温で24時間架橋反応を行い、異なる容量を有する架橋反応物を得た。
【0056】
前記架橋反応の完了後、JD005は孔径1,000μmの篩を通過させて粉砕することによって、各粉砕物の直径が約1,000μmになるように1次粉砕物を得た。以降、前記JD005の1次粉砕物をリン酸緩衝溶液で数回洗浄して未反応BDDEを除去し、pHを6.5~7.5水準で安定化し、精製にかかった時間は24時間であった。
【0057】
また、前記架橋反応が完了したJD006およびJD007反応物は、粉砕過程なしにそのままリン酸緩衝溶液で数回洗浄して未反応BDDEを除去し、pHを6.5~7.5水準で安定化した。前記精製工程にかかった時間は、JD006反応物は約36時間であり、JD007反応物は約72時間であった。
【0058】
前記得られた3種類の反応物(JD005、JD006、JD007)に対して300μmの篩を通過させて粉砕し、固形分の含有量を大韓薬典の乾燥減量試験方法で測定した。前記粉砕後に得られた反応物の固形分含有量は、JD005は1.1wt/wt%、JD006は1.8wt/wt%、JD007は2.5wt/wt%であった。
【0059】
固形分含有量2.0重量%の試料製品を製造するために、JD005およびJD006反応物は、前記架橋反応の原料で使用した非架構ヒアルロン酸を添加して固形分含有量2.0重量%に合わせ、JD007反応物は、固形分含有量が2.0重量%を超えるため、PBSを添加して2.0重量%に希釈して固形分含有量が2.0重量%になるようにした。前記得られた3種類の試料は、121℃で20分間滅菌して架橋ヒアルロン酸ゲルを製造した。
【0060】
2-2:架橋ヒアルロン酸の物性評価
前記製造された架橋ヒアルロン酸JD005、JD006、JD007、および(JD005とJD007の重量比1:1で含む混合物)に対して、膨潤度比率、弾性係数および複合粘度を実施例1と同様な方法で測定してその結果を表2と図4図6に示した。
【0061】
【表2】
【0062】
前記表2と図4図6に示したように、異なる膨潤度を有するJD005+JD007を1:1で混合した試料と類似の膨潤度を有する試料-JD006の物性を比較した場合、混合試料は2倍程度が増加した弾性係数(G’)を示す。低い弾性値を有する試料は組織に投入時に組織内拡散性が高く、組織内で散る可能性が高い。したがって、好ましい膨潤度範囲は100~200%であると確認した。
【0063】
複合粘度分析データの場合にも異なる膨潤度を有する(JD005+JD007)試料を1:1で混合した試料と類似の膨潤度を有する試料-JD006の物性を比較した場合、混合試料は複合粘度が2倍程度高い結果を示した。したがって、好ましい弾性係数(G’)範囲は1Hzで測定した値が0~250pa(1Hz)であり、複合粘度は0.02Hzで測定した値が500,000~1,500,000cp(0.02Hz)であると確認した。
【0064】
実施例3:架橋ヒアルロン酸を利用した薬物(ブピバカイン)の放出挙動評価
実施例1で製造した架橋ヒアルロン酸固形分が2重量%含有量で含まれている架橋ヒアルロン酸ゲルであるJPD001、JPD004および(JPD001とJPD004の1:1重量比の混合物)、つまり、実施例1の試料1-1、1-4および1-5をそれぞれ6gと、0.75重量%ブピバカイン(bupivacaine)溶液3gを混合して薬物製剤を製造した。対照群として1,500kDaの分子量を有する非架構ヒアルロン酸(繰り返し単位の分子量401.3)2重量%を混合した製剤とブピバカイン薬物のみを含む製剤をそれぞれ製造した。
【0065】
前記製造された薬物製剤に対してそれぞれ透析バッグ(MWCO:12 K-14 K Da)に入れた。その後、透析バッグをチューブに15mlリン酸緩衝溶液で浸漬させた。浸漬された透析バッグが入っている50mLのコニカルチューブを37℃で維持される振とう水槽に入れて100rpmで 水平に振とうさせた。その後、予定された時間間隔で、1.5mLの異型培地(PBS)分取量を回収し、全体異型媒体を15mLの新たなPBSに交換してシンク条件を維持した。放出されたブピバカインの定量化は、ZORBAX Eclipse XDB C18カラム(4.6mm×250mm、5μm)とアセトニトリル/pH8.0バッファー(60:40、v/v)を10分以上使用した逆相高性能液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)によって決定された。薬物放出挙動を評価してその結果を図7に示した。
