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特許7441580排泄検知センサデバイス、排泄検知センサパッド及びシート部材
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】排泄検知センサデバイス、排泄検知センサパッド及びシート部材
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/497 20060101AFI20240222BHJP
【FI】
G01N33/497
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2023579699
(86)(22)【出願日】2023-10-02
(86)【国際出願番号】 JP2023035950
【審査請求日】2023-12-26
(31)【優先権主張番号】P 2022160632
(32)【優先日】2022-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514143437
【氏名又は名称】株式会社aba
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇井 吉美
(72)【発明者】
【氏名】谷本 和城
(72)【発明者】
【氏名】小林 斗志樹
(72)【発明者】
【氏名】菅野 翔平
【審査官】中村 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-096072(JP,A)
【文献】特開2021-009127(JP,A)
【文献】特開2013-078566(JP,A)
【文献】特開2018-143362(JP,A)
【文献】特開2002-113008(JP,A)
【文献】竹内 三保子,「おむつを開けずに中を見たい」センサー活用の排泄検知システム開発,最新介護経営 介護ビジョン Vol.156 CARE VISION,株式会社日本医療企画,第156巻
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N33/48-33/98
G01N27/00-27/24
G01N5/00-9/36
A61B5/06-5/22
A61F5/00-6/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有するセンサ支持体と、
前記センサ支持体に配置された複数のにおいセンサ部と、
を備え、
前記複数のにおいセンサ部の少なくとも1つは、前記センサ支持体に形成された凹部の内部に設けられたにおいセンサを有する、
排泄検知センサデバイス。
【請求項2】
前記センサ支持体は長尺な帯状であり、
前記複数のにおいセンサ部は、前記センサ支持体の長手方向に沿って配置されている、
請求項1に記載の排泄検知センサデバイス。
【請求項3】
前記複数のにおいセンサ部の少なくとも1つは、
前記においセンサを支持するフレキシブル基板と、
前記フレキシブル基板における、前記においセンサが配置された部分を少なくとも含む領域に固定された補強部材と、
をさらに有する、
請求項1又は2に記載の排泄検知センサデバイス。
【請求項4】
前記フレキシブル基板は前記センサ支持体の部材内に設けられ、
前記補強部材は、前記フレキシブル基板よりも高剛性の部材であり、前記フレキシブル基板における前記においセンサが配置された側とは反対側に固定されている、
請求項3に記載の排泄検知センサデバイス。
【請求項5】
前記においセンサは、前記センサ支持体の厚さ方向に断面視において、前記センサ支持体の表面よりも外側に突出していない、
請求項1又は2に記載の排泄検知センサデバイス。
【請求項6】
前記においセンサ部は、
通気性を有する部材で形成され、前記凹部の開口を覆うシール部材をさらに有する、
請求項1又は2に記載の排泄検知センサデバイス。
【請求項7】
前記シール部材は、水蒸気は通過させ水は透過させない透湿防水材料で形成されている、
請求項6に記載の排泄検知センサデバイス。
【請求項8】
前記シール部材よりも厚く形成された保護層であって、前記凹部の開口よりも大きな開口部を有し、前記開口部の内部に前記シール部材が位置するように前記センサ支持体の上面に設けられた保護層をさらに備える、
請求項6に記載の排泄検知センサデバイス。
【請求項9】
互いに隣接する複数の前記においセンサ部の間に位置し、前記センサ支持体の部材内に配置された圧力センサをさらに備える、
請求項1又は2に記載の排泄検知センサデバイス。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の排泄検知センサデバイスと、
前記排泄検知センサデバイスより大きく、前記排泄検知センサデバイスが取り付けられるシート部材と、
を備える排泄検知センサパッド。
【請求項11】
前記シート部材は通気性を有する部材で構成され、前記においセンサ部の上方を覆っている、
請求項10に記載の排泄検知センサパッド。
【請求項12】
前記シート部材は防水性を有する部材で構成され、前記複数のにおいセンサ部の上方となる位置に貫通孔が形成されている、
請求項10に記載の排泄検知センサパッド。
【請求項13】
前記シート部材は、
前記排泄検知センサデバイスの長手方向に沿って、前記排泄検知センサデバイスを前記シート部材に固定するための複数の固定部材を有する
請求項10に記載の排泄検知センサパッド。
【請求項14】
前記シート部材は、前記においセンサ部の上方となる位置に形成された貫通孔を有し、
前記固定部材は、前記貫通孔の下方に設けられ、前記センサ支持体が通されるループを形成する、
請求項13に記載の排泄検知センサパッド。
【請求項15】
前記排泄検知センサデバイスは、前記センサ支持体の一部に固定された制御ユニットであって、前記制御ユニットの一部に、通信用のケーブル又は電力供給用のケーブルが接続されるインターフェース部が設けられ、
前記シート部材は、前記制御ユニットが挿入されるポケットを有し、
前記ポケットは、
前記排泄検知センサデバイスが前記シート部材に対して正しい向きで取り付けられた状態での前記制御ユニットの向きである第1向きで前記制御ユニットが前記ポケットに挿入された場合には、前記インターフェース部を露出させ、前記ポケットに前記制御ユニットが前記第1向きとは異なる第2向きに挿入された場合には、前記インターフェース部を露出させない開口部を有する、
請求項10に記載の排泄検知センサパッド。
【請求項16】
前記排泄検知センサデバイスが取り付けられたシート部材を収容する収容部を有するカバーをさらに備え、
前記収容部の上面側は、通気性を有する材質であり、
