(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】インサート交換装置及びインサート交換方法
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/155 20060101AFI20240222BHJP
B25J 15/04 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
B23Q3/155 B
B23Q3/155 G
B25J15/04 A
(21)【出願番号】P 2020056799
(22)【出願日】2020-03-26
【審査請求日】2023-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(73)【特許権者】
【識別番号】000162180
【氏名又は名称】共立精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136504
【氏名又は名称】山田 毅彦
(72)【発明者】
【氏名】村居 健司
(72)【発明者】
【氏名】大曲 康輔
(72)【発明者】
【氏名】山田 悠史
(72)【発明者】
【氏名】岡田 全博
(72)【発明者】
【氏名】早川 拓自
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-080637(JP,U)
【文献】特開昭61-146444(JP,A)
【文献】特開2000-079522(JP,A)
【文献】特開平02-065975(JP,A)
【文献】特開昭56-062739(JP,A)
【文献】特開2009-154238(JP,A)
【文献】特開2013-180386(JP,A)
【文献】特開2016-175149(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0297013(US,A1)
【文献】特開昭53-134288(JP,A)
【文献】国際公開第2014/118977(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/155
B25J 1/00 - 21/02
B23P 19/06
B65D 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インサートをねじでホルダの取付位置に取付けて使用される転削工具の前記ねじを着脱するためのドライバと、
前記ねじで取付けられる前及び前記ねじが取外された後の前記インサートを保持するインサート保持部と、
前記ドライバを前記ホルダに対して相対移動させて前記ねじの着脱を行い、かつ前記インサート保持部を前記ホルダに対して相対移動させることによって、少なくとも前記ねじで取付けられる前の使用前における前記インサートを初期位置から前記取付位置まで移動させる一方、前記ねじが取外された後の使用済の前記インサートを前記取付位置から回収位置まで移動させる駆動装置と、
を有
し、
前記インサート保持部は、前記インサートに前記ねじを挿入するための貫通孔に挿入するための突起を有し、
前記駆動装置は、前記ねじが取外された後の前記インサートを前記取付位置から移動させる場合には、前記ねじが取外された後の前記取付位置にある前記インサートの前記貫通孔に前記突起が挿入された状態で、前記突起の長さ方向に垂直な方向に前記インサート保持部をスライドさせてから前記インサート保持部を前記突起の長さ方向に移動させるように構成されるインサート交換装置。
【請求項2】
前記ドライバで取外された前記ねじを回収し、所定の向きで供給するねじ供給機を更に有し、
前記ねじ供給機に、
前記所定の向きで供給された前記ねじを固定するクランプと、
前記クランプで固定された前記ねじの頭に形成される凹みに前記ドライバの先端が挿入された場合には、前記クランプを移動させて前記ねじを開放させる一方、前記所定の向きで供給された後続の前記ねじが前記クランプで固定されるように前記クランプを移動させるクランプ駆動機構と、
を設けた請求項
1記載のインサート交換装置。
【請求項3】
前記ホルダを保持するホルダ保持部を更に有し、
前記ホルダ保持部に、磁力を発生させることによって前記インサートを前記ホルダに吸引させる電気回路を設けた請求項1
又は2記載のインサート交換装置。
【請求項4】
前記ホルダ保持部に、
前記駆動装置の動作と連動して前記ホルダを所定の角度だけ回転させる回転機構を設けた請求項
3記載のインサート交換装置。
【請求項5】
インサートをねじでホルダの取付位置に取付けて使用される転削工具のインサート交換方法であって、
駆動装置でドライバを前記ホルダに対して相対移動させて自動的にねじの着脱を行うステップと、
前記ねじで取付けられる前及び前記ねじが取外された後の前記インサートを保持するインサート保持部を前記駆動装置又は他の駆動装置で自動的に前記ホルダに対して相対移動させることによって、少なくとも前記ねじで取付けられる前の使用前における前記インサートを初期位置から前記取付位置まで移動させる一方、前記ねじが取外された後の使用済の前記インサートを前記取付位置から回収位置まで移動させるステップと、
を有
し、
前記インサート保持部は、前記インサートに前記ねじを挿入するための貫通孔に挿入するための突起を有し、
前記駆動装置は、前記ねじが取外された後の前記インサートを前記取付位置から移動させる場合には、前記ねじが取外された後の前記取付位置にある前記インサートの前記貫通孔に前記突起が挿入された状態で、前記突起の長さ方向に垂直な方向に前記インサート保持部をスライドさせてから前記インサート保持部を前記突起の長さ方向に移動させるインサート交換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、インサート交換装置及びインサート交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
切削工具には、切れ刃を構成するインサートをホルダに着脱して使用する刃先交換式の工具がある(例えば特許文献1参照)。インサートはチップとも呼ばれ、インサートをホルダに着脱して使用される切削工具は、スローアウェイ式又はチップ式の切削工具と呼ばれる。
【0003】
スローアウェイ式の切削工具としては、フライス加工や中ぐり加工に使用されるエンドミルやフライスカッタ等の転削工具の他、旋盤用の旋削工具(バイト)が挙げられる。旋盤に使用されるスローアウェイ式の旋削工具は1枚の切れ刃を旋盤に固定して旋削を行うための単純な構造を有し、チップの自動交換機能を備えたものも知られている(例えば特許文献2及び特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-154238号公報
【文献】特開昭61-146444号公報
【文献】特開昭53-134288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、エンドミルやフライスカッタ等の転削工具については、工具自体を工作機械に自動で着脱する自動工具交換装置(ATC:Automatic Tool Changer)が実用化されているに過ぎず、ホルダに取付けられるインサートを交換する装置は実用化されていない。これは、インサートの着脱は緻密な作業であり、従来のロボットハンドを使用して行うことが困難であることに起因している。
【0006】
このため、ホルダへのインサートの着脱は従来作業者が手作業で行っている。具体的には、ホルダにインサートを固定するためのねじを緩めて使用済のインサートを取外す作業、インサート及びインサートを取付けるためのホルダの座面の清掃、インサートの形状と向きを確認してホルダにねじで固定する作業が必要となる。インサートはホルダの座面に固定されるため、干渉しないようにインサートを指でつまむことはできず、インサートを指先で押さえながらねじの締付及び清掃を行うことが必要である。このため、インサートの交換は手先の器用さを必要とし、作業性が悪い。
【0007】
特に、チタン等の難削材を転削加工する場合には、切れ刃に要求される機械的強度が高いことから、多数のインサートを有する転削工具が使用される場合が多い。しかも、難削材を加工する場合には、アルミニウム等の加工が容易な他の金属を加工する場合と比較して、切れ刃の寿命が短い。その結果、インサートの交換頻度が多くなり、作業者の労力の増加要因となっている。
【0008】
そこで、本発明は、スローアウェイ式転削工具のインサートを容易に交換できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態に係るインサート交換装置は、インサートをねじでホルダの取付位置に取付けて使用される転削工具の前記ねじを着脱するためのドライバと、前記ねじで取付けられる前及び前記ねじが取外された後の前記インサートを保持するインサート保持部と、前記ドライバを前記ホルダに対して相対移動させて前記ねじの着脱を行い、かつ前記インサート保持部を前記ホルダに対して相対移動させることによって、少なくとも前記ねじで取付けられる前の使用前における前記インサートを初期位置から前記取付位置まで移動させる一方、前記ねじが取外された後の使用済の前記インサートを前記取付位置から回収位置まで移動させる駆動装置とを有するものである。
このインサート交換装置において、前記インサート保持部は、前記インサートに前記ねじを挿入するための貫通孔に挿入するための突起を有し、前記駆動装置は、前記ねじが取外された後の前記インサートを前記取付位置から移動させる場合には、前記ねじが取外された後の前記取付位置にある前記インサートの前記貫通孔に前記突起が挿入された状態で、前記突起の長さ方向に垂直な方向に前記インサート保持部をスライドさせてから前記インサート保持部を前記突起の長さ方向に移動させるように構成される。
【0010】
また、本発明の実施形態に係るインサート交換方法は、インサートをねじでホルダの取付位置に取付けて使用される転削工具のインサート交換方法であって、駆動装置でドライバを前記ホルダに対して相対移動させて自動的にねじの着脱を行うステップと、前記ねじで取付けられる前及び前記ねじが取外された後の前記インサートを保持するインサート保持部を前記駆動装置又は他の駆動装置で自動的に前記ホルダに対して相対移動させることによって、少なくとも前記ねじで取付けられる前の使用前における前記インサートを初期位置から前記取付位置まで移動させる一方、前記ねじが取外された後の使用済の前記インサートを前記取付位置から回収位置まで移動させるステップとを有するものである。
このインサート交換方法において、前記インサート保持部は、前記インサートに前記ねじを挿入するための貫通孔に挿入するための突起を有し、前記駆動装置は、前記ねじが取外された後の前記インサートを前記取付位置から移動させる場合には、前記ねじが取外された後の前記取付位置にある前記インサートの前記貫通孔に前記突起が挿入された状態で、前記突起の長さ方向に垂直な方向に前記インサート保持部をスライドさせてから前記インサート保持部を前記突起の長さ方向に移動させる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るインサート交換装置の全体構成図。
【
図2】スローアウェイ式転削工具の構造例を示す図。
【
図3】スローアウェイ式転削工具の構造例を示す図。
【
図4】
図1に示す駆動装置を単一のロボットアームを有するロボットで構成した例を示す図。
【
図5】
図4に示すロボットアームの先端に取付けられるヘッドの構造例を示す斜視図。
【
図6】
図1に示すホルダ保持部12をホルダ設置台30で構成した例と制御系統の一部の例を示す図。
【
図7】
図5に示すドライバの先端を転削工具のねじの頭に挿入した状態を示すヘッドの正面図。
【
