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特許7441615疑似移動床における工程および三分画塔を介した分画化の工程を用いたパラキシレンの製造方法
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  • 特許-疑似移動床における工程および三分画塔を介した分画化の工程を用いたパラキシレンの製造方法 図1
  • 特許-疑似移動床における工程および三分画塔を介した分画化の工程を用いたパラキシレンの製造方法 図2a
  • 特許-疑似移動床における工程および三分画塔を介した分画化の工程を用いたパラキシレンの製造方法 図2b
  • 特許-疑似移動床における工程および三分画塔を介した分画化の工程を用いたパラキシレンの製造方法 図2c
  • 特許-疑似移動床における工程および三分画塔を介した分画化の工程を用いたパラキシレンの製造方法 図3a
  • 特許-疑似移動床における工程および三分画塔を介した分画化の工程を用いたパラキシレンの製造方法 図3b
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】疑似移動床における工程および三分画塔を介した分画化の工程を用いたパラキシレンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 7/13 20060101AFI20240222BHJP
   C07C 15/08 20060101ALI20240222BHJP
   C07C 7/04 20060101ALI20240222BHJP
   C07C 5/27 20060101ALI20240222BHJP
   B01D 15/00 20060101ALI20240222BHJP
   B01J 29/68 20060101ALI20240222BHJP
   B01J 29/86 20060101ALI20240222BHJP
   B01J 29/40 20060101ALI20240222BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240222BHJP
【FI】
C07C7/13
C07C15/08
C07C7/04
C07C5/27
B01D15/00 101A
B01J29/68 Z
B01J29/86 Z
B01J29/40 Z
C07B61/00 300
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019116113
(22)【出願日】2019-06-24
(65)【公開番号】P2020023475
(43)【公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-06-21
(31)【優先権主張番号】1856050
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】504143038
【氏名又は名称】アクセンス
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】イザベル プレヴォー
(72)【発明者】
【氏名】ジェローム ピグリエ
(72)【発明者】
【氏名】ピエール-イヴ マルタン
(72)【発明者】
【氏名】アルノー コット
【審査官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-514546(JP,A)
【文献】特表2007-512293(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0210682(US,A1)
【文献】特表2014-501704(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0247301(US,A1)
【文献】特表2009-520592(JP,A)
【文献】特表2013-528576(JP,A)
【文献】特開2014-108962(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0179975(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0158330(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C、C07B、B01D、B01J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キシレン類、エチルベンゼンおよびC9+炭化水素を含有する供給原料からパラキシレンを生じさせる方法であって、
- 前記供給原料の擬似移動床における分離の単一回の工程Aであって、吸着剤としてのゼオライトおよび脱着剤により行われ、その際の温度は、20~250℃であり、その際の圧力は、1.0~2.2MPaであり、擬似移動床分離ユニット中の脱着剤対供給原料の容積比は、0.4~2.5である、工程Aであって、前記工程Aによって、
・ 第1のフラクション(A1);これは、パラキシレンおよび脱着剤の混合物を含有する:および
・ 少なくとも1種の第2のフラクション((A2)または(A21));これは、エチルベンゼン(EB)、オルトキシレン(OX)およびメタキシレン(MX)および脱着剤を含有する;
を生じさせることが可能となる、工程A
- 工程Aに由来する前記第2のフラクションを、少なくとも1基の第1の蒸留塔(B_C3)における、蒸留による分画化の工程Bであって、これにより、3種のフラクション:
・ 第1のフラクション(B2);EB、OXおよびMXを含有する
・ 第2のフラクション(B3);OXおよびMXを含有する、および
・ 第3のフラクション(B42);脱着剤を含有する
を生じさせることが可能となり、
第2のフラクション(B3)は、第2の蒸留塔(B_C4)における分画化工程Bに引き入れられ、該分画化工程Bにより、フラクション(B31)と、フラクション(B43)とを生じさせることが可能となり、該フラクション(B31)は、脱着剤を含んでおらず、かつ、MXおよびOXを含有し、該フラクション(B43)は、脱着剤からなる、工程B
分画化工程Bに由来する、EB、OXおよびMXを含有する第1のフラクション(B2)の蒸気相異性化の工程Cであって、異性化によって生じた、PX、OXおよびMX異性体の濃度が、熱力学的平衡における濃度に近い流出物(C1)を、工程Aに再循環させる、工程C
分画化工程において用いられた第2の蒸留塔(B_C4)に由来する、OXおよびMXを含有するフラクション(B31)の液相異性化の工程Dであって、異性化によって生じた、PX、OXおよびMXの異性体の濃度が、熱力学的平衡時における濃度に近い流出物(D1)を、工程Aに再循環させる、工程D
を含む、方法。
【請求項2】
工程Bに由来する第1のフラクション(B2)のEBの含有率は、工程Bにおいて用いられた第1の塔(B_C3)に由来する第2のフラクション(B3)のEBの含有率より高い、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1のフラクション(B2)のEBの含有率は、第2のフラクション(B3)のEBの含有率より最低1.0%高い、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程Bにおいて用いられる蒸留塔は、30~80段の理論板を含む、請求項1~3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
分離工程Aにより、第3のフラクション(A22)を生じさせることも可能となり、該第3のフラクション(A22)は、残留量のEBを含有し、かつ、MX、OXおよび脱着剤の混合物を含有し、前記フラクション(A21)および(A22)は、前記分画化工程Bに送られる、請求項1~のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
工程Aに由来する第3のフラクション(A22)は、第2の蒸留塔(B_C4)に引き入れられ、該第2の蒸留塔(B_C4)により、フラクション(B31)と、フラクション(B43)とを生じさせることが可能となり、該フラクション(B31)は、脱着剤を含んでおらず、かつ、MXおよびOXを含有し、該フラクション(B43)は、脱着剤からなる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
工程Aに由来する第3のフラクション(A22)は、第2の蒸留塔(B_C4)における、第1の蒸留塔(B_C3)に由来する第2のフラクション(B3)の注入の側部点の下方に導入される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
蒸留工程Bにおける第1の蒸留塔(B_C3)および第2の蒸留塔(B_C4)には、内壁を含む塔が用いられる、請求項1~のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
蒸気相異性化工程Cは、触媒の存在下に行われ、その際の温度は、300℃超であり、圧力は、4.0MPa未満であり、空間速度は、10.0h-1未満であり、水素対炭化水素のモル比は、10.0未満であり、該触媒は、少なくとも1種のゼオライトと、0.1重量%~0.3重量%の含有率の第VIII族からの少なくとも1種の金属とを含み、該ゼオライトが有するチャネルの開口は、10個または12個の酸素原子の環によって規定されている、請求項1~8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