前記収容部の下面側は、前記上面側の材質よりも摩擦係数が大きい材質である、
請求項10に記載の排泄検知センサパッド。
【請求項17】
複数のにおいセンサ部が形成されたセンサ支持体が取り付けられるシート部材であって、
前記センサ支持体を固定する固定部材を有し、
前記固定部材は、
前記シート部材を前記シート部材の厚さ方向に見た状態で、前記センサ支持体が前記シート部材の周縁部から外側に突出しない位置に前記センサ支持体を固定する、
シート部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排泄検知センサデバイス、排泄検知センサパッド及びシート部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばベッド上の被介護者の臀部付近の空気を吸引し、においセンサの判定結果に基づき排泄を検出するシステムが知られている(例えば、特許文献1を参照)。このシステムは、チューブと、ポンプと、においセンサとを備え、ポンプは、チューブを介した空気をにおいセンサに送る。チューブは、対象者の臀部の下となる位置に配置されたシート部材の下方に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-178890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、チューブを介して臀部付近の空気を吸引する方式であったため、排泄物が漏れ出してしまった場合にそれらを吸い込んでしまい、検出精度が低下したり、メンテナンスが大変になるという課題があった。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、その目的は、出精度とメンテナンス性を高めた排泄検知センサデバイス、排泄検知センサパッド、及びシート部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態の排泄検知センサデバイスは、可撓性を有するセンサ支持体と、前記センサ支持体に配置された複数のにおいセンサ部と、を備え、前記複数のにおいセンサ部の少なくとも1つは、前記センサ支持体に形成された凹部の内部に設けられたにおいセンサを有する。
【0007】
前記センサ支持体は長尺な帯状であり、前記複数のにおいセンサ部は、前記センサ支持体の長手方向に沿って配置されていてもよい。
【0008】
前記複数のにおいセンサ部の少なくとも1つは、前記においセンサを支持するフレキシブル基板と、前記フレキシブル基板における、前記においセンサが配置された部分を少なくとも含む領域に固定された補強部材と、をさらに有してもよい。
【0009】
前記フレキシブル基板は前記センサ支持体の部材内に設けられ、前記補強部材は、前記フレキシブル基板よりも高剛性の部材であり、前記フレキシブル基板における前記においセンサが配置された側とは反対側に固定されていてもよい。
【0010】
前記においセンサは、前記センサ支持体の厚さ方向に断面視において、前記センサ支持体の表面よりも外側に突出していなくてもよい。
【0011】
前記においセンサ部は、通気性を有する部材で形成され、前記凹部の開口を覆うシール部材をさらに有していてもよい。
【0012】
前記シール部材は、水蒸気は通過させ水は透過させない透湿防水材料で形成されていてもよい。
【0013】
本発明の一形態の排泄検知センサデバイスは、前記シール部材よりも厚く形成された保護層であって、前記凹部の開口よりも大きな開口部を有し、前記開口部の内部に前記シール部材が位置するように前記センサ支持体の上面に設けられた保護層をさらに備えていてもよい。
【0014】
本発明の一形態の排泄検知センサデバイスは、互いに隣接する複数の前記においセンサ部の間に位置し、前記センサ支持体の部材内に配置された圧力センサをさらに備えてもよい。
【0015】
本発明の一形態の排泄検知センサパッドは、上記記載の排泄検知センサデバイスと、前記排泄検知センサデバイスより大きく、前記排泄検知センサデバイスが取り付けられるシート部材と、を備える。
【0016】
前記シート部材は通気性を有する部材で構成され、前記においセンサ部の上方を覆っていてもよい。
【0017】
前記シート部材は防水性を有する部材で構成され、前記複数のにおいセンサ部の上方となる位置に貫通孔が形成されていてもよい。
【0018】
前記シート部材は、前記排泄検知センサデバイスの長手方向に沿って、前記排泄検知センサデバイスを前記シート部材に固定するための複数の固定部材を有してもよい。
【0019】
前記シート部材は、前記においセンサ部の上方となる位置に形成された貫通孔を有し、前記固定部材は、前記貫通孔の下方に設けられ、前記センサ支持体が通されるループを形成してもよい。
【0020】
前記排泄検知センサデバイスは、前記センサ支持体の一部に固定された制御ユニットであって、前記制御ユニットの一部に、通信用のケーブル又は電力供給用のケーブルが接続されるインターフェース部が設けられ、前記シート部材は、前記制御ユニットが挿入されるポケットを有し、前記ポケットは、前記排泄検知センサデバイスが前記シート部材に対して正しい向きで取り付けられた状態での前記制御ユニットの向きである第1向きで前記制御ユニットが前記ポケットに挿入された場合には、前記インターフェース部を露出させ、前記ポケットに前記制御ユニットが前記第1向きとは異なる第2向きに挿入された場合には、前記インターフェース部を露出させない開口部を有していてもよい。
【0021】
前記排泄検知センサデバイスが取り付けられたシート部材を収容する収容部を有するカバーをさらに備え、前記収容部の上面側は、通気性を有する材質であり、前記収容部の下面側は、前記上面側の材質よりも摩擦係数が大きい材質であってもよい。
【0022】
本発明の一形態のシート部材は、複数のにおいセンサ部が形成されたセンサ支持体が取り付けられるシート部材であって、前記センサ支持体を固定する固定部材を有し、前記固定部材は、前記シート部材を前記シート部材の厚さ方向に見た状態で、前記センサ支持体が前記シート部材の周縁部から外側に突出しない位置に前記センサ支持体を固定する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、検出精度とメンテナンス性を高めた排泄検知センサデバイス及び排泄検知センサパッドを提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】排泄検知センサデバイスが使用される情報処理システムの一例を示す図である。
図2】ベッド上に配置された排泄検知センサパッドを示す図である。
図3】排泄検知センサパッドの構成を示す図である。
図4】排泄検知センサデバイスの平面図である。