図8】スローアウェイ式転削工具のホルダへのインサートの固定用に使用されるねじの頭の形状の規格であるトルクス(登録商標)の形状を示す図。
【
図9】スローアウェイ式転削工具のホルダへのインサートの固定用に使用されるねじの頭の形状の規格であるトルクスプラス(登録商標)の形状を示す図。
【
図10】
図7に示すドライバの先端における形状例を示す図。
【
図11】
図7に示すドライバの先端における別の形状例を示す拡大模式図。
【
図12】
図11に示す形状を有するドライバをねじの頭に挿入した状態を示す図。
【
図13】
図1に示すねじ供給機の概略構成例を示す正面図。
【
図15】
図5に示すインサート保持部でホルダへのインサートの着脱を行っている状態を示すヘッドの側面図。
【
図16】
図1に示すインサート台の構成例を示す上面図。
【
図17】
図16に示す使用前インサート用トレイの形状例を示す斜視図。
【
図18】
図1に示すインサート交換装置による転削工具のインサート交換方法の流れの一例を示すフローチャート。
【
図19】本発明の第2の実施形態に係るインサート交換装置に備えられるインサート保持部の構成を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態に係るインサート交換装置及びインサート交換方法について添付図面を参照して説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
(インサート交換装置)
図1は本発明の第1の実施形態に係るインサート交換装置の全体構成図である。
【0014】
インサート交換装置1は、フライス盤やマシニングセンタ等の工作機械2で使用されるスローアウェイ式転削工具のインサートを交換する装置である。従って、インサート交換装置1は、工作機械2の近傍に配置することができる。或いは、インサート交換装置1を工作機械2の一部としても良い。転削工具は、加工対象となる加工物を固定して工具を回転させて切削を行う転削用の工具であり、フライスカッタ、エンドミル及びドリル等が代表的である。
【0015】
図2及び
図3はスローアウェイ式転削工具3の構造例を示す図である。
【0016】
図2は、スローアウェイ式転削工具3を底刃側から見た図である。
図2に例示されるようにスローアウェイ式の転削工具3は、インサート4をねじ5でホルダ6の取付位置に取付けた構造を有する。このため、インサート4には、ねじ5を挿入するための貫通孔が設けられ、インサート4を接触させるためのホルダ6の座面6Aには、ねじ5に形成される雄ねじを締付けるための雌ねじが形成される。換言すれば、ホルダ6の座面6Aと雌ねじの位置によって、インサート4の取付位置が定まる。
【0017】
図2は、転削工具3が4枚刃である場合の例を示している。このため、90度の角度で周方向に等間隔に4枚のインサート4が取付けられている。一方、
図3は、スローアウェイ式転削工具3の側面図である。エンドミル等のスローアウェイ式転削工具3には、周方向のみならず、工具軸方向の異なる位置に複数のインサート4が取付けられる場合もある。工具軸方向の異なる位置に複数のインサート4が取付けられる場合には、
図3に例示されるように複数のインサート4によってねじれ刃が形成されるように周方向の位置を徐々に変化させながら螺旋状に複数のインサート4が配置される場合が多い。
【0018】
従って、インサート4をホルダ6に取付けるためには、インサート4に形成された貫通孔の中心軸と、ホルダ6に形成された雌ねじの中心軸が概ね同一直線上となるようにインサート4を位置決めしてホルダ6の座面6Aに接触させ、ねじ5をインサート4の貫通孔に挿入してホルダ6に形成された雌ねじに締め付けることが必要である。また、インサート4の取付に先立って、ホルダ6の座面6Aを清掃しておくことが適切である。逆に、インサート4をホルダ6から取外すためには、インサート4をホルダ6に固定しているねじ5を緩めて取外した後、インサート4をホルダ6の座面6Aから引離してホルダ6と干渉しないように退避させることが必要である。
【0019】
このため、インサート交換装置1は、
図1に示すように、転削工具3のねじ5を自動的に着脱するためのドライバ7Aを含むドライバユニット7、ねじ5で取付けられる前及びねじ5が取外された後のインサート4を保持するインサート保持部8、エアブローを行ってホルダ6の座面6Aを清掃するためのエアブローノズル9、ホルダ6への取付対象となるインサート4及びホルダ6から取外したインサート4を載置するインサート台10、ねじ5の供給と回収を行うねじ供給機(フィーダ)11、ホルダ6を所定の位置及び向きで保持することによってホルダ6の位置決めを行うホルダ保持部12並びに駆動装置13で構成することができる。
【0020】
駆動装置13は、ねじ5の着脱、インサート4の移動及びエアブローを行うために、ドライバユニット7のドライバ7A、インサート保持部8及びエアブローノズル9と、ホルダ6との間における相対位置をそれぞれ変化させる装置である。駆動装置13は、ドライバ7A、インサート保持部8及びエアブローノズル9を独立して別々に相対移動させる装置としても良いし、全部又は一部に共通の装置としても良い。また、駆動装置13でホルダ保持部12を移動させることによって、ドライバ7A、インサート保持部8及びエアブローノズル9に対してホルダ6側を移動させるようにしても良い。インサート交換装置1が工作機械2の一部である場合には、インサート交換装置1でインサート4を交換した後の転削工具3を駆動装置13で移動させて工作機械2のATC等に自動的に取付けるようにしても良い。
【0021】
駆動装置13は、工作機械2の主軸を移動させる駆動装置と同様な走行機構や回転機構を備えた装置としても良いし、片持ち構造を有するロボットアームを用いても良い。例えば、典型的な工作機械2に備えられるATCの一部として設けられる転削工具3の搬送装置を駆動装置13の一部として使用し、転削工具3の移動経路に沿ってドライバユニット7、インサート保持部8及びエアブローノズル9を配置するようにしても良い。
【0022】
或いは、駆動装置13として3台のロボットアームを設け、ドライバ7A、インサート保持部8及びエアブローノズル9を別々のロボットアームの先端に取付けても良い。この場合、3台のロボットアームを独立して適切なタイミングで制御することによって、ねじ5の着脱、インサート4の移動及びエアブローを短時間で行うことができる。逆に、駆動装置13を、単一のロボットアームを有するロボットで構成し、ドライバ7A、インサート保持部8及びエアブローノズル9をロボットアームに取付ければ、駆動装置13の構成を単純化し、製造コストを低減させることができる。
【0023】
図4は
図1に示す駆動装置13を単一のロボットアーム20を有するロボット21で構成した例を示す図である。
【0024】
図4に例示されるように、駆動装置13を単一のロボットアーム20を有する多関節ロボット等のロボット21で構成する場合には、ドライバ7Aを含むドライバユニット7、インサート保持部8及びエアブローノズル9を取付けたヘッド22をロボットアーム20の先端に取付けることができる。以降では、主に駆動装置13が単一のロボットアーム20を有するロボット21で構成される場合を例に説明する。
【0025】
図5は
図4に示すロボットアーム20の先端に取付けられるヘッド22の構造例を示す斜視図である。
【0026】
ヘッド22には、ドライバユニット7、インサート保持部8及びエアブローノズル9を互いに異なる向きで取付けることができる。そうすると、ロボットアーム20の回転移動によってヘッド22の向きを変え、ドライバ7A、インサート保持部8及びエアブローノズル9のいずれかをホルダ保持部12で保持されたホルダ6の所定の位置に向けて使用することが可能となる。図示された例では、中心軸が互いに直交する3軸方向となるように円柱状のドライバ7A、円柱状のインサート保持部8及び円筒状のエアブローノズル9がそれぞれヘッド22に固定されている。
【0027】
ホルダ保持部12の構造は、転削工具3のホルダ6を着脱可能に保持することが可能であれば所望の構造とすることができる。駆動装置13がロボットアーム20を有するロボット21であれば、ホルダ6を着脱可能に固定するホルダ設置台としてホルダ保持部12を設けることができる。また、工作機械2のATCを駆動装置13の一部とする場合であれば、ATC自体をホルダ保持部12として使用することができる。
【0028】
図6は、
図1に示すホルダ保持部12をホルダ設置台30で構成した例と制御系統の一部の例を示す図である。
【0029】
ホルダ保持部12で保持されたホルダ6からはインサート4を着脱するために、ドライバユニット7でねじ5が着脱される。このため、ねじ5が締付けられる前のインサート4と、ねじ5を取外した後のインサート4が、ホルダ6から落下しないようにすることが必要である。
【0030】
そこで、インサート4を取付けるためのホルダ6の座面6Aが、鉛直方向に概ね垂直となるようにホルダ6を配置することができる。そうすると、インサート4の自重を利用してインサート4がホルダ6から落下することを防止することができる。そのためには、
図6に例示されるようにホルダ保持部12でホルダ6の回転軸を水平方向に向けてホルダ6を保持すれば良い。
【0031】
また、転削工具3が1枚刃でない限り、
図2及び
図3に例示されるようにホルダ6には、刃数と同じ数の座面6Aが異なる法線方向で工具軸方向の同じ位置に形成される。このため、ホルダ6の各座面6Aの法線方向を鉛直方向とするためには、ホルダ6の回転軸を中心にホルダ6を断続的に一定の角度ずつ回転させることが必要となる。ホルダ6を回転させる角度は、転削工具3の刃数に対応する角度となる。例えば、
図2に例示されるように、転削工具3が4枚刃であれば、4つの座面6Aの法線方向を順番に鉛直方向とするために、ホルダ6を90度ずつ断続的に回転させることが必要となる。
【0032】
そこで、ホルダ設置台30には、ホルダ6を保持しながら回転させる回転保持機構31を設けることができる。回転保持機構31は、チャックやベアリング等の機械要素で構成することができる。回転保持機構31は、例えば、モータ32の出力軸と連結され、モータ32の動力で回転させることができる。モータ32には、制御回路33が接続され、モータ32の回転量と回転タイミングを制御回路33で制御することができる。
【0033】
モータ32の制御回路33は、ロボットアーム20等の駆動装置13の制御装置13Aと接続され、駆動装置13の動作と連動してモータ32の回転量と回転タイミングを制御できるように構成されている。また、駆動装置13には、駆動装置13のみならず、回転保持機構31及びモータ32を制御するために必要な情報を入力するための入力装置13Bをコンソールの一部として設けることができる。このため、駆動装置13の動作と連動してホルダ6を所定の角度だけ回転させることができる。
【0034】
具体的には、駆動装置13にコンソールの一部として設けられる入力装置13Bから制御装置13Aに転削工具3の刃数を入力すると、制御装置13Aが転削工具3の刃数に対応するホルダ6の回転角度と回転回数を計算し、モータ32の制御回路33に出力することができる。これにより、制御回路33の制御下におけるモータ32の駆動によって、転削工具3の刃数に応じた角度と回数で回転保持機構31とともにホルダ6を回転させることができる。
【0035】
また、ホルダ6の回転が完了し、インサート4の交換対象となるホルダ6の座面6Aの法線方向が鉛直方向となっている期間に、制御装置13Aにより制御下においてロボットアーム20等の駆動装置13を駆動させてインサート4の交換を行うことができる。逆に、駆動装置13の動作によってインサート4の交換が完了した後に、制御回路33の制御下におけるモータ32の駆動によって、ホルダ6を所定の角度だけ回転させることができる。
【0036】
