(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】炭酸ランタンを含有する安定な口腔内速崩壊性錠剤
(51)【国際特許分類】
A61K 33/244 20190101AFI20240222BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240222BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240222BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240222BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240222BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240222BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240222BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
A61K33/244
A61K9/20
A61K47/02
A61K47/12
A61K47/26
A61K47/32
A61P9/10
A61P13/12
(21)【出願番号】P 2023074305
(22)【出願日】2023-04-28
(62)【分割の表示】P 2018161587の分割
【原出願日】2018-08-30
【審査請求日】2023-05-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516078434
【氏名又は名称】コーアイセイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】神戸 英芳
(72)【発明者】
【氏名】青柳 文之
【審査官】梅田 隆志
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-119655(JP,A)
【文献】特表2009-514940(JP,A)
【文献】国際公開第2011/051968(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第101077338(CN,A)
【文献】特開2017-066119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 33/00-33/44
A61K 9/00-9/72
A61K 47/00-47/69
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸ランタン又はその水和物、
5~10重量%のマンニトール、
0.5~1.5重量%のクロスポビドン、
1~3重量%のタルク、及び
0.2~0.5重量%のステアリン酸マグネシウム
を含有し、
糖を含有せず、
硬度が、60N以上であり、
60℃で20日間保存した後に日局一般試験法の崩壊試験法(試験液:水)により測定した口腔内崩壊時間が、20~35秒であり、
口腔内速崩壊錠又はチュアブル錠である、
錠剤。
【請求項2】
口腔内速崩壊錠である、請求項1記載の錠剤。
【請求項3】
結合剤を含有しない、請求項1又は2記載の錠剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸ランタンを含有する錠剤に関し、特に、炭酸ランタンを含有する、安定性に優れた口腔内速崩壊性錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
炭酸ランタンは、高リン血症治療剤として用いられている。経口投与された炭酸ランタンは、腸管内において、食事によって摂取されたリン酸と強固に結合して極めて難溶性のリン酸ランタンを形成し、これが乖離することなく糞便中へ排泄されるために腸管からのリン吸収が抑制されて、血清リン濃度を低下させる。
【0003】
高リン血症は、透析中の又は保存期の慢性腎臓病(CKD)の多くの患者で、腎臓からのリン排泄が低下し、血中のリン濃度が高くなることで生じる疾患であり、高リン血症状態が持続すると臓器や関節周囲に石灰沈着を生じやすくなる。特に、血管壁での石灰沈着は動脈硬化の原因となり、これにより心筋梗塞や狭心症を発症するリスクが高まることが指摘されている。したがって、CKD患者では、血清リン濃度を適切な範囲にコントロールすることが重要とされている。
【0004】