【0066】
図7の経時的薬物放出挙動に示したように、ブピバカインの時間帯別累積放出量においてブピバカイン単独使用時、8時間以内に99%放出された。架橋ヒアルロン酸2%溶液の場合、8時間経過後65.8%、24時間経過後99%のブピバカインを放出された。膨潤度が比較的低いJPD001(試料1-1)の場合、24時間に70%の放出が行われ、48時間に96.7%のブピバカイン放出された。膨潤度が高いJPD004(試料1-4)の場合、初期に比較的低い放出速度を示し、72時間に85.3%が放出された。また、JPD001とJPD004の1:1重量比に混合した薬物送達体(試料1-5)は、放出初期にJPD001のような放出速度を示してから徐々に放出するプロファイルを示し、具体的に、薬物の累積放出量が24時間に60%、48時間に75%および72時間に90%以上の放出パターンを示した。
【0067】
したがって、体内に適用時、局所麻酔剤が徐々に放出されて手術後最も痛みが激しい3日間痛みを減少させることができることを確認した。
【0068】
実施例4:薬物(ロピバカイン)の放出挙動評価
実施例2で製造した架橋ヒアルロン酸固形分が2重量%含有量で含まれている架橋ヒアルロン酸ゲルであるJD006、JD007および(JD005とJD007の1:1重量比の混合物)、つまり、実施例2による試料2-2、試料2-3および試料2-4をそれぞれ6gに対して、0.75重量%ロピバカイン(ropivacaine)溶液3gを混合して薬物製剤を製造した。対照群として1,500kDaの分子量を有する非架構ヒアルロン酸(繰り返し単位の分子量401.3)2重量%を混合した製剤とブピバカイン薬物のみを含む製剤をそれぞれ製造した。
【0069】
前記製造された薬物製剤に対して実施例3のような方法で薬物放出挙動を評価してその結果を図8に示した。
【0070】
図8の経時的薬物放出挙動に示したように、HAのフィラーの場合、24時間以内に99%放出され、JD006(試料2-3)とJD005+JD007混合物(試料2-4)の場合、膨潤度が類似しているが、混合物の場合が72時間まで放出されるプロファイルを示す。具体的に、JD006(試料2-3)の薬物累積放出量が24時間に90%、48時間に95%以上の放出パターンを示した。また、JD005+JD007混合物(試料2-4)を使用した場合、薬物の累積放出量が24時間に60.7%、48時間に79.6%および72時間に90.8%の放出パターンを示した。したがって、体内に適用時、局所麻酔剤が徐々に放出されて手術後最も痛みが激しい3日間痛みを減少させることができることを確認した。
【0071】
実施例5.外科用品(Voferon-L60)注入液およびロピバカインの混合投与による痛み緩和効果および安全性評価
5.1:試験動物の準備
1)試験系
下記条件の、特定病原体の存在しない(SPF)Sprague-Dawleyラット[Crl:CD(Sprague Dawley)](生産処:株式会社オリエントバイオ(大韓民国京畿道城南市中院区ガルマチ路322)を準備した。
(1)入手時の動物数:雄28匹
(2)入手時の週齢:約7週齢
(3)入手時の体重範囲:199.29~222.35g
(4)投与開始時の週齢:約8週齢
(5)投与開始時の体重範囲:265.63~294.00g
(6)使用動物数:24匹
(7)群分離
投与前日に体重を測定し、Excel programを利用して順位化した体重で群分離を実施した。平均体重の±20%範囲内に属する動物のみを試験に使用した。
【0072】
2)飼育環境
(1)温度および湿度範囲:温度22±3℃、相対湿度50±20%RH
(2)換気回数:10~15回/hr
(3)明暗cycle:蛍光灯照明12hr(08:00点灯~20:00消灯)
(4)照度:150~300lx
(5)騒音:60dB以下
(6)アンモニア濃度:5ppm以下
(7)飼育箱および飼育密度
検疫、純化、投与および観察期間中にステンレス製の網飼育箱(250W×精製および篩L×180Hmm)に3匹以下収容し、投与および観察期間中には1匹以下収容した。飼育箱の交換は群分離時に実施した。
(8)飼料および水
