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特許7441606極薄の割れにくいガラスおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】極薄の割れにくいガラスおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 21/00 20060101AFI20240222BHJP
   C03C 3/097 20060101ALI20240222BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
C03C21/00 101
C03C3/097
G09F9/30 310
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018536449
(86)(22)【出願日】2017-01-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-02-07
(86)【国際出願番号】 US2017012952
(87)【国際公開番号】W WO2017123596
(87)【国際公開日】2017-07-20
【審査請求日】2020-01-14
【審判番号】
【審判請求日】2022-01-24
(31)【優先権主張番号】62/278,125
(32)【優先日】2016-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(72)【発明者】
【氏名】オラム,パスカル
(72)【発明者】
【氏名】ルセフ,ロスチスラフ ヴァチェフ
(72)【発明者】
【氏名】シュナイダー,ヴィトール マリーノ
【合議体】
【審判長】三崎 仁
【審判官】増山 淳子
【審判官】後藤 政博
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/0239775(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0368153(US,A1)
【文献】特開2016-682(JP,A)
【文献】国際公開第2015/080043(WO,A1)
【文献】日本板硝子株式会社 ガラス建材総合カタログ 技術資料編、日本板硝子株式会社、2015年、p.64-67
【文献】丸山敬 他、ISO法に基づく板ガラスの耐衝撃破壊特性、京都大学防災研究所年報、第54号B、京都大学、2011年、p.347-359
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 23/00-35/26
C03B 40/00-40/04
C03C1/00-23/00
G09F 9/30-9/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス物品において、該ガラス物品は、0.1mm≦t<0.4mmである厚さt、該ガラス物品の表面から圧縮深さDOCまで延在する圧縮層、および該圧縮深さから該ガラス物品の中央領域まで延在する引張領域を有し、該引張領域は、tがマイクロメートルで表される、CT(MPa)>|-1.956×10-16×t+1.24274×10-12×t-3.09196×10-9×t+3.80391×10-6×t-2.35207×10-3×t+5.96241×10-1×t+36.5994|、かつ、CT(MPa)≦(85/√t(mm))である物理的中央張力CT下にあり、
前記圧縮層は、少なくとも第1の深さD1から前記圧縮深さDOCまで延在する第1の領域であって、該第1の領域の少なくとも一部が、線形であり、勾配m1を有し、20MPa/μm≧|m1|≧1.2MPa/μm9μm≦D1≦17μmである、第1の領域;および前記表面から第1の深さD1までの深さまで延在する第2の領域であって、該第2の領域は、該表面から約5μm以下までの深さまで延在する線形部分を有し、勾配m2を有し、200MPa/μm≧|m2|≧30MPa/μmである、第2の領域を含む応力プロファイルを有する、イオン交換により強化された耐衝撃強化ガラス物品。
【請求項2】
以下の内の少なくとも1つが当てはまる、請求項1記載の耐衝撃強化ガラス物品:
0.05t≦DOC≦0.22tである、
前記圧縮層が、前記表面で、200MPa≦CS1≦950MPaである圧縮応力CS1を有する、
前記物理的中央張力CTが約200MPa以下である、および
DOC>0.15t、CT(MPa)≦(85/√t(mm))である。
【請求項3】
前記ガラス物品がイオン交換されている、請求項1又は2記載の耐衝撃強化ガラス物品。
【請求項4】
前記ガラス物品がアルカリアルミノケイ酸塩ガラスから作られている、請求項1から3いずれか1項記載の耐衝撃強化ガラス物品。
【請求項5】
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラスがリチウムを含まない、請求項4記載の耐衝撃強化ガラス物品。
【請求項6】
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラスが、少なくとも約4モル%のPおよび0モル%から約5モル%のBを含み、1.3<[(P+RO)/M)]≦2.3、M=Al+B、ROは、該アルカリアルミノケイ酸塩ガラス中に存在する一価陽イオン酸化物の合計である、請求項4または5記載の耐衝撃強化ガラス物品。
【請求項7】
以下の内の少なくとも1つが当てはまる、請求項6記載の耐衝撃強化ガラス物品:
11モル%≦M≦30モル%である、
13モル%≦RO≦30モル%であり、式中、ROが、前記ガラス中に存在するアルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、および遷移金属一酸化物の合計である、および
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラスが、約40モル%から約70モル%のSiO、約11モル%から約25モル%のAl、0モル%から約5モル%のB、約4モル%から約15モル%のP、約13モル%から約25モル%のNaO、および0モル%から約1モル%のKOを含む。
【請求項8】
家庭用電化製品において、
前面、背面および側面を有する筐体、
前記筐体内に少なくとも部分的に設けられた電気部品であって、少なくとも、制御装置、メモリ、および該筐体の前面にまたはそれに隣接して設けられたディスプレイを含む電子部品、および
前記ディスプレイ上に配置された請求項1から7いずれか1項記載の耐衝撃強化ガラス物品、
を備えた家庭用電化製品。
【請求項9】
0.1mm≦t<0.4mmである厚さtを有するガラス物品をイオン交換して耐衝撃性を強化させる方法であって、
a.約25質量%から約100質量%のKNOおよび約75質量%までのNaNOを含む第1のイオン交換浴中において約300℃から約500℃の範囲の温度でガラス物品をイオン交換する工程、
b.前記ガラス物品の表面から0.05t≦DOC≦0.22tの圧縮深さDOCまで延在する圧縮応力層を形成する工程、
c.前記ガラス物品の中央部分に、前記圧縮深さDOCから該ガラス物品の中央領域まで延在する引張領域であって、tがマイクロメートルで表される、CT(MPa)>|-1.956×10-16×t+1.24274×10-12×t-3.09196×10-9×t+3.80391×10-6×t-2.35207×10-3×t+5.96241×10-1×t+36.5994|、かつ、CT(MPa)≦(85/√t(mm))である物理的中央張力CTを有する引張領域を形成する工程、
d.前記第1のイオン交換浴中で前記ガラス物品をイオン交換した後、第2のイオン交換浴中で該ガラス物品をイオン交換する工程、および
e.少なくとも第1の深さD1から前記圧縮深さDOCまで延在する第1の領域であって、該第1の領域の少なくとも一部が、線形であり、勾配m1を有し、20MPa/μm≧|m1|≧1.2MPa/μm、9μm≦D1≦17μmである、第1の領域;および前記表面から第1の深さD1まで延在する第2の領域であって、該第2の領域は、該表面から約5μm以下までの深さまで延在する線形部分を有し、勾配m2を有し、200MPa/μm≧|m2|≧30MPa/μmである、第2の領域を形成する工程、
を有してなる方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、ここに全て引用される、2016年1月13日に出願された米国仮特許出願第62/278125号の米国法典第35編第119条の下での優先権の恩恵を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本開示は、イオン交換可能なガラスに関する。より詳しくは、本開示は、厚さが0.4mm未満のイオン交換可能なガラスに関する。さらにより詳しくは、本開示は、イオン交換されたときに割れにくいガラスに関する。
【背景技術】
【0003】
イオン交換過程において、より大きい陽イオン(例えば、K)のガラス中への拡散は、古典的相補誤差関数によって導かれる。イオン交換により生じる応力プロファイルの形状および値は、以前は、物理的中央張力限界によって決定されていた。この限界は、ガラスが衝撃または攻撃を受けたときに、それより上では、割れやすさなどの望ましくない挙動が生じると予測される引張応力値または物理的中央張力値である。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、化学強化されたときに、割れにくく、割れやすさ限界を超える;すなわち、tがマイクロメートルで表される、CT>|-1.956×10-16×t+1.24274×10-12×t-3.09196×10-9×t+3.80391×10-6×t-2.35207×10-3×t+5.96241×10-1×t+36.5994|である物理的中央張力CT(ここでは「物理的CT」とも称される)を有する、約0.1mmから0.4mm未満の範囲の厚さtを有するガラスを提供する。
【0005】
したがって、本開示の1つの態様は、0.1mm≦t<0.4mmである厚さt、ガラス物品の表面から圧縮深さDOCまで延在する圧縮層、および圧縮深さからガラス物品の中央領域まで延在する引張領域を有するガラス物品を提供することにある。その引張領域は、tがマイクロメートルで表される、CT>|-1.956×10-16×t+1.24274×10-12×t-3.09196×10-9×t+3.80391×10-6×t-2.35207×10-3×t+5.96241×10-1×t+36.5994|である物理的中央張力CT下にあり、そのガラスは割れにくい。
【0006】