工程Cにおいて用いられる触媒は、1重量%~70重量%でEUO構造型のゼオライトを含み、前記ゼオライトは、ケイ素と、少なくとも1種の元素Tとを含み、該元素Tは、アルミニウムおよびホウ素から選ばれ、Si/Tの比は、5~100である、請求項に記載の方法。
【請求項11】
液相異性化工程Dは、触媒の存在下に行われ、その際の温度は、300℃未満であり、圧力は、4.0MPa未満であり、空間速度は、5.0h-1満であり、該触媒は、少なくとも1種のゼオライトを含み、該ゼオライトが有するチャネルの開口は、10個または12個の酸素原子の環によって規定され、請求項1~10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
空間速度は、2.0~4.0h -1 であり、前記ゼオライトは、ZSM-5タイプのものである、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
パラキシレンは、主として、テレフタル酸およびポリエチレンテレフタラート樹脂の製造、合成織物、ボトル、より一般的にはプラスチックの製造のために用いられる。
【0002】
本発明は、パラキシレンの高い生産性を達成するための特定の工程配列を用いた高純度のパラキシレンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
吸着による分離の工程を用いた高純度のパラキシレンの製造は、従来技術において周知である。工業的に、前記工程は、「C8-芳香族化合物ループ(C8-aromatic loop)」または「キシレンループ(xylene loop)」の方法の配列内で行われる。この「C8-芳香族化合物ループ」は、重質化合物(すなわち、9個超の炭素原子を含有する化合物(C9+で表記する))を「キシレン類塔(xylenes column)」として知られている蒸留塔において除去する工程を含む。
【0004】
この塔からの塔頂の流れは、C8-芳香族性異性体を含有し、これは、次いで、パラキシレン分離プロセスに送られ、このパラキシレン分離プロセスは、一般的には、似移動床における吸着による分離の工程である。
【0005】
似移動床における吸着による分離の工程の終結の際に得られたエキストラクトは、パラキシレンを含有しており、このものは、次いで、抽出塔、次いで、トルエン塔を用いて蒸留されて、高純度のパラキシレンが得られる。
【0006】
似移動床における吸着による分離の工程の終結の際に得られたラフィネートは、メタキシレン、オルトキシレンおよびエチルベンゼンを豊富に含んでおり、蒸留により脱着剤を除去する工程の後に、異性化工程において用いられ、これにより、キシレン類(すなわち、オルト、メタおよびパラのキシレン類)の割合が実質的に熱力学的平衡にあり、エチルベンゼンが激減している混合物を得ることが可能となる。この混合物は、再度、パラキシレンの製造のために「キシレン類塔」に新鮮な供給原料と共に送られる。
【0007】
従来技術により、このスキームの数多くの変形例が提案されている。これらの変形例は、1回または複数回の(吸着、結晶化、蒸留または膜による)分離工程および/または1回または複数回の(キシレン類に異性化させることによってまたはベンゼンに脱アルキルさせることによってエチルベンゼンを転化させる)気相異性化工程、または複数回の(エチルベンゼンを転化させない)液相異性化工程を用いるものである。
【0008】
従来技術において提案されたバリエーションの一つは、2回の分離工程において異性化を行うことからなる。第1の工程により、メタキシレン、オルトキシレンおよびエチルベンゼンを豊富に含むラフィネート中に含有されるエチルベンゼンを異性化させることが可能となる。この第1の異性化セクションからの流出物は、エチルベンゼンが激減しており、この流出物は、分画化の後に、第2のセクションに送られる。この第2のセクションは、吸着によるパラキシレンの分離と、その次の、キシレン類のパラキシレンへの異性化の第2の工程とを含む。
【0009】
異性化触媒および操作条件の最適化により、望ましくない副反応を抑えることが可能となる。それ故に、エチルベンゼンのキシレン類への転化を促進するために、高温度において蒸気相中で異性化を行うことが好ましいことが確立されている。低温度における液相中の異性化により、スプリアスクラッキングトランスアルキル化(spurious cracking transalkylation)および不均化の反応が最小限となること、さらにはエチルベンゼンの転化が抑えられることも同様に知られている。
【0010】
2回の異性化工程を用いて高純度のパラキシレンを製造する方法は、より複雑であり、パラキシレンの製造において制限された利得につながる。これについての理由は、十分に高いエチルベンゼンの転化度を達成するために、第1の気相異性化工程の操作条件が過酷であり、C8芳香族化合物の喪失につながる副反応を同時に伴い、このことは、パラキシレンの全体的な収率に相当な影響力を有することにある。
【0011】
特許文献1には、炭化水素供給原料からパラキシレンを製造する方法であって、2回の似移動床分離工程と、2回の異性化工程とを用いる、方法が記載されている。この方法の欠点は、製造コストにおける大幅な増加を必然的に伴う2回の似移動床分離工程を必要とすることにある。
【0012】
特許文献2および3には、2回の似移動床分離工程と、異性化ユニット工程であって、2回の異性化工程が第1の似移動床分離ユニットからのラフィネートの回路上で直列または並列で行われる、工程とを含む代替方法が記載されている。
【0013】
特許文献4には、1回の似移動床吸着の工程と、一方では気相中および他方では液相中での異性化の2回の工程とを含む代替方法であって、2基の異性化ユニットは、吸着ユニットからの流出物の分画に由来する同一の供給原料を給送される、方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】仏国特許出願公開第2862638号明細書(特表2007-512293号公報)
【文献】仏国特許出願公開第3023840号明細書
【文献】仏国特許出願公開第3023841号明細書
【文献】仏国特許出願公開第3023842号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の分野において、当業者は、用いられるキシレンループを運営するための投資コストおよび操作コストを抑える一方で同時に、得られる高純度のパラキシレンを増量させようと絶えず努めている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
驚くべきことに、本出願人は、高純度のパラキシレンを製造する方法において、SMBにおける吸着による分離の工程を、少なくとも2種のラフィネートを生じさせる第1の三分画蒸留塔における蒸留による分離のその後の工程および2回の異性化の工程と組み合わせることにより、芳香族化合物ループの全体的なパラキシレン収率を改善することおよび経済的な影響力を最小限にすることが可能となることを発見した。
【発明の効果】
【0017】
本発明による方法の利点は、従来技術の方法とは対照的に、パラキシレンの高い生産性をそれが達成するが、容量増加に関するトレードオフが小さいことにある。
【0018】
本発明の他の利点は、大きな柔軟性をそれが有し、この大きな柔軟性は、操作において利用され得るものであり、それ故に、実施される各異性化工程についての触媒性能における変化に適合させることを可能にすることにある。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(定義および略語)
本説明の全体を通じて、下記の用語または略語の意味は以下の通りである。
【0020】
この説明の全体を通じて、表現「・・・と・・・との間」は、言及された両境界値を包含するものとして理解されるべきことが指摘される。
【0021】
略語EBは、エチルベンゼン(ethylbenzene)を示す。
【0022】
略語PXは、パラキシレン(para-xylene)を示す。
【0023】
略語OXは、オルトキシレン(ortho-xylene)を示す。
【0024】
略語MXは、メタキシレン(meta-xylene)を示す。
【0025】
用語「キシレン類(xylenes)」(XYLとも示される)は、オルトキシレン、メタキシレンおよびパラキシレンから選ばれる少なくとも2種のキシレン異性体の混合物を指す。
【0026】
略語SMBは、似移動床(simulated moving bed)を示す。
【0027】
用語「C9+炭化水素(C9+ hydrocarbons)」は、少なくとも9個の炭素原子を含有する炭化水素を指す。
【0028】
用語「C8+炭化水素(C8+ hydrocarbons)」は、少なくとも8個の炭素原子を含有する炭化水素を指す。
【0029】
用語「C8芳香族化合物(C8 Aromatics)」は、C8Aとも表示され、8個の炭素原子からなる芳香族炭化水素、すなわち、EB、PX、OX、MX、好ましくは、EEB、OX、MXを示す。
【0030】
用語「ラフィネート(raffinate)」は、C8A混合物であって、PXが激減しており、かつ、脱着剤を含有してもよいものを指し、すなわち、それのPXの質量含有率は、2.0%未満、好ましくは1.5%未満、好ましくは1.0%未満である。
【0031】
本発明の適用上、用語「含まない(free of)」は、考慮下のフラクション、例えばEBの全質量に対する所与の化合物の質量含有率が0.5重量%未満、好ましくは0.1重量%未満、好ましくは0.01重量%未満であることを指す。
【0032】
用語 所与の化合物の「残存量(residual amount)」は、考慮下のフラクションの全質量に対する質量含有率が5.0重量%未満、好ましくは5.0~1.0重量%、好ましくは4.0~1.0重量%、好ましくは3.0~1.0重量%である量を指す。
