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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】機械加工支援システム及び切削装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 15/00 20060101AFI20240222BHJP
   G05B 19/18 20060101ALI20240222BHJP
   G06F 16/90 20190101ALI20240222BHJP
【FI】
B23Q15/00 301H
B23Q15/00 301C
G05B19/18 S
G06F16/90 100
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018182668
(22)【出願日】2018-09-27
(65)【公開番号】P2020049606
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-08-17
【審判番号】
【審判請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 大
(72)【発明者】
【氏名】山田 良彦
(72)【発明者】
【氏名】東 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】酒井 隼樹
(72)【発明者】
【氏名】則竹 茂年
(72)【発明者】
【氏名】寺本 一成
【合議体】
【審判長】刈間 宏信
【審判官】鈴木 貴雄
【審判官】田々井 正吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-97569(JP,A)
【文献】特開平5-289903(JP,A)
【文献】特開平10-319180(JP,A)
【文献】特開2009-282909(JP,A)
【文献】特開2018-5832(JP,A)
【文献】特開平5-169507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 15/00
G05B 19/18
G06F 16/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械加工方法及び機械加工設備に関するノウハウを表す各種情報を探索可能且つ更新可能に記憶するデータベースと、
ソルバを実行することにより、工作物の加工要件を表す初期条件を第一探索条件として前記データベースを探索し、前記第一探索条件に応じた解として、前記機械加工方法及び前記機械加工設備を用いて前記工作物を加工する際の推奨加工条件を生成する第一制御部と、
前記推奨加工条件に基づいて前記工作物に施した加工の加工結果を表す加工結果情報を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された前記加工結果情報に応じて、前記機械加工方法及び前記機械加工設備に関する質問を入力する質問入力部と、
前記ソルバを実行することにより、少なくとも前記質問入力部に入力された前記質問に基づく第二探索条件を設定して前記データベースを探索し、前記第二探索条件に応じた解を前記質問に対する回答として導く第二制御部と、
前記第一制御部による前記ソルバの実行結果、及び、前記第二制御部による前記ソルバの実行結果を表示する表示部と、を備え、
前記表示部は、前記第一制御部による前記ソルバの実行結果として、
前記推奨加工条件と、
視覚的に表示されていて前記ソルバが前記データベースを探索して前記推奨加工条件を生成するための複数の要因からなる第一探索過程及び前記第一探索過程における複数の要因間の関連性を表す第一探索経路を表す第一経緯情報であって、前記推奨加工条件の生成における前記第一探索過程及び前記第一探索経路とは異なる要因及び経路とは視覚的に区別して表示される前記第一経緯情報と、
前記推奨加工条件の生成における前記第一探索過程及び前記第一探索経路とは異なる要因及び経路と、を表示し、
前記表示部は、前記第二制御部による前記ソルバの実行結果として、
前記回答を構成する、前記質問の解決に関連する複数の対策案
それぞれの前記対策案の前記質問の解決への確からしさを表す確信度と、
前記回答を構成する、視覚的に表示されていて前記ソルバが前記データベースを探索して前記対策案を前記解として導くための複数の要因からなる第二探索過程及び前記第二探索過程における複数の要因間の関連性を表す第二探索経路を表す第二経緯情報であって、前記回答を構成しない複数の要因及び前記回答を構成しない複数の要因間の関連性を表す経路とは視覚的に区別して表示される前記第二経緯情報と、
前記回答を構成しない、複数の要因、及び、前記回答を構成しない複数の要因間の関連性を表す経路と、表示する、機械加工支援システム。
【請求項2】
前記データベースは、知識データベースであり、
前記知識データベースは、前記質問と前記質問を生じさせる複数の前記要因との関連付け、及び、前記要因と前記要因との関連付けを、度合を表す粒度を用いて設定されており、
前記第一制御部及び前記第二制御部によって実行される前記ソルバは、前記粒度に基づいて前記解を導く、請求項1に記載の機械加工支援システム。
【請求項3】
前記推奨加工条件、及び、前記機械加工方法及び前記機械加工設備に関する予め設定された各種設定情報のうちの少なくとも前記推奨加工条件を記憶する記憶部を有し、
前記表示部は、前記第一経緯情報として、前記初期条件と前記推奨加工条件との関連性を複数の要因を介して複数の第一探索経路を表示する、請求項1又は2に記載の機械加工支援システム。
【請求項4】
前記取得部は、前記機械加工方法による前記工作物の加工状態、又は、前記機械加工設備の作動状態を計測した計測情報を取得する、請求項1乃至請求項のうちの何れか一項に記載の機械加工支援システム。
【請求項5】
前記第二制御部によって実行される前記ソルバは、
入力された前記第二探索条件に基づいて前記データベースを探索し、前記第二探索条件に応じた第一解を導く第一ソルバと、
少なくとも、前記質問及び前記加工結果情報に基づいて前記第二探索条件を設定すると共に前記第一ソルバと協働して、前記回答を第二解として導く第二ソルバと、から構成される、請求項1乃至請求項のうちの何れか一項に記載の機械加工支援システム。
【請求項6】
前記取得部によって取得された前記加工結果情報に基づいて、前記データベースに記憶されている前記各種情報を更新するデータベース更新部を備えた、請求項1乃至請求項のうちの何れか一項に記載の機械加工支援システム。
【請求項7】
前記データベース更新部は、少なくとも、前記回答に従う加工の前記加工結果情報に基づいて、前記データベースに記憶されている前記各種情報を更新する、請求項に記載の機械加工支援システム。
【請求項8】
前記工作物を加工する際の加工条件と、前記工作物の加工状態及び前記工作物を加工する前記機械加工設備の動作状態と、前記加工結果情報と、を訓練データセットとして学習する機械学習部を備えた、請求項1乃至請求項のうちの何れか一項に記載の機械加工支援システム。
【請求項9】
前記回答を構成する複数の前記対策案は、前記確信度が大きい程優先されるように優先順位が付されて、前記表示部に表示される、請求項1乃至請求項のうちの何れか一項に記載の機械加工支援システム。
【請求項10】
請求項1乃至請求項のうちの何れか一項に記載の機械加工支援システムと、
切れ刃を有する工具を保持する工具保持装置と、
前記工作物を保持する工作物保持装置と、
前記工作物保持装置に保持された前記工作物を所定方向に送る工作物送り装置と、
前記工作物に対する前記工具の相対的な移動を行う工具変位装置と、