本開示の別の態様は、0.1mm≦t<0.4mmである厚さt、ガラス物品の表面から圧縮深さDOCまで延在する圧縮層、および圧縮深さからガラス物品の中央領域まで延在する引張領域を有するガラス物品であって、引張領域は、tがマイクロメートルで表される、CT>|-1.956×10-16×t+1.24274×10-12×t-3.09196×10-9×t+3.80391×10-6×t-2.35207×10-3×t+5.96241×10-1×t+36.5994|である物理的中央張力CT下にある、ガラス物品を提供することにある。その圧縮層は、少なくとも第1の深さD1から圧縮深さDOCまで延在する第1の領域であって、第1の領域の少なくとも一部は、線形であり、勾配m1を有し、20MPa/μm≧|m1|≧1.2MPa/μm、9μm≦D1≦17μmである、第1の領域;および表面から第1の深さD1までの深さまで延在する第2の領域であって、第2の領域は、表面から約5μm以下までの深さまで延在する線形部分を有し、勾配m2を有し、200MPa/μm≧|m2|≧30MPa/μmである、第2の領域を含む応力プロファイルを有し、そのガラス物品は割れにくい。
【0007】
本開示の別の態様は、0.1mm≦t<0.4mmである厚さtを有するガラス物品をイオン交換する方法を提供することにある。この方法は、約25質量%から約100質量%のKNOおよび約75質量%までのNaNOを含む第1のイオン交換浴中において約300℃から約500℃の範囲の温度でガラス物品をイオン交換する工程;そのガラス物品の表面から0.05t≦DOC≦0.22tの圧縮深さDOCまで延在する圧縮応力層を形成する工程;およびガラス物品の中央部分に、圧縮深さDOCからガラス物品の中央領域まで延在する引張領域であって、tがマイクロメートルで表される、CT>|-1.956×10-16×t+1.24274×10-12×t-3.09196×10-9×t+3.80391×10-6×t-2.35207×10-3×t+5.96241×10-1×t+36.5994|である物理的中央張力CTを有する引張領域を形成する工程を有してなり、そのガラスは割れにくい。
【0008】
本開示の態様1によれば、ガラス物品が提供される。そのガラス物品は、0.1mm≦t<0.4mmである厚さt、ガラス物品の表面から圧縮深さDOCまで延在する圧縮層、および圧縮深さからガラス物品の中央領域まで延在する引張領域を有し、その引張領域は、tがマイクロメートルで表される、CT>|-1.956×10-16×t+1.24274×10-12×t-3.09196×10-9×t+3.80391×10-6×t-2.35207×10-3×t+5.96241×10-1×t+36.5994|である物理的中央張力CT下にある。
【0009】
本開示の態様2によれば、0.05t≦DOC≦0.22tである、態様1のガラス物品が提供される。
【0010】
本開示の態様3によれば、圧縮層が、表面で、200MPa≦CS1≦950MPaである圧縮応力CS1を有する、態様1または2のガラス物品が提供される。
【0011】
本開示の態様4によれば、ガラス物品がイオン交換されている、態様1から3いずれかのガラス物品が提供される。
【0012】
本開示の態様5によれば、圧縮層が応力プロファイルを有し、その応力プロファイルの少なくとも一部が、線形であり、勾配m1を有し、200MPa/μm≧|m1|≧1MPa/μmである、態様1から4いずれかのガラス物品が提供される。
【0013】
本開示の態様6によれば、20MPa/μm≧|m1|≧1.2MPa/μmである、態様5のガラス物品が提供される。
【0014】
本開示の態様7によれば、1.5MPa/μm≦|m1|≦15MPa/μmである、態様6のガラス物品が提供される。
【0015】
本開示の態様8によれば、応力プロファイルが、表面から深さD1までの深さまで延在する第2の領域をさらに含み、9μm≦D1≦17μmであり、第2の領域は、表面から約5μmまでの深さまで延在する線形部分を有し、勾配m2を有し、200MPa/μm≧|m2|≧30MPa/μmである、態様6のガラス物品が提供される。
【0016】
本開示の態様9によれば、160MPa/μm≧|m2|≧40MPa/μmである、態様8のガラス物品が提供される。
【0017】
本開示の態様10によれば、120MPa/μm≧|m2|≧45MPa/μmである、態様9のガラス物品が提供される。
【0018】
本開示の態様11によれば、ガラス物品がアルカリアルミノケイ酸塩ガラスから作られている、態様1から10いずれかのガラス物品が提供される。
【0019】
本開示の態様12によれば、アルカリアルミノケイ酸塩ガラスが約10モル%までのLiOを含む、態様11のガラス物品が提供される。
【0020】
本開示の態様13によれば、アルカリアルミノケイ酸塩ガラスがリチウムを含まない、態様11のガラス物品が提供される。
【0021】
本開示の態様14によれば、アルカリアルミノケイ酸塩ガラスが、少なくとも約4モル%のPおよび0モル%から約5モル%のBを含み、1.3<[(P+RO)/M)]≦2.3、M=Al+B、ROは、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス中に存在する一価陽イオン酸化物の合計である、態様11のガラス物品が提供される。
【0022】
本開示の態様15によれば、11モル%≦M≦30モル%である、態様14のガラス物品が提供される。
【0023】
本開示の態様16によれば、アルカリアルミノケイ酸塩ガラスが、約40モル%から約70モル%のSiO、約11モル%から約25モル%のAl、0モル%から約5モル%のB、約4モル%から約15モル%のP、約13モル%から約25モル%のNaO、および0モル%から約1モル%のKOを含む、態様14のガラス物品が提供される。
【0024】
本開示の態様17によれば、ROが、ガラス中に存在するアルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、および遷移金属一酸化物の合計であり、13モル%≦RO≦30モル%である、態様14のガラス物品が提供される。
【0025】
本開示の態様18によれば、物理的中央張力CTが約200MPa以下である、態様1から16いずれかのガラス物品が提供される。
【0026】
本開示の態様19によれば、中央張力CTが約135MPa以下である、態様18のガラス物品が提供される。
【0027】
本開示の態様20によれば、中央張力CTが約98MPa以下である、態様19のガラス物品が提供される。
【0028】
本開示の態様21によれば、DOC>0.15t、CT(MPa)≦(85/√t(mm))である、態様1から20いずれかのガラス物品が提供される。
【0029】
本開示の態様22によれば、0.18t<DOC<0.22t、CT(MPa)≦(79/√t(mm))である、態様21のガラス物品が提供される。
【0030】
本開示の態様23によれば、0.16t<DOC<0.19t、CT(MPa)≦(73/√t(mm))である、態様22のガラス物品が提供される。
【0031】
本開示の態様24によれば、ガラス物品が割れにくい、態様1から23いずれかのガラス物品が提供される。
【0032】
本開示の態様25によれば、家庭用電化製品が提供される。その家庭用電化製品は、前面、背面および側面を有する筐体;その筐体内に少なくとも部分的に設けられた電気部品であって、少なくとも、制御装置、メモリ、およびその筐体の前面にまたはそれに隣接して設けられたディスプレイを含む電子部品;およびそのディスプレイ上に配置された態様1から24いずれかのガラス物品を備えている。
【0033】
本開示の態様26によれば、ガラス物品が提供される。そのガラス物品は、0.1mm≦t<0.4mmである厚さtを有し、ガラス物品の表面から圧縮深さDOCまで延在し、応力プロファイルを有する圧縮層を含む。その応力プロファイルは、少なくとも第1の深さD1から圧縮深さDOCまで延在する第1の領域であって、第1の領域の少なくとも一部は、線形であり、勾配m1を有し、20MPa/μm≧|m1|≧1.2MPa/μm、9μm≦D1≦17μmである、第1の領域;および表面から第1の深さD1までの深さまで延在する第2の領域であって、第2の領域は、表面から約5μm以下までの深さまで延在する線形部分を有し、勾配m2を有し、200MPa/μm≧|m2|≧30MPa/μmである、第2の領域;並びにその圧縮深さからガラス物品の中央領域まで延在する引張領域であって、tがマイクロメートルで表される、CT>|-1.956×10-16×t+1.24274×10-12×t-3.09196×10-9×t+3.80391×10-6×t-2.35207×10-3×t+5.96241×10-1×t+36.5994|である物理的中央張力CT下にある引張領域を含む。
【0034】
本開示の態様27によれば、0.08t≦DOC≦0.22tである、態様26のガラス物品が提供される。
【0035】
本開示の態様28によれば、0.1t≦DOC≦0.20tである、態様27のガラス物品が提供される。
【0036】
本開示の態様29によれば、圧縮層が、表面で、200MPa≦CS≦950MPaである圧縮応力CSを有する、態様26から28いずれかのガラス物品が提供される。
【0037】
本開示の態様30によれば、ガラス物品がイオン交換されている、態様26から29いずれかのガラス物品が提供される。
【0038】
本開示の態様31によれば、ガラス物品がアルカリアルミノケイ酸塩ガラスから作られている、態様26から30いずれかのガラス物品が提供される。
【0039】
本開示の態様32によれば、アルカリアルミノケイ酸塩ガラスが約10モル%までのLiOを含む、態様31のガラス物品が提供される。
【0040】
本開示の態様33によれば、ガラスがリチウムを含まない、態様31のガラス物品が提供される。
【0041】
本開示の態様34によれば、アルカリアルミノケイ酸塩ガラスが、少なくとも約4モル%のPおよび0モル%から約5モル%のBを含み、1.3<[(P+RO)/M)]≦2.3、M=Al+B、ROは、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス中に存在する一価陽イオン酸化物の合計である、態様31のガラス物品が提供される。
【0042】
本開示の態様35によれば、ガラスが、約40モル%から約70モル%のSiO、約11モル%から約25モル%のAl、0モル%から約5モル%のB、約4モル%から約15モル%のP、約13モル%から約25モル%のNaO、および0モル%から約1モル%のKOを含む、態様31のガラス物品が提供される。
【0043】
本開示の態様36によれば、11モル%≦M≦30モル%である、態様31のガラス物品が提供される。