【0033】
本発明において、用語「流出物(effluents)」、「ラフィネート(raffinates)」、「流れ(streams)」および「フラクション(fractions)」は、同等に用いられている。
【0034】
用語「二分画および三分画の蒸留塔(two-fraction and three-fraction distillation column)」は、それぞれ、2種および3種のフラクションを得るための蒸留塔を指す。
【0035】
(発明の簡単な説明)
本発明は、それ故に、キシレン類、エチルベンゼンおよびC9+炭化水素を含有する供給原料からパラキシレンを製造するための方法であって、
- 前記供給原料の似移動床における分離の単一回の工程Aであって、吸着剤としてのゼオライトおよび脱着剤により行われ、その際の温度は、20~250℃であり、その際の圧力は、1.0~2.2MPaであり、似移動床分離ユニット中の脱着剤対供給原料の容積比は、0.4~2.5であり;
前記工程Aにより、
・ 第1のフラクション(A1);パラキシレンと脱着剤の混合物を含有する、および
・ 少なくとも1種の第2のフラクション(A2)または(A21);エチルベンゼン(EB)、オルトキシレン(OX)およびメタキシレン(MX)および脱着剤を含有する
を生じさせることが可能となる、工程A、および
- 工程Aに由来する前記第2のフラクションの、少なくとも1基の第1の蒸留塔(B_C3)中の蒸留による分画化の工程Bであって、3種のフラクション:
・ 第1のフラクション(B2);EB、OXおよびMXを含有する、
・ 第2のフラクション(B3);OXおよびMXを含有する、および
・ 第3のフラクション(B42);脱着剤を含有する
を生じさせることが可能となる、工程B
を含む、方法に関する。
【0036】
好ましくは、工程Bに由来する第1のフラクション(B2)のEBの含有率は、工程Bにおいて用いられた第1の塔(B_C3)に由来する第2のフラクション(B3)のEBの含有率よりも高い。
【0037】
好ましくは、第1のフラクションのEBの含有率は、第2のフラクションのEBの含有率より最低1.0%高い。
【0038】
好ましくは、工程Bにおいて用いられる蒸留塔は、30~80段の理論板を含む。
【0039】
別の特定の実施形態において、分離工程Aにより、第3のフラクション(A22)を生じさせることも可能となる。この第3のフラクション(A22)は、EBが激減しており、かつ、MX、OXおよび脱着剤の混合物を含有している。前記フラクション(A21)および(A22)は、前記分画化工程Bに送られる。
【0040】
有利には、この実施形態において、工程Aに由来する第3のフラクション(A22)は、第2の蒸留塔(B-C4)に引き入れられる。この第2の蒸留塔(B-C4)により、フラクション(B31)およびフラクション(B43)を生じさせることが可能となる。フラクション(B31)は、脱着剤を含んでおらず、かつ、MXおよびOXを含有しており、フラクション(B43)は、脱着剤からなっている。
【0041】
別の特定の実施形態において、第2のフラクション(B3)は、第2の蒸留塔(B-C4)における分画化工程Bに引き入れられ、これにより、フラクション(B31)およびフラクション(B43)を生じさせることが可能となる。フラクション(B31)は、脱着剤を含んでおらず、かつ、MXおよびOXを含有しており、フラクション(B43)は、脱着剤からなっている。
【0042】
有利には、この実施形態において、工程Aに由来する第3のフラクション(A22)は、第2の蒸留塔(B-C4)における、第1の蒸留塔(B-C3)に由来する第2のフラクション(B3)の注入の側方点の下に導入される。
【0043】
有利には、蒸留工程Bには、内壁を含む塔が用いられる。
【0044】
有利には、本方法は、工程Cも含む。この工程Cは、分画化工程に由来する、EB、OXおよびMXを含有する第1のフラクション(B2)の蒸気相異性化の工程である。
【0045】
有利には、本方法は、工程Dも含む。この工程Dは、分画化工程Bにおいて用いられた第1の蒸留塔(B_C3)に由来する、OXおよびMXを含有する第2のフラクション(B3)の液相異性化の工程である。
【0046】
有利には、本方法は、工程Dも含む。この工程Dは、分画化工程において用いられた第2の蒸留塔(B_C4)に由来する、OXおよびMXを含有するフラクション(B31)の液相異性化の工程である。
【0047】
有利には、蒸気相異性化工程Cは、触媒の存在下に行われ、その際の温度は、300℃超であり、圧力は、4.0MPa未満であり、空間速度は、10.0h-1未満であり、水素対炭化水素のモル比は、10.0未満であり、この触媒は、少なくとも1種のゼオライトと、0.1重量%~0.4重量%の含有率の第VIII族からの少なくとも1種の金属とを含み、このゼオライトが有するチャネルの開口は、10個または12個の酸素原子の環(10MRまたは12MR)によって規定されている。
【0048】
有利には、工程Cにおいて用いられる触媒は、1重量%~70重量%のEUO構造型のゼオライトを含み、前記ゼオライトは、ケイ素と、少なくとも1種の元素Tとを含み、この元素Tは、好ましくは、アルミニウムおよびホウ素から選ばれ、そのSi/T比は5~100である。
【0049】
有利には、液相異性化工程Dは、触媒の存在下に行われ、その際の温度は、300℃未満であり、圧力は、4.0MPa未満であり、空間速度は、5.0h-1未満、好ましくは2.0~4.0h-1であり、この触媒は、少なくとも1種のゼオライトを含み、このゼオライトが有するチャネルの開口は、10個または12個の酸素原子の環(10MRまたは12MR)によって規定されている;好ましくは、前記ゼオライトは、ZSM-5タイプのものである。
【0050】
(図面の簡単な説明)
図1は、吸着による分離の工程、分画化工程、蒸気相異性化工程Cおよび液相異性化工程Dを包含するキシレンループの一般的なスキームである。
【0051】
図2aは、従来技術による、工程Aから得られたラフィネートの蒸留工程Bを示す。
【0052】
図2bは、本発明による、工程Aから得られたラフィネートの蒸留の工程Bの第1の変形例である。
【0053】
図2cは、本発明による、工程Aから得られたラフィネートの蒸留の工程Bの第2の変形例である。
【0054】
図3aは、従来技術による、工程Aから得られた2種のラフィネートの蒸留の工程Bを示す。
【0055】
図3bは、本発明による、工程Aから得られた2種のラフィネートの蒸留の工程Bの変形例である。
【0056】
(発明の詳細な説明)
本発明による方法の特徴および利点は、本発明による図面において例証された実施形態のナンバリングを参照し、非限定的な実施例の以下の説明を読めば明らかになるだろう。
【0057】
本発明の適用上、提示された種々の実施形態は、単独または互いの組み合わせで用いられてよく、組み合わせに対して何らの限定はない。
【0058】
本発明は、それ故に、キシレン類、エチルベンゼンおよびC9+炭化水素を含有する供給原料からパラキシレンを製造する方法であって、
- 前記供給原料の似移動床における分離の単一回の工程Aであって、吸着剤としてのゼオライトと脱着剤とを用いて行われ、その際の温度は、20~250℃であり、その際の圧力は、1.0~2.2MPaであり、似移動床分離ユニット中の脱着剤対供給原料の体積比は、0.4~2.5であり;
前記工程Aにより、
・ 第1のフラクション(A1);パラキシレンおよび脱着剤の混合物を含有する、および
・ 少なくとも1種の第2のフラクション(A2)または(A21);エチルベンゼン(EB)、オルトキシレン(OX)およびメタキシレン(MX)および脱着剤を含有する
を生じさせることが可能となる、工程A、
- 少なくとも1基の第1の蒸留塔(B_C3)における、工程Aに由来する前記第2のフラクションの蒸留による分画化の工程Bであって、3種のフラクション:
・ 第1のフラクション(B2);EB、OXおよびMXを含有する、
・ 第2のフラクション(B3);OXおよびMXを含有する、および
・ 第3のフラクション(B42);脱着剤を含有する
を生じさせることが可能となる、工程B
を含む方法に関する。
【0059】
本発明による方法により、それ故に、分画化工程の終結の際に、C8Aの割合が異なっている2種のフラクションを得ることおよびそれ故に液相中の触媒操作により行われるキシレン異性化のPXの割合を増大させることが可能となり、かつ、C8Aの喪失を制限することが可能となる。
【0060】
似移動床分離の工程A)
本発明によると、本方法は、単一回の工程Aを含む。この工程Aは、キシレン類、エチルベンゼンおよびC9+炭化水素を含有する供給原料の似移動床(simulated moving bed:SMB)における分離の工程である。前記SMB分離工程は、吸着剤としてのゼオライトおよび脱着剤を用いて行われ、少なくとも2種のフラクションを生じさせることを可能にする。この2種のフラクションは、「エキストラクト」としても知られているフラクション(A1)と、「ラフィネート」としても知られているフラクション(A2)とであり、フラクション(A1)は、パラキシレン(PX)と脱着剤との混合物を含有し、フラクション(A2)は、エチルベンゼン(EB)、オルトキシレン(OX)、メタキシレン(MX)および脱着剤を含有している。
【0061】
分離工程は、少なくとも1基の分離塔内で似移動床として操作するユニットにおいて行われる。この分離塔は、複数の相互に連絡された床を含有し、かつ、閉鎖ループ中に脱着剤を流通させ、ここから、2種のフラクション:
・ 第1のフラクション:これは、エキストラクト(A1)であり、パラキシレンおよび脱着剤を含み、好ましくは、それらからなり、その結果、脱着剤を除去するための分画化の後に、PXは、市販純度:最小限99.0重量%、好適には99.9重量%を達成する。有利には、エキストラクト(A1)は、エキストラクトの全質量の最低30重量%を示す。
【0062】
・ 第2のフラクション:これは、ラフィネート(A2)であり、エチルベンゼン(EB)、メタキシレン、オルトキシレンおよび脱着剤を含有する。好ましくは、ラフィネートは、パラキシレンが激減している。すなわち、前記ラフィネート中のPXの質量含有率は、1.0%未満、好ましくは0.5%未満である
が生じさせられる。
【0063】
他の実施形態において、少なくとも3種のフラクション:
・ 第1のもの;これは、エキストラクト(A1)であり、パラキシレンおよび脱着剤を含み、好ましくは、これらからなる;このラフィネートの分画化の後に、PXは、市販の仕様で得られる。有利には、エキストラクト(A1)は、エキストラクトの全質量の最低30重量%を示す。
【0064】
・ 2種のフラクション(A21)および(A22);これらは、パラキシレンが激減しており、かつ、EB、MX、OXおよび脱着剤の可変比率の混合物を含有している
が単一回のSMB分離工程において得られる。
【0065】
この実施形態において、フラクション(A21)および(A22)は、EB、MXおよびOXを異なる比率で有し、フラクション(A21)のCA8フラクションのEBの含有率は、フラクション(A22)のCA8フラクションのEBの含有率より高い。好ましくは、PXが激減しているフラクション(A21)は、EB、MX、OXおよび脱着剤の混合物を含有する;好ましくは、EBは、残留量である。好ましくは、EBおよびPXが激減しているフラクション(A22)は、MX、OXおよび脱着剤の混合物を含有する。
【0066】
好ましくは、似移動床分離ユニットにおいて用いられる吸着剤は、バリウム交換型ゼオライトXまたはカリウム交換型ゼオライトYまたはバリウム・カリウム交換型ゼオライトYである。
【0067】
一実施形態において、本発明による方法を介して処理される供給原料中に含有される脱着剤は、重質であると言われる。すなわち、それは、キシレン類の沸点より高い沸点を有する。
【0068】
他の実施形態において、本発明による方法を介して処理される供給原料中に含有される脱着剤は、軽質であると言われる。すなわち、それは、キシレン類の沸点より低い沸点を有している。
【0069】
好ましくは、似移動床分離ユニットにおいて用いられる脱着剤は、パラ-ジエチルベンゼン、トルエン、パラ-ジフルオロベンゼンまたはジエチルベンゼン類から単独または混合物として選ばれる。
【0070】
好ましくは、似移動床分離ユニット中の脱着剤対供給原料の体積比は、0.4~2.5、好ましくは0.5~1.5である。
【0071】
好ましくは、似移動床分離工程Aが行われる際の温度は、20℃~250℃、好ましくは90℃~210℃、一層より好ましくは160℃~200℃であり、その際の圧力は、1.0~2.2MPa、好ましくは1.2~2.0MPaである。
【0072】
好ましくは、吸着剤は、複数の相互に連絡された床を含有し、この床は、供給原料および脱着剤の注入、さらにはエキストラクトおよびラフィネート(単数または複数)の抜き出しによって範囲を定められた複数の帯域にわたって広げられている。ラフィネートの数に応じて、吸着器は、優先的には15~18床を含有することになる。
【0073】
特定の実施形態によると、分離ユニット(SMB)中の床の全数は、10~30床、好ましくは15~18床であり、これらは、1基または複数基の吸着器にわたって広げられ、床の数は、各床が0.70m~1.40mの高さを有するように調節されている。
【0074】
特定の実施形態(ALT 0、ALT 1)によると、分離ユニット(SMB)の各帯域中の吸着剤固体の量の分配は、以下の通りである:
・ 帯域(1)中の吸着剤固体の量は、17%±5%である、
・ 帯域(2)中の吸着剤固体の量は、42%±5%である、
・ 帯域(3)中の吸着剤固体の量は、25%±5%である、
・ 帯域(4)中の吸着剤固体の量は、17%±5%である。
【0075】
特定の実施形態(ALT 2)によると、分離ユニット(SMB)の各帯域中の吸着剤固体の量の分配は、以下の通りである:
・ 帯域(1)中の吸着剤固体の量は、18%±8%である、
・ 帯域(2)中の吸着剤固体の量は、41%±8%である、
・ 帯域(3A)中の吸着剤固体の量は、18%±8%である、
・ 帯域(3B)中の吸着剤固体の量は、14%±8%である、
・ 帯域(4)中の吸着剤固体の量は、9%±8%である。
【0076】
(分画化工程B)
本発明による方法は、分離工程Aから得られたエチルベンゼン、オルトキシレン、メタキシレンおよび脱着剤を含有するフラクション(A2)の少なくとも1基の第1の三分画塔における蒸留による分画化の工程Bを含む。前記工程Bにより、
・ 第1のフラクション(B2);EB、OXおよびMXを含有し、好ましくはこれらからなる;および
・ 第2のフラクション(B3);OX、MXおよびEBを含有し、好ましくは、OXおよびMXおよび残留量のEBからなる、および
・ フラクション(B42);脱着剤を含有し、好ましくは、これからなる
を生じさせることが可能となる。
【0077】
有利には、第1のフラクション(B2)および第2のフラクション(B3)は、EB、MXおよびOXの混合物を可変比率で含有し、第1のフラクションのC8AにおけるEBの含有率は、第2のフラクションのEBの含有率より高くなっている。好ましくは、第1および第2のフラクションの間のEBの含有率における相違は、1.0%超、好ましくは2.0%超、好ましくは2.5%超、好ましくは3.0%超、好ましくは3.5%超である。
【0078】
有利には、工程Bにおいて用いられる三分画塔は、30~80段、好ましくは35~75段、好ましくは40~80段、非常に好ましくは45~65段の多数の理論板を有している。
【0079】
一実施形態において、第2のフラクション(B3)が脱着剤を含有する場合、前記フラクションは、第2の蒸留塔(B-C4)における分画化工程Bに引き入れられ、これにより、脱着剤を含まず、かつ、MXおよびOXを含有するフラクション(B31)、および脱着剤からなるフラクション(B43)を生じさせることが可能となる。
【0080】
有利には、ラフィネートの分画化が60段の理論板を含有する単一の三分画塔において行われる場合(実施ALT0):
- 給送の位置は、凝縮器からナンバリングされる板30~40上、優先的には、板37上に配置される;
- 抜き出しの位置は、給送の上方の少なくとも10~25段の板、好ましくは給送の上方の18段の板に配置される。
【0081】
有利には、ラフィネートの分画化が第1の三分画塔において行われ、その後に、第2の二分画塔において行われ、それぞれが、好ましくは、47段の理論板を含有している場合(実施ALT1、ALT2):
- 給送の位置は、凝縮器からナンバリングされる板16~24段上、優先的には板18~22の間に配置される、
- 三分画塔からの抜き出しの位置は、給送の位置より下の5~10段の板の間、好ましくは給送より下の7~8段の板の間に配置される、
- ラフィネート塔のための抜き出しおよび給送の位置は、ラフィネート塔のそれぞれに取り付けられた板の全数に応じて均質に調節されてよい。
【0082】
好ましくは、工程Aから得られたフラクション(A1)は、PXおよび脱着剤の混合物を含有しており、好ましくはこれからなり、フラクション(A1)は、蒸留塔(B-C1)における蒸留による分画化の工程に引き入れられ、これにより、PXからなるフラクション(B1)および脱着剤からなるフラクション(B41)を生じさせることが可能となる。前記蒸留は、当業者の知識に従って行われる。
【0083】
本発明の特定の実施形態において(図2b、ALT0)、工程Aから得られたフラクション(A2)は、第1の三分画蒸留塔(B-C3)における蒸留による分画化の工程に引き入れられ、これにより、頂部におけるフラクション(B2)、側部抜き出しとしてのフラクション(B3)、および底部におけるフラクション(B42)を生じさせることが可能となる。このフラクション(B2)は、EB、MXおよびOXを含有し、かつ、残留量のEBを含み、フラクション(B3)は、脱着剤を含んでおらず、かつ、OXおよびMXを含有し、好ましくはMXおよびOXからなり、かつ、残留量のEBを含み、フラクション(B42)は、脱着剤を含んでおり、好ましくは、これからなる。
【0084】
好ましい実施形態(図2c、ALT1)において、前記三分画塔(B-C3)は、
- 頂部における、第1のフラクション(B2);EB、OXおよびMXを含有し、好ましくは、これらからなる、
- 側部抜き出しとしての、第2のフラクション(B3);OX、MX、脱着剤および残留量のEBを含有し、好ましくは、OX、MXおよび脱着剤からなる、および
- 底部における、フラクション(B42);脱着剤を含有し、好ましくはこれからなる
を得るために用いられる。
【0085】
前記フラクション(B3)は、第2の二分画蒸留塔(B-C4)に引き入れられ、これにより、フラクション(B31)、およびフラクション(B43)を生じさせることが可能となり、フラクション(B31)は、脱着剤を含んでおらず、かつ、MXおよびOXを含有し、フラクション(B43)は、脱着剤からなるものである。
【0086】
有利には、実施形態ALT1(図2c)により、EBを豊富に含むフラクション(B2)中のキシレンの含有率を低減させることが可能となる。
【0087】
他の好ましい実施形態ALT2において、工程Aにより、2種のフラクション(A21)および(A22)を生じさせることが可能となる(図3b、ALT2)。前記フラクション(A21)は、第1の三分画蒸留塔(B-C3)における蒸留による分画化工程Bに引き入れられ、これにより、
