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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】スリット走査型眼底撮像装置の改良
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20240222BHJP
   A61B 3/14 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
A61B3/10 300
A61B3/14
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2021516450
(86)(22)【出願日】2019-09-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-11
(86)【国際出願番号】 EP2019075769
(87)【国際公開番号】W WO2020064777
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-09-02
(31)【優先権主張番号】62/736,213
(32)【優先日】2018-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502303382
【氏名又は名称】カール ツアイス メディテック アクチエンゲゼルシャフト
(73)【特許権者】
【識別番号】503317201
【氏名又は名称】カール ツァイス メディテック インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Carl Zeiss Meditec Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】エベレット、マシュー ジェイ.
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-504219(JP,A)
【文献】特表2009-538697(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0131050(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00 - 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査撮像システムであって、
放射源と、
前記放射源からの放射を受け取り、放射の走査ビームを画定する走査コンポーネントと、
前記放射の走査ビームを撮像対象のサンプルに向ける光学系であって、前記光学系は、前記放射の走査ビームがその上で走査されるターゲット光学素子を含む、前記光学系と、
前記放射源から出力される放射を部分的にブロックし、前記走査コンポーネントにより受け取られる前記放射を限定するように配置される放射ブロックコンポーネントであって、前記放射ブロックコンポーネントは、前記ターゲット光学素子の共役平面にあり、前記ターゲット光学素子上に、前記放射の走査ビームが通過し得ない移動する非放射ゾーンを形成し、前記移動する非放射ゾーンの外にある前記走査ビームの一部は、前記サンプルで走査されて、前記サンプル上に移動する照明領域を形成する、前記放射ブロックコンポーネントと、
前記移動する照明領域からの戻り放射を集光する集光器と、を備える走査撮像システム。
【請求項2】
前記放射ブロックコンポーネントは、前記放射源から前記走査コンポーネントまでの放射経路に沿って配置される、請求項1に記載の走査撮像システム。
【請求項3】
前記移動する照明領域から戻る放射を部分的にブロックするように配置された集光器ブロックコンポーネントであって、前記集光器ブロックコンポーネントは、前記ターゲット光学素子の共役平面にあり、ターゲット光学系上に、前記移動する照明領域から戻る放射が通過し得ない移動する非集光ゾーンを形成する、前記集光器ブロックコンポーネントをさらに備える、請求項1に記載の走査撮像システム。
【請求項4】
前記移動する非放射ゾーンは、前記ターゲット光学系上の前記移動する非集光ゾーンと共に移動し、かつ少なくとも部分的に前記移動する非集光ゾーンと重複する、請求項3に記載の走査撮像システム。
【請求項5】
前記移動する非放射ゾーンは、前記ターゲット光学系上の前記移動する非集光ゾーンと共に移動し、前記移動する非集光ゾーンと当接する、請求項3に記載の走査撮像システム。
【請求項6】
前記走査撮像システムは、前記放射ブロックコンポーネントが前記放射源から出力される放射を部分的にブロックするように配置され、前記集光器ブロックコンポーネントが前記移動する照明領域から戻る放射を部分的にブロックするように配置される、第一の動作モードを有し、
前記走査撮像システムは、前記放射ブロックコンポーネントが前記放射源から出力される放射を妨害しないように配置され、前記集光器ブロックコンポーネントが前記移動する照明領域から戻る放射を妨害しないように配置される、第二の動作モードを有する、請求項3に記載の走査撮像システム。
【請求項7】
撮像対象の前記サンプルは眼であり、
前記第一の動作モードは、非近視眼に対応し、
前記第二の動作モードは、所定のディオプトリ値より高い近視眼に対応する、請求項6に記載の走査撮像システム。
【請求項8】
前記サンプルを前記集光器上で合焦させる焦点調整メカニズムをさらに備え、
前記サンプルを前記集光器上で合焦させることによって、前記ターゲット光学素子の前記共役平面が移動し、
前記集光器ブロックコンポーネントは、前記ターゲット光学素子の前記共役平面と共に移動して、前記ターゲット光学素子の前記共役平面上に維持される、請求項3に記載の走査撮像システム。
【請求項9】
前記放射ブロックコンポーネントの位置は、前記サンプルの前記集光器への合焦による前記ターゲット光学素子の前記共役平面の移動に関係なく、静止状態に維持される、請求項8に記載の走査撮像システム。
【請求項10】
前記サンプルを前記集光器上に合焦させる焦点調整光学系であって、前記焦点調整光学系は、前記集光器ブロックコンポーネントと前記集光器との間にある、前記焦点調整光学系をさらに備え、
前記ターゲット光学素子から前記集光器ブロックコンポーネントまでの放射戻り経路に沿った全ての光学系の相対位置が固定され、
前記集光器ブロックコンポーネントは、前記焦点調整光学系が前記サンプルを前記集光器上に合焦させている間に静止した状態に維持され、かつ前記ターゲット光学素子の前記共役平面に維持される、請求項3に記載の走査撮像システム。
【請求項11】
前記放射ブロックコンポーネントは前記集光器ブロックコンポーネントと同一平面にある、請求項3に記載の走査撮像システム。
【請求項12】
撮像対象の前記サンプルの表面の共役平面上の照明開口であって、前記照明開口は、照明源と前記放射ブロックコンポーネントとの間にある、前記照明開口と、
撮像対象の前記サンプルの前記表面の共役平面における集光開口であって、前記集光開口は、前記集光器と前記集光器ブロックコンポーネントとの間にある、前記集光開口と、をさらに備え、
前記照明開口は、前記集光開口と同一平面にある、請求項11に記載の走査撮像システム。
【請求項13】
前記放射源から前記走査コンポーネントまでの放射経路内で前記走査コンポーネントの直前の位置に実質的に結像される分割領域であって、前記分割領域は、前記サンプルにおける前記放射の走査ビームを前記サンプルから戻る放射から分離し、前記放射の走査ビームが通過する第一のサンプル穴と、前記サンプルから戻る放射が通過する第二のサンプル穴とを有し、前記第一のサンプル穴と第二のサンプル穴は同一平面にある、前記分割領域と、
単独の光学コンポーネントとして鋳型成形される2つの同一平面にあるレンズにより具現化されるデュアルレンズであって、前記デュアルレンズは、前記第一のサンプル穴と整列する第一のサブレンズと、前記第二のサンプル穴と整列する第二のサブレンズとを含む、前記デュアルレンズと、
前記第一のサンプル穴、前記第一のサブレンズ、前記放射ブロックコンポーネント、及び前記照明開口間のアラインメントを保持し、前記第二のサンプル穴、前記第二のサブレンズ、前記集光器ブロックコンポーネント、及び集光器開口間のアラインメントを保持する、構造的支持体と、をさらに備える、請求項12に記載の走査撮像システム。
【請求項14】
撮像対象の前記サンプルは、瞳孔および眼底を有する眼であり、
前記放射の走査ビームは、前記瞳孔を通じて前記眼に入り、かつ前記眼底上に前記移動する照明領域を形成し、
前記移動する照明領域から戻る放射は、前記瞳孔を通じて前記眼から出射し、
前記システムは、
前記放射源の前に配置された放射開口であって、前記放射開口は、実質的に前記眼底に結像される、前記放射開口と、
前記眼の前記瞳孔に実質的に結像される瞳分割光学系であって、前記瞳分割光学系は、前記眼に入る前記放射の走査ビームを、前記眼から出る前記戻り放射から分離し、前記瞳孔に実質的に結像される瞳孔開口を含む、前記瞳分割光学系と、をさらに備え、
前記放射ブロックコンポーネントは、前記瞳孔開口と前記放射開口との間に配置される、請求項1に記載の走査撮像システム。
【請求項15】
前記ターゲット光学素子は、前記走査コンポーネントから撮像対象の前記サンプルまでの放射経路内に配置されるシステムレンズである、請求項1に記載の走査撮像システム。
【請求項16】
前記システムレンズは、前記走査コンポーネントから前記サンプルまでの前記放射経路上で前記サンプルに最も近い、請求項15に記載の走査撮像システム。
【請求項17】
前記放射源は、レーザ源およびインコヒーレント放射源のうちの一方である、請求項1に記載の走査撮像システム。
【請求項18】
前記放射源から出力される前記放射は、実質的に放射の矩形ビームである、請求項1に記載の走査撮像システム。
【請求項19】
前記放射の矩形ビームは、長さ寸法と、前記長さ寸法に実質的に垂直な可変幅寸法とを有する、請求項18に記載の走査撮像システム。
【請求項20】
前記走査撮像システムは、ポイント走査型撮像装置およびライン走査型撮像装置のうちの一方である、請求項1に記載の走査撮像システム。
【請求項21】
前記走査撮像システムは、スキャン-ノーデスキャンシステム、スキャン-デスキャンシステム、及びスキャン-デスキャン-リスキャンシステムのうちの1つである、請求項1に記載の走査撮像システム。
【請求項22】
前記走査撮像システムの1つ又は複数のレンズの像面湾曲収差に対処した球面ミラーをさらに含む、請求項1に記載の走査撮像システム。
【請求項23】
前記球面ミラーの曲率半径は、前記球面ミラーの非点収差を軽減し、又は排除するために、入射ビームの反射平面に沿って調整される、請求項22に記載の走査撮像システム。
【請求項24】
第一の球面ミラーと、
前記第一の球面ミラーからの反射信号を受け取るように配置され、前記第一の球面ミラーにおける反射平面に直交する反射平面を有し、かつ前記第一の球面ミラーの非点収差に対処した第二の球面ミラーと、をさらに含む、請求項1に記載の走査撮像システム。
【請求項25】
前記放射源から前記サンプルまでの光路内に配置された第一の偏光板と、前記第一の偏光板に関して直交状態にあり、かつ前記サンプルから前記集光器までの光路内に配置された第二の偏光板とを含む、交差偏光板をさらに備える、請求項1に記載の走査撮像システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して走査型撮像装置(scan imager)の分野に関する。より詳しくは、本発明は走査型撮像装置、特に眼底走査型撮像装置の内部光学系からの反射現象(reflex)により生じる画像アーチファクトの軽減に関する。
【背景技術】
【0002】
試験対象サンプルの画像を撮影するための様々な種類の画像捕捉装置が知られている。特に関心を集めているのが、十分な詳細条件、例えば十分な焦点、照明、倍率、及び信号対ノイズ比(SNR)で標本のクローズアップ画像を撮影できる撮像システムである。このような撮像システムの一例は眼底撮像装置であり、これは典型的に眼底の画像を撮影するために使用される。眼底は、眼の水晶体の反対側の内面であり、これには網膜、視神経乳頭、網膜黄斑、中心窩、及び後極が含まれ得る。眼底の画像を撮影するために使用される撮像システムには、フラッド照明式(flood illumination)撮像システム(即ち、フラッド照明式撮像装置)と走査照明撮像システム(即ち、走査型撮像装置)の2種類がある。
【0003】