前記工具変位装置の作動を制御する制御装置と、を備えた切削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械加工における作業を支援する機械加工支援システム及び機械加工支援システムを備えた切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、下記特許文献1に開示された故障診断エキスパートシステムが知られている。この従来の故障診断エキスパートシステムにおいては、記憶手段に格納される専門家の知識に因果連鎖木の探索経路の制限又は枝刈りに用いるための原因候補条件を付与し、推論手段が、原因の推論を行う際に、推論された原因が原因候補条件に格納されている条件の事象を辿ってきたか否かを判別することにより原因の候補を決定するようになっている。
【0003】
又、従来から、例えば、下記特許文献2に開示された知見・ノウハウの体系化支援装置も知られている。この従来の体系化支援装置は、製品構造情報モデルと工程構成情報モデルを統合化した統合モデルを格納した製品・工程モデルDBを備えており、統合モデルをベースとして、製品の設計モデルの不具合のモデル化に加え、生準・製造における不具合もモデル化するようになっている。そして、この従来の体系化支援装置においては、統合モデルに基づいて、実体と状態のそれぞれを属性とメソッドにより表現した実体/状態データモデルを品質知識DBに格納しており、生産システムにおける知見・ノウハウを体系的に記述可能としている。
【0004】
更に、従来から、例えば、下記特許文献3に開示された原因事象発生確率(寄与率)算出装置も知られている。この従来の原因事象発生確率(寄与率)算出装置は、論理ゲートを介してツリー構造の各部に事象を配置してなるFTA情報に基づいて事象の発生確率(寄与率)を算出するものであり、原因事象の結果事象に対する寄与率を算出する手段を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平3-108030号公報
【文献】特開2007-241774号公報
【文献】特開2007-241861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来のシステム及び各装置は、予め想定された問題を解決するための対策案が表示(教示)されるものであり、表示(教示)される対策案が個々に発生する問題を解決するための効果的な対策に合致しない場合がある。この場合、特に、機械加工の経験が足りない作業者(未熟作業者)にとっては、現に発生している問題を解決することが困難であり、通常、機械加工の経験が豊富な作業者(熟練作業者)に発生している問題の解決を依頼することになる。これにより、熟練作業者は、自身の作業を一旦中断して発生した問題を解決しなければならず、生産性の低下を招く虞がある。又、熟練作業者が退職した場合、蓄積に時間を要する知見や知識、経験、考え方等の貴重なノウハウの伝承が困難になる。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためのなされたものであり、その目的は、機械加工方法及び機械加工設備に関する質問に対してノウハウに基づく回答と共に回答を導く過程も表示する機械加工支援システム及びこの機械加工支援システムを備えた切削装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、
機械加工方法及び機械加工設備に関するノウハウを表す各種情報を探索可能且つ更新可能に記憶するデータベースと、
ソルバを実行することにより、工作物の加工要件を表す初期条件を第一探索条件として前記データベースを探索し、前記第一探索条件に応じた解として、前記機械加工方法及び前記機械加工設備を用いて前記工作物を加工する際の推奨加工条件を生成する第一制御部と、
前記推奨加工条件に基づいて前記工作物に施した加工の加工結果を表す加工結果情報を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された前記加工結果情報に応じて、前記機械加工方法及び前記機械加工設備に関する質問を入力する質問入力部と、
前記ソルバを実行することにより、少なくとも前記質問入力部に入力された前記質問に基づく第二探索条件を設定して前記データベースを探索し、前記第二探索条件に応じた解を前記質問に対する回答として導く第二制御部と、
前記第一制御部による前記ソルバの実行結果、及び、前記第二制御部による前記ソルバの実行結果を表示する表示部と、を備え、
前記表示部は、前記第一制御部による前記ソルバの実行結果として、
前記推奨加工条件と、
視覚的に表示されていて前記ソルバが前記データベースを探索して前記推奨加工条件を生成するための複数の要因からなる第一探索過程及び前記第一探索過程における複数の要因間の関連性を表す第一探索経路を表す第一経緯情報であって、前記推奨加工条件の生成における前記第一探索過程及び前記第一探索経路とは異なる要因及び経路とは視覚的に区別して表示される前記第一経緯情報と、
前記推奨加工条件の生成における前記第一探索過程及び前記第一探索経路とは異なる要因及び経路と、を表示し、
前記表示部は、前記第二制御部による前記ソルバの実行結果として、
前記回答を構成する、前記質問の解決に関連する複数の対策案
それぞれの前記対策案の前記質問の解決への確からしさを表す確信度と、
前記回答を構成する、視覚的に表示されていて前記ソルバが前記データベースを探索して前記対策案を前記解として導くための複数の要因からなる第二探索過程及び前記第二探索過程における複数の要因間の関連性を表す第二探索経路を表す第二経緯情報であって、前記回答を構成しない複数の要因及び前記回答を構成しない複数の要因間の関連性を表す経路とは視覚的に区別して表示される前記第二経緯情報と、
前記回答を構成しない、複数の要因、及び、前記回答を構成しない複数の要因間の関連性を表す経路と、表示する、機械加工支援システムにある。
【0009】
又、本発明の他の態様に係る切削装置は、上記機械加工支援システムと、切れ刃を有する工具を保持する工具保持装置と、工作物を保持する工作物保持装置と、工作物保持装置に保持された工作物を所定方向に送る工作物送り装置と、工作物に対する工具の相対的な移動を行う工具変位装置と、工具変位装置の作動を制御する制御装置と、を備える。
【0010】
これらによれば、機械加工支援システムにおいては、制御部は、質問入力部を介して機械加工方法(切削加工方法)及び機械加工設備(切削装置)に関する質問が入力されると、入力された質問に基づく探索条件を設定してノウハウを表す各種情報を探索可能且つ更新可能に記憶するデータベースを探索することができる。そして、制御部は、質問の解決に関連する複数の対策案、それぞれの対策案の確信度、及び、探索過程(複数の要因)及び探索経路(要因間の関連性)を表す経緯情報を表示部に表示して提示することができる。
【0011】
これにより、例えば、機械加工(切削加工)の知見(知識)や経験の足りない未熟作業者であっても提示された回答に従って機械加工方法(切削加工方法)及び機械加工設備(切削装置)に関する質問(問題)を解決することができ、熟練作業者に頼る機会を減少させることができる。従って、熟練作業者は、自身の作業を中断する機会が減少し、その結果、熟練作業者の生産性が低下することを抑制することができる。
【0012】
又、データベースの各種情報は、機械加工(切削加工)の知見(知識)や経験の豊富な熟練作業者によって得られたノウハウとして記憶される。従って、仮に熟練作業者が退職した場合であっても、貴重なノウハウを永続的に記憶して利用することができ、その結果、貴重なノウハウを脈々と受け継いでいくことができる。更に、未熟作業者に提示される回答には、経緯情報が含まれる。これにより、未熟作業者は、提示された対策案を得るための要因や要因間の関連性、即ち、要因解析における考え方を習得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る切削装置の全体構成を示す平面図である。
