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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】食品の移し替え装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 47/52 20060101AFI20240222BHJP
   B65G 47/66 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
B65G47/52 A
B65G47/66
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023177414
(22)【出願日】2023-10-13
【審査請求日】2023-10-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】392017048
【氏名又は名称】株式会社ティー・エム・ピー
(74)【代理人】
【識別番号】110001922
【氏名又は名称】弁理士法人日峯国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一雄
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】特公昭57-016767(JP,B2)
【文献】実公平06-049537(JP,Y2)
【文献】実公平04-032349(JP,Y2)
【文献】特開2001-039535(JP,A)
【文献】特開平05-170332(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 47/52
B65G 47/66
A23L 23/00-25/10
A23L 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1製造装置が有する第1移動手段の上面から加熱された製造途中の食品を第2製造装置が有する第2移動手段へ移送するための移送板と、前記移送板の上で前記製造途中の食品を移動するための押え具と、前記移送板および前記押え具をそれぞれ移動するための移動機構と、を備え、
前記移送板は、中央部と、前記中央部の一方側に設けられ前記中央部に対して前記一方側の方向における斜め下方方向に伸びる板状のすくい取部と、前記中央部の他方側に設けられ前記中央部に対して前記他方側の方向における斜め下方方向に伸びる板状の送出部と、を備え、
前記移送板の斜め下方方向に伸びる板状の前記すくい取部の先端部を、前記第1移動手段の前記上面に対して上方から斜め下方方向に向いた状態で密着させ、さらに前記すくい取部の前記先端部を、前記第1移動手段の前記上面に列を成して配置された状態で送られてくる前記製造途中の食品の下面と前記第1移動手段の前記上面との間に、上方から斜め下方方向に向いた状態で入り込ませて、前記製造途中の食品を前記すくい取部ですくい取り、
すくい取った前記製造途中の食品を、前記押え具が、前記移送板の前記すくい取部から前記中央部を越えて前記送出部に移動し、
前記移送板の前記送出部の先端部を前記第2移動手段の上面に密着させた状態で、前記押え具により、前記製造途中の食品を前記第2製造装置の前記第2移動手段の前記上面に列を成した状態で送り出す、
ことを特徴とする食品の移し替え装置。
【請求項2】
請求項1に記載の食品の移し替え装置において、
前記移送板は金属の板で作られており、
前記移送板の前記すくい取部の前記先端部の側には前記食品をすくい取る状態における前記食品の移動方向に沿った方向に、複数の一方側切込みが形成され、前記複数の一方側切込みにより前記すくい取部が複数の分割すくい取端部に分割され、
前記分割すくい取端部の各々が、前記第1移動手段の前記上面に列を成して配置された状態で送られてくる前記製造途中の食品の内の対応する各々の食品の下面と前記第1移動手段の前記上面との間にそれぞれ入り込み、前記分割すくい取端部の各々で対応する前記製造途中の食品のそれぞれをすくい取る、
ことを特徴とする食品の移し替え装置。
【請求項3】
請求項1に記載の食品の移し替え装置において、
前記第1製造装置は前記製造途中の食品を蒸すための装置であり、蒸しあがった前記製造途中の食品が、前記第1移動手段の前記上面に列を成して配置された状態で送出され、
前記押え具は蒸しあがった前記製造途中の食品の移動方向における前後を拘束する構造を備え、
前記押え具により蒸しあがった前記製造途中の食品を拘束し、
前記移送板の前記すくい取部の前記先端部を、蒸しあがった前記製造途中の食品の前記下面と前記第1移動手段の前記上面との間に、上方から斜め下方方向に伸びる状態で入り込ませ、
蒸し上がった前記製造途中の食品を前記移送板の前記すくい取部ですくい取る、
ことを特徴とする食品の移し替え装置。
【請求項4】
請求項2あるいは請求項3の内の一に記載の食品の移し替え装置において、
前記移送板は、前記中央部と前記すくい取部との間に折返し形状を有する一方側緩衝部を備え、前記すくい取部は、前記一方側緩衝部の一方側端部から前記一方側の方向において斜め下方に向かって伸びている、
ことを特徴とする食品の移し替え装置。
【請求項5】
請求項4に記載の食品の移し替え装置において、
前記製造途中の食品は製造途中の餃子であり、
前記第1製造装置は前記製造中の餃子を蒸すための蒸し機であり、
前記第2製造装置は前記製造中の餃子を焼くための焼き機であり、
前記蒸し機から列を成して送出された前記製造途中の餃子を、前記移送板の前記すくい取部ですくい取り、すくい取った前記製造中の餃子を、前記焼き機の前記第2移動手段の前記上面に列を成した状態で送出する、
ことを特徴とする食品の移し替え装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品製造装置において、製造途中の食品を一方の位置から他方の位置に移し替える、食品の移し替え装置、に関する。
【背景技術】
【0002】
菓子類や餃子を含む総菜等の食品の製造過程において、一般的に複数の工程が用いられる。製造装置の構造の関係で、各製造工程における食品の移動を一つのコンベアのみで行うことは非常に難しく、一般的に複数のコンベアが使用される。例えば食品として焼き餃子を例に挙げると、製造装置は蒸すための工程や焼くための工程を備えている。このように食品を製造するために必要となる製造内容の異なる工程を備える製造装置では、ある製造工程から次の製造工程に製造内容が変わる場合に、前記ある製造工程を実行するためのコンベアから前記次の製造工程を実行するためのコンベアに、製造中の食品を移し替えることが行われる。
【0003】
一般的に、食品は傷つき易く、また食品衛生上の要求に対応するため、製造工程において高品質の加工が求められる。例えば加熱される工程において、コンベアの指定位置に正確に食品が移し替えられることが求められる。これらの観点から、製造中の食品を一方のコンベアから他方のコンベアに移し替えるための食品の移し替え装置には、食品に傷を付けないでさらに正確な位置に移し替えることが可能となる、移し替え装置が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6007083号公報
【文献】特許第4161550号公報
【文献】特開平8-58959号公報
【0005】
特許文献1では、図2に記載のとおり、物品処理装置Aの送出しベルトコンベアC1から送出された物品列Wは、図3に記載のとおり、シュータSCを介して第1ベルトコンベアN1に送られ、さらに第1ベルトコンベアN1からシュータS1を介して第2ベルトコンベアN2に送られ、シュータS2を介して、物品処理装置Bの受取りベルトコンベアC2に送られる。
【0006】
特許文献1に記載の装置では、物品処理装置Aの送出しベルトコンベアC1から物品処理装置Bの受取りベルトコンベアC2に、物品列Wが移し替えられるときに、物品列Wが自動落下して移されるので、予定した特定位置に移し替えられるのか疑問である。また物品が傷つく恐れがある。さらにまた物品処理装置Aの送出しベルトコンベアC1から物品処理装置Bの受取りベルトコンベアC2に、物品列Wを移し替える装置が大きなエリアを必要とする問題がある。
【0007】
特許文献2では、焼き餃子の製造工程である蒸しゾーン4と焼きゾーン6とが、同一のチェーン9により駆動されている。この場合は駆動するためのチェーン9が非常に長くなる。蒸しゾーン4と焼きゾーン6とを異なるチェーンで移動したいとのニーズが生まれた場合に、このようなニーズに対応しようとした場合に、製造中の餃子を傷つけることなく、またできるだけ正確な位置に、製造中の餃子を移し替えたいとのニーズに対応することが難しい。正確に表現すると、製造中の餃子を移し替えるための技術や方法が、全く示されていない。
