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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】毛髪用組成物、及び毛髪処理方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/34 20060101AFI20240222BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20240222BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20240222BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20240222BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20240222BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
A61K8/34
A61K8/60
A61K8/86
A61Q5/00
A61Q5/02
A61Q5/12
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018016202
(22)【出願日】2018-02-01
(62)【分割の表示】P 2017081150の分割
【原出願日】2017-04-17
(65)【公開番号】P2018111693
(43)【公開日】2018-07-19
【審査請求日】2020-04-30
【審判番号】
【審判請求日】2022-06-28
(31)【優先権主張番号】P 2017001243
(32)【優先日】2017-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592255176
【氏名又は名称】株式会社ミルボン
(74)【代理人】
【識別番号】100111187
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 秀忠
(72)【発明者】
【氏名】古田 桃子
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 廉
【合議体】
【審判長】木村 敏康
【審判官】野田 定文
【審判官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-146844(JP,A)
【文献】国際公開第2013/094489(WO,A1)
【文献】特開2013-35755(JP,A)
【文献】特開平6-122614(JP,A)
【文献】特開平6-287110(JP,A)
【文献】特開平9-77650(JP,A)
【文献】特表2009-519273(JP,A)
【文献】特開昭52-154529(JP,A)
【文献】Nutrient Shampoo,ID# 1671249,Mintel GNPD [online],2011年11月掲載,印刷日2021年9月13日
【文献】Conditioner,ID# 4392575,Mintel GNPD [online],2016年11月掲載,印刷日2021年9月13日
【文献】Conditioner,ID# 4392677,Mintel GNPD [online],2016年8月掲載,印刷日2021年9月13日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)及び(B)が配合され、
下記成分(A)として、トレハロースが配合され、
下記成分(B)として、酸化エチレンの平均付加モル数が400以下であるポリエチレングリコール及びPEG-450から選ばれた一種又は二種以上が配合され、
洗い流すトリートメント、又は洗い流さないトリートメントとして用いられることを特徴とする毛髪用組成物(但し、6-ベンジルアミノプリンを含有する組成物、及びタブレット型凍結乾燥化粧料を除く。)。
(A)トレハロース、キシロース、キシリトール及びマルチトールから選ばれた一種又は二種以上
(B)酸化エチレンの平均付加モル数が6以上であるポリエチレングリコール
【請求項2】
下記成分(B)として、酸化エチレンの平均付加モル数が100以下であるポリエチレングリコール、PEG-150、PEG-180、PEG-220及びPEG-240から選ばれた一種又は二種以上が配合された請求項1に記載の毛髪用組成物。
【請求項3】
前記成分(B)として、酸化エチレンの平均付加モル数が12以上であるポリエチレングリコールが配合された請求項1に記載の毛髪用組成物。
【請求項4】
前記成分(B)として、酸化エチレンの平均付加モル数が100以下であるポリエチレングリコールが配合された請求項1又は3のいずれか1項に記載の毛髪用組成物。
【請求項5】
前記成分(A)の配合量が前記成分(B)の配合量よりも多い請求項1~4のいずれか1項に記載の毛髪用組成物。
【請求項6】