図2】切削装置の断面図である。
図3】制御装置のブロック図である。
図4】機械加工支援システムのブロック図である。
図5】知識データベースに更新可能に記憶される各種情報を説明するための図である。
図6図4に示す制御部によって実行される加工支援ツールプログラムのフローチャートである。
図7図4に示す制御部による推奨加工条件の設定を説明するための図である。
図8図4に示す制御部によって設定された推奨加工条件説明するための図である。
図9図4に示す制御部によって生成される回答に含まれる経緯情報及び確信度(優先順位)を説明するための図である。
図10図4に示す制御部によって生成される回答に含まれる対策案を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の機械加工支援システムの一実施形態について図面を参照しながら説明する。本実施形態のおいては、機械加工支援システムを、機械加工の一つである切削加工を行う切削装置1に適用した場合について説明する。
【0015】
(1.切削装置1の全体構成)
切削装置1は、図1に示すように、旋盤である。切削装置1は、工作物保持装置10と、工作物送り装置20と、工具保持装置30と、工具としてのバイト40と、制御装置100と、を備えている。
【0016】
工作物保持装置10は、工作物W(例えば、単純な円柱等)を回転可能に保持する。工作物保持装置10は、主軸台11と、心押台12と、を備えている。主軸台11は、ハウジングとしての主軸台本体13と、主軸台本体13に回転可能に支持されて工作物Wの軸線方向に沿った方向における一端側(図1において紙面右側)を回転可能に支持する回転主軸14と、回転主軸14を回転させるための駆動力を付与する回転主軸モータ15(図3を参照)と、を備えている。心押台12は、ハウジングとしての心押台本体16と、工作物Wの軸線方向に沿った方向における他端側(図1において紙面左側)を回転可能に支持する心押センタ17と、を備える。
【0017】
工作物保持装置10は、工作物Wの回転軸線AwをX軸方向と平行に向けた状態で、回転軸線Awに沿った方向における両端を回転主軸14と心押センタ17とによって支持する。そして、工作物Wは、回転主軸モータ15が駆動することにより、回転軸線Awの周りに回転する。
【0018】
工作物送り装置20は、工作物Wを所定方向であるX軸方向へ送る。工作物送り装置20は、送り台21と、X軸駆動装置22(図3を参照)と、を備えている。尚、図1及び図2においては、X軸駆動装置22の図示が省略されている。送り台21は、ベッド2の上面をX軸方向へ移動可能に設けられる。具体的に、ベッド2の上面には、図2に示すように、X軸方向に沿って延びる一対のX軸ガイドレール23が設けられ、送り台21は、X軸ガイドレール23に案内されながらX軸方向へ移動可能に設置される。X軸駆動装置22は、ベッド2に対して送り台21をX軸方向(即ち、工作物Wの回転軸線Aw方向)に沿って送るねじ送り装置である。
【0019】
送り台21の上面には、主軸台11及び心押台12が設置される。従って、主軸台11及び心押台12に支持された工作物Wは、X軸駆動装置22を駆動して送り台21をX軸方向に沿って移動させることにより、工作物Wの回転軸線Awに沿った方向に送られる。
【0020】
工具保持装置30は、工具としてのバイト40を回転不能に保持する。工具保持装置30は、コラム31と、工具変位装置としてのZ軸駆動装置32(図3を参照)と、サドル33と、ホルダ34と、を備えている。尚、図1及び図2においては、Z軸駆動装置32の図示が省略されている。
【0021】
コラム31は、ベッド2の上面をZ軸方向に沿って移動可能となるように設けられている。具体的に、ベッド2の上面には、Z軸方向に沿って延びる一対のZ軸ガイドレール35が設けられ、コラム31は、Z軸ガイドレール35に案内されながらZ軸方向に沿って移動可能に設置される。Z軸駆動装置32は、ベッド2に対してコラム31をZ軸方向に沿って送るねじ送り装置である。
【0022】
ホルダ34は、サドル33に対して固定されており、バイト40を着脱可能に保持する。これにより、ホルダ34に保持されたバイト40は、コラム31及びサドル33の移動に伴い、ベッド2に対してZ軸方向(送り方向であるX軸方向に直交する方向)に沿って平行移動する。
【0023】
制御装置100は、図3に示すように、工作物回転制御部110と、送り制御部120と、変位制御部130と、加工条件入力部140と、を含んで構成されている。工作物回転制御部110は、回転主軸モータ15の駆動制御を行い、回転主軸14と心押センタ17とによって支持された工作物Wを回転させる。
【0024】
送り制御部120は、X軸駆動装置22の駆動制御を行い、送り台21をX軸方向に沿って移動させることにより、工作物保持装置10に保持された工作物WをX軸方向に沿って送る。変位制御部130は、Z軸駆動装置32の駆動制御を行い、工具保持装置30に装着されたバイト40をZ軸方向に沿って平行移動させる。
【0025】
加工条件入力部140は、作業者によって操作されるものであり、作業者が工作物Wを切削加工する際の加工条件を入力する。具体的に、加工条件入力部140は、バイト40(即ち、ホルダ34)のZ軸方向への変位量やバイト40に対する工作物WのX軸方向への相対的な送り速度、切削速度、切込量、工作物Wの材質等を含む切削加工に関する各種加工条件が入力される。加工条件入力部140は、工作物回転制御部110、送り制御部120及び変位制御部130と接続され、作業者によって入力された加工条件を工作物回転制御部110、送り制御部120及び変位制御部130に出力する。
【0026】
(2.機械加工支援システム200の構成)
次に、切削装置1(機械加工設備)による切削加工(機械加工)を支援する機械加工支援システム200について説明する。機械加工支援システム200は、切削装置1を操作する作業者、例えば、切削装置1を用いた切削加工の経験が浅い(足りない)未熟作業者に対して、切削装置1を用いた切削加工の経験が豊富な熟練作業者の知見(知識)や経験に基づいた切削加工(機械加工)に関するノウハウを表す各種情報を提供し、未熟作業者による切削装置1を用いた切削加工を支援するものである。
【0027】
このため、機械加工支援システム200は、図4に示すように、パーソナルコンピュータ210と、機械加工において生じた課題(問題)の要因を突き詰めるためのデータベースとしての知識データベース220と、を備えている。又、本実施形態における機械加工支援システム200は、パーソナルコンピュータ210によって実行される第一ソルバ(ソルバ)としての駆動ソルバ230と、パーソナルコンピュータ210によって実行される第二ソルバ(ソルバ)としての解決ソルバ240と、を備えている。
【0028】
パーソナルコンピュータ210は、図4に示すように、CPU、ROM、RAMを主要構成部品する制御部211を備えており、制御部211が機械加工支援システム200の作動を統括的に制御する。このため、制御部211には、入力部212、記憶部213、表示部214、インターフェース215及びデータベース更新部216が通信可能に接続されている。
【0029】
質問入力部及び取得部としての入力部212は、キーボードやマイクを有しており、主として、未熟作業者によって操作されて切削加工方法(機械加工方法)及び切削装置1(機械加工設備)に関する質問を入力する。記憶部213は、後述する加工支援ツールプログラムを含む各種プログラム及び加工支援ツールプログラムの実行によって取得される推奨加工条件を記憶する。又、記憶部213は、駆動ソルバ230と解決ソルバ240とを記憶しており、制御部211に駆動ソルバ230と解決ソルバ240とを出力する。