炭酸ランタン含有製剤としては、バイエル薬品株式会社が上市しているホスレノールチュアブル錠250mg、同500mgと、ホスレノール顆粒分包250mg、同500mgがある。
CKD患者の治療では、水分管理も重要であることから、水なしで服用する剤形が強く望まれ、したがって、この点から、顆粒剤よりはチュアブル錠が好ましい。
バイエル社が上市している従来の上記ホスレノールチュアブル錠は、以下の表1に記載される剤形を有している。
【0005】
【0006】
表1からもわかるように上記ホスレノールチュアブル錠のうち、炭酸ランタンをランタンとして250mg含有する250mg錠では、直径が13mで重量が1042mg、炭酸ランタンをランタンとして500mg含有する500mg錠では、直径が18mmで重量が2084mgといずれの錠剤も大型であり、噛み砕いて服用するには困難が伴う。また、噛み砕かずに服用すると、いずれの錠剤も崩壊しにくく溶けにくいため、腸管穿孔やイレウスを起こす例があることから、ホスレノールチュアブル錠250mg及び同500mgの添付文書の「用法及び用量に関連する使用上の注意」には、「本剤は噛み砕かずに服用すると溶けにくく、腸管穿孔、イレウスを起こした例の中には噛み砕いていない例もあるので、口中で十分に噛み砕き、唾液又は少量の水で飲み込むよう指導すること。なお、噛み砕くことが困難な患者(高齢者等)には、本剤を粉砕して投与することが望ましい。[「重大な副作用」、「適用上の注意」の項参照]」と記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した従来のホスレノールチュアブル錠は、大型であり、崩壊しにくく溶けにくいため、服用時に、上記の点に注意する必要がある。
また、この錠剤は、高温での長期保存時に変色が認められ、保存時に、崩壊時間の延長も認められる。
したがって、小型でありつつも錠剤としての十分な硬度を有し、口中で溶けやすく、また、口中で容易に噛み砕くことも可能な錠剤であって、苛酷試験等の試験条件下でも性状変化が抑制された、炭酸ランタンを含有する安定な錠剤の開発が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、炭酸ランタン含有錠剤に、糖アルコールを配合することで、上記従来の炭酸ランタン含有錠剤が有する課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下を提供する。
〔1〕 炭酸ランタン又はその水和物と、糖アルコールとを含有する錠剤。
〔2〕 糖アルコールが、マンニトール、エリスリトール、及びキシリトールからなる群より選択される、〔1〕記載の錠剤。
〔3〕 糖アルコールが、マンニトールである、〔1〕記載の錠剤。
〔4〕 糖アルコールを3~40重量%含有する、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の錠剤。
〔5〕 糖を含有しない、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の錠剤。
〔6〕 チュアブル錠である、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の錠剤。
〔7〕 口腔内速崩壊錠である、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の錠剤。
〔8〕 口腔内崩壊時間が20~30秒である、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の錠剤。
〔9〕 錠剤の硬度が60N以上である、〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の錠剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、小型で服用しやすく、また、苛酷試験等の試験条件下でも性状変化が抑制された、炭酸ランタン又はその水和物を含有する安定な錠剤が提供される。
本発明により提供される錠剤は、小型でありつつも錠剤としての十分な硬度を有し、口中で溶けやすく、また、口中で容易に噛み砕くことも可能である。したがって、炭酸ランタン又はその水和物を含有する、服用が容易及び/又は安定な口腔内速崩壊錠或いはチュアブル錠を得ることもできる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施態様では、炭酸ランタン又はその水和物と、糖アルコールとを含有する錠剤が提供される。
本発明で使用する炭酸ランタン又はその水和物としては、医薬として使用されることが許容されている炭酸ランタン又はその水和物であれば、特段の限定なく使用することができるが、炭酸ランタンの水和物が好ましくは使用される。