【0044】
本開示の態様37によれば、ROが、ガラス中に存在するアルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、および遷移金属一酸化物の合計であり、13モル%≦RO≦30モル%である、態様31のガラス物品が提供される。
【0045】
本開示の態様38によれば、中央張力CTが約200MPa以下である、態様26から37いずれかのガラス物品が提供される。
【0046】
本開示の態様39によれば、中央張力CTが約135MPa以下である、態様26から38いずれかのガラス物品が提供される。
【0047】
本開示の態様40によれば、中央張力CTが約98MPa以下である、態様26から39いずれかのガラス物品が提供される。
【0048】
本開示の態様41によれば、DOC>0.15t、CT(MPa)≦(85/√t(mm))である、態様26から40いずれかのガラス物品が提供される。
【0049】
本開示の態様42によれば、0.18t<DOC<0.22t、CT(MPa)≦(79/√t(mm))である、態様41のガラス物品が提供される。
【0050】
本開示の態様43によれば、0.16t<DOC<0.19t、CT(MPa)≦(73/√t(mm))である、態様42のガラス物品が提供される。
【0051】
本開示の態様44によれば、ガラス物品が割れにくい、態様26から43いずれかのガラス物品が提供される。
【0052】
本開示の態様45によれば、家庭用電化製品が提供される。その家庭用電化製品は、前面、背面および側面を有する筐体;その筐体内に少なくとも部分的に設けられた電気部品であって、少なくとも、制御装置、メモリ、およびその筐体の前面にまたはそれに隣接して設けられたディスプレイを含む電子部品;およびそのディスプレイ上に配置された態様26から44いずれかのガラス物品を備えている。
【0053】
本開示の態様46によれば、0.1mm≦t<0.4mmである厚さtを有するガラス物品をイオン交換する方法が提供される。この方法は、約25質量%から約100質量%のKNOおよび約75質量%までのNaNOを含む第1のイオン交換浴中において約300℃から約500℃の範囲の温度でガラス物品をイオン交換する工程;そのガラス物品の表面から0.05t≦DOC≦0.22tの圧縮深さDOCまで延在する圧縮応力層を形成する工程;およびガラス物品の中央部分に、圧縮深さDOCからガラス物品の中央領域まで延在する引張領域であって、tがマイクロメートルで表される、CT>|-1.956×10-16×t+1.24274×10-12×t-3.09196×10-9×t+3.80391×10-6×t-2.35207×10-3×t+5.96241×10-1×t+36.5994|である物理的中央張力CTを有する引張領域を形成する工程を有してなる。
【0054】
本開示の態様47によれば、圧縮応力層を形成する工程が応力プロファイルを形成する工程を含み、その応力プロファイルの少なくとも一部が、線形であり、勾配m1を有し、200MPa/μm≧|m1|≧1MPa/μmである、態様46の方法が提供される。
【0055】
本開示の態様48によれば、20MPa/μm≧|m1|≧1.2MPa/μmである、態様46の方法が提供される。
【0056】
本開示の態様49によれば、15MPa/μm≧|m1|≧1.5MPa/μmである、態様46の方法が提供される。
【0057】
本開示の態様50によれば、第1のイオン交換浴中でガラス物品をイオン交換した後、第2のイオン交換浴中でガラス物品をイオン交換する工程;および応力プロファイルの第2の領域であって、その第2の領域は表面から第1の深さD1まで延在し、その第2の領域は、表面から約5μmまでの深さまで延在する線形部分を有し、線形部分は、200MPa/μm≧|m2|≧30MPa/μmである、勾配m2を有するものである第2の領域を形成する工程をさらに含む、態様46から49いずれかの方法が提供される。
【0058】
本開示の態様51によれば、0.08t≦DOC≦0.22tである、態様50の方法が提供される。
【0059】
本開示の態様52によれば、0.1t≦DOC≦0.20tである、態様51の方法が提供される。
【0060】
本開示の態様53によれば、圧縮応力層が、表面で、500MPa≦CS≦950MPaである圧縮応力CSを有する、態様46から52いずれかの方法が提供される。
【0061】
本開示の態様54によれば、ガラス物品が割れにくい、態様46から53いずれかの方法が提供される。
【0062】
これらと他の態様、利点、および顕著な特性が、以下の詳細な説明、添付図面、および付随の特許請求の範囲から明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1】イオン交換されたガラス物品の断面図
図2】単一イオン交換過程に得られた圧縮応力プロファイルのグラフ
図3】二重イオン交換過程に得られた圧縮応力プロファイルのグラフ
図4】単一イオン交換過程に関する試料の厚さの関数としての物理的中央張力をプロットしたグラフ
図5】二重イオン交換過程により200μmのガラス試料に生じた応力プロファイルをプロットしたグラフ
図6図5に示された応力プロファイルの詳細なグラフ
図7】単一イオン交換プロセスに関するガラス厚の関数としての物理的中央張力(CT)限界およびイオン交換浴のNaNO汚染(poisoning)の最小レベルをプロットしたグラフ
図8】二重イオン交換プロセスに関するガラス厚の関数としての物理的中央張力(CT)限界およびイオン交換浴のNaNO汚染の最小レベルをプロットしたグラフ
図9】割れやすさ(frangibility)試験後の割れにくい試料の説明図
図10】割れやすさ試験後の割れやすい試料の説明図
図11A】ここに開示された強化された物品のいずれかを備えた例示の電子機器の平面図
図11B図11Aの例示の電子機器の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下の記載において、図面に示されたいくつかの図に亘り、同様の参照文字は、同様のまたは対応する部品を示す。「上部」、「下部」、「外方」、「内方」などの用語は、特に明記のない限り、便宜上の単語であり、制限用語と解釈すべきではない。その上、群が、複数の要素およびその組合せの群の内の少なくとも1つを含むと記載されているときはいつでも、その群は、個別、または互いの組合せのいずれかで、列挙されたそれらの要素のいくつを含んでも、いくつから実質的になっても、またはいくつからなってもよいことが理解されよう。同様に、群が、複数の要素およびその組合せの群の内の少なくとも1つからなると記載されているときはいつでも、その群は、個別、または互いの組合せのいずれかで、列挙されたそれらの要素のいくつからなってもよいことが理解されよう。特に明記のない限り、値の範囲は、列挙された場合、その範囲の上限と下限の両方、並びにそれらの間のいずれの範囲も含む。ここに用いたように、名詞は、特に明記のない限り、「少なくとも1つ」または「1つ以上」の対象を指す。明細書および図面に開示された様々な特徴は、いずれの組合せおよび全ての組合せで使用できることも理解されよう。
【0065】
概して図面を、特に、図1を参照すると、図解は、特定の実施の形態を記載する目的のためであり、本開示または付随の特許請求の範囲をそれに制限する意図はないことが理解されよう。図面は、必ずしも、一定の縮尺で描かれておらず、図面の特定の特徴および特定の視野は、明確さおよび簡潔さのために、尺度および図式が誇張されて示されていることがある。
【0066】
ここに用いたように、「ガラス物品」という用語は、全体がまたは部分的にガラスから製造されたどの物品も含むように最も広い意味で使用される。特に明記のない限り、全てのガラス組成は、モルパーセント(モル%)で表され、全てのイオン交換浴の組成は、質量パーセント(質量%)で表される。
【0067】
「実質的に」および「約」という用語は、任意の定量的比較、値、測定、または他の表現に帰することがある不確定性の固有の程度を表すためにここに使用してよいことに留意のこと。これらの用語も、定量的表現が、問題となっている主題の基本機能を変化させずに、規定の基準から変動してもよい程度を表すためにここに使用される。それゆえ、例えば、「LiOを実質的に含まない」ガラスは、LiOが、ガラスに積極的に加えられていないまたはバッチ配合されていないが、汚染物質として非常に少量、すなわち、0.1モル%未満で存在するかもしれないものである。「LiOを含まない」とは、ガラスが0モル%のLiOを含有することを意味する。
【0068】
ここに用いたように、「層の深さ」および「DOL」という用語は、FSM-6000応力計測器などの市販の装置を使用して表面応力計測器(FSM)測定によって決定されるような圧縮層の深さを称する。
【0069】
ここに用いたように、「圧縮深さ」および「DOC」という用語は、ガラス内の応力が圧縮応力から引張応力に変わる深さを称する。DOCでは、応力は、正の(圧縮)応力から負の(引張)応力へと交差し、それゆえ、ゼロの値を有する。圧縮深さDOCおよび応力プロファイルは、2012年5月3日にRostislav V. Roussey等により出願され、「Systems And Methods for Measuring the Stress Profile of Ion-Exchanged Glass(以後、「Roussev I」と称する)」と題し、2011年5月25日に出願され、同じ題名を有する米国仮特許出願第61/489800号に優先権を主張する、米国特許第9140543号に記載された、逆ウェンツェル・クラマース・ブリルアン(IWKB)法を使用することによって、TMおよびTE偏波の結合光学モードのスペクトルから決定される。上記特許出願の内容がここに全て引用される。以下に限られないが、屈折近視野(RNF)法、偏光法(例えば、散乱直線偏光分析法(SCALP))、並びにエッチングおよび研磨技法を含む当該技術分野で公知の他の方法を使用して、強化されたガラス物品のDOCおよび応力プロファイルを決定してもよい。
【0070】
ここに用いたように、「物理的中央張力」および「物理的CT」という用語は、ガラス物品の中心または中点(すなわち、tがガラス物品の厚さである場合のt/2)での引張応力を称する。
【0071】
ここに記載されたように、特に明記のない限り、圧縮応力(CS)および中央張力または物理的中央張力(CT)は、メガパスカル(MPa)で表され、層の深さ(DOL)および圧縮深さ(DOC)は、マイクロメートル(μm)で表され、ここで、1μm=0.001mm、厚さtは、ミリメートルで表され、1mm=1,000μmである。
【0072】