下記成分(C)が配合された請求項1~5のいずれか1項に記載の毛髪用組成物。
(C)イソノナン酸イソトリデシル及び/又はイソノナン酸イソデシル
【請求項7】
使用時の剤型が、液状、クリーム状、ゲル状、泡状、又は霧状である請求項1~6のいずれか1項に記載の毛髪用組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の毛髪用組成物を使用することを特徴とする毛髪処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗い流すトリートメント、洗い流さないトリートメント、毛髪洗浄剤などに使用される毛髪用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ブラッシング、ドライヤー、熱アイロン、ヘアカラー、パーマネントウェーブなどの物理的処理、熱処理、又は化学的処理により、毛髪が損傷する。このような損傷を抑制するための毛髪の保護、又は損傷した毛髪を補修することが求められる。
【0003】
特許文献1には、特定の単糖類及びその単糖類の誘導体から選択される少なくとも1つの糖を含む組成物が提案され、特許文献2には、植物エキス及び糖を含む組成物が提案されている。そして、特許文献1~2には、これら組成物は、熱処理や化学的処理で毛髪が受ける損傷の抑制、損傷した毛髪を補修する旨の内容の記載がある。毛髪の保護、補修のために、上記組成物以外の更なる提案が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-343902号公報
【文献】特表2003-526646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、損傷した毛髪の補修、及び熱処理などで受ける損傷の抑制のために適した毛髪用組成物、及び当該組成物を使用する毛髪処理方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等が鋭意検討を行った結果、カルボキシメチルアラニルジスルフィドケラチンの損傷抑制と、毛髪損傷の抑制および損傷した毛髪の補修とに関係性があり、保湿感などを付与することが知られているポリエチレングリコールを配合する際に、上記カルボキシメチルアラニルジスルフィドケラチンの損傷抑制が認められたトレハロースなど及び特定のポリエチレングリコールの併用が、毛髪損傷の抑制および損傷毛髪の補修に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明に係る毛髪用組成物は、下記成分(A)及び(B)が配合されたことを特徴とする。
(A)トレハロース、キシロース、キシリトール及びマルチトールから選ばれた一種又は二種以上
(B)酸化エチレンの平均付加モル数が6以上であるポリエチレングリコール
【0008】
本発明に係る毛髪用組成物は、前記成分(A)として、トレハロースが配合されたものが良い。
【0009】
本発明に係る毛髪用組成物は、前記成分(B)として、酸化エチレンの平均付加モル数が12以上であるポリエチレングリコールが配合されたものが良い。酸化エチレンの平均付加モル数が12以上であると、毛髪損傷の抑制と毛髪の補修により適する。
【0010】
また、本発明に係る毛髪用組成物は、前記成分(B)として、酸化エチレンの平均付加モル数が100以下であるポリエチレングリコールが配合されたものが良い。酸化エチレンの平均付加モル数が100以下であると、毛髪内部にまで浸透し易く、その内部の損傷抑制と補修に適する。
【0011】
本発明に係る毛髪用組成物において、前記成分(A)の配合量が前記成分(B)の配合量よりも多いと良い。この配合量関係であると、毛髪損傷の抑制と毛髪の補修により適する。
【0012】
本発明に係る毛髪用組成物は、下記成分(C)が配合されたものが良い。下記成分(C)の配合は、毛髪補修に適する。
(C)イソノナン酸イソトリデシル及び/又はイソノナン酸イソデシル
【0013】
本発明に係る毛髪用組成物は、例えば、洗い流すトリートメント、洗い流さないトリートメント、又は毛髪洗浄剤として用いられる。
【0014】
本発明に係る毛髪処理方法は、本発明に係る毛髪用組成物を使用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る毛髪用組成物によれば、トレハロース及び特定のポリエチレングリコールが配合されているので、毛髪の損傷抑制および毛髪補修に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態に基づき、本発明を以下に説明する。
本実施形態に係る毛髪用組成物は、下記成分(A)及び(B)が配合されたものである。
(A)トレハロース、キシロース、キシリトール及びマルチトールから選ばれた一種又は二種以上
(B)酸化エチレンの平均付加モル数が6以上であるポリエチレングリコール
【0017】
本実施形態に係る毛髪用組成物は、下記成分(C)が配合されたものが良い。
(C)イソノナン酸イソトリデシル及び/又はイソノナン酸イソデシル