これにより、複数のインサート4が異なる角度でホルダ6に取付けられる場合であっても、ねじ5の着脱用のドライバ7Aを同じ向きでホルダ6にアプローチさせることが可能となる。すなわち、ドライバ7Aの動作と、回転保持機構31及びホルダ6の断続的な回転を同期させることができる。
【0037】
ホルダ設置台30には、更にホルダ6を磁化するための電磁石34を設けることができる。すなわち、コイル35と、コイル35に電流を供給する電源36を含む電気回路37をホルダ設置台30に設けることができる。電磁石34でホルダ6を磁化することによって磁力を発生させると、インサート4をホルダ6に吸引させることができる。このため、ホルダ6及びインサート4の双方が、電磁石34に吸引される強磁性体であれば、インサート4の自重のみならず、磁力を利用してより確実にインサート4がホルダ6から落下することを防止することができる。
【0038】
典型的なスローアウェイ式転削工具3のホルダ6は、鉄系の合金で構成される。一方、典型的なインサート4の素材となる超硬に含まれるコバルトは強磁性体である。従って、コバルト等の強磁性体を含むインサート4を使用すれば、磁力でインサート4をホルダ6に固定することができる。
【0039】
磁力でインサート4をホルダ6に固定すると、ドライバ7Aでねじ5を回しても、インサート4が連れ回りしない。このため、ドライバ7Aでねじ5のみを回転させてインサート4の落下を防止しつつ、確実にねじ5を着脱することができる。
【0040】
尚、十分な磁力を発生させてインサート4をホルダ6に吸着させる場合には、インサート4を取付けるための座面6Aが鉛直方向に垂直でなくても、インサート4がホルダ6から落下することを防止することができる。このため、ホルダ6の回転軸が水平方向とならないように、ホルダ6を配置したり、ホルダ6の回転機能を省略したりしても良い。
【0041】
図7は、
図5に示すドライバ7Aの先端を転削工具3のねじ5の頭に挿入した状態を示すヘッド22の正面図である。
【0042】
図6に示すようにホルダ設置台30にセットされたホルダ6にねじ5を自動的に着脱するためには、ドライバ7Aの中心軸方向への往復移動と、ドライバ7Aの中心軸を中心とする回転を自動的に行うことが必要となる。ドライバ7Aの中心軸方向への往復移動を含む移動は、ロボットアーム20で行うことができる。一方、ドライバ7Aの回転は、適切なトルクで同軸度を維持しながら行うことが適切である。
【0043】
このため、ねじ5を保持して回すための磁化されたドライバ7Aと、ドライバ7Aを適切なトルクで回転させるモータ等の動力源を備えたドライバ駆動装置7Bでドライバユニット7を構成することができる。従って、ドライバ駆動装置7Bもドライバ7Aを回転させる駆動装置13の一部であると言うこともできる。もちろん、ドライバ7Aを長さ方向に直線的に往復移動させる直線移動装置を駆動装置13の構成要素としてロボットアーム20の先端に取付けるようにしても良い。
【0044】
図8は、スローアウェイ式転削工具3のホルダ6へのインサート4の固定用に使用されるねじ5の頭の形状の規格であるトルクス(登録商標)の形状を示す図であり、
図9は、スローアウェイ式転削工具3のホルダ6へのインサート4の固定用に使用されるねじ5の頭の形状の規格であるトルクスプラス(登録商標)の形状を示す図である。
【0045】
インサート4の固定用に使用される殆どのねじ5の頭の形状の規格は、トルクス(登録商標)又はトルクスプラス(登録商標)である。トルクス(登録商標)及びトルクスプラス(登録商標)に対応するねじ5の頭に形成される穴の形状は、それぞれ
図8及び
図9に示すように、より高いトルクで締付けることができるように星形のような特殊な形状となっている。
【0046】
図10は、
図7に示すドライバ7Aの先端における形状例を示す図である。
【0047】
トルクス(登録商標)又はトルクスプラス(登録商標)の規格では、六角穴付きボルトの穴等と比較して専用ドライバとねじ5の穴との間における隙間が狭い。一方、トルクス(登録商標)又はトルクスプラス(登録商標)用の規格化された専用ドライバを片持ち構造を有するロボットアーム20で保持すると、専用ドライバの先端が振れて位置決め精度が不十分となり、ロボットアーム20を駆動させても専用ドライバの先端をねじ5の頭に挿入できない恐れがある。
【0048】
そこで、ロボットアーム20でドライバユニット7の位置決めを行う場合には、
図10に例示されるように、トルクス(登録商標)又はトルクスプラス(登録商標)用に規格化された専用ドライバよりも先端側を先細りさせたドライバ7Aを使用することができる。すなわち、通常のトルクス(登録商標)又はトルクスプラス(登録商標)のドライバではなく、先端を先細にしたドライバ7Aをロボットアーム20の先端に取付けることができる。
【0049】
図11は、
図7に示すドライバ7Aの先端における別の形状例を示す拡大模式図であり、
図12は
図11に示す形状を有するドライバ7Aをねじ5の頭に挿入した状態を示す図である。
【0050】
図10に例示されるようにドライバ7Aの先端を規格化されたテーパよりも大きいテーパにするか否かを問わず、
図11に示すように、ドライバ7Aの先端側における端面をドライバ7Aの長さ方向に垂直な平面とせずに、ドライバ7Aの長さ方向に対して傾斜する曲面又は凸状となるように連結された複数の平面にすることもできる。すなわち、
図10に例示されるようにドライバ7Aの先端を先細りさせる代わりに、或いは、
図10に例示されるように先細りさせたドライバ7Aの端面に、ドライバ7Aの先端側に頂点を有する多角錐形状又は円錐形状を有する部分を設けることができる。
【0051】
そうすると、
図11に示すようにドライバ7Aの中心軸が、ねじ5の中心軸からずれている場合であっても、ドライバ7Aの端面に形成されたテーパ部がねじ5の頭の穴の縁に接触するため、ドライバ7Aを回転させることによってねじ5の頭の穴にドライバ7Aを入れ易くすることができる。換言すれば、ドライバ7Aの先端にテーパ部分を形成して心出し機能を設けることができる。
【0052】
これにより、工作機械2と比べて剛性及び位置決め精度が低いロボットアーム20でドライバ7Aの位置決めを行ったとしても、ドライバ7Aの位置決め誤差を吸収してドライバ7Aの先端をより確実にねじ5の頭の穴に挿入することが可能となる。
【0053】
ねじ5をホルダ6に着脱するための駆動装置13の動作は、ドライバ7Aの先端がねじ5の頭に挿入される位置までドライバ7Aを転削工具3のホルダ6及びホルダ設置台30に対して相対移動させた後、ドライバ7Aに回転軸方向への送りを与えながらドライバ7Aを正転又は逆転させる動作となる。
【0054】
具体的には、ホルダ設置台30に固定され、かつインサート4が座面6Aにセットされた転削工具3のホルダ6にねじ5を締付ける場合には、ねじ供給機11の供給位置からねじ5をすくい上げて移動させ、インサート4の貫通孔及びホルダ6の座面6Aに形成された雌ねじの中心軸と、ねじ5及びドライバ7Aの回転軸が同一直線上となるように、ロボットアーム20等の駆動装置13でドライバ7A及びねじ5をホルダ6及びホルダ設置台30に対して相対移動させた後、ドライバ7A及びねじ5を正回転させながら所定の距離だけ前進させることが必要となる。
【0055】
逆に、ホルダ設置台30に固定された転削工具3のホルダ6の座面6Aに形成された雌ねじに締付けられているねじ5を緩めて取外す場合には、ドライバ7Aの回転軸がねじ5の回転軸と同一直線上となるように、ロボットアーム20等の駆動装置13でドライバ7Aをホルダ6及びホルダ設置台30に対して相対移動させた後、ドライバ7Aを前進させて先端をねじ5の頭に挿入し、ねじ5を吸引しながらドライバ7Aの逆回転と後退を同時に行う複雑な動作が必要となる。ドライバ7Aの逆回転と後退によってねじ5をホルダ6から取外した後は、ロボットアーム20等の駆動装置13でドライバ7A及びねじ5をホルダ6及びホルダ設置台30に対して相対移動させ、ねじ5をねじ供給機11の回収位置まで移動させてねじ5をドライバ7Aから引離すことが必要となる。
【0056】
また、ドライバ7Aの先端をホルダ6に締付けられたねじ5の頭に挿入するためには、力を加えてドライバ7Aの先端をねじ5の頭に押付けながらドライバ7Aを回転させ、ドライバ7Aの先端の形状がねじ5の頭に形成される穴の形状にフィットするドライバ7Aの回転位相においてドライバ7Aをねじ5の頭に形成される穴の深さ分だけ前進させることが必要となる。
【0057】
このような回転軸方向への力を付与しながらのドライバ7Aの前進と、ねじ5を吸引して後退させた後、ねじ5をドライバ7Aから引離す動作を行うために、ドライバユニット7には、
図7に例示されるように、スプリング7C及び電磁石7Dを設けることができる。すなわち、ドライバ7Aに、ドライバ7Aの回転軸方向に弾性力を与えるスプリング7Cを連結することができる。また、ドライバ7Aに、磁力が伝達されるように電磁石7Dを接続し、電磁石7Dを構成する電源のオンとオフの切換によって、ドライバ7Aの磁化のオンとオフを切換えられるようにすることができる。
【0058】
より具体的には、ドライバ7Aの先端をホルダ6に締付けられたねじ5の頭に挿入する際には、ロボットアーム20等の駆動装置13でドライバ7Aの先端を移動させ、ドライバ7Aの先端をねじ5の頭に押付けてスプリング7Cを圧縮させることができる。続いて、ドライバ駆動装置7Bを駆動させ、スプリング7Cを圧縮させた状態でドライバ7Aを低速で逆回転させることができる。すなわち、スプリング7Cの反発力でテンションをかけながらドライバ7Aを逆回転させることができる。
【0059】
そうすると、ドライバ7Aの先端における形状と、ねじ5の頭に形成された穴の形状が一致したところで、スプリング7Cの反発力により、ドライバ7Aが前進する。これにより、ねじ5の頭に形成される凹みにドライバ7Aの先端を挿入させることができる。ドライバ7Aにはドライバ駆動装置7Bの駆動によって逆回転方向のトルクが付与されるため。ドライバ7Aの先端がねじ5の頭に差し込まれると、ドライバ7Aは引続き逆回転する。そうすると、スプリング7Cが縮み、ねじ5が緩んでインサート4から徐々に突出する。すなわち、ねじ5を緩めてインサート4及びホルダ6から取外すことができる。
【0060】
ドライバ7Aの先端は、電磁石7Dによって磁化することができる。このため、緩んだねじ5は、磁力でドライバ7Aに吸引される。従って、ロボットアーム20等の駆動装置13でドライバ7Aを後退させると、ねじ5がドライバ7Aに付着し、インサート4及びホルダ6からねじ5を引き抜くことができる。
【0061】
インサート4及びホルダ6から引き抜いた後のねじ5は、ドライバ7Aの先端に付着ささたまま、ねじ供給機11に設けられたねじ5の回収位置まで移動させることができる。すなわち、磁力でねじ5をドライバ7Aの先端に吸引することによって、ねじ5を落下させずにインサート4内からねじ供給機11に設けられたねじ5の回収位置まで駆動装置13で移動させることができる。
【0062】
図13は、
図1に示すねじ供給機11の概略構成例を示す正面図であり、
図14は
図13に示すねじ供給機11の上面図である。
【0063】
ねじ供給機11は、ドライバ7Aで取外されたねじ5を回収する一方、所定の向きでねじ5を供給する装置である。このため、ねじ供給機11には、ドライバ7Aで取外されたねじ5を回収するための回収トレイ40と、所定の向きでねじ5を移動させるレール41を設けることができる。
【0064】
ドライバ7Aで取外されたねじ5を回収トレイ40に載せる場合には、電磁石7Dをオフに切換えて、ドライバ7Aの先端から回収トレイ40にねじ5を落下させればよい。一方、レール41に沿って供給されるねじ5をドライバ7Aの先端に取付ける場合には、レール41の末端に移動した先頭のねじ5の頭の穴にドライバ7Aの先端を挿入することが必要となる。