本明細書中では、技術的に明らかに不適切な場合を除き、炭酸ランタンとその水和物を総称して、単に「炭酸ランタン」と記載することもある。
炭酸ランタン又はその水和物は、通常、
一般式: La2(CO3)3・xH2O
で表される。式中のxは、一般的には、xは0から10までの値を有する。本発明においては、xは2から8までの値を有することが好ましく、xは4から8までの値を有することが好ましく、x=4又は8が特に好ましく、炭酸ランタン8水和物を用いることが最も好ましい。バイエル社のホスレノールチュアブル錠の医薬品添付文書において、有効成分である炭酸ランタン水和物が、上記式において、「x=主として4」と記載されているように、xは、主として使用される炭酸ランタンの水和度を示すこともあり、また、炭酸ランタンの水和度の平均値を示す場合もある。炭酸ランタンの水和度は、熱分析(TGA)や粉末X線回折(XRPD)等の当技術分野で周知の方法により測定することができる。
【0012】
本発明で使用する際の炭酸ランタン又はその水和物の粒子径については、本発明の錠剤を製造できる限り特段限定されない。炭酸ランタン又はその水和物の粒子径は、測定方法により変化しうるものであり、また、通常は、粒子径分布として測定されるから、平均粒子径で表されることが多い。したがって、本明細書中で平均粒子径の具体的な数値を例示している場合には、その数値は、特段別途の記載がない限り、例えば日機装株式会社のマイクロトラックMT330II等のレーザー回析・散乱式粒度分布装置により測定される平均粒子径を意味するものとする。
【0013】
本発明の錠剤が有すべき直径は、本発明の目的を達成することができる限り特段限定されるものではないが、錠剤としての十分な硬度を有しつつ、口中で溶けやすく、また、口中で容易に噛み砕くことが可能であるという本発明の目的を達成するのに好ましい錠剤の直径は、好ましくは8~17mm、より好ましくは9~16mm、特に好ましくは、10~15mmである。
【0014】
本発明で使用される糖アルコールとしては、医薬品に通常使用されるものであって、本発明の目的を達成することができるものであれば特段制限なく使用することができる。
本発明の好ましい一実施態様では、糖アルコールは、マンニトール、エリスリトール、及びキシリトールからなる群より選択される少なくとも1種である。特に、成形性が良く、崩壊性の良い錠剤が得られることから、マンニトールが最も好ましい。
糖アルコールの配合量は、本発明の効果を奏する限り特段限定されるものではないが、一錠剤あたり、好ましくは3~40重量%、より好ましくは5~25重量%、特に好ましくは10~15重量%含有させることが好ましい。配合量を3重量%未満とすると成形性が低下する可能性があり、40重量%超とすると錠剤が大型になり服用性が低下する可能性がある。
【0015】
本発明の好ましい一実施態様では、本発明の錠剤は、糖を含有しない。ここで「糖」とは、有機化学の分野で通常使用されている糖との用語の意味と同じであり、かかる糖は、通常、六員環構造(ピラノース)又は五員環構造(フラノース)を有している。糖を含有していると、本発明の効果が低減されてしまう可能性がある。更に、デキストレイト、乳糖、精製白糖、ブドウ糖等の糖を錠剤に含めると、安定性を試験する苛酷試験に供した場合に、性状変化(変色)が生じる。
【0016】
本発明の錠剤の好ましい一実施態様では、本発明の錠剤は、錠剤としての十分な硬度を有しつつも、口中で容易に噛み砕くことが可能であるから、チュアブル錠である。本発明の錠剤は、口中で溶けやすいため、チュアブル錠とした場合であっても、噛み砕いた後に速やかに口中で溶解することができる。
本発明の錠剤の別の好ましい一実施態様では、本発明の錠剤は、錠剤としての十分な硬度を有しつつも、口中で溶けやすいため、口腔内速崩壊錠である。口腔内速崩壊錠とは、口中に含んだ時に速やかに崩壊する錠剤である。
崩壊時間は、口腔内速崩壊錠として医薬品として認可されるような崩壊時間を満たせばよく、本発明の目的を達成することができる限り特段限定されないが、口中に含んだ後、一般的には20~30秒であり、好ましくは15~25秒であり、より好ましくは10~20秒である。チュアブル錠とした場合にも、口中に入れ噛み砕いた後に、上記崩壊時間内に溶解することが好ましい。
上記口腔内崩壊時間は、市販の口腔内崩壊錠試験器による測定等の当技術分野で周知の測定方法を使用することができる。具体的には、本明細書中に記載した口腔内崩壊時間は、日局一般試験法の崩壊試験法(試験液:水)により測定している。
【0017】