フラッド照明式撮像装置は、同時に、例えばフラッシュランプを使って標本の関心対象視野(FOV(field-of-view))全体に投光照明を当て、標本(例えば、眼底)の画像をフルサイズカメラで撮影する。図1は、フラッド照明式眼底撮像装置10の概念図である。ストロボ15が照明源として示されており、その照明光は、各種のシステムレンズ19を含み得る照明軸17に沿った光路を辿り、ミラー23によってシステムレンズ11を含む光軸25へと屈折させられ、撮像対象のサンプル又は標本(例えば、この場合は眼13の網膜33)へと伝えられる。システムレンズ11は、眼13に最も近い撮像装置レンズであり、本明細書では、眼用レンズ(ocular lens)又は眼科レンズ(ophthalmic lens)と呼ばれ得る。光軸25は眼13の光学的構成要素(角膜27、虹彩28、瞳孔29、及び水晶体(すなわち、眼水晶体)31を含む)を横切り、網膜33に到達する。それゆえ、光軸25に沿って進む照明光は、眼13にその角膜27を通って入り、瞳孔29を通過し、水晶体31を横切り、眼の後部(例えば、眼底領域)の網膜33に到達し、網膜33(及び眼底のその他の部分)により散乱させられ得る。眼底33から戻る散乱光は、水晶体31、瞳孔29、及び角膜27を通って射出し、光軸25に沿って視軸35へと進む。視軸35には、複数のシステムレンズ21が含まれ得、眼底から戻る散乱光をフルサイズカメラ37へと向け、フルサイズカメラ37が眼13の眼底のフルサイズ画像39を捕捉する。視軸35と照明軸17は光軸25に沿って一致しているため、ミラー23は典型的に中央に配置された開口43を有し、開口43は、眼13から戻る散乱光がミラー23を通過して視軸35へと向かい、カメラ37により捕捉されることができるようにするために使用される。ミラー23は、平坦で環状(例えば、リング状)であってよく、その中心に丸い開口43を持つ。ミラー23はさらに、それが瞳分割に使用される場合、瞳孔29に結像されてもよい。
【0004】
瞳分割(pupil splitting)により、照明光(眼13に入る光)と戻り光(眼から出る散乱光)は異なる経路を辿って、瞳孔29の最適に選択された領域において眼13に入り、そこから出ることができる。これらの領域は、例えば、瞳クリッピング(pupil clipping)、白内障からの光散乱、及び角膜27から等の照明光の正反射(例えば、反射現象)を回避するように選択されてよい。瞳分割を行いやすくするために、眼13に向かう照明光を反射させ、戻り光をカメラ37へと通過させる開口43を有するミラー23は、瞳孔29に、又はその付近に結像され得る。例えば、ミラー23が照明光を照明軸17から眼13に向かう光軸25へと折り曲げる(例えば、反射させる)と、眼13に環状の照明領域が形成され得る。すなわち、ミラー23の丸い開口43は角膜27の付近に、環状の照明領域の中央において丸い、照明されない領域を形成し得る。網膜33から戻る散乱光はこの照明されない領域を通って眼13から射出し、それによって照明光が眼13に入るのが回避され得る。それに加えて、フラッド照明式撮像装置自体の光学表面からの鏡面反射アーチファクトは、いわゆるダークスポットを使用することによって軽減され得、これは照明経路中で静止し、システム光学系の特定の表面積が照明されないようにする。フラッド照明式撮像システムは、眼底を素早く撮像し、高い信号レベルとダイナミックレンジを有し得るが、それには低コントラストの問題があり得る。反射現象を排除する必要性により、システムにそのFOVを限定し得るという制約も加わり得る。フラッド照明式撮像システムの例は、本発明と同じ譲受人に譲渡されている(特許文献1)に記載されており、同特許の全体を参照によって本願に援用する。
【0005】
それに対して、走査型撮像装置は、一度にサンプルの一部のみを照明し、撮像し、照明ビームがサンプル上で走査されている間に複数の部分画像を収集する。その後、複数の画像部分は相互に継ぎ合わされるか、又はモンタージュされて、合成画像が生成されてよく、これはフルサイズ画像を構成してよい。フラッド照明式撮像装置に対する走査型撮像装置の利点は、高い共焦点レベルであり、それによって網膜以外の表面から散乱する望ましくない光をよりよく区別でき、それによってより広いFOVの、アーチファクトのない撮像が可能となる。フラッド照明式撮像装置と同様に、眼底走査型撮像装置にも、眼の各種の光学的構成要素及び走査型撮像装置自体の各種のシステムレンズにおける反射現象の問題があるものの、その程度はより軽い。瞳分割等、眼の光学的構成要素での反射現象を軽減させる技術が走査型撮像装置に適用されてよい。瞳分割は、ある程度の反射現象軽減を提供し得るが、反射現象を排除せず、その利点は特定のシステムレンズからではなく、眼からの不要な光を最小化することに絞られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第3915564号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、特定のシステムレンズからの反射現象を直接軽減又はブロックするメカニズムを有する走査型撮像装置を提供することである。
本発明の他の目的は、眼底走査型撮像装置内のあるターゲット光学系/レンズにおける反射現象が軽減される眼底走査型撮像装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的は、走査型撮像装置(又は、走査照明撮像システム)、特に眼底走査型撮像装置として構成された走査型撮像装置内のあるターゲット光学系(例えば、レンズ、プリズム、ミラー等のシステム光学系)での反射現象(例えば、反射(reflection))アーチファクトを直接軽減又は排除するシステム、装置、及び/又は方法において達成される。走査型撮像装置は、放射源(例えば、光源)と走査コンポーネントを含み得る。放射源は、レーザ等のコヒーレント光源でもランプ若しくは発光ダイオード(LED)等の非コヒーレント光源でもよい。走査コンポーネントは、ミラー、ガルバノメータ、微小電気機械システム(MEMS)スキャナ、電気光学偏向器、回転ミラー、及び/又は回転ポリゴンスキャナ、又はその他の走査メカニズムのうちの1つ又は複数であってよい。走査コンポーネントは、放射源からの放射ストリーム(例えば、レーザビーム又は光ビーム)を受け取り、(例えば、ガルバノメータ内の偏向ミラーの回転によって)走査ビームを画定する。走査ビームは、撮像対象のサンプルを走査し、それによってサンプル上に移動する照明領域を形成し得る。眼底走査型撮像装置の場合、サンプルは眼の眼底(又は網膜)であり得、走査コンポーネントは、前述のように、瞳分割を容易にするために眼の瞳孔に結像されてよい。
【0009】
システム光学系(例えば、走査レンズ及び眼用、すなわち眼科、レンズ等)は、走査ビームを走査コンポーネントから撮像対象のサンプルへと方向付け得る。システム光学系は、走査コンポーネントから撮像対象のサンプルまでの放射経路(例えば、光路)を画定する光学トレインを構成してよい。任意選択により、その上の反射現象が排除されることになるターゲット光学系は、この光学トレインの中から選択されてよい。走査ビームが、ターゲット光学系で走査されてよい。放射ブロックコンポーネント(例えば、第一の光ブロック)は、放射源から出力される放射ストリームを部分的にブロックして、放射が走査コンポーネントによって受け取られるのを制限するように配置されてよい。それゆえ、放射ブロックコンポーネントは、放射源から走査コンポーネントまでの放射経路に沿って配置されてよい。放射ブロックコンポーネントは、ターゲット光学系に結像され(例えば、その共役平面上に配置され)、ターゲット光学系上に移動する非放射ゾーン(例えば、第一のダークゾーン)を形成してよく、走査コンポーネントからの走査ビームは非放射ゾーンを通過できない。走査ビームは、移動する照明領域を画定してよく、非放射領域は照明領域と共に移動してよい。任意選択により、非放射ゾーンは、照明領域と集光領域(サンプルから戻る散乱光がそこを通過し得る)との間の重複を、特にターゲット光学系においてブロック(又は部分的にブロック)してよい。
【0010】
走査型撮像装置としては、サンプルから集光領域を通って戻る散乱放射(例えば、散乱光)を集光するための集光器(例えば、光検出器、フォトセンサ、電荷結合素子(CCD)イメージセンサ、又は相補型金属酸化膜半導体(CMOS)イメージセンサ)が含まれ得る。走査型撮像装置は、戻りの散乱光のうち集光器に到達する量をブロックすべく集光領域を部分的にブロックするように配置された集光器ブロックコンポーネント(例えば、第二の光ブロック)をさらに含み得る。集光器ブロックコンポーネントは、ターゲット光学系(又は第二のターゲット光学系)に結像され(例えば、その共役平面上に配置され)、それによってターゲット光学系(又は第二のターゲット光学系)上に移動する非集光ゾーン(例えば、第二のダークゾーン)を形成し、移動する照明領域から戻る散乱放射は非集光ゾーンを通ることができない。非集光ゾーンは、走査コンポーネントによって移動されるようになれされてよく、集光領域と重複してよい。例えば、非集光ゾーンは、非放射ゾーン及び走査ビームと共に移動してよく、照明領域と集光領域との間の重複を、特にターゲット光学系においてブロックし(又は部分的にブロックする)得る。照明領域と集光領域との間の重複のブロックは、非集光領域と非放射ゾーンを、それらが例えばターゲット光学系上で(例えば相互に一緒に/一体で)移動する際にターゲット光学系上で相互に当接又は重複させることによって実現されてよい。
【0011】
ターゲットレンズ上の照明領域と集光領域との間の重複のブロックは、ターゲットレンズからの反射が集光器に到達するのを制限(又はブロック)し、それによって捕捉された画像の反射現象のアーチファクトを回避するのを助ける。それゆえ、走査コンポーネントの何れかのある走査位置についてターゲットレンズ上の照明及び集光領域間の重複を最小化又は排除することが望ましいものであり得る。しかしながら、画像捕捉シーケンスのための典型的なセットアップルーチンの一環として行われ得るシステム焦点調整によって、非放射ゾーン及び/又は非集光ゾーンがデフォーカスされ、及び/又はその位置が移動し得、それが照明及び集光領域間の重複の増大につながる。このデフォーカス効果を補償するための様々なステップが想定される。
【0012】
照明及び集光領域間の重複を完全にブロックすることが望ましいが、システム焦点の調整によって、照明及び集光領域間の重複の大きさが変わり(例えば拡大し)得る。集光器ブロックコンポーネント及び放射ブロックコンポーネントの大きさと位置は、ターゲット光学系上の移動する非放射ゾーンと非集光ゾーンとの間の重複が、例えばターゲットレンズの共役平面の位置が集光器ブロックコンポーネント及び/又は放射ブロックコンポーネントに関して軸方向に移動されることによる照明及び集光領域間の重複の所定の増大をカバーするのに十分であるように選択されてよい。
【0013】
走査型撮像装置が強度近視眼の画像を撮影する眼底走査型撮像装置である場合、ターゲットレンズの共役平面は、眼の近視を補償する結果として、ブロックコンポーネントに関して(例えば、軸方向に)移動され得る。重度近視の幾つかの場合、照明領域及び/又は集光領域に関するブロッカの位置の移動により、非集光ゾーン及び/又は非照明ゾーンは(眼への、又は眼からの)光を多く限定しすぎて、それが画像が暗くなる、又は画像捕捉サイクルが遅くなることにつながり得る。これらの極端なケースでは、より明るい画像を得る代償としてある程度の反射現象を容認することが望ましいものであり得る。すなわち、集光器ブロックコンポーネント及び/又は放射ブロックコンポーネントは、移動可能(又は取外し可能)に構成され、それによる放射経路(例えば、光路)の妨害を限定してもよい。例えば、放射ブロックコンポーネントは、放射源から出力される放射を部分的にブロックするように配置されてよく、且つ集光器ブロックコンポーネントは、移動する集光領域から戻る散乱放射を部分的にブロックするように配置されてよく、或いは、放射ブロックコンポーネントが放射源から出力される放射を妨害しないように配置されてよく、且つ/又は集光器ブロックコンポーネントが移動する集光領域から戻る散乱放射を妨害しないように配置されてよい。
【0014】
代替的に、走査型撮像装置が、サンプルが集光器上で合焦される際にターゲット光学系の共役平面を(例えば、軸方向に)移動させることになるような焦点調整メカニズムを有する場合、集光器ブロックコンポーネント及び/又は放射ブロックコンポーネントは、ターゲット光学系の実質的に共役平面に維持されるために、ターゲット光学系の共役平面と共に移動され得る。これは、例えば、近視のために焦点が調整される際にブロッカとターゲットレンズとの間(ターゲットレンズを含む)の光学系の移動によって引き起こされ得る。換言すれば、ブロックコンポーネントは、ターゲットレンズの共役平面に維持されるために、焦点が調整される際に移動され得る。任意選択により、放射ブロックコンポーネントの位置は、ターゲット光学系の共役平面の移動に関係なく静止した状態に維持され得る。