【0008】
特許文献3には、図5および図6に記載のように、搬送板30を前方に移動させて餃子をトレーTに箱詰めする技術が開示されている。この開示内容では、箱詰めする対象の餃子を落下させる方法が用いられている。製造途中の餃子等の食品は傷つき易く、傷つけることなくさらに所定の位置にできるだけ正確に移し替えたい場合に、落下させる方法ではうまく対応できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
食品の製造装置において、ある製造工程から他の製造工程に、製造中の食品例えば製造途中の餃子を移し替える場合に、ある製造工程と他の製造工程とで製造に関係する温度が異なる。これらの温度差が存在する状態で、ある製造工程で製造途中の列を成す複数個の餃子を、傷つけないようにしてそれぞれ他の製造工程の特定の位置に正確に移し替えたいニーズが多く存在する。この場合に、温度差の影響を抑制して、特定の位置に正確に列単位に配置されている餃子を移し替え装置が求められる。従来の装置では、温度差による影響の考慮が不十分であり、列単位の餃子を、特定の位置に正確に移し替えることが難しかった。
【0010】
本発明の目的は、製造途中の食品、例えば製造途中の餃子を、一方の工程から他の工程に、正確に安定して移動することができる、食品の移し替え装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
〔第1の発明〕
第1の発明は、食品を製造するための第1製造装置から次の工程での製造を行うための第2製造装置に、前記第1製造装置から送出された複数の製造途中の食品を前記第2製造装置に移すための、食品の移し替え装置において、
前記第1製造装置あるいは前記第2製造装置の内の少なくとも一つの製造装置では前記食品が加熱され、
前記移し替え装置は、前記第1製造装置から列を成して送出された前記複数の食品をすくい取り、前記第2製造装置に前記すくい取った食品を送出するための移送板を有し、
前記移送板は、その中央に前記すくい取った食品を載せるための中央部を有し、
前記中央部の一方側に、前記第1製造装置から前記列を成して送出される前記複数の食品をすくい取るためのすくい取部を備え、さらに前記中央部の他方側に、すくい取った前記複数の食品を、前記第2製造装置の設定された設定位置に送出するための送出部を備え、
前記すくい取部には前記食品をすくい取る状態における前記食品の移動方向に沿った方向に、複数の一方側切込みが形成され、
また前記送出部には前記食品を送り出す状態における前記食品の移動方向に沿った方向に、複数の他方側切込みが形成され、
前記移し替え装置はさらに前記食品を維持、または前記食品を移動する、ための押え具を有し、
前記押え具で前記第1製造装置から前記列を成して送出された食品を、前記移送板と前記押え具との相対位置を変えることにより、前記すくい取部ですくい取り、さらにすくい取った前記食品を、前記列を維持した状態で前記移送板の前記中央部に移動し、さらに前記移送板の前記中央部から前記移送板の前記送出部に前記食品を移動し、前記送出部から前記第2製造装置の前記設定位置に、前記列を維持した状態で前記食品を送出する、
ことを特徴とする食品の移し替え装置、である。
【0012】
〔第1の発明の作用効果の説明〕
理解し易いように作用効果の説明において、発明の構成が対応する実施例の構成に付された符号を付す。このように実施例の符号を付す理由は、実施例の構成に沿うように発明の構成を限定する意味では全くない。単に読者に対して理解し易くするためである。
【0013】
図2において、第1製造装置30あるいは第2製造装置60の内の少なくとも一つの製造装置において食品が加熱される場合に、移し替え装置100の移送板140は、上述の加熱の影響を受けて、例えば部分的に熱膨張する。この熱膨張で、移送板140のすくい取部142の先端あるいは送出部146の先端が反るなどの変形を生じる恐れがある。
【0014】
移送板140の重要な役割は、列を成して第1製造装置30から送り出されてくる食品20を、傷つけることなくさらに列を崩すことなく正確にすくい取ることである。このためには食品20を移動するための例えばコンベアと対象となる食品とに間に正確に移送板140のすくい取部142の先端が入り込む状態となることがたいへん大切である。もし移送板140のすくい取部142の先端に反りが生じると、食品20を移動するための例えばコンベアと食品とに間に正確に移送板140のすくい取部142の先端を入り込ませることが困難となる。
【0015】
移送板140のすくい取部142の役割と同様に、移送板140の送出部146についても、反りを抑制することが重要となる。移送板140に載せられて第2製造装置60に運ばれる食品を、列を維持したまま第2製造装置60に送出することが必要となる。移送板140から第2製造装置60へ、食品を送り出す際に移送板140の送出部146の先端が第2製造装置60の移動手段の上面に正確に密着することが大切である。もし移送板140の送出部146の先端部に反りが生じて上記上面への密着が困難となると、食品を送出する際に食品の列が崩れてしまう。あるいは正確な位置に食品を移し替えることができなくなる。
【0016】
上述した移送板140のすくい取部142あるいは送出部146の反り等の変形を抑制するために、前記すくい取部142と前記送出部146にはそれぞれ、前記食品20をすくい取る状態あるいは送り出す状態における前記食品20の移動方向に沿った方向に複数の切りこみ156やこの切りこみ158が形成されている。この切りこみ156やこの切りこみ158により、上述の反り等の変形が生じるのを抑制できる。すなわち移送板140のすくい取部142や送出部146は、食品20の列方向に繋がっていると、食品20の方向において反りが生じ、すくい取部142や送出部146の列方向における一部が持ち上がり、上述の密着にすることが困難となる。図3に記載の一方側切込み156あるいは他方側切込み158を形成することで、上述の反りの原因となる上述の列方向における応力を取り除くことが重要となる。
【0017】
第1の発明では、移送板140の一方側に設けられたすくい取部142から列を成す食品20をすくいあげ、すくいあげられた食品20が移送板140の中央部を通過し、移送板140の他方側の送出部146から第2製造装置60に送出される。しかし、従来の装置では移送板140の一方側から列をなす食品を取込み、その後同じ一方側から送出する構造となっている。このような従来方式の移し替え装置100では、移送板140の一方方向を第1製造装置30の方向に向けて食品を取り込んだ後、移送板140の一方方向が第2製造装置60の方向に向くように、移送板140を回転させて、移送板140の一方方向から取込んだ食品を第2製造装置60に送出することになる。従って従来方式の移し替え装置100では、移送板140の回転が必要となり、広いエリアを必要とする。さらに従来の方式では、移し替え装置100の構造が複雑になる。
【0018】
一方本願の第1の発明では、移し替え装置100は、回転動作のための広いエリアを必要としない。即ち第1製造装置30と第2製造装置60との間に、移し替え装置100が配置され、移し替え装置100が有する移送板140のすくい取部142に近接して第1製造装置30の出口が配置され、移送板140の送出部146に近接して第2製造装置60の入口を配置することができる。このような構成により、第1製造装置30と第2製造装置60との間隔を従来の方式より、近付けて配置できる。本発明の方式では、移送板140の一方側であるすくい取部142で列を成す食品20をすくい取って、移送板140の反対側まで列を成す食品20を移動し、他方側の送出部146から、列を成す食品20を送出する。このような動作で重要な課題となるのが、上述した課題である。即ちすくい取部142や送出部146の反り等の変形の抑制である。上述したとおり、すくい取部142や送出部146に、上記列を成す食品20の移動方向に沿う方向の切込み156や切込み158を設けることで、上述の反り等の変形を抑制できる。
【0019】
〔第2の発明〕
第2の発明は、第1の発明の食品の移し替え装置において、前記すくい取部と前記送出部を備える前記移送板は金属板で作られており、さらに前記移送板は前記食品の前記列に沿う方向に長い形状を成し、
前記移送板の前記すくい取部の端部は、複数の前記一方側切込みにより複数の分割すくい取端部に分割され、前記分割された複数の分割すくい取端部はそれぞれ前記列方向において、前記列を成す前記複数の食品のそれぞれに対応する位置に並んで形成されており、
前記移送板の前記送出部の端部は、前記複数の他方側切込みにより複数の分割送出端部に分割され、前記分割された複数の分割送出端部は前記列を成して送出される前記食品のそれぞれに対応する位置に形成され、