【0030】
表示部214は、加工支援ツールプログラムの実行により得られた後述する回答を含む処理内容を表示する。取得部としてのインターフェース215は、切削装置1と通信可能に接続されて種々の情報を取得する。データベース更新部216は、知識データベース220に蓄積された各種情報を更新する。
【0031】
知識データベース220は、パーソナルコンピュータ210(具体的には、制御部211及びデータベース更新部216)と通信可能に接続されている。知識データベース220は、熟練作業者が有する知見(知識)や経験に基づいた切削加工(機械加工)に関する各種情報、即ち、ノウハウを電子データ化(デジタル化)して更新可能に記憶している。
【0032】
尚、知識データベース220は、パーソナルコンピュータ210と接続されると共に、図示しないネットワーク回線を介して他のパーソナルコンピュータと接続されていても良い。この場合には、熟練作業者は、パーソナルコンピュータ210の入力部212及び他のパーソナルコンピュータの入力部(キーボード等)を用いて、各種情報(ノウハウ)を知識データベース220に入力することができる。
【0033】
(2-1.知識データベース220に蓄積(登録)されるノウハウ)
ここで、知識データベース220に蓄積される切削加工方法(機械加工方法)及び切削装置1(機械加工設備)に関するノウハウを具体的に例示しておく。ここで、以下に説明するノウハウは、機械加工における問題を生じさせる複数の要因(要因要素)と、問題及び要因の粒度と、問題と要因との間の接続(関連性)及び要因と要因との間の接続(関連性)と、を言う。尚、粒度とは、例えば、単に「1~5」のようなランク付け、或いは、「大中小」や数値表記によって表されるレンジである。
【0034】
具体的に、熟練作業者が機械加工において発生した問題として、例えば、バイト40の摩耗が大きいことに対応するノウハウを知識データベース220に蓄積(登録)する場合を例示する。熟練作業者は、図5に示すように、先ず「問題」として「工具の摩耗」を入力する。
【0035】
そして、熟練作業者は、「工具の摩耗」を引き起こしていると考えられる要因Aとして「切削力」を入力し、要因Bとして「切込量」を入力する。尚、要因については、二つに限られることはなく、三つ以上の要因として、例えば、「切削熱」や「化学摩耗」、「切削速度」、「送り量」、「工具材質」等を入力可能であることは言うまでもない。
【0036】
又、熟練作業者は、図5に示すように、「問題」の「粒度」として、例えば、数値範囲(摩耗量)を入力すると共に、数値範囲(摩耗量)が大きくなるにつれて大きくなるように「1~5」の数字による段階表記で表される「ランク」を入力する。又、熟練作業者は、「要因A」の「粒度」として、例えば、数値範囲(切削力)を入力すると共に、数値範囲(切削力)が小さくなることに対応して「大中小」の文字による段階表記や数値による範囲表記で表される「レンジ」を入力する。又、熟練作業者は、「要因B」の「粒度」として、例えば、数値範囲(切込量)を入力すると共に、数値範囲(切込量)が大きくなるにつれて大きくなるように「1~4」の数字による段階表記による「ランク」を入力する。ここで、「ランク」及び「レンジ」については、例えば、数値を用いて互いに関連付ける(紐付けする)ことが可能である。これにより、熟練作業者が「ランク」又は「レンジ」を入力する場合、例えば、入力された「ランク」に対応する「レンジ」も入力されたり、逆に、入力された「レンジ」に対応する「ランク」も入力されたりする、即ち、「ランク」と「レンジ」とを連動させることができる。
【0037】
更に、熟練作業者は、図5にて矢印にて示すように、「問題」と「要因A」との間の接続(関連性)を入力すると共に、「要因A」と「要因B」との間の接続(関連性)を入力する。具体的に、熟練作業者は、「切削力」が大きく、且つ、「切込量」が大きい状態で切削加工が行われた場合に、「工具の摩耗」が大きくなるという関連性が存在することを、これまでの経験から知っている。
【0038】
従って、熟練作業者は、この経験に基づき、換言すれば、関連性に基づき、図5に示すように、「問題」として「工具の摩耗」が極めて大きい「ランク5」と「要因A」である「切削力」が大きい「レンジ大」との接続を入力する。加えて、熟練作業者は、「要因A」である「切削力」の「レンジ大」と「要因B」である「切込量」が比較的大きい「ランク2」との接続を入力する。
【0039】
同様に、熟練作業者は、「問題」である「工具の摩耗」の比較的大きな「ランク4」及び「ランク3」と「要因A」である「切削力」の比較的大きな「レンジ中」との接続を入力する。加えて、熟練作業者は、「要因A」である「切削力」の「レンジ中」と「要因B」である「切込量」が大きい「ランク3」との接続を入力する。
【0040】
更に、熟練作業者は、「問題」である「工具の摩耗」の比較的小さな「ランク2」及び「ランク1」と「要因A」である「切削力」の小さな「レンジ小」との接続を入力する。加えて、熟練作業者は、「要因A」である「切削力」の「レンジ小」と「要因B」である「切込量」が極めて大きい「ランク4」との接続を入力する。
【0041】
このように、熟練作業者は、問題を解決できるように突き詰めた(特定した)複数の要因及びこれらの要因の間の接続(関連性)を、電子データ化(デジタル化)したノウハウとして知識データベース220に記憶(登録)する。尚、熟練作業者は、例えば、工作物Wの面性状を高品位化することを問題とした場合には、この問題を解決できるように突き詰めた(特定した)複数の要因及びこれらの要因の間の接続(関連性)を、電子データ化(デジタル化)したノウハウとして知識データベース220に記憶(登録)することも可能である。
【0042】
再び、図4に戻り、第一ソルバとしての駆動ソルバ230は、制御部211により実行されて、知識データベース220に記憶されて蓄積された切削加工に関する各種情報を探索して第一解として後述する探索過程及び探索経路を導くものである。第二ソルバとしての解決ソルバ240は、制御部211により実行されて、未熟作業者によって入力された質問等に基づき探索条件を生成して駆動ソルバ230に出力すると共に、駆動ソルバ230から得られた経緯情報に基づいて第二解として未熟作業者によって入力された質問等に対する回答を生成して表示部214に表示させるものである。
【0043】
これにより、制御部211がソルバとしての駆動ソルバ230と解決ソルバ240とを協働させるように実行することにより、駆動ソルバ230は、解決ソルバ240によって生成された探索条件に基づいて知識データベース220を探索(検索)する。そして、駆動ソルバ230は、未熟作業者によって入力された切削加工(機械加工)に関する加工条件や工作物Wの加工結果に対する質問(以下、「未熟作業者による質問等」と称呼する。)に対応する(回答となる)情報即ち複数の要因を抽出する。
【0044】
一方、解決ソルバ240は、駆動ソルバ230によって抽出された情報(複数の要因)に基づいて未熟作業者による質問等に対する回答を生成する。又、解決ソルバ240は、回答を生成する際に考慮した複数の要因である探索過程及び要因間の接続(関連性)である探索経路を含めて回答を生成する。尚、以下の説明において、探索過程及び探索経路を合わせて「経緯情報」とも称呼することがある。
【0045】
そして、パーソナルコンピュータ210の制御部211は、駆動ソルバ230及び解決ソルバ240の実行により後述する複数の対策案を生成すると共に探索過程及び探索経路(即ち、経緯情報)を生成すると、表示部214に生成した複数の対策案及び経緯情報を含む回答を表示して未熟作業者に教示する。以下、この加工支援について、図6図9を用いて具体的に説明する。
【0046】
(3.加工支援の詳細)