【0015】
さらに代替的に、集光器ブロックコンポーネント、走査コンポーネント、及びターゲット光学系の相対位置は、合焦メカニズムに依存しなくてよい。例えば、焦点調整光学系が集光器ブロックコンポーネントと集光器との間に配置されてよく、それによって、ターゲット光学系素子から集光器ブロックコンポーネント(走査コンポーネントを含む)までの戻り散乱放射の光路に沿った光学系の相対位置は、焦点調整光学系が集光器上でサンプルを合焦させても固定された状態に維持される。
【0016】
追加的に、照明及び/又は集光平面に関するブロックコンポーネントの位置の変化は、捕捉される光の量に影響を与え得る。このような位置の変化は、上述のように、(例えば、放射源と放射ブロックコンポーネントとの間及び/又は集光器と集光器ブロックコンポーネントとの間の)光学チェーン内の移動により得、又は、ブロックコンポーネントの、それをターゲットレンズの共役平面に保持するための移動により得る。この位置変化により、より強い近視のためにカメラの焦点が調整される際に光のブロックが増大し得る。したがって、より強度の近視の場合には、何れかのブロックコンポーネントにより提供されるブロックの量を調整して、より多くの光が通過させられ得るが、これは、集光器に戻る反射現象がある程度増大する結果につながる。
【0017】
特定の実施形態において、放射ブロックコンポーネントは集光器ブロックコンポーネントと同一平面にあってよい。これによって、走査型撮像装置の設計とアラインメントが容易となり得る。追加的に、撮像対象のサンプル(例えば、眼底撮像装置の場合の眼の網膜)の表面の共役平面における照明開口は、放射源の前において、その出力放射ビームを構成(例えば、整形)してよい。この場合、照明開口は照明源と放射ブロックコンポーネントとの間にあってよい。同様に、走査型撮像装置は、撮像対象のサンプル(例えば、眼の網膜)の表面(任意選択により、同じ表面)の共役平面に集光開口を有し得る。この場合、集光開口は集光器と集光器ブロックコンポーネントとの間に配置されてよく、照明開口は集光開口と同一平面にあってよい。照明開口は集光開口と合致し、光センサ(例えば、集光器)上の集光開口の共役平面にあってよい。
【0018】
任意選択により、走査型撮像装置は瞳分割開口をさらに含み得、これはサンプル(例えば、網膜又は眼底)の前の放射の走査ビームをサンプルから戻る散乱放射から分離する分割領域を画定する。例えば、眼底撮像装置における瞳分割の場合、瞳分割開口は実質的に放射源から走査コンポーネントまでの放射経路において走査コンポーネントの直前に配置されてよい。この分割領域は、放射源からの放射ビームが通過して走査コンポーネントに到達する第一のサンプル穴と、サンプルから戻る散乱放射が通過する第二のサンプル穴を画定してよい。第一のサンプル穴と第二のサンプル穴は、同一平面にあってよい。この構成において、走査型撮像装置はデュアルレンズをさらに含み得、デュアルレンズは単一の光学コンポーネントとして成形される同一平面にある2つのレンズにより具現化され、第一のサンプル穴と整列された第一のサブレンズと第二のサンプル穴と整列する第二のサブレンズを含む。ある構造(例えば、壁)が、第一のサンプル穴、第一のサブレンズ、放射ブロックコンポーネント、及び照明開口の間の整列を保持し、第二のサンプル穴、第二のサブレンズ、集光器ブロックコンポーネント、及び集光器開口の間の整列を保持してよい。この構造はまた、第一のサンプル穴側から第二のサンプル穴側への光の漏れを防止する役割も果たしてよい。
【0019】
走査型撮像装置が眼底撮像装置である場合、ターゲットレンズは透過型レンズであってよい。例えば、ターゲットレンズは、走査コンポーネントからサンプルまでの放射経路上でサンプル(例えば、眼底)に最も近いレンズであってよい。代替的に、ターゲット光学系は、例えば、走査コンポーネントとサンプルとの間にあり、一般に走査コンポーネントからの走査ビームをある入射角で受け取り、所定の、一般にはコリメート経路に沿って走査ビームを出力する機能を有する走査レンズであってよい。
【0020】
走査型撮像装置は、共焦点ポイント走査型撮像装置又はライン走査型撮像装置であってよい。理解されるように、ライン走査型撮像装置(又はライン走査検眼鏡)は、ライン走査型レーザスキャナ/検眼鏡(LSLO(line scanning laser scanner/ophthalmoscope))又はブロードライン走査型(眼底)撮像装置/検眼鏡(BLFI(broad-line scahnning (fundus) imager/ophthalmoscope))の両方が含まれ得る。走査型撮像装置がライン走査型撮像装置である場合、放射ビームは実質的に矩形放射ビームであってよい。矩形放射ビームは、(任意選択により、固定された)長さ寸法を有し得、長さ寸法に実質的に垂直な可変幅寸法を有し得る。
【0021】
この走査型撮像装置は、異なる種類の走査構成で実装されてもよい。例えば、走査型撮像装置は、スキャン-ノンデスキャンシステム、スキャン-デスキャンシステム、又はスキャン-デスキャン-リスキャンシステムであってよい。
【0022】
添付の図面と共に読まれる以下の説明と特許請求の範囲を読むことによって、その他の目的及び達成事項は、本発明のより十分な理解と共に、明らかとなり、認識されるであろう。
【0023】
本明細書で開示されている実施形態は例にすぎず、本開示の範囲はこれらに限定されない。1つの特許請求カテゴリ、例えば方法に記載されている何れの実施形態の特徴も、他の特許請求カテゴリ、例えばシステムにおいても特許請求できる。付属の特許請求の範囲の従属性又は何れの後方参照も、形式上の理由でのみ選択されている。しかしながら、何れかの先行する請求項への慎重な後方参照から得られる何れの主旨も特許請求でき、特許請求項及びその特徴の何れの組合せも開示され、付属の特許請求項の中で選択される従属性にかかわらず、特許請求できる。
【0024】
図中、同様の参照記号/文字は同様の構成要素を指す。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】フラッド照明式眼底撮像装置の概念図である。
図2】一般化された共焦点ポイント走査型眼底撮像装置を示す。
図3】共焦点ポイント走査型眼底撮像装置(又はより一般的には、ポイント共焦点走査システム)のための簡略化した例示的な走査パターンを示す。
図4】ライン(共焦点)走査型システムのための簡略化した例示的な走査パターンを示す。
図5A-5C】各々、ライン走査型眼底撮像装置で使用されてよい異なる幅の、異なるサイズの例示的な照明幅広ライン(又はスリット)を示す。
図6A】横断するラインビームが走査中にサンプルを横切るラインを照明し(例えば、図4図5A図5B、及び図5C参照)、戻る反射/散乱光が、任意選択により図2に示されるようにその後の処理用のCPU及び表示用のモニタに連結されてよい集光器(例えば、光検出器又はカメラ)を同様に走査できるようにされる、いわゆる「スキャン-ノンデスキャン」システムの理想化された走査構成を示す。
図6B】ラインビームがサンプルを走査するが、戻り散乱光のラインは集光器上の1つの所定の位置に保持され、集光器を走査しない、いわゆる「スキャン-デスキャン」システムの理想化された走査構成を示す。
図6C】第二の走査メカニズムがスキャン-デスキャンシステムに組み込まれ、スキャン-デスキャンシステムによって生成された、本来は非走査の戻り散乱光を、それが集光器に到達する前に改めて走査させ(例えば、リスキャン)、それによって戻り散乱光で集光器を新たに走査させる、いわゆるスキャン-デスキャン-リスキャンシステムの例を示す。任意選択により、このリスキャン機能は、第二の走査コンポーネントによって、又は走査ビームでサンプルを走査する走査コンポーネントの異なる部分によって提供できる。例えば、リスキャンは、走査ビームでサンプルを走査する1つの走査コンポーネントの裏側又は、その上の異なる位置を使用することによって実現されてよい。
図6D図6Cのそれと同様のスキャン-デスキャン-リスキャンシステムへの球面ミラーの組み込みを示す。
図7】本発明を取り入れたライン走査型眼底撮像装置の代替的なスキャン-デスキャン構成の例を示す。
図8】結像された照明ブロック(例えば、非照明ゾーン)、結像された集光ブロック(例えば、非集光ゾーン)、走査コンポーネントから走査ビームがそこを通って眼に到達し得る走査窓、及び眼からの戻り光がそこを通って集光器に到達し得る集光窓を伴う図7の眼科レンズの簡略化された、正確な縮尺によらない拡大図を提供する。
図9】本発明を取り入れたライン走査型眼底撮像装置の代替的なスキャン-デスキャン-リスキャン構成の例を示す。
図10】複合デュアルレンズの概念的設計を示す。
図11】複合デュアルレンズを用いるスキャン-デスキャン-リスキャンライン走査型システムにおける眼科/眼用レンズに結像されるビームブロックを追加するための代替的な構造を示す。
図12】例示的なコンピュータデバイス(又はCPU若しくはコンピュータシステム)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
2種類の走査型撮像装置は、共焦点ポイント走査型撮像装置(レーザポイントビームを使ってサンプルを点ごとに走査する)とライン走査型撮像装置(狭小ラインビーム又は幅広ラインビーム(例えば、所定の幅のリニアスリット)を使って、サンプルを線ごとに走査する)である。眼底撮像装置の分野では、ライン走査型撮像装置はライン走査型検眼鏡と呼ばれることがあり、ライン走査型レーザ撮像装置/検眼鏡であるLSLO(典型的にレーザを使って、走査しながらサンプルを横切る非常に狭小な線を生成する)と幅広ライン走査型(眼底)撮像装置/検眼鏡であるBLFI(非コヒーレント光源を使って、走査しながらサンプルを横切る所定の幅の幅広ライン(又はスリット)を生成する)の両方を含む。以下、ライン走査型撮像装置は、レーザライン(又は極狭小ライン)走査型撮像装置(例えば、LSLO)と幅広ライン走査型撮像装置(例えば、BLFI)の両方を指すと理解されたい。
【0027】
走査型撮像装置は一般に、サンプルの各走査位置から戻る散乱光を捕捉して(例えば、光検出器又はフォトセンサ等の集光器の使用による)、捕捉した走査位置をモンタージュして、フルサイズ(例えば、全視野(FOV))画像を画定し得るサンプルの合成画像を生成する。説明しやすくするために、本発明の実施形態では、眼のレンズ(例えば、水晶体)の反対側の内側表面であり、網膜、視神経乳頭、網膜黄斑、中心窩、及び後極を含む眼底の画像を撮影するための走査型撮像装置の使用について述べる。すなわち、本願の走査型撮像装置は、眼底走査型撮像装置に関して提示され得るが、本発明は眼以外のサンプルの撮像等、その他の用途のために最適化された走査型撮像装置においても同様に使用されてもよいと理解されたい。
【0028】
各々のタイプの走査型撮像装置にそれぞれの長所と短所があり、用途に応じて最適化され得る。例えば、共焦点ポイント走査型撮像装置はデフォーカスされた光を本来的に回避するが、各結像点(例えば、捕捉された各走査点)は1つの画像ピクセルに対応し得るため、合成されたフルサイズ画像を構成するためには、サンプルを横方向及び縦方向に走査する必要がある。これは、比較的長い画像捕捉時間につながり得る。ライン走査型撮像装置は一般に、その幅方向(横断する走査ライン、すなわちラインビームの長さ方向に垂直)へのある程度の共焦点性を実現し、ポイント走査型撮像装置より高速でサンプルを走査できる。しかしながら、少なくとも幅広走査型撮像装置の場合、走査を行うラインビームが狭すぎれば、捕捉された画像は所望の輝度を実現し得ない。それでも、幅広ライン走査型撮像装置はレーザ源を不要にできるため、他の2つの走査型撮像装置より費用対効果が高く、さらに、毎回の捕捉シーケンス中に走査対象サンプルに当てる光の量を増大させ、それゆえ、より明るい画像を生成するために、可変的な幅の走査ラインビームを形成することができるが、それと引き換えに共焦点性が低下する。
【0029】