【0065】
インサート4及びホルダ6に取付けられたねじ5の頭にドライバ7Aの先端を差し込む場合と同様に、スプリング7Cでテンションをかけながらドライバ7Aを正回転又は逆回転させることによって、レール41の先頭におけるねじ5の頭の穴にドライバ7Aの先端を挿入するためには、ドライバ7Aを回転させてもレール41の先頭におけるねじ5が回転しないように一時的にねじ5を固定することが適切である。
【0066】
そこで、ねじ供給機11には、所定の向きで供給された先頭のねじ5を一時的に固定するクランプ42と、クランプ42によるねじ5の固定と開放を切換えるクランプ駆動機構43を設けることができる。クランプ42は、例えば、ねじ5の頭を挟み込んで固定する一対の剛体からなる押当部材42A、42Bで構成することができる。
【0067】
クランプ駆動機構43は、クランプ42で固定されたねじ5の頭に形成される凹みにドライバ7Aの先端が挿入された場合には、クランプ42を移動させてねじ5を開放させる一方、レール41に沿って新たに所定の向きで供給された後続のねじ5がクランプ42で固定されるようにクランプ42を移動させる装置である。このような、クランプ駆動機構43は、押当部材42A、42Bの少なくとも一方を、ねじ5の頭に向かって接近する方向と、ねじ5の頭から引離される方向に平行移動又は回転移動させる所望の機械要素、例えば、モータ等の動力源によって動作するボールねじ、ラックアンドピニオン、ピストンにロッド連結したシリンダ機構或いは回転シャフト等で構成することができる。
【0068】
また、クランプ駆動機構43には、先頭のねじ5がクランプ42で固定可能な位置まで到達したか否かと、先頭のねじ5の頭の穴にドライバ7Aが挿入されているか否かを判定し、判定結果に基づいてクランプ駆動機構43を制御するクランプ制御回路43Aが設けられる。先頭のねじ5がクランプ42で固定可能な位置まで到達したか否かと、先頭のねじ5の頭の穴にドライバ7Aが挿入されているか否かは、判定に必要な物理量を検出するためのセンサを利用して検知することができる。
【0069】
例えば、先頭のねじ5がクランプ42で固定可能な位置まで到達したか否かを、赤外線又はレーザ光を利用した非接触式の光学センサ、接触式の圧力センサ或いはプランジャ等で構成されるセンサ44で検知し、先頭のねじ5がクランプ42で固定可能な位置まで到達したことがセンサ44で検知された場合には、検出信号をセンサ44からクランプ制御回路43Aに出力することができる。これにより、先頭のねじ5がクランプ42で固定可能な位置まで到達した場合には、クランプ制御回路43Aでクランプ駆動機構43を制御し、クランプ42を閉じてねじ5を固定することができる。
【0070】
一方、先頭のねじ5の頭の穴に形成される凹みにドライバ7Aの先端が挿入されたか否かは、ドライバ7Aのトルクに基づいて判定することができる。すなわち、レール41の端部に到達した先頭のねじ5の頭はクランプ42で固定されるため、ドライバ7Aを回転させて先端をねじ5の頭の穴に挿入すると、ドライバ7Aの回転が停止する。その結果、ドライバ7Aにはトルクが発生する。
【0071】
そこで、
図7に例示されるようにドライバユニット7にドライバ7Aのトルクを検知するトルクセンサ7Eを取付けることができる。トルクセンサ7Eで検知されたドライバ7Aのトルクは、
図14に例示されるクランプ制御回路43Aに出力することができる。そうすると、クランプ制御回路43Aでは、ドライバ7Aのトルクが一定の値に達した場合には、ドライバ7Aの先端がねじ5の頭に挿入されたと判定することができる。ドライバ7Aの先端がねじ5の頭に挿入されたと判定された場合には、クランプ制御回路43Aでクランプ駆動機構43を制御し、クランプ42を開放することができる。
【0072】
別の方法として、ドライバ7Aの先端の位置又は回転速度をセンサで検出することによって、ねじ5の頭にドライバ7Aの先端が挿入されたことを検知することもできる。具体例として、非接触式の光学センサでドライバ7Aの先端の位置を検出することができる。或いは、スプリング7Cの弾性力を圧力センサで検出したり、スプリング7Cの伸縮によって変化するドライバ7Aの後端の位置を位置センサで検出したりすることによっても、ドライバ7Aの先端の位置を検出することができる。また、ドライバ7Aに回転速度センサを取付ければ、ドライバ7Aの回転が停止したことを検出することができる。
【0073】
そして、ドライバ7Aの先端の位置が、ねじ5の頭の穴の内部であると判定された場合やドライバ7Aの先端がねじ5の頭の穴に挿入されてドライバ7Aの回転が停止したと判定される場合には、クランプ制御回路43Aでクランプ駆動機構43を制御し、クランプ42を開放することができる。
【0074】
ドライバ7Aの先端がねじ5の頭に挿入され、クランプ42がオフに切換えられた場合には、ドライバユニット7の電磁石7Dをオンに切換え、磁力でドライバ7Aの先端にねじ5を吸引することができる。これにより、ドライバ7Aの先端にねじ5を正しい向き及び位置で保持することができる。
【0075】
尚、ねじ供給機11を省略し、ドライバ7Aでインサート4及びホルダ6から取外された後のねじ5を、ドライバ7Aに吸引して保持したまま、ホルダ6への締付けを行うようにしても良い。但し、ねじ5がホルダ6から取外されてから、再度ホルダ6に締付けられる間には、インサート4の着脱が行われる。このため、インサート4の着脱を行うためのインサート保持部8と、ドライバ7Aが
図5に例示されるように共通のヘッド22に取付けられる場合には、インサート4の着脱中に駆動装置13の動作によってインサート保持部8のみならず、ドライバ7Aも移動することになる。
【0076】
従って、インサート4の着脱中にねじ5の落下を防止する観点からは、ドライバ7Aでホルダ6から取外したねじ5を一旦ねじ供給機11に戻すことが好ましい。また、ホルダ6から取外したねじ5は、トルクをかけてホルダ6の雌ねじから緩めたねじ5であることから、ドライバ7Aの中心軸と、ねじ5の中心軸がずれた状態でドライバ7Aに付着する恐れがある。この場合、ドライバ7Aに付着したねじ5が落下する可能性や、ドライバ7Aに付着したねじ5をホルダ6の雌ねじに締付けることができなくなる可能性がある。このような不具合を回避する観点からも、ねじ供給機11で正しい位置及び向きに位置決めしたねじ5をドライバ7Aに付着させることが好ましい。
【0077】
ねじ供給機11からドライバ7Aの先端にねじ5がセットされると、駆動装置13の動作によってドライバ7Aとともにねじ5を移動させた後、ドライバ駆動装置7Bを駆動してドライバ7Aを正回転させることによって、ねじ5をホルダ6の雌ねじに締付けることができる。そして、
図6に示す駆動装置13の制御装置13Aにおいて、インサート4及びホルダ6へのねじ5の締付けが完了したと判定されると、ドライバ駆動装置7Bの駆動及びドライバ7Aの回転が停止され、駆動装置13の動作によってドライバ7Aが後退する。
【0078】
インサート4及びホルダ6へのねじ5の締付けが完了したか否かの判定は、ねじ供給機11のクランプ42で固定されたねじ5の頭にドライバ7Aの先端が挿入されたか否かの判定と同様に、ドライバ7Aのトルク、位置又は回転速度に基づいて行うことができる。すなわち、トルクセンサ7Eで検知されたドライバ7Aのトルクが一定の値に達した場合には、インサート4及びホルダ6へのねじ5の締付けが完了したと判定することができる。或いは、回転速度センサでドライバ7Aの回転が停止したことが検知された場合やスプリング7Cの伸縮によって変化するドライバ7Aの後端の位置がねじ5の長さ分だけ変位したことが位置センサで検知された場合に、インサート4及びホルダ6へのねじ5の締付けが完了したと判定するようにしても良い。
【0079】
従って、
図6及び
図14に例示されるように、駆動装置13の制御装置13Aは、ねじ5の締付けの完了を検出するために必要なトルクセンサ7E等のセンサと接続される。また、ねじ供給機11のクランプ42がオフになった後に、駆動装置13でドライバ7Aを移動できるように、駆動装置13の制御装置13Aは、
図6及び
図14に示すようにクランプ制御回路43Aとも接続され、同期制御を行えるように構成される。すなわち、ねじ供給機11のクランプ42の開閉と連動して駆動装置13が駆動するように、駆動装置13の制御装置13Aと、クランプ制御回路43Aとの間においてタイミングを制御するための信号が送受される。
【0080】
このように、駆動装置13の動作によってドライバ7Aをホルダ6に対して相対移動させてホルダ6へのねじ5の着脱を行う他、駆動装置13の動作によってインサート保持部8をホルダ6に対して相対移動させることによって、ホルダ6へのインサート4の着脱を行うことができる。
【0081】
図15は、
図5に示すインサート保持部8でホルダ6へのインサート4の着脱を行っている状態を示すヘッド22の側面図である。
【0082】
インサート保持部8は、取外し対象となる使用済のインサート4を保持してホルダ6の座面6Aから引離す一方、取付け対象となる使用前のインサート4を保持してホルダ6の取付位置である座面6A上に移動させるための工具である。ホルダ6との干渉を回避しながらインサート4を保持するためには、インサート4の切れ刃を形成するコーナーを含むエッジ以外の部分を保持することが必要となる。
【0083】
エッジ以外の箇所でインサート4を保持する方法としては、ドライバ7Aと同様に磁力を利用する方法の他、真空吸着によってインサート4をインサート保持部8で保持する方法が挙げられる。また、インサート4には、ねじ5を挿入するための貫通孔が設けられているため、貫通孔の内部に挿入して太さが大きくなる治具をインサート保持部8に設けてインサート4を保持するようにしても良い。
【0084】
但し、インサート4には、様々な形状があり、平坦な面の形状も多種多様である。具体的には、三角形、正方形及び平行四辺形のインサート4の他、五角形、六角形、八角形及び丸形のインサート4も市販されている。このため、ドライバ7Aと同様に磁力を利用すれば、インサート4の形状に依らず、インサート4を保持することが可能となる。すなわち、磁力でインサート4をインサート保持部8に吸引すれば、多種多様なインサート4の形状に合わせた複数のインサート保持部8を交換可能に準備することなく、異なる形状を有するインサート4を共通のインサート保持部8で保持することが可能となる。
【0085】
磁力でインサート4をインサート保持部8に吸引する場合には、インサート保持部8が強磁性体で構成され、図示されるようにインサート保持部8にソレノイド等のコイルと電源からなる電磁石8Aが設けられる。これにより、インサート保持部8を必要なタイミングで磁化することができる。
【0086】
具体的には、使用前のインサート4をホルダ6の座面6Aにセットする場合であれば、電磁石8Aをオンにしてインサート保持部8に吸引させたインサート4を、駆動装置13の動作によって初期位置からホルダ6の座面6Aまで移動させた後、
図6に示すホルダ設置台30の電磁石34をオンに切換える一方、インサート保持部8の電磁石8Aをオフに切換えれば良い。これにより、ねじ5で固定される前のインサート4をホルダ6の座面6Aに取付けることができる。
【0087】
逆に、使用済のインサート4をホルダ6の座面6Aから取外す場合であれば、ホルダ設置台30の電磁石34をオンにしてホルダ6の座面6Aに吸引されている、ねじ5を取外した後のインサート4に、電磁石8Aをオフにしてインサート保持部8を接近及び接触させた後、ホルダ設置台30の電磁石34をオフに切換える一方、インサート保持部8の電磁石8Aをオンに切換えれば良い。これにより、ねじ5を取外した後のインサート4をインサート保持部8に付着させることができる。
【0088】