- 頂部における、第1のフラクション(B2);EB、OXおよびMXを含有し、好ましくは、これらからなる、
- 側部抜き出しとしての、第2のフラクション(B3);OX、MX、脱着剤および場合による残留量のEBを含有し、好ましくは、OX、MXおよび脱着剤からなる、および
- 底部における、第3のフラクション(B42);脱着剤を含有し、好ましくは、これからなる
を生じさせることが可能となる。
【0088】
実施形態ALT2において、工程Bにおいて用いられた第1の塔から得られた前記第2のフラクション(B3)および工程Aから得られたフラクション(A22)は、第2の蒸留塔(B-C4)に引き入れられ、これにより、フラクション(B31)およびフラクション(B43)を生じさせることが可能となる。フラクション(B31)は、MX、OX、および場合による残留量のEBを含有し、好ましくは、OXおよびMXからなり、フラクション(B43)は、脱着剤を含み、好ましくは、これからなる。
【0089】
好ましくは、ラフィネートであるフラクション(A22)は、第2の塔、好ましくは二分画塔(B-C4)における、フラクション(B3)の注入点の下方に導入される。
【0090】
有利には、前記実施形態ALT2(図3b)において、三分画塔(B-C3)は、SMBによる分離の工程Aから得られたラフィネート(A2)の中からEBを豊富に含むフラクション(A21)のみを受け取り、これにより、EBを豊富に含むフラクション(B2)中のキシレン含有率を実施形態ALT1に対してさらに低減させることが可能となる。
【0091】
有利には、C8A不含有の脱着剤のフラクション(B41)、(B42)および(B43)は、各蒸留塔の底部において回収され、フラクション(B4)として組み合わされ、似移動床吸着工程Aに送られる。
【0092】
前記工程Aの脱着剤がキシレン類より重質の化合物、すなわち、キシレン類の沸点より高い沸点を有する化合物である場合、EBを豊富に含むラフィネートは、三分画塔の頂部において生じさせられ、キシレンを豊富に含むラフィネートは、側部抜き出しにおいて、あるいは、第2の蒸留塔の頂部において得られる。
【0093】
前記分離工程の脱着剤がキシレン類より軽質の化合物、すなわち、キシレン類の沸点より低い沸点を有する化合物である場合、キシレンを豊富に含む流れは、三分画塔の底部において生じさせられ、EBを豊富に含むラフィネートは、側部抜き出しにおいて、あるいは第2の蒸留塔の底部において得られ、C8Aを含まない脱着剤は、2つの塔の頂部において抜き出され、吸着工程に再循環させられる。
【0094】
有利には、分画化工程Bにおいて用いられる蒸留塔(B-C1)、(B-C3)および(B-C4)は、大気圧で操作され、リボイリングの温度は、210~250℃、好ましくは220~240℃であり、好ましくは230℃であり、還流比は、還流/供給原料の質量比として表されて、1.0~3.0、優先的には1.4~2.0である。
【0095】
有利には、塔(B-C3)の頂部において回収されたラフィネート(B3)は、凝縮器下の4段の板において抜き出された液体蒸留物の形態で得られ、前記凝縮器は、全て還流しており、液状水を抜き出すためのデカンテーションサンプを含む。
【0096】
より正確には、工程Bが蒸留塔(B-C3)を用いる場合、蒸留によって得られたラフィネートの分画化の工程(ALT0およびALT1)の性能は:
- EBを豊富に含むラフィネート(B2)中のEBの回収度(degree of recovery:DR):DR(EB)=EB(ラフィネート B2)/(EB(ラフィネート B2)+EB(ラフィネート B3)
- EBを豊富に含むラフィネート(B2)中のキシレン類の回収度(DR):DR(XYL)=XYL(ラフィネート B2)/(XYL(ラフィネート B2)+XYL(ラフィネート B3)
によって特徴付けられる。
【0097】
工程Bが第2の蒸留塔(B-C4)を用いる場合、蒸留によって得られたラフィネートの分画化の工程(ALT2)の性能は:
- EBを豊富に含むラフィネート(B2)中のEBの回収度(DR):DR(EB)=EB(ラフィネート B2)/(EB(ラフィネート B2)+EB(ラフィネート B31)
- EBを豊富に含むラフィネート(B2)中のキシレン類の回収度(DR):DR(XYL)=XYL(ラフィネート B2)/(XYL(ラフィネート B2)+XYL(ラフィネート B31)
によって特徴付けられる。
【0098】
有利には、本発明による方法において、エチルベンゼンの回収度(DR(EB)で表記)は、50%~90%、好ましくは80%~90%である。
【0099】
有利には、本発明による方法であるALT 0またはALT 1において、フラクション(A1)および(A2)が分画化工程に引き入れられる場合、キシレン類の回収度DR(XYL)は、エチルベンゼンの回収度(DR(EB))に対して最低2%、好ましくは最低5%、好ましくは最低10%、好ましくは最低15%の差を有する。
【0100】
有利には、フラクション(A1)、(A21)および(A22)が分画化工程に引き入れられる場合、キシレン類の回収度DR(XYL)は、厳密に最低20%、好ましくは最低23%の差を示す。
【0101】
別の実施形態によると、蒸留工程は、第1の三分画蒸留塔(B-C3)を含む任意の他の蒸留配列により行われてよい。好ましくは、本発明による変形例ALT0、ALT1またはALT2の前記三分画蒸留塔(B-C3)は、内壁を含み、これは、2つの脱着剤不含有ラフィネート(B2)、(B3)の分離に関する性能を改善するためのものである。
【0102】
(蒸気相異性化工程C)
有利には、本方法は、分画化工程Bから得られたエチルベンゼン、オルトキシレンおよびメタキシレンを含有するラフィネート(B2)の蒸気相異性化の工程Cを含む。
【0103】
有利には、蒸気相異性化工程により、OXおよびMXの異性化、さらにはEBの異性化が、蒸気相中、高温で操作し、かつ、エチルベンゼンをキシレン類に転化させるユニットにおいて可能とされ、これにより、工程Bから得られたEBを豊富に含むラフィネート(B2)が処理される。
【0104】
好ましくは、異性化工程Cに引き入れられたラフィネート(B2)対工程Bの終結の際に得られた全ラフィネート((B2)+(B3)または(B2)+(B31))の質量比は、20%~90%、優先的には25%~60%、より優先的には30%~45%である。前記比により、有利には、パラキシレンの製造を最大にすることが可能とされる。前記比が高い場合、キシレンループの容量に関してなんらのトレードオフもなくPXの製造を増大させることが可能である;前記比が中程度である場合、PXの製造は、より大いに増大するが、キシレンループの容量におけるわずかな増大が伴う。
【0105】
本発明による方法の一つの利点は、キシレンループにおけるEBの安定した濃度における増大を必然的に伴うことにあり、このことにより、第1の蒸気相異性化ユニット中に通過させることによってEBの転化における増大が可能とされる。
【0106】
それ故に、SMBにおける吸着による分離の工程を、三分画塔における蒸留による分画化の工程Bおよび2回の異性化工程と組み合わせることにより、芳香族化合物ループの全体的なパラキシレン収率を改善しかつ経済的な影響力を最小にすることが可能となる。
【0107】
本発明によると、蒸気相異性化工程により、EBをキシレン類に転化させることが可能となり、その際のエチルベンゼンの製造量量当たりの転化度は、一般的には10%~50%、好ましくは20%~40%であり、C8芳香族化合物(C8A)の喪失は、5.0重量%未満、好ましくは3.0重量%未満、優先的には1.8重量%未満である。
【0108】
蒸気相異性化工程は、触媒の存在下に行われ、その際の温度は、300℃超、好ましくは350℃~480℃であり、圧力は、4.0MPa未満、好ましくは0.5~2.0MPaであり、空間速度は、10.0h-1未満、好ましくは0.5h-1~6.0h-1であり、水素対炭化水素のモル比は、10.0未満、好ましくは3.0~6.0であり、触媒は、少なくとも1種のゼオライトと、0.1重量%~0.3重量%の含有率の第VIII族からの少なくとも1種の金属とを含み、このゼオライトが有するチャネルの開口は、10個または12個の酸素原子の環(10MRまたは12MR)によって規定されている。
【0109】
8個の炭素原子を含有する炭化水素を異性化させることができる、ゼオライトベースであってもなくてもよいあらゆる触媒が、蒸気相異性化ユニットに適している。好ましくは、用いられる触媒は、酸性ゼオライト、例えば、MFI、MOR、MAZ、FAUおよび/またはEUO構造型のものを含む。一層より好ましくは、用いられる触媒は、EUO構造型のゼオライトと、元素周期律表の第VIII族からの少なくとも1種の金属とを含む。
【0110】
本方法の好ましい変形例によると、工程Cにおいて用いられる触媒が含むのは、1重量%~70重量%のEUO構造型、好ましくはEU-1のゼオライトであり、このゼオライトは、ケイ素と、少なくとも1種の元素Tであって、好ましくは、アルミニウムおよびホウ素から選ばれものとを含み、そのSi/Tの比は、5~100である。
【0111】
好ましくは、ゼオライトは、少なくとも一部において水素型にあり、ナトリウムの含有率は、Na/Tの原子比が0.1未満になるようにされている。
【0112】
好ましくは、触媒は、0.01重量%~2重量%のスズまたはインジウムと、硫黄とを含み、硫黄は、第VIII族からの金属の原子当たり0.5~2個の原子の割合である。
【0113】
工程Cにおいて得られた流出物(C1)のPX、OXおよびMX異性体の濃度は、熱力学的平衡における濃度に近く、この流出物(C1)は、似移動床吸着工程Aに再循環させられる。
【0114】
特定の実施形態において、望ましくない反応を介して形成された重質化合物および軽質化合物を流出物(C1)が含有する場合、前記流出物は、場合による分画化工程に引き入れられ、前記化合物が除去される。