走査型撮像装置が眼底撮像のために使用される場合、外来光のほか、角膜からの反射現象及び水晶体からの散乱光(例えば、白内障による等)の集光(例えば、捕捉又は結像)を回避することが一般に望ましい。走査型撮像装置に固有の、網膜/眼底の個々の標的走査位置の連続的な照明と収集により、眼底の無関係(例えば周辺)領域からの不要な光の集光は低減するが、不要な反射現象及び眼からの散乱光の排除/低減には、より直接的な方法が必要であり得る。角膜からの反射現象及び水晶体からの散乱光は、走査ビームが眼の後部に入る際に角膜及び水晶体を横切ることから生じる。これらの問題には、瞳分割と呼ばれる技術により対処され得、これは角膜からの反射現象と水晶体からの散乱光を、眼に入射する走査ビーム及び眼から射出する戻り(散乱)光に対して瞳孔の最適に選択された領域に異なる経路を提供することによってブロックする。例えば、これらの領域は、瞳クリッピング(例えば、光ビームの一部が、瞳孔を画定する中心を有する虹彩によりブロックされる)、白内障(例えば、水晶体の白濁領域)から散乱する光、及び照明光の正反射(例えば、反射現象)(例えば、スキャンビームが眼に入射する際に角膜に当たることから生じる可能性がある)を回避するように選択されてよい。基本的に、瞳分割によれば、スキャンビームが眼底上の特定の走査位置を照明するために眼に入射するときに通る瞳孔照明領域(又は窓)と、走査位置の画像を捕捉するためには眼球から出る散乱光をどれだけ(集光器により)集光するかを特定する瞳孔集光領域(又は窓)が画定される。瞳分割は、ライン走査型眼底撮像装置において使用されてよいが、瞳分割は一般に、共焦点ポイント走査型眼底撮像装置では不要と考えられる。瞳分割の副次的利点は、それが照明用走査ビームと戻りの散乱光を瞳孔においてだけでなく、瞳孔付近の領域、例えば眼の角膜においても分離した状態に保つ傾向があり得ることである。瞳分割が走査ビームを戻りの散乱光から分離する能力は、瞳孔から離れると、瞳孔照明領域及び瞳孔集光領域のデフォーカスによって消失し得る。
【0030】
上述の走査型撮像装置は、各種の放射源(例えば、コヒーレントポイント走査型撮像装置及びレーザライン走査型撮像装置のためのレーザ、幅広ライン走査型撮像装置のためのランプ又は発光ダイオード、LED等の非コヒーレント光源)を使用してよいが、各々は一般に、放射ストリーム又はビームを生成し、それが(放射経路に沿って)走査メカニズム/コンポーネント(例えば、1つ又は複数のミラーガルバノメータ(すなわち、ガルボ)、MEMSスキャナ、電気光学偏向器、及び/又は回転ポリゴンスキャナ)へと運ばれる。放射源から出力される放射ビーム(又は照明ビーム)は、放射源の前にスリット(例えば、特定の構成の開口)を設置することによって整形されてよい。このスリット開口は、眼底(例えばその共役平面)に、又は結像されるあらゆる表面に結像されてよい。走査コンポーネントは、放射源からの放射ビームを受け取り、特定のパターンで走査する走査ビームを形成する。走査コンポーネントから、走査ビームは光学トレイン(走査経路を画定する)を辿って、走査型撮像装置から出て、サンプル(例えば、眼底)を走査する。この光学トレインは典型的に、(走査経路に沿った)走査コンポーネントの前の走査レンズ及びそれに続く1つ又は複数の光学系(例えば、レンズ又はレンズ構造)を含み、これが走査ビームを撮像対象へと向ける。眼底撮像装置の場合、(走査経路に沿って)眼に最も近いレンズは、眼科レンズ、又は眼用レンズと呼ばれてよい。
【0031】
このような走査型撮像装置に固有の問題は、走査型撮像装置の照明及び/又は集光経路に沿って走査型撮像装置の内部のシステムレンズ(又はその他の光学系)での反射現象(例えば、光反射)である。本発明は、走査型撮像装置内の1つ(又は複数)のターゲット光学系(例えば、システム光学系)における反射現象を排除(又は縮小)する方法、システム、又は装置を提供する。眼底撮像装置の場合、眼(例えば、撮像対象のサンプル)に最も近いレンズでの反射現象が典型的に問題となり、幾つかの実施形態は本明細書において、眼に最も近いレンズ(例えば、眼科レンズ)での反射現象を排除することに関して説明されるが、本発明は走査型撮像装置内の他のターゲットレンズ(又は他のターゲット光学系)にも適用されてよいと理解されたい。
【0032】
実施形態において、眼科レンズ(又は、そこでの反射現象を排除/軽減すべきその他のシステム、ターゲット光学系)に結像される放射ブロック(例えば、放射ブロック若しくは放射ブロックコンポーネント又はビームブロック)を放射源と走査コンポーネントとの間に設置して、走査コンポーネントが受け取る放射ビームを部分的にブロックする。放射ブロック、又はビームブロックは、穴の開いたフォイル又は金属板、光フィルタ、光ビームの一部を選択的にブロックし、他の部分は通過させるその他の光ブロックメカニズムを使って構成されてよい。放射ブロックは、眼科レンズの共役平面にあってよく、走査コンポーネントが放射源からの放射ビームを走査する際に眼科レンズ上で走査(例えば、移動)される非放射ゾーン(非照明ゾーン)を形成する。この非照明ゾーンは、眼科レンズ上に、走査コンポーネントにより生成される走査ビームに隣接する、反射現象のない(又は軽減された)移動領域を形成する。実施形態において、放射ブロックは、放射源の前、例えば放射源のスリット開口の前に設置されてよい。瞳分割光学系が放射源の前に配置される場合、瞳分割光学系は照明ブロックと走査コンポーネントとの間に設置されてよい。理解されるように、照明ブロックは実質的に眼科レンズに結像され得、瞳分割光学系は実質的に眼の瞳孔(又は角膜)に結像され得、スリット開口は実質的に眼底(又は網膜)に結像され得る。
【0033】
実施形態において、他の放射ブロック(例えば、集光ブロック又は集光器ブロックコンポーネント)もまた眼科レンズに(又は、そこでの反射現象を排除/軽減すべきその他のシステム、ターゲット光学系)に結像されてよく、走査コンポーネントから集光器までの光路上に設置されてよい。集光ブロックは、眼科レンズの共役平面に配置されてよく、眼科レンズ上に、集光器に向かう眼からの(散乱)戻り光に隣接して眼科レンズ上で走査(例えば、移動)される非集光ゾーンを形成する。眼底(例えば、サンプル)から戻る散乱放射(例えば、光)の一部はそれゆえ、非集光ゾーンによってブロックされ、眼科レンズ(又はその他のターゲット光学系)上に反射現象のない(又は軽減された)第二の移動領域が形成され得る。幾つかの実施形態において、眼科レンズ上の反射現象は、非集光ゾーンを非照明ゾーンと、これらが眼科レンズ上で直列で移動するときに、部分的に重複するように配置することによってさらに軽減され得る。集光ブロックは集光器の前に設置されてよい。集光開口(例えば、光がそこを通って集光器に通るピンホール又はスリット)が集光器の前に設置される場合、ピンホールは集光器と集光ブロックとの間に設置されてよい。この場合、集光開口は、眼の眼底(又は網膜)に結像されてよく、集光ブロックは眼科レンズ(又はその他のターゲット光学系)に結像されてよい。集光器はまた、眼底に結像されてもよく、この場合、集光開口は網膜上でわずかに焦点がずれ得る。
【0034】
本発明は、共焦点ポイント走査型撮像装置又はライン走査型撮像装置の一部として実装されてよい。ポイント共焦点走査型撮像装置、例えば(眼底)共焦点走査型レーザ検眼鏡(cSLO(confocal scanning laser ophthalmoscope))は、レーザ(又はその他の明るい共焦点光源)を使って、1回に網膜の1つの小さい点(すなわちスポット)を照明し、その画像を撮影し得る。
【0035】
図2は、一般化された共焦点ポイント走査型眼底撮像装置51を示す。レーザ又は、スーパルミネッセントダイオード、SLD等のその他の光源(例えば、放射源)53は、空間的にコヒーレントな光のポイントビームを、任意選択による開口55及びコリメートレンズ57を通り、ビームスプリッタ59を通って、この例では2つのガルバノメータ61及び63(例えば、サーボ制御回転(又は振動)ミラー)を含む走査コンポーネントへと発出する。第一のガルバノメータ(ガルボ)61は、ポイントビームの垂直走査(例えば、Vスキャン)(例えば、撮像対象のサンプル上に照明点の列を画定し得るY軸方向への走査を提供する)を提供してよく、第二のガルボ63は、ポイントビームの水平走査(例えば、Hスキャン)(例えば、サンプル上に照明点の行を画定し得るX軸方向への走査を提供する)を提供してよい。例えば、Hスキャンガルボ63は、ミラーを回転させて、ポイントビームを別々のステップで(例えば、連続的な画定可能なステップで)水平に走査して点の行を画定してよい。点の行が完成すると、Vスキャンガルボ63がそのミラーを垂直に回転させて、走査ビームを新しい、垂直方向にずれた位置へと走査ビームを移動させて、新しい行の走査に備え得る。走査コンポーネントと眼75との間の光路内に走査レンズ67があり、その機能は一般に、Hスキャンガルボ63からの走査ビームを複数の走査角度(入射角)で受け取り、実質的に平坦な表面の焦点面(例えば、コリメート光路)を持つ走査ビーム69を生成することである。走査ビーム69はすると、眼科レンズ71によって眼75の網膜73に合焦されて、眼底の画像を撮影し得る。散乱光は眼75から出て、眼科レンズ71、走査レンズ67、並びにガルボ61及び63を通って戻り、ビームスプリッタ59に到達する。眼75からの散乱光の戻り経路は走査ビームと同様であるため、ガルボ61及び63は、戻り光を「デスキャンする」(すなわち、アンスキャニング(un-scanning))効果を有し、それによってこれはビームスプリッタ59に到達する時点までには安定したビーム(ノンスキャニング(non-scanning))となる。ビームスプリッタ59で、戻り光は他の合焦レンズ77へと向けられ、これは戻り光ビームを、光学的に網膜73と共役であり得、かつ焦点ずれ信号(光)を排除するのを助けるピンホール81を通じて光検出器79へと合焦させる。各照明点は、光検出器79によって別々に結像(例えば、捕捉又は検出)され、走査コンポーネントからのポイントビームがサンプルをラスタパターンで走査されると、一連の結像点が収集されて、網膜73の合成画像が構成される。すなわち、光検出器79により検出された信号(例えば、光の点)は、コンピュータ、又はCPU、83によって処理されて、共焦点(フルサイズ)画像84が形成される。結果として得られた共焦点画像84は、ビデオディスプレイ85上に表示されるか、又はさらに処理するために保存されてよい。光干渉断層撮像システムに組み込まれたポイント共焦点走査システムの例は、本発明と同じ譲受人に譲渡されている米国特許第8,783,868号明細書において提供されており、同特許の全体を参照によって本願に援用する。
【0036】
以下により詳しく説明するように、任意選択により、眼科レンズ71に結像される照明ブロック87が放射源53の前に配置されて、眼科レンズ71上に、走査コンポーネントから出力される(例えば、ガルボ63から出力される)走査ビームに隣接する移動する非照明ゾーンを形成してよい。非照明ゾーンは、走査ビームによる反射現象を防止する(又は軽減させる)。同様に、集光ブロック89が任意選択によって光検出器79の前に配置されてよく、集光ブロック89の位置は、システム内の光学系が眼科レンズ71の表面のその位置に集光ブロック89の画像を形成して(例えば、集光ブロック89は眼科レンズ71の表面の共役平面に配置される)、眼科レンズ71上に、眼75から戻る散乱光による反射現象を防止する(又は軽減させる)移動する非集光ゾーンを形成するように選択される。
【0037】
図3は、共焦点ポイント走査型眼底撮像装置(又は、より一般的に、ポイント共焦点走査システム)の簡略化した例示的な走査パターンを示す。その他の走査パターンも可能であると理解されたい。この説明的な例においては、各点Sp_1~Sp_nがある走査パターンで別々に個々に捕捉される。一度にサンプル内の1点たけが照明され、捕捉されるため、撮像には典型的に、標本、例えば網膜又は眼底上で規則的ラスタ(例えば、平行な走査ラインの矩形パターン)で走査することが必要となる。例えば、レーザ走査ビームは、走査コンポーネント(例えば、ガルボ61及び63)を使用することによって、X-Y平面(走査ビームの主要軸方向(例えば、Z軸)に垂直)においてサンプル上で走査されてよい。別の点の行(例えば、R1~Rm)は、対応する別々の水平走査、Hスキャンにより、次々に捕捉されてよく、走査ビームは1行ずつずらすインクリメンタルステップで垂直に走査され(例えば、各水平走査の後に1回の垂直ステップ)、垂直走査、Vスキャンを画定してよい。典型的に、より低速な走査によって、よりよい信号対ノイズ比が提供され、より高コントラスト及びより高解像度が得られるもしれない。
【0038】