但し、使用済のインサート4は、ホルダ6の座面6Aに切削油等で固着する場合がある。その場合には、座面6Aに垂直な方向に作用する磁力のみでは、インサート4を座面6Aから引離せない恐れがある。そこで、図示されるように、インサート保持部8に、インサート4にねじ5を挿入するための貫通孔に挿入するための突起8Bを設けることができる。図示された例では、円柱状の突起8Bが、円柱状のインサート保持部8の先端に設けられている。
【0089】
インサート保持部8に突起8Bを設けてインサート4の貫通孔に挿入すると、ホルダ6の座面6Aに平行な成分を含む力を、突起8Bからインサート4に作用させることができる。このため、ホルダ6の座面6Aからインサート4を引離す前に、インサート4を座面6Aに平行な方向にスライドさせることができる。その結果、取外し対象となるインサート4がホルダ6の座面6Aに固着している場合であっても、インサート4をホルダ6の座面6Aから引き剥がすことができる。
【0090】
インサート4の貫通孔にインサート保持部8の突起8Bを挿入するためのインサート保持部8の前進移動、インサート4の貫通孔に挿入された突起8Bをホルダ6の座面6Aに平行な方向にスライドさせるためのインサート保持部8の平行移動並びにインサート保持部8で保持したインサート4をホルダ6の座面6Aから引離して退避位置まで移動させるためのインサート保持部8の後退移動は、いずれもロボットアーム20等の駆動装置13の動作によって行うことができる。
【0091】
すなわち、ねじ5が取外された後のインサート4をホルダ6の取付位置から移動させる場合には、ねじ5が取外された後の取付位置にあるインサート4の貫通孔に突起8Bが挿入された状態で、突起8Bの長さ方向に垂直な方向にインサート保持部8をスライドさせてからインサート保持部8を突起8Bの長さ方向に移動させるように駆動装置13を制御することができる。
【0092】
磁力を利用してインサート4をホルダ6の座面6Aに着脱するためには、上述したように駆動装置13のみならず、ホルダ設置台30の電磁石34と、インサート保持部8の電磁石8Aを、互いに連動させて切換える同期制御が必要となる。このため、駆動装置13の制御装置13Aは、
図6に示すようにホルダ設置台30の電磁石34を切換える電源36と接続されるのみならず、インサート保持部8の電磁石8Aに備えられる電源とも接続され、例えば、ホルダ6の座面6Aへのインサート4の接触と、インサート保持部8へのインサート4の接触をトリガとして、ホルダ設置台30の電磁石34の動作状態と、インサート保持部8の電磁石8Aの動作状態を適切なタイミングで切換えられるようにすることができる。
【0093】
つまり、駆動装置13の制御装置13Aで、ホルダ設置台30の電磁石34のオン/オフの切換えと、インサート保持部8の電磁石8Aのオン/オフの切換えを同期制御し、インサート保持部8の位置に応じた適切なタイミングでインサート4に作用する磁力の発生と向きを制御することができる。従って、駆動装置13の制御装置13Aには、ホルダ設置台30の電磁石34と、インサート保持部8の電磁石8Aとを同期制御するための同期回路が設けられる。
【0094】
ホルダ設置台30の電磁石34のオン/オフの切換えと、インサート保持部8の電磁石8Aのオン/オフの切換えは、必ずしも同時に行わなくても良い。すなわち、制御装置13Aによる同期制御によって、ホルダ設置台30の電磁石34がオンに切換えられている期間と、インサート保持部8の電磁石8Aがオンに切換えられている期間を、時間的にオーバーラップさせても良い。
【0095】
具体例として、未使用のインサート4をホルダ6の座面6Aに取付ける際には、インサート保持部8の電磁石8Aをオンに切換えて未使用のインサート4をインサート保持部8に吸引し、駆動装置13で未使用のインサート4をホルダ6の座面6Aに接触させた後、ホルダ設置台30の電磁石34をオンに切換えて未使用のインサート4をホルダ6の座面6Aに吸引させることができる。更に、ホルダ設置台30の電磁石34をオンに切換えた後、一定期間後にインサート保持部8の電磁石8Aをオフに切換えて、インサート保持部8を未使用のインサート4から引離すことができる。
【0096】
逆に、使用済のインサート4をホルダ6の座面6Aから取外す際も、インサート保持部8の電磁石8Aをオンに切換えてインサート保持部8を使用済のインサート4に接触させて吸引した後、ホルダ設置台30の電磁石34をオフに切換えて使用済のインサート4をホルダ6の座面6Aから引離すことができる。
【0097】
このように、ねじ5で固定されていないインサート4に、インサート保持部8及びホルダ6の少なくとも一方から常に磁力が作用するように、ホルダ設置台30の電磁石34と、インサート保持部8の電磁石8Aを同期制御することによって、インサート4の落下を防止することができる。
【0098】
未使用のインサート4をホルダ6の座面6Aに取付ける際にインサート4がホルダ6の座面6Aに接触したか否かと、使用済のインサート4をホルダ6の座面6Aから取外す際に使用済のインサート4にインサート保持部8が接触したか否かは、インサート保持部8の空間座標に基づいて判定することができる。例えば、駆動装置13が
図4に例示されるような単一のロボットアーム20を有するロボット21であれば、駆動装置13の制御装置13Aにおいて、ロボットアーム20の先端における空間位置に基づいて幾何学的にインサート4の位置を算出することによって、未使用のインサート4がホルダ6の座面6Aに接触したか否かと、使用済のインサート4にインサート保持部8が接触したか否かを自動判定することができる。
【0099】
使用前におけるインサート4は、制御装置13Aによる自動制御下の駆動装置13によって、
図1に示すインサート台10上の初期位置からホルダ6の座面6Aに接触する位置まで移動させられることになる。一方、使用後におけるインサート4は、制御装置13Aによる自動制御下の駆動装置13によって、ホルダ6の座面6Aに接触する位置からインサート台10上の回収位置まで移動させられることになる。
【0100】
但し、インサート4には、複数のコーナーに形成される切れ刃を使用することが可能であるものが多い。その場合、あるコーナーに形成される切れ刃を使用した転削加工後の使用済のインサート4であっても、別のコーナーに形成される切れ刃が未使用であれば、未使用のインサート4として再利用することができる。
【0101】
そこで、複数のコーナーに切れ刃を有するインサート4がインサート交換装置1で交換される場合には、インサート4の複数のコーナーに形成される切れ刃で順次転削加工を行えるように、インサート4を切れ刃の位置に対応する所定の角度だけ回転させてホルダ6の座面6Aに取付けることができる。
【0102】
具体例として、正方形の4つの頂点に4つの切れ刃を有するインサート4であれば90度、正三角形の3つの頂点に対応する位置に3つの切れ刃を有するインサート4であれば120度、長方形又は平行四辺形の頂点に切れ刃を有するインサート4であれば180度回転させてホルダ6の取付位置に再セットすることができる。他に、五角形、六角形又は八角形等の多角形の形状を有するインサート4や丸いインサート4も市販されている。このため、インサート4の形状に応じた所定の角度だけ回転させてホルダ6の取付位置に再セットすることができる。
【0103】
すなわち、インサート4が異なる位置に複数の切れ刃を有する場合には、駆動装置13でインサート保持部8を移動させることによって、一部の切れ刃が使用済であるインサート4をホルダ6の取付位置から退避位置に一旦移動させてインサート4の形状に応じた所定の角度だけ回転させた後、再びホルダ6の取付位置まで移動させることができる。
【0104】
インサート4の形状に応じたインサート4の回転角度は、予め制御プログラムとして駆動装置13の制御装置13Aにインストールしておくことができる。そして、インサート4の回転回数を駆動装置13の制御装置13Aにおいてカウントし、所定の角度だけ回転させた回数が上限値に達したインサート4を駆動装置13でホルダ6の取付位置から引離した場合には、引離したインサート4をインサート台10上の回収位置まで移動させることができる。
【0105】
別の方法として、インサート4を光学カメラで撮影し、インサート4が撮影された画像の解析によってインサート4の各コーナーに形成される切れ刃が使用済であるか否かを判定するようにしても良い。その場合には、光学カメラで撮影された画像の画像処理を行うCPU(Central Processing Unit)等の電子回路を備えた画像処理システムと駆動装置13の制御装置13Aとを接続し、インサート4の各コーナーに形成される切れ刃が使用済であるか否かの判定結果を、画像処理システムから駆動装置13の制御装置13Aに通知することができる。そして、駆動装置13の制御装置13Aでは、インサート4の回転回数をカウントすることなく、画像処理システムから通知される情報に基づいて、インサート4の未使用の切れ刃が外側に向けてホルダ6の取付位置にセットされるように、インサート4を自動回転させることができる。
【0106】
インサート4の自動回転は、駆動装置13が
図4に例示されるような単一のロボットアーム20を有するロボット21であれば、ロボットアーム20の先端の関節の回転によって行うことができる。もちろん、インサート保持部8又はヘッド22にベアリングと回転シャフト等からなる回転装置を設けるようにしても良い。インサート4の回転装置を設ける場合には、駆動装置13の制御装置13Aで制御することができる。
【0107】
或いは、作業者が手作業でインサート4を回転させるようにしても良い。その場合には、駆動装置13を駆動させて使用済のインサート4をインサート台10上の回収位置まで一旦戻し、インサート台10上に載置された使用済のインサート4を回転させ、未使用の切れ刃を使用できるようにインサート4を適切な向きでインサート台10上の初期位置にセットすることができる。これにより、使用済のインサート4を未使用のインサート4として再利用することができる。
【0108】
従って、駆動装置13には、少なくともねじ5で取付けられる前の使用前におけるインサート4をインサート台10上の初期位置からホルダ6の取付位置まで移動させる一方、ねじ5が取外された後の使用済のインサート4をホルダ6の取付位置からインサート台10上の回収位置まで移動させる機能を設け、オプションとして、インサート4を回転させる機能を設けることができる。
【0109】
作業者が手作業でインサート4を回転させる場合には、インサート4の各コーナーに形成される切れ刃が使用済であるか否かを作業者が目視で判断するようにしても良い。或いは、インサート交換装置1でインサート4を自動的に回転させる場合と同様に、光学カメラで撮影した画像に基づく解析によってインサート4の各コーナーに形成される切れ刃が使用済であるか否かを自動判定するようにしても良い。
【0110】
また、スローアウェイ式転削工具3に取付けられたインサート4を交換すべきか否かの判定も作業者による検査又は情報処理システムによる情報処理によって行うことができる。作業者による目視でインサート4の交換時期を判定する場合には、インサート4自体の目視検査に限らず、転削工具3で転削加工された製品又は半製品の外観検査や寸法検査によって判定を行うようにしても良い。
【0111】
一方、インサート4の交換時期を情報処理によって自動判定する場合には、例えば、転削工具3による切削時間又は切削抵抗を工作機械2で測定し、切削時間又は切削抵抗が上限値に達する程、増加した場合には、インサート4の交換時期が到来したと判定することができる。或いは、インサート4の未使用の切れ刃の有無の自動判定と同様に転削工具3を光学カメラで撮影し、画像解析によってインサート4の交換時期が到来したか否かを自動判定するようにしても良い。
【0112】
図16は
図1に示すインサート台10の構成例を示す上面図である。
【0113】