【0115】
(液相異性化工程D)
有利には、本方法は、分画化工程Bから得られたオルトキシレンおよびメタキシレンを含有するフラクション(B3)またはフラクション(B31)の液相異性化の工程Dを含む。
【0116】
本発明による方法により、それ故に、キシレン異性化の割合を増大させることが可能となる。この異性化は、液相で操作して触媒によって行われ、最も低いC8Aの損失につながる。
【0117】
キシレン異性化工程Dは、液相中で行われ、製造量当たりのEB転化度は、5.0%以下、好ましくは3.0%以下、好ましくは0.2%以下であり、PXの熱力学的平衡解析が90.0%以上、優先的には94.0%以上になるようにキシレン混合物の異性化を可能にする。
【0118】
液相異性化工程Dは、触媒の存在下に行われ、その際の温度は、300℃未満、好ましくは200~260℃であり、圧力は、4.0MPa未満、好ましくは1.0~3.0MPaであり、空間速度は、5.0h-1未満、好ましくは2.0~4.0h-1であり、触媒は、少なくとも1種のゼオライトを含み、このゼオライトが有するチャネルの開口は、10個または12個の酸素原子の環(10MRまたは12MR)によって規定され、好ましくは、触媒は、少なくとも1種のゼオライトを含み、このゼオライトが有するチャネルの開口は、10個の酸素原子の環(10MR)によって規定され、一層より好ましくは、触媒は、ZSM-5型のゼオライトを含む。
【0119】
特許US 8697929には、本発明による方法において用いられ得る操作条件および蒸気相および液相の異性化触媒がより詳細に記載されている。
【0120】
有利には、工程Dにおいて得られた流出物(D1)のPX、OXおよびMXの異性体の濃度は、熱力学的平衡時における濃度に近く、流出物(D1)は、似移動床吸着工程Aに再循環させられる。
【0121】
特定の実施形態において、望みでない反応を介して形成された重質化合物および軽質化合物を流出物(D1)が含有する場合、前記流出物は、場合による分画化工程に引き入れられ、前記化合物が除去される。
【0122】
(実施例)
以下に続く実施例は、本発明を例証するが、本発明の範囲を制限するものではない。
【0123】
(実施例1)
この実施例は、従来技術の図2a)、ALT0およびALT1でそれぞれ表記される実施の形態における本発明による方法の図2b)および2c)に従って、蒸留工程Bの性能を比較することにより本発明の利点を示す。
【0124】
この実施例では、キシレン塔から得られ、かつ、リフォメート、トランスアルキル化ユニットおよび1基または複数基の異性化ユニットを起源とするC8芳香族化合物(C8A)を含んでいるC8フラクション(2)545t/hが考慮され、それの組成は、重量%で示されている。
【0125】
【表1】
【0126】
C8-フラクションは、8個未満の炭素原子を含む化合物に相当する。
【0127】
似移動床(SMB)分離の工程A)
C8Aフラクションは、似移動床吸着ユニットAに送られる。この似移動床吸着ユニットAは、4つの帯域を含んでおり、これらの帯域は、供給原料の注入および脱着剤(B4)の注入およびラフィネート(A2)の抜き出しおよびエキストラクト(A1)の抜き出しによってその範囲が定められたものである。分離工程は、バリウム交換型ゼオライトXを含有する15床からなる似移動床吸着ユニットにおいて行われ、これらの床は、以下のように分配される:
・ 帯域(1)における3床;帯域(1)は、脱着剤(B4)の注入とエキストラクト(A1)の抜き出しとの間にある;
・ 帯域(2)における6床;帯域(2)は、エキストラクト(A1)の抜き出しと供給原料の注入との間にある;
・ 帯域(3)における4床;帯域(3)は、供給原料の注入とラフィネート(A2)の抜き出しとの間にある;
・ 帯域(4)における2床;帯域(4)は、ラフィネート(A2)の抜き出しと脱着剤(B4)の注入との間にある。
【0128】
温度は、175℃である。用いられた脱着剤はパラジエチルベンゼンであり、供給原料に対する脱着剤の含有率は、1.2(容積/容積)である。
【0129】
このように実施されて、吸着による分離の工程Aにより、蒸留工程Bに給送する2つのフラクション(A1)および(A2)を生じさせることが可能となる:
- フラクション(A1);供給原料のPXの最低97.0%および脱着剤の一部を含有する;前記フラクションは、抽出塔(B-C1)における蒸留工程に送られ、頂部において高純度PX(流れ(B1))および底部において吸着剤(流れ(B41))が回収される;
- ラフィネート(A2)829t/h:PXが激減しており、407t/hの脱着剤を含有している。
【0130】
(従来技術(図2a))に従う蒸留による分画化の工程Bの実施)
この実施形態において、ラフィネート(A2)は、蒸留塔(B-C2)に理論板24のところで給送される。蒸留塔(B-C2)は、47段の理論板、凝縮器およびリボイラを含有しており、0.2MPaで操作し、還流比は、1.3である。前記塔により、2つの流れ:
- 頭部のラフィネート(B6)422t/h;脱着剤を含まない、および
- 底部における脱着剤(B42)407t/h;C8Aを含まない;これは、吸着のために要求される温度での熱交換の工程の後に、工程Aに送られる
を生じさせることが可能となる。
【0131】
ラフィネート(B6)は、2つの流れに分画化される。ラフィネート(B6)の90.0%は、脱着剤を含んでおらず、(B2)で表記され、このものは、第1の異性化工程(C)に送られ、残りのラフィネート(B6)(10.0%)は、(B3)で表記され、このものは、第2の異性化工程(D)に給送される。
【0132】
蒸留塔によるラフィネート(A2)の前記分画化は、86.6Gcal/hのリボイリングエネルギーを必要とする。
【0133】
(本発明に従う蒸留による分画化の工程Bの実施)
本発明による第1の実施形態(図2b)、ALT0)において、ラフィネート(A2)は、分離工程Bを経る。前記ラフィネートは、三分画蒸留塔(B-C3)に理論板37のところで給送される。この三分画蒸留塔(B-C3)は、60段の理論板、凝縮器およびリボイラを含有し、0.2MPaで操作し、還流比は、1.9である。前記塔により、3つの流れ:
- 頭部のラフィネート(B2)367t/h:これは、ラフィネート(A2)中に含有されるエチルベンゼンの90.0%およびOXおよびMXからなる混合物の87.0%を含有する;
- ラフィネート(B3)54t/h;これは、理論板19上の側部抜き出しとして得られ、脱着剤を含まない;および
- 底部における、脱着剤(B42)407t/h;これは、C8Aを含んでおらず、吸着のために要求される温度での熱交換の工程の後に、工程Aに送られる
を生じさせることが可能となる。
【0134】
三分画蒸留塔によるラフィネート(A2)の前記分画化には、86Gcal/hのリボイリングエネルギーが必要とされる。
【0135】
本発明による第2の好ましい実施形態(図2c)、ALT1)において、ラフィネート(A2)は、分離工程Bを経る。前記ラフィネートは、理論板22のところで三分画蒸留塔(B-C3)に給送される。この三分画蒸留塔は、47段の理論板、凝縮器およびリボイラを含み、0.2MPaで操作し、還流比は、1.47である。この塔により、3つの流れ:
- 頭部ラフィネート(B2)348t/h;これは、全ラフィネート((B2)+(B31))中に含有されるエチルベンゼンの90.0%および全ラフィネート((B2)+(B31))中に含有されるキシレン類の82.0%を含有する;
- ラフィネート(B3)202t/h;これは、理論板30上で側部抜き出しとして得られる;および
- 底部における、脱着剤(B42)278t/h;これは、C8Aを含んでおらず、吸着のために要求される温度での熱交換の工程の後に工程Aに送られる
を生じさせることが可能となる。
【0136】
脱着剤を含有するラフィネート(B3)は、第2の蒸留塔(B-C4)の板22に送られる。この第2の蒸留塔(B-C4)は、47段の理論板、凝縮器およびリボイラを含み、0.2MPaで操作し、還流比は、2.1%であり、これにより、頂部におけるラフィネート(B31)73t/hと、最終的な、底部生成物(B43)129t/hとを回収することが可能となる。このラフィネート(B31)は、MX、OXからなり、かつ、PXが激減しており、EBの含有率は、3.0重量%であり、底部生成物(B43)は、脱着剤を含有しているがC8Aを含んでおらず、底部生成物(B43)は、吸着のために必要とされる温度での熱交換の工程の後に、工程Aに送られる。ラフィネート(B31)は、液相中で操作する異性化工程Dに送られる。この実施ALT1を介したラフィネートの分画化には、86.1Gcal/hのリボイリングエネルギーが必要とされる。
【0137】
本発明によるこれらの種々の実施形態におけるラフィネート(A2)の分画化の工程の終結の際に、EBを豊富に含むラフィネート(B2)は、異性化工程Cに送られ、ラフィネート(B31)は、異性化工程Dに送られる。
【0138】
従来技術の図2a)による、または、本発明の図2b)および図2c)によるラフィネート分離工程の性能は、下記に要約される。
【0139】
【表2】
【0140】
この実施例は、吸着工程がラフィネートを生じさせる時の本発明の利点を例証する。それにより、ラフィネート(B2)における同一のEB回収度:90.0%に対して、本発明の実施による関連するキシレン回収度を3ポイントまたは8ポイント低減させることが可能となる。回収度が同一である従来技術に対して、この豊富化により、C8Aの穏やかな喪失を有する液相異性化ユニットに給送するラフィネートの割合を増大させることおよびC8Aのより高い喪失を有する気相異性化ユニットに給送する割合を低減させることが可能となる。その後は、アロマティックコンプレクスのPX収率は、実施例3において例証されるように増大する。