前記第1製造装置から送出された前記列を成す前記食品はそれぞれ、対応する位置に形成された前記複数の分割すくい取端部によりすくい取られ、さらにすくい取られた前記列を成す前記食品はそれぞれ、前記複数の分割すくい取端部から対応する前記複数の分割送出端部に移され、前記複数の分割送出端部から前記列を成す前記食品がそれぞれ、前記第2製造装置に設定された対応する前記設定位置に前記列をなして送出される、
ことを特徴とする食品の移し替え装置、である。
【0020】
〔第2の発明の作用効果〕
第2の発明において、前記すくい取部142は、複数の一方側切込み156により、列を成す製造中の食品20のそれぞれの位置に対応する複数の分割すくい取端部143に分かれている。前記すくい取部142が複数の分割すくい取端部143に分かれることにより、各一方側切込み156のところで、前記すくい取部142の先端部に生じる隣の分割すくい取端部143からの力の伝達が阻止され、両サイドから加わる力を阻止することができる。もし複数の前記一方側切込み156が設けられていない場合に、両サイドからの力による影響で、すくい取部142の先端部に反りなどの変形が生じる恐れがある。
【0021】
各分割すくい取端部143が、対応する各食品20の下側に正確に入り込むには、分割すくい取端部143の先端部が薄い形状であることが望ましい。さらに対応する各食品20の下側に、その食品に対応する分割すくい取端部143が正確に入り込むには、分割すくい取端部143の先端部が平らであり、反り等の変形が抑制されていることが重要である。これらの要件は重要であるが、維持し難い性格を有している。もし複数の分割すくい取端部143に分割していない形状、言い換えると列方向において繋がっている長い形状を成す場合、薄いすくい取部142には、前記食品20の列方向において、いろいろな力が加わり、この力により反りが生じる。このため平らな形状を維持することか困難となる。このような課題に対して、第1の発明や第2の発明は、各分割すくい取端部143に悪影響を与える列方向における力の影響を抑制するために、一方側切込み156が複数形成されている。この結果、各分割すくい取端部143で、対応する食品20を正確にすくい上げることが可能となる。
【0022】
同様に、移送板140の送出部146の端部が、複数の前記他方側切込み158により複数の分割送出端部147に分割されている。このため、各分割された分割送出端部147には、その両隣の分割送出端部147からの力の伝達が、阻止される。このことにより、各分割された分割送出端部147において、反りなどの変形の発生が抑制される。分割送出端部147が薄い金属板で作られていることが求められるが、このような薄い金属板であっても、分割送出端部147を平らな形状に維持することが可能となり、これにより各分割送出端部147の先端部が、第2製造装置60の入口の表面に正確に密着し、列を成す各食品20を正確な位置に、列を維持した状態で送出することができる。
【0023】
上述した分割すくい取端部143や分割送出端部147の先端部が、接触する面に対して平らであれば、ある分割すくい取端部143と他の分割すくい取端部143とにおいて前記接触する面との角度に微妙な差が生じていても、食品を正確にすくい取ることができる。また同様に、ある分割送出端部147と他の分割送出端部147とにおいて前記接触する面との角度において微妙な差が生じていても、食品を正確に送出することができる。分割すくい取端部143や分割送出端部147が、それぞれにおいて先端が平らであることが重要である。このためには、一方側切込み156や他方側切込み158の役割が非常に重要である。
【0024】
〔第3の発明〕
第3の発明は、第2の発明において、
前記移送板は、前記中央部と、前記中央部の前記一方側に設けられた前記すくい取部と、前記中央部の他方側に設けられた前記送出部と、を備え、
前記移送板は、前記中央部と前記すくい取部との間に、折返し形状を有する一方側緩衝部をさらに備え、
前記移送板は、前記中央部と前記送出部との間に、折返し形状を有する他方側緩衝部をさらに備え、
前記すくい取部は、前記一方側緩衝部の一方側端部から前記一方側の方向において斜め下方に向かって伸びており、
前記送出部は、前記他方側緩衝部の他方側端部から前記他方側の方向において斜め下方に向かって伸びている、
ことを特徴とする食品の移し替え装置、である。
【0025】
〔第3の発明の作用効果〕
食品製造では、製造工程での温度変化が大きく、これに伴う移送板140での温度の不均一に起因する反りや変形が問題となる。例えば食品を製造するために蒸す場合、あるいは焼く場合、製造中の食品自身が高熱となる。さらに製造中の食品を移動するコンベアなどの移動手段が高温となる。このため移し替え装置100の移送板140は、熱の影響を受ける。移送板140のすくい取部142や送出部146も熱の影響を受ける。即ち高温の製造中の食品を送出部146に載せることにより、またすくい取部142や送出部146が高温の食品移動手段に接することにより、熱の影響を受けることになる。
【0026】
従来の方式と異なり、本発明は、第1製造装置30からの食品を一方側から移送板140のすくい取部142ですくい取り、移送板140の表面を介してすくい取った餃子20を一方側から他方側に移し、他方側の送出部146から第2製造装置60に食品を送り出す。移送板140の一方側であるすくい取部142から、他方側である送出部146まで、移送板140の全体が、第1製造装置30や第2製造装置60に伴う熱の影響を受ける。さらに第1製造装置30にかかわる温度の状態と第2製造装置60にかかわる温度の状態が異なる。また食品は列を成しており、一方側のすくい取部142で列をなす食品をすくい上げると、列を維持したまま、他方側に移し、列を成した状態で第2製造装置60に送り出す。
【0027】
移送板140は一方側と他方側から熱の影響を受けると、熱膨張などのため、温度差に伴う複雑な力が作用する。第1の発明や第2の発明で、分割すくい取端部143や分割送出端部147の先端部の反りを抑制することについて作用効果を説明した。さらに望ましくは、分割すくい取端部143で製造中の食品20をすくい取る場合の分割すくい取端部143の角度を良好な状態に維持することである。また製造中の食品20を第2製造装置60の入口に送出する場合の送出部146の角度を良好な状態に維持することである。
【0028】
第3の発明では、図3に記載のとおり、移送板140の中央部144とすくい取部142との間に、一方側緩衝部152を設けた。この一方側緩衝部152により、すくい取部142の先端部が第1製造装置30からの製造中の食品20の下面の下に入り込むことにより、分割すくい取端部143の下向きの角度が好ましい状態に維持される。同様に送出部146についても、送出部146の先端部が、第2製造装置60の入口の部分に接することにより、他方側緩衝部154の作用により、送出部146の下向きの角度が好ましい角度に維持される。
【0029】
重要なことは、一方側緩衝部152や他方側緩衝部154は、食品の列方向において、それぞれ一体となっており、一方側緩衝部152や他方側緩衝部154が、一方側切込み156や他方側切込み158によって分割されていないことである。一方側切込み156や他方側切込み158により、すくい取部142や送出部146の部分だけでなく一方側緩衝部152や他方側緩衝部154の部分も分割してしまうと、複数存在する分割すくい取端部143の各々と接触するコンベア42の面とのなす角度のバラツキが大きくなる恐れがある。経時変化により上述の角度差が大きくなると、本来は接触すべきコンベア42の表面に接触しない分割すくい取端部143が生じる恐れがある。
【0030】
〔第4の発明〕
第4の発明は、第3の発明において、
前記移送板はその中央の位置に前記中央部を有しており、前記中央部の裏面に、前記中央部の前記裏面に密着する前記移送板よりも厚い金属製の板状の安定化板が設けられている、
ことを特徴とする食品の移し替え装置、である。
【0031】
〔第4の発明の作用効果〕
すくい取部142と他方側緩衝部154とは、中央部144を介して接続されている。上述したように、食品の製造中の工程では、いろいろ複雑に熱の影響を受け、温度差に伴い発生する力の影響を受ける。複雑な熱の影響を抑制するには、大きな概念として、温度の均一化と安定化を図ることが好ましい。中央部144に厚い金属板を密着させることにより、中央部144の部分の温度の均一化を図ることができ、移送板140の部分的な温度変化を抑制し、安定化することができる。上述の第1の発明から第4の発明では、製造中の食品20に一方側に設けられたすくい取部142から取込み、中央部144を通り越して他方側に移動し、他方側に設けられた送出部146から第2製造装置60に送り出す構成である。このため移送板140全体が熱の影響を受け易い。従って移送板140全体の熱の均一化、安定化が望ましい。また中央部144に安定化板150を密着させることにより温度の均一化を図ることができるのに加えて、中央部144と安定化板150を密着させることにより、熱容量を大きくすることが可能となる。熱容量を大きくできることにより、食品20の移動に伴う急激な熱変化を和らげることができる。