当該技術分野に通常用いられる科学的慣例によれば、圧縮は、負(<0)の応力として表され、引張は、正(>0)の応力として表される。しかしながら、本件の記載に亘り、ここに記載された圧縮応力プロファイルをよりよく視覚化するために、圧縮応力CSは、正の値または絶対値として表され-すなわち、ここに挙げられるように、CS=|CS|、中央張力または引張応力は、負の値として表される。
【0073】
ここに用いたように、「勾配(m)」は、直線を厳密に近似する応力プロファイルのセグメントまたは部分の勾配を称する。主勾配は、直線セグメントとしてうまく近似された領域に関する平均勾配として定義される。これらは、応力プロファイルの二次導関数の絶対値が、その領域の深さのほぼ半分での一次導関数の絶対値の比より小さい領域である。例えば、強化されたガラス物品の表面近くの応力プロファイルの急勾配の浅いセグメントに関して、実質的に直線のセグメントは、各点にして、その応力プロファイルの二次導関数の絶対値が、応力の絶対値が2倍変化する深さで割った応力プロファイルの局所勾配の絶対値より小さい部分である。同様に、ガラス内のより深いプロファイルのセグメントに関して、そのセグメントの直線部分は、その応力プロファイルの局所二次導関数が、DOCの半分で割った応力プロファイルの局所勾配の絶対値より小さい絶対値を有する領域である。
【0074】
典型的な応力プロファイルについて、二次導関数に対するこの制限は、その勾配が、深さと共に比較的緩慢に変化し、したがって、適度に明確であり、落下性能に有益であると考えられる応力プロファイルにとって重要である勾配の領域を規定するために使用できることを補償する。
【0075】
深さ「x」の関数としての応力プロファイルを関数
【0076】
【数1】
【0077】
により与え、深さに関する応力プロファイルの一次導関数を
【0078】
【数2】
【0079】
とすると、二次導関数は、
【0080】
【数3】
【0081】
となる。
【0082】
浅いセグメントがほぼ深さdまで延在する場合、主勾配を規定する目的のために、そのプロファイルの直線部分は、
【0083】
【数4】
【0084】
である領域である。
【0085】
深いセグメントが、より大きい深さDOCまで、またはより大きい深さdまで、または慣用名で深さDOLまで延在する場合、ひいては、そのプロファイルの直線部分は、
【0086】
【数5】
【0087】
である領域である。
【0088】
後者の式は、化学強化のためにガラスにおいて交換されているイオン以外に1つのアルカリイオンしか含有しない塩中の単一イオン交換により得られる1-セグメント応力プロファイルにも有効である。
【0089】
好ましくは、その直線セグメントは、dが、浅いかまたは深い、その領域に関する関連深さを表す、
【0090】
【数6】
【0091】
である領域として選択される。
【0092】
ここに記載された圧縮応力プロファイルの直線セグメントの勾配mは、勾配
【0093】
の絶対値として与えられ-すなわち、ここに挙げられるような、mは、
【0094】
と等しい。より詳しくは、勾配mは、圧縮応力が、増加する深さの関数として概して減少するプロファイルの勾配の絶対値を表す。
【0095】
圧縮応力CSおよび層の深さDOLは、化学強化の品質管理ができるように使用されてきた応力プロファイルパラメータである。圧縮応力CSは、表面圧縮の推定値を与え、これは、特にガラスに深い機械的な傷がない場合、ガラス物品の破損を生じるのに必要な応力の量とよく相関する。層の深さDOLは、より大きい(強化)陽イオン(例えば、NaのKによる交換中のK)の貫通の深さの近似指標として使用され、より大きいDOL値がより大きい深さの圧縮層とよく相関し、より深い傷を阻むことによってガラスを保護し、傷により、比較的小さい外部印加応力の条件下で破損が生じるのを防ぐ。
【0096】
ガラス物品の軽微から中程度の曲げでさえも、曲げモーメントにより、表面からの深さに概して線形であり、曲げの外側に最大引張応力を、曲げの内側に最大圧縮応力を、通常は内部にある、いわゆる中立面でゼロ応力を有する応力分布が生じる。強化(tempered)ガラス部品について、この曲げ誘起定勾配応力分布が強化(tempering)応力プロファイルに加わって、外部(曲げ)応力の存在下での正味の応力プロファイルがもたらされる。
【0097】
ガラス物品内に曲げ誘起応力が存在する正味の応力プロファイルは、概して、そのような曲げのない応力プロファイルとは異なる圧縮深さDOCを有する。特に、圧縮深さDOCは、曲げ中にガラス物品の外側で減少している。応力プロファイルが、DOCの近傍のそれより小さい深さで比較的小さい応力勾配を有する場合、DOCは、曲げの存在下で実質的に減少し得る。正味の応力プロファイルにおいて、中程度に深い傷の先端は引張に曝され得、一方で、同じ傷の先端は、曲げのない応力プロファイルの圧縮領域において通常は阻まれるであろう。それゆえ、これらの中程度に深い傷は、成長し、曲げ中に割れ得る。
【0098】
ここに用いたように、「誤差関数」または「Erf」という用語は、0とx/σ√2の間の正規化ガウス関数の積分の2倍の関数を称し、「相補誤差関数」または「Erfc」という用語は、1から誤差関数を引いたものに等しい、すなわち、Erfc=1-Erf(x)である。
【0099】
割れやすい挙動は、ガラス物品が衝撃または攻撃に曝されたときの特定の破壊挙動を称する。ここに用いたように、ガラスは、割れやすさ試験の結果として試験区域において以下の内の少なくとも一方を示す場合に、割れにくいと考えられる:(1)少なくとも1mmの最大寸法を有する4つ以下の破片、および/または(2)分岐点の数が、亀裂分岐の数以下である。破片、分岐点、および亀裂分岐は、衝撃点を中心とする任意の2インチ×2インチ(5.08cm×5.08cm)の正方形に基づいて計数される。それゆえ、ガラスは、下記に記載される手順にしたがって、破損が生じる衝撃点を中心とする任意の2インチ×2インチ(5.08cm×5.08cm)の正方形に関して、試験(1)および(2)の一方または両方を満たす場合に、割れにくいと考えられる。割れやすさ試験において、衝撃プローブがガラスと接触させられ、衝撃プローブがガラス中に延在する深さは、連続した接触の反復で増大する。衝撃プローブの深さの段階的な増加は、ガラスの割れやすい挙動の正確な決定を妨げるであろう過剰な外力の印加を防ぎつつ、衝撃プローブにより生じる傷が、引張領域に到達することができる。1つの実施の形態において、ガラス中の衝撃プローブの深さは、各反復の間に衝撃プローブがガラスとの接触からはずされ、反復毎に約5μm増加するであろう。試験区域は、衝撃点を中心とする任意の2インチ×2インチ(5.08cm×5.08cm)の正方形である。図9は、割れにくさの試験の結果を示している。図9に示されるように、試験区域は、衝撃点130を中心とする正方形であり、正方形の一辺aの長さは2インチ(5.08cm)である。図9に示された割れにくい試料は、3つの破片142、2つの亀裂分岐140、および1つの分岐点150を含む。それゆえ、図9に示された割れにくい試料は、少なくとも1mmの最大寸法を有する破片を4未満含み、分岐点の数は、亀裂分岐の数以下である。ここに用いたように、亀裂分岐は衝撃点から出ており、破片は、破片のいずれかの部分が試験区域中に延在する場合、試験区域内にあると考えられる。コーティング、接着層などを、ここに記載された強化されたガラス物品と共に使用してよいが、ガラス物品の割れやすさまたは割れやすい挙動を決定する際に、そのような外部的制約は使用されない。いくつかの実施の形態において、ガラス物品の破壊挙動に影響しない膜を、割れやすさ試験の前にガラス物品に施して、ガラス物品からの破片の放出を防ぎ、試験を実施する人の安全性を増してもよい。
【0100】
割れやすい試料が図10に示されている。この割れやすい試料は、少なくとも1mmの最大寸法を有する破片142を5つ含む。図10に示された試料は、2つの亀裂分岐140および3つの分岐点150を含み、亀裂分岐より多い分岐点を生じている。それゆえ、図10に示された試料は、4つ以下の破片も、亀裂分岐の数以下の分岐点の数のいずれも示さない。
【0101】
ここに記載された割れやすさ試験において、衝撃は、強化されたガラス物品内に存在する内部貯蔵エネルギーを放出するのに丁度十分な力で、ガラス物品の表面に送達される。すなわち、点衝撃力は、強化されたガラスシートの表面に少なくとも1つの新たな亀裂を生じ、その亀裂を、圧縮応力CS領域(すなわち、層の深さ)を通って中央張力CT下にある領域中に延在させるのに十分である。
【0102】
したがって、ここに記載された化学強化ガラスは「割れにくい」-すなわち、それらは、鋭い物体による衝撃に曝されたときに、上述したような割れやすい挙動を示さない。
【0103】
0.1mm≦t<0.4mm(100μm≦t<400μm)、0.1mm≦t≦0.38mm(100μm≦t≦380μm)、0.1mm≦t≦0.35mm(100μm≦t≦350μm)、およびその中に含まれる任意の部分的範囲などのように、0.1mm≦t≦0.4mm(100μm≦t≦400μm)の厚さtを有するガラスがここに開示されている。そのガラスは、化学強化されており、ガラス物品の表面から圧縮深さDOC(ここでは、「DOC」とも称される)まで延在する圧縮層、および圧縮深さからガラス物品の中央領域まで延在する引張領域を有する。その引張領域は、tがマイクロメートルで表される、CT>|-1.956×10-16×t+1.24274×10-12×t-3.09196×10-9×t+3.80391×10-6×t-2.35207×10-3×t+5.96241×10-1×t+36.5994|である物理的中央張力CT下にある。そのガラスは、鋭い破損誘発衝撃に曝されたときに、壊れやすさなどの望ましくない挙動を示さない;すなわち、そのガラスは割れにくい。
【0104】
イオン交換されたガラス物品の断面図が、図1に示されている。ガラス物品100は、厚さt、第一面110、および第二面112を有する。ガラス物品100は、いくつかの実施の形態において、約1mmまでの厚さtを有する。図1に示された実施の形態は、平らな平面シートまたはプレートとしてガラス物品100を示しているが、ガラス物品は、三次元形状または非平面形態などの他の形態を有してもよい。ガラス物品100は、第一面110からガラス物品100の内部への圧縮深さ(DOC)dまで延在する第1の圧縮層120を有する。図1に示された実施の形態において、ガラス物品100は、第二面112から第2の圧縮深さdまで延在する第2の圧縮層122も有する。第1と第2の圧縮層120、122の各々は、圧縮応力CS下にある。いくつかの実施の形態において、第1と第2の圧縮層120、122の各々は、それぞれ、第一面110と第二面112で最大の圧縮応力を有する。ガラス物品は、dからdまで延在する中央領域130も有する。中央領域130は、引張応力または物理的中央張力(CT)下にあり、これが、層120および122の圧縮応力を打ち消すまたは相殺する。第1と第2の圧縮層120、122の圧縮深さd、dは、ガラス物品100の第一面と第二面110、112に対する鋭い障礙かにより生じる傷の伝播からガラス物品100を保護し、一方で、圧縮応力が、第1と第2の圧縮層120、122の深さd、dを貫通する傷の可能性を最小にする。