図16に例示されるようにインサート台10には、例えば、使用前インサート用トレイ10Aと、使用済インサート用トレイ10Bを載置することができる。使用前インサート用トレイ10Aは、使用前の複数のインサート4を並べてセットするためのトレイである。すなわち、使用前インサート用トレイ10Aは、インサートマガジンとして機能する。一方、使用済インサート用トレイ10Bは、使用済のインサート4を回収するためのトレイである。
【0114】
使用前インサート用トレイ10A及び使用済インサート用トレイ10Bは、
図16に例示されるように共通のインサート台10に載置しても良いし、別々のインサート台10に載置しても良い。また、インサート4を作業者が手作業で回転させる場合には、一部のコーナーの切れ刃を使用したインサート4をセットするためのトレイを設けても良い。
【0115】
また、インサート4には、表面と裏面の双方に切れ刃が形成されているものもある。その場合には、作業者が手作業でインサート4を反転させて再利用することができる。そこで、反転させたインサート4を載置するためのトレイをインサート台10に設けても良い。もちろん、インサート4の反転を自動化しても良い。その場合には、トレイの反転装置をインサート台10の近傍に配置しても良い。
【0116】
逆に、使用前インサート用トレイ10A、使用済インサート用トレイ10B及びその他のトレイを共通にしても良い。その場合には、インサート4が使用済であるか使用前であるかを作業者が判断し、インサート4を回転又は反転させてインサート台10に再セットしたり、インサート台10に載置されている使用済のインサート4を、未使用のインサート4と交換すれば良い。
【0117】
使用前インサート用トレイ10A及び使用済インサート用トレイ10Bには、複数のインサート4を並べて載置するための格子状の枠を形成しても良いが、
図16に例示されるように、複数のインサート4を並べて収納する収納ケース50自体を載置するトレイにすれば、作業者による収納ケース50からのインサート4の載せ替えを不要にすることができる。
【0118】
使用前インサート用トレイ10Aにセットされる各インサート4は、ロボットアーム20等の駆動装置13が取りに行くインサート4となる。従って、使用前インサート用トレイ10Aにセットされる各インサート4の位置は、駆動装置13で移動させる前におけるインサート4の初期位置となる。すなわち、インサート4の初期位置の数は複数となる。各初期位置にあるインサート4は、駆動装置13で移動するインサート保持部8によって保持されるため、正確に位置決めされることが重要である。
【0119】
これに対して、収納ケース50とインサート4との間には、通常、作業者が指でインサート4を収納ケース50から取り出せるように隙間がある。従って、収納ケース50を、底面が水平となるように設置すると、収納ケース50内においてインサート4の位置が定まらない。
【0120】
そこで、使用前インサート用トレイ10Aの底面を傾斜させることができる。そうすると、インサート4の自重によって収納ケース50内においてインサート4の位置と向きが定まり、インサート4をより正確な初期位置に配置することが可能となる。
【0121】
図17は
図16に示す使用前インサート用トレイ10Aの形状例を示す斜視図である。
【0122】
図17に示すように、インサート台10の使用前インサート用トレイ10Aを、使用前インサート用トレイ10Aの底面が水平方向と平行とならないように傾斜させることができる。そうすると、
図16に例示されるように、使用前における複数のインサート4を収納する収納ケース50を、重力によって各インサート4が初期位置に位置決めされるように傾斜させた状態で使用前インサート用トレイ10Aに載置することが可能となる。すなわち、動力を使用することなく、重力を利用して各インサート4の位置決めを行うことができる。
【0123】
他方、使用済インサート用トレイ10Bに載置される収納ケース50内は、使用済のインサート4の回収位置となる。使用済のインサート4の回収位置は、必ずしも正確である必要がない。このため、使用済インサート用トレイ10Bについては、必ずしも傾斜させなくても良い。或いは、使用済のインサート4と、収納ケース50を分別回収できるように、使用済インサート用トレイ10Bに代えて使用済インサートボックスを配置し、インサート保持部8から使用済インサートボックス内に使用済のインサート4を落下させるようにしても良い。
【0124】
図16に示す例では、使用済インサート用トレイ10Bの底面が水平方向に平行となっている。このため、使用前のインサート4については向きと位置が揃っているが、使用済のインサート4については向きと位置がばらばらになっている。もちろん、インサート台10自体を傾斜させ、使用前インサート用トレイ10A及び使用済インサート用トレイ10Bの双方を傾斜させるようにしても良い・
【0125】
また、
図16に示す例では、インサート4の形状が矩形となっているため、直交する2つの辺がそれぞれ水平方向に対して傾斜するように使用前インサート用トレイ10Aの底面の傾斜角度が決定されているが、インサート4の形状によっては、空間的に異なる角度で使用前インサート用トレイ10Aの底面を傾斜させるようにしても良い。その場合には、異なる傾斜角度を有する使用前インサート用トレイ10Aに交換できるようにしても良い。或いは、使用前インサート用トレイ10A又はインサート台10を所望の角度で傾斜できるように、使用前インサート用トレイ10A又はインサート台10にチルト機能を設けるようにしても良い。
【0126】
このように、使用前インサート用トレイ10A又はインサート台10を傾斜させることによって、作業者が手作業でインサート4を収納ケース50から取り出して正確な位置に配置することなく、インサート保持部8を取付けたロボットアーム20等の駆動装置13で収納ケース50から直接インサート4を移動させることが可能となる。
【0127】
尚、インサート4の種類が少ない場合やインサート4が1種類であるような場合には、複数のインサート4を並べて配置するインサート台10に代えて、ねじ5の位置と向きを揃えて供給するねじ供給機11と同様な、使用前のインサート4を1枚ずつ順次初期位置に供給するインサート供給装置をインサート交換装置1に設けても良い。その場合には、インサート保持部8を取付けたロボットアーム20等の駆動装置13の制御を単純化することができる。
【0128】
インサート保持部8を取付けたロボットアーム20等の駆動装置13で使用前インサート用トレイ10Aから取り出した使用前のインサート4をホルダ6の座面6Aに取付ける際には、上述したようにインサート4の取付に先立って、エアブローによってホルダ6の座面6Aを清掃することができる。
【0129】
図5等に示すエアブローノズル9は、インサート4を取外した後のホルダ6の座面6Aに圧縮エアを吹き付けることによって、座面6Aを清掃するためのノズルである。従って、エアブローノズル9には、
図6及び
図7に示すように、圧縮エアの供給タンクと接続するためのホース9Aが連結される。エアブローノズル9の位置決めについても、ロボットアーム20等の駆動装置13で行うことができる。
【0130】
また、エアブローについても、ねじ5及びインサート4の着脱と同様に自動化することが望ましい。そこで、
図6に示すように圧縮エアを供給するエアタンクにエアブローノズル9を連結するためのホース9Aに電磁弁9Bを取付け、駆動装置13の制御装置13Aで電磁弁9Bの開閉を制御することができる。
【0131】
具体的には、使用済のインサート4をインサート保持部8で保持してホルダ6の取付位置から引離してから、使用前のインサート4をインサート保持部8で保持してホルダ6の取付位置に移動させるまでの間に、ロボットアーム20等の駆動装置13を駆動させてエアブローノズル9をホルダ6の座面6Aに向ける制御と、エアブローノズル9をホルダ6の座面6Aに向けた後に一定期間電磁弁9Bを開いて圧縮エアをホルダ6の座面6Aに噴射させる制御を、制御装置13Aにおいて実行することができる。
【0132】
尚、エアブローノズル9を移動させるロボットアームを、インサート保持部8を移動させるロボットアーム20と別に設ければ、使用前のインサート4をホルダ6の座面6Aに取付ける直前にエアブローが可能となるのみならず、インサート保持部8で保持された使用前のインサート4に対してもエアブローを行うことが可能となる。但し、インサート保持部8で保持されたインサート4のエアブローを行う場合には、エアブローによってインサート4がインサート保持部8から落下しないように、インサート保持部8によるインサート4の保持力と、圧縮エアのエネルギを適切に調整することが肝要である。
【0133】
(インサート交換方法)
次に、インサート交換装置1によるスローアウェイ式転削工具3のインサート交換方法について説明する。
【0134】
図18は
図1に示すインサート交換装置1による転削工具3のインサート交換方法の流れの一例を示すフローチャートである。
【0135】
まずステップS1において、工作機械2で転削加工に使用された後の転削工具3が、
図6に例示されるようにインサート交換装置1のホルダ保持部12を構成するホルダ設置台30にセットされる。すなわち、ホルダ設置台30の回転保持機構31で転削工具3のホルダ6を保持される。
【0136】
次に、ステップS2において、ホルダ設置台30にセットされた転削工具3の角度が調整される。具体的には、
図6に例示されるように、制御回路33の制御下において動作するモータ32の駆動によって回転保持機構31の回転子を回転させ、交換対象となる使用済のインサート4が取付けられているホルダ6の座面6Aが鉛直方向に概ね垂直となるようにホルダ6の向きが調整される。
【0137】
次に、ステップS3において、交換対象となる使用済のインサート4をホルダ6の座面6Aに固定するためのねじ5の取外しと回収が行われる。具体的には、ねじ5を取外してもインサート4がホルダ6から落下しないように、
図6に示すモータ32の制御回路33と、駆動装置13の制御装置13Aの連動した制御によって適切なタイミングで電源36がオンに切換えられ、コイル35に電流が供給される。これにより、ホルダ設置台30の電磁石34がオンに切換り、ホルダ6からインサート4に吸引力として磁力が作用する。
【0138】
続いて、制御装置13Aの制御下において
図4に例示されるようなロボットアーム20等の駆動装置13が駆動し、
図7に例示されるようにドライバ7Aの先端がねじ5の頭に押付けられる。そうすると、ドライバ7Aに連結されたスプリング7Cが縮んで伸長力が生じる。その状態で、駆動装置13の制御下においてドライバ駆動装置7Bが駆動し、ドライバ7Aが低速で逆回転する。このため、ドライバ7Aの先端の形状と、ねじ5の頭に形成される止まり穴の形状が一致すると、スプリング7Cの伸長力によってドライバ7Aの先端がねじ5の頭に差し込まれる。
【0139】
ねじ5の頭に差し込まれたドライバ7Aには、ドライバ駆動装置7Bからねじ5を緩めるために適した一定のトルクが逆回転方向に作用する。そうすると、ドライバ7Aはスプリング7Cの伸縮によって回転軸方向に移動可能なため、ねじ5が緩んでインサート4から徐々に突出する。
【0140】
一方、駆動装置13の制御下において電磁石7Dがオンに切換えられる。このため、緩んだねじ5は、磁化されたドライバ7Aの先端に吸引されたまま、ホルダ6の座面6Aに形成された雌ねじから取外される。他方、インサート4もホルダ設置台30の電磁石34によって磁化されたホルダ6に吸引されているため、ドライバ7Aでねじ5を回転させても、インサート4は回転せず、インサート4の落下を防止することができる。
【0141】
ねじ5がホルダ6の雌ねじから取外されると、制御装置13Aの制御下において駆動する駆動装置13によって、ねじ5を吸引した状態のドライバ7Aが
図13及び
図14に例示されるようなねじ供給機11の回収トレイ40の上方まで移動する。そうすると、制御装置13Aの制御下において