飼料(Teklad Certified Irradiated Global 18% Protein Rodent Diet、Envigo、USA)は、コアテック(大韓民国京畿道平沢市振威面振威路181-21)から供給を受けて給餌器に入れて自由摂取させた。水は飲用上水道水を浄水させた後、ポリカーボネート製ウォーターボトルに入れて自由摂取させた。
【0073】
5.2:試験群の準備
前記準備した試験動物の全身麻酔状態で左側足底部をきれいに消毒した後、足踵端部0.5cm離れた部分から始まって縦方向に1cmの長さの皮膚と筋膜を切開した。切開した部分の足裏筋肉(足底筋)をフォーセップで持ち上げて1cmの長さを分離した。縦方向の両側端部は足裏筋肉が離れないように慎重に持ち上げて分離し、左側太股の側面大腿二頭筋の座骨神経部分に、実施例2で製造した架橋ヒアルロン酸固形分が2重量%含有量で含まれている架橋ヒアルロン酸ゲルであるJD005とJD007の1:1重量比の混合物である試料2-4(Voferon-L60)とロピバカイン(ropivacaine)を含む製剤を1回投与して皮膚を縫合して下記表3のように試験群を構成した。Ga~Gdの投与液量(μl)は全て同一に600μlを神経組織付近に投与し、実験群に含まれている動物は6匹であった。
【0074】
【表3】
【0075】
Gcに投与される薬物製剤は、2重量%濃度の架橋ヒアルロン酸ゲル3g、0.75重量%濃度のロピバカイン溶液3gを使用し、これをそれぞれの有効成分固形分含有量で換算すれば架橋ヒアルロン酸60mgおよびロピバカイン23mgを含み、架橋ヒアルロン酸と薬物の合計固形分含有量100重量%を基準としてvoferon-L60の固形分含有量は72.2重量%であり、ロピバカイン固形分含有量は27.3重量%である。
【0076】
Gdに投与される薬物製剤は、2重量%濃度の架橋ヒアルロン酸ゲル4g、0.75重量%濃度のロピバカイン溶液2gを使用し、これをそれぞれの有効成分固形分含有量で換算すれば架橋ヒアルロン酸80mgおよびロピバカイン15mgを含み、架橋ヒアルロン酸と薬物の合計固形分含有量100重量%を基準としてvoferon-L60の固形分含有量は84.2重量%であり、ロピバカイン固形分含有量は15.8重量%である。
【0077】
5.3:試験方法
前記試験群の作製後、機械的異痛の程度を測定するための方法で白ネズミを網目の大きさが2×2mmである鉄網ケージに入れて15分以上適応させた後、ネズミの動きなどが静かになれば8個の連続した太さのフォン・フライ・フィラメント(von Frey filament)(1、2、4、6、8、15、26、60g、Stoelting、USA)を使用して連続的な反応をup-down methodで評価した。Filamentを左側患部足裏に垂直に接触させ、5-6秒間維持させてネズミが迅速な回避反応を見せたりまたはhairsを離しながら直ちに動いたり足裏をなめれば陽性反応を示したものと見なした。中央部のフォン・フライ・フィラメント(von Frey filament)から刺激して陽性反応を示せば弱いfilamentで刺激し、陽性反応がなければ強いfilamentで刺激しながら進行した。前記方法で試験物質の投与前、投与後1、2、4、8、24、48、72、120、168時間目に測定した。痛み行動検査の結果解釈は、回避反応を見せたり足がプラスチック板についた状態で網の上に持ち上げられることを陽性と判定した。刺激は3~5分間隔で2回与え、このうち陽性反応を見せた閾値を利用して時間による反応変化曲線を得た。
【0078】
また、安定性評価のために試験物質外科用品(Voferon-L60)に使用される注入液とロピバカインの混合物を前記試験群の座骨神経周囲に投与時に現れる薬物投与部位の局所毒性を調査するために、試験物質投与14日後に投与部位周辺の筋肉および座骨神経を切取してトリミング、脱水およびパラフィン包埋などの一般的な組織処理過程を経て組織切片を作製して薄切し、HE染色(Hematoxylin and Eosinstain)染色を実施した後、検鏡した。
【0079】
5.4:薬動力学的分析結果
薬物投与後の時間別反応による薬力学的分析結果を下記表4および図9に示した。Ga~Gdグループ試験群の各動物の試験物質投与前、投与後1、2、4、8、24、48、72、120、168時間目の痛み閾値を測定し、各試験群ごとの閾値の平均を計算した。下記表4で薬物投与時間別測定された閾値(g)を示す。
【0080】
【表4】
【0081】
Gaグループは、手術後1時間から測定された平均閾値(g)が9.8gに減少し始めて48時間後から閾値平均10.8gに次第に痛みが安定的に回復して168時間に完全に回復した。