図5】排泄検知センサデバイスの回路構成を説明するための図である。
図6】センサ支持体の構成を示す分解斜視図である。
図7】においセンサ部の構成を示す断面図である。
図8】においセンサ部を厚み方向に見た模式図である。
図9】においセンサ部の周辺構造を模式的に示す拡大断面図である。
図10】センサ部の変形例を示す断面図。
図11】センサ部の他の変形例を示す斜視図。
図12】シート部材の変形例を示す図である。
図13】センサ支持体の凹部内ににおいセンサが配置された構成例を示す断面図である。
図14A】保護層が設けられた構成例を示す断面図である。
図14B】保護層が設けられた他の構成例を示す断面図である。
図15】排泄検知センサパッドの変形例を示す斜視図である。
図16図15のシート部材及びセンサ支持体の模式図である。
図17】固定部材の配置及び形状の例を示す図である。
図18】本発明の一形態のシート部材の構成例を示す図である。
図19】情報処理システムがカバーに収容された状態でベッド上に配置された例を示す斜視図である。
図20】カバーの断面構造を説明するための模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。図1は、排泄検知センサデバイスが使用される情報処理システムS100の一例を示す図である。図2は、ベッド上に配置された排泄検知センサパッド10を示す図である。
【0026】
本実施形態の情報処理システムS100は、介護者が被介護者を介護する業務を支援するためのシステムである。「被介護者」(以下、対象者ともいう)は、要介護状態にある高齢者のように、自分自身で排泄物の処理をすることができない者である。「介護者」は、被介護者の排泄物の処理等を行う者である。
【0027】
情報処理システムS100は、排泄検知装置50と、情報端末60と、介護支援装置70とを備えている。排泄検知装置50、情報端末60及び介護支援装置70は、ネットワークに接続されている。排泄検知装置50及び情報端末60は、ネットワークを介して介護支援装置70との間で各種の情報を送受信する。
【0028】
排泄検知装置50は、検出したにおいの種別及び/又はにおいの強度に応じて対象者が排泄をしたことを検出する。排泄検知装置50は、排泄検知センサパッド10と、検知部40とを有している。なお、本実施例では、検知部40が排泄検知センサパッド10の近傍に配置されているが、検知部40はインターネット回線を介してクラウド上のサーバ等に配置されていてもよいし、排泄検知センサパッド10の内部に一体化されていてもよい。
【0029】
排泄検知センサパッド10は、図2に示すように、例えばベッド上に配置される。排泄検知センサパッド10は、におい成分の強度又は種別を示すにおい信号を生成する。排泄検知センサパッド10は、生成した信号を検知部40に出力する。
【0030】
検知部40は、排泄検知センサパッド10が生成したにおい信号に基づき、対象者が排泄をしたか否かを検知する。検知部40は、排泄を検知したことを示す排泄検知の通知を介護支援装置70に送信する。
【0031】
情報端末60は、介護者が使用する情報端末であり、例えばタブレット、スマートフォン、又はパーソナルコンピュータである。情報端末60は、介護者が行った介護業務の内容の入力を受け付けたり、介護支援装置70から受信した情報を表示したりする。
【0032】
介護支援装置70は、例えばコンピュータであり、検知部40から送信された排泄検知の通知に応じて、例えば、介護業務を支援するために有用な各種の情報を作成し、作成した情報を出力する。介護支援装置70は、例えば排泄が検知されたことを情報端末60に通知する。介護支援装置70は、また、一例として、介護者が行うべき作業内容を情報端末60に通知する。
【0033】
情報処理システムS100が上記のように構成されていることで、介護者は、情報端末60を介して、例えば対象者が排泄をしたことを確認できる。したがって、介護者が定期的に対象者の状況を確認して排泄の有無を確認するという負担を軽減できる。
【0034】
[排泄検知センサパッド10の詳細な構成]
図3は、排泄検知センサパッド10の構成を示す図である。図3(a)は、排泄検知センサパッド10を下面側から見た図であり、図3(b)はA-A線における断面を模式的に示す図である。排泄検知センサパッド10は、排泄検知センサデバイス20と、シート部材30とを有する。なお、図3(a)では、シート部材30の構成が分かり易いように、排泄検知センサデバイス20は破線で示されている。
【0035】
排泄検知センサパッド10は、排泄検知センサデバイス20がシート部材30の一部に取り付けられた構造体であり、全体として可撓性を有している。排泄検知センサパッド10は、図2に示すように、排泄検知センサパッド10の長手方向がベッドの幅方向になるように配置される。排泄検知センサパッド10は、一例として、対象者の臀部付近又は下肢大腿部付近に配置される。
【0036】
シート部材30は、柔軟性を有するクッション材であり排泄検知センサデバイス20を覆うように配置される。シート部材30は、本発明に必須の構成ではない。しかし、このようにシート部材30が設けられていることで、排泄検知センサデバイス20が単体でベッド上に配置されている場合と比較して、対象者が排泄検知センサデバイス20が配置されていることによる違和感を感じにくくなる。
【0037】
本実施形態の排泄検知センサパッド10は、チューブを通じて収集した空気を検知する構成ではなく、後述するように、排泄検知センサデバイス20に設けられたにおいセンサ部がベッド上のにおいを検知する。このような方式によれば、排泄検知のため対象者の付近に配置される構造部を小型化することができる。以下、各部について詳しく説明する。
【0038】
(排泄検知センサデバイス20)
図4は、排泄検知センサデバイス20の平面図である。図5は、排泄検知センサデバイス20の回路構成を説明するための図である。排泄検知センサデバイス20は、図4に示すように、センサ支持体21と、制御ユニット29とを有している。
【0039】
センサ支持体21は、可撓性を有する部材である。センサ支持体21は、長尺な帯状であってもよいしシート状であってもよいが、本実施形態では、帯状である。センサ支持体21の長さは任意であるが、本実施形態では一例として、センサ支持体21はベッドの幅よりもやや短く形成されている。センサ支持体21は、例えば、扁平な断面形状に形成されている。具体的には、センサ支持体21は、幅と厚みの比が3:1となる断面形状より扁平であることが一例として好ましい。
【0040】