照明及び検出のポイント共焦点配置により、共焦点走査型撮像装置は、有利な点として、迷光及び焦点のずれた光を抑制し、それによって瞳分割を必要とせずに高コントラスト画像を生成し得る。しかしながら、これらは点照明で動作するため、これらには高い強度が必要となり得、網膜撮像時に安全性の問題が生じる。同様に、サンプルからの光の多くがピンホール81によりブロックされるため、その解像度を高めると、一般には、捕捉信号の強度が低下し、それによって露光時間を長くする必要があり得る。追加的に、共焦点ポイント走査型眼底撮像装置は、一般に、水平及び垂直走査を実現するために複数の走査メカニズム(例えば、水平走査のガルボ63と垂直走査のガルボ61)を必要とし、これは高価且つ複雑である可能性があり、フルサイズ合成画像を構成するために、多くの点を収集する必要があるため、その画像生成を低速化させる可能性がある。これはまた、画像構成中の眼の移動の問題の原因にもなり、それが画像歪みにつながり得る。
【0039】
ライン走査型撮像装置は、サンプルの特定の幅範囲にわたるラインビームをポイントビームの代わりに使用することで、共焦点ポイント走査型撮像装置とは異なる。その結果、ライン走査型撮像装置は、一度に画像データの行(又は列)全体を捕捉し、また、より簡略化された走査コンポーネントでよくなり得る(例えば、上述の共焦点ポイント走査型眼底撮像装置よりガルボが1つ少ない)。幾つかの実施形態において、ライン走査型撮像装置でも、その線より広い視野を撮像することができるように、第二のスキャンを含んでいてもよい。例えば、システムの光学ヘッド全体を手で回転させて、より広い視野の照明を可能にすることもできる。
【0040】
図4は、ライン走査システムのための簡略化した例示的な走査パターンを示す。この例では、横断するラインビームは放射源(図示せず)により生成されて、(例えば、図2のガルボ61等の垂直走査ガルボを使用して)垂直に走査され、垂直走査ビームは複数の走査ラインL1~Liを垂直走査パターン、Vスキャンで生成する。前述のように、2種類のライン走査型撮像装置は、レーザライン走査型撮像装置と幅広ライン走査型撮像装置である。説明しやすくするために、走査ラインL1~Liは、レーザライン走査型撮像装置又は幅広ライン走査型撮像装置により生成されるライン走査を表してよく、レーザライン走査型撮像装置により生成される走査ラインは典型的に、幅広ライン走査型撮像装置により生成されるものよりはるかに狭いと理解されたい。ライン走査型撮像装置は一般に、走査ライン(L1~Li)に垂直な(例えば、図4のY軸に沿った)焦点のずれた光の共焦点抑制をある程度保持し得るが、ラインに沿った(例えば、図4のX軸に沿った)共焦点抑制は行い得ない。ライン走査型システムは、瞳分割と組み合わせられている(例えば、ミュラ(Muller)他の米国特許第8,488,895号明細書を参照されたく、同特許の全体を参照によって本願に援用する)。有利な点として、ライン走査型撮像装置は、共焦点ポイント走査型撮像装置より高速で網膜(又は眼底)を走査でき、したがって、移動によるアーチファクトの影響をより受けにくく、その代わりに焦点ずれの抑制は低下する。しかしながら、ライン走査システムにおけるライン強度又は線形アレイ感度のばらつきは、捕捉画像におけるムラ(streaking)につながり得る。
【0041】
幅広ライン走査型撮像装置は、レーザライン走査型撮像装置の利点とフラッド照明式撮像装置のそれらとを組み合わせようとするものである。幅広ライン走査型撮像装置は、レーザライン走査型撮像装置のそれよりはるかに広い幅広ライン(又はスリット)の照明を使用し、したがって、はるかに大きいエタンデュ(etendue)を有し得、それによって典型的にはより安価である非コヒーレント光源(例えば、非レーザ光源)、例えばランプ又はLEDを使用することが可能となり、より自然に見える画像を実験するのに役立ち得る広帯域照明を提供できる。
【0042】
図5A図5B、及び図5Cは各々、異なる眼底領域41A、41B、41Cを照明するための、異なるサイズの例示的な幅広ライン(又は照明スリット)43A、43B、及び43Cを示している。各図では、照明スリット43A、43B、及び43Cは、説明のために異なる幅を有するように示されている。各照明スリット43A、43B、43Cは、特定の走査ステップ又は時点での眼底上の走査ビームの位置に対応する。走査ビームは、網膜をスムーズに走査することも、ステップ式に移動させることもできる点に留意されたい。スリット43Cとスリット43Aのように、照明スリットの幅を広げると、当てられる光の量が増え、改善されたダイナミックレンジを提供し得る。照明ストリップの縁辺の鮮鋭さは、照明が検出器による取得中にあまり移動しなかった場合(典型的に、走査ビームがステップ式に走査されていて、取得中は比較的移動しない場合)、ライン走査型システムにとって最適な焦点を見つけるために使用できる。構成画像を改善するために、各種の画像処理技術がさらに使用されてよい。例えば、網膜上の照明されていない位置を検出して(例えば、画像を捕捉)、眼の焦点の合っていない領域からの背景レベル、例えば迷光レベルを評価することができ、するとこの背景レベルは、例えば照明スリット43A、43B、又は43Cからの捕捉されたライン画像から差し引かれてよい。また、各垂直走査ステップのサイズは、照明スリットの幅より狭くされてもよく、それによって複数の連続する照明スリットが網膜の同じ領域をカバーする。このようにすると、複数回の画像捕捉で網膜の同じ領域の画像が撮影される。これによって、各種の画像処理技術(例えば、平均化)を使って、個々の領域の画像品質を改善することができる。代替的に、最終的な合成画像へとモンタージュするために個々の領域の最善の画像品質を選択してもよい。さらに、幅広ライン撮像システムでは、複数の瞳分割構成もまた使用されてよい。例えば、照明及び検出のための瞳分割は、フラッド照明式眼底撮像装置について典型的であるものよりもより角膜の近くで実現されてよく、また、環状リングを照明する(フラッド照明式眼底撮像装置に関して前述した)代わりに、スリットが照明されてよい。幅広ライン(スリット)走査型撮像装置の例は、何れも本発明と同じ譲受人に譲渡されている米国特許出願公開第2017/0049323号明細書及び同第2018/0014727号明細書に記載されており、両出願の全体を参照によって本願に援用する。
【0043】
上述の(眼底)走査型撮像装置は様々な走査構成を使用してよい。例示のために、ここでは、ライン走査型撮像装置(例えば、走査ラインビームを使用する撮像装置)に関して幾つかの簡略化された走査構成が示されているが、これらの構成は、当業者であればわかるように、ポイント走査型撮像装置にも当てはめられてよい。
【0044】
図6Aは、ある走査構成(いわゆる、「スキャン-ノンデスキャン」システム)を示しており、横断するラインビーム115は、図4図5A図5B、及び図5Cに示されるように、1つの次元(例えば、X軸)へとサンプル109を横切るライン(例えば、狭小ライン又は幅広ライン)L1~Liを、ラインビーム115が他の次元(例えば、Y次元)に走査されている間に照明する。戻り(例えば、反射又は散乱)光116も同様に集光器107(例えば、光検出器又はカメラ)を走査でき、これは、任意選択によって、図2に示されるように、さらに処理するためのCPU及びフルサイズ画像を表示するためのモニタに接続され得る。図6Aのこの例では、集光器107はフルサイズデジタルカメラであってよく、戻り光116は、それがカメラの2次元(2D)フォトセンサ(例えば、光検出器の2Dアレイ)を走査しながらフルサイズ画像を「ペイント」してよい。すなわち、戻り光16の各検出ラインは、フルサイズ画像の場合の1回の取得で、又はフルサイズを構成する複数の取得(例えば、一連のライン照明をサンプル上の追加の水平位置に移動させる)を通じて、カメラ上の異なる位置で捕捉され、バッファに保存され、処理されて、合成フルサイズ画像が構成されてよい。放射源101(例えば、レーザ、ランプ、又はLED等の光源)は、照明ラインビーム103(非コヒーレント光ビーム又はレーザビーム)を生成する。照明ラインビーム103を整形するのを支援するために、サンプル109(例えば、撮像対象の表面)に結像される放射開口105が放射源101の前に設置されてよい。眼底走査型撮像装置の場合、放射開口105は眼の網膜に結像されてよい。照明ラインビーム103は、1つ又は複数の光学系(例えば、レンズ)111を通ってから走査コンポーネント(例えば、ガルボミラー)113に到達し得、それがサンプル109を横切る照明ラインL1~Liを画定する放射の走査ラインビーム(例えば、走査ラインビーム115)を形成する。より実践的な用途においては、走査コンポーネント113から出力された走査ラインビーム115は図2に関して前述したように走査レンズ117及び眼科レンズ119を通過してから、サンプル109(例えば、眼の網膜又は眼底)に到達し得ると理解されたい。この例では、走査コンポーネント113から出力されたラインビーム115は、サンプル109に沿ってステップ式に垂直に走査される(例えば、図4に示されるVスキャン)。サンプル109から戻る散乱光116は、集光器107へと、走査コンポーネント113内の開口123を通過し(又は、それ以外にサンプル109から運ばれ)、集光器107上で、対応するステップ式に同様に垂直に走査されてよい。より実践的な用途では、集光器107の前に合焦レンズ121を含み得る。眼底走査型撮像装置の場合、走査コンポーネント113は実質的に眼の瞳孔と光学的に共役関係にあってよい。
【0045】
以下により詳しく説明するように、ターゲット光学系(例えば、眼科レンズ119)に結像される照明ブロック125が放射源101の前に配置されて、ターゲット光学系上に移動する非照明ゾーンを形成してよく、これは走査コンポーネント113から出力される走査ビーム115に隣接してよい。この非照明ゾーンは、走査ビーム115による反射現象を防止する(又は軽減させる)。
【0046】
図6Bは、いわゆる「スキャン-デスキャン」システムの理想化された走査構成を示しており、走査ラインビーム115はサンプル109上で走査されるが、戻り散乱光139のラインは、集光器上の1つの所定の位置に維持され、集光器上で走査されない。図6Bのうち図6Aのそれらと同様の要素はすべて、同じ参照文字が付され、上述のとおりである。戻りの散乱光ライン139は走査されないため、この走査構成では、ライン走査カメラ131を集光器として使用することができる。代替的に、その2Dアレイ内にライン、例えばピクセルの行(又は、幅広ラインを画定するための所定の数のピクセル行)を有するフルサイズデジタルカメラは、関心対象領域、ROIに指定され、指定されたROIは、戻り光139を受け取り、捕捉するために使用される。この例では、放射源101は照明ライン(又は幅広ライン/スリット)(例えば、ラインビーム)103を生成し、それがビームスプリッタ(又はビーム分割器)133を通って光路135に至り、走査コンポーネント(例えば、ガルボミラー)137に到達する。走査コンポーネント137は、受け取った照明ビームを走査ビームに変換し、それがサンプル109を走査する。前述のように、より実践的な用途において、走査コンポーネント137からの光は走査レンズ117及び眼科レンズ119を通過してから、サンプル109(例えば、眼の網膜又は眼底)に到達してよい。この例において、走査コンポーネント137は、走査ビーム115をサンプルに沿って個別の走査ステップで垂直に走査してよいが、その他の向きの走査も使用されてよい。各走査ステップで、光は(捕捉フェーズで)反射/散乱して走査コンポーネント137に戻る。説明のために、走査コンポーネント137は、この捕捉フェーズ中に実質的に静止していると仮定されてよく、そのため、放射源101からの入射光と同じ光路135に沿って、戻り光を反射する。したがって、光路135は、両矢印により示されるように、共有経路と呼ばれ得る。散乱光の、戻りの静止ラインは、ビームスプリッタ133によって集光経路139へと向けられ、集光経路139によって光検出器、例えばライン走査カメラ131へと運ばれる。図のように、集光経路139上の戻り散乱光の位置は、サンプル109上のラインビームL1~Liの垂直走査位置に関係なく、実質的に静止しており、それをここでは「デスキャン」動作と呼ぶ。これによって、非常に高速でデータを捕捉する(例えば、高速CCDセンサ又はCMOSイメージセンサを使用)ために使用される1行のピクセルを含むライン走査カメラ131を使用することができる。各個別の走査ステップからの捕捉された光は、対応する走査ラインL1~Liの走査位置に対応する位置において捕捉され、バッファ141にマッピングされてよい。バッファ保存されたライン画像はすると、例えばCPU(例えば、コンピューティングシステム又はデバイス)を使ってフルサイズ画像に再構成(例えば、モンタージュ又は継ぎ合わせ)され、図2に示されるように、コンピュータディスプレイ上にレンダリングされてよい。