【0032】
〔第5の発明〕
第5の発明は、第4の発明において、
前記列を成して移動する前記食品は前記列を成して移動する餃子であり、前記第1製造装置は製造中の前記餃子を蒸すための蒸し機であり、前記第2製造装置は製造中の前記餃子を焼くための焼き機であり、
前記焼き機は、前記餃子の移動方向に沿って並べられた多数の熱せられた鉄板を備えており、
前記蒸し機から前記列を成して送出された前記餃子を、前記移送板の前記すくい取部ですくい取り、
すくい取った前記製造中の餃子を、前記移送板の前記送出部から、前記焼き機の入口に位置する鉄板に送出する、
ことを特徴とする食品の移し替え装置、である。
【0033】
熱を発生する餃子20の蒸し器から熱を発生する餃子20の焼き機への餃子20の移し替えの装置として、本発明が適用された移し替え装置100を使用することにより、熱の影響に耐えることができ、蒸し器から焼き機へ、列をなして配置された餃子20を、正確にしかも列を維持した状態で、移し替えることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、製造途中の食品、例えば製造途中の餃子を、一方の工程の製造を行う一方の製造装置から、他方の工程の製造を行う他方の製造装置に、正確に安定して移動することができる、食品の移し替え装置を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明が適用された移し替え装置100の使用状態を説明する説明図である。
図2図1に記載の移し替え装置100の動作を説明するための部分拡大図である。
図3a】移し替え装置100に使用される移送板140の平面図である。
図3b図3aのA―A断面図である。
図3c図3aにおけるB―B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
〔はじめに〕
本実施例において、同一符号は同様の作用を為し、同様の効果を奏する。説明の煩雑さを避けるために、同一符号に対する作用や効果を含む説明を省略することがある。
【0037】
1.本発明が適用された移し替え装置100の使用例の説明
図1は、本発明が適用された移し替え装置100の具体的な使用例を説明する説明図である。本実施例は、食品の一例として餃子20を製造する製造工程に、本発明が適用された移し替え装置100を使用した例を示す。餃子20は食品の一例であり、これに限るものではない。また総菜であっても良いし、菓子類であっても良く、他の食品であっても良い。以下餃子20を代表例として説明する。
【0038】
第1製造装置30は製造中の餃子20を蒸すための蒸し機である。蒸しあがった餃子20はコンベア42により、第1製造装置30の出口46に導かれる。ここに示す例では2列に並んだ餃子20が出口46に導かれる。なおこの実施例では1列は5個の餃子20で構成されている。ここに示す例は、一例であり、1列を構成する餃子20はいろいろな個数であってもかまわない。またこの実施例では、2列を単位として、一度に2列の餃子20を移し替え装置100で、第1製造装置30から第2製造装置60へ移し替えるが、2列でなくて1列でも良く、また2列より多い列であっても良い。
【0039】
移し替え装置100は、矢印44に示す方向に移動するコンベア42を備えた第1製造装置30から送り出されてきた蒸しあがった餃子20を、第2製造装置60である焼き機に移し替えるために、この実施例では使用されている。第2製造装置60は図示しないヒータで加熱された加熱金属板62を多数備えていて、餃子20の移動方向である矢印68に示す方向に、加熱金属板62が並べられており、これら加熱金属板62は連続して移動する。移し替え装置100により、第1製造装置30の出口46から蒸しあがった餃子20を第2製造装置60の入口66に位置する加熱金属板62に移し替えることにより、製造中の餃子20を第2製造装置60で焼き上げることができる。
【0040】
移し替え装置100は第1製造装置30の出口46に位置する所定の数の餃子20を、加熱金属板62の上に移し替える。この実施例では、1列を5個の餃子20で構成し、一度に2列の餃子20を一移動単位として、移し替え装置100の破線で記載の食品移動部120により、第2製造装置60の入口66に位置する加熱金属板62の上に移し替える。この食品移動部120を移動するために第1支持装置122や第1移動装置110が設けられている。矢印116に示すように、一回の移動単位の餃子20を食品移動部120で、第1製造装置30の出口46から、第2製造装置60の入口66の加熱金属板62に繰り返し移動する。
【0041】
2.移し替え装置100の具体的な構成の説明
図2は、図1に記載の移し替え装置100の詳細を示す拡大図である。移し替え装置100は、第1製造装置30の出口46に送出される列を成す餃子20をすくい取って第2製造装置60の入口66に位置する加熱金属板62Bに移し替えるための移送板140と、移送板140を支持する第1支持装置122と、第1支持装置122を移動することにより移送板140を所定の位置に移動するための第1移動装置110と、対象とする餃子20の前後をそれぞれ拘束して所定の位置に餃子20を保持したり、あるいは餃子20を所定の位置に移動したりするための第1押え具132や第2押え具134を、備えている。
【0042】
具体的には、第1押え具132と第2押え具134は、図面の表から裏の方向に、列を構成する餃子20にそれぞれ対応するように、餃子20の列に対応して、2列を成して並んでいる。第1押え具132は第1列目の餃子20に対応し、第2押え具134は第2列目の餃子20に対応する。第1押え具132と第2押え具134は、中央に穴が形成された形状を有していて、前記穴に餃子20がそれぞれ入り込み、餃子20の少なくとも移動方向における後方拘束し、前記移動方向の後方から餃子20を押す状態で作用する。
【0043】
移送板140のすくい取部142の先端を、第1製造装置30から送出された列を成す餃子20の下面とコンベア42との間に位置させる。すくい取る対象となる列を構成する餃子20の後方を第1押え具132や第2押え具134により、移動方向に各餃子20の後方を押すことにより、すくい上げの対象となる餃子20を、すくい取部142ですくい取り、さらにすくい取った餃子20を移送板140の中央部144に移動することができる。中央部144に位置した移し替え対象の餃子20を、第1押え具132や第2押え具134により、後方から押すことにより、列を成す餃子20を中央部144から送出部146に移動することができ、送出部146から加熱金属板62Bに移し替え対象餃子20を送出すことができる。
【0044】
本実施例では第1押え具132と第2押え具134とにより、2列の餃子20を一度にすくい取部142ですくい取り、送出部146から加熱金属板62Bの設定位置に載せることができる。第1押え具132や第2押え具134を移動するために第2支持装置124と第2移動装置112が設けられ、移送板140に対して第2支持装置124を餃子20の移動方向に動かすことにより、移送板140のすくい取部142から送出部146に2列の餃子20を移動することができる。第1押え具132や第2押え具134はそれぞれ、餃子20の列方向に、列を構成する餃子20の数に基づく数だけ設けられ、第2支持装置124により保持されている。第2製造装置60は上述の通り、餃子20の焼き機であり、各加熱金属板62はヒータ64で加熱され、送出部146から送り出された餃子20を焼く動作を行う。
【0045】
図2に記載の移送板140の平面図を図3aに示し、図3aのA-A断面図を図3bに、また図3aのB-B断面図を図3cに記載する。図2図3において、移送板140は、第1製造装置30の出口46からすくい取った列を成す餃子20を載せて移動するための中央部144を有している。中央部144の一方側である第1製造装置30の側に、第1製造装置30から列を成して送出されてきた所定の数の餃子20をすくい取るためのすくい取部142を備えている。この実施例では一例として5個の餃子20がコンベア42を横切る方向に1列に並んでいる。
【0046】