パーソナルコンピュータ210の制御部211(より詳しくは、制御部211を構成するCPU。以下、同じ。)は、図6に示す加工支援ツールプログラムをステップS10にて開始する。そして、制御部211は、続くステップS11にて、切削加工(機械加工)に関連する初期条件を入力する。
【0047】
初期条件は、入力部212を用いて未熟作業者により入力されるものであり、図7に示すように、例えば、工作物Wを形成する被削材緒言(被削材熱特性、被削材硬度、被削材伸び)と工作物Wの加工要件(高品位化、高能率化、工具長寿命化)等である。この場合、例えば、被削材緒言として被削材硬度は、上述した「要因A」及び「要因B」と同様に、「ランク」や「レンジ」を付して、知識データベース220に蓄積(登録)されている。制御部211は、初期条件が入力されると、ステップS12に進む。
【0048】
再び、図6に戻り、ステップS12においては、制御部211は記憶部213に記憶されている駆動ソルバ230及び解決ソルバ240を読み込んで実行し、駆動ソルバ230と解決ソルバ240とが協働して推奨加工条件を生成する。具体的に、駆動ソルバ230は、前記ステップS11にて入力された初期条件を探索条件として知識データベース220の内部を検索し、第一解として複数の要因を抽出して解決ソルバ240に出力する。
【0049】
解決ソルバ240は、出力された複数の要因、即ち、熟練作業者によって入力されたノウハウを用いて第二解として推奨加工条件を生成する。制御部211は、駆動ソルバ230及び解決ソルバ240を実行して推奨加工条件を生成すると、ステップS13に進む。尚、推奨加工条件の生成については、後に詳述する。
【0050】
ステップS13においては、制御部211は、前記ステップS12にて生成した推奨加工条件を出力する。具体的に、制御部211は、取得した推奨加工条件を表示部214に出力する。これにより、表示部214は、図8に示すように、出力された推奨加工条件を表示し、未熟作業者に対して推奨加工条件を教示する。ここで、制御部211は、生成して教示した推奨加工条件を記憶部213に記憶する。
【0051】
未熟作業者は、表示部214に表示された推奨加工条件を、切削装置1の制御装置100を構成する加工条件入力部140に入力する。これにより、切削装置1においては、制御装置100が、加工条件入力部140に入力された推奨加工条件に基づいて、回転主軸モータ15、X軸駆動装置22及びZ軸駆動装置32を作動させて、工作物Wを切削加工する。
【0052】
ところで、本実施形態においては、推奨加工条件は、知識データベース220に記憶された各種情報、即ち、熟練作業者によって入力されたノウハウに基づいて生成されて教示される。この場合、未熟作業者は、自身が入力した「被削材緒言」と「加工要件」とを実現するために、どのように推奨加工条件が設定されたのかについて確認することができる。具体的には、未熟作業者は、知識データベース220に記憶されている複数の要因とこれらの要因の間の関連性、即ち、探索過程と探索経路とを確認することができる。
【0053】
具体的に説明すると、図7にて太実線により囲んで示すように、未熟作業者が初期条件として入力した「被削材緒言」のうちの「被削材硬度」を選択し、推奨加工条件のうちの「回転送り」を選択すると、「被削材硬度」と「回転送り」とを結びつける要因(探索過程)と要因間の関連性(探索経路)が教示される。尚、図7においては、探索過程を太破線により囲んで示し、探索経路を太実線により示す。
【0054】
このように、機械加工支援システム200においては、駆動ソルバ230が探索した探索過程及び探索過程(要因)間の探索経路(関連性)を提示することができる。これにより、未熟作業者は、「被削材硬度」が大の場合になぜ「回転送り」を小さくする必要があるかということを容易に理解することができる。
【0055】
即ち、図7に示すように、入力因子が「被削材硬度」の場合は、「工具要求性能」のうちの「要求工具刃先強度」を確保する必要がある。そして、この「要求工具刃先強度」を確保するためには、切削加工時において「工具緒言」のうちの「バイトすくい角」、「バイト逃げ角」及び「バイトR」が適切に維持される必要がある。このため、これらの「工具緒言」を維持するためには、「回転送り」を小さくする必要があるという出力因子即ち加工条件が得られることを未熟作業者は理解することができる。
【0056】
又、図7に示すように、入力因子である「高品位化」を実現する場合は、「工具要求性能」のうちの「要求推定面粗さ」を確保する必要がある。そして、この「要求推定面粗さ」を確保するためには、切削加工時において「工具緒言」のうちの「バイトR」が適切に維持される必要がある。
【0057】
このため、「バイトR」を維持するためには、「回転送り」を小さくする必要があるという出力因子即ち加工条件が得られることを未熟作業者は理解することができる。尚、「高品位化」を実現する場合には、直接的に、加工条件として「回転送り」を小さくする必要があることも、未熟作業者は理解することができる。
【0058】
このように、機械加工支援システム200においては、入力因子と出力因子との間における経路過程である複数の要因とこれら複数の要因の繋がり(関連性)である経路探索を提示(所謂、見える化)することができる。これにより、未熟作業者は、所望の状態となる切削加工を実現するための加工条件を設定する際に、検討すべき要因及び要因間の繋がり(関連性)を容易に習得することができる。
【0059】
そして、未熟作業者に提示される経路過程及び経路探索は、熟練作業者によって入力されたノウハウに基づくものである。このため、未熟作業者は、検討すべき要因及び要因間の繋がり(関連性)を習得することによってノウハウを伝承することになる。
【0060】
未熟作業者は、推奨加工条件に基づいて切削加工された工作物Wについて、形状や面性状等の仕上がり具合を判断し、加工結果の良否を判断する。未熟作業者は、加工結果の良否を、加工結果情報として入力部212を介して制御部211に入力する。尚、このように、未熟作業者が加工結果の良否即ち加工結果情報を入力することに代えて、パーソナルコンピュータ210のインターフェース215と切削装置1の制御装置100との間に計測装置(図示省略)が接続されている場合には、計測装置から計測情報がインターフェース215を介して入力され、自動的に加工結果情報が制御部211に入力されるように構成することも可能である。
【0061】
制御部211は、加工支援ツールプログラムのステップS14において、上述したように入力された加工結果が不良であるか否かを判定する。即ち、制御部211は、未熟作業者によって入力された(判断された)加工結果情報に基づいて加工結果が不良であれば、ステップS14にて「Yes」と判定してステップS15以降の各ステップ処理を実行する。
【0062】
一方、制御部211は、未熟作業者によって入力された(判断された)加工結果情報に基づいて加工結果が良好であれば、ステップS14にて「No」と判定してステップS19に進む。そして、制御部211は、ステップS19にて、後述するように知識データベース220の記憶内容を更新する。
【0063】
前記ステップS14における判定処理により加工結果が不良の場合、制御部211は、ステップS15のステップ処理を実行する。そして、制御部211は、ステップS15にて、未熟作業者に対し、推奨加工条件に基づいて切削加工された工作物Wの加工結果を良好とするために改善すべき問題(課題)或いは切削装置1に生じた問題(課題)について質問を入力するように促す。
【0064】
具体的に、制御部211は、表示部214に対して、未熟作業者が質問を入力可能な画面表示を表示させる。これに応じて、未熟作業者は、推奨加工条件に基づいて切削加工を行った結果、例えば、バイト40に生じる摩耗が大きいことが分かった場合、表示部214に表示された画面表示に従って、「工具の摩耗が大きい」と未熟作業者による質問等として入力部212を用いて入力する。
【0065】