センサ支持体21が帯状の場合、例えば、センサ支持体21をベッドの幅方向に延在するように配置することにより、対象者の寝返り等に合わせて広い範囲でにおいの検出を行うことができる。また、帯状のセンサ支持体21はシート状に比べて嵩張らず、巻き取ることで収納が容易である。さらに、図4のようなセンサ支持体21は、例えばシート部材30と同じような大きな面積で形成されたものではなく、面積が小さいためコストを抑えることができる利点がある。
【0041】
センサ支持体21は、その長手方向に沿って互いに所定の間隔で配置された複数のにおいセンサ部23を含んでいる。センサ支持体21は、複数のにおいセンサ部23として、においセンサ部23A、においセンサ部23B及びにおいセンサ部23Cを含んでいる。3つのにおいセンサ部23はいずれも同様の構造であるので、以下では、においセンサ部23Aについて主に説明する。
【0042】
においセンサ部23A、においセンサ部23B及びにおいセンサ部23Cは、におい成分の強度又は種別を示すにおい信号を生成し、図5に示すように、生成したにおい信号を制御ユニット29に出力する。制御ユニット29はにおい信号を検知部40(図1)に送信する。
【0043】
本実施形態の排泄検知センサデバイス20の構造的な特徴の1つは、センサ支持体21に形成された凹部24の内部ににおいセンサが配置されていることである。図6は、センサ支持体21の構成を示す分解斜視図である。図7は、においセンサ部23の構成を示す断面図である。
【0044】
(センサ支持体21)
センサ支持体21は、図6に示すように、主要な部品として、第1バンド部材21-1、第2バンド部材21-2、及びフレキシブル基板25を有している。
【0045】
第1バンド部材21-1及び第2バンド部材21-2は、いずれも可撓性を有する帯状の部材である。第1バンド部材21-1及び第2バンド部材21-2は、可撓性を有する材質であればよく特定の材質に限定されないが、本実施形態では一例として樹脂製である。具体的には、第1バンド部材21-1及び第2バンド部材21-2は例えばゴム製である。
【0046】
第1バンド部材21-1及び第2バンド部材21-2は、異なる形状を有していてもよいが、本実施形態では、一例として同じ形状を有している。第1バンド部材21-1及び第2バンド部材21-2は互いに積層され、両部材の間にフレキシブル基板25が配置される。以下、第1バンド部材21-1を例として説明し、第2バンド部材21-2については重複する説明は省略する。
【0047】
第1バンド部材21-1は、図6に示すように、その長手方向に沿って所定の間隔で配置された複数の開口部21hを有している。開口部21hは、第1バンド部材21-1を厚み方向に貫通する孔である。開口部21hは、後述するように、においセンサS1が配置される凹部24(図7参照)を形成する。開口部21hの輪郭形状は任意であり、例えば、四角形、多角形、円形、楕円形等であってもよいが、本実施形態では四角形である。
【0048】
本実施形態では、図6に示すように、第2バンド部材21-2も、第1バンド部材21-1と同様、複数の開口部21hを有している。第2バンド部材21-2の複数の開口部21hは、一例として、第1バンド部材21-1と同間隔かつ同形状である。なお、第2バンド部材21-2の開口部21hは省略されてもよい。
【0049】
(フレキシブル基板25)
フレキシブル基板25は、可撓性を有する基板であり、図4及び図6に示すように第1バンド部材21-1及び第2バンド部材21-2の長手方向に沿って延在している。フレキシブル基板25の幅は、第1バンド部材21-1及び第2バンド部材21-2の幅と同じであってもよいしそれより狭くてもよいが、本実施形態では、第1バンド部材21-1及び第2バンド部材21-2の幅よりも狭い。フレキシブル基板25の長さは、第1バンド部材21-1及び第2バンド部材21-2の長さと同じであってもよいしそれより短くてもよいが、本実施形態では、第1バンド部材21-1及び第2バンド部材21-2の長さよりも短い。
【0050】
フレキシブル基板25は、図6に示すように、第1バンド部材21-1と第2バンド部材21-2とによって挟まれ、外部に露出しないような態様で、センサ支持体21の部材内部に配置される。図4に示すように、フレキシブル基板25は、制御ユニット29に接続されている。
【0051】
制御ユニット29は、複数のにおいセンサ部23が生成したにおい信号を外部に出力するインターフェース部29aと、インターフェース部29aを収容する筐体29bと、プロセッサとを有している。筐体29bは、ベッド上に配置されても対象者に違和感を与えないよう、扁平な形状を有していてもよい。筐体29bは、また、複数の発光部を有していてもよく、これら複数の発光部は、所定の態様で発光することで、例えば、においセンサ部23のセンサが正常に動作しているか否か等をユーザに知らせるものであってもよい。インターフェース部29aは、例えば、通信用及び電力供給用のケーブルが接続されるコネクタを含む。インターフェース部29aは、無線通信により、信号を外部に送信したり外部から信号を受信したりしてもよい。
【0052】
フレキシブル基板25は、図6に示すように、その長手方向に沿って所定の間隔で配置された複数のにおいセンサS1を有する。フレキシブル基板25は、また、互いに隣接する複数のにおいセンサ部23の間に位置する圧力センサS2を有している。圧力センサS2は、フレキシブル基板25上に設けられており、センサ支持体21の組立状態では、センサ支持体21の部材内に配置される。
【0053】
(においセンサ部23)
図7は、においセンサ部23の構造を示す断面図である。においセンサ部23はにおいセンサS1と、補強部材26と、シール部材27とを有している。
【0054】
においセンサS1は、対象者の排泄を検知するためのセンサである。においセンサS1は、センサ支持体21に形成された凹部24の内部に設けられている。凹部24は、第1バンド部材21-1の開口部21hとフレキシブル基板25によって形成された窪みであり、所定の深さを有している。凹部24は、具体的には、第1バンド部材21-1の厚み分の深さを有している。
【0055】
においセンサS1は、第1センサSa及び第2センサSbを有している。第1センサSa及び第2センサSbは、互いに所定間隔だけ離れて配置されている。第1センサSaは、例えば、排尿を検知するためのガスセンサである。第1センサSaは、具体的には、一例としてアンモニアに反応する。第2センサSbは、例えば、排便を検知するためのガスセンサである。第2センサSbは、具体的には、一例として硫化水素に反応する。なお、においセンサS1は、1つのセンサのみを備えるものであってもよい。また、においセンサS1は、3種以上のセンサ又は3つ以上のセンサ(同種のセンサを複数含んでいてもよい)を備えていてもよい。
【0056】