【0141】
この豊富化には、少なくとも1基の第1の三分画蒸留塔を使用することが必要とされるが、分画化工程Bのリボイリングに要求されるエネルギー、または吸着工程Aの配置または操作になんらの影響力も伴わない。
【0142】
従来技術に対して、実施例3において例証されるように、アロマティクコンプレクスのPX収率を増大させることが可能である。
【0143】
(実施例2)
この実施例は、従来技術(図3a))による蒸留工程Bの性能を、本発明による方法(図3b))と、ALT2と称される実施例において比較することによって本発明の利点を示す。
【0144】
似移動床(SMB)分離の工程A)
この実施例では、キシレン塔から得られ、かつ、リフォメート、トランスアルキル化ユニットおよび1基または複数基の異性化ユニットを起源とするC8芳香族化合物を含んでいるC8フラクション(2)545t/hが考慮される。前記フラクションの組成は、重量百分率で与えられる。
【0145】
【表3】
【0146】
C8-フラクションは、8個未満の炭素原子を含む化合物に相当する。
【0147】
このC8Aフラクションは、似移動床吸着ユニットAに送られる。似移動床吸着ユニットAは、5帯域を含む。この5帯域は、供給原料の注入および脱着剤(B4)の注入およびラフィネート(A21、A22)の抜き出しおよびエキストラクト(A1)の抜き出しによって範囲を定められている。前記似移動床吸着ユニットは、18床からなり、これらは、バリウム交換型ゼオライトXを含有しており、以下のように分配されている:
・ 帯域(1)における3床;帯域(1)は、脱着剤(B4)の注入とエキストラクト(A1)の抜き出しとの間にある;
・ 帯域(2)における6床:帯域(2)は、エキストラクト(A1)の抜き出しと供給原料の注入との間にある;
・ 帯域(3A)における4床;帯域(3A)は、供給原料の注入とラフィネート(A21)の抜き出しとの間にある;
・ 帯域(3B)における3床;帯域(3B)は、ラフィネート(A21)の抜き出しとラフィネート(A22)の抜き出しとの間にある;
・ 帯域(4)における2床;帯域(4)は、ラフィネート(A22)の抜き出しと脱着剤(B4)の注入との間にある。
【0148】
温度は、175℃であり、用いられた脱着剤はパラジエチルベンゼンであり、供給原料に対する脱着剤の含有率は、1.2(容積/容積)である。
【0149】
それ故に、SMB分離工程Aの実施により、(A1)、(A21)および(A22)と表記される3つの流れを得ることが可能となり、これらは、蒸留工程Bに給送する。3つの流れは、以下の特徴:
- エキストラクト(A1);これは、供給原料のパラキシレンPXの最低97.0%および脱着剤の一部を含有し、抽出塔に送られて、頂部における高純度のPXと、底部における脱着剤とが回収される;
- 第1のラフィネート(A21)508t/h;これは、PXが激減しており、かつ、エチルベンゼンを豊富に含んでおり、全ラフィネート((B2)+(B31))中に含有されるエチルベンゼンEBの98.0%と、全ラフィネート((B2)+(B31))に含有されるキシレン類の78.0%とを含有する;
- 第2のラフィネート(A22)320t/h;これは、PXが激減しており、かつ、MXおよびOXの混合物、EB、および脱着剤の他の部分を本質的に含有し、フラクション(A8)のEBの含有率は、0.5%である
を有している。
【0150】
(従来技術(図3a))に従う蒸留による分画化の工程Bの実施)
この実施形態において、脱着剤を含有する第1のラフィネート(A21)は、理論板27のところで蒸留塔(B-C2)に給送される。この蒸留塔(B-C2)は、47段の理論板、凝縮器およびリボイラを含有し、0.2MPaで操作し、還流比は、1.1である。脱着剤を有しない第1のラフィネート(B2)は、頂部において回収され、蒸気相中で操作する第1の異性化工程に送られる。脱着剤を含有する第2のラフィネート(A22)は、分離工程Bに引き入れられる。前記ラフィネートは、理論板21のところで塔(B-C4)に給送される。この塔(B-C4)は、47段の理論板、凝縮器およびリボイラを含み、0.2MPaで操作し、還流比は、2.7である。脱着剤を有しない第2のラフィネート(B3)は、蒸留物中に回収され、液相中で操作する異性化工程Dに送られる。脱着剤の2つの流れ(B42)および(B43)は、C8Aを含んでおらず、2基のラフィネート塔((B-C2)および(B-C4))の底部から得られ、これらは、混合され、吸着のために要求される温度での熱交換の工程の後に、似移動床分離工程に送られる。
【0151】
似移動床によって生じた2つのラフィネート(A21)および(A22)の分画化の工程Bには、81.2Gcal/hのリボイリングエネルギーが必要とされる。
【0152】
(本発明による蒸留による分画化の工程Bの実施(図3b)、ALT2))
本発明による一実施形態(ALT2)において、脱着剤を含有する第1のラフィネート(A21)は、理論板20のところで三分画蒸留塔(B-C3)に給送される。この三分画蒸留塔(B-C3)は、47段の理論板、凝縮器およびリボイラを含有し、0.2MPaで操作し、還流比は、1.38である。前記塔により、3つの流れ:
- 第1の頭部ラフィネート(B2)284t/h;これは、全ラフィネート((B2)+(B31))のエチルベンゼン含有率の90.1%を含有する、
- 理論板27から液相で抜き出された第2のフラクション(B3)73.6t/h;これは、残りのエチルベンゼンと、全ラフィネート((B2)+(B31))のキシレン類の12%とを脱着剤と共に含有する;
- 底部生成物(B42)150.6t/h;これは、脱着剤を含有し、C8A化合物を含まない
を生じさせることが可能となる。
【0153】
脱着剤を含有しているラフィネート(B3)は、板18のところで第2の蒸留塔(B-C4)に導入される。この第2の蒸留塔(B-C4)は、47段の理論板、凝縮器およびリボイラを含有し、0.2MPaで操作し、還流比は、2.1である。
【0154】
似移動床分離工程Aから得られた第2のラフィネート(A22)は、蒸留工程Bに引き入れられる。前記ラフィネート(A22)は、この蒸留塔(B-C4)の板24のところに導入される。ラフィネート(B31)137t/hは、頂部において回収される。前記ラフィネート(B31)は、脱着剤を含んでおらず、かつ、MX、OXからなり、PXが激減しており、1.6重量%の含有率のEBを有する。ラフィネート(B3)は、液相中で操作する異性化工程Dに送られる。2基のラフィネート塔((B-C3)および(B-C4))から得られた脱着剤の2つの流れ((B42)および(B43))は、混合され、吸着のために要求される温度での熱交換の後に、似移動床に送られる。
【0155】
2つのラフィネート(A21)および(A22)の分画化には、84.5Gcal/hのリボイリングエネルギーが必要とされる。
【0156】
従来技術によるラフィネート分離工程B(図3a))、または、本発明によるラフィネート分離工程B(図3b))の性能は、下記に要約される。
【0157】
【表4】
【0158】
この実施例は、吸着工程Aが2つのラフィネートを生じさせる時の本発明の利点を例証する。これにより、蒸留工程と吸着工程とを連結することによって、従来技術において記載された分離より良好なEB/XYL分離を達成することが可能になるが、しかしながら、設備の量またはリボイリングに必要とされるエネルギーに影響力を有しない。
【0159】
本発明による分離工程Bには、第1の三分画蒸留塔を第2の蒸留塔に連結したものを使用することが必要とされる。
【0160】
従来技術に対して、実施例4において例証されるように、アロマティックコンプレクスのPX収率を増大させることが可能である。
【0161】
(実施例3)
この実施例により、図1に示されるキシレンループの性能を詳しく述べることによって本発明の利点が示される。このキシレンループは、
- ラフィネート(A2)のみを生じさせる吸着工程A、
- 当該ラフィネートの分画化の工程B、および
- 2回の異性化工程CおよびD
を含む。
【0162】
本発明の利点を完全に理解するために、分離工程Bは、従来技術に従って行われるか、または、本発明に従って実施例1において記載されたバージョンALT0およびALT1において行われる。
【0163】
EBの回収度は、DR(EB)で表示され、これは、90.0%に設定され、キシレンの回収度は、DR(XYL)で表示され、これは、90.0%、87.0%および82.0%の範囲にわたる。
【0164】
前記キシレンループは、100t/hの流量のC8+フラクション(流れ(1)、図1)を給送され、このC8+フラクションは、68t/hのC8Aフラクションを含有するリフォメートを起源とし、その質量組成は、下記に与えられる。
【0165】
【表5】
【0166】
前記フラクションC8A(流れ(1)、図1)は、2回の異性化工程CおよびDからの流出物((C1)、(D1))の再循環物と共に、理論板15のところでキシレン塔に導入される。このキシレン塔は、72段の板を含み、還流比1.8により操作され、これにより、頂部において蒸留物中のC8Aの99.8%を回収することおよび似移動床分離ユニットPXの供給原料からC9+を除去することが可能となる(流れ(2)、図1)。
【0167】