【0082】
Gbグループは、手術後4時間から閾値平均37.3gに減少し始めて48時間後から閾値平均17.5gに次第に痛みが安定的に回復して120時間に完全に回復した。
【0083】
Gcグループは、手術後4時間から閾値平均48.7gに減少し始めて48時間後から閾値平均20.5gに次第に痛みが安定的に回復して120時間に完全に回復した。
【0084】
Gdグループは、手術後8時間から閾値平均57.2gに減少し始めて48時間後から閾値平均24.2gに次第に痛みが安定的に回復して120時間に完全に回復した。
【0085】
前記試験群の分析結果で生理食塩水混合投与群(GaおよびGb)とVoferon-L60混合投与群(GcおよびGd)の薬力学的変化を比較した結果、Voferon-L60混合投与群で閾値が高く測定されて痛み緩和効果がより大きいことが確認された。このような結果は、Voferon-L60と混合投与で薬物放出が遅延して発生する効果と判断される。
【0086】
また、GcおよびGdを比較する場合、ロピバカイン濃度がより低く、Voferon-L60の濃度がより高いGdで閾値が高く測定されて痛み緩和効果がより大きいことが確認された。このような結果は、Voferon-L60の濃度増加によるロピバカインの薬物放出が遅延されて発生した効果と判断される。したがって、Voferon-L60の濃度が増加するほど薬物放出が調節されて痛み緩和効果が増加すると判断される。
【0087】
5.5:組織病理学的観察結果
投与部位周辺の筋肉および座骨神経をHE染色を実施した後、検鏡した結果を図10に示した。
【0088】
図10aでGa、Gb、GcおよびGd群の代表写真に示したように、Gc-14およびGc-15の神経周辺に異物(foreign body)が境界をなして局所的に観察され、Gd-21では異物と共に炎症細胞の浸潤が観察された。これに関連して、観察された炎症細胞の浸潤は投与した一部の試験物質の残存によるものと推定され、試験物質による毒性とは関連がないものである。前記観察状況を除くと、全ての試験群の試験物質投与部位周辺の筋肉および座骨神経では異常所見が観察されなかった。このような結果を基に外科用品(Voferon-L60)に使用される注入液とロピバカインの混合物を座骨神経周囲に投与した結果、試験物質による局所毒性がないと判断され、Voferon-L60濃度増加によりロピバカインの薬物放出が調節されて痛み緩和効果が増加すると判断される。
【0089】
実施例6.外科用品(Voferon-L60)注入液およびロピバカインの混合投与による薬物動態評価
6.1:試験動物の準備
特定病原体の存在しない(SPF)Sprague-Dawleyラット[Crl:CD(Sprague Dawley)](生産処:株式会社オリエントバイオ(大韓民国京畿道城南市中院区ガルマチ路322)を下記条件により準備した。
(1)入手時の動物数:雄18匹
(2)入手時の週齢:約8週齢
(3)入手時の体重範囲:256.91~272.24g
(4)投与開始時の週齢:約9週齢
(5)投与開始時の体重範囲:259.33~272.24g
(6)使用動物数:15匹
(7)群分離
【0090】
投与前日に体重を測定し、Excel programを利用して順位化した体重で群分離を実施した。平均体重の±20%範囲内に属する動物のみを試験に使用した。
【0091】
前記試験群の検疫、純化、投与および観察期間中にステンレス製の網飼育箱(250W×精製および篩L×180Hmm)に3匹以下収容し、投与および観察期間中には2匹以下収容し、それ以外の条件は実質的に実施例5の試験群飼育環境と同一に飼育した。
【0092】
6.2:試験群の準備
前記準備した試験動物をイソフルラン(Isoflurane)を利用して吸入麻酔を実施し、大腿部位の皮膚を切開した後、座骨神経周囲に実施例2で製造した架橋ヒアルロン酸であるJD005とJD007の1:1重量比の混合物である試料2-4(Voferon-L60)とロピバカイン(ropivacaine)を含む製剤を注射器で1回投与して皮膚を縫合して下記表5のように試験群を構成し、投与液量(μl)はGe~Ggが全て同一に600μlに設定し、実験群に含まれている動物は5匹であった。
【0093】
【表5】
【0094】
6.3:試験動物の採血