【0047】
任意選択により、照明ブロック125は、ターゲット光学系での反射現象を軽減させるか、又は排除するために使用されてよい。照明ブロック125は放射源101の前に配置されてよく、ターゲット光学系(例えば、走査レンズ119)の共役平面に設置されてよい。走査コンポーネント137の走査動作により、移動する非照明ゾーンがターゲット光学系上に形成され、これは走査コンポーネント137により出力される走査ビーム115に隣接し得る。非照明ゾーンは、走査ビーム115によるターゲット光学系での反射現象を防止する(又は軽減させる)。また、任意選択により、同じターゲット光学系に結像される集光ブロック143は、任意選択により、集光器(例えば、ライン走査カメラ131)の前に配置されてよい。集光ブロック143の使用は、集光経路139上の戻り散乱光が比較的安定している(例えば、走査しない)ため、容易となる。その結果、移動する非集光ゾーンがターゲット光学系(例えば、眼科レンズ119)上に形成されて、非集光ゾーンがサンプル109から戻る光による反射現象を防止する(又は軽減させる)。非集光ゾーンと非放射ゾーンは、それらがターゲット光学系の共役平面で、又はその上で直接移動する際に、相互に当接し、又は重複してよい。
【0048】
反射現象をさらに軽減させることは、交差偏光板の使用を通じて実現され得る。すなわち、相互に直交する2つの偏光板、例えば照明及び検出(集光)経路の各々につき1つを、交差偏光板構成になるように取り入れることによって、反射現象はさらに軽減され得る。例えば、第一の偏光板は照明経路内に配置されてよく、直交状態の(例えば、第一の偏光板に関して90度回転された)第二の偏光板は検出経路内に配置されてよい。偏光板は、これらの経路内のどこにあってもよいが、好ましい実施形態では、これらは経路内の静止部分にあり、例えば、第一の偏光板は光源101からサンプル109(例えば、眼)までの照明経路内で走査ミラー137の前に位置付けることができ、第二の偏光板は集光経路139内のスキャナ137の後(例えば、サンプル(例えば、眼)から集光器までの光路(集光路)のデスキャン部分)に位置付けることができる。
【0049】
図6Aのスキャン-ノンデスキャンシステムの利点、例えば画像捕捉アーキテクチャの単純化と、図6Bのスキャン-デスキャンシステムの利点、例えば集光ブロック143の使用を容易にする、走査されない安定した戻り光等の幾つかは、本明細書で「スキャン-デスキャン-リスキャン」と呼ばれる第三の走査構成でも実現され得る。図6Cは、簡略化したスキャン-デスキャン-リスキャンシステムを示しており、第二の走査メカニズムがスキャン-デスキャンシステムに組み込まれて、本来は走査されない(例えば、デスキャンされる)スキャン-デスキャンシステムにより生成される戻り散乱光を、それが集光器に到達する前に新たに走査(例えば、リスキャン)して、戻り散乱光を集光器上で新たに走査してよい。図6Cのうち図6A及び図6Bのそれらと同様の要素はすべて、同じ参照文字が付され、上述のとおりである。前述のように、放射源101は、任意選択による開口105とコリメートレンズ111を有し、照明ラインビーム103を形成し、それがビームスプリッタ133を通過して光路135に至り、走査コンポーネント(例えば、ガルボ)137に到達する。走査コンポーネント137は、受け取った照明ビームを走査ビーム(例えば、走査ラインビーム115)に変換し、これは走査レンズ117及び眼科レンズ119を通過して、サンプル109(例えば、眼の網膜又は眼底)を走査してよい。図6Bの場合と同様に、サンプル109から戻る光は、走査コンポーネント137によってデスキャンされ、光路135上で実質的に安定した戻りラインビームを形成し、それがビームスプリッタ133によって集光経路139に向けられる。この地点で、集光経路139上のデスキャンされた戻り光は、例えば光路153a及び153bに沿った1つ又は複数のミラー151a/151bを使用することによって、第二の走査メカニズムへと向けられてよい。この例では、ガルボ(走査コンポーネント137)の裏面は反射性であり、戻り光をリスキャンするために第二の走査メカニズムとして使用され、合焦レンズ121を介して集光器107上にリスキャンされた集光ビーム116bを画定する。走査ビーム115とリスキャンされた集光ビーム116bは走査コンポーネント137によって一緒に画定されるため、これらは相互に対応する。
【0050】
図6Aの場合、照明ブロック125はターゲット光学系、例えば眼科レンズ119での反射現象を軽減させるか、又は排除するために使用されてよい。すなわち、照明ブロック125は、開口105及び放射源101の前に配置されて、ターゲット光学系に(例えば、ターゲット光学系の後面又は前面に)結像されてよい。これは、ターゲット光学系上に移動する非照明ゾーンを形成し、これは走査コンポーネント137から出力された走査ビーム115に隣接し得る。追加的に、集光ブロック143は、リスキャンされた集光ビーム116bを画定する戻り光のリスキャンの前に使用されてよい。すなわち、集光ブロック143は、任意選択によって光路139、153a、又は153bのうちの何れに沿って配置されてもよい。図6Bの場合、集光ブロック143は、戻り散乱光による反射現象軽減が望ましい、同じターゲット光学系に結像され得る。集光ブロック143の使用は、集光ブロック143とビームスプリッタ133との間の戻り光が集光経路(例えば、139、153a、及び/又は153b)上で比較的安定している(例えば、非走査)ため、容易となる。その結果、移動する非集光ゾーンがターゲット光学系(例えば、眼科レンズ119)上に形成され得、その非集光ゾーンがサンプル109からの戻り光による反射現象を防止する(又は軽減させる)。前述のように、非集光ゾーンと非放射ゾーンは、それらがターゲット光学系の共役平面で、又はその上で直接移動する際に相互に当接し、又は重複してもよい。
【0051】
眼底走査型撮像装置で使用される走査構成の他の例は、本願と同じ譲受人に譲渡されている米国特許第9,549,672号明細書に記載されており、同特許の全体を参照によって本願に援用する。
【0052】
一般に、レンズによって、それらの焦点が完全でない(例えば、光は点に合焦されるのではなく、ある空間領域に広がり得る)ことによる収差がもたらされ得る。例えば、レンズの外側部分/縁辺からの光は、レンズの内側部分と比較して、ぼける、又は歪む傾向があり得る。この種の収差は、像面湾曲により得、レンズが画像を、合焦が最善である中心と比較して、縁辺に少々近すぎる位置に合焦させる傾向があることから生じ得る。任意選択により、1つ又は複数の球面ミラーは、この種の収差を打ち消し/それに対処し/それを軽減させるために使用されてよい。複数のレンズ上の像面湾曲は、ペッツバール和の使用によって追跡されてよい(例えば、合算されてよい)。一般に、(例えば、この例示的な実施形態で使用されるような)収束レンズは、ペッツバール和を引き出す際に仮定される半径に関する一貫した規則に基づき、この和において正の項を有する。それに対して、収束ミラーは、負の像面湾曲の負の半径を有し、本願では、収束レンズの像面湾曲に対処するために使用されてよい。複数の球面ミラーが使用されてよいが(例えば、光源から眼までの照明光路内に1つ、及び眼から集光器までの戻り観察経路(例えば、集光経路)内に別の1つ)、1つの球面ミラー(例えば、ペッツバール和によるレンズの合算の像面湾曲に対処する大きさのもの)でも十分であり得、この1つの球面ミラーは、観察野経路に沿って、共有、走査、又はデスキャンセグメントの何れのどこに位置つけられてもよい。
【0053】
共有経路(例えば、光路のうち照明光と集光される戻り光により共有される部分)で球面ミラーを使用する利点は、眼底撮像における主要な課題が、角膜及び光学システムの中の照明及び集光経路により共有される部分(例えば、スプリットミラーと網膜との間)の光学系からの後面反射をブロックすることである。光が空気とガラスとの界面を透過する透過型レンズと異なり、ミラーには顕著な後面反射がなく、それによって後面反射の問題は大きく軽減される。共有経路内のレンズをミラーに置き換える場合の問題は、ミラーが光を反射し、それゆえ、光路が再び人眼に向かって曲がることであり、それが光学システムと人の顔面との間の機械的干渉という問題の原因となり得る。
【0054】
球面ミラーは、本明細書に記載の走査構成の何れにも使用されてよいが、例示を目的として、図6Dは、図6Cのそれと同様のスキャン-デスキャン-リスキャンシステムへの球面ミラーの組み込みを示している。図6Dのうち、図2図6A図6B、及び図6Cの中のそれらと同様の要素はすべて、同様の参照文字が付されており、上述のとおりである。図6Cの例と同様に、放射源101は、任意選択により開口105とコリメートレンズ111を有し、照明ラインビーム103を形成するが、図6Cの例とは異なり、ビームスプリッタ133は不要である。その代わりに、照明ビーム103は走査コンポーネントに直接到達してよく、これは、この例においては、ミラーのブロック(例えば、ポリゴンスキャナ)138として具現化され、それが前後に旋回してサンプル、例えば眼75の走査を実現する。それゆえ、ポリゴンスキャナ138は、受け取った照明ビーム103を走査ビーム(例えば、経路115a)に変換し、これは走査レンズ117及び眼科レンズ119を通過して、眼75の網膜73を走査してよい。眼75から戻る散乱光(例えば、光路115b)は、ポリゴンスキャナ138の異なる表面でデスキャンされて、実質的に安定な、戻りラインビームを光路139a上で形成し、戻りラインビームが球面ミラー151cへと向けられる。
【0055】
球面ミラーの使用に伴う問題は、球面ミラーに向けられる光ビームが直接反射して戻されないようにするために、ビームがミラーに軸からずれた位置で(すなわち、ミラー表面に垂直ではない)当たる必要があるが、ミラーに軸からばれた位置で当たると、不要な非点収差が生じ得る。これに対処するには幾つかの方法がある。非点収差を最小化するために、ミラー(例えば、球面ミラー151c)にできるだけ軸上で当たることが望ましい。非点収差は、入射ビームの反射平面に沿ったミラーの曲率半径を調整することによって排除できる。すると、反射平面と直交平面との間のミラー曲率の差に関連する非点収差は、軸外れの照明に関連する非点収差を打ち消すことができる。第一の球面ミラー(例えば、球面ミラー151c)の非点収差を打ち消すための代替的な方法は、ビームを、第一の球面ミラーの反射平面に直交する反射平面を有する第二の球面ミラー(図示せず)で跳ね返すことである。すると、2つのミラーからの非点収差が直交し、それゆえ打ち消される。その他の収差を回避するために、ミラーにパラボラ又はその他のより高次の形状を使用することもできる。
【0056】
デスキャン経路で球面ミラーを使用する利点は、球面ミラーがデスキャン経路をスキャナ138へと再び向け直すのを助けるために使用されてよいことである。図6Cのミラー151a及び151bにより示されているように、デスキャン経路は典型的に、スキャナ137に戻されてリスキャンされるために複数のミラーで折り曲げられる。球面ミラー151cはもともと光路を曲げる(例えば、光を反射する)ため、デスキャン経路内のその位置によって、それが2つの機能を果たすことができる。第一に、これはシステム内のレンズの像面湾曲による収差を(例えば、ペッツバール和に応じて)補償することである。第二に、球面ミラー151cは、デスキャンラインビームを光路153cに沿ってポリゴンスキャナ138の他の表面へと戻す折り曲げ機能を果たし、そこでこれはリスキャンされ、合焦レンズ121を介して集光器107上にリスキャン集光ビーム116cを画定する。任意選択により、照明経路(例えば、光源101からポリゴンスキャナ138までの経路)内に第二の球面ミラーを追加することにより、第二の折り曲げ経路が導入され、光路を折り曲げることによって、よりコンパクトな設計とすることができ、それによって眼底カメラを小型化することができる。
【0057】