前記ステップS15にて未熟作業者による質問等が入力されると、制御部211は、ステップS16にて入力された未熟作業者による質問等に対する回答を構成する対策案を生成する。具体的に、制御部211は、記憶部213に記憶されている駆動ソルバ230及び解決ソルバ240を読み込んで実行する。
【0066】
これにより、解決ソルバ240は、未熟作業者による質問等を探索条件とし、協働する駆動ソルバ230に出力して入力する。駆動ソルバ230は、解決ソルバ240からの探索条件に基づき、知識データベース220の内部を探索し、探索過程である複数の要因及び要因の間の関連性を表す探索経路を取得すると共に対策案を取得し、取得した探索過程、探索経路及び対策案を解決ソルバ240に出力する。そして、制御部211は、探索過程、探索経路及び対策案が解決ソルバ240に出力されると、ステップS16に進む。
【0067】
ステップS16においては、制御部211は、解決ソルバ240が取得した、未熟作業者による質問等(例えば、「工具の摩耗が大きい」)に対する回答として、表示部214に探索過程及び探索経路を表示させると共に、複数の対策案に対策案の質問の解決への確からしさを表す確信度即ち優先順位を付して表示させる。以下、このことを具体的に説明する。
【0068】
図9に示すように、制御部211は、表示部214に対して、未熟作業者による質問等に対する回答として「加工診断(なぜなぜ分析)」を表示させる。この回答においては、未熟作業者による質問等に対応する「問題」と、複数の対策案に確信度が大きい程優先されるように付された優先順位である「対策順位」と、「問題」を解決するための複数の要因である「要因A」及び「要因B」(探索過程)及びこれら複数の要因の関連性を表す接続(探索経路)からなる「要因分析」と、が表示部214に表示されて教示される。尚、図9においては、探索過程を太実線により囲んで示し、探索経路を太実線により示す。
【0069】
図9の例示の場合、「問題」である「工具の摩耗が大きい」に対して駆動ソルバ230は、知識データベース220の内部(図5を参照)を探索し、「要因A」である「切削力」と「要因B」である「切込量」を第一解として特定する。又、駆動ソルバ230は、「問題」、「要因A」及び「要因B」に付されている「ランク」又は「レンジ」及び「ランク」又は「レンジ」に基づく接続(関連性)も第一解として特定する。
【0070】
解決ソルバ240は、駆動ソルバ230が特定した「要因A」及び「要因B」について、これらの要因に対応して入力されている接続(関連性)に基づいて要因分析を行う。尚、関連性については、例えば、「ランク」又は「レンジ」をスコア化し、スコアを考慮して要因解析を行う周知の方法を採用しても良い。そして、解決ソルバ240は、「問題」の解決に対する各要因の間の接続(関連性)の確かさ(大きさ)を表す確信度に基づき、第二解として「対策順位」を決定する。
【0071】
図9の例示の場合、「問題」である「工具の摩耗が大きい」ことを解決するためには、「要因A」として「切削力」の確信度が大きく、「要因A」との関連性が大きい「要因B」として「切込量」の確信度が最も大きく、「送り量」、「工具材質」の順に確信度が小さくなる。従って、「対策順位」としては、「切削力」-「切込量」の確信度が最も大きいため「順位1位」となり、「切削力」-「送り量」が「順位2位」、「切削力」-「工具材質」が「順位3位」となる。
【0072】
そして、制御部211は、解決ソルバ240が導いた第二解として、「問題」即ち「工具の摩耗が大きい」に対する回答(対策案)を、図10に示すように、複数の対策案、具体的には、上述した「対策順位」に沿った対策案を表示部214に表示する。これにより、制御部211は、未熟作業者に複数の対策案を教示する(推薦する)。具体的に、表示部214には、回答として「改善提案(対策)」として、図10においては、三つの対策案が提案(推薦)されている。
【0073】
ここで、制御部211は、「問題」即ち「工具の摩耗が大きい」ことに対して一致する原因が存在する場合には、一致する原因に対する対策案を未熟作業者に教示する。一方、制御部211は、「問題」に対して一致する原因が存在しない場合には、「問題」に近い原因を推定し、この推定した原因に対する対策案を未熟作業者に提案(推薦)する。即ち、制御部211は、「推定原因に対する対策案を推薦する推薦部」を実現する。
【0074】
対策案としては、上述した「対策順位」が「順位1位」となった「切削力」-「切込量」に対応する加工条件として、切込量の低減(○○%小さくする)が提案(推薦)される。同様に、「対策順位」が「順位2位」となった「切削力」-「送り量」に対応する加工条件として、送り量の低減(△△%小さくする)が提案(推薦)される。又、同様に、「対策順位」が「順位3位」となった「切削力」-「工具材質」に対応する工具条件として、バイト40の材質Aを材質Bに変更することが提案(推薦)される。
【0075】
ここで、対策案として提案(教示)される切込量の低減、送り量の低減及び工具材質の変更は、駆動ソルバ230が知識データベース220を探索して出力した探索過程及び探索経路即ち経緯情報、即ち、駆動ソルバ230が特定した「要因A」及び「要因B」に対応するように記憶部213に記憶されている情報を取得して解決ソルバ240が生成するものである。従って、未熟作業者に提案(教示)される複数の対策案は、それぞれ、熟練作業者の知見(知識)や経験即ちノウハウに基づくものである。尚、図10に示すように、未熟作業者による質問等に対する対策案が教示される際には、未熟作業者に一般的な注意事項も併せて表示され、未熟作業者に注意を促すようになっている。
【0076】
前記ステップS17にて複数の対策案が教示されると、未熟作業者は、例えば、「順位1位」から順番に対策案に従って推奨加工条件を変更し、変更した推奨加工条件を制御装置100の加工条件入力部140に入力する。そして、未熟作業者は、対策案に従って変更した推奨加工条件により工作物Wを切削加工し、工作物Wの形状や面性状等の仕上がり具合を判断すると共に、バイト40の摩耗状態を判断する。
【0077】
未熟作業者は、バイト40の摩耗状態を含めて加工結果の良否について、入力部212を用いて制御部211に入力する。尚、この場合においても、図示しない計測装置がインターフェース215と切削装置1の制御装置100との間に接続されている場合には、計測装置から自動的に加工結果情報が入力されるように構成することも可能である。
【0078】
制御部211は、加工支援ツールプログラムのステップS18において、未熟作業者によって入力された加工結果が良であるか否かを判定する。即ち、制御部211は、上述した複数の対策案のうちの少なくとも一つ又は全部に従って変更した推奨加工条件による加工結果が良であれば、ステップS18にて「Yes」と判定してステップS19に進む。尚、未熟作業者は、加工結果が良であることを入力する場合、教示された複数の対策案のうち、「問題」の解決に寄与した対策案又は対策案の寄与順(以下、「寄与情報」と称呼する。)も入力する(例えば、図10に示す「対策案」の番号等)。
【0079】
一方、上述した複数の対策案の全部に従って変更した推奨加工条件による加工結果が不良であれば、制御部211はステップS18にて「No」と判定して前記ステップS15に戻り、前記ステップS15以降の各ステップ処理を実行する。即ち、未熟作業者は、改めて未熟作業者による質問等を入力し対策案の教示を受ける。そして、制御部211は、教示された対策案に従って変更した推奨加工条件による加工結果が未熟作業者によって良と判断されるまで、繰り返し、ステップS18にて判定処理を繰り返す。
【0080】