図7に示す電磁石7Dがオフに切換えらえる。このため、ドライバ7Aからねじ5が落下し、ねじ5が回収トレイ40からねじ供給機11に回収される。
【0142】
次に、ステップS4において、ねじ5が取外された後のホルダ6から使用済のインサート4が取外される。そのために、制御装置13Aの制御下において駆動する駆動装置13によってインサート保持部8が移動し、
図15に例示されるように取外す対象となる使用済のインサート4にインサート保持部8の先端が接触する。この時、
図5に示すようにインサート保持部8の先端に突起8Bが設けられている場合には、
図15に示すようにインサート保持部8の突起8Bがねじ5を挿入するためのインサート4の貫通孔に挿入される。
【0143】
一方、制御装置13Aの制御下において、インサート保持部8を磁化するための
図15等に示す電磁石8Aがオンに切換えられる。逆に、制御装置13Aの制御下において
図6に示すホルダ設置台30の電磁石34がオフに切換えられる。このため、ホルダ6に吸引されていた使用済のインサート4は、インサート保持部8に吸引される。
【0144】
続いて、インサート保持部8の突起8Bがねじ5を挿入するためのインサート4の貫通孔に挿入されている場合には、制御装置13Aの制御下において駆動する駆動装置13によって、インサート保持部8がホルダ6の座面6Aに平行な方向にスライドする。これにより、使用済のインサート4が切削油等でホルダ6の座面6Aに固着している場合であっても、使用済のインサート4をホルダ6の座面6Aから剥がすことができる。
【0145】
次に、制御装置13Aの制御下において駆動する駆動装置13によって、インサート保持部8が使用済のインサート4を吸引させたまま、ホルダ6の座面6Aから離れる方向に移動する。その結果、使用済のインサート4は退避位置に移動する。
【0146】
次に、ステップS5において、制御装置13Aにおいて退避位置まで移動した使用済のインサート4に未使用のコーナーの切れ刃があるか否かが判定される。未使用のコーナーの切れ刃の有無は、制御装置13Aに予め入力されたインサート4の切れ刃の数と、同じインサート4の回転数に基づいて判定することができる。具体的には、同じインサート4が切れ刃の数から1を減算した回数だけまだ回転されていなければ、未使用の切れ刃が有ると判定し、逆に、同じインサート4が切れ刃の数から1を減算した回数だけ既に回転されていれば、未使用の切れ刃が無いと判定することができる。
【0147】
未使用の切れ刃が有ると判定された場合には、ステップS6において、退避位置まで移動させたインサート4を回転させ、使用済の切れ刃の位置と、未使用の切れ刃の位置を入れ換える。すなわち、制御装置13Aの制御下において駆動装置13がインサート4の切れ刃の間隔に応じた角度だけインサート保持部8を回転させる。これにより、インサート保持部8に吸引されたインサート4は、使用前のインサート4として再利用することが可能となる。
【0148】
逆に未使用の切れ刃が無いと判定された場合には、ステップS7において、使用済のインサート4が回収される。具体例として、制御装置13Aの制御下において駆動装置13がインサート保持部8を
図16に例示されるようなインサート台10の使用済インサート用トレイ10B近傍まで移動させ、インサート保持部8に吸引した使用済のインサート4が使用済インサート用トレイ10Bに載置されている収納ケース50内に入った後又は置かれた後で、インサート保持部8を磁化するための電磁石8Aが制御装置13Aの制御によってオフに切換えられる。これにより、使用済のインサート4を収納ケース50内の回収位置に載置することができる。
【0149】
尚、使用済のインサート4に未使用の切れ刃があるか否かのステップS5における判定は、ステップS4における使用済のインサート4の取外し又はステップS3におけるねじ5の取外しに先立って事前に行うようにしても良い。その場合には、未使用の切れ刃が無いと判定された場合に、ホルダ6の座面6Aから引離された使用済のインサート4を退避位置に一旦停止させることなく直接回収位置まで移動させるようにしても良い。
【0150】
使用済のインサート4を回収位置に載置した場合には、続いて、ステップS8において、インサート保持部8で未使用のインサート4が保持される。具体例として、制御装置13Aの制御下において駆動装置13がインサート保持部8を
図16に例示されるようなインサート台10の使用前インサート用トレイ10A近傍まで移動させ、使用前インサート用トレイ10Aに載置されている収納ケース50内にある未使用のインサート4にインサート保持部8を接近又は接触させた後、インサート保持部8を磁化するための電磁石8Aが制御装置13Aの制御によってオンに切換えられる。これにより、未使用のインサート4をインサート保持部8で保持することができる。
【0151】
次に、ステップS9において、エアブローによって、インサート4が取外された後のホルダ6の座面6Aが清掃される。具体的には、制御装置13Aの制御下において駆動装置13が駆動し、
図5等に図示されるようなエアブローノズル9がホルダ6の座面6Aに向けられる。続いて、
図6に示すエアブローノズル9に連結された電磁弁9Bが制御装置13Aによって一定期間開閉される。これにより、電磁弁9Bが開かれた期間に圧縮エアがホルダ6の座面6Aに噴射され、固まった切削油や切粉等の異物がホルダ6の座面6Aから除去される。
【0152】
次に、ステップS10において、インサート保持部8で保持された回転済又は未使用のインサート4が、ホルダ6の取付位置、すなわちホルダ6の座面6Aに接触する位置に位置決めされる。具体的には、制御装置13Aの制御下において駆動装置13が駆動し、インサート保持部8で保持されたインサート4がホルダ6の座面6Aに接触するまでインサート保持部8が移動する。
【0153】
インサート保持部8で保持されたインサート4がホルダ6の座面6Aに接触すると、制御装置13Aの制御下においてホルダ設置台30の電磁石34がオンに切換えられる。他方、インサート保持部8を磁化するための電磁石8Aは、制御装置13Aの制御下においてオフに切換えられる。これにより、インサート保持部8に吸引されていたインサート4がホルダ6の座面6Aに吸引され、インサート4の位置決めを完了させることができる。また、制御装置13Aの制御下における駆動装置13の駆動によって、インサート保持部8をインサート4から引離すことができる。
【0154】
次に、ステップS11において、位置決めされたインサート4がねじ5でホルダ6の座面6Aに固定される。そのために、ドライバ7Aによるねじ5の保持と締付が行われる。具体的には、制御装置13Aの制御下における駆動装置13の駆動によって、ドライバ7Aが
図13及び
図14に例示されるようなねじ供給機11から供給されるねじ5の頭に接触して押付ける位置まで移動する。
【0155】
ねじ供給機11から供給される先頭のねじ5は、クランプ42で固定されている。このため、スプリング7Cでテンションをかけながらドライバ駆動装置7Bでドライバ7Aを回転させると、ドライバ7Aがねじ5に対して相対的に回転し、ドライバ7Aの先端における形状と、ねじ5の頭に形成されている止まり穴の形状が一致したところでドライバ7Aの先端がねじ5の頭に差し込まれる。
【0156】
ドライバ7Aの先端がねじ5の頭に差し込まれると、ドライバ7Aの回転が停止し、ドライバ駆動装置7Bからドライバ7Aに掛かるトルクが増大する。ドライバ7Aに掛かるトルクは、
図7に示すトルクセンサ7Eで検知される。このため、トルクセンサ7Eから出力されるトルクの測定値に基づいて、
図14に示すクランプ駆動機構43のクランプ制御回路43Aにおいて、ドライバ7Aの先端がねじ5の頭に差し込まれたことを検知することができる。
【0157】
ドライバ7Aの先端がねじ5の頭に差し込まれたことが検知されると、クランプ制御回路43Aがクランプ駆動機構43を駆動させ、クランプ42を開放する。一方、
図7に示すドライバ7Aを磁化するための電磁石7Dが制御装置13Aの制御下においてオンに切換えられる。電磁石7Dの作動は、クランプ制御回路43Aから制御装置13Aに出力される信号をトリガとしてクランプ42の開放後に行っても良いし、クランプ42の開放前、例えば、ドライバ7Aが所定の位置に到達したタイミングやトルクセンサ7Eから制御装置13Aに出力されるトルクの測定値に基づいてドライバ7Aの先端がねじ5の頭に差し込まれたと判定されたタイミングで行っても良い。
【0158】
電磁石7Dが作動してドライバ7Aが磁化されると、ドライバ7Aにねじ5が吸引される。すなわち、ドライバ7Aでねじ5を保持することができる。
図13及び
図14に示すようにねじ供給機11から供給される先頭のねじ5がドライバ7Aで保持されると、制御装置13Aの制御下における駆動装置13の駆動によって、ねじ5を保持したドライバ7Aが
図6に示すようにホルダ6の座面6Aに形成されている雌ねじに向けられる。
【0159】
続いて、制御装置13Aの制御下においてドライバ駆動装置7Bが駆動し、ドライバ7Aを正回転させながら、駆動装置13の駆動によってドライバ7Aとともにねじ5がホルダ6の座面6Aに形成されている雌ねじに接近する。これにより、ドライバ7Aで保持されたねじ5を、インサート4の貫通孔内を通してホルダ6の座面6Aに形成されている雌ねじに締付けることができる。
【0160】
ねじ5の締付が完了すると、ねじ5及びドライバ7Aの回転が停止し、ドライバ駆動装置7Bからドライバ7Aに掛かるトルクが増大する。ドライバ7Aに掛かるトルクは、
図7に示すトルクセンサ7Eで検知される。このため、トルクセンサ7Eから出力されるトルクの測定値に基づいて、駆動装置13の制御装置13Aにおいて、ねじ5の締付が完了したことを検知することができる。
【0161】
そうすると、制御装置13Aの制御下においてドライバ駆動装置7Bが停止する。また、制御装置13Aの制御下においてドライバ7Aを磁化するための電磁石7Dがオフに切換えられる。このため、制御装置13Aの制御下において駆動装置13を駆動させることによって、ドライバ7Aを退避させることができる。
【0162】
ねじ5の締付が完了すると、使用前のインサート4がねじ5でホルダ6の座面6Aに固定され、インサート4の交換が完了する。インサート4の交換が完了すると、ステップS12において、制御装置13Aにおいて、未交換の使用済のインサート4の有無が判定される。この判定は、制御装置13Aに事前に入力された転削工具3のインサート4の数と位置を特定するための情報と、駆動装置13の動作履歴に基づいて行うことができる。
【0163】
ステップS12の判定において、未交換のインサート4があると判定された場合には、別のインサート4を交換できるように、再びステップS2においてホルダ設置台30にセットされた転削工具3の角度が調整される。そして、ステップS12の判定において、未交換のインサート4が無いと判定されるまで、ホルダ設置台30にセットされた転削工具3の角度の調整と、ねじ5の自動着脱を含むインサート4の自動交換が繰返される。
【0164】
これにより、転削工具3の全てのインサート4を交換することができる。尚、交換対象となるインサート4が一部のインサート4に限られている場合には、交換対象となるインサート4を特定する情報を含む制御プログラムを制御装置13Aにインストールし、特定のインサート4のみを交換するようにしても良い。
【0165】
交換対象となる全てのインサート4の交換が完了すると、ステップS13において、ホルダ設置台30の回転保持機構31から転削工具3を取外し、次の転削加工に使用することができる。また、ホルダ設置台30の電磁石34をオフに切換えることができる。尚、あるインサート4へのねじ5の締付が完了してから、次のインサート4からのねじ5の取外しが開始されるまでの間に、電力の節約等の観点からホルダ設置台30の電磁石34をオフに切換えても良い。