前述のように、照明ブロック125は、ターゲット光学系(例えば、眼科レンズ119)での反射現象を軽減させるか、又は排除するために使用されてよい。すなわち、照明ブロック125は、開口105及び放射源101の前に配置され、ターゲット光学系(例えば、ターゲット光学系の曲面に)に結像されてよく(ターゲット光学系の表面の共役平面に配置されてもよく)、それによってターゲット光学系上に移動する非照明ゾーンを形成する。集光ブロック143は、眼75からの戻り経路のデスキャンセグメント上に配置されてよい。この例では、集光ブロック143は、ポリゴンスキャナ138から球面ミラー151cまでのデスキャン経路内の球面151cの前に配置される。任意選択により、集光ブロック143は、同じターゲット光学系(例えば、眼科レンズ119)に結像され(同じターゲット光学系の表面の共役平面に配置され)、又は、戻り散乱光による反射現象の削減が望ましい場合は、他のターゲット光学系に結像されてよい。その結果、移動する非集光ゾーンがターゲット光学系上に形成されてよく、それが眼75の網膜からの戻り光による反射現象を防止し/軽減させる。非集光ゾーン及び非放射ゾーンは、それらがターゲット光路上で、又はターゲット光学系の共役平面で移動する際に相互に当接又は重複してよい。
【0058】
前述のように、本発明は、例えば走査型撮像装置、例えばライン走査型撮像装置又はポイント走査型撮像装置におけるシステム光学系からの反射現象に起因するもののような画像アーチファクトの軽減に対処する。これは、ある光学コンポーネント(例えば、ターゲット光学系)上の照明及び集光光路間の重複を、照明及び/又は集光経路内のターゲット光学系の共役平面(例えば、ターゲット光学系が結像される平面)への光ブロック(例えば、放射ブロック、照明ブロック、又は集光ブロック)の設置を通じて最小化又は排除することによって実現され得る。上で説明したように、この技術は、走査型撮像装置の異なる走査構成にも適用されてよい。例示を目的として、スキャン-デスキャン走査型撮像装置の幾つかの具体例を以下に説明するが、この説明は、特に別段の明記がないかぎり、他の走査構成にも適用されてよいと理解されたい。上で説明したように、スキャン-デスキャン構成において、サンプルから戻る散乱光はデスキャンされ、その結果、集光経路の少なくとも一部において戻り光が静止する(例えば、走査しない)。照明ブロックが照明経路内に挿入されてよく、集光ブロックが集光経路の静止部分に挿入されてよく、これら2つの光学ブロックの画像(例えば、より暗い領域)が1つ又は複数のターゲット光学系(例えば、眼科レンズ又は走査レンズ)上に形成されてよく、これはターゲット光学系において照明及び集光経路間の重複を排除し、それゆえ、ターゲットレンズからの反射現象の集光を排除し得る。以下の例は、この反射現象ブロック効果を、アラインメント、焦点等のばらつきに対してより堅牢なものとするための各種の設計コンセプトを説明する。
【0059】
前述のように、走査型撮像装置は、撮像対象のサンプル、例えば眼の網膜の限定的な領域を一度に照明し、この限定的領域からの光を集光することによって、検出器(例えば、カメラ)に戻る不要な光を最小化し、それゆえ、サンプルのその他の照明領域から反射又は散乱してカメラに戻った光をブロックする。眼科撮像のためのライン走査型撮像装置において、眼の瞳孔付近の平面において照明及び集光を分離すること(瞳分割)により、眼の角膜からの反射現象が排除され、眼科レンズ(角膜に最も近い撮像装置レンズ)からの反射現象が低減し得るが、眼科レンズの反射現象は排除されない。
【0060】
ライン走査型撮像装置等の走査型撮像装置では、走査コンポーネントは瞳孔平面に結像されてよい。したがって、瞳孔における(又は、角膜等、それの付近での)照明と集光の分離は、走査コンポーネント(例えば、走査コンポーネントに結像される別々の照明及び集光窓を有する)においてか、又は角膜平面に近くてよいその直前の何れかで、照明光と集光を分離することによって、比較的容易に実現できる。すなわち、走査コンポーネントが実質的に瞳孔に結像される場合、走査コンポーネントの直前で照明及び集光窓を分離することにより、瞳分割をより角膜に近付けることになる。
【0061】
しかしながら、眼科レンズ(又は走査型撮像装置内のその他のターゲット光学系)における照明光と集光との間の分離は、より困難である。眼科レンズでの反射現象の典型的な軽減方法は、瞳孔平面における瞳分割と、非常に限定されたエタンデュ(例えば、非常に狭いスリットの要求)を有する(照明)スリットとの組合せに依存するが、これでも成功は限定的である。眼科レンズの反射現象を十分に排除できないことに加え、スリット照明の狭さに依存することは、きわめて狭いスリット(例えば、実践的な用途においては0.25度の幅)及び/又は小さい走査ステップにつながり、網膜上のスリット照明が重複して、網膜(例えば、撮像対象/サンプル)全体の走査パスを完了するために必要な走査の回数が増える。この、非常に狭いスリット幅の要求によって、網膜に到達する光の量も限定され、より長い取得時間又はノイズの多い画像につながる。
【0062】
眼の長さ(及び瞳孔の大きさ)は多様であるため、当業者により理解されているように、網膜の範囲に沿って、度数を単位とする線形距離(例えば、照明スリットの幅)を画定することが一般的であり、これは、焦点距離が実質的に瞳孔から網膜であると仮定して、網膜において明示された度数に渡る視野を得る幅のサイズを意味する点に留意されたい。
【0063】
本発明では、眼科レンズにおける反射現象を削減するためにスリット照明の狭さ(例えば、照明スリット/ラインビームの幅)を最小化する代わりに、眼科レンズ(又は走査型撮像装置内のその他のターゲット光学系コンポーネント)での照明及び集光経路間の重複により生じる反射現象に、瞳分割とは関係なく直接対処する。これは、照明及び/又は集光経路内の、眼科レンズの共役平面(例えば、ターゲット光学系が結像される像面)に光ブロックを設置し、それによって光ブロックがターゲット光学系に結像される(そこに合焦される)ようにすることを通じて実現されてよい。
【0064】
図7は、本発明を取り入れたスリット(又はライン)眼底走査型撮像装置の代替的なスキャン-デスキャン構成の例を示す。図7のうち、図2図6のそれらと同様の要素はすべて、同様の参照文字が付され、前述のとおりである。放射(又は照明)源101からの照明(例えば、スリット、又はライン、ビーム)は、スリットビーム(又はスリット照明)を整形するのに役立ち得る照明スリット105を通り、第一のビームブロック(例えば、照明ブロック)125を通過してレンズ111を通り、走査コンポーネント137に至り、走査コンポーネント13で走査されて経路115a上に走査ビームを生成する、照明ビーム経路(103a~115a)を辿る。走査ビームは、走査レンズ117及び眼科レンズ119を横切って眼75に入り、網膜73に入射してよい。網膜73から散乱した光は、眼科レンズ119及び走査レンズ117を通って戻り、回転走査ミラー137によってデスキャンされ、ピックオフミラー(pick-off mirror)163によって光路161へと偏向され、レンズ121を通過して第二のビームブロック(例えば、集光ブロック)143を過ぎてカメラ131、例えば検出器又は集光器に至る、集光ビーム経路(例えば、115b~103b~161)を辿る。この例において、走査コンポーネント137は、眼75の瞳孔平面に結像されてよく、ピックオフミラー163は走査コンポーネント137の付近(例えば、その直前)に配置されて、角膜により近い位置で照明及び集光経路を分割(例えば、瞳分割を提供)してよい。また、この例では、カメラ131はライン走査カメラであってよく、TDI(time delay integration)を利用して画像(例えば、フルサイズ画像)の垂直次元を生成してよい。前述のように、カメラ131により捕捉されるライン画像は、バッファに保存され、CPUによって処理され、後の処理のために保存され、及び/又はディスプレイ上で表示されてよい(例えば、図2参照)。この例では、眼科レンズ119はターゲット光学系であり、ターゲット光学系での反射現象アーチファクトを除去又は軽減させることになる。したがって、両方のビームブロック125及び143が眼科レンズ119に結像され得る。特に、ビームブロック125及び143は、眼科レンズ119の後面119aに結像されてよい。代替的に、ビームブロック125及び143は、眼科レンズ119の前面119bに結像されてもよく、或いは一方のビームブロック(例えば、照明ブロック125)は眼科レンズ119の後面(例えば、面119b)に結像されてよく、他方のビームブロック(例えば、集光ブロック143)は眼科レンズ119の反対側の面(例えば、前面119a)に結像されてよい。
【0065】
この走査構成(図7)では、サンプル(例えば、眼75)から戻る光はデスキャンされ、照明及び集光経路の一部は実質的に静止し得、例えば光源105から出力された照明ビームは、走査コンポーネント137によって走査される前に光路103a上で静止し得、集光光路103b及び161上の戻り光(例えば、集光ビーム)は、走査コンポーネント137によってデスキャンされた後、静止してよい。照明ブロック125は照明経路(例えば、103a~115a)のどこに挿入されてもよく、集光ブロック143は集光経路(例えば、115b~103b~161)のどこに挿入されてもよいが、実装しやすさのために、照明ブロック125は、走査コンポーネント137により走査される前の照明経路の静止部分(例えば、103a)に配置されてよく、集光ブロック143は、走査コンポーネント137によってデスキャンされた後の、集光経路の静止部分(103b及び/又は161)に配置されてよい。
【0066】
図8は、図7の眼科レンズ119の単純化された、正しい縮尺によらない拡大図を、結像された照明ブロック125’(例えば、照明ブロック125により形成された非照明ゾーン)、結像された集光ブロック143’(例えば、集光ブロック143により形成された非集光ゾーン)、走査コンポーネント137からの走査ビームがそこを通って眼75に到達し得る照明窓165、及び眼75から戻る光が集光器131に向かう途中でそこを通って走査コンポーネント137に到達し得る集光窓167を含めて提供する。すなわち、照明ブロック125は結像された照明ブロック125’を生成してよく、これは非照明ゾーンを画定し、走査コンポーネント137からの走査ビームは非照明ゾーンを通過し得ず、集光ブロック143は結像された集光ブロック143’を生成してよく、これは非集光ゾーンを画定し、眼75から戻る光は非集光ゾーンを通過し得ない。図のように、結像された照明ブロック125’は、任意選択により、ターゲット光学系(例えば、眼75に最も近いレンズ、すなわち眼科レンズ119)上で結像された集光ブロック143’と重複させられてよい(例えば、重複ゾーン169を画定する)。これによって、この光学系における照明経路115a(例えば、照明窓165)と集光経路115b(例えば、集光窓167)との間の重複はすべて排除され、それゆえ、この光学系からの反射現象が排除される。走査コンポーネント137がスイープ(例えば、回転)すると、2つの画像ブロック125’及び143’は眼科レンズ上で一緒に移動し(例えば、矢印171a/171bにより示される)、その重複169、及びそれゆえ反射現象のブロックが保持される。代替的に、照明ブロック125’及び集光ブロック143’は、相互に当接するが、重複しないように結像されてもよい。
【0067】
図9は、本発明を取り入れたスリット(又はライン)眼底走査型撮像装置の代替的なスキャン-デスキャン-リスキャン構成の例を示す。図9のうち、図2図8のそれらと同様の要素は同様の参照符号を有し、前述のとおりである。この構成のスキャン-デスキャン部分は図7のそれと同様であるが、この構成では、その集光器(例えば、カメラ189)と集光ブロック143との間にリスキャンメカニズムを取り入れたことによって図7のそれとは異なる。すなわち、光源101からのスリット照明は、照明スリット105を通り、第一のビームブロック(例えば、照明ブロック)125を通過し、レンズ111を通って、光路115a上に走査ビームを生成する走査コンポーネント(例えば、ガルボ)137に至る、照明ビーム経路(103a~115a)を辿る。照明経路115a上の走査ビームは、走査レンズ117及び眼科レンズ119を通過して眼75に入り、そこで走査されて、網膜73に入射する。網膜73から散乱した光は、眼科レンズ119及び走査レンズ117を通り、回転走査ミラー137によってデスキャンされ、ピックオフミラー163によって光路161へと偏向され、レンズ121を通り、第二のビームブロック(例えば、集光ブロック)143を過ぎて、図7のカメラ131に対応する位置に配置され得る集光スリット(又は開口)181を通る、集光ビーム経路(115b~103b~161~191)を辿って戻る。任意選択により、集光(スリット)開口181は、網膜73の共役平面にあってよい。集光開口181を通過する戻り光は、(合焦)レンズ183を通過し、走査コンポーネント137と同期され得る第二の走査コンポーネント(第二のガルボ)185によってリスキャンされる。第二のガルボ185からのリスキャンされた戻り光は、光学系187(これは1つ又は複数のレンズ、例えば第二の走査レンズ及び合焦レンズであってよい)を通過し、フルサイズカメラであってよいカメラ189を走査して、合成画像を画定する。