【0018】
また、実使用上許容されるのであれば、公知の毛髪用組成物に配合されている原料を、更に配合しても良い。
【0019】
本実施形態の毛髪用組成物において、成分(A)の配合量は、成分(B)である酸化エチレンの平均付加モル数が6以上であるポリエチレングリコールの配合量よりも多いと良い。この配合量関係であると、毛髪の損傷抑制と毛髪の補修により適する。成分(B)の配合量に対する成分(A)の配合量である「成分(A)の配合量/成分(B)の配合量」は、1.5以上が良く、2.0以上が好ましく、2.5以上がより好ましい。一方で、「成分(A)の配合量/成分(B)の配合量」の上限は、例えば5.0である。
【0020】
上記成分(A)の配合量は、本実施形態の毛髪用組成物において、0.03質量%以上5質量%以下が良く、0.05質量%以上3質量%以下が好ましく、0.07質量%以上1質量%以下がより好ましい。0.03質量%以上であると、毛髪の損傷抑制および毛髪補修がより優れる。5質量%以下であると、本実施形態の毛髪用組成物の低コスト化を図れる。
【0021】
本実施形態の毛髪用組成物において、前記成分(A)としてトレハロースが配合されたものが良い。トレハロースは、毛髪の補修、毛髪の損傷抑制のために好適な成分である。
【0022】
本実施形態の毛髪用組成物において、成分(A)であるトレハロースの配合量は、成分(B)である酸化エチレンの平均付加モル数が6以上であるポリエチレングリコールの配合量よりも多いと良い。この配合量関係であると、毛髪の損傷抑制と毛髪の補修により適する。成分(B)の配合量に対するトレハロースの配合量である「成分(a)の配合量/成分(B)の配合量」は、1.5以上が良く、2.0以上が好ましく、2.5以上がより好ましい。一方で、「成分(a)の配合量/成分(B)の配合量」の上限は、例えば5.0である。
【0023】
上記トレハロースの配合量は、本実施形態の毛髪用組成物において、0.03質量%以上5質量%以下が良く、0.05質量%以上3質量%以下が好ましく、0.07質量%以上1質量%以下がより好ましい。0.03質量%以上であると、毛髪の損傷抑制および毛髪補修がより優れる。5質量%以下であると、本実施形態の毛髪用組成物の低コスト化を図れる。
【0024】
本実施形態の毛髪用組成物には、上記の通り、(B)酸化エチレンの平均付加モル数が6以上であるポリエチレングリコールが配合される。このポリエチレングリコールを配合することで、公知の通り、毛髪の保湿感などを付与できる。また、平均付加モル数が6以上であると、平均付加モル数が6未満のポリエチレングリコールと比べて、優れた毛髪の損傷抑制および毛髪補修が可能となる。
【0025】
上記成分(B)であるポリエチレングリコールにおいて、酸化エチレンの平均付加モル数は、12以上が良く、16以上が好ましい。平均付加モル数が12以上であれば、毛髪の損傷抑制および毛髪補修がより優れる。
【0026】
上記の平均付加モル数は、例えば400以下であり、100以下が良く、60以下が好ましく、40以下がより好ましい。平均付加モル数が小さい程、毛髪表面のみならず、内部の損傷抑制および毛髪補修が可能となる。
【0027】
上記成分(B)としては、例えば、PEG-6、PEG-8、PEG-12、PEG-16、PEG-20、PEG-30、PEG-32、PEG-40、PEG-60、PEG-75、PEG-90、PEG-150、PEG-180、PEG-220、PEG-240、PEG-400、PEG-450が挙げられる(上記において、「PEG」は、ポリエチレングリコールを意味し、「PEG-」に続く整数は、ポリエチレングリコールにおける酸化エチレンの平均付加モル数を表す。)。
【0028】
本実施形態の毛髪用組成物には、成分(B)であるポリエチレングリコールから選ばれた一種又は二種以上を配合すると良い。当該毛髪用組成物における成分(B)の配合量は、0.01質量%以上0.2質量%以下が良く、0.01質量%以上0.1質量%以下が好ましく、0.02質量%以上0.05質量%以下がより好ましい。成分(B)の配合量が0.01質量%以上であると、毛髪の損傷抑制および毛髪補修がより優れ、0.2質量%以下であると、成分(B)の配合で生じる毛髪の感触への影響が低く抑えられる。
【0029】
本実施形態の毛髪用組成物は、上記の通り、(C)イソノナン酸イソトリデシル及び/又はイソノナン酸イソデシルが配合されたものが良く、イソノナン酸イソトリデシルが配合されたものが好ましい。上記成分(C)の配合は、毛髪補修に適する。
【0030】
上記成分(C)の配合量は、本実施形態の毛髪用組成物において、0.03質量%以上5質量%以下が良く、0.04質量%以上3質量%以下が好ましく、0.07質量%以上1質量%以下がより好ましい。0.03質量%以上であると、毛髪の補修がより優れる。5質量%以下であると、本実施形態の毛髪用組成物の低コスト化を図れる。
【0031】