頸静脈(Jugular vein)から、使い捨て注射器を利用して、約0.5μlの前記試験群の血液を試験物質投与前、投与後0.5、1、2、4、6、8、12、24および48時間目に採血した。採血した血液はヘパリン(heparin)処理したチューブ(5IU/ml)に移し、12,000rpm(4℃)で5分間遠心分離した後、上層(血しょう)を分離した。分離した血しょうは、分析前まで-70℃に設定されている超低温冷凍庫(大韓科学、Korea;MAI-040-03)に保管後、分析に利用した。
【0095】
6.4:試験方法
6.4.1試験機器および試薬
本発明で使用した実験機器は下記表6、試薬は下記表7のとおりである。
【0096】
【表6】
【0097】
【表7】
【0098】
1290 Infinity(Agilent、USA)をLC機器で、6460 Triple Quadruple(Agilent、USA)をMS/MS機器でLC/MS/MS分析を進行した。ロピバカイン塩酸塩水化物(Ropivacaine hydrochloride monohydrate)(Lot No.:0000077915、Sigma Aldrich、USA)を標準物質で、リドカイン塩酸塩水化物(Lidocaine hydrochloride monohydrate)(Lot No.:WS-054、JoonghunPharmaceutica、Korea)を内部標準物質で使用した。
【0099】
6.4.2標準溶液および試料の調製
0.0500gのロピバカイン塩酸塩水化物標準物質(純度98.7%)を称量して50ml bottleに入れ、50%メタノールを満たした後、溶解して987.000mg/lを調製した後、987.000mg/l濃度のロピバカイン塩酸塩水化物標準物質1.013mlを10mlメスフラスコ(volumetric flask)に入れて50%メタノールを10ml標線まで添加して100.000mg/l濃度のストック溶液を調製し、下記表8の濃度および体積を有する調製されたストック溶液を50%メタノールで系列希釈して下記表8の濃度を有する使用溶液を製造して使用した。
【0100】
【表8】
【0101】
0.05gのリドカイン塩酸塩水化物(純度100.0%)を称量して50ml bottleに入れ、50%メタノールを満たした後、溶解して1,000.000mg/lを調製した後、1,000.000mg/l濃度のリドカイン塩酸塩水化物標準物質1mlを100mlメスフラスコ(volumetric flask)に入れて50%メタノールを100ml標線まで添加して、10.000mg/l濃度のストック溶液を調製し、調製されたストック溶液 60μlとアセトニトリル(Acetonitrile)9,940μlを混合して600ng/mlの使用溶液を調製した。
【0102】
ストック溶液の標準溶液のストック溶液を使用し、下記表9の濃度および体積を有する調製された標準溶液のストック溶液を50%メタノールで系列希釈して下記表9の濃度を有する使用溶液を製造して使用した。
【0103】
【表9】
【0104】
前記70℃以下に保管した血しょうを室温に放置して溶かした後、約30秒間ボルテックス(vortex)でよく混合した。下記表10の濃度および体積を有する使用溶液を血しょうで系列希釈して標準溶液の使用溶液を下記表10の濃度を有する検量線試料の標準血しょうを調剤して準備した。
【0105】
【表10】
【0106】
6.4.3試料の前処理
検量線試料および生体試料200μlに600.000ng/ml濃度の内部標準溶液40μl、1M水酸化ナトリウム(Sodium hydroxide)40μl、tert-ブチルメチルエーテル(tert-Butyl methyl ether)1,200μlを添加した後、30秒間ボルテックス混合(vortex mixing)した後、3,400rpmで5分間遠心分離して上層液900μlを取った。この上層液900μlに0.1%ギ酸90μlを添加した後、30秒間ボルテックス混合(vortex mixing)した後、3,400rpmで5分間遠心分離して下層液80μlを取った。
【0107】
6.4.4分析条件および定量方法および結果解釈
以下、本発明に使用した具体的なLC/MS/MS条件は下記表11のとおりである。
【0108】
【表11】
【0109】