2列に並んだ餃子20が、それぞれ第1押え具132や第2押え具134により上から押えられる。この状態でコンベア42の移動に従って最初の列の餃子20が取部142の先端に近づくと、移送板140のすくい取部142の一方側先端が、コンベア42の上面とすくい取る対象の列を構成する餃子20の下面に近づき、さらに続いて、コンベア42の上面と餃子20の下面との間にすくい取部142が入り込み、列単位で構成する餃子20がすくい取られる。この実施例では第1押え具132や第2押え具134を保持する第2支持装置124が第2移動装置112に保持された状態で、コンベア42の速度に対応した速度で移動する。上記2列の内の最初の列を構成する餃子20がコンベア42の移動に基づいてすくい取部142によりすくい取られると次にすくい取部142の先端部が2列目の列を構成する餃子20の下面とコンベア42の上面との間に入り込む。このようにして2列の餃子20が全てすくい取部142ですくい取られ、さらに移送板140の中央に位置する中央部144に第1押え具132や第2押え具134により移動させられる。上記すくい取部142による餃子20のすくい取りや、すくい取った餃子20の中央部144への移動は第1支持装置122と第2支持装置124との位置関係を変えることにより、行われる。具体的には、移送板140を指示する第1支持装置122に対して第1押え具132や第2押え具134を支持する第2支持装置124を、すくい取部142が存在する移送板140の一方側から移送板140の中央部144の方に動かすことにより、行われる。
【0047】
上述の第1支持装置122と第2支持装置124との位置関係を制御する方法として、もっとも単純な方法は、第1支持装置122をほぼ停止状態として、第2支持装置124を移送板140のすくい取部142から中央部144の方に移動する方法である。移し替え装置100の移し替え動作を早くする場合は、第1支持装置122を停止ではなく、第2製造装置60の入口66の方向に移動しながら、第2支持装置124を第1支持装置122の移動速度より速い速度で、移送板140のすくい取部142から中央部144へ、さらに送出部146へと動かすことである。
【0048】
3.移送板140の構造の説明
3.1 すくい取部142や送出部146の構造と作用効果の説明
図3aにおいて、金属の板で作られている移送板140は、上述の通り、中央に平らな形状の中央部144が形成され、中央部144の一方側にすくい取部142が形成され、中央部144の他方側に送出部146が形成されている。移送板140はコンベア42の幅方向である餃子20の列方向に長い形状を成している。中央部144とすくい取部142との間に餃子20の列方向に長い形状の一方側緩衝部152が設けられ、中央部144と送出部146との間に、他方側緩衝部154が設けられている。
【0049】
移送板140のすくい取部142の先端部と送出部146の先端部はそれぞれ、複数の一方側切込み156や他方側切込み158により分割されている。すくい取部142や送出部146の幅に対する一方側切込み156や他方側切込み158の長さは、すくい取部142や送出部146の幅の半分以上、好ましくは7割以上の長さである。すくい取部142は一方側切込み156により分割され複数の分割すくい取端部143が形成されている。この複数の分割すくい取端部143は、すくい取る対象の餃子20に対応しており、列を形成する餃子20はそれぞれ、各分割すくい取端部143に対応し、対応する分割すくい取端部143により対応する餃子20がすくい取られる。
【0050】
移送板140の送出部146もすくい取部142と同様、他方側切込み158により分割され、複数の分割送出端部147が形成されている。分割送出端部147はそれぞれ分割すくい取端部143に対応しており、対応する分割すくい取端部143ですくい取られた餃子20は中央部144を通過して移動し、対応する分割送出端部147から第2製造装置60の入口66に位置する加熱金属板62Bに送出される。
【0051】
図3bに記載のごとく、すくい取部142を構成する複数の分割すくい取端部143はそれぞれ、中央部144の一方側に設けられた一方側緩衝部152の一方側から、一方側方向における斜め下方向に向かって伸びている。また分割送出端部147は中央部144の他方側に設けられた他方側緩衝部154の他方側端部より、他方側方向における斜め下方向に向けて伸びている。
【0052】
餃子20の蒸し機である第1製造装置30および餃子20の焼き機である第2製造装置60は、加熱手段を備えていて、餃子20自身も高温となる。この実施例では第1製造装置30と第2製造装置60の両方の装置が加熱機能を有しているが、少なくとも一つの装置が加熱機能を有している場合、餃子20自身が高温になり、あるいは餃子20を移動する第1製造装置30における移動手段や第2製造装置60における移動手段が高温となり、移し替え装置100の移送板140の温度を上昇させる。移し替え装置100の移送板140は、上述の熱の影響を受け、例えば熱膨張する。この熱膨張により、移送板140のすくい取部142や送出部146が反る恐れがある。
【0053】
移送板140の重要な役割は、列を成して第1製造装置30から送り出されてくる食品20を傷つけることなく正確にすくい取ることである。このためには食品20を移動するための例えばコンベアと食品とに間に正確に移送板140のすくい取部142の先端が入り込むことが可能となる状態を維持することがたいへん大切である。もし移送板140のすくい取部142の先端に反りが生じると、食品20を移動するための例えばコンベアと食品とに間に移送板140のすくい取部142の先端を正確に入り込ませることが困難となる。
【0054】
移送板140のすくい取部142の役割と同様に、移送板140の送出部146においても正確な位置に列を崩すことなく餃子20を送り出すためには、反りを抑制することがたいへん重要となる。移送板140に載せられて第2製造装置60の入口に運ばれた餃子20を、列を維持したまま第2製造装置60に送出することが必要となる。移送板140から第2製造装置60の入口へ、食品を送り出す際に移送板140の送出部146の先端が第2製造装置60の入口の移動手段、例えば加熱金属板62bの上面に、正確に密着することが大切です。もし移送板140の送出部146の先端部に反りが生じると、送り出した餃子20の列が崩れてしまう恐れがある。さらに餃子20に傷を付ける可能性がある。
【0055】
上述した移送板140のすくい取部142や送出部146の反りを抑制するために、前記すくい取部142と前記送出部146にはそれぞれ、餃子20をすくい取る状態あるいは送り出す状態における餃子20の移動方向に沿った方向に、複数の切りこみ156や158が形成されている。この一方側切込み156や他方側切込み158により、上述の反りなどの変形を抑制できる。なお一方側切込み156と次の一方側切込み156との間の間隔は、60mmから150mmの間が望ましい。この間隔が広くなると先端部に反りが生じ易くなる。他方側切込み158と次の他方側切込み158との間隔も同様であり、上記間隔を広くすると反りが生じ、経時変化により、第1製造装置30や第2製造装置60における表面との密着性が悪くなる恐れがある。
【0056】
図3aに記載の複数の一方側切込み156により分割された各分割すくい取端部143は、図3bに記載のように、一方側緩衝部152から前方方向の斜め下方向に向かって伸びている。上述のとおり複数の一方側切込み156により、各分割すくい取端部143は両隣から切り離されており、両隣の分割すくい取端部143に生じた力の影響が両側の一方側切込み156により分断される。このため各分割すくい取端部143の先端は、反りが無く平らな形状を維持でき、各分割すくい取端部143の先端の全体を第1製造装置30のコンベア42の上面に近接させ密着させることができる。この結果、各分割すくい取端部143が、列を成して送られてくる各餃子20の下面とコンベア42の上面との間にそれぞれ入り込むことが可能となり、餃子20で構成する列を維持した状態で、第1押え具132や第2押え具134により、すくい取ることが可能となる。もちろん餃子20に傷などが付くことも抑制できる。
【0057】
同様のことが移送板140の送出部146に対しても生じている。送出部146は、複数の他方側切込み158により複数の分割送出端部147に分かれているので、各分割送出端部147はそれぞれの両隣からの力の影響を他方側切込み158により抑制することができる。このため送出部146を構成している各分割送出端部147の先端部の反りなどの変形が抑制され、各分割送出端部147の先端部分の全体が、第2製造装置60の入口66に位置する加熱金属板62Bの上面に密着する平らな状態となる。これにより、列を成して中央部144から送られてくる餃子20を、列を崩すことなく図2に記載する加熱金属板62Bの上面に送り出すことができる。餃子20を傷つけることも防止できる。
【0058】
3.2 対象食品を一方側から取込み他方側から送出する方式の説明
本実施例では、餃子20の移し替える方法として、移送板140の一方側に設けられたすくい取部142から列を成す食品20をすくいあげ、すくいあげられた食品20が移送板140の中央部を通過し、移送板140の他方側の送出部146から第2製造装置60の入口に送出される。即ち移送板140の一方側から送られてくる移し替える対象の餃子20をすくい上げ、次に移送板140の他方側に餃子20を移動し、移送板140の他方側から送り出す。この方式により、移し替え装置100が必要とするスペースを縮小できる。