本実施形態の毛髪用組成物には、上記の通り、公知の毛髪用組成物に配合されている原料を更に配合しても良い。その原料としては、毛髪用組成物の用途に応じて適宜選定され、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤、高級アルコール、多価アルコール、油脂、エステル油、シリコーン、高分子化合物である。
【0032】
アニオン界面活性剤としては、例えば、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルカンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩が挙げられる。毛髪用組成物にアニオン界面活性剤を配合する場合、一種又は二種以上を配合すると良い。また、毛髪用組成物におけるアニオン界面活性剤の配合濃度は、当該組成物の用途に応じて適宜設定されるものであるが、例えば0.1質量%以上20質量%以下である。
【0033】
カチオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸アミドアミン塩、エステル含有3級アミン塩、長鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジ長鎖アルキルジメチルアンモニウム塩が挙げられる。毛髪用組成物にカチオン界面活性剤を配合する場合、一種又は二種以上を配合すると良い。また、毛髪用組成物におけるカチオン界面活性剤の配合濃度は、当該組成物の用途に応じて適宜設定されるものであるが、例えば0.1質量%以上20質量%以下である。
【0034】
両性界面活性剤としては、例えば、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルジヒドロキシエチルアミノ酢酸ベタインが挙げられる。毛髪用組成物に両性界面活性剤を配合する場合、一種又は二種以上を配合すると良い。また、毛髪用組成物における両性界面活性剤の配合濃度は、当該組成物の用途に応じて適宜設定されるものであるが、例えば0.1質量%以上10質量%以下である。
【0035】
ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルが挙げられる。毛髪用組成物にノニオン界面活性剤を配合する場合、一種又は二種以上を配合すると良い。また、毛髪用組成物におけるノニオン界面活性剤の配合濃度は、当該組成物の用途に応じて適宜設定されるものであるが、例えば0.1質量%以上20質量%以下である。
【0036】
高級アルコールとしては、例えば、セタノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコールが挙げられる。毛髪用組成物に高級アルコールを配合する場合、一種又は二種以上を配合すると良い。また、毛髪用組成物における高級アルコールの配合濃度は、当該組成物の用途に応じて適宜設定されるものであるが、例えば1質量%以上10質量%以下である。
【0037】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ブチレングリコールが挙げられる。毛髪用組成物に多価アルコールを配合する場合、一種又は二種以上を配合すると良い。また、毛髪用組成物における多価アルコールの配合濃度は、当該組成物の用途に応じて適宜設定されるものであるが、例えば0.1質量%以上20質量%以下である。
【0038】
油脂としては、例えばアボガド油、オリーブ油、シア脂油、月見草油、ツバキ油、ローズヒップ油が挙げられる。毛髪用組成物に油脂を配合する場合、一種又は二種以上を配合すると良い。また、毛髪用組成物における油脂の配合濃度は、当該組成物の用途に応じて適宜設定されるものであるが、例えば0.1質量%以上5質量%以下である。
【0039】
エステル油としては、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸エチル、2-エチルヘキサン酸セチル、イソステアリン酸ヘキシル、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、乳酸ミリスチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ステアリン酸コレステリルが挙げられる。毛髪用組成物にエステル油を配合する場合、一種又は二種以上を配合すると良い。また、毛髪用組成物におけるエステル油の配合濃度は、当該組成物の用途に応じて適宜設定されるものであるが、例えば0.1質量%以上10質量%以下である。
【0040】
シリコーンとしては、例えば、ジメチルシリコーン、環状ジメチルシリコーン、アミノ変性シリコーンが挙げられる。毛髪用組成物にシリコーンを配合する場合、一種又は二種以上を配合すると良い。また、毛髪用組成物におけるシリコーンの配合濃度は、当該組成物の用途に応じて適宜設定されるものであるが、例えば0.1質量%以上50質量%以下である。
【0041】