においセンサS1は、図7の例では、断面視において、センサ支持体21の厚さ方向にセンサ支持体21の表面よりも外側に突出しないように設けられている。つまり、においセンサS1は、第1バンド部材21-1の上面よりも上方に突出していない。このような構成によれば、仮に何らかの部材がセンサ支持体21に当接したとしても、その部材がにおいセンサS1に当接する可能性が低減する。したがって、においセンサS1が損傷しにくい。もっとも、本発明において、においセンサS1がセンサ支持体21の上面よりも突出していないことは必須ではない。これについては他の図面を参照して説明する。
【0057】
補強部材26は、においセンサS1が配置された部分を補強する部材である。図7のように可撓性のフレキシブル基板25ににおいセンサS1が実装されている場合、においセンサS1とフレキシブル基板25の配線パターンとの接続部に曲げ応力が加わることによって、接続部が破損する可能性がある。そこで、本実施形態では、フレキシブル基板25に補強部材26が設けられている。
【0058】
補強部材26は、一例として板状の部材である。補強部材26の材質は特に限定されないが、例えば樹脂であり、具体的には例えば熱硬化性材料である。より具体的には、補強部材26は、エポキシ製の平板であってもよい。補強部材26は、例えば、フレキシブル基板25よりも高剛性の部材である。補強部材26は、図7の例では、フレキシブル基板25におけるにおいセンサS1が配置された側とは反対側に固定されている。補強部材26を固定する手段は任意であるが、例えば、接着剤又は両面テープなどを利用してもよい。
【0059】
補強部材26の平面的な形状について、図8を参照して説明する。図8は、においセンサ部23を厚み方向に見た模式図である。においセンサS1は、1つの四角形状の部品として模式的に描かれている。補強部材26の輪郭形状は任意であり、例えば、四角形、多角形、円形、楕円形等であってもよいが、本実施形態では四角形である。本実施形態では補強部材26は、においセンサS1が配置された部分R1を少なくとも含む領域R2に固定されている。補強部材26は、においセンサS1が配置された部分R1付近の領域がくり抜かれた形状であってもよい。
【0060】
補強部材26のサイズは、特定のサイズに限定されないが、例えば、部分R1の縦方向(フレキシブル基板25の幅方向に対応)の長さの2倍以上の縦方向の長さ、及び、部分R1の横方向(フレキシブル基板25の長手方向に対応)の長さの2倍以上の横方向の長さを有するサイズであってもよい。補強部材26がこのようにS1が配置される部分R1に対して十分に大きいサイズであることにより、においセンサS1及びその周辺構造を効果的に補強することができる。
【0061】
補強部材26の輪郭形状は、本実施形態では、一例として開口部21hよりも小さい。具体例として、補強部材26は、開口部21hの内周と補強部材26の外周との間の距離が例えば1mm以上となる程度のサイズに設けられていてもよい。なお、補強部材26の輪郭形状が開口部21hよりも大きい構成については、変形例として他の図面を参照して後述する。
【0062】
シール部材27は、図6及び図7に示すように、においセンサS1が配置された凹部24の開口を覆う部材である。シール部材27が設けられていない場合、開口部21h内に排泄物や塵埃が入るおそれがある。このような排泄物や塵埃の侵入は、においセンサS1及びその周辺構造の破損の原因となり得る。そこで、本実施形態では、シール部材27によって凹部24の開口が塞がれている。
【0063】
シール部材27は、可撓性を有するシート状である。シール部材27は、においセンサS1がにおいを検知するのを阻害しないように、通気性を有する。また、排泄物又は洗浄時の水などが開口部21h内に入らないように、シール部材27は防水性も備えていることが好ましい。シール部材27は、水蒸気は透過させ水を透過させない透湿防水材料で形成されていることが一例として好ましい。
【0064】
防水性は、例えば、JIS C0920:2003で規定される防水等級のIPコードにおける、IPX1(鉛直に落下する水滴を受けても影響がない)以上であることが好ましく、IPX5(全ての方向から噴流水を受けても影響がない)以上であることがより好ましい。なお、IPX1は、真下に落下する水滴による有害な影響がないことを示す等級であり、IPX5は防噴流形であらゆる方向からの噴流水による有害な影響がないことを示す等級である。通気性としては、一例として、ガーレー値〔単位:秒/100cc〕(6.45cmの面積あたり1.27kPaの圧力下で100ccの空気を通過させるのに要する時間)が一例で1.0sec/100cc以下である。
【0065】
シール部材27を第1バンド部材21-1に固定する手段は任意であるが、例えば、両面テープ、接着剤、熱融着などによってシール部材27が固定されてもよい。図6では、それぞれのにおいセンサ部23に別々のシール部材27が固定されているが、例えば、複数のにおいセンサ部23に共通のシール部材27によって複数の開口部21hが覆われていてもよい。具体的には、例えばフレキシブル基板25と同じように長尺な形状に形成された細長いシール部材27が、複数のにおいセンサS1を覆うように配置されてもよい。
【0066】
(圧力センサS2)
フレキシブル基板25に設けられた圧力センサS2は、排泄検知センサデバイス20に加わる圧力に応じた信号を生成し、生成した信号を制御ユニット29に出力する(図5)。本実施形態では、圧力センサS2は、センサ支持体21の長手方向に複数配置されている(図6)。圧力センサS2は、一例として、センサ支持体21の内部に配置され、外部に露出していない。圧力センサS2の形状は任意であるが、図6の例では、圧力センサS2はフレキシブル基板25の長手方向に沿って比較的長く延在する形状を有している。限定されるものではないが、圧力センサS2の長さ(センサの受圧部分の長さ)は、においセンサ部23どうしの間隔の1/2以上であってもよい。他の態様としては、圧力センサS2は、においセンサS1と重なるような位置に配置されていてもよい。
【0067】
このような圧力センサS2が設けられている場合、検知部40(図1)は、圧力センサS2の出力信号とにおいセンサS1の出力信号との両方に基づいて、排泄があったことを判定してもよい。具体的には、検知部40は、圧力センサS2の出力信号が所定の圧力値に対応する閾値を超えており、かつ、においセンサS1の出力信号が所定の閾値を超えている場合に、排泄があったと判定してもよい。においセンサS1の出力信号に基づく判定では、例えば噴霧された消臭剤のにおい成分に反応して、対象者がいない状態であっても「排泄有り」と判定されることが想定される。これに対して、上記のように、圧力センサS2の出力信号とにおいセンサS1の出力信号との両方に基づいて排泄があったことを判定する方式によれば、誤判定の発生を低減させることができる。