【0059】
一方、従来行われていた方法は、移し替え装置100の一方側から移し替える対象の餃子20を取込み、移し替え装置100自身が回転して向きを変え、餃子20を取り込んだ側である同じ一方側から、取込んだ餃子20を送出する構造となっている。このような従来方式の移し替え装置100では、上述の通り、移送板140の一方方向を第1製造装置30の方向に向けて食品を取り込んだ後、移送板140の一方方向を第2製造装置60の方向に向くように回転させて、移送板140の一方方向から取込んだ食品を第2製造装置60に送出することになる。従って従来方式の移し替え装置100では、移送板140を回転させるための構成や、移送板140を回転させるための広いエリアが必要となる。また処理速度が遅くなる。上述の通り、本願発明では、移送板140を回転する必要性が無く、狭いエリアで、しかも簡単な構造で、第1製造装置30から第2製造装置60に餃子20を移し替えることが可能となる。
【0060】
3.3 一方側緩衝部152や他方側緩衝部154の説明
本実施例では、上述の通り、移し替え装置100に設けられた移送板140は、中央部144と、中央部144の一方側に設けられたすくい取部142と、中央部144の他方側に設けられた送出部146を備えている。さらに移送板140は、中央部144とすくい取部142との間に、折返し形状を有する一方側緩衝部152を備え、中央部144と送出部146との間に、折返し形状を有する他方側緩衝部154をさらに備えている。すくい取部142は、一方側緩衝部152の一方側端部から前記一方側の方向において斜め下方に向かって伸びている。また送出部146は、他方側緩衝部154の他方側端部から前記他方側の方向において斜め下方に向かって伸びている。
【0061】
すくい取部142を構成する複数の分割すくい取端部143のそれぞれが、コンベア42の上面に密着した状態となるためには、すくい取部142の伸びる方向である斜め下向きの方向の水平に対する角度θ1が柔軟に変化できることが好ましい。このような作用を成すために、実施例では、一方側緩衝部152は折返し形状を有していて、この折返し形状が前述の各分割すくい取端部143に対応できるように、餃子20の成す列方向に伸びている。
【0062】
上述した一方側緩衝部152の折返し形状は、一方側緩衝部152の中央部144との接続端P1から一方側方向において斜め下方に伸び、折返し部P2で折り返されて斜め上方向に向かって伸び、接続端P3で分割すくい取端部143と接続する。分割すくい取端部143は、一方側緩衝部152の接続端P3から斜め下方に向かって伸びている。実施例のごとく3カ所で向きが変わる折返し形状を成しているので、角度θ1は分割すくい取端部143の一方側の先端が受ける小さな力で変化することができる。この結果各分割すくい取端部143の先端をコンベア42の上面に安定して密着させることが可能となる。
【0063】
分割送出端部147に対する他方側緩衝部154の作用効果も上述した一方側緩衝部152とほぼ同様である。他方側緩衝部154と中央部144の他方側端との接続端P5で他方側緩衝部154は他方側の方向において下方に向かう方向に折れ曲がり、さらに折返し部P6で上方に向かう方向に折れ曲がり、分割送出端部147との接続端P7で再び折れ曲がり、分割送出端部147が接続端P7から斜め下方に向かって伸びる。このように複数回折れ曲ることにより、角度θ2の大きさは各分割送出端部147の他方側先端に作用する小さな力で変化する。この構造により、各分割送出端部147の先端部が第2製造装置60の加熱金属板62Bの上面に密着することができる。
【0064】
さらに製造中の食品は加熱され高い温度に維持される。この影響で、中央部144の一方側と他方側は温度変化が大きく、温度変化に伴う問題が発生し易い。例えば第1製造装置30で餃子20を蒸す場合、あるいは第2製造装置60で餃子20焼く場合、製造中の食品である餃子20自身が高熱となる。さらに製造中の食品である餃子20を移動するコンベアなどの移動手段が高温となる。このため移し替え装置100の移送板140は、熱の影響を受ける。移送板140のすくい取部142や送出部146も熱の影響を受ける。例えば高温の製造中の餃子20を送出部146に載せることにより、またすくい取部142や送出部146が高温の食品移動手段に接することにより、熱の影響を受ける。またすくい取部142や送出部146の長手方向である、餃子20の列に沿う方向においても温度変化が生じる恐れがある。
【0065】
上述したすくい取部142や送出部146において複数の一方側切込み156を設けることで、すくい取部142や送出部146の長手方向である餃子20の列方向の温度変化による影響を抑制できることを説明した。さらに加えて本実施例では、餃子20の移動方向における温度変化に伴う影響を一方側緩衝部152や他方側緩衝部154により抑制することができる。
【0066】
3.4 中央部144に密着固定されている安定化板150の作用効果の説明
図3bや図3cに示す通り本実施例では、中央部144の裏面に中央部144よりも厚い金属を密着させている。すくい取部142と他方側緩衝部154とは、中央部144を介して接続されている。上述したように、食品の製造中の工程では、いろいろ複雑に熱の影響を受け、温度差に伴い発生する力の影響を受ける。複雑な熱の影響を抑制するには、大きな概念として、温度の均一化と安定化を図ることが好ましい。中央部144に厚い金属板を密着させることにより、中央部144の部分の温度の均一化を図ることができ、移送板140の部分的な温度変化を抑制し、安定化することができる。上述の実施例では、製造中の食品20に一方側に設けられたすくい取部142から取込み、中央部144を通り越して他方側に移動し、他方側に設けられた送出部146から第2製造装置60に送り出す構成である。このため移送板140全体が熱の影響を受け易い。従って移送板140全体の熱の均一化、安定化が望ましい。また中央部144に安定化板150を密着させることにより温度の均一化を図ることができるのに加えて、中央部144と安定化板150を密着させることにより、熱容量を大きくすることが可能となる。熱容量を大きくできることにより、餃子20の移動に伴う急激な部分的熱変化を和らげることができる。
【0067】
中央部144はすくい取部142や送出部146と一体の金属板で作る方が作り易い。すくい取部142や送出部146は薄い形状の方が、餃子20を傷つけないでしかも列を維持した状態で取り込みさらに送出するのに適している。もちろん中央部144よりすくい取部142の先端部や送出部146の先端部は薄い形状とすることが可能であり、本実施例においてもその方が好ましい。しかし一体の金属で形成する場合、すくい取部142や送出部146の部分に対して中央部144の部分の厚さを大きく変えることが難しい。製造上において手間が掛かる。一方中央部144の部分は、温度変化を考慮した変形に関する強度的な観点において、強い強度が望ましい。本実施例のように中央部144を安定化板150に密着させて固定することにより、反りなどの変形を抑制できる。なお固定方法としては、ねじ止め等が適切である。
【0068】
本実施例では、図3cに記載のごとく、金属板で作られた中央部144は、中央部144より厚い金属板で作られた安定化板150に、密着した状態でねじ止め等の手段により固定されている。さらに安定化板150は第1支持装置122と一体に作られている。第1支持装置122自身も移送板140より厚い金属板で作られているので、移送板140は冷却性に優れており、さらに部分的な温度差等が抑制され、反り等が生じるのを抑制できる。
【0069】
上記実施例における第1の特徴は、餃子20を製造するための第1製造装置30から次の工程での製造を行うための第2製造装置60、第1製造装置30から送出された複数の製造途中の餃子20を第2製造装置60に移すための、移し替え装置100において、
第1製造装置30あるいは第2製造装置60の内の少なくとも一つの製造装置では前記食品が加熱され、
移し替え装置100は、第1製造装置30から列を成して送出された前記複数の餃子20をすくい取り、第2製造装置60にすくい取った餃子20を送出するための移送板140を有し、
移送板140は、その中央にすくい取った餃子20を載せるための中央部144を有し、
中央部144の一方側に、第1製造装置30から前記列を成して送出される前記複数の餃子20をすくい取るためのすくい取部142を備え、さらに中央部144の他方側に、すくい取った複数の餃子20を、第2製造装置60の設定された設定位置に送出するための送出部146を備え、