【0105】
いくつかの実施の形態において、圧縮深さ「DOC」は、少なくとも0.1t、少なくとも0.15t、およびそれに入る任意の部分的な範囲などのように、0.05tより大きい。圧縮深さDOCは、いくつかの実施の形態において、約0.22tの最大値を有する(すなわち、DOC≦0.22t)。
【0106】
前記ガラスは、いくつかの実施の形態において、イオン交換されており、ガラスの表面で約200MPaから約950MPaの範囲の最大圧縮応力「CS1」を有する。いくつかの実施の形態において、強化ガラスの圧縮層は圧縮応力プロファイルを有する-すなわち、圧縮応力は、ガラスの表面下の深さの関数として変化する。圧縮応力プロファイルの少なくとも一部は、線形であり、その線形部分は勾配「m1」を有し、ここで、-200MPa/μm≦m1≦-1MPa/μm、または勾配の絶対値「|m1|」で表した場合、200MPa/μm≧|m1|≧1MPa/μmである。いくつかの実施の形態において、-20MPa/μm≦m1≦-1.2MPa/μm、または20MPa/μm≧|m1|≧1.2MPa/μm;-15MPa/μm≦m1≦-1.5MPa/μm、または15MPa/μm≧|m1|≧1.5MPa/μm;およびそれに含まれる任意の部分的な範囲などのように、-20MPa/μm≦m1≦-1.2MPa/μm、または20MPa/μm≧|m1|≧1.2MPa/μmである。
【0107】
応力プロファイルは、いくつかの実施の形態において、表面から深さ「D1」まで延在する第2の領域をさらに含む。D1は、少なくとも約5μmから約17μmまでの範囲にある。いくつかの実施の形態において、D1は、少なくとも約9μmなどのように少なくとも約7μmである。いくつかの実施の形態において、D1は、約13μm以下などのように、約15μm以下である。その第2の領域は、表面から約5μmまでの深さまで延在する線形部分を含む。その線形部分は勾配「m2」を有し、-200MPa/μm≦m2≦-30MPa/μm、または勾配の絶対値「|m2|」で表した場合、200MPa/μm≧|m2|≧30MPa/μmである。いくつかの実施の形態において、-120MPa/μm≦m2≦-45MPa/μm、または120MPa/μm≧|m2|≧45MPa/μm;およびそれに含まれる任意の部分的な範囲などのように、-160MPa/μm≦m2≦-40MPa/μm、または160MPa/μm≧|m2|≧40MPa/μmである。
【0108】
いくつかの実施の形態において、そのガラスは、ガラスが、約25質量%から約100質量%の硝酸カリウム(KNO)および0質量%から約75質量%の硝酸ナトリウム(NaNO)を含むイオン交換浴中に浸漬される、一段階イオン交換(SIOX)プロセスにより強化される。そのイオン交換は、約300℃から約500℃の範囲の温度で行われる。浴の性能を改善するために、ケイ酸などの追加の物質をイオン交換浴に加えてもよい。
【0109】
いくつかの実施の形態において、SIOXプロセスにより得られる圧縮応力プロファイルは、ガラス内の深さの関数としての圧縮応力(CS)のプロットである、図2に概略示されるように、圧縮領域内で実質的に線形である。図2において、圧縮応力は、実質的に線形挙動を示し、「CS」で垂直なy軸と交差する、MPa/μmで表される勾配「m」を有する直線の圧縮応力プロファイル「a」がもたらされる。CSプロファイルaは、圧縮深さDOCである点「d」でx軸と交差する。この点で、全応力はゼロである。DOCより下では、ガラス物品は張力下にあり、ガラス物品を通ってほぼ中程まで(すなわち、約t/2)中央の物理的中央張力に到達する。
【0110】
いくつかの実施の形態において、ここに記載されたガラス物品の圧縮応力プロファイルaは、SIOX工程後に、特定の範囲内にある勾配mを有する。勾配mは、いくつかの実施の形態において、表面での圧縮応力CSの圧縮深さDOCに対する比(すなわち、CS/DOC)として解釈される。図2において、例えば、線aの勾配mは、上限境界δと下限境界δの間にある。ここに記載されるように、勾配m、上限境界δ、および下限境界δは、絶対値で表される;それゆえ、δ≧m≧δは、|δ|≧|m|≧|δ|と同等である。いくつかの実施の形態において、一段階イオン交換により、1MPa/μmから約200MPa/μmの範囲(2MP/μm≦|m|≦8MPa/μm、3MP/μm≦|m|≦6MPa/μm、2MP/μm≦|m|≦4.5MPa/μm、およびそれに含まれる任意の部分的な範囲などのような、1MP/μm≦|m|≦200MPa/μm)の絶対値|m|を有する勾配mを有する圧縮応力プロファイルが生じる。あるいは、勾配mは、表面応力計測器測定により決定され、表面での圧縮応力CSのDOLに対する比(すなわち、CS/DOL)として計算される、層の深さ(DOL)に関して表されてもよい。DOLに関して表される場合、勾配mの絶対値|m|は、約0.6MPa/μmから約15MPa/μm、約0.8MPa/μmから約10MPa/μm、約1.5MPa/μmから約10MPa/μm、およびそれに含まれる任意の部分的な範囲などのように約0.6MPa/μmから約200MPa/μmの範囲にある。
【0111】
いくつかの実施の形態において、前記ガラスは、二段階イオン交換(DIOX)プロセスにより強化される。ここでは、ガラスに、最初に、SIOXプロセスが施されて、深い圧縮深さDOCまたは層の深さDOLを得る。次に、そのガラスに、少なくとも95質量%のKNO、いくつかの実施の形態において、少なくとも97質量%のKNO、さらに他の実施の形態において、100質量%のKNOを含む浴中での第2のイオン交換が施される。第2のイオン交換工程は、典型的に、約5分から約30分に及ぶ時間に亘り、約370℃から約410℃に及ぶ温度で行われる。特別な実施の形態において、第2のイオン交換は、約12分間に亘り約390℃で行われる。DIOXプロセス後の圧縮深さDOCは、約0.1tから約0.20t、およびそれに含まれる任意の部分的な範囲などのような、約0.05tから約0.22tの範囲にある。
【0112】
DIOXプロセスから得られた圧縮応力プロファイルは、図3に概略示されるように、複数の実質的に線形関数の組合せである。図3から分かるように、その圧縮応力プロファイルは、第1のセグメントまたは部分「a’」および第2のセグメントまたは部分「b」を有する。第1の部分a’の少なくとも一部は、ガラス物品の強化表面から深さ「da’」まで実質的に線形挙動を示す。部分a’は、勾配「ma’」およびガラスの表面での圧縮応力であるy切片の「CS」を有する。いくつかの実施の形態において、深さda’は、約10μmから約13μmの範囲にある。その圧縮応力プロファイルの第2の部分bは、第1のイオン交換工程、すなわちSIOX工程の結果であり、ほぼ深さda’から圧縮深さDOCまで延在し、勾配「m」を有する。第2のイオン交換実験後、mの絶対値「|m|」で表される、プロファイルのSIOX部分の勾配mは、約1.2MPa/μmから約20MPa/μm、約1.5MPa/μmから約15MPa/μm、およびそれに含まれる任意の部分的な範囲などのように、約1MPa/μmから約30MPa/μmの範囲にある。ma’の絶対値(すなわち、|ma’|)で表される、プロファイルのDIOX部分の勾配ma’は、約40MPa/μmから約160MPa/μm、約45MPa/μmから約120MPa/μm、およびそれに含まれる任意の部分的な範囲などのように、約30MPa/μmから約200MPa/μmの範囲にある。あるいは、応力プロファイルのDIOX部分の勾配ma’は、表面応力計測器測定により決定され、表面での圧縮応力CSの層の深さDOLに対する比(すなわち、CS/DOL)として計算される、層の深さ(DOL)に関して表されてもよい。DOLに関して表される、応力プロファイルのDIOX部分の勾配ma’は、約40MPa/μmから約160MPa/μm、約45MPa/μmから約120MPa/μm、およびそれに含まれる任意の部分的な範囲などのように約40MPa/μmから約200MPa/μmの範囲にある。
【0113】
深さda’での圧縮応力「CS(da’)」は、式
【0114】
【数7】
【0115】
により与えられる。
【0116】
非限定的例において、物理的中央張力「CT」は、厚さ「t」が約100μmであるときに、約200MPaであり、物理的CTは、厚さが200μmであるときに、約135MPaであり、物理的CTは、厚さが300μmであるときに、約96.7MPaである。
【0117】
いくつかの実施の形態において、DOCは、0.05tから約0.22tの範囲にあり(0.05・t≦DOC≦0.22・t)、tはガラスの厚さである。
【0118】
前記圧縮層は、約500MPaから約950MPa(500MPa≦CS≦950MPa)、およびそれに含まれる任意の部分的な範囲などのように、ガラスの表面で約200MPaから約950MPa(200MPa≦CS≦950MPa)の範囲にある最大圧縮応力CSを有する。
【0119】
ここに記載されたガラスは、イオン交換可能なアルカリアルミノケイ酸塩ガラスであり、これは、いくつかの実施の形態において、当該技術分野で公知の、スロットドロー法またはフュージョンドロー法などのダウンドロー法により成形できる。特別な実施の形態において、そのようなガラスは、少なくとも約130kPなどのように、少なくとも約100キロポアズ(kP)の液相粘度を有することがある。1つの実施の形態において、そのアルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、SiO、Al、P、および少なくとも1種類のアルカリ金属酸化物(RO)を含み、ここで、0.75≦[(P(モル%)+RO(モル%))/M(モル%)]≦1.2、ここで、M=Al+Bである。いくつかの実施の形態において、そのアルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、約40モル%から約70モル%のSiO、0モル%から約28モル%のB、0モル%から約28モル%のAl、約1モル%から約14モル%のP、および約12モル%から約16モル%のROを含むかまたはそれから実質的になり、特定の実施の形態において、約40モル%から約64モル%のSiO、0モル%から約8モル%のB、約16モル%から約28モル%のAl、約2モル%から約12モル%のP、および約12モル%から約16モル%のROを含むかまたはそれから実質的になる。いくつかの実施の形態において、11モル%≦M≦30モル%、いくつかの実施の形態において、13モル%≦RO≦30モル%、式中、ROは、ガラス中に存在するアルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、および遷移金属一酸化物の合計であり、さらに他の実施の形態において、ガラスはリチウムを含まない。これらのガラスは、その内容がここに全て引用される、2011年11月28日に、Dana Craig Bookbinder等により出願され、「Ion Exchangeable Glass with Deep Compressive Layer and High Damage Threshold」と題し、2010年11月30日に出願され、同じ題名を有する米国仮特許出願第61/417941号からの優先権を主張する、米国特許第9346703号の明細書に記載されている。