本発明の錠剤の硬度は、口中で溶けやすく、また、口中で容易に噛み砕くことが可能でありつつ、輸送や保存時に十分な硬さを有していれば特段限定されるものではないが、60N以上であることが好ましく、80N以上であることがより好ましく、100N以上であることが更に好ましい。口腔内でかみ砕くことを考慮すると、硬度の上限は、250N以下であることが好ましく、200N以下であることがより好ましく、150N以下であることが更に好ましい。
【0018】
本発明の錠剤には、本発明の目的が達成できる限り、所望により、医薬品添加物として許容される物質を更に含有せしめてもよい。そのような添加物としては、例えば、糖アルコール以外の、崩壊剤、結合剤、流動化剤、甘味剤、滑沢剤、着色剤などが挙げられる。
【0019】
崩壊剤としては、特に限定されないが、例えば、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポビドン、これら何れかの任意の組み合わせなどが挙げられる。好ましい崩壊剤は、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム及びクロスポビドンから選択される少なくとも1種である。特に好ましい崩壊剤は、服用感の点から、クロスポビドンである。崩壊剤の配合量は、本発明の錠剤が本発明の目的を達成することができる限り特段限定されるものではないが、一錠剤あたり、崩壊性と服用感の点から、通常0.25~3重量%であり、好ましくは0.5~2重量%であり、特に好ましくは1~1.5重量%である。
【0020】
結合剤としては、例えば、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ゼラチン、デキストリン、ペクチン、ポリアクリル酸ナトリウム、プルラン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、これらいずれかの任意の組み合わせなどが挙げられる。
【0021】
流動化剤としては、例えば、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、タルク、これらいずれかの任意の組み合わせなどが挙げられる。
【0022】
甘味剤としては、例えば、サッカリンナトリウム、サッカリン、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、ステビア、ソーマチン、これらいずれかの任意の組み合わせなどが挙げられる。
【0023】
着色剤としては、例えば、食用黄色5号、食用赤色2号、食用青色2号等の食用色素が挙げられる。
【0024】
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、マクロゴール、グリセリン脂肪酸エステル、フマル酸ステアリルナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、これらいずれかの任意の組み合わせなどが挙げられる。
タルクを使用した場合には、口腔内崩壊時間の延長が生じないので、特に好ましい滑沢剤は、タルクである。タルクの配合量は、本発明の目的が達成できる限り特段限定されるものではないが、一錠剤中、通常1~5重量%、好ましくは1~4重量%、より好ましくは1~3重量%である。タルクの配合量を5重量超とすると、圧縮成型時にキャツピング等の打錠障害が生じる可能性があり、1重量%未満とすると、スティッキング等の打錠障害が生じる可能性がある。
【0025】
圧縮成型時に長時間連続打錠することを考慮すると、タルクを使用するのみでもそのような打錠は可能であるが、通常錠剤には刻印を付加する場合が多いので錠剤への刻印付加の容易性から、ステアリン酸マグネシウムを併用して使用することが望ましい場合が多い。しかしながら、ステアリン酸マグネシウムを使用した場合、その配合量が多いと口腔内崩壊時間の延長が生じうる。したがって、本発明においては、ステアリン酸マグネシウムを少量添加することが好ましい。ステアリン酸マグネシウムの配合量は、一錠剤中に、0.1~0.75重量%、好ましくは0.2~0.75重量%、特に好ましくは0.2~0.5重量%である。この範囲のステアリン酸マグネシウムを併用することにより、崩壊時間の延長を回避しつつ、タルクのみを使用した場合よりも長時間の連続打錠が可能となる。
【0026】
本発明の錠剤の製造方法は、本発明の所望の性質を持った錠剤が得られる限り特段限定されず、使用する炭酸ランタン又はその水和物の水和度や平均粒子径、糖アルコールの種類、これらの成分の含有量等の具体的な条件に応じて、適切な方法を選択すればよい。