合成高分子化合物としては、例えば、ポリアクリル酸系高分子(カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸アミド、ポリアクリル酸ナトリウム、(アクリル酸/メタクリル酸アルキル)コポリマーが挙げられる。半合成高分子化合物としては、例えば、セルロース誘導体(ヒドロキシエチルセルロース、カチオン化セルロースなど)、デンプン誘導体(ヒドロキシプロピルデンプンリン酸など)、グアーガム誘導体(カチオン化グアーガム、ヒドロキシプロピル化グアーガムなど)が挙げられる。また、天然高分子としては、例えば、ヒアルロン酸ナトリウムが挙げられる。毛髪用組成物に高分子化合物(合成高分子化合物、半合成高分子化合物、天然高分子化合物)を配合する場合、一種又は二種以上を配合すると良い。また、毛髪用組成物における高分子化合物の配合濃度は、当該組成物の用途に応じて適宜設定されるものであるが、例えば0.1質量%以上5質量%以下である。
【0042】
本実施形態の毛髪用組成物は、毛髪に塗布して毛髪処理する方法で使用される。例えば、(1)濡れた毛髪に塗布後、毛髪を水洗して使用する洗い流すトリートメント、(2)濡れた毛髪又は乾燥した毛髪に塗布後、毛髪を水洗しないで使用する洗い流さないトリートメント、(3)毛髪表面を洗浄するために、濡れた毛髪に塗布後、毛髪を水洗して使用する毛髪洗浄剤として、本実施形態の毛髪用組成物が用いられる。
【0043】
上記毛髪用組成物が、洗い流すトリートメント、洗い流さないトリートメント、又は毛髪洗浄剤として用いられる場合、成分(A)及び(B)と共に配合される原料の組合せ例を挙げれば次の通りである。洗い流すトリートメントにおいて配合される原料の組合せとしては、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、高級アルコール、多価アルコール、油脂、エステル油、シリコーン、合成高分子化合物、及び水である。洗い流さないトリートメントにおいて配合される原料の組合せとしては、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、多価アルコール、油脂、エステル油、シリコーン、合成高分子化合物、天然高分子化合物、及び水である。毛髪洗浄剤において配合される原料の組合せとしては、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤、多価アルコール、半合成高分子化合物、及び水である。
【0044】
本実施形態の毛髪用組成物の使用時の剤型は、特に限定されず、例えば、液状、クリーム状、ゲル状、フォーム状(泡状)、霧状が挙げられる。また、本実施形態の毛髪用組成物が油相と水相を有する場合、外相が水である水中油型の剤型、外相が油相である油中水型の剤型のいずれであっても良い。水中油型の剤型である場合、水の配合量は、例えば60質量%以上である。油中水型の剤型である場合、水の配合量は、例えば10質量%以下である。
【0045】
本実施形態の毛髪用組成物の25℃におけるpHは、適宜設定されるべきものであるが、例えば4.0以上7.0以下である。
【実施例
【0046】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0047】
(毛髪用組成物)
実施例1~3及び比較例1a、1b、2、3の毛髪用組成物を、下記表1~3に記載の通り、トレハロース、PEG-20、及び水を用いて製造した。また、実施例4a、4b及び比較例4の毛髪用組成物を、下記表4に記載の通り、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(30E.O.)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル(10E.0.)(4P.O.)、1,3-ブチレングリコール、トレハロース、PEG-20、イソノナン酸イソトリデシル、及び水を用いて製造した。なお、下記表1~4における配合量の単位は、「質量%」である。
【0048】
(損傷抑制の評価1)
熱による毛髪損傷の抑制の評価を、次の通り行った。酸化染毛剤による処理履歴がある毛髪を日本人女性から採取し、長さ20~30cm、0.5g程度の毛束を作成した。この毛束に対して、次の(1)~(2)の処理を7回行った。(1)実施例1、比較例1a、又は比較例1bの毛髪用組成物に3分間浸漬した後、水洗し、更にドライヤーを用いて乾燥。(2)市販のヘアアイロン(株式会社ティ.アイ.プロス製ヘアアイロン「TIPシェイプアイロンSL」)における一対の発熱体の設定温度を180℃とし、その発熱体間で上記乾燥後の毛髪を10秒間加熱。そして、処理後の各毛束における毛髪30本について、初期弾性率を測定し、平均値を算出した。
【0049】
(損傷抑制の評価2)
アルカリ性脱色剤による毛髪損傷の抑制の評価を、次の通り行った。酸化染毛剤による処理履歴がある毛髪を日本人女性から採取し、長さ20~30cm、3g程度の毛束を作成した。この毛束に対して、次の(1)~(3)の処理を行った。(1)実施例2又は比較例2の毛髪用組成物に5分間浸漬した後、水洗し、更にドライヤーを用いて乾燥。(2)9g程度の脱色剤(ミルボン社製「パウダーブリーチ」1質量部とミルボン社製「オルディーブ OXIDANT 6%」3質量部の混合液)を毛束に塗布後、30分間放置。(3)水洗により脱色剤を毛束から除去した後に、ドライヤーを用いて乾燥。そして、処理後の各毛束における毛髪44本又は56本について、初期弾性率を測定し、平均値を算出した。