【0068】
(シート部材30)
シート部材30は、図3に示すように、排泄検知センサデバイス20が取り付けられる部材である。具体的には、排泄検知センサデバイス20はシート部材30の下面に取付けられる。シート部材30は、本実施形態では、一例として、排泄検知センサデバイス20より大きく、排泄検知センサデバイス20の全体を覆うような大きさに形成されている。シート部材30の輪郭形状は一例として四角形である。
【0069】
シート部材30は、対象者の下に敷かれるものであり、弾力性を有するスポンジ材料からなるマットであってもよいし、インフレータブルマットであってもよい。図3のシート部材30は、一例として、インフレータブルマットである。シート部材30の材質は任意であるが、一例として樹脂製のフィルムなど防水性を有する部材であってもよい。シート部材30が防水性を有する部材で形成されている場合、例えば排泄物が部材に浸透しないためシート部材30を洗浄しやすい。
【0070】
シート部材30は、複数の貫通孔31aを有する。本実施形態では、3つの貫通孔31aが形成されている。各貫通孔31aは、排泄検知センサデバイス20のにおいセンサ部23に対応する位置に配置されている。排泄検知センサデバイス20がシート部材30の下面の所定の固定位置に取り付けられると、においセンサ部23の上方となる位置に貫通孔31aが位置する。これにより、シート部材30の上面側(すなわち対象者側)の空気のにおいをにおいセンサ部23が検知可能となる。
【0071】
貫通孔31aの形状は特に限定されないが、例えば、円形である。貫通孔31aの直径は、図3(a)のような平面視において、排泄検知センサデバイス20のセンサ支持体21の幅寸法以下(図3(a)の上下方向のセンサ支持体21の長さ)であることが、一形態において、好ましい。このような構成によれば、貫通孔31aの下方にセンサ支持体21が存在することとなる。したがって、仮に排泄物などが貫通孔31aを通過して下面31側に移動しても、排泄物はセンサ支持体21上に留まるので、ベッドを汚すことがない。なお、貫通孔31aが例えば多角形の場合であっても、このように、貫通孔31aの下方にセンサ支持体21が存在するようなサイズにセンサ支持体21を形成することで、同様の効果が奏される。
【0072】
また、貫通孔31aの直径は、図3(a)のような平面視において、においセンサS1が配置される凹部24の幅寸法以上であることが、一形態において、好ましい。具体的には、図9に示すように、貫通孔31aの直径d31が凹部24の幅寸法d24以上であってもよい。このような構成によれば、においセンサS1の近傍にあるシート部材30がにおいを遮ることがないため、においを効率良く検出することが可能となる。なお、ここでいう幅寸法は、凹部24のX方向又はY方向(図3)のいずれの寸法であってもよい。
【0073】
(固定部材33)
シート部材30の下面には、図3に示すように、複数の固定部材33が形成されている。複数の固定部材33は、排泄検知センサデバイス20の長手方向に沿って形成されている。固定部材33は、一例として、シート部材30の下面31に取り付けられ、排泄検知センサデバイス20のセンサ支持体21が通されるループを形成する部材である。排泄検知センサデバイス20は、センサ支持体21が複数の固定部材33に通された状態で固定される。なお、図3では、X方向の長さが比較的短い固定部材33が描かれているが、固定部材33はX方向に沿ってより長くてもよい。
【0074】
(効果)
以上説明した本実施形態の構成では、可撓性を有するセンサ支持体21に形成された凹部24に設けられたにおいセンサS1によって、ベッド上の対象者の臀部付近のにおいを検知して排泄の有無が判定される。特に、においセンサS1は、凹部24に溜まった臭気を検知するため、良好ににおいを検知することが可能となる。本実施形態の構成は、従来のようにチューブを通じて収集した空気を検知する方式ではなく、無吸引方式で対象者の付近のにおいを検知するものである。そのため、排泄物が陰圧によりチューブ内に吸引され、検出精度が低下したり、メンテナンス性が低下したりするといった問題が生じず、検出精度とメンテナンス性の向上を図ることができる。また、チューブで吸引した空気(臭気)を所定のにおいセンサに送り、当該においセンサによってにおいを検知する方式の場合、空気を引き込む距離に応じて反応が遅延する懸念があるが、本実施形態の構成によれば検知の応答性も改善される。
【0075】
また、本実施形態の構成では、チューブを通じて収集した空気を検知する方式ではないため、ベッド上に配置される構造部を小型化することもできる。また、においセンサS1は凹部24(図7)に配置されているので、例えばセンサがセンサ支持体21の上面に配置される構成と比較して、においセンサS1が損傷しにくい。
【0076】
また、本実施形態の構成では、フレキシブル基板25における、前記においセンサS1が配置された部分を少なくとも含む領域に補強部材26が設けられている。したがって、においセンサS1及びその周辺構造の破損の発生を低減することができる。
【0077】
<変形例1>
図10は、センサ部の変形例を示す断面図である。図10のセンサ部23’は、上記実施形態の補強部材26とは異なる形状の補強部材26’を有する。その他の構成は上記実施形態と同じため、説明は省略する。
【0078】
補強部材26’は、開口部21hよりも大きいサイズに形成され、外周部がセンサ支持体21の一部に埋設されている。具体的には、一例として、補強部材26’の全周が第1バンド部材21-1と第2バンド部材21-2とによって挟まれている。このような構成によれば、開口部21hにおいて、フレキシブル基板25が全体的に補強部材26’によって支持されるので、開口部21hの内部におけるフレキシブル基板25の変形が抑えられ、フレキシブル基板25の破損が生じにくくなる。
【0079】
<変形例2>
図11は、センサ部の他の変形例を示す斜視図である。図11に示すように、補強部材26’’は、フレキシブル基板25の上面に配置されていてもよい。補強部材26’’は、一例として、においセンサS1と干渉しないように、開口部を有している。このように、補強部材26’’がフレキシブル基板25の上面に配置された構成によっても、上述した実施形態と同様の効果が得られる。
【0080】
<変形例3>
図12は、シート部材の変形例を示す図である。シート部材は、必ずしも図3に示したような形状に限定されず、図12のような構成であってもよい。図12のシート部材130は、例えば弾性を有する多孔質体であり、通気性を有する。シート部材130は、例えば、所定の厚みのクッションシートであり、材質は一例として合成樹脂製のスポンジ材などであってもよい。