【0068】
照明光が走査されるが、集光された光はデスキャンされないスキャン-ノーデスキャン(no-descan)構成(例えば、図6Aに示される)では、不要な反射現象を軽減させるために、眼科レンズ(又はその他のターゲット光学系)に結像される照明ブロックを照明経路内に設置することは依然としてできるが、そのような集光ブロックを設置するための、現実的に対応する場所は集光経路内にあり得ない。ブロックを照明経路内にのみ設置することにより、反射現象は軽減するが、これは、眼科レンズにおける照明及び集光経路間の重複を確実になくすために、照明及び集光経路の両方にブロックを設置する場合ほど有効ではあり得ない。
【0069】
人の集団を通じた眼の様々な屈折異常もまた、複雑な問題であり得る。異なる屈折(近視又は遠視レベル)を有する患者の画像を有効に撮影するために、眼底撮像装置は典型的に、焦点調整を使って網膜の画像をカメラセンサ(例えば、集光器又は検出器)上で合焦させる。この焦点調整によって、照明及び/又は集光ブロックが設置される眼科レンズ(又はその他のターゲット光学系)の像面(共役平面)の位置が変わった場合、焦点調整と共にブロック位置も移動させて、眼科レンズ像面に維持されるようにすることが望ましいものであり得る。代替的に、反射現象の問題は、より強度の近視の患者の場合に悪化するため、ブロックは、比較的近視の患者(例えば、-10ディオプトリ)のための眼科レンズ像面に対応する位置に設置(例えば、固定)できる。
【0070】
照明/集光ブロックの位置を眼科レンズの像面に関して実質的に一定に保つための別の方法は、照明/集光ブロックと眼科レンズとの間の光学系を固定した状態に維持し、照明/集光ブロックと照明源/カメラとのそれぞれの間のカメラまでの焦点を補正することである。例えば、図9の実施形態において、集光ブロック143の位置は眼科レンズ119の共役平面に固定された状態に維持され、他方で、カメラ189と集光ブロック143との間の1つ又は複数のレンズ(例えば、レンズ183及び/又はレンズ187)は、網膜73の画像がカメラ189のフォトセンサ上に合焦されるように調整される。照明ビームの焦点を(例えば図9の光路103a上に)保持することは重要ではあり得ないことがわかったため、照明焦点は照明ブロック(例えば、125)と照明源(例えば、101/105)との間で調整でき、又は照明ブロック125はカメラの焦点を調整しながら静止した状態に維持されてもよい。
【0071】
照明ブロックと集光ブロックにとって最適な位置(例えば、ターゲット光学系の共役平面)があるものの、それらの位置においてはある程度の柔軟性が特定された。結像されたブロック領域(例えば、125’及び143’)間にデッドゾーン(例えば、図8の169)又は重複を設けることによって、眼科レンズ(又はその他のターゲット光学系)に対応する像面に関する照明ブロック及び集光ブロックの位置決めによる影響を受けにくくなり得る。この重複、又はデッドゾーンはまた、システムに光学収差がある場合に、眼科レンズの照明及び集光間の重複を排除するためにも望ましいものであり得る。ライン走査型システム(例えば、幅広ライン走査型撮像装置)は分割方向(例えば、スリットの長さ方向に垂直な方向)へのエタンデュが低いため、比較的少量の重複で照明ブロックと集光ブロックの設置においてかなりの柔軟性を得ることができる。
【0072】
さらに、強度近視の患者(例えば、-6ディオプトリ)の場合、角膜によって網膜平面が眼科レンズに近い平面に結像されることになり得ることもわかった。したがって、強度近視の患者の場合、眼科レンズにおける照明及び集光経路間の重複をブロックすることは、網膜での照明と集光との重複にも影響を与え得、それが光学的効率低下の可能性及び画像の明るさの低下にもつながる。したがって、照明ブロックと集光ブロックが取り外される、又はわずかに引き戻される、一部の近視患者(例えば、強度近視患者)のための撮像モードを有して、眼科レンズでの照明経路と集光経路とが幾分重複できるようにし、容認可能な画像の全体的明るさと品質を保持するために、画像のある程度の反射現象を容認することが望ましいものであり得る。
【0073】
例えば図7及び図9で示されるように、走査コンポーネント137の直前でミラー163によって照明及び集光経路を分離することにより、比較的柔軟な設計が提供されるが、それによって、ミラーの偏向角度が自由パラメータとなるため、追加のアラインメントステップが発生し得る。概念的に、ミラー163をウェッジ(例えば、図6B)に置き換えて、集光経路を一定の角度だけ偏向させて、この自由パラメータを排除することができる。ウェッジ型光学系又はプリズムをシステムに挿入する際の問題は、ウェッジの前面及び後面からの反射によって画像内にアーチファクトが生じ得ることである。しかしながら、ウェッジをその片側に追加することによって合焦光学系を改造すると、本明細書において「デュアルレンズ」と呼ぶものが得られ得る。デュアルレンズを組み合わせて1つの複合構造にすることを、本明細書では「複合デュアルレンズ」と呼ぶ。
【0074】
図10は、複合デュアルレンズ209の概念設計を示す。図のように、レンズ201をウェッジ203と組み合わせることが望ましい。これは、レンズ201をプリズム205と組み合わせて、概念的デュアルレンズ207を得ることによって実現されてよく、これは、例えば鋳型成形によって単独のコンポーネントとして構成されてよく、その結果、2つの重心C1及びC2間に一定の間隔を有する複合デュアルレンズ209が得られる。
【0075】
図11は、複合デュアルレンズ209を使用したスキャン-デスキャン-リスキャンライン走査型システムに、眼科レンズ119に結像されるビームブロック(125/143)を追加するための別の構造を示す。照明及び集光光路を分離するために複合デュアルレンズ209を使用することにより、アラインメントステップとコンポーネントの数の両方が減少し得る。図11のうち図2図10のそれらと同様の全ての要素は同様の参照文字を有し、前述のとりである。この例では、例えば、前述のように、走査コンポーネント137が瞳孔に結像されると仮定して、瞳分割開口211(又は分割領域)が、(例えば光源101と走査コンポーネント137との間の経路内で)走査コンポーネント137の直前に配置され、角膜の付近に結像される。追加的に、眼科レンズ119は近視用に調整されてもよく、照明ブロック125と集光ブロック143は、反射現象をブロックするために眼科レンズ119の共役平面にあってよい(例えば、近視用の設定に対応する)。また、放射スリット(開口)105及び集光スリット(又は開口)181は、網膜73に結像されて、さらに共通の(同じ)薄膜上に構成されてよく、それによって一方をもう一方に整列させる必要がなくなる(例えば、変位はデュアルレンズ209間の分離により特定される)。追加的に、ビームブロック125/143及びスリット105/181は、例えば共通の(同じ)支持壁W1によって一緒に移動されてよく、それによってアラインメント状態が保持される。支持壁W1はさらに、光源101側の照明光を第二の走査コンポーネント185及び集光器189側の集光から分離するための光バリアを提供してよい。
【0076】
この例では、照明ブロック125と集光ブロック143は実質的に、眼科(眼用)レンズ119の像面にあり、実質的に同一平面にあり、1つのフォイルから製造されてよく、それによってこれらの間の高いアラインメント精度が提供される。同様に、照明スリット105と集光スリット181もまた、同一平面にあり、それゆえ、1つのフォイルから製造されてよい。ビームブロック125/143及びスリット105/181間のアラインメント誤差もまた、スリット間又はビームブロック間の相対的アラインメントほど厳しくないかもしれないため、このアラインメントはこれら2つのコンポーネント間の取付精度に依存し得、それ以上のアラインメント調整は不要である。複合デュアルレンズ209の2つの重心C1及びC2間の間隔(図10参照)は、アラインメントにとって重要であり得、それゆえ、複合デュアルレンズ209を単独のコンポーネントとして鋳型成形することが望ましいものであり得る。
【0077】
上の説明の中で、ビームブロック(例えば、143/125)は眼科レンズに結像されており、それは、このレンズが眼科走査型撮像装置において反射現象を生じさせる重要なコンポーネントであり得るからである。しかしながら、光ブロッカ(例えば、追加の、又は同じビームブロック)を眼科レンズ以外のあるターゲット光学系の共役平面に設置する同様の方法は、システム内のその他のターゲット光学系からの反射現象をブロックするために使用されてもよい。
【0078】
図12は、例示的なコンピュータデバイス(又はCPU若しくはコンピュータシステム)83を示す。コンピュータデバイス83は、何れの適当な物理的形態をとってもよい。例えば、コンピュータシステム83は、埋め込み式コンピュータシステム、システム・オン・チップ(SOC)、シングル・ボードコンピュータシステム(SBC)(例えば、コンピュータ・オン・モジュール(COM)若しくはシステム・オン・モジュール(SOM))、デスクトップコンピュータシステム、ラップトップ若しくはノートブックコンピュータシステム、コンピュータシステムのメッシュ、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、サーバ、タブレットコンピュータシステム、又はこれらのうちの2つ以上の組合せであってよい。適当であれば、コンピュータデバイス(又はコンピュータシステム)83はクラウド内にあってもよく、これには1つ又は複数のネットワークの1つ又は複数のクラウドコンポーネントが含まれ得る。
【0079】
幾つかの実施形態において、コンピュータシステム83は1つ又は複数のプロセッサ102、メモリ104、ストレージ106、入力/出力(I/O)インタフェース108、通信インタフェース110、及びバス112を含む。コンピュータシステム83は、任意選択により、コンピュータモニタ又はスクリーン等のディスプレイ114(例えば、図2に示されるようなディスプレイ85)も含み得る。プロセッサ102は、コンピュータプログラムを構成するもの等の命令を実行するためのハードウェアを含む。例えば、プロセッサ102は、中央処理ユニット(CPU)又はGPUによる汎用計算(general-purpose computing on graphics processing unit)(GPGPU)であってよい。メモリ104は、プロセッサ102が処理中に実行するか、又は中間データを保持するための命令を保存するためのメインメモリを含み得る。例えば、メモリ104は、ダイナミックRAM(DRAM)又はスタティックRAM(SRAM)等のランダムアクセスメモリ(RAM)を含み得る。幾つかの実施形態において、ストレージ106は、データ又は命令のための長期又は大容量ストレージを含み得る。例えば、ストレージ106は、ハードディスクドライブ(HDD又はSSD)、フラッシュメモリ、ROM、EPROM、又はその他の種類の不揮発性メモリを含み得る。I/Oインタフェース108は、I/Oデバイスと通信するための1つ又は複数のインタフェースを含み得、これらにより、人(ユーザ)との通信が可能となり得る。通信インタフェース110は、他のシステム又はネットワークとの通信のためのネットワークインタフェースを提供してよい。例えば、通信インタフェース110は、ネットワーク上の他のコンピュータシステムと通信するためのネットワークインタフェースコントローラ(NIC)及び/又は無線NICを含み得る。通信インタフェース110は、ブルートゥース(Bluetooth)インタフェース又はその他の種類のパケットベースの通信をさらに含み得る。バス112は、上述のコンピューティングシステム83の構成要素間の通信リンクを提供してよい。
【0080】
本発明を幾つかの具体的な実施形態に関して説明したが、当業者にとっては明白であるように、多くのさらに別の代替案、改良、及び変更が上記の説明から明らかとなる。それゆえ、本明細書に記載の発明は、このような代替案、改良、応用、及び変更の全てを、付属の特許請求の範囲の主旨と範囲に含まれるとして包含するものとする。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8
図9
図10
図11
図12