例えば、平均粒子径が10μm程度の小さな平均粒子径の炭酸ランタン又はその水和物を使用する場合には、炭酸ランタン又はその水和物と、糖アルコールと、必要に応じてその他の添加物とを混合しつつ乾式造粒や湿式造粒で造粒して打錠末を製造した後、これを圧縮成型して錠剤とすることが望ましい。しかしながら、炭酸ランタン又はその水和物の平均粒子径が10μm程度であっても、ジェットマイザーなどの衝撃式粉砕機で粉砕した炭酸ランタン又はその水和物は、粉砕物の凝集性が非常に強いために、V型混合機のような混合機で混合することで流動性の良い凝集物が得られることから、乾式造粒や湿式造粒することなく、当該凝集物に糖アルコールと必要に応じてその他の添加物を添加して圧縮成型することが可能である。
また、例えば、平均粒子径が30~50μm程度の大きな平均粒子径の炭酸ランタン又はその水和物を使用する場合には、炭酸ランタン又はその水和物と、糖アルコールと、必要に応じてその他の添加物とを混合した後、造粒することなく圧縮成型して錠剤とすることも可能である。
【実施例】
【0027】
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例で示した態様に限定されるべきものではない。
【0028】
共通事項
炭酸ランタン8水和物の平均粒子径は、レーザー回析・散乱式粒度分布装置により測定した。
錠剤の直径(錠径)は、ノギスにより測定した。
錠剤の硬度は、錠剤硬度計(ロードセル式錠剤硬度計PC-30、岡田精工株式会社製)により測定した。
口腔内崩壊時間は、日局一般試験法の崩壊試験法(試験液:水)により測定した。
苛酷試験は、60℃の条件で20日間保存した。
苛酷試験後の性状変化は、目視により行った。
【0029】
[実施例1]
炭酸ランタン8水和物(平均粒子径:3.66μm)542g、マンニトール(パーテック(登録商標)M200、メルク株式会社製)61g、カルメロースカルシウム(E.C.G-505、五徳薬品株式会社製)18g、ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社製)9gとを混合機(S-3型、筒井理化学機器株式会社)で10分混合後、乾式造粒機(TF-Labo、フロイント産業株式会社)で造粒した。整粒機(TC-Labo、深江パウテック株式会社)で整粒後、打錠機(VELA5、株式会社菊水製作所)で錠径10mm、一錠重量630mgの錠剤を得た。
【0030】
[実施例2]
実施例1のマンニトールをエリスリトール(三栄原エフ・エフ・アイ株式会社製)に置き換え、実施例1と同様にして、錠剤を得た。
【0031】
[実施例3]
実施例1のマンニトールをキシリトール(キシリット、三菱フードテック株式会社製)に置き換え、実施例1と同様にして、錠剤を得た。
【0032】
[比較例1]
実施例1のマンニトールをデキストレイト(レッテンマイヤーズジャパン株式会社製)に置き換え、実施例1と同様にして、錠剤を得た。
【0033】
[比較例2]
実施例1のマンニトールを乳糖水和物(三栄原エフ・エフ・アイ株式会社製)に置き換え、実施例1と同様にして、錠剤を得た。
【0034】
[比較例3]
実施例1のマンニトールを精製白糖(メルク株式会社製)に置き換え、実施例1と同様にして、錠剤を得た。
【0035】
[比較例4]
実施例1のブドウ糖(サンエイ糖化株式会社製)に置き換え、実施例1と同様にして、錠剤を得た。
【0036】
<試験例1>
実施例1~3及び比較例1~4で製造した錠剤、並びに、市販のホスレノールチュアブル錠250mg及び同500mg(バイエル薬品社製)について、苛酷試験を実施し、性状及び崩壊時間(口腔内崩壊時間)を測定した。その結果を表2に示した。
【0037】
【0038】
【0039】
<結果>
表2(試験例1の結果)から、本発明の錠剤は、錠剤としての硬度を維持しつつ、口中溶解性に優れた(口腔内崩壊時間が短い)錠剤であることが分かる。また、苛酷試験では従来製品であるホスレノールチュアブル錠250mg及び同500mg、並びに、比較例1(ホスレノールチュアブル錠が配合しているデキストレイトを使用)及び比較例2~4のでは、苛酷試験後に錠剤が黄色に性状変化したのに対し、本発明の実施例1~3の錠剤では、性状変化は認められなかった。特に、糖アルコールとしてマンニトールを使用した実施例1の錠剤では、エリスリトール又はキシリトールを使用した場合と比較して、硬度、口腔内崩壊時間、性状変化の全てにおいて最も良好な結果が得られた。
【0040】
[実施例4~9]
実施例1のカルメロースカルシウムをクロスポビドン(アイエスピー・ジャパン株式会社製)に置き換え、更にタルク(松村産業株式会社製)を配合して、表3に記載する配合量で、実施例1と同様にして打錠末を製造し、打錠機(HT-P22A、株式会社畑鉄工所)で錠剤を製造した。実施例4~6、8は、錠径10.5mm、一錠重量630mg、実施例7、9は、錠径15mm、一錠重量1260mgの錠剤とした。