前記フラクションC8Aは、似移動床分離工程Aに引き入れられ、エキストラクト(A1)とラフィネート(A2)とを生じさせる。エキストラクト(A1)は、PXおよび脱着剤を豊富に含み、ラフィネート(A2)は、PXが激減しておりかつ脱着剤を含有している。エキストラクト(A1)およびラフィネート(A2)は、実施例1に記載されたような分画化工程Bに送られる。この分画化工程Bは、複数の蒸留塔を含んでいる。分画化工程Bにより、脱着剤を吸着工程Aに再循環させること、および99.8%の純度を有するPX、および2つのラフィネートを生じさせることが可能となる。この2つのラフィネートにおいて、一方(B2)は、EBを豊富に含み、他方((B3)または(B31))は、EBが激減している。このことは、実施例1において説明されており、かつ、図2a)、2b)、2c)において図示されている。
【0168】
ラフィネート(B2)は、水素の再循環物と混合されて、第1の異性化工程Cにおけるエチルベンゼン転化ユニットに給送され、以下の条件下に作動する:圧力:0.9MPa、温度:376℃、比H/HC=4.1;触媒:白金とEU-1ゼオライトとを含有する;空間速度:5h-1
【0169】
これらの条件下に、EBの転化率は、28.9%(従来技術);29.3%(本発明に合致する、ALT0バージョン);29.9%(本発明に合致する、ALT1バージョン)であり、C8A喪失率は、1.8重量%であり、PXの平衡解析は、92.0%であり、OXの平衡解析は、87.0%である。
【0170】
反応器の出口において、分離トレインにより、水素、トルエンおよびパラフィン性およびナフテン性のフラクションを主として含有するガス(C2)を生じさせることが可能となり、このガスは、反応器入口に送られる。流出物の最も重質の部分(C1)は、キシレン塔の入口に再循環させられる(図1)。
【0171】
ラフィネート(B3)は、第2の異性化工程Dにおけるキシレン異性化ユニットに給送され、これは、以下の条件下に作動する;温度:240℃、圧力:1.8MPa、空間速度:2.5h-1;触媒は、ZSM-5型のゼオライトを含有する。
【0172】
これらの条件下に、EBの転化率は、3.4%であり、PXの平衡解析は、94.5%である。
【0173】
反応セクションからの流出物(D1)は、キシレン塔に再循環させられる(図1)。
【0174】
このように説明されるキシレンループについての物質収支は、下記の表において要約される。
【0175】
【表6】
【0176】
この実施例が例証するのは、2回の異性化を含んでいるキシレンループの生産性を増大させることを可能にし、これに伴って、似移動床は、分画化工程Bにおいて第1の三分画蒸留塔を用いて2つの流出物を生じさせる、という本発明の利点である。
【0177】
分画化工程Bのエネルギー消費は、影響されない。PX製造における利得は、平均PX価格1500$/t($/トン)に基づいて推定されて、ALT0バージョンについて1.3MM$/y(ミリオンドル/年)であり、バージョンALT1について3.3MM$/yであり、分画化工程Bの改変に関連する限界的投資を正当化する。
【0178】
(実施例4)
この実施例により、図1に示されるキシレンループの性能を詳しく述べることによって、本発明の利点が示される。このキシレンループは、2つのラフィネート(A21)および(A22)を生じさせる吸着工程Aと、ラフィネート分画化工程Bと、2回の異性化工程CおよびDとを含んでいる。本発明の利点を例証するために、分離工程Bは、従来技術に従って、または、実施例2において記載されたバージョンALT2に従って行われる。それ故に、従来技術による方法を介して得られた、EBの回収度DR(EB)、およびキシレン類の回収度DR(XYL)は、それぞれ、98.0%および78.0%であるのに対して、本発明による方法のバージョンALT2によって、回収度は、それぞれ、90.0%および66%である。
【0179】
キシレンループは、100t/hのC8+フラクション(流れ1、図1)を給送される。このC8+フラクションは、68t/hのC8Aフラクションを含有するリフォメートを起源とするものであり、その質量組成は、下記に与えられる。
【0180】
【表7】
【0181】
前記フラクションC8A(流れ(1)、図1)は、2回の異性化工程からの流出物の再循環物と共に、理論板15のところでキシレン塔に導入される。このキシレン塔は、72段の板を含み、還流比1.8で操作され、これにより、頂部において、蒸留物中のC8芳香族化合物の99.8%を回収することおよび似移動床分離ユニットPXの供給原料からC9+を除去することが可能となる(流れ(2)、図1)。前記フラクションC8Aは、似移動床に給送され、この似移動床は、エキストラクト(A1)と、2つのラフィネート(A21)および(A22)とを生じさせる。エキストラクト(A21)は、PXおよび脱着剤を豊富に含んでおり、2つのラフィネートは、PXが激減しておりかつ脱着剤を含有している。
【0182】
エキストラクトおよびラフィネートは、実施例1において記載された分離工程Bに送られる。この分離工程Bは、複数の分画化塔を含んでいる。このようにして分離された脱着剤(B4)は、吸着工程Aに再循環させられる。前記工程Bにより、実施例2において記載されかつ図3a)および3b)において例証された、純度99.8%を有するパラキシレンと、EBを豊富に含むラフィネート(B2)または2種のEBが激減したラフィネート((B3)または(B31))とを生じさせることが可能となる。
【0183】
ラフィネート(B2)は、水素の再循環物と混合されて、第1の異性化工程Cにおけるエチルベンゼン転化ユニットに給送される。これは、以下の条件下に作動する:圧力:0.9MPa、温度:376℃、比H/HC=4:1、触媒:白金およびEU-1ゼオライトを含有する;空間速度:5h-1
【0184】
これらの条件下に、EBの転化率は、30.6%(従来技術);32.1%(本発明、ALT2バージョン)であり、C8Aの喪失は、1.8重量%であり、PXの平衡解析は、92%であり、OXの平衡解析は、87%である。
【0185】
反応器の出口において、分離トレインは、水素、トルエンおよびパラフィン系およびナフテン系のフラクションを主として含有するガス(C2)を生じさせることを可能にする。このガスは、反応器の入口に送られる。イソメラートの最重質の部分(C1)は、キシレン塔の入口に再循環させられる。
【0186】
ラフィネート(B3)は、第2の異性化工程Dにおけるキシレン異性化ユニットに給送される。このユニットは、以下の条件下に作動する:温度:240℃、圧力:1.8MPa、空間速度:2.5h-1、触媒:ZSM-5型のゼオライトを含有する。
【0187】
これらの条件下に、EBの転化率は、3.4%であり、PXの平衡解析は、94.5%である。
【0188】
反応セクションからの流出物(D1)は、キシレン塔に再循環させられる。
【0189】
キシレンループについての物質収支は、下記の表において要約される。
【0190】
【表8】
【0191】
これらの結果が明確に例証していることは、本発明による方法により、似移動床を実施し、実施例1において記載されたような分離工程Bにおいて第1の三分画蒸留塔を用いて3種の流出物を生じさせることによって、キシレンループのパラキシレンの収率を増大させることが可能となることである。有利には、本発明による方法のこの特定の実施は、設備の量またはエネルギー浪費に影響力を有しない。
【0192】
平均のPXコスト1500$/tをベースとする推定利得は、3.4MM$/yである。
【0193】
(実施例5)
ALT3と称される特定のバージョンにおいて、本方法は、実施例4のバージョンALT2(図3b)の場合と同一の設備により、同一のキシレンループの構成において行われる。この実施例により、非常に高い収率のPXを、同一の供給原料から得ることが望まれる場合に、異性化の触媒およびシーブにおいて最低限の増大があるという本発明の利点が例証される。
【0194】
吸着工程Aの操作パラメータは、実施例4のものと同一であるが、ラフィネート分画化工程Bの操作パラメータは改変されており、その結果、第1の蒸留塔(B-C3)からのEBを豊富に含むラフィネート(B2)の流量が低減させられ、第2の蒸留塔(B-C4)に給送する側部抜き出し(B3)、さらには蒸留液(B31)のそれにより生じた流量の利益になるようになっている。
【0195】
この実施形態において、分画化工程Bの新しい性能品質は、DR(EB)=60%およびDR(XYL)=38%になるようにされる。前記ラフィネート(B2)は、次いで、異性化工程Cに引き入れられる。この実施により、最小のC8A喪失を有する触媒によってキシレン異性化の割合を増大させること、および最終的には、PXの収率を増大させることが可能となる。
【0196】
異性化工程Dにおける製造量当たりのEBの転化率は低いので、EBの再循環度は増大し、これは、それの静止した濃度を増大させるという効果を有する。その後は、第1の蒸気相異性化における製造量当たりのEBの転化率は、熱力学的平衡によって支配されるものであり、これも、増大させられ、36.5%に達する。
【0197】
有利には、本発明による2回の異性化工程の組み合わせにより、高いPX製造量を達成することが可能となり、容量における増大に関するトレードオフは低い。
【0198】
このように説明されたキシレンループについての物質収支は、下記の表において要約される。
【0199】
【表9】
【図面の簡単な説明】
【0200】
図1】吸着による分離の工程、分画化工程、蒸気相異性化工程Cおよび液相異性化工程Dを包含するキシレンループの一般的なスキームである。
図2a】従来技術による、工程Aから得られたラフィネートの蒸留工程Bを示す。
図2b】本発明による、工程Aから得られたラフィネートの蒸留の工程Bの第1の変形例である。
図2c】本発明による、工程Aから得られたラフィネートの蒸留の工程Bの第2の変形例である。
図3a】従来技術による、工程Aから得られた2種のラフィネートの蒸留の工程Bを示す。
図3b】本発明による、工程Aから得られた2種のラフィネートの蒸留の工程Bの変形例である。
図1
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b