【0166】
(効果)
以上のようなインサート交換装置1及びインサート交換方法は、ロボットアーム20等の駆動装置13に取付けたドライバ7Aと、インサート保持部8で、スローアウェイ式転削工具3のねじ5の着脱を含むインサート4の交換の大部分を自動的に行うようにしたものである。
【0167】
このため、インサート交換装置1及びインサート交換方法によれば、スローアウェイ式転削工具3へのインサート4の交換作業を簡易化することができる。すなわち、作業者が行うべきインサート4の交換作業を、ホルダ設置台30への転削工具3のセット、インサート台10への使用前のインサート4のセット及びインサート交換装置1の動作の開始指示等の簡易な作業に留めることが可能となる。加えて、作業者によるねじ5の締め忘れを防ぐことやねじ5の締付けトルクを適切にすることができる。
【0168】
(第2の実施形態)
図19は、本発明の第2の実施形態に係るインサート交換装置に備えられるインサート保持部の構成を示す縦断面図である。
【0169】
図19に示された第2の実施形態におけるインサート交換装置1Aは、インサート保持部8の構成と、インサート保持部8をエアシリンダ60で移動させるようにした点が第1の実施形態におけるインサート交換装置1と相違する。第2の実施形態における他の構成及び作用については第1の実施形態と実質的に異ならないため、インサート保持部8及びエアシリンダ60のみ図示し、同一の構成又は対応する構成については同符号を付して説明を省略する。
【0170】
第2の実施形態におけるインサート保持部8は、永久磁石8Cの磁力によってインサート4を保持するように構成されている。また、ヘッド22には、エアシリンダ60が取付けられ、エアシリンダ60で永久磁石8Cをインサート4に向けて直線的に往復移動させるように構成されている。従って、エアシリンダ60は、インサート保持部8の一部とも言えるが、インサート4を保持する永久磁石8Cを移動させる機械要素であることかから、インサート保持部8を移動させる駆動装置13の一部と言うこともできる。
【0171】
より具体的には、エアシリンダ60は、ロッド60Aの一端をシリンダチューブ60B内で往復移動するピストン60Cと連結する一方、ロッド60Aの他端をシリンダチューブ60Bから外部に突出させて構成される。シリンダチューブ60Bから突出するロッド60Aの端部には、永久磁石8Cが固定される。従って、シリンダチューブ60B内に圧縮エアを供給することによって、永久磁石8Cを直線的に往復移動させることができる。
【0172】
一方、永久磁石8Cは、内部で往復移動できるようにストロークに対応する隙間を空けて筒状のケーシング8D内に配置される。ケーシング8Dは、オーステナイト系ステンレス鋼や樹脂等の非磁性体で構成される。このため、ケーシング8D自体は磁化されず、永久磁石8Cから離れた位置では磁力が十分に低減される。
【0173】
その結果、永久磁石8Cをケーシング8D内においてインサート保持部8の先端に向かって前進させ、インサート保持部8の先端に移動させた場合には、永久磁石8Cの磁力によってインサート4をケーシング8Dの先端に吸着する一方、永久磁石8Cをケーシング8D内において後退させた場合には、インサート4が吸引されない程度までケーシング8Dから漏れ出る永久磁石8Cの磁力を弱めることができる。
【0174】
このため、エアシリンダ60の駆動によって永久磁石8Cをインサート4に向かって前進させればインサート保持部8でインサート4を保持することができ、逆に、エアシリンダ60の駆動によって永久磁石8Cをインサート4から離れる方向に後退させれば、インサート保持部8からインサート4を引き離すことができる。
【0175】
また、
図19に例示されるように、ケーシング8Dの板厚を不均一とすることによって、インサート4の吸着に不適切な磁力を低減することができる。すなわち、ケーシング8Dの板厚を調整することによって、永久磁石8Cの側面側の磁力と背面側の磁力を、前面側の磁力に対して相対的に弱めることができる。
【0176】
具体的には、インサート4に斥力を発生させる永久磁石8Cの後端側におけるケーシング8Dの板厚を相対的に厚くすることによって、インサート4に作用する斥力を弱める一方、インサート4に引力を発生させる永久磁石8Cの先端側におけるケーシング8Dの板厚を相対的に薄くすることによって、インサート4に作用する引力の減衰量を低減することができる。
【0177】
また、インサート4には、永久磁石8Cの往復方向及びインサート4の厚さ方向に引力を発生させるべきであることから、永久磁石8Cの側面側におけるケーシング8Dの板厚を、永久磁石8Cの先端側におけるケーシング8Dの板厚よりも厚くし、永久磁石8Cの往復方向及びインサート4の厚さ方向に作用する磁力が支配的となるようにすることができる。
【0178】
原理的には、永久磁石8Cの先端側におけるケーシング8Dの壁面を省略することもできる。すなわち、ケーシング8Dの先端を開口端とし、永久磁石8Cの先端を露出させても良い。その場合には、ケーシング8Dのサイズを、インサート4のサイズよりも小さくすれば、永久磁石8Cを後退させた場合に永久磁石8Cをインサート4から引離すことができる。
【0179】
ケーシング8Dの先端を開口端とすれば、永久磁石8Cとインサート4が直接接触するため、永久磁石8Cの吸引力を最大にすることができる。但し、インサート4には切削油や切粉等が付着している場合があるため、洗浄を容易にする観点からは、ケーシング8Dの先端を閉口端とすることが好ましい。特に、永久磁石の中で最も強力とされているネオジム磁石等をインサート4の保持用の永久磁石8Cとして採用すれば、ケーシング8Dの先端に1mm程度の厚さを有する壁面を設けても、十分な磁力をインサート4に作用させて吸着させることが可能である。
【0180】
また、ケーシング8Dの先端を閉口端とすれば、第1の実施形態と同様に、
図19に例示されるように、ケーシング8Dの先端に非磁性体からなる突起8Bを設け、インサート4の貫通孔に挿入することができる。このため、インサート4が切削油等でホルダ6に固着している場合であっても、ケーシング8Dをホルダ6の座面6Aに平行な方向にスライドさせることによって、インサート4をホルダ6の座面6Aから引き剥がすことができる。そして、突起8Bをインサート4の貫通孔に挿入してスライドさせた後に、永久磁石8Cを前進させてインサート4をケーシング8Dの端面に吸引することができる。
【0181】
尚、ケーシング8Dの先端を開口端とし、永久磁石8Cに直接突起8Bを設ける方法も考えられるが、第1の実施形態のように磁力の切換が可能な電磁石8Aとは異なり、常時磁力を作用させた状態で突起8Bをインサート4の貫通孔に確実に挿入することは困難である可能性が高い。このため、
図19に示すようにケーシング8Dの先端を閉口端とし、ケーシング8Dの端面に非磁性体の突起8Bを設けることが現実的であると考えられる。
【0182】
このように、永久磁石8Cをエアシリンダ60で往復移動させる場合には、エアシリンダ60にエア信号を出力することによってエアシリンダ60の駆動を制御するエア制御回路61が、ロボットアーム20等の駆動装置13を制御する制御装置13Aの一部として設けられる。典型的なロボットアーム20には、エア信号の伝送系統が設けられている。このため、例えば、エア制御回路6をエアシリンダ60とともにヘッド22に取付けるようにしても良い。
【0183】
エア制御回路61には、永久磁石8Cをインサート4に向けて前進させる場合には、エアシリンダ60のピストン60Cを前進させるためのエア信号の入力ポートにエア信号を出力する一方、永久磁石8Cを後退させる場合には、エアシリンダ60のピストン60Cを後退させるためのエア信号の入力ポートにエア信号を出力する機能が備えられる。
【0184】
そして、エア制御回路61を含む制御装置13Aにより、ロボットアーム20等の駆動装置13と、エアシリンダ60の同期制御が行われる。すなわち、ロボットアーム20と、エアシリンダ60が、互いに連動する。
【0185】
具体的には、インサート4をホルダ6から取外す際には、ロボットアーム20等の駆動装置13によるインサート4の貫通孔への突起8Bの挿入及びケーシング8Dのスライド動作が完了した後、エアシリンダ60の前進駆動が開始され、エアシリンダ60の前進駆動が完了してインサート4が永久磁石8Cの磁力でケーシング8Dの端面に吸着した後、インサート4をホルダ6から引離すためのロボットアーム20等の駆動装置13の動作が開始されるように、駆動装置13と、エアシリンダ60の同期制御が行われる。
【0186】
逆に、インサート4をホルダ6に取付ける際には、エアシリンダ60のピストン60Cを前進させて永久磁石8Cの磁力でケーシング8Dの端面にインサート4を吸着させた状態でロボットアーム20等の駆動装置13を駆動させることによって、インサート4がホルダ6の取付位置まで移動した後に、エアシリンダ60の後退駆動が開始され、かつエアシリンダ60の後退駆動の完了によって永久磁石8Cの磁力がインサート4をケーシング8Dの端面に吸着できない程度まで弱まった後に、ロボットアーム20等の駆動装置13の駆動によってケーシング8Dを含むインサート保持部8がホルダ6近傍から退避するように、駆動装置13と、エアシリンダ60の同期制御が行われる。
【0187】
尚、エアシリンダ60の代わりに油圧シリンダ、ボールねじ或いはギアの一種であるラック・アンド・ピニオン等の直線移動を行う機械要素を用いて永久磁石8Cの往復移動を行うようにしても良い。このように、永久磁石8Cの1次元の往復移動を行う機械要素をロボットアーム20に取付ければ、ロボットアーム20に必要な駆動軸の数を減らすことが可能となる。
【0188】
以上の第2の実施形態によれば、永久磁石8Cの強力な磁力によってより確実にインサート4を保持することが可能となる。すなわち、典型的なインサート4の材料はタングステンカーバイドをコバルトで結合した超硬合金であり、バインダとして含まれるコバルトによって生じる磁性は、鉄系の金属で構成されるねじ5と比べて弱いが、ネオジム磁石等の永久磁石8Cの強力な磁力によってインサート4を吸引することが可能となる。
(他の実施形態)
以上、特定の実施形態について記載したが、記載された実施形態は一例に過ぎず、発明の範囲を限定するものではない。ここに記載された新規な方法及び装置は、様々な他の様式で具現化することができる。また、ここに記載された方法及び装置の様式において、発明の要旨から逸脱しない範囲で、種々の省略、置換及び変更を行うことができる。添付された請求の範囲及びその均等物は、発明の範囲及び要旨に包含されているものとして、そのような種々の様式及び変形例を含んでいる。
【符号の説明】
【0189】
1、1A…インサート交換装置、2…工作機械、3…転削工具、4…インサート、5…ねじ、6…ホルダ、6A…座面、7…ドライバユニット、7A…ドライバ、7B…ドライバ駆動装置、7C…スプリング、7D…電磁石、7E…トルクセンサ、8…インサート保持部、8A…電磁石、8B…突起、8C…永久磁石、9…エアブローノズル、9A…ホース、9B…電磁弁、10…インサート台、10A…使用前インサート用トレイ、10B…使用済インサート用トレイ、11…ねじ供給機(フィーダ)、12…ホルダ保持部、13…駆動装置、13A…制御装置、13B…入力装置、20…ロボットアーム
21…ロボット、22…ヘッド、30…ホルダ設置台、31…回転保持機構、32…モータ、33…制御回路、34…電磁石、35…コイル、36…電源、37…電気回路、40…回収トレイ、41…レール、42…クランプ、42A、42B…押当部材、43…クランプ駆動機構、43A…クランプ制御回路、44…センサ、50…収納ケース、60…エアシリンダ、60A…ロッド、60B…シリンダチューブ、60C…ピストン、61…エア制御回路。