【0120】
特定の実施の形態において、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、少なくとも約4モル%のPを含み、(M(モル%)/RO(モル%))<1、M=Al+B、ROは、ガラス中に存在するアルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、および遷移金属一酸化物の合計である。いくつかの実施の形態において、そのアルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、および遷移金属一酸化物は、LiO、NaO、KO、RbO、CsO、MgO、CaO、SrO、BaO、およびZnOからなる群より選択される。いくつかの実施の形態において、そのガラスは、リチウムを含まず、約40モル%から約70モル%のSiO、約11モル%から約25モル%のAl、約4モル%から約15モル%のP、約13モル%から約25モル%のNaO、約13モル%から約30モル%のRO(ROは、ガラス中に存在するアルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、および遷移金属一酸化物の合計である)、約11モル%から約30モル%のM(M=Al+B)、0モル%から約1モル%のKO、0モル%から約4モル%のB、および3モル%以下の、TiO、MnO、Nb、MoO、Ta、WO、ZrO、Y、La、HfO、CdO、SnO、Fe、CeO、As、Sb、Cl、およびBrの内の1つ以上から実質的になり、1.3<[(P+RO)/M]≦2.3、ROは、ガラス中に存在する一価陽イオン酸化物の合計である。いくつかの実施の形態において、そのガラスはリチウムを含まない。このガラスは、両方とも、2011年11月16日に出願された米国仮特許出願第61/560434号に優先権を主張している、2012年11月15日に出願された、「Ion Exchangeable Glass with High Crack Initiation Threshold」と題する、Timothy M. Grossによる米国特許9156724号、および2012年11月15日に出願された、「Ion Exchangeable Glass with High Crack Initiation Threshold」と題する、Timothy M. Grossによる米国特許8756262号の各明細書に記載されている。上記特許および出願の内容は、ここに全て引用される。
【0121】
イオン交換されたガラスにおける応力プロファイルの形状および値は、以前は、中央張力限界-すなわち、ガラスが圧縮応力層を貫通するのに十分な衝撃を受けたときに、それより上では、割れやすい挙動が観察されると予測される中央張力-により制限されると考えられていた。この限界は、通常、x=t/2の位置でのガラスの中心の引張応力の値である、中央張力CTに関して表された。この中央張力は、イオン交換過程中の試料に誘発された圧縮応力の力平衡のために、必然的に生じる。応力プロファイルの圧縮部分における各点での応力の積分または合計は、そのプロファイルの引張部分における各点での応力の積分または合計と等しくなければならず、よって、ガラス物品は、イオン交換過程によって湾曲したり、歪んだりしていない。
【0122】
単一イオン交換プロセスにより得られる応力プロファイルにおいて、イオン拡散は、古典的相補誤差関数により導かれると仮定される。これにより、物理的中央張力CT限界が制限され、CT限界は、厚さの関数としての物理的中央張力CT限界のプロットである図4に示されるように、厚さにより変動することが実験的に示された。図4において、中央張力限界のデータは、単一イオン交換(SIOX)について与えられ、近似された相補誤差関数(erfc)形状(線B)にしたがう。このCT限界は、tがマイクロメートルで表される、式
【0123】
【数8】
【0124】
により与えられる。
【0125】
100μmから1200μmに及ぶガラスの厚さに関して、他の物理的中央張力限界値を決定するために、曲線(図4の線A)が使用されることがある。曲線Aに基づいて、厚さが300μmであるイオン交換されたガラス物品に関する物理的CT限界は約97MPaであり、200μmのガラス厚では、CT限界は約135MPaであり、100μmのガラス厚では、CT限界は約200MPaである。
【0126】
二重イオン交換(DIOX)プロセスにより厚さが200μmのガラス試料に生じた応力プロファイルの例が、図5に示されている。図6は、図5の一部を詳細に示している。これらの応力プロファイルは、先に記載された逆ウェンツェル・クラマース・ブリルアン(IWKB)法を使用することによって、TMおよびTE偏波の結合光学モードのスペクトルから決定した。第1のイオン交換工程は、NaNOおよびKNOの混合物である「汚染された」(すなわち、30質量%超のNaNOを含む)浴内で行った。第2のイオン交換工程は、汚染がほとんどない、大部分が(すなわち、96質量%以上)KNOであるイオン交換浴内で行われ、応力プロファイルに「スパイク」(すなわち、ガラスの表面での圧縮応力の急増)が生じる。ここに記載されたガラス厚(0.1~0.4mm)について、互いに反対の表面からガラス中に拡散するイオンは、かなり短いイオン交換時間でガラスの中心t/2で出合うであろう。拡散イオンが中心t/2に到達する前に、第1のイオン交換工程により生じた応力プロファイルは、相補誤差関数(Erfc)の形状をとる。拡散イオンがガラスの中心に到達した後、第1のイオン交換工程により得られた全体の応力プロファイルは、放物線関数に似ている。前記スパイクは、応力プロファイルの勾配に変化を生じ、表面でより大きい圧縮応力をもたらす。圧縮深さ(DOC)は、圧縮応力がゼロである点(すなわち、応力が圧縮応力から引張応力に移行する点)である。中央張力は、ガラスの互いに反対の主面の間の中心または中点(すなわち、t/2)の応力の値である。
【0127】
200μmの初期厚を有するイオン交換済みガラスに、一連の実験を行った。試料を、最初に、1.5時間、2時間、4時間、8時間、12時間、14時間、および16時間に亘り約450℃で、汚染されたイオン交換浴(49質量%のNaNO//51質量%のKNO)内でイオン交換し、その後、純粋な(100質量%の)KNOの第2の浴内で12分(0.2時間)に亘り約390℃でイオン交換した。これらのイオン交換済みガラス試料のいずれも、衝撃試験を行ったときに、壊れやすい挙動を示さず、イオン交換浴からのイオンが、ガラスの割れやすい挙動をもたらさずに、どれだけの期間に亘っても拡散するであろう領域があることを示した。これは、圧縮応力スパイクを得るために使用した1つ(または複数)のイオン交換浴の汚染のレベルのせいであろう。この最小レベルの汚染は、図5に記載されるような、所定の厚さに関して最大の許容CTに相関するまたは対応するであろう。イオン交換浴の汚染が最小レベルを超えると、ここに記載されたガラスに関する物理的中央張力CTは、割れやすい挙動を示さずに、CT限界を超えるであろう(すなわち、CTは式(8)に与えられた割れやすさ限界を超える)。それゆえ、ガラスにおける最大物理的張力CTの下限は、tがマイクロメートルで表される、式:
【0128】
【数9】
【0129】
により与えられるであろう。
【0130】
割れやすい挙動を生じずに、イオンが無制限に拡散するであろう条件に到達するのに必要なイオン交換浴の汚染のレベルが推定され、実験的に確認された。図7は、単一イオン交換(SIOX)プロセスに関するガラス厚の関数としてのCT限界(線A)およびイオン交換浴のNaNO汚染の最小レベル(線B)のプロットである。線Bより上の汚染レベルでは、割れやすい挙動を生じずに、イオンは無制限に拡散できる。
【0131】
ガラスに第2のイオン交換を施して、ガラスの表面に圧縮応力の急増すなわち「スパイク」を与える場合、割れやすさを生じずにイオンが無制限に拡散する最小浴汚染レベルは、移動する。ガラス厚の関数としてのCT限界(線A)およびイオン交換浴のNaNO汚染の最小レベル(線B)が、図8に、二段階または二重イオン交換(DIOX)プロセスに関して、プロットされている。一段階イオン交換(図2)に関するように、汚染レベルが線Bの下限を超えたときに、割れやすさを達成せずに、イオンは無制限に拡散するであろう。二段階イオン交換に関して、390℃での12分間に亘る100質量%のKNOの浴中でのイオン交換から生じるイオン拡散は、試料中に追加の応力を誘発し、これにより、試料中に誘発した追加の応力を相殺するために、最小汚染限界が移動する。この二段階イオン交換プロセスは、上述した拡散効果を達成するのに必要な最小汚染レベルを約10%だけ増加させる。
【0132】
実質的に非線形拡散のガラスに関する、応力プロファイルの形状、圧縮層の深さDOL、物理的中央張力CT、および割れやすい挙動の閾値を経験的モデルから得て、表1に纏めることができる。モデルに基づくと、割れやすい挙動は、ガラスに、実質的に純粋なKNOの溶融塩浴内で単一イオン交換を施して、約27μmの層の深さDOL、約820MPaの表面での最大圧縮応力CS、および約107±5MPaの物理的CTを達成したときの、厚さ200μm(0.2mm)のアルカリアルミノケイ酸塩ガラスに予測される。このガラスの圧縮深さDOCは、約21.5μmであると推測される。高いCSが、薄いガラスカバーの用途などの用途における強度に望ましい一方で、21.5μmの小さい圧縮深さDOCは、傷導入により生じる破壊の懸念である。別の例では、約5質量%のNaNOを含有し、残りが実質的にKNOである単一浴内でのイオン交換(SIOX)により、CSが減少し、DOLが増加する。割れやすい挙動の開始は、ここで、約610MPaのCS、約26.8μmのDOC、および約113±5MPaの物理的CTと共に、約36.5μmのDOLで生じる。別の例で、約10質量%のNaNOを有し、残りが実質的にKNOであるイオン交換混合物において、DOLが約47μmであり、CSが約490Mpaであり、DOCが約31.5μmであり、物理的CTが約120±5MPaであるときに、割れやすい挙動に迫る。このDOCは、純粋なKNO浴中で調製した試料のものよりもほぼ50%大きく、傷の導入に対して実質的により良い保護を与えるであろうし、したがって、システム設計全体により、傷の導入に対してガラスがそれほど保護されない用途に好ましいであろう。