ステップS19においては、制御部211は、良好な加工結果を反映する推奨加工条件に基づいて、知識データベース220の記憶内容を更新する。具体的に、制御部211は、前記ステップS14のおける判定処理により加工結果が良であると判定した場合は、最初に教示した推奨加工条件が良品を切削加工するための良品条件であるとする。この場合、制御部211は、データベース更新部216と協働して、次回以降の探索において今回の推奨加工条件を優先的に教示できるように、例えば、今回の推奨加工条件(良品条件)を設定するために駆動ソルバ230が探索する要因(探索過程)の確信度が大きくなるように、例えば、「ランク」や「レンジ」を変更して記憶する。
【0081】
又、制御部211は、前記ステップS18における判定処理により加工結果が良であると判定した場合には、データベース更新部216と協働して、未熟作業者によって入力された寄与情報に基づき、「問題」の解決に寄与した対策案を優先的に教示できるように、例えば、寄与情報に応じて対策案の「優先順位」を変更する。或いは、制御部211は、データベース更新部216と協働して、「問題」の解決に寄与した対策案を優先的に教示できるように、例えば、対策案を設定するために駆動ソルバ230が探索する要因(探索過程)の確信度が大きくなるように変更する。これにより、未熟作業者が実際に加工した際の情報が知識データベース220の各種情報即ち熟練作業者によって入力されたノウハウにフィードバックされ、推奨加工条件の精度及び未熟作業者による質問等に応じた対策案の教示精度を高めることができる。
【0082】
制御部211は、前記ステップS19にて知識データベース220の更新を行うと、ステップS20に進む。ステップS20においては、制御部211は、加工支援ツールプログラムの実行を終了する。そして、制御部211は、所定の期間の経過後、再び前記ステップS10にて加工支援ツールプログラムの実行を開始する。
【0083】
以上の説明からも理解できるように、上記実施形態の機械加工支援システム200は、機械加工方法及び機械加工設備に関するノウハウを表す各種情報を探索可能且つ更新可能に記憶するデータベースである知識データベース220と、工作物Wに施した加工(切削加工)の加工結果を表す加工結果情報を取得する取得部としての入力部212及びインターフェース215と、入力部212及びインターフェース215によって取得された加工結果情報に応じて、機械加工方法及び機械加工設備に関する質問である未熟作業者による質問等を入力する質問入力部としての入力部212と、少なくとも入力部212に入力された未熟作業者による質問等に基づく探索条件を設定して知識データベース220を探索し、探索条件に応じた解を質問に対する回答として導くソルバである駆動ソルバ230及び解決ソルバ240を実行する制御部211と、制御部211によるソルバ(駆動ソルバ230及び解決ソルバ240)の実行に伴って取得された回答を表示する表示部214と、を備え、表示部214によって表示される回答は、質問の解決に関連する複数の対策案、及び、それぞれの対策案の質問の解決への確からしさを表す確信度に対応する優先順位を含むと共に、視覚的に表示されていてソルバ(駆動ソルバ230及び解決ソルバ240)が知識データベース220を探索して対策案を解として導くための複数の要因からなる探索過程及び探索過程における複数の要因間の関連性を表す探索経路を表す経緯情報を含む。
【0084】
ここで、切削装置1は、機械加工支援システム200と、切れ刃45を有する工具としてのバイト40を保持する工具保持装置30と、工作物Wを保持する工作物保持装置10と、工作物保持装置10に保持された工作物Wを所定方向であるX軸方向に送る工作物送り装置20と、工作物Wに対するバイト40の相対的な移動を行う工具変位装置であるZ軸駆動装置32と、Z軸駆動装置32の作動を制御する制御装置100と、を備える。
【0085】
又、これらの場合、制御部211によって実行されるソルバは、入力された探索条件に基づいて知識データベース220を探索し、探索条件に応じた第一解として少なくとも推奨加工条件を導く第一ソルバである駆動ソルバ230と、少なくとも、質問(未熟作業者による質問等)及び加工結果情報に基づいて探索条件を設定すると共に駆動ソルバ230と協働して、回答を第二解として導く第二ソルバとしての解決ソルバ240と、から構成される
【0086】
これらによれば、機械加工支援システム200においては、制御部211は、入力部212を介して機械加工方法(切削加工方法)及び機械加工設備(切削装置1)に関する質問(未熟作業者による質問等)が入力されると、入力された質問(未熟作業者による質問等)に基づく探索条件を設定してノウハウを表す各種情報を探索可能且つ更新可能に記憶する知識データベース220を探索することができる。そして、制御部211は、質問(未熟作業者による質問等)の解決に関連する複数の対策案、それぞれの対策案の確信度(優先順位)、及び、探索過程(複数の要因)及び探索経路(要因間の関連性)を表す経緯情報を表示部214に表示して提示する(教示する)ことができる。
【0087】
これにより、例えば、機械加工(切削加工)の知見(知識)や経験の足りない未熟作業者であっても提示された回答に従って機械加工方法(切削加工方法)及び機械加工設備(切削装置1)に関する質問(未熟作業者による質問等)を解決することができ、熟練作業者に頼る機会を減少させることができる。従って、熟練作業者は、自身の作業を中断する機会が減少し、その結果、熟練作業者の生産性が低下することを抑制することができる。
【0088】
又、知識データベース220の各種情報は、機械加工(切削加工)の知見(知識)や経験の豊富な熟練作業者によって得られたノウハウとして記憶される。従って、仮に熟練作業者が退職した場合であっても、貴重なノウハウを永続的に記憶して利用することができ、その結果、貴重なノウハウを脈々と受け継いでいくことができる。更に、未熟作業者に提示される回答には、経緯情報が含まれる。これにより、未熟作業者は、提示された対策案を得るための要因や要因間の関連性、即ち、要因解析における考え方を習得することができる。
【0089】
この場合、制御部211は、ソルバ(駆動ソルバ230及び解決ソルバ240)を実行して工作物Wの加工要件を表す初期条件を探索条件として知識データベース220を探索し、探索条件に応じた解として、機械加工方法及び機械加工設備を用いて工作物Wを加工する際の推奨加工条件を生成することができる。
【0090】
これによれば、未熟作業者であっても、ノウハウに基づく推奨加工条件により、切削装置1を用いて工作物Wに適切な切削加工(機械加工)を施すことができる。これにより、未熟作業者は、切削加工(機械加工)を行う際に熟練作業者に加工条件を問う必要がなく、その結果、熟練作業者の生産性が低下することを抑制することができると共に、ノウハウを受け継ぐことができる。
【0091】
この場合、推奨加工条件、及び、機械加工方法及び機械加工設備に関する予め設定された各種設定情報のうちの少なくとも推奨加工条件を記憶する記憶部213を有することができる。これによれば、記憶部213に少なくとも推奨加工条件が記憶されることにより、例えば、同じ加工要件の入力に対して速やかに推奨加工条件を提示することができる。
【0092】
これらの場合、インターフェース215は、切削加工方法による工作物Wの加工状態、又は、切削装置1の作動状態を計測した計測情報を取得することができる。これによれば、例えば、未熟作業者が工作物Wの加工状態や切削装置1の作動状態を都度入力する必要がなく、作業の簡素化を実現することができる。
【0093】
又、これらの場合、機械加工支援システム200は、入力部212又はインターフェース215によって取得された加工結果情報に基づいて、知識データベース220に記憶されている各種情報を更新するデータベース更新部216を備えることができる。この場合、具体的に、データベース更新部216は、少なくとも、回答を用いて知識データベース220に記憶されている各種情報を更新することができる。
【0094】