【0081】
シート部材130は特定の輪郭形状に限定されず、例えば、シート部材30と同様の輪郭形状を有していてもよい。シート部材130の下面には、一例として、図3の構成と同様、排泄検知センサデバイス20を固定する複数の固定部材133が設けられている。
【0082】
シート部材130には、シート部材30に設けられていたような貫通孔は形成されていない。しかし、シート部材130自体が通気性を有するので、排泄検知センサデバイス20を覆うようにシート部材130が配置されていても、排泄検知センサデバイス20は排便及び排尿によるにおいを検知することができる。
【0083】
上記では全てのにおいセンサ部23において、凹部24内ににおいセンサS1が設けられていることを例示したが、本発明の一形態に係る特徴的な構造は複数のにおいセンサ部23のうち少なくとも1つに設けられていればよい。においセンサ部23は、複数に限らず1つのみが設けられていてもよい。
【0084】
図2の排泄検知センサパッド10はベッドの幅と同程度の長さであるが、排泄検知センサパッド10の長さは種々変更可能である。例えば、シート部材30がベッドの幅よりも長くなるように形成され、使用時には、シート部材30の端部がベッドの側面に沿って折り曲げられてもよい。さらに、折り曲げられた部分の先端側が例えばベッドのマットレスの下面に挟み込まれるような長さにシート部材30が形成されていてもよい。排泄検知センサデバイス20の制御ユニット29は、ベッドの上面に限らず、ベッドの側面に位置するように配置されてもよい。
【0085】
<変形例4>
図13は、センサ支持体の凹部内ににおいセンサが配置された構成例を示す断面図である。図13の構成は、においセンサS1及びシール部材27の形状が図7の構成と異なっている。図7の構成と同様の構成については説明を省略する。図13に示すように、においセンサS1は、センサ支持体21の上面よりも突出していてもよい。このような構成であっても、においセンサS1がセンサ支持体21の凹部24の内部に設けられていることによる効果は、上述した実施形態と同様に得ることができる。なお、図13の構成では、第1センサSaと第2センサSbとが設けられているが、前述したように、においセンサS1はいずれかのセンサのみを有していてもよい。
【0086】
<変形例5>
図14Aは、保護層が設けられた構成例を示す断面図である。図14Aの構成は、保護層28が設けられている点以外は、図7の構成と同様であるため、重複する説明は省略する。図14Aに示すように、保護層28はセンサ支持体21の上面に設けられている。
【0087】
保護層28は、シール部材27よりも厚く形成されている。保護層28は、可撓性を有するシート状の部材である。保護層28は、例えば接着によりセンサ支持体21の上面に固定される。保護層28は、センサ支持体21の凹部24の開口よりも大きな開口部28aを有している。開口部28aは、この例では、シール部材27の外形よりも大きい。保護層28は、開口部28aの内部にシール部材27が位置するように配置されている。
【0088】
このような保護層28が設けられている場合、シール部材27が開口部28aの内部に位置し、シール部材27の端面が保護層28よりも上方に突出しない。したがって、例えば作業中に作業者の指がシール部材27の端面に触れたり、何らかの部品がシール部材27の端面に当接したりしてシール部材27が剥がれることが防止される。
【0089】
なお、図14Aの例では、シール部材27と保護層28とが重なっていないが、保護層28は、図14Bに示すように、シール部材27の周縁部に重なるように設けられていてもよい。すなわち、保護層28の開口部28aが、シール部材27の外形よりも小さく形成され、保護層28がシール部材27の周縁部を覆うように設けられてもよい。このような構成の場合、保護層28の厚さは、シール部材27の厚さよりも厚くてもよいが、シール部材27の厚さと同一であってもよいし、シール部材27の厚さより薄くてもよい。保護層28は、接着剤でセンサ支持体21に固定されてもよいし、例えば保護層28の片面に貼られた両面テープによりセンサ支持体21に固定されてもよい。
【0090】
<変形例6>
図15は、排泄検知センサパッドの変形例を示す斜視図である。図16は、図15のシート部材及びセンサ支持体の模式図である。この排泄検知センサパッドは、上述した実施形態と同様、排泄検知センサデバイス20と、シート部材30とを備えている。
【0091】
排泄検知センサデバイス20は、センサ支持体21の一部に固定された制御ユニット29を有している。制御ユニット29の一部には、通信用のケーブル又は電力供給用のケーブルが接続されるインターフェース部29aが設けられている。インターフェース部29aは、図15及び図16に示すように、制御ユニット29の筐体29bの幅方向の中心を通過する中心線CL上ではなく、中心線CLからオフセットした位置に設けられている。
【0092】
シート部材30は、ポケット35を有している。ポケット35は、入口部35aを有し、この入口部35aからポケット35の内部へ制御ユニット29が挿入される。ポケット35には、開口部35hが形成されている。開口部35hも、インターフェース部29aと同様、中心線CLからオフセットした位置に設けられている。
【0093】
開口部35hは、具体的には、ポケット35に制御ユニット29が第1向き(排泄検知センサデバイス20がシート部材30に対して正常な向きで取り付けられた場合の制御ユニット29の向きのことをいう)に挿入された場合に、インターフェース部29aに対向し、インターフェース部29aを外部に露出させる位置に形成されている。このように、インターフェース部29aが外部に露出するので、不図示のケーブルなどを、ポケット35の外部からインターフェース部29aに対して接続することができる。
【0094】
図16(a)に示すように、排泄検知センサデバイス20がシート部材30に対して正常な向きで取り付けられた場合には、インターフェース部29aがポケット35の外部に露出されるが、図16(b)に示すように、排泄検知センサデバイス20が表裏逆向きで取り付けられ、制御ユニット29が第1向きとは異なる第2向きでポケット35に挿入された場合、インターフェース部29aがポケット35の外部に露出されない。したがって、ユーザは、排泄検知センサデバイス20の取付け向きが逆であることに気付くことがきできる。よって、図15及び図16の構成によれば、排泄検知センサデバイス20が正しい向きで配置されずに排泄の有無を正常に検出できないという問題が生じにくい。
【0095】
<変形例7>