【0041】
【0042】
<試験例2>
実施例4~9製造した錠剤について苛酷試験を実施し、苛酷試験後の性状変化及び崩壊時間(口腔内崩壊時間)を測定した。その結果を表4に示した。
【0043】
【0044】
<結果>
表4(試験例2の結果)から、タルクを配合した試験例4、5、及びタルクに加えてステアリン酸マグネシウムを0.24重量%配合した試験例6、7は、苛酷試験後に口腔内崩壊時間の延長は認められなかった。しかしながら、ステアリン酸マグネシウム1.4重量%を配合した実施例8、9では、苛酷試験前は試験例4~7と同程度の口腔内崩壊時間を示したものの、苛酷試験後には口腔内崩壊時間の著しい延長が認められた。したがって、多量のステアリン酸マグネシウムの配合は、苛酷試験後の口腔内崩壊時間の著しい延長の原因になることがわかった。すなわち、ステアリン酸マグネシウムの添加量が0.24重量%程度であれば、苛酷試験の有無にかかわらず崩壊時間の延長は認められないが、1.4重量%程度になると、苛酷試験なしでは崩壊時間の延長は認められないが、苛酷試験後には顕著な崩壊時間の延長が認められた。
【0045】
[実施例10]
炭酸ランタン8水和物(平均粒子径:50μm)5420g、マンニトール(パーテック(登録商標)M200、メルク株式会社製)640g、タルク(松村産業株式会社製)180gをV型混合機(V-200 株式会社ダルトン)で20分混合後、クロスポビドン(アイエスピー・ジャパン株式会社製)60gを添加して、打錠機(HT-P22A、株式会社畑鐵工所)で錠径15mm、一錠重量1260mgで90分間打錠した。スティッキング等の打錠障害もなく打錠可能であった。
【0046】
[実施例11]
炭酸ランタン8水和物(平均粒子径:4.18μm)5420gをV型混合機(V-200 株式会社ダルトン)で30分混合し凝集造粒物とし後、マンニトール(パーテック(登録商標)M200、メルク株式会社製)625g、タルク(松村産業株式会社製)180g、ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社製)15gをV型混合機(V-200 株式会社ダルトン)で20分混合した。更に、クロスポビドン(アイエスピー・ジャパン株式会社製)60gを添加して、打錠機(HT-P22A、株式会社畑鐵工所)で錠径10.5mm、一錠重量630mgで120分間打錠した。スティッキング等の打錠障害もなく打錠可能であった。
【0047】
[実施例12~17及び比較例5~6]
表5の配合量を用い、実施例1と同様にして、打錠機(HT-P22A、株式会社畑鐵工所)を用いて、OD錠(口腔内崩壊錠)を製造した。
【0048】
【0049】
<試験例3>
実施例12~17及び比較例5、6で製造したOD錠について苛酷試験を実施し、苛酷試験後の性状変化及び崩壊時間(口腔内崩壊時間)を測定した。その結果を表6に示した。
【0050】
【0051】
<結果>
表6(試験例3の結果)から、マンニトールの配合量が3~40重量%(実施例12~17)では、錠剤硬度が70~102N、口腔内崩壊時間が20~30秒であった。しかし、マンニトールの配合量が1.5%(比較例5)では、硬度が35Nに低下し口腔内崩壊時間も40~50秒に増加し、マンニトールの配合量が46重量%(比較例6)では、口腔内崩壊時間は20~30秒と実施例12~17と違いはなかったものの、硬度は30Nに低下した。したがって、マンニトールを配合する場合には、その配合量は、3~40重量%が好ましいと考えられる。
【0052】
[実施例18~20及び比較例7~8]
表7の配合量を用い、実施例1と同様にして、打錠機(HT-P22A、株式会社畑鐵工所)を用いて、チュアブル錠を製造した。
【0053】
【0054】
<試験例4>
実施例18~20及び比較例7、8で製造したチュアブル錠について苛酷試験を実施し、苛酷試験後の性状変化及び崩壊時間(口腔内崩壊時間)を測定した。その結果を表8に示した。
【0055】
【0056】
<結果>
表8(試験例4の結果)から、マンニトールの配合量が3~40重量%(実施例18~20)では、錠剤硬度が60~80N、口腔内崩壊時間が20~30秒であった。しかし、マンニトールの配合量が1.5%(比較例7)では、硬度が30Nに低下し口腔内崩壊時間も50~60秒に増加し、マンニトールの配合量が46重量%(比較例8)では、口腔内崩壊時間は20~30秒であり、実施例18~20と違いはなかったものの、硬度は25Nに低下した。したがって、マンニトールを配合する場合には、その配合量は、3~40重量%が好ましいと考えられる。