すくい取部142には餃子20をすくい取る状態における餃子20の移動方向に沿った方向に、複数の一方側切込み156が形成され、
また送出部146には餃子20を送り出す状態における餃子20の移動方向に沿った方向に、複数の他方側切込み158が形成され、
移し替え装置100はさらに餃子20を維持、または餃子20を移動する、ための第1押え具132あるいは第2押え具134を有し、
第1押え具132で第1製造装置30から列を成して送出された餃子20を、移送板140と第1押え具132との相対位置を変えることにより、すくい取部142ですくい取り、さらにすくい取った餃子20を、前記列を維持した状態で移送板140の中央部144に移動し、さらに移送板140の中央部144から移送板140の送出部146に餃子20を移動し、送出部146から第2製造装置60の設定位置に、前記列を維持した状態で餃子20を送出する、ことである。
【0070】
上述したように、図2において、第1製造装置30あるいは第2製造装置60の内の少なくとも一つの製造装置において食品が加熱される場合に、移し替え装置100の移送板140は、上述の加熱の影響を受けて、例えば部分的に熱膨張する。この熱膨張で、移送板140のすくい取部142の先端あるいは送出部146の先端が反るなどの変形を生じる恐れがある。
【0071】
移送板140の重要な役割は、列を成して第1製造装置30から送り出されてくる食品20を、傷つけることなくさらに列を崩すことなく正確にすくい取ることである。このためには食品20を移動するための例えばコンベアと対象となる食品とに間に正確に移送板140のすくい取部142の先端が入り込む状態となることがたいへん大切である。もし移送板140のすくい取部142の先端に反りが生じると、食品20を移動するための例えばコンベアと食品とに間に正確に移送板140のすくい取部142の先端を入り込ませることが困難となる。
【0072】
移送板140のすくい取部142の役割と同様に、移送板140の送出部146についても、反りを抑制することが重要となる。移送板140に載せられて第2製造装置60に運ばれる食品を、列を維持したまま第2製造装置60に送出することが必要となる。移送板140から第2製造装置60へ、食品を送り出す際に移送板140の送出部146の先端が第2製造装置60の移動手段の上面に正確に密着することが大切である。もし移送板140の送出部146の先端部に反りが生じて上記上面への密着が困難となると、食品を送出する際に食品の列が崩れてしまう。あるいは正確な位置に食品を移し替えることができなくなる。
【0073】
上述した移送板140のすくい取部142あるいは送出部146の反り等の変形を抑制するために、前記すくい取部142と前記送出部146にはそれぞれ、前記食品20をすくい取る状態あるいは送り出す状態における前記食品20の移動方向に沿った方向に複数の切りこみ156やこの切りこみ158が形成されている。この切りこみ156やこの切りこみ158により、上述の反り等の変形が生じるのを抑制できる。すなわち移送板140のすくい取部142や送出部146は、食品20の列方向に繋がっていると、食品20の方向において反りが生じ、すくい取部142や送出部146の列方向における一部が持ち上がり、上述の密着にすることが困難となる。図3に記載の一方側切込み156あるいは他方側切込み158を形成することで、上述の反りの原因となる上述の列方向における応力を取り除くことが重要となる。
【0074】
上述の第1の特徴では、移送板140の一方側に設けられたすくい取部142から列を成す食品20をすくいあげ、すくいあげられた食品20が移送板140の中央部を通過し、移送板140の他方側の送出部146から第2製造装置60に送出される。しかし、従来の装置では移送板140の一方側から列をなす食品を取込み、その後同じ一方側から送出する構造となっている。このような従来方式の移し替え装置100では、移送板140の一方方向を第1製造装置30の方向に向けて食品を取り込んだ後、移送板140の一方方向が第2製造装置60の方向に向くように、移送板140を回転させて、移送板140の一方方向から取込んだ食品を第2製造装置60に送出することになる。従って従来方式の移し替え装置100では、移送板140の回転が必要となり、広いエリアを必要とする。さらに従来の方式では、移し替え装置100の構造が複雑になる。
【0075】
上述の第1の特徴では、移し替え装置100は、回転動作のための広いエリアを必要としない。即ち第1製造装置30と第2製造装置60との間に、移し替え装置100が配置され、移し替え装置100が有する移送板140のすくい取部142に近接して第1製造装置30の出口が配置され、移送板140の送出部146に近接して第2製造装置60の入口を配置することができる。このような構成により、第1製造装置30と第2製造装置60との間隔を従来の方式より、近付けて配置できる。本発明の方式では、移送板140の一方側であるすくい取部142で列を成す食品20をすくい取って、移送板140の反対側まで列を成す食品20を移動し、他方側の送出部146から、列を成す食品20を送出する。このような動作で重要な課題となるのが、上述した課題である。即ちすくい取部142や送出部146の反り等の変形の抑制である。上述したとおり、すくい取部142や送出部146に、上記列を成す食品20の移動方向に沿う方向の切込み156や切込み158を設けることで、上述の反り等の変形を抑制できる。
【0076】
上述の実施例の第2の特徴は、第1の特徴の食品の移し替え装置100において、すくい取部142と送出部146を備える移送板140は金属板で作られており、さらに移送板140は餃子20の前記列に沿う方向に長い形状を成し、
移送板140のすくい取部142の端部は、複数の一方側切込み156により複数の分割すくい取端部143に分割され、前記分割された複数の分割すくい取端部143はそれぞれ前記列方向において、前記列を成す前記複数の餃子20のそれぞれに対応する位置に並んで形成されており、
移送板140の送出部146の端部は、前記複数の他方側切込み158により複数の分割送出端部147に分割され、分割された複数の分割送出端部147は前記列を成して送出される餃子20のそれぞれに対応する位置に形成され、
第1製造装置30から送出された前記列を成す餃子20はそれぞれ、対応する位置に形成された前記複数の分割すくい取端部143によりすくい取られ、さらにすくい取られた前記列を成す餃子20はそれぞれ、複数の分割すくい取端部143から対応する複数の分割送出端部147に移され、複数の分割送出端部147から前記列を成す餃子20がそれぞれ、第2製造装置60に設定された対応する設定位置に前記列をなして送出される、ことである。
【0077】
第2の特徴において、前記すくい取部142は、複数の一方側切込み156により、列を成す製造中の食品20のそれぞれの位置に対応する複数の分割すくい取端部143に分かれている。前記すくい取部142が複数の分割すくい取端部143に分かれることにより、各一方側切込み156のところで、前記すくい取部142の先端部に生じる隣の分割すくい取端部143からの力の伝達が阻止され、両サイドから加わる力を阻止することができる。もし複数の前記一方側切込み156が設けられていない場合に、両サイドからの力による影響で、すくい取部142の先端部に反りなどの変形が生じる恐れがある。
【0078】
各分割すくい取端部143が、対応する各食品20の下側に正確に入り込むには、分割すくい取端部143の先端部が薄い形状であることが望ましい。さらに対応する各食品20の下側に、その食品に対応する分割すくい取端部143が正確に入り込むには、分割すくい取端部143の先端部が平らであり、反り等の変形が抑制されていることが重要である。これらの要件は重要であるが、維持し難い性格を有している。もし複数の分割すくい取端部143に分割していない形状、言い換えると列方向において繋がっている長い形状を成す場合、薄いすくい取部142には、前記食品20の列方向において、いろいろな力が加わり、この力により反りが生じる。このため平らな形状を維持することか困難となる。このような課題に対して、第1の発明や第2の発明は、各分割すくい取端部143に悪影響を与える列方向における力の影響を抑制するために、一方側切込み156が複数形成されている。この結果、各分割すくい取端部143で、対応する食品20を正確にすくい上げることが可能となる。
【0079】
同様に、移送板140の送出部146の端部が、複数の前記他方側切込み158により複数の分割送出端部147に分割されている。このため、各分割された分割送出端部147には、その両隣の分割送出端部147からの力の伝達が、阻止される。このことにより、各分割された分割送出端部147において、反りなどの変形の発生が抑制される。分割送出端部147が薄い金属板で作られていることが求められるが、このような薄い金属板であっても、分割送出端部147を平らな形状に維持することが可能となり、これにより各分割送出端部147の先端部が、第2製造装置60の入口の表面に正確に密着し、列を成す各食品20を正確な位置に、列を維持した状態で送出することができる。