定量値は得られたクロマトグラムから内部標準物質のピーク面積に対する標準物質のピーク面積比(peak area ratio)(標準物質のピーク面積/内部標準物質のピーク面積)を求めた。当該機器のMassHunter Workstation Software、version B.07.1(Agilent、USA)を利用して予め作成した検量線から血しょう中の試験物質の濃度を求めた。
【0110】
毒性動態結果解釈は、血中濃度曲線に基づいた非モデル解釈法によりPhoenix(商標名)WinNonlinを利用してTmax(最高血中濃度到達時間)、Cmax(最高血中濃度)、AUC0-48hr(0~48時間の血中濃度-時間曲線下の面積)およびMRT(薬物の平均滞留時間)の動態学的なパラメータを算出して解釈した。
【0111】
6.5:血中ロピバカイン濃度変化の分析結果
全ての試験群でロピバカインの薬物濃度は、薬物投与後1~2時間に薬物の濃度が急激に増加し、以降6時間まで急激に減少する傾向を示し、12時間に薬物が全部消失し、前記結果を図11、表12に示した。Ge~Ggグループ試験群の各動物の試験物質投与前、投与後0.5、1、2、4、6、8、12、24および48時間目に採血した血しょうのロピバカイン濃度を測定し、各試験群ことに義濃度の平均を計算した。下記表12で時間別測定されたRatの血しょう内にロピバカイン濃度(ng/kg)の平均を示した。
【0112】
【表12】
【0113】
6.6:ロピバカイン薬物動態学的パラメータの分析結果
薬物投与後、血中時間別濃度に基づいて血しょう中のロピバカインの薬物動態学的パラメータを分析し、分析結果は下記図12および表13に示した。Ge~Ggグループ試験群の各動物のパラメータ値を測定し、各試験群ごとの各パラメータ値の平均を計算した。下記表13で分析されたパラメータの平均を示した。
【0114】
【表13】
【0115】
Geグループは、AUC0-48hr平均が1254.97ng・h/ml、Cmax平均が439.90ng/ml、Tmax平均が1.2hr、MRT平均が1.86hrと示された。
【0116】
Gfグループは、AUC0-48hr平均が1308.39ng・h/ml、Cmax平均が409.23ng/ml、Tmax平均が2hr、MRT平均が2.17hrと示された。
【0117】
Ggグループは、AUC0-48hr平均が947.86ng・h/ml、Cmax平均が320.41ng/ml、Tmax平均が1.2hr、MRT平均が2.15hrと示された。
【0118】
生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム)混合投与群とVoferon-L60混合投与群との薬物動態学的変化を比較するためにGeおよびGfを比較した結果、AUC0-48hr平均は同一であり、Tmax、MRTがVoferon-L60混合投与群で増加し、Cmaxは生理食塩水混合投与群が増加すると判断される。このような結果は、生体利用率は同一であるが、Voferon-L60混合の場合、薬物放出遅延による結果と判断される。
【0119】
Voferon-L60の希釈比率によるロピバカイン濃度変化による薬物動態学的比較するためにGfおよびGgを比較した結果、濃度変化によるAUC0-48hr、Cmax、Tmaxの減少が観察され、MRTは変化がなかった。このような結果は生体利用率は同一であるが、Voferon-L60混合の場合、薬物放出遅延による結果である。
【0120】
混合投与群のロピバカイン濃度の薬物動態学的変化を比較するためにGeおよびGfとGgを比較した結果、AUC0-48hr、Tmax、Cmaxの減少が観察され、MRTは変化がなかった。このような結果は、ロピバカインの濃度減少によるAUC0-48hr、Tmax、Cmaxの減少と判断され、Voferon-L60の濃度増加による影響で薬物放出が遅延されて平均滞留時間には影響がないと判断される。したがって、Voferon-L60の濃度が増加するほど薬物放出が遅延されると判断される。
【0121】
以上の結果に基づいて外科用品(Voferon-L60)に使用される注入液は、ロピバカインの薬物放出を遅延すると判断され、Voferon-L60濃度増加により薬物放出が遅延すると判断される。また、対照群(Ge)と比較して試験群であるGfおよびGg群で血液内低いCmax値は、Voferon-L60の濃度増加による影響で薬物放出が遅延し、ロピバカインを単独で使用する場合より安全であると判断される。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9
図10
図11
図12