図17は、固定部材の配置及び形状の例を示す図である。図17に示すように、排泄検知センサデバイス20のセンサ支持体21を固定する固定部材33は、貫通孔31aどうしの間ではなく貫通孔31aを覆うような位置に設けられていてもよい。この位置は、排泄検知センサデバイス20が取り付けられたシート部材30がベッド上に置かれた状態で、貫通孔31aの下方となる位置である。固定部材33は、センサ支持体21が通されるループを形成している。固定部材33がこのような位置に設けられている場合、貫通孔31a付近において、センサ支持体21がシート部材30の下面から離れることが防止される。その結果、においセンサS1が貫通孔31aの付近に維持されるので、排泄の有無を良好に検知することが可能となる。
【0096】
固定部材33は、開口部33hを有していてもよいし有していなくてもよいが、図17の例では、開口部33hを有している。開口部33hは、図17のように排泄検知センサデバイス20及びシート部材30を厚さ方向に見た場合に、開口部33hと貫通孔31aとが重なるような位置に設けられている。このような開口部33hが設けられていることによる利点としては、例えば、貫通孔31a内に排泄物等が入った際に、清掃が行いやすく、シート部材30を清潔に保つことができる点が挙げられる。
【0097】
<変形例8>
図18は、本発明の一形態のシート部材の構成例を示す図である。図18のシート部材30は、固定部材33に開口部33hが形成されていない点、及び、センサ支持体21の端部に固定部材34が設けられている点以外は、図17の構成と同様であるため、重複する説明は省略する。
【0098】
図18に示すシート部材30の主たる特徴は、排泄検知センサデバイス20が、シート部材30をその厚さ方向に見た状態で、排泄検知センサデバイス20がシート部材30からはみ出さないように構成されている点である。具体的には、シート部材30の固定部材33及び固定部材34が、排泄検知センサデバイス20がシート部材30の周縁部から外側に突出しない位置に、排泄検知センサデバイス20を固定している。この状態では、上述した実施形態と同様、センサ支持体21のにおいセンサ部23(図3参照)は貫通孔31aの位置に位置決めされる。
【0099】
このように構成された本発明の一形態のシート部材30によれば、排泄検知センサデバイス20のにおいセンサ部23を外部に露出させた状態で、排泄検知センサデバイス20を良好に保持することができる。また、排泄検知センサデバイス20がシート部材30に固定された状態では、排泄検知センサデバイス20がシート部材30の周辺部から外側に突出しないため、ベッド上に排泄検知センサデバイス20及びシート部材30が配置された際、排泄検知センサデバイス20の一部が対象者に当接しない。そのため、対象者が感じる違和感が減少する。また、図18の構成では、センサ支持体21の端部が挿入される固定部材34が設けられているので、センサ支持体21の長手方向の移動が規制され、センサ支持体21を幅方向及び長手方向の両方で良好に位置決めすることができる。
【0100】
なお、図18では、センサ支持体21と制御ユニット29との両方がシート部材30からはみ出ない構成を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、制御ユニット29がセンサ支持体21に固定されていない構成や、制御ユニット29がセンサ支持体21から離れて設けられている構成の場合は、センサ支持体21がシート部材30の周縁部から外側に突出しないように設けられていてもよい。
【0101】
<変形例9>
図19は、情報処理システムがカバーに収容された状態でベッド上に配置された例を示す斜視図である。図20は、カバーの断面構造を説明するための模式的な断面図である。
【0102】
図19及び図20に示す排泄検知センサパッドは、カバー80を備えている。カバー80は、収容部81と、その両端に設けられた延在部82を有している。
【0103】
収容部81は、筒状に形成され、排泄検知センサデバイス20が取り付けられたシート部材30を収容する。収容部81の上面側の部材81aは、通気性を有する材質である。上面側の部材81aは、さらに、撥水性を有する材質であってもよい。収容部の下面側の部材81bは、一例として、部材81aの材質よりも摩擦係数が大きい材質である。ここでの摩擦係数とは、例えば布材の支持体上に配置された対象物を動かそうとする場合の静摩擦係数のことをいう。下面側の部材81bは、具体的には、例えばポリウレタン製のシート材である。
【0104】
下面側の部材81bがこのように摩擦係数の大きい材質である場合、排泄検知センサパッドがベッド上に配置されたときに排泄検知センサパッドの位置がずれにくくなる。一方、部材81aは通気性を有しているので、排泄物の臭気が部材81aを通じて収容部81の内部に届き、排泄検知センサデバイス20が排泄の有無を良好に検知できる。
【0105】
延在部82は、収容部81の両端にそれぞれ設けられている。延在部82が比較的長く形成されていることで、図19に示すように延在部82をベッドのマットレスの下面に巻き込ませ、排泄検知センサパッドの位置を安定化させることができる。
【0106】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0107】
10 排泄検知センサパッド
20 排泄検知センサデバイス
21 センサ支持体
21-1 第1バンド部材
21-2 第2バンド部材
21h 開口部
23 においセンサ部
24 凹部
25 フレキシブル基板
26 補強部材
26’ 補強部材
26’’ 補強部材
27 シール部材
28 保護層
29 制御ユニット
29a インターフェース部
29b 筐体
30 シート部材
31 下面
31a 貫通孔
33、34 固定部材
35 ポケット
35a 入口部
35h 開口部
40 検知部
50 排泄検知装置
60 情報端末
70 介護支援装置
80 カバー
81 収容部
82 延在部
130 シート部材
CL 中心線
S1 においセンサ
S2 圧力センサ
S100 情報処理システム
Sa 第1センサ
Sb 第2センサ
【要約】
排泄検知センサデバイス20は、可撓性を有するセンサ支持体21と、センサ支持体21に配置された複数のにおいセンサ部23と、を備え、前記複数のにおいセンサ部23の少なくとも1つは、前記センサ支持体21に形成された凹部24の内部に設けられたにおいセンサS1を有する。


図1
図2
図3
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図12
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図14A
図14B
図15
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図20