これによれば、知識データベース220に記憶されている各種情報即ちノウハウを、例えば、推奨加工条件に従う実際の加工結果、又は、回答に従う加工の加工結果に基づいて常に更新して記憶しておくことができる。これにより、制御部211は、未熟作業者による質問等に対して常に高い精度で(確信度の高い対策案を含む)適切な回答を提示する(教示)することができる。
【0095】
更に、これらの場合、回答を構成する複数の対策案は、確信度が大きい程優先されるように優先順位が付されて、表示部214に表示される。
【0096】
これによれば、未熟作業者は、表示部214に優先順位に従うことにより、効率よく複数の対策案を実施することができる。又、未熟作業者は、複数の対策案のうち、最も有効な対策案を容易に理解することができるため、熟練作業者に対策案の有効性について確認することがなく、その結果、熟練作業者の生産性が低下することを抑制することができる。
【0097】
本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0098】
例えば、上記実施形態においては、熟練作業者がパーソナルコンピュータ210を用いて、知識データベース220に自身の知見(知識)や経験に基づく各種情報即ちノウハウを入力するようにした。これに代えて、例えば、熟練作業者が過去に作成した報告書等の記載内容をOCR等の機能により電子データ化し、この電子データ化された報告書等に含まれる複数の要因を抽出して知識データベース220に更新可能に記憶することも可能である。
【0099】
この場合、パーソナルコンピュータ210が予め設定されたキーワード及び自然言語処理技術や機械学習技術により知識データベース220に記憶されている各種情報から生成可能なキーワード等用いて自動的に複数の要因を抽出するように構成することにより、熟練作業者の負担を大幅に軽減することができる。
【0100】
又、上記実施形態においては、知識データベース220の構築に際して、未熟作業者及び熟練作業者の入力作業を必要とするように構成した。しかしながら、例えば、図4にて破線により示すように、周知の機械学習技術を適用した(具体的には、機械学習プログラムを実行する)機械学習部221を設けて、切削装置1の構成及び作動に関する加工条件や、上述した計測装置等から得られる実測データを含む加工情報等、上述した探索過程及び探索経路を含む情報、切削加工前の調整作動に関する情報等を周知の方法に従って解析し、知識データベース220を構築することも可能である。
【0101】
これにより、機械学習部221は、例えば、工作物Wを加工する際の加工条件(推奨加工条件を含む)、工作物Wの加工状態や切削装置1の動作状態及び加工結果情報を訓練データセットとして学習することにより、知識データベース220に体系化されて蓄積される各種情報(デジタル化されたノウハウ)の情報量を増やすことができる。その結果、未熟作業者に教示する推奨加工条件や対策案の精度を向上させることができる。
【0102】
又、上記実施形においては、駆動ソルバ230と解決ソルバ240とがパーソナルコンピュータ210の記憶部213に記憶されるようにした。これに代えて、駆動ソルバ230と解決ソルバ240とが知識データベース220に記憶されるように構成することも可能である。この場合においても、制御部211が知識データベース220から駆動ソルバ230と解決ソルバ240とを読み込んで実行することが可能である。或いは、知識データベース220を制御する制御部211とは異なる制御部が知識データベース220側で駆動ソルバ230と解決ソルバ240とを実行することも可能となる。尚、この場合には、制御部211は、加工支援ツールプログラムの実行に際して、知識データベース220側から探索過程及び探索経路を含む経緯情報を取得する。
【0103】
又、上記実施形態においては、制御部211は、駆動ソルバ230及び解決ソルバ240を実行することにより、推奨加工条件を知識データベース220に蓄積されている各種情報即ちノウハウに基づいて生成するようにした。これに代えて、又は、加えて、例えば、工具メーカ等が開示している加工条件等即ち諸設定情報を予め記憶部213に記憶しておき、制御部211が記憶部213に記憶されている加工条件(諸設定情報)に基づいて推奨加工条件を未熟作業者に教示するようにすることも可能である。
【0104】
又、上記実施形態においては、知識データベース220に蓄積される各種情報がノウハウに相当するテキストデータであるとした。これに代えて、又は、加えて、知識データベース220が、例えば、切削加工の状態や熟練作業者の作業内容を撮影した動画データ及び静止画データを更新可能且つ探索可能に記憶することも可能である。これによれば、未熟作業者に対してテキストに代えて又は加えて動画や写真をも提供することができるため、未熟作業者は熟練作業者の考え方即ちノウハウを容易に理解することができ、その結果、より確実にノウハウの伝承が可能になる。
【0105】
又、上記実施形態においては、機械加工が切削装置1を用いた切削加工である場合を例示し、従って、知識データベース220に記憶される各種情報が切削加工に関連するものであるとした。しかしながら、機械加工については切削加工に限定されないことは言うまでもなく、切削加工以外の機械加工、例えば、研削加工や積層造形加工等であれば、対象となる機械加工に応じた各種情報(ノウハウ)を体系的に記憶するように知識データベース220を構築することで、上記実施形態の場合と同様に、機械加工支援システムを適用することができる。
【0106】
更に、上記実施形態においては、知識データベース220が機械加工(切削加工)に関連する各種情報(ノウハウ)を体系的に記憶するように構築するようにした。即ち、上記実施形態においては、機械加工(切削加工)に特化した知識データベース220を構築するようにした。ところで、知識データベース220は、種々の分野におけるノウハウを電子データ化して更新可能且つ探索可能に記憶することが可能であり、駆動ソルバ230及び解決ソルバ240が協働することによって知識データベース220に記憶されている各種情報に基づく回答及び経緯情報を教示することが可能である。
【0107】
従って、知識データベース220、駆動ソルバ230及び解決ソルバ240を備えた機械加工支援システムを、他の分野に適用して運用可能であることは言うまでもない。この場合、他の分野において知識や経験の不足している作業者がいれば、上記実施形態の場合と同様に、この作業者に対してノウハウに基づく対策案を教示することができ、又、対策案に至るまでの考え方も教示することができ、その結果、この作業者によって他の分野におけるノウハウの伝承が可能となる。
【符号の説明】
【0108】
1…切削装置(機械加工設備)、2…ベッド、10…工作物保持装置、11…主軸台、11…制御部、12…心押台、13…主軸台本体、14…回転主軸、15…回転主軸モータ、16…心押台本体、17…心押センタ、20…装置、21…送り台、22…X軸駆動装置、23…X軸ガイドレール、30…工具保持装置、31…コラム、32…Z軸駆動装置(工作物変位装置)、33…サドル、34…ホルダ、36…Z軸ガイドレール、40…バイト(工具)、100…制御装置、110…工作物回転制御部、120…送り制御部、130…変位制御部、140…加工条件入力部、200…機械加工支援システム、210…パーソナルコンピュータ、211…制御部、212…入力部(質問入力部、取得部)、213…記憶部、214…表示部、215…インターフェース(取得部)、216…データベース更新部、220…知識データベース(データベース)、221…機械学習部、230…駆動ソルバ(第一ソルバ(ソルバ))、240…解決ソルバ(第二ソルバ(ソルバ))、Aw…回転軸線
図1
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