【0133】
【表1】
【0134】
経験的モデルの一例において、約57モル%のSiO、0モル%のB、約17モル%のAl、約7%のP、約17モル%のNaO、約0.02モル%のKO、および約3モル%のMgOの公称組成、並びに200μmの厚さを有するアルカリアルミノケイ酸塩ガラスに、二段階イオン交換プロセスを施す。約51質量%のKNOおよび約49質量%のNaNOを含有する溶融イオン交換浴中において約5.5時間に亘り約450℃で第1のイオン交換を行い、約87μmの最大のDOLでの圧縮応力、および約114MPaまでの物理的CTを生じる。第1のイオン交換工程後の層の深さDOLは、tが厚さである、約0.3tから約0.44tの範囲にある。次に、そのガラスに、390℃で15分間に亘り、約0.5質量%のNaNOおよび約99.5質量%のKNOを含有する浴において第2のイオン交換工程を施す。第2のイオン交換工程後、CSは、表面で約796MPaであり、第2のイオン交換工程により生じた浅い急激な「スパイク」領域は、ガラスの表面から約12~13μmの深さまで延在した。第2の工程後の物理的CTは、約154MPaであり、表面での急なCSスパイクにより深いイオン交換のこの状態の壊れやすさの開始に近いと推定される。圧縮深さは、第2のイオン交換工程でスパイクを追加する前は、約44μmであり、スパイク後には、約34.5μmである。この圧縮領域内のプロファイルの深い(すなわち、約13μmの深さからDOLまたはDOCまで延在する応力プロファイルのセグメント)部分の勾配は、約4.5MPa/μmである。この例において、DOLは、tがガラスの厚さである、約0.435tであり、基板の2つの端部からのK濃度プロファイルは、ガラスの中心(t/2)に辛うじて到達する。いくつかの実施の形態において、圧縮領域の深い部分の勾配の絶対値は、約2MPa/μmから約15MPa/μmの範囲にある。
【0135】
経験的モデルの別の例において、約57モル%のSiO、0モル%のB、約17モル%のAl、約7%のP、約17モル%のNaO、約0.02モル%のKO、および約3モル%のMgOの公称組成、並びに200μmの厚さを有するアルカリアルミノケイ酸塩ガラスに、二段階イオン交換プロセスを施す。約57質量%のKNOおよび約43質量%のNaNOを含有する溶融イオン交換浴中において約4.8時間に亘り約450℃で第1のイオン交換を行う。第1のイオン交換工程後、ガラスの表面での最大圧縮応力は218MPaであり、層の深さDOLは約87μmであり、物理的CTは約129MPaであった。第1のイオン交換工程後、DOLが約0.3tから約0.44tの範囲にあることが好ましい。390℃で12分間に亘り、約2.5質量%のNaNOおよび約95質量%のKNOを含有する浴において第2のイオン交換工程を行った。第2の工程後のCSは約720MPaであり、第2の工程により生じた浅い急激な「スパイク」領域は、ガラスの表面から約11μmの深さまで延在した。第2の工程後の物理的CTは、約158MPaであり、表面での急なCSスパイクにより、深いイオン交換のこの状態の壊れやすさの開始に近いと推定される。圧縮深さDOCは、第2のイオン交換工程でスパイクを追加する前は、約44μmであり、スパイクの形成後には、約38μmである。この圧縮領域内のプロファイルの深い部分の勾配の絶対値は、約5MPa/μmである。この例において、DOLは約0.435tであり、基板の2つの端部からのK濃度プロファイルは、ガラスの中心(t/2)に辛うじて到達する。
【0136】
経験的モデルの別の例において、200μmの厚さ、並びに約57モル%のSiO、0モル%のB、約17モル%のAl、約7%のP、約17モル%のNaO、約0.02モル%のKO、および約3モル%のMgOの公称組成を有するアルカリアルミノケイ酸塩ガラスに、二段階イオン交換プロセスを施す。約58質量%のKNOおよび約42質量%のNaNOを含有する溶融イオン交換浴中において約4.25時間に亘り約450℃で第1のイオン交換を行う。第1のイオン交換工程後、ガラスの表面での最大圧縮応力は229MPaであり、層の深さDOLは約82μmであり、物理的CTは約123MPaであった。390℃で12分間に亘り、約2.5質量%のNaNOおよび約95質量%のKNOを含有する浴において第2のイオン交換工程を行った。第2の工程後のCSは約730MPaであり、第2の工程により生じた浅い急激な「スパイク」領域は、ガラスの表面から約11μmの深さまで延在した。第2の工程後の物理的CTは、約153MPaであり、表面での急なCSスパイクにより、深いイオン交換のこの状態の壊れやすさの開始に近いと推定される。圧縮深さDOCは、第2のイオン交換工程でスパイクを追加する前は、約43μmであり、スパイクの形成後には、約37μmである。この圧縮領域内のプロファイルの深い部分の勾配は、約5.3MPa/μmである。この特定の実施の形態において、第1の工程後の層の深さは、約0.3tと約0.43tの間、いくつかの実施の形態において、約0.35tと約0.42tの間にあるべきである。
【0137】
図4に示された実験的な物理的中央張力CT限界は、0.15以下の厚さtに対するDOCの比を概して有する応力プロファイルに得られた。より高いDOC/t比を有する割れにくい試料と割れやすい試料の観察に基づいて、厚さの関数としての物理的中央張力の上(すなわち、割れやすさ)限は、圧縮深さおよび応力プロファイルが比較的深い、例えば、DOC>0.12t、いくつかの実施の形態において、DOC>0.15tである場合、より大きい。割れにくいためには、ここに記載されたイオン交換済みガラスの物理的中央張力CTは、この上限を超えないべきである。いくつかの実施の形態において、物理的CTの上限「CT上限」は、式
【0138】
【数10】
【0139】
および、特定の実施の形態において、
【0140】
【数11】
【0141】
により与えられる。
【0142】
式(11)において与えられるCT限界は、単一(SIOX)または二重(DIOX)イオン交換プロセスにより達成される圧縮深さDOCが約0.22t未満かつ約0.18t超(すなわち、0.18t<DOC<0.22t)である場合に、特に推奨される。例えば、割れやすい挙動などの望ましくない挙動を避けるために、DIOXプロセスの第2の工程後の、087μmのDOLおよび38μmのDOCを有するイオン交換済みの0.2mm厚のガラス試料は、式(11)により与えられるCT上限値以下の物理的CTを有するべきである。式(11)は、基板の中心にあるイオン交換浴からのイオンの濃度がイオン交換の結果として計れる程度に増加し始める場合に、SIOXプロセスにより達成される応力プロファイルにも使用してよい。
0.16t<DOC<0.19tの実施の形態において、物理的CTは、低下した上限:
【0143】
【数12】
【0144】
を超えるべきではなく、これは、DIOXプロセスの第2の工程後に、DOLが約82μmであり、DOCが約37μmであった、0.2mm厚の例に課せられた。
【0145】
ここに開示された強化物品は、ディスプレイを備えた物品(またはディスプレイ物品)(例えば、携帯電話、タブレット、コンピュータ、ナビゲーションシステムなどを含む家庭用電化製品)、建築物品、輸送物品(例えば、自動車、列車、航空機、船舶など)、電気器具、またはある程度の透明性、引っ掻き抵抗性、耐摩耗性、またはその組合せを必要とする任意の物品などの別の物品に組み込むことができる。ここに開示された強化物品のいずれかが組み込まれた例示の物品が、図11Aおよび11Bに示されている。詳しくは、図11Aおよび11Bは、前面204、背面206、および側面208を有する筐体202;その筐体内に少なくとも部分的に内部にある、または完全に中にあり、少なくとも制御装置、メモリ、および筐体の前面またはそれに隣接してあるディスプレイ210を含む電子部品(図示せず);およびそのディスプレイを覆うように筐体の前面にあるまたはそれを覆うカバー基板212を含む家庭用電子機器200を示している。いくつかの実施の形態において、カバー基板212および/または筐体は、ここに開示された強化物品のいずれかを含むことがある。
【0146】
典型的な実施の形態を説明目的のために述べてきたが、先の記載は、本開示の範囲または添付の特許請求の範囲に対する限定と考えるべきではない。したがって、本開示または付随の特許請求の範囲の精神および範囲から逸脱せずに、様々な改変、適用および代替手段が当業者に想起されるであろう。
【0147】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0148】
実施形態1
ガラス物品において、該ガラス物品は、0.1mm≦t<0.4mmである厚さt、該ガラス物品の表面から圧縮深さDOCまで延在する圧縮層、および該圧縮深さから該ガラス物品の中央領域まで延在する引張領域を有し、該引張領域は、tがマイクロメートルで表される、CT>|-1.956×10-16×t+1.24274×10-12×t-3.09196×10-9×t+3.80391×10-6×t-2.35207×10-3×t+5.96241×10-1×t+36.5994|である物理的中央張力CT下にある、ガラス物品。
【0149】
実施形態2
0.05t≦DOC≦0.22tである、実施形態1に記載のガラス物品。
【0150】
実施形態3
前記圧縮層が、前記表面で、200MPa≦CS1≦950MPaである圧縮応力CS1を有する、実施形態1または2に記載のガラス物品。
【0151】
実施形態4
前記ガラス物品がイオン交換されている、実施形態1から3いずれか1つに記載のガラス物品。
【0152】
実施形態5
前記圧縮層が応力プロファイルを有し、該応力プロファイルの少なくとも一部が、線形であり、勾配m1を有し、200MPa/μm≧|m1|≧1MPa/μmである、実施形態1から4いずれか1つに記載のガラス物品。
【0153】
実施形態6
20MPa/μm≧|m1|≧1.2MPa/μmである、実施形態5に記載のガラス物品。
【0154】
実施形態7