【0050】
(毛髪補修の評価1)
酸化染毛剤による処理履歴がある毛髪を日本人女性から採取し、長さ20~30cm、2g程度の毛束を作成した。この毛束を、実施例3又は比較例3の毛髪用組成物に5分間浸漬した後、水洗し、更にドライヤーを用いて乾燥させた。そして、乾燥後の各毛束における毛髪40本について、初期弾性率を測定し、平均値を算出した。
【0051】
(毛髪補修の評価2)
酸化染毛剤による処理履歴がある毛髪を日本人女性から採取し、長さ20~30cm、1g程度の毛束を作成した。この毛束を、実施例4a、4b又は比較例4の毛髪用組成物に4時間浸漬した後、水洗し、更に室温で放置して乾燥させた。そして、乾燥後の各毛束における毛髪29本について、初期弾性率を測定し、平均値を算出した。
【0052】
(初期弾性率の測定)
上記「毛髪補修の評価」、「損傷抑制の評価1」、「損傷抑制の評価2」における初期弾性率の測定を、次の通り行った。毛髪一本につき、20mmの長さでカットし、両端にテープを貼りつけた。その毛髪の毛径を測定した後、この毛髪試料を、蒸留水を入れたシャーレに終夜浸漬した。その後、初期弾性率をTENSILON YTM-II-20(ORIENTEC社製)を用いて、2mm/minの速度で延伸したときの応力を測定し、得られたデータを解析プログラム(X軸を延伸率、Y軸を応力としたときの初期の傾き、いわゆるフックの傾きを算出)を使って求めた。
【0053】
「損傷抑制の評価1」の結果を、実施例1及び比較例1a~1bの毛髪用組成物に配合した成分と共に、下表1に示す。表1に示す通り、成分(A)であるトレハロースと成分(B)である酸化エチレンの平均付加モル数が6以上であるポリエチレングリコール(PEG-20)とを配合した実施例1は、初期弾性率が高い結果であった。つまり、実施例1は、熱による毛髪損傷の抑制に優れていた。
【0054】
【表1】
【0055】
「損傷抑制の評価2」の結果を、実施例2及び比較例2の毛髪用組成物に配合した成分と共に、下表2に示す。表2に示す通り、成分(A)であるトレハロースと成分(B)である酸化エチレンの平均付加モル数が6以上であるポリエチレングリコール(PEG-20)とを配合した実施例2は、初期弾性率が高い結果であった。つまり、実施例2は、アルカリ性の脱色剤による毛髪損傷の抑制に優れていた。
【0056】
【表2】
【0057】
「毛髪補修の評価1」の結果を、実施例3及び比較例3の毛髪用組成物に配合した成分と共に、下表3に示す。表3に示す通り、成分(A)であるトレハロースと成分(B)である酸化エチレンの平均付加モル数が6以上であるポリエチレングリコール(PEG-20)とを配合した実施例3は、初期弾性率が高い結果であった。つまり、実施例3は、毛髪の補修に優れていた。
【0058】
【表3】
【0059】
「毛髪補修の評価2」の結果を、実施例4a、4b、及び比較例4の毛髪用組成物に配合した成分と共に、下表4に示す。表4に示す通り、成分(A)であるトレハロースと成分(B)である酸化エチレンの平均付加モル数が6以上であるポリエチレングリコール(PEG-20)とを配合した実施例4a、4bは、初期弾性率が高い結果であった。つまり、両実施例は、毛髪の補修に優れていた。また、成分(C)であるイソノナン酸イソトリデシルを配合した実施例4bは、最も初期弾性率が高く、毛髪の補修に優れていた。
【0060】
【表4】
【0061】
(参考例)
参考例1~4の毛髪用組成物を、下記表5に記載の通り、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、イソノナン酸イソノニル、及びシクロペンタシロキサンを用いて製造した。なお、下記表5における配合量の単位は、「質量%」である。
【0062】
(示差走査熱量(DSC)測定)
酸化染毛剤による処理履歴がある毛髪を日本人女性から採取し、1.0g程度の毛束を作成した。この毛束に対して、参考例1~4のいずれかの毛髪用組成物に5分間浸漬した後、毛髪表面のその組成物をふき取って一晩放置して、乾燥させた。この乾燥させた毛束を裁断後、毛髪のα-結晶が融解するときの吸熱ピークを、昇温速度10℃/分の条件でDSC測定装置(島津製作所社製「SC-60 Plus」)を使用して測定した。測定は、裁断した毛髪から2回採取し、2回の測定値の平均値を算出した。
【0063】
「DSC測定」の結果を、参考例1~4の毛髪用組成物に配合した成分と共に、下表5に示す。表5に示す通り、成分(C)であるイソノナン酸イソデシル又はイソノナン酸イソトリデシルを配合した参考例1、2は、参考例3、4よりもDSC測定値が高く、参考例2の測定値は、最も高い結果であった。つまり、毛髪損傷の抑制に関して、イソノナン酸イソデシルが優れ、イソノナン酸イソトリデシルがより優れていた。
【0064】
【表5】