【0080】
上述した分割すくい取端部143や分割送出端部147の先端部が、接触する面に対して平らであれば、ある分割すくい取端部143と他の分割すくい取端部143とにおいて前記接触する面との角度に微妙な差が生じていても、食品を正確にすくい取ることができる。また同様に、ある分割送出端部147と他の分割送出端部147とにおいて前記接触する面との角度において微妙な差が生じていても、食品を正確に送出することができる。分割すくい取端部143や分割送出端部147が、それぞれにおいて先端が平らであることが重要である。このためには、一方側切込み156や他方側切込み158の役割が非常に重要である。
【0081】
第3の特徴は、第2の特徴において、
移送板140は、中央部144と、中央部144の一方側に設けられたすくい取部142と、中央部144の他方側に設けられた送出部146と、を備え、
移送板140は、中央部144とすくい取部142との間に、折返し形状を有する一方側緩衝部152をさらに備え、
移送板140は、中央部144と送出部146との間に、折返し形状を有する他方側緩衝部154をさらに備え、
すくい取部142は、一方側緩衝部152の一方側端部から前記一方側の方向において斜め下方に向かって伸びており、
送出部146は、他方側緩衝部154の他方側端部から前記他方側の方向において斜め下方に向かって伸びている、ことである。
【0082】
食品製造では、製造工程での温度変化が大きく、これに伴う移送板140での温度の不均一に起因する反りや変形が問題となる。例えば食品を製造するために蒸す場合、あるいは焼く場合、製造中の食品自身が高熱となる。さらに製造中の食品を移動するコンベアなどの移動手段が高温となる。このため移し替え装置100の移送板140は、熱の影響を受ける。移送板140のすくい取部142や送出部146も熱の影響を受ける。即ち高温の製造中の食品を送出部146に載せることにより、またすくい取部142や送出部146が高温の食品移動手段に接することにより、熱の影響を受けることになる。
【0083】
従来の方式と異なり、第3の特徴は、第1製造装置30からの食品を一方側から移送板140のすくい取部142ですくい取り、移送板140の表面を介してすくい取った餃子20を一方側から他方側に移し、他方側の送出部146から第2製造装置60に食品を送り出す。移送板140の一方側であるすくい取部142から、他方側である送出部146まで、移送板140の全体が、第1製造装置30や第2製造装置60に伴う熱の影響を受ける。さらに第1製造装置30にかかわる温度の状態と第2製造装置60にかかわる温度の状態が異なる。また食品は列を成しており、一方側のすくい取部142で列をなす食品をすくい上げると、列を維持したまま、他方側に移し、列を成した状態で第2製造装置60に送り出す。
【0084】
移送板140は一方側と他方側から熱の影響を受けると、熱膨張などのため、温度差に伴う複雑な力が作用する。第1の発明や第2の発明で、分割すくい取端部143や分割送出端部147の先端部の反りを抑制することについて作用効果を説明した。さらに望ましくは、分割すくい取端部143で製造中の食品20をすくい取る場合の分割すくい取端部143の角度を良好な状態に維持することである。また製造中の食品20を第2製造装置60の入口に送出する場合の送出部146の角度を良好な状態に維持することである。
【0085】
第3の特徴では、図3に記載のとおり、移送板140の中央部144とすくい取部142との間に、一方側緩衝部152を設けた。この一方側緩衝部152により、すくい取部142の先端部が第1製造装置30からの製造中の食品20の下面の下に入り込むことにより、分割すくい取端部143の下向きの角度が好ましい状態に維持される。同様に送出部146についても、送出部146の先端部が、第2製造装置60の入口の部分に接することにより、他方側緩衝部154の作用により、送出部146の下向きの角度が好ましい角度に維持される。
【0086】
重要なことは、一方側緩衝部152や他方側緩衝部154は、食品の列方向において、それぞれ一体となっており、一方側緩衝部152や他方側緩衝部154が、一方側切込み156や他方側切込み158によって分割されていないことである。一方側切込み156や他方側切込み158により、すくい取部142や送出部146の部分だけでなく一方側緩衝部152や他方側緩衝部154の部分も分割してしまうと、複数存在する分割すくい取端部143の各々と接触するコンベア42の面とのなす角度のバラツキが大きくなる恐れがある。経時変化により上述の角度差が大きくなると、本来は接触すべきコンベア42の表面に接触しない分割すくい取端部143が生じる恐れがある。
【0087】
第4の特徴は、第3の特徴において、
移送板140はその中央の位置に中央部144を有しており、中央部144の裏面に、中央部144の前記裏面に密着する移送板140よりも厚い金属製の板状の安定化板150が設けられている、 ことである。
【0088】
〔第4の発明の作用効果〕
すくい取部142と他方側緩衝部154とは、中央部144を介して接続されている。上述したように、食品の製造中の工程では、いろいろ複雑に熱の影響を受け、温度差に伴い発生する力の影響を受ける。複雑な熱の影響を抑制するには、大きな概念として、温度の均一化と安定化を図ることが好ましい。中央部144に厚い金属板を密着させることにより、中央部144の部分の温度の均一化を図ることができ、移送板140の部分的な温度変化を抑制し、安定化することができる。上述の第1の発明から第4の発明では、製造中の食品20に一方側に設けられたすくい取部142から取込み、中央部144を通り越して他方側に移動し、他方側に設けられた送出部146から第2製造装置60に送り出す構成である。このため移送板140全体が熱の影響を受け易い。従って移送板140全体の熱の均一化、安定化が望ましい。また中央部144に安定化板150を密着させることにより温度の均一化を図ることができるのに加えて、中央部144と安定化板150を密着させることにより、熱容量を大きくすることが可能となる。熱容量を大きくできることにより、食品20の移動に伴う急激な熱変化を和らげることができる。
【0089】
第5の特徴は、第4の特徴において、
第1製造装置30は製造中の餃子20を蒸すための蒸し機であり、第2製造装置60は製造中の餃子20を焼くための焼き機であり、
前記焼き機は、前記餃子の移動方向に沿って並べられた多数の熱せられた加熱金属板62を備えており、
前記蒸し機から前記列を成して送出された餃子20を、移送板140のすくい取部142ですくい取り、
すくい取った前記製造中の餃子20を、移送板140の送出部146から、前記焼き機の入口に位置する加熱金属板62に送出する、ことである。
【0090】
熱を発生する餃子20の蒸し器から熱を発生する餃子20の焼き機への餃子20の移し替えの装置として、本発明が適用された移し替え装置100を使用することにより、熱の影響に耐えることができ、蒸し器から焼き機へ、列をなして配置された餃子20を、正確にしかも列を維持した状態で、移し替えることができる。


【符号の説明】
【0091】
20・・・餃子、30・・・第1製造装置、42・・・コンベア、44・・・矢印、46・・・出口、60・・・第2製造装置、62・・・加熱金属板、64・・・ヒータ、66・・・入口、68・・・矢印、100・・・移し替え装置、110・・・第1移動装置、112・・・第2移動装置、114・・・支持装置、116・・・矢印、120・・・食品移動部、122・・・第1支持装置、124・・・第2支持装置、132・・・第1押え具、134・・・第2押え具、140・・・移送板、142・・・すくい取部、143・・・分割すくい取端部、144・・・中央部、146・・・送出部、147・・・分割送出端部、150・・・安定化板、152・・・一方側緩衝部、154・・・他方側緩衝部、156・・・一方側切込み、158・・・他方側切込み。
【要約】
【課題】一方の製造工程から他方の製造工程へ、列を成す餃子を、傷つけることなく、また列を維持したまま、正確に移し替えることが可能な、食品の移し替え装置を提供すること。
【解決手段】
移し替え装置100は、第1製造装置30から列を成して送出された餃子20をすくい取り、第2製造装置60に餃子20を送出する移送板140を有し、移送板140の一方側に設けられたすくい取部142と他方側に設けられた送出部146とにそれぞれ、反りの発生を抑制するための、複数の一方側切込み156と複数の他方側切込み158とを、餃子20の移動方向に形成したこと。


【選択図】 図2
図1
図2
図3a
図3b
図3c