前記応力プロファイルが、前記表面から深さD1までの深さまで延在する第2の領域をさらに含み、9μm≦D1≦17μmであり、該第2の領域は、該表面から約5μmまでの深さまで延在する線形部分を有し、勾配m2を有し、200MPa/μm≧|m2|≧30MPa/μmである、実施形態6に記載のガラス物品。
【0155】
実施形態8
160MPa/μm≧|m2|≧40MPa/μmである、実施形態7に記載のガラス物品。
【0156】
実施形態9
前記ガラス物品がアルカリアルミノケイ酸塩ガラスから作られている、実施形態1から8いずれか1つに記載のガラス物品。
【0157】
実施形態10
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラスが約10モル%までのLiOを含む、実施形態9に記載のガラス物品。
【0158】
実施形態11
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラスがリチウムを含まない、実施形態9に記載のガラス物品。
【0159】
実施形態12
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラスが、少なくとも約4モル%のPおよび0モル%から約5モル%のBを含み、1.3<[(P+RO)/M)]≦2.3、M=Al+B、ROは、該アルカリアルミノケイ酸塩ガラス中に存在する一価陽イオン酸化物の合計である、実施形態9に記載のガラス物品。
【0160】
実施形態13
11モル%≦M≦30モル%である、実施形態12に記載のガラス物品。
【0161】
実施形態14
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラスが、約40モル%から約70モル%のSiO、約11モル%から約25モル%のAl、0モル%から約5モル%のB、約4モル%から約15モル%のP、約13モル%から約25モル%のNaO、および0モル%から約1モル%のKOを含む、実施形態12に記載のガラス物品。
【0162】
実施形態15
Oが、前記ガラス中に存在するアルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、および遷移金属一酸化物の合計であり、13モル%≦RO≦30モル%である、実施形態12に記載のガラス物品。
【0163】
実施形態16
前記物理的中央張力CTが約200MPa以下である、実施形態1から15いずれか1つに記載のガラス物品。
【0164】
実施形態17
前記中央張力CTが約135MPa以下である、実施形態16に記載のガラス物品。
【0165】
実施形態18
DOC>0.15t、CT(MPa)≦(85/√t(mm))である、実施形態1から17いずれか1つに記載のガラス物品。
【0166】
実施形態19
0.18t<DOC<0.22t、CT(MPa)≦(79/√t(mm))である、実施形態18に記載のガラス物品。
【0167】
実施形態20
前記ガラス物品が割れにくい、実施形態1から19いずれか1つに記載のガラス物品。
【0168】
実施形態21
家庭用電化製品において、
前面、背面および側面を有する筐体、
前記筐体内に少なくとも部分的に設けられた電気部品であって、少なくとも、制御装置、メモリ、および該筐体の前面にまたはそれに隣接して設けられたディスプレイを含む電子部品、および
前記ディスプレイ上に配置された実施形態1から20いずれか1つに記載のガラス物品、
を備えた家庭用電化製品。
【0169】
実施形態22
ガラス物品において、該ガラス物品は、0.1mm≦t<0.4mmである厚さtを有し、
a.該ガラス物品の表面から圧縮深さDOCまで延在し、応力プロファイルを有する圧縮層であって、該応力プロファイルは、
i.少なくとも第1の深さD1から前記圧縮深さDOCまで延在する第1の領域であって、該第1の領域の少なくとも一部は、線形であり、勾配m1を有し、20MPa/μm≧|m1|≧1.2MPa/μm、9μm≦D1≦17μmである、第1の領域;および
ii.前記表面から前記第1の深さD1までの深さまで延在する第2の領域であって、該第2の領域は、該表面から約5μm以下の深さまで延在する線形部分を有し、勾配m2を有し、200MPa/μm≧|m2|≧30MPa/μmである、第2の領域;
を含むものである、圧縮層、並びに
b.前記圧縮深さから前記ガラス物品の中央領域まで延在する引張領域であって、tがマイクロメートルで表される、CT>|-1.956×10-16×t+1.24274×10-12×t-3.09196×10-9×t+3.80391×10-6×t-2.35207×10-3×t+5.96241×10-1×t+36.5994|である物理的中央張力CT下にある引張領域、
を含む、ガラス物品。
【0170】
実施形態23
0.08t≦DOC≦0.22tである、実施形態22に記載のガラス物品。
【0171】
実施形態24
前記圧縮層が、前記表面で、200MPa≦CS≦950MPaである圧縮応力CSを有する、実施形態22または23に記載のガラス物品。
【0172】
実施形態25
前記ガラス物品がイオン交換されている、実施形態22から24いずれか1つに記載のガラス物品。
【0173】
実施形態26
前記ガラス物品がアルカリアルミノケイ酸塩ガラスから作られている、実施形態22から25いずれか1つに記載のガラス物品。
【0174】
実施形態27
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラスが約10モル%までのLiOを含む、実施形態26に記載のガラス物品。
【0175】
実施形態28
前記ガラスがリチウムを含まない、実施形態26に記載のガラス物品。
【0176】
実施形態29
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラスが、少なくとも約4モル%のPおよび0モル%から約5モル%のBを含み、1.3<[(P+RO)/M)]≦2.3、M=Al+B、ROは、該アルカリアルミノケイ酸塩ガラス中に存在する一価陽イオン酸化物の合計である、実施形態26に記載のガラス物品。
【0177】
実施形態30
前記ガラスが、約40モル%から約70モル%のSiO、約11モル%から約25モル%のAl、0モル%から約5モル%のB、約4モル%から約15モル%のP、約13モル%から約25モル%のNaO、および0モル%から約1モル%のKOを含む、実施形態26に記載のガラス物品。
【0178】
実施形態31
11モル%≦M≦30モル%である、実施形態26に記載のガラス物品。
【0179】
実施形態32
Oが、前記ガラス中に存在するアルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、および遷移金属一酸化物の合計であり、13モル%≦RO≦30モル%である、実施形態26に記載のガラス物品。
【0180】
実施形態33
前記中央張力CTが約200MPa以下である、実施形態22から32いずれか1つに記載のガラス物品。
【0181】
実施形態34
前記中央張力CTが約135MPa以下である、実施形態22から33いずれか1つに記載のガラス物品。
【0182】
実施形態35
DOC>0.15t、CT(MPa)≦(85/√t(mm))である、実施形態22から34いずれか1つに記載のガラス物品。
【0183】
実施形態36
0.18t<DOC<0.22t、CT(MPa)≦(79/√t(mm))である、実施形態35に記載のガラス物品。
【0184】
実施形態37
前記ガラス物品が割れにくい、実施形態22から36いずれか1つに記載のガラス物品。
【0185】
実施形態38
家庭用電化製品であって、
前面、背面および側面を有する筐体、
前記筐体内に少なくとも部分的に設けられた電気部品であって、少なくとも、制御装置、メモリ、および該筐体の前面にまたはそれに隣接して設けられたディスプレイを含む電子部品、および
前記ディスプレイ上に配置された実施形態22から37いずれか1つに記載のガラス物品、
を備えた家庭用電化製品。
【0186】
実施形態39
0.1mm≦t<0.4mmである厚さtを有するガラス物品をイオン交換する方法であって、
a.約25質量%から約100質量%のKNOおよび約75質量%までのNaNOを含む第1のイオン交換浴中において約300℃から約500℃の範囲の温度でガラス物品をイオン交換する工程、
b.前記ガラス物品の表面から0.05t≦DOC≦0.22tの圧縮深さDOCまで延在する圧縮応力層を形成する工程、および
c.前記ガラス物品の中央部分に、前記圧縮深さDOCから該ガラス物品の中央領域まで延在する引張領域であって、tがマイクロメートルで表される、CT>|-1.956×10-16×t+1.24274×10-12×t-3.09196×10-9×t+3.80391×10-6×t-2.35207×10-3×t+5.96241×10-1×t+36.5994|である物理的中央張力CTを有する引張領域を形成する工程、
を有してなる方法。
【0187】
実施形態40
前記圧縮応力層を形成する工程が応力プロファイルを形成する工程を含み、該応力プロファイルの少なくとも一部が、線形であり、勾配m1を有し、200MPa/μm≧|m1|≧1MPa/μmである、実施形態39に記載の方法。
【0188】
実施形態41
20MPa/μm≧|m1|≧1.2MPa/μmである、実施形態40に記載の方法。
【0189】
実施形態42
a.前記第1のイオン交換浴中で前記ガラス物品をイオン交換した後、第2のイオン交換浴中で該ガラス物品をイオン交換する工程、および
b.前記応力プロファイルの第2の領域であって、該第2の領域は前記表面から第1の深さD1まで延在し、該第2の領域は、該表面から約5μmまでの深さまで延在する線形部分を有し、該線形部分は、200MPa/μm≧|m2|≧30MPa/μmである、勾配m2を有するものである第2の領域を形成する工程、
をさらに含む、実施形態39から41いずれか1つに記載の方法。
【0190】
実施形態43
0.08t≦DOC≦0.22tである、実施形態42に記載の方法。
【0191】
実施形態44
前記圧縮応力層が、前記表面で、500MPa≦CS≦950MPaである圧縮応力CSを有する、実施形態42に記載の方法。
【0192】
実施形態45
前記ガラス物品が割れにくい、実施形態39から44いずれか1つに記載の方法。
【符号の説明】
【0193】
100 ガラス物品
110 第一面
112 第二面
120 第1の圧縮層
122 第2の圧縮層
130 中央領域、衝撃点
140 亀裂分岐
142 破片
150 分岐点
200 家庭用電子機器
202 筐体
204 前面
206 背面
208 側面
210 ディスプレイ
212 カバー基